超時空要塞マクロス ガールズ&ヴァルキリー そのニ   作:ノザ鬼

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一人舞台

 

 暫時。

 

 笑いが収まるタイミングを見計らう。

 

 右手に鞭を、

「ところで…。」

 持ち直し、

「リクノ殿…。」

 向き直るタニヤ。

 

 右の親指で、

「俺か?」

 自分を指すリクノ。

 

 タニヤが向けた、

「どの程度…。」

 視線の、

「【デストロイド・ヴァルキリー】をご存知か?」

 愉しそうな事。

 

 リクノの右手が、

「噂程度かな?」

 掴み、

「それも、端っこの薄い奴だ。」

 もて遊ぶ耳は、記憶を探る仕草。

 

 口が作るは、

『ほう。』

 感嘆の形。

「それで…。」

 視線を一度、

「アレの正体を…。」

 【デストロイド・ヴァルキリー】に向け、

「判断したと…。」

 ゆっくりとリクノへと戻すタニヤ。

 

 視線を、

「確かに、その程度しか知らない…。」

 同じく【デストロイド・ヴァルキリー】に向け、

「でもよ…。」

 強い口調と、

「俺には解るぜ!」

 共に両の拳に、

「これを創った奴は本気で…。」

 込める力が、

「本物だってよ。」

 リクノの身体を感動を上乗せし軽く震わせた。

 

 上げた左手は、

「そうか…。」

 親指と中指で、

「リクノ殿は…。」

 両の目頭を押さえ、

「解ってくれるのか…。」

 熱くこみ上げるものを押し止めようとするタニヤ。

 

 リクノの心の奥から、

「あぁ…。」

 こみ上げる熱い思いは、

「解るさ!」

 タニヤと同調する。

 

 押さえられなくなった、

「リクノ殿!」

 左の指を離し、

「感涙である!」

 そのままスライドさせ、

「機体に宿る思いまで…。」

 手首で目から流れ出す熱いものを、

「解ってもらえるとは!」

 受け止めるタニヤ。

 

 

 熱い二人の様子を見ている、こちらの二人は…。

 

 蚊帳の外だと感じるカケル。

 

 疎外感を感じるヒョウカ。

 

 

 左手を目から離し、

「私は、今…。」

 リクノに向き直り、

「数十年来の友と再開した気分だ!」

 熱い視線を送るタニヤ。

 

 口角が、

『ニコリ。』

 音を出し、

「俺もだ。」

 サムズアップで同意するリクノ。

 

 答えるは、

『ニィ。』

 上がる口角とサムズアップのタニヤ。

 

 

 右手でツバを、左手で上部を持ち左右に揺する。

 それは、制帽の位置を再度決め直す仕草。

 相手に非礼無き様にとの最大限の計らい。

 

 下がる口角は、

「リクノ殿。」

 真顔を作り、

「是非、この機体の事を知ってもらいたい!」

 熱い眼差しを送るタニヤ。

 

 見開いた目は、

「えっ!?」

 驚きの、

「良いのか?」

 表情で、

「対戦相手に情報を漏らして…。」

 聞き返すリクノ。

 

 顔の左側が、

『ニヤリ。』

 音を出し、

「大会は、戦争ではなく…。」

 上がり、

「試合…。」

 目は、

「互いの力量を、試し合うのが目的である。」

 愉しさに笑うタニヤ。

 

 反応は、

「おぉ…。」

 驚きを、

「流石…。」

 含み、

『ニヤリ。』

 こちらも愉しいと表情が語るリクノ。

 

「それに…。」

 一瞥、

「そちらの、お二人も興味津々のようだ。」

 これまた、愉しいと口元が笑うタニヤ。

 

 右手で後頭部を、

「えへへ。」

 掻くカケル。

 

 右手で口元を、

「おほほ。」

 隠すヒョウカ。

 

 二人は、知らず知らずにリクノとタニヤの会話の引力に引き寄せられ身を乗り出していた。

 

 

 タニヤが、

「では…。」

 三人を、

「聞いてもらおう。」

 ゆっくりと見回す。

 

 

 そして…。

 

 優雅に舞う。

 

 

 先ずは足元から…。

 

 左足を引き、右足の後ろへ交差させる。

 

 合わせ、腰を曲げ頭を下げる。。

 

 左手は、腰の後ろへ回し添える。

 

 右手は、胸の前にそっと当てる。

 

 それは、見えない翼を折り畳む様な動き。

 

 全てが一連の動作として、拝礼となる。

 

 瞬の静。

 

 そして、動へ。

 

 伸び。

 

 ゆっくりと身体を起こしながら、目を閉じたままに天へと仰ぐ。

 

 胸から掲げる右手の指先は、天の虚空を指し示す。

 

 空いた胸元には、腰の後ろから持って来た左手が優しく当てられる。

 

 陰に隠れていた左足は、右足の横に並び立ち、両足は肩と同じ幅の距離を取る。

 

 その時、幼女はステージに立つ歌手となり、三人を特等の観客席へと誘う。

 

 満を持して開かれる幼き口。

 

 始まる幼女の一人舞台。

 

「聞かせよう…。」

 

 ゆっくりと身体を揺する。

 

 

「数奇な運命の機体の話を…。」

 

「ある時…。」

 

「ある開発者が…。」

 

「ある発想を思い付いた…。」

 

「それは…。」

 

「デストロイドに機動性と汎用性を持たせては?」

 

「と…。」

 

 

 言葉と言葉に挟まれる絶妙の間は、聞くものを惹きつける緩急となり、我を忘れさせた。

 

 

「基本となるのは、デストロイドの頭部と腕部を除く、胴と脚を中心とした機体のベース…。」

 

「それにヴァルキリーと同じ機構の[ファイター][ガウォーク][バトロイド]の三つのモードへ可変。」

 

 これが三人が見た角張った飛行機の正体であった。

 

「そして…。」

 

「ここからが、この機体の最大の特徴。」

 

「ここに、デストロイドの武装をセット。」

 

「臨機応変、変幻自在、千差万別…。」

 

「何と飾る言葉の多き色々な組み合わせを実現。」

 

「例えば…。」

 

「ファランクスの腕である、ミサイルポッドを右腕にセット。」

 

「ディフェンダーの腕である、二連装砲を左腕にセット。」

 

「そこに、制御とセンサーを兼ね備えた頭部を取り付ける…。」

 

「こんな夢の機体…。」

 

 語り部のタニヤが合わせる両手は、天に祈りを捧げる殉教者。

 

「この発想に上層部は、直ちに開発のゴーサインを出しました。」

 

「その嬉しさのあまり、開発者は寝食を忘れ没頭…。」

 

 軽く左右に振る首は、

「いえ…。」

 否定。

 

 瞑る目は、

「その姿は、まるで何かに取り憑かれたかの様…。」

 哀れみ。

 

 ゆったりと取る間。

 

「情熱が作らせたのか…。」

 

「はたまた、取り憑かれた何かが作らせたのか…。」

 

「作製が困難と思われた機体は、開発者の理想から抜け出た様に形になりました。」

 

「そして…。」

 

「始まる運用試験…。」

 

「…。」

 

 ここからが山場だと無言が語る。

 

 ゆっくりと、

「結果は、御三人が…。」

 一人ずつに視線を送り、

「この機体を知らないと言う事が、十二分に物語っている…。」

 

 心の中で、

〘確かに…。〙

 呟き、

『うん。うん。』

 首を立てに振る三人。

 

 タニヤの項垂れる頭(こうべ)に、瞑られた目は、不幸な機体に向けられた悲哀。

 

「この機体が、如何に御(ぎょ)し難(がた)いかったか…。」

 

「機体の汎用性以上に、操縦者の汎用性が問われた…。」

 

「そう…。」

 

「当時は戦時中…。」

 

 込められた力が、

『ギリギリ』

 右の拳に音を出させ、

「パイロットの育成に、必要以上の時間はかけられない!」

 一気に感情と、

「開発の即時中止の決定!」

 共に吐き出した。

 

 緩めた拳は、

「上層部の判断に反発する開発者…。」

 言葉と共に、

「機体を複座にすれば…。」

 力を失う。

 

「立ち塞がる、上層部の壁は高く…。」

 

 俯き、

「この機体の開発中止は覆らなかった…。」

 ゆっくりと首を左右に振る。

 

「開発中場で消えた…。」

 両手が見えない翼を広げるが如く、

「それが、この機体なのだ!」

 身体を向け、全身で【デストロイド・ヴァルキリー】を指し示す。

 

 

 カケルの、

「おーっ。」

 

 リクノの、

「へーっ。」

 

 ヒョウカの、

「ほーっ。」

 

 言葉は違えど、表現は同じ三人。

 

 

 タニヤの俯き握る右の拳は、周囲の光を奪い、暗い帳(とばり)を降ろす。

 

 

 暫時。

 

 

 開き、

「しかしだ!」

 肩の高に掲げられた両手。

 

 それは、

『光あれ!』

 脳内に響く声。

 

 空耳とも言う。

 

 

 降り注ぐ光が、暗い帳を舞台袖へと追いやり、タニヤをその中で浮かび上がらせる。

 

 見上げた頭(こうべ))は、

「この機体の開発は無駄では無かった。」

 天を仰ぐ。

 

「デストロイド・ヴァルキリーの変形機構は、元来複数人での操縦を想定されていたモンスターへと受け継がれ【ケーニッヒモンスター】へと昇華された。」

 

「そして、汎用性は外付けパーツとして…。」

 

「【アーマード・ヴァルキリー】、【スーパー・ヴァルキリー】へと進化した。」

 最後にアクセントを付け強調したタニヤ。

 

 それは、余韻を残し耳に木霊する。

 

 三人の中に、

〘まさか。〙

 渦巻く、

〘そんな秘密が…。〙

 思い。

 

 ゆっくりと込める力が、

『ギリギリ。』

 左手から音を出し、

「そう…。」

 俯いた額の前に、

「この機体は!」

 掲げられ、

「時代に愛されなかった!」

 一気に開放するが如く、左腕と共に横に振られた。

 

 少し天を仰いだ顔の、

「だからこそ!」

 噛み締める口元に、

「私は…。」

 食いしばる目元は、

「この機体に、日の目を見せてやりたいのだ!」

 今にも泣き出しそう。

 

 

 圧力。

 

 それは、心からも発せられる。

 

 改めて思う三人。

 

 

 緩む口元と目元に、

「そう思うだろ!」

 反し、

「リクノ殿!」

 高まる圧力。それは、熱い思い。

 

 押され、

「あぁ…。」

 呆気にとられるリクノ。

 

 だが!

 

 リクノの胸の奥から、

「解るぜ!」

 こみ上げる熱い何かが、

「その思い!」

 両の拳に固く握られる。

 

 ちなみに、カケルとヒョウカは反応できずに呆然としているのは、言うまでもない。

 いえ、書くまでもない。

 

 返すタニヤの

「うん。」

 振られる、

「うん。」

 首に、

『ニィッ。』

 満面の笑み。

 

 同調するリクノも

『ニィッ。』

 満面の笑み。

 

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