超時空要塞マクロス ガールズ&ヴァルキリー そのニ 作:ノザ鬼
教壇側から教室内の生徒を向き、
「今日から…。」
第一声を発した転校生。
零(れい)の感覚。
それは、限りなく[無]に近いが[無]ではない。
ちなみに、[ゼロ]は完全な[無]だそうです。
第一声に、
『…。』
体が反応していたカケル。
何かを感じ取ったと言うわけではないが、何かを感じていた。
正体不明のもの。
しかし、嫌な感覚ではなかった。
むしろ、懐かしいとも、心地良いとも思える何かであった。
カケルの心が、
〘何だろう? この不思議な感覚…。〙
転校生から反れ、
〘何処かで感じた気がする…。〙
記憶を、
〘それも、最近…。〙
探り始めた。
転校生は続け、
「皆さんと一緒に勉強する…。」
ゆっくりと見回し、
「ヒビキって言います。」
笑顔に続け、
「よろしく、お願いします。」
頭を下げた。
即、反応する、
「フルネームは?」
男子生徒。
一秒。
二秒。
三秒。
四秒。
五秒。
またも、ヒビキの反応までの時間。
「あっ…。」
驚き、
「私のですか?」
声の出処方向へ聞き返すヒビキ。
こちらは、
「そうそう。」
即座に反応した男子生徒。
一秒。
二秒。
三秒。
今度の反応は早かった。
にこやかに、
「個人情報なので…。」
返したヒビキ。
割り込み。
突如、
「ヒビキくんは、仕事の関係でこの船団に越して来たそうだ。」
教師が口を開いたのは、ホームルームのために使える時間の残りを心配しての事だと、生徒が思ったのは当然の流れ。
だが、女生徒が聞いてしまうのは、
「ご両親のお仕事ですか?」
人の性(さが)。
少し俯(うつむ)き、
「いや、ご両親ではなく。」
加減で、
「ヒビキくんの仕事だ。」
答えた教師。
噴火。
それは一人の女生徒を起点に半径三席に影響を及ぼした。
突如、
「あー!」
立ち上がり、
「ヒビキちゃんだ!」
指差した女生徒。
驚き、
「うわ。」
引き、
「な、何!?」
立ち上がった女生徒に顔を向け視線を送る周囲の生徒達。
突き出した人さし指を軽く上下させながら、
「ほ、ほらぁぁぁぁぁ!」
取り乱し、
「あれよ! ほら!」
興奮する女生徒。
その余波は次第に広がり、
「あっ!」
「えっ!?」
「本当に!?」
教室の生徒へと伝播(でんぱ)すた。
転校生の正体を語る権利は、
「今…。」
最初に気付き、
「全マクロス船団チャートで話題のアイドル…。」
立ち上がった、
「ヒビキちゃんだよね…。」
女生徒が得た。
全ての生徒の声を、
「おーっ!」
一言で表現できる程のどよめき。
暫時。
この間は、教師としての経験から。
大声で対抗しても勝てないと解っているから、生徒達に与えた時間。
「ほら。」
嗜(たし)め、
「ヒビキくんは、アイドルではなく。」
説得し、
「いち生徒として、学びに来てるんだ。」
生徒を見回した。
「はーい。」
返事は良かったとしておこう。
だが、生徒がそんなに聞き分けが良いとは…。
本人達が一番解っているのである。