先週忙しくて投稿できなかったので2話連続出しです
(マズい...まさかの俺だけ不合格...この事実を奴らに知られたら...死に勝る屈辱!)
拓海と奈々華から伊織1人だけ不合格の可能性があることを伝えられてからずっと思いつめている伊織。奈々華からマスククリアがまだ十分にできないことを指摘されてどうにか打開策を模索し続けている
(幸いマスクは持ってる。海もすぐそこ。問題はいかにあいつらに見つからずにするかだ!)
「伊織?」
「........はっ!毒殺すればいいのか!」
「いい笑顔で何言ってるの...」
「千紗!盗み聞きとは趣味が悪いぞ!」
「毒殺ほどじゃないと思うけど」
「おーい!車借りに行くぞ!」
「市場まで買い出しだ!」
「あ、ほら千紗!呼ばれてるぞ!」
「怪しい...」
呼びかけに対しその場を逃げるように去る伊織に不信感を持つ千紗
「じゃあこれ使ってくれや」
レンタカー屋で伊織達が借りた車は普通の乗用車1台。しかも5人乗り。運転席には千紗が座り、助手席には奈々華が、そして他の者は後部座席でぎゅうぎゅう詰めになっている。時田と寿に関してはもう車にさえ入らないので車の屋根の上に鎮座している
「どうしたばにいちゃん達」
「どうしたもこうしたも!」
「どうやってこれに全員乗れって言うんだ!」
「とっきー予約間違えた...?」
「いや、ちゃんと予約してあるが?」
時田が見せた書類のコピーにはしっかり9人と書かれていた
「ありゃ、4人と9人を間違えてしまったさ」
「普通そこ間違えるか!?」
「わりぃわりぃ」
と、そこへ入り口から借りる車よりも大きな一台の乗用車が入ってきてみんなの目の前で停止した。そして降りてきたのは拓海と響だった
「お久しぶりですおじさん」
「ぬ?お、もしかしてたっくんか!」
「ハイサイ!おじさん!」
「おー響ちゃんまで。2人ともしばらく見ない間に大きくなったね〜」
「もう大学生なんで。ところでこの状況は一体...」
「あ〜、実は予約の人数を間違えてしまったでね」
「あらま。まぁ家からこれ借りれたんでその車で大丈夫だと思いますよ」
救世主来たる!拓海が乗ってきた車はおそらく7人乗り。これで問題は全部解決だ
「ってなわけで何人かこっち乗っていっスよ?」
「あ、じゃあ私乗る!」
「わ、私も!」
「千紗もか?でもそしたら借りる車運転するやつが...」
「すまん、免許置いてきちまった...」
「俺も...」
免許を持っている時田と寿はその免許を忘れてきたという。やっぱり千紗が運転しないとダメか、と誰もが考えたとき愛菜がキメ顔で免許を取り出していた。その結果、拓海の運転する車に千紗と梓、奈々華と響が乗ることになり、愛菜が運転する車に他の男どもが乗る形となった
『...』
「ふっ、短い人生だった...」
「空が、あんなにも青い...」
「あんたら本当に失礼ね!」
「よかったなぁ。無事に全員で行けて」
「それじゃあ行きますよ〜」
漸く市場へ出発!と車を走らせた瞬間、借りた車がガタン!と大きな音を上げエンジン部から煙が上がった
「ありゃ〜こいつはもうダメだね」
「なぜこんなオンボロ車を普通に貸し出しているんだ!」
「すまんね〜、今別の車用意するから」
「別の車?」
「お詫びに後ろが広いオープンカーをただで貸してあげるさ〜」
「マジで!」
「オープンカー!」
オープンカー。そんなものがこんな島のレンタカー屋で貸し出しているわけがなかろうに。案の定持ってきた換えの車は確かに後ろが広い
「どうね?」
「確かに広いな...」
「開放感もこの上ないな...」
「問題なしと」
「いやいやいや!」
「普通の車持ってこいよ!」
「あれ以外もう全部貸し出し中さ」
「なんなんだよこの店は!」
「それじゃあ良い旅を〜」
「あ!」
「おいおっさん!」
伊織と耕平の制止を止める間もなくおじさんは店の中へ入ってしまった。そしてまた作戦会議が始まった。しかし千紗達は拓海の車内で寛いでいるため拓海が代表して降りてきた
「どうすんだよこれ...」
「この車マニュアルだぞ」
「千紗か拓海は運転できないのか?」
「オレは一応マニュアルだけど、千紗はオートマ限定だったな」
「なら我那覇に頼むしかなさそうだな」
「ちょっと待ったー!」
「なんだケバ子」
「どうしたケバ子」
「ケバ子言うな!ふっ」
ケバ子と言われ一度は怒鳴ったもののまたもやキメ顔で再び自分の免許を見せる愛菜。そこには”ATに限る”と言う文字は存在しなかった
『...』
軽トラの運転は愛菜が担当し、助手席に時田、他の3人は荷台に腰かけた
「今日が人生最期の日か...」
「海があんなに青い...」
「さっきも言ったけど、あんたら本当に失礼ね!」
「おー!これはこれで乗り心地いいな!」
「あーにいちゃん達!言い忘れてたけど」
「「「ん?」」」
「ここから走る道路は全部、市有地だからね」
「さらっとすんげぇこと言ってんぞこのおっさん!」
「じゃあ」
軽トラを含めたトラックは基本荷台に人を乗せてはいけないという法律がある。例外として荷物が大きく強い風などにより荷物が落ちる危険がある場合のみ最低限の人数を乗ることは許されているが、今は適応されないだろう
「出発しますよ〜」
「っ!みんな何かに掴まれ!」
そんな法律よりも伊織と耕平は愛菜の運転で自分の命が失われないかの心配をしていた。しかしそんな心配など必要なく、軽トラはスムーズに発進した
「え?」
「ケバ子が普通にマニュアル車を走らせてるだと?」
「随分慣れてる感じだな」
「なぜそんなに慣れている?」
「えっ!慣れてなんか...」
「いや見事だぞ」
「ま、まさか!都会の似合うウチが田舎で畑ん仕事ば手伝ってたとでも!?」
愛菜。方言出てるぞ
「なるほど、そういうことか」
「それなら安心だな」
バレちまってやんの
そのころ後方の車では...
「いや〜快適快適」
「梓、シャツ捲れてるよ?」
「ん〜?ここなら見られても大丈夫だよ」
「オレいるんスけど」
「あんたも含めて大丈夫って言ってんの」
「まったく...」
「にぃに!エッチなことはダメだゾ!」
「わかってるよ。だがそれを言うならそっちのお姉さんに言ってくれ」
「そんなこと言って〜。本当は見たいくせに♪」
「拓海...」
「そういう声出すのやめてくれ千紗」
「でも前に果南さんのところでも...」
「...」
「な〜に〜?遂に浮気〜?」
「そんなんじゃないですよ」
「本当に〜?ならちーちゃんに聞いても大丈夫ってこと?」
「どうぞご勝手に」
「もぅ、ツレないな〜」
「...」
拓海はそこで黙ってしまった
「梓、その辺で」
「にぃにをあまりいじめないでください」
「別にいじめてないよ〜」
「でもにぃに、少し怒ってるゾ...」
「え...」
「拓海...?」
「...」
ちょっとだけ重い空気が立ち込めた
市場に着くとさっそく各自別れて買い出しを始めた。市場には新鮮な魚、肉、果物などいろんなものが揃っていた
「珍しいものがたくさんあるね」
「うん」
「これは食材選びのセンスが試されるな」
「先輩達は何にするんだろ」
「ひゃっ!」
「ぶっ!」
「大丈夫?」
「うん。それじゃあ私が聞いてくるよ」
愛菜は珍しい魚の干物を見つけたがその恐怖の頭に驚いて後ずさり振り上げた腕が耕平の顔面に直撃した。それに気づかない愛菜はそのまま先輩を探しに行ってしまった
「へい、なんにしやす?」
「あ、いた」
「えっと私は、”おじさん”が食べたいな〜」
「え”っ!」
見つけた梓の言葉に衝撃を受けフラフラと千紗達の元に戻る愛菜
「どうしたケバ子」
「何かあったの?」
「梓さんが...魚屋のおじさんを食べようとしてたの...」
「魚屋のおじさん?」
「お前は何を見てきたんだ」
「ううん!今のはきっと何かの聞き間違い!」
「そ、そうか...」
「それならいいけど...」
「あ。次は時田先輩に聞いてくる」
「うん」
「よくわからんが行ってこい」
聞き間違いだったの確認も含めて時田のとこへ向かう愛菜
「あぁそうなんだ。”浜崎の奥さん”が欲しい」
「ん”っ!」
さっきの梓のときと同じ衝撃を受けまたもフラフラと戻る愛菜
「愛菜?」
「時田先輩が...」
「あの人がどうした?」
「人妻に、手を出そうと...」
「ちょっと待って...」
「お前はさっきから何を聞いてる...」
「何かの聞き間違えじゃないの?」
「でもこの耳ではっきりと!」
「だとしたら幻聴だな」
「じゃあみんなで行って確認しようよ!」
「別にいいけど」
「やれやれ」
「あ」
愛菜の言葉は受け入れられず今度は3人同時に確認しようとしている前にはちょうど寿が買い物をしようとしていた
「らっしゃい!何をお探しで」
「普通の買い物だね」
「何もおかしなところはないな」
「そうかな...」
「やっぱり愛菜の聞き間違いじゃない?」
「そもそもこんなところで妙なことはしないと思うが」
「確かに...」
「ウチはなんでも揃ってるよ。なんでも言ってくれ」
「それじゃあ、”肉付きのいい高校生”を」
「「アウトォォォォォォ!!!!」」
「こんなところで何を買う気だ!」
「だから言ったでしょ!」
「ここは通報するべきか...」
「その前に事情を聞いた方が...」
「待って2人とも。それ多分勘違いだと思う」
「え?」
「それ全部魚の名前だから」
「そうなの!?」
「すごいネーミングセンスだな!」
「じゃあさっきの梓さんも時田先輩も」
「魚を買おうとしていたと」
「うん」
「真剣に考えたらそんなの買うわけないよね」
「まぁ俺は最初からわかっていたかがな...」
「思いっきり一緒に驚いてたくせに」
「すいません」
「はいらっしゃい」
先程寿が買い物したところを今度は伊織が立ち寄っている
「成人が一発で失神するような毒魚を1匹...」
「ねぇよんなもん」
あるかそんなもん!冷やかしか!って昭和のドラマみたいだな
「響何食べたい?」
「にぃにが作るやつならなんでも食べたいゾ!」
「そっか。ならグルクンの唐揚げとフーチャンプルーにするか?」
「おぉ!楽しみだゾ!」
各々買い出しも終了して拓海の家に戻ってきた。帰りの車の中で梓と千紗は先程の件で拓海に謝り拓海もそれを了承。しかしその後に拓海は続けて言った『俺も悪かった』の一言に言い出しっぺの千紗は責任を感じモヤモヤが残ることとなった
「人の買い物を盗み見とは趣味が悪い!」
「毒魚を買おうとしたやつが何を言うか!」
「絶対また変なこと考えてたんでしょ!」
(失敗か...このままだと...死ぬ程の恥辱を受けることに!)
毒魚で全員が失神した中でこっそり練習する伊織の作戦は失敗し、このまま進んで伊織だ不合格になったときの耕平と愛菜の顔を想像して眼に血を走らせる
「拓海、さっきはごめん...」
「ん?あぁあれか。まぁオレも完全に無実とは言えんからなぁ。お互い様ってことで今回はなしにしよ」
「え?拓海がそれでいいなら」
「いいもなにも原因はオレなわけだから」
「でも...」
「千紗ってホント変なとこ拘るよな。んじゃ千紗のとびっきりの料理期待してる」
「わかった」
「ほら2人とも。イチャコラしてないで2人も引いた引いた」
「ん?」
「なんですかこれ?」
「料理の順番を決めるくじだよ」
「キッチンに全員は入れないからな」
「2人ずつで順番にやろうってわけだ」
「そういうこと」
「1本引けばいいんですね」
(2人一緒で調理...はっ!)
ここで伊織が何かを閃く
(ということはここで耕平とケバ子をセットにすれば、奴らが調理している間は練習ができる!)
「私は4番」
「私2番」
「千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします千紗と一緒でお願いします」
「?.........い”っ!」
みなさんには聴こえるだろうか?伊織の呪文のような気色悪い詠唱が...
「い、伊織...?」
「神様!どうか!よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
伊織が気合を入れて引いたくじは2番。神様、こんなやつ見放すべきでは!?
「千紗やったぞ!」
「あ”ん”?」
伊織の喜びに比例して拓海の機嫌がどんどん悪くなる
「愛菜、気持ち悪いから変わって...」
「なぜそんなことを言うんだ千紗!俺とお前のペアで楽しく料理を作ろうぜ!」
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ん”...?」
「確かに気持ち悪いな...」
「拓海落ち着いて!」
「調理中はずっと包丁握ってる...」
「伊織、やりすぎだよ」
「な、何がですか...?」
(まさか、梓さん気づいて...!)
「何って、耕平の嫉妬心を煽ろうとしてるんでしょ?♪」
なんとも的外れで、しかし伊織的にはその解釈で助かったのか否かわからない。ともあれくじで決まった順番はこうだ
1番手:時田&寿
2番手:千紗&伊織
3番手:梓&奈々華
4番手:愛菜&耕平
5番手:拓海&響(実質拓海1人の料理。響は味見担当)
料理中は各々酒を飲んだりテレビを見たりと寛いでいる
「さて俺達の料理の番だが...なぜそんなに距離を取る...?」
先程の発言で包丁片手に伊織から距離を取る千紗の図
(しかし練習するにしても独力では難しいな。こいつには事情を話して手伝ってもらうべきか)
「なぁ千紗」
「っ!なに...?」
突然声をかけられた千紗は瞬時に距離を取った
「実は...」
警戒する千紗に事情を話す伊織
「...というわけなんだ」
「そういうことだったんだ」
「だから千紗練習に付き合ってくれないか?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「付き合ってくれないか?」
「っ!!!」
「...」
タイミング悪く飲み物を取りにきた愛菜と拓海がまたも運悪く伊織のその言葉だけ耳にしてしまった
(どどどどういうこと!?なんで伊織が千紗にどうして!?)
「( ゚д゚)」
「拓海気を確かに!」
(拓海から正気が抜けてる...と、とにかく私だけでも落ち着こう。さっきみたいにまた誤解かもしれないし)
「本気なの?」
「あぁ本気だ。俺も好きになってるからな」
(誤解じゃなーい!!!!)
「(;ω;)」
(拓海が真顔で大泣きしてるー!!!)
「そっか。嬉しい」
(えーーーー!!!!!!?)
愛菜は未だ状況が理解できず飲み物を取る余裕などなくフラフラと耕平の元に戻っていった。そして拓海はショックのあまり家を飛び出しそのままの格好で海に飛び込みざっと1kmほど全速力で泳いでいた
その後愛菜同様(内容は全く別物だが)壮大な勘違いをして伊織、千紗、愛菜、耕平の4人の間には異様な雰囲気が立ち込めていた。拓海はというと料理をちょっぱやで作り終えると自室で寝込んでしまったとか
そしてその夜、千紗は同室の愛菜が眠ったことを確認して部屋を出た。しかし詰めが甘くドアが閉まった音で愛菜の目が覚めてしまった
「千紗...?」
愛菜は目を擦るながら千紗の後を追うように部屋を出た
「悪いな付き合わせちゃって」
(あれ、伊織の声...はっ!)
こんな夜更けにこっそりと部屋を出た千紗。そして聴こえる伊織の声。愛菜の脳は一気に動き出し眠気など飛んで行った
(まさか人目を忍んで2人で!)
「濡れちゃう」
「服は脱いだ方が...」
「わかった、脱ぐ」
「よし、じゃあ」
文字だけ見るとなんてムフフンな会話だろう。おそらく愛菜も同じようなことを考えたに違いない
「何やって...!」
千紗と伊織の関係。拓海のこと。野外でなんて。愛菜は注意すべく2人の前に姿を現わす。がその光景は愛菜が思ったことの斜め上を行っていた
「本当に何やってんのー!!!!?」
説明しよう!愛菜が見たものはこんなところにプール。そしてシュノーケルをつけて潜っている伊織を千紗が足で踏んづけている場面であった
「ケバ子!貴様ここで何を!」
「それはこっちのセリフ!様子が変だと思ったけど行動まで変なんて!」
「これはその...プールに財布を落としてだな...」
「嘘ばっかり!伊織、正直に言って...昨日から隠してることあるんでしょ...」
「...仕方ない。正直に話すか。ケバ子...」
「はい...」
「実はこれダイビングの練習なんだ」
「どうして正直に言ってくれないの!」
「正直に言ったんだが!」
「だって明らかに上級者向けの変なことしてたじゃない!」
「いや、むしろ初級者向けなんだ」
「愛菜。これ本当にダイビングの練習だから」
「え、そうなの?」
「なぜ千紗のことは信じる...」
落ち着きを取り戻りた愛菜に千紗と伊織から事の発端を説明される
「ってなわけでマスククリアの練習をな」
「そうだったんだ。それなら最初からそう言ってくれたら...」
「お前らに笑われるのは癪だからな」
「笑わないよ!むしろ言ってくれたら手伝うのに」
「マジか!」
「助かるかも」
「で、何をしたらいいの?」
してマスククリアの練習を再開した。今度は千紗と愛菜2人がかりで踏んづけられながら
そして何度か繰り返したところで伊織は千紗と愛菜を切り上げさせ1人の練習となった。1人での練習はまぁ途中警察が来て事情聴取されたが問題なく終了した。しかしなぜここにプールがあるのかは誰にもわからず、誰も気にしていなかった...
次の日、伊織は盛大に風邪をひいた
「拓海ー!ネギちょうだーい!」
「...」
本日耕平と愛菜はライセンス講習の続き。時田や千紗達は耕平達の付き添い兼奈々華の手伝い。そして今元気に拓海の部屋に飛び込んできた梓は伊織の看病に留守番を立候補した。いや、看病なら伊織のとこにいなさいよ
「ありゃま、どうしたの電気もつけないで。カーテンも閉めっきりだし。まったくほら起きなー」
朝だというのに拓海の部屋は暗いままだった。梓は電気をつけカーテンを開けて布団に包まっている拓海を起こすべく布団をひっぺがした
「...」
「もう本当にどうしたの」
「...」
「なにかあった?」
「...」
梓が何度声をかけても拓海は無言のまま。顔さえ梓の方に向けなかった。その背中からはほっといてくれとでも言われてる感じに見舞われた
「ちーちゃんと何かあった?」
「...」
「はぁ...隣お邪魔するよ?」
拓海がこれほどになるなんて千紗との間に何かあったとしか考えられない梓。しかし千紗の方は朝特に変わった様子はなかった。となれば千紗の知らないところで拓海がなんらかのダメージを受けたか、はたまた拓海のただの勘違いか。と考察はしてみたものの確信を得られない梓はとりあえず拓海の傍に横になった
「黙ってちゃわかんないよ」
「ほっといてくれていいです」
「そういうわけにいかないよ」
「梓さんには関係ないことです」
「別に関係からって聞いちゃダメってわけでもないでしょ?」
「...」
拓海は再び口を紡いでしまった。そんな拓海を梓は拓海の後頭部が胸に埋まるように後ろから優しく抱きしめる
「ねぇ拓海。私とエッチしよっか」
・・・・・は?
「は?」
「体動かせば少しは紛れるってもんでしょ?」
このタイミングでなんてこと言ってるんだあなたはーーーー!!!!!
「あなたはバカですか?」
「なによお姉さんに向かって」
「バカな人にバカと言ってるだけです。しかもそんな理由で」
「む、私だって誰でもいいってわけじゃないよ〜」
「ならなおさらなんで」
「そんなの好きだからに決まってるじゃん」
「...」
「ほら略奪愛ってやつ?」
「正気ですか...」
「こんなに他人を好きになったことなかったからね〜。で、どうする?」
「遠慮しておきます」
「あらそれは残念。でもちょっとだけいつも通りに戻ったかな?」
「まぁ...」
「それならよかったかな」
「...ありがとうございました」
「ふふん。たまにはお姉さんもやるってことさ」
「そうですね」
「てなわけでお礼にエッt...」
「しません」
「ならキスだけでも〜」
「しませんて」
「むぅ〜」
梓っぽいと言えば梓っぽいのでしょうか。地味に告白してるし
「まぁこれまでのは一旦保留ってことで」
「さっきから断ってんですが」
「ちーちゃんと何があったか知らないけどさ、一回話してみたらいいんじゃない?」
「...そうします」
「うんうん」
そうして梓はネギ日本と適当なフルーツ缶をもらって伊織の元に戻ったとさ