T県の郊外に位置する三咲市では残虐な連続殺人が起きていた。
死体は一概に歪で個人と結びつけることもできないくらいにぐちゃぐちゃにされている、その獣に咀嚼されたかのような死体を生み出した殺人者をある男はメディアは”混沌”と形容した。
ーー三咲北峰高校
「にしても、楽しいよな最近。」
明るい髪をした悪友が不謹慎な言葉を吐く。
「ああ、例の連続殺人か、不道徳に生きるお前が好きそうだなと思っていたよ。」
に、対して毒づく。
「うむ、そうだろうそうだろう。こんな閑散とした田舎で猟奇殺人なんていかにも非日常って感じで、楽しい。漫画や映画を想起したよ俺は。」
「で、なんだ?要件は。端的に手短に頼むぞ俺は虚弱体質で病弱なんだ先は長くない。」
不幸顔の彼にこの華のない退廃的な思考を成立させたのは生まれつきの貧弱な体、交通事故を原因に臓器に障害を患っており。時間にはとことんシビアで無駄な労力を世界で最も憎む。
「なははー、じゃあ端的に言うぞ。俺達で猟奇殺人を調査しよう。」
「お前はこの俺が虚弱体質で慢性的な貧血に悩まされている軟弱者だということが分かった上で言っているのか。ほんとうに非道徳な人間なんだなお前は。」
「いやね、だからそんな弱者の遠野くんを殺人犯から守ろうと…」
「それで殺されたら、本末転倒だ陽介。」
悪友浅上 陽介の言葉を遮る。浅上 陽介それがこの不健全男の名前だ。
「うーん、どうせ短い人生なんだからさ、楽しんでいこうぜ?」
この男の言うことは意外と芯が通ってるようでフワフワする一緒にいると足を掬われそうで正直恐ろしい。
「何の話?遠野くん」
ーー刹那、後ろから聞き慣れない女の声が聞こえる。
「ん?あ弓塚さんか」
彼女は名を弓塚さつきと言う。
弓塚さんは旧知の中で中学二年の時にとあるイベントを機に仲良くなった唯一の異性の友達だ。
「えへへ、省エネ主義の遠野くんが必死に抗弁してるから何かと思ったら、やっぱり浅上くんかー」
彼女は朗らかな笑顔を浮かべながらそう言った。
陽介とはどう転んでも似つかない特性の彼女を見てるととても安心してしまって、無意識に変な顔をしていないか気になってしまう。
「で、どうすんだよ遠野クン。帰宅部のお前はどうせ暇だろ?人助けだと思って頼むよ〜」
右と左にある相互の顔を見比べる、朗らかな弓塚と比較すると尚更この親友の作り笑いが強く映る。
「ああもう分かったよ殺されるリスクとお前の我儘を聞く労力とを天秤にかけて後者の方が勝ったみたいだ!」
かといって断れないのが俺の弱み、何か大きな根拠があればダンマリと断りを決め込むこともできるのだろうが。
「やっぱり相棒はちげーなー。他のやつらなんかビビってヤダの一点張りだもの。」
かくして俺、遠野 志貴は猟奇殺人の調査に駆り出されることになってしまった。