忘れ去られた妖怪達が住む楽園────『幻想郷』
その幻想郷には様々な種族が住み着いており、妖怪や精霊、人に悪魔や神様と………多種多様ながらも均衡を保ち生きている。
その中でも、人々が集まり自分達が平穏に暮らせる場所でもある大集落《人間の里》を作り、その暮らしも妖怪に恐れながらも充実はしていたのだ。
────だが、そんなある日の深夜辺り。《異変》の始まりとも言える事件が起きたのだ。
人里から少し西に離れた森の奥付近にて
一刻もせずして人里から人々その現場に集まり、人集だかりを作る。
例え人を食らう妖怪達が
大体が人間だが、少数の妖怪も含まれる野次の群衆が作られ、同情の声や無惨な死体の光景で吐きそうになる者も多少存在し、閑話による喧騒が森の中で飛び交っている。
────だが、そんな人集りの中に一際真剣な眼差しで見ているものがいる。
尖り帽子を被り、片側だけおさげにして前に垂らした特徴的な金髪に、白黒の奇抜な服装身を包んで箒を持っているという、魔法使いのような外見の少女。
少女はその訝しげな
「こんな酷いこと、誰が何のために………」
「妖怪の仕業に決まってるべさ。早く
────違う。人食い妖怪の仕業としてもこれは明らかにあからさますぎるんだ。
耳に入ってくる大人達の会話を否定する。確かに、人食い妖怪なら喰われてもおかしくはない。………だが、このいくつも食える場所を残して態々捨て置くか?単に食欲が満たされることはまずないし、そもそも妖怪退治を生業とするバカ知り合いがこんな事を見逃してる筈がない。なら何で…………ダメだ。情報が足りなさすぎる。
そう少女は脳を回転させて可能性のある道筋を考えるが、どうにも情報が足りなく考えがあまり回らない。
内心舌打ちしながらもっと考えるものはないかと辺りを見渡しては新しい情報を手に入れようとしてる最中、真新しいものを見るように、その視線の先にいる者を見る。
服装は漆黒色に塗られた詰襟で腰にベルトを巻いて固定させ、袴は膝辺りから包帯を巻き付けて固定させ、黒い靴下に
菊の花模様が描かれた虫襖むしあお色の羽織を上に着用しており、そこまでなら少々……奇抜な格好をした子供という判断でその少年の事は意識から外していただろう。だが、そうとはならなかった。理由としては二つある。
一つは、左腰に
二つ目は…………
…………その体格に似合わない、全身から感じられる強い禍々しい気配殺気が滲み出ていたからだ。本来、人から見れば何も感じられないが、少女は人であったが今は別の種族になっているため、目に見えないものとかにも敏感でもあるのだ。
尚、今の現場と少年のこととは今のところ全くとい言っていいほどに関係はないことが分かる。いや普通なら視界に入れてもどうでもいいのであるが、この少女は気にかけたのである。それに、彼女にはあの刀には秘密があると見て、良ければ頂戴しようと言う盗人根性が働いたからだ。
そんな私欲物欲まみれの少女はその少年の方へと足を向けるが、少年はそこから離脱しようとくるりと背を向けて歩き始めてしまう。
「(声をかけて止めるべきか?いや、それだと怪しまれるかもしれないな。あんな奇妙な姿をしてるやつだ、胡散臭さもあるしな)」
それはお前も言えたことじゃないだろう。
「…………………(今何か言われた気がするが、まぁいいか。兎にも角にも、私の勘が彼奴に関われば異変に繋がるかもしれないと脳内でキラめいている!ということで)跡付き、開始だぜ☆」
小声でそう呟けば、既に人の群衆から離れた少年を追いかけるべく人混みから離れ、森の中で所持していた箒をペン回しの要領で回転させてからまたがる。
そのまま宙に浮いたかと思えば、森から抜きでて彼を視界に捉え、ある程度離れた場所から追跡を開始し始めることにした。
…………普通、これの方が絶対目立つように見えるだろう。というか絶対見つかる。だが彼女は見た目が普通じゃない分、
というより、無意識にある好奇心と悪戯心でストーカーをしているので思考もそれはそれで奇妙である。
────────────────────────────────────────────────────
────箒に乗って空を飛び、追跡を開始してからかれこれ約半刻はんこく、彼女はストーカー対象追跡の相手でもある奇妙な姿の少年を複雑な顔で見続けていた。
それもそうなのだろう。何せ追跡していた相手は人里から西の少しある森から歩き始めて人里に入り、そこで度々彼是あれこれ人里の住民達に何かを聞いては休んで東へと歩いていた。勿論、彼女は浮遊をして尚且ある程度の距離を話しているため聞こえるはずがない
ここまでなら誰だって普通のことだろうと思い、それがどうしたと鼻で笑って呆れ返るだろう。彼女もそう思っていた。
───だが、そこからだった。
人里を出た彼は走り出したのだ。少年とは言え、その早さはかなり体力を消耗してすぐバテるくらいの速さ。いったい何をしたいんだと彼女は飛行を続けながら思っていた。
…………だが、すぐに終わるどころか一向に体力が減ったように見えない。それどころか人里から出たその時から走り出してずっと休まず、しかも一切呼吸を乱さずに、一定の速さでずっと東へと走り続けけているのだ。
分かりやすく言えば、今流行りのニンテンドースイッチを一切充電せずに五日間ずっと徹夜しても起動し続けて動いているようなものなのだ。
え?逆に分かりにくい?…………じゃああれだ。いくら使っても減らない電池みたいなものだ。
「………(おかしい………いくら体力のある人間でもここまで一切の呼吸を乱さず、しかもペースさせ崩さないで走り続けてやがる。雑魚妖怪ならまだしも、人だぜ?いくら走れてもこんなに走れるはずが………)」
考え込んでる最中に目をやれば急停止し、少年を見る。いきなりどうしたんだと思われたって仕方はないだろう。
少年が森の前………しかも神社によくある石階段の前で急に停まったかと思えば、後ろを向き、彼女のいる方向に視線を送り、こう告げたのだ。
「そこで姿を隠して見てる人。………いや、人じゃないかもしれないけど。そろそろ姿を現してくれたっていいと思いますがね」
「!!?」
彼女は動揺をしていた。そう、彼女は箒をペン回しした際に『
「───(いくら何でもバレるリスクがない魔法を掛け、更に一定の範囲から離れているんだぞ?………こちらを見て話しかけるなんて、そんなの馬鹿げてやがる……)」
だがこれがハッタリかもしれない。もしものことを考え、黙ってやり過ごそうと算段をつけ思考を巡らせ───
「いや、あの、黙ってないで出てきてくださいよ。箒持ってた人ですよね?」
「…………………」
「だって俺のこと、をずっと見てましたよね?いや、ずっと視線感じてましたし………」
「(気のせいだ。私はここにはいないということにしてくれ)」
「……別に、本当に何かするつもりはありませんよ?それとも、このまま着いていきます?」
一つため息混じりに少年は諦めように空に問う。第三者から見れば明らかにヤバイやつだなこれ。
数分の沈黙が流れる。するとついに少女が諦めたのかそのまま空から降りてきて、魔法を解くとパッと姿が現れる。
「うおっ……。そういう姿の現し方か、ビックリするなぁ」
「驚いてるのはこっちの方だぜ。私の魔法をよくもまぁ簡単に見抜いたもんだ、大した奴だぜ」
「そりゃあんだけ俺に視線を送ってたら否が応でも気になりますって…………。んで?何で姿を消してまで……」
ずっと気になってたように困惑したような、表情かおで少女に疑問をぶつける。その理由がどれ程のものか、そんなに固執する理由が────
「え、そんなのお前を驚かして私が笑うために決まってるでしょ」
がっくりと、ずっこけるように体勢を崩し「なんじゃそりゃ………」と疲れたように溜め息をつく。
「?どうした?ため息ついてると幸福が逃げるぜ?」
「逃げるとしたら空気もそうでしょうよ……。誰のせいだと…………」
「あ、因みに私は
「話聞けよ」
ニカッと少女らしい笑顔を見せる彼女───魔理沙にツッコむ少年。少年は嘆息して手を差し伸べる。
「俺は鐵くろがね颯はやてと言う名前だ。変わってるのは自覚してる」
「あぁ、よろしく」
名前を告げてお互い手を取って握手をする。「ところで、俺に何か用か?」と颯が聞けば魔理沙は「まぁ気になったんでな、ついてきた」と軽く返す。
「理由が軽っ」
「まぁまぁ、ここに用があるんだろ?それなら私もついでに聞いてやるよ。何せこの階段の先に私と腐れ縁のやつがいるしな」
「………まぁ、期待はしないでおくよ」
そんなこんなで、緑がかった髪の少年────颯と魔理沙は、石段を登り始めてその先を向かうのだった。
────────────────────────────────────────────
石段を登り終えた先の場所。木造建築の神社で巨大な鳥居があり、その中の境内で一人掃除してる少女が一人。
「…………何か、めんどくさい未来が見えた気がする」
掃除をしていた赤いリボンをつけた巫女服の少女の顔からは、めんどそうな顔つきだった。
魔理沙「所で颯、お前って姿もそうだが髪の色も変だよな」
颯「自覚はしてるが、もっと変な姿をしてるお前には言われたくはない。そもそも何で後を付けてたんだよ」
魔理沙「お前みたいに変なオーラ滲み出してる奴を見たら、普通跡付けたくなるだろ?」
颯「思ったことないわ。後変な奴って連呼するな」