ブラックブレットの世界を使って。 作:とくめいん
こんな美味しい世界は嫌い
バラニウムの弾を宙にばらまく。10、20、30、、、、残弾が0を表す空撃ちの音とともに自分のもつ、戦場に落ちていた小銃のマガジンキャッチに手をあてがい、マガジンリリースを行う。戦場で何十、何百と行ったこの動作は、自分の命を助けている。それに感謝する時間も惜しんでリアサイト奴等に向かって構える。一体目、二体目、三体目。。。。また弾切れだ。マガジンを換えようと、腰のマガジンポーチに手を伸ばす、が、
「弾切れか。」
無意識にかすれた声が溢れる。
通常なら戦闘で弾切れはあり得ない。弾の有無は生死を左右するからだ。帰還するのが定石。
だが、ここでは帰れないのだ。帰れば俺は、人類は、陥落する。
三回もガストレア侵入を許した無能な官僚どもによって決定されたあの作戦は、もはや失敗も失敗。地獄のようだった、否、地獄だった。最新の戦車は派遣されたのだが、ほぼ使い物にならず、アパッチによる空爆も、掃射も、地対地ミサイルも、戦闘機の攻撃すら、数が"足りなさすぎた"そして、失った。だから【失敗】だ。
作られ、戦場に落ちていたのを回収したバラニウム製のナイフを抜く。刃渡り50センチ。鍔がなく、持ち手も布が巻かれているだけだ。ただの鉄の板のように見える。
無限ともいえるやつらの大群に息を飲む。先程までで殺した数を嘲笑える物量が、ここに押し寄せてくる。
ちっぽけなナイフ一本でできることなどたかが知れている。だけど
「をおおおおおおっっっっっっっっっっっ!!!!」
一体、二体と敵を屠っていく。弱点らしい目と心臓、脳味噌を丁寧に一撃で屠っていく。
奴等の攻撃を、寸分たがわず弾くもしくは1ミリ程度の距離で回避する。だが、俺の体力は確実に終わりに近づいている。それもそのはずだ。俺は嗤った。
ーー俺は人間なんだ。
ウスバカゲロウのような身体を持った生き物が俺の左腕を捉え、そのまま皮膚を抉る。
痛みに耐えかねて、回避行動を取る、が更に追い討ちがかかる。
二発目は右肩、三発目は胴体を切り裂いた。
かなりの量のとても明るい色をした赤い血が、身体中を濡らしていく。
「"まだ14歳で中学を卒業すらしていないのに"なんて、ただの言い訳か。むしろ、皆に会えるかな?」
血がたくさん出たからか、はたまた諦めたからなのか、彼は目を閉じて、そのまま意識を手放した。
目を開けたとき、そこはとても白くて、そして素晴らしい朝日の差し込む部屋だった。
☆☆☆
初めて奴等と出逢ったとき、日本の自衛隊は、通常兵器だけだった。だから、人口はかなり減り、ライフラインは絶たれ、僕らは恐怖した。
対抗策として、バラニウムが有効だとわかってからの、人類の行動は速かった。世界中のネットワークの再構築、都市部を守るモノリスの形成。僕らは安心した。未知が既知になり、まとめあげるリーダーが都市に現れ、攻撃も止み、愛しい人がもうこれ以上死なないことに。
だからといっても、愛しい人を喪った人が大半で、
今でも夢に出てくる。
お母さんを、お父さんを、兄妹を。友達を。先輩を。後輩を。
返せ。返せ。返せ。返せ。"返せ!!!!!"
☆☆☆
「うなされていたけど、大丈夫?」
声をかけられた。僕は、死んだのか?
「ここは?」
「病院よ。生きてるわ。」
............そうなのか。生きてるのか。
残念だな。そんな感情が、僕の心に広がった気がした。
「そうですか。ありがとうございます。」
「いいえ、あなた方のお陰で、ここは無事でした。ありがとう。」
そう微笑む看護師さんをみて、思った。どうして戦場に倒れていないのか。奴等は全滅したのか?
「どうしてここに僕はいるんですか、まだあいつらは居るんじゃないんですか?始末しないといけないじゃないですか、あいつらは俺が殺すんです。僕が殺して、奴等を消すんです。戦場にたたないといけないんですよ。僕の周りの、友達の、家族の仇は僕がとるんですよ。なのになんでここにいるんですか?こんなとこにいても仇は取れない戦場にいかせて下さい。絶対に一体でも多く屠って、あいつらに、奴等を消すんです。なのになんで僕はここなんですか、あいつらのとこが僕の所だ。奴等は僕に殺される運命なんです。さっさと外に出させてください、僕は、いかなきゃいけないんです!」
一息で自分の意見を吐き出す。初対面だろうが無視できる胆力は戦闘で養われたものだ。だが、
「無理よ。キミの怪我は全治一ヶ月、リハビリ三週間ってとこ、1週間は絶対安静よ。」
ふざけんな。それに『あれ』はーー
「まってくr「失礼します。」.....だれです?」
「どうも、誰かとは、言わなくてもわかると思うんだが?」
「いや、誰だよ。」
「私の名前は........」
失礼な奴だ、まじで知らんぞ、そんな奴。
「で、なんの用ですか?」
「キミを調べさせてもらった。5才の時に両親、兄弟を失い、そこから7才で戦闘を経験。その後戦場を渡り歩く。ついたあだ名はスモー「わかったから、なに?」」
こいつの目的はなんなんだ?
「これ、やっちゃいけないんだよ?君子供だよ?民警でもないし、民間人の危険行為はここ仙台では禁止。知ってたろ?」
「だから?捕まえるのかい?」
「いや、違う。君には世界を経験して、そして"普通"の生活を送ってもらう。」
「メリットがない。学校教育位は独学で行けた。今までも、これからも、必要ない。」
俺は嘘をつく。バレルだろうが今までの報告書は仮面を被るあの変態の手によるものだ。バレるまで時間はあるだろう。
「そうじゃないんだけど~。まあ、きみは大人とふれあい、戦闘していたかもしれない。だが、こことしては、キミを危険なところへおくるのはダメだと判断した。メリット?君が僕から捕まらずに自由に動けるってとこかな?」
「従わなければ捕まえるって?はっ、なめんなよ?」
「君には東京にいってもらう。きみは世界を経験するべきだ。」
「資金がない。世界は知ってる。向こうの生活の保証もないのにやってられるか!」
とんでもない。おれの人生はアイツらと共にある。
「お金については問題ない。君を民警の預かりにして、給料を出そう。勿論今まできみが殺してきた分を。」
よくわからんが、一番の疑問は、これだ。
「なんで俺なんだ?他にもいるだろ?」
「それについては、まあ、運か「で、実は?」..........かわいそうだったからかな」
あからさまな嘘。
「憐れまれるいわれはない。かえれ。」
「ここの治療費」ボソッ
要するに俺を救ったのは目の前の奴だということか。
・・・・金は正義。知ってる。
「..................わかった。」
本当に、うざいな。こんなことは嫌いだ。こんな駆け引きは俺の仕事じゃない。
西暦2028年。彼と変わったプロモーターが出会うまで、あと2年。
一部改編しました。9/2
内容、一人称の視点変更