ぐらんぶるろまんす   作:てこの原理こそ最強

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この話で完結となります。今まで読んでいただいた方々、不定期な投稿だったにも関わらずありがとうございました!


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伊織の風邪は無事に完治し、耕平と愛菜は見事ライセンスを取得した。そして今日は待ちに待った宮古島

 

「ん〜到着っと」

 

「ここが宮古島か〜」

 

「結構遠かったね」

 

「圏内で飛行機に乗るなんて新鮮よね」

 

「本島より台湾の方が近いらしいな」

 

「そりゃ遠いわけだ」

 

伊織と耕平にしてはまともな会話である。その手でビールの蓋を開けていなければだが

 

「すみません...」

 

「つい無意識で...」

 

案の定愛菜に平手で千紗に至ってはグーで制裁を食らわされていた

 

「これから潜るのにお酒はダメよ!」

 

「2人もすっからPaBに染まったね」

 

「おーいお前らー」

 

「無事着いたみたいだな」

 

そこへ既に宮古島入りしていたサークルメンバーが来るまで迎えに来ていた

 

「わざわざ来てもらってすいません」

 

「いいってことよ」

 

「俺達は昨日の晩に着いてたからな」

 

「随分早いんですね」

 

「朝から潜るんだ。前日入りしとかないと」

 

「ま、その後の”オトーリ”の方が楽しみだが」

 

「「オトーリ?」」

 

「宮古式の飲み方だそうだ」

 

「聞いてないのか?今回の合宿の目的の8割はオトーリなんだぞ」

 

「「あっ、あれか!」」

 

伊織と耕平は揃って合宿前に時田と寿が目にしていた宮古島の雑誌を思い出した

 

目的地に着いた一行は荷物を降ろし街の中を歩いていた

 

「そういえばネットで知ったんだがなんでも宮古人お断りの店があるんだとか」

 

「それってオトーリってやつが凄すぎてですか?」

 

「さすがにそれは都市伝説だろ」

 

「そんなひでぇ飲み方するやつがいるもんか」

 

「「ですよね〜」」

 

確かにどんな飲み方をすれば出禁になるのか。そんなやつは今の時代いないであろう。そう考えたのも束の間伊織と耕平の目の前に”PaB関係者お断り”の看板を出した店があった

 

「「あんたら昨夜なにやったんですか!」」

 

「「...」」

 

2人の問いかけに知らんぷりをする先輩達。これは何かやったな

 

「ま、それはそれとしてだ」

 

「いよいよダイバーデビューだな」

 

「あぁそれなんですが...」

 

「こいつ昨日熱出して寝込みまして」

 

「マジか」

 

「じゃあライセンス取れなかったのか?」

 

「お恥ずかしい...ちょっと楽しみにしすぎまして」

 

「なんだそりゃ」

 

「遠足前に熱出す子供か」

 

「なので俺は一緒に潜れないんですよ」

 

「そうか」

 

「それは残念だな」

 

先輩達に事情を説明する伊織を心配そうに見つめる千紗。そして伊織のことを見ている千紗を見ている拓海

 

その後荷物を置いてすぐに指定の船に乗船する一行。初めての感覚の伊織と愛菜ははしゃいでいる

 

「おー!すっげぇスピード!」

 

「風がすっごく気持ちいよね!」

 

「ん、なんだ?」

 

「っ!顔近いから!」

 

風と波の音で愛菜の声がよく聞き取れなかった伊織が顔を近づけると愛菜は照れてそれを押し返す

 

「ふん、初心者がはしゃぎおって」

 

「あ”ん”?てめぇのは聞こえてっぞ!てめぇもまだ2回目だろうが!」

 

「なんなら初心者くんに船上のマナーでも教えてやろうか」

 

「もうやめなさい!他にもお客さんいるんだから!」

 

まったく。この2人がいると船上でもケンカの戦場だな。海だけに心も洗浄しないといけないな。ふふふ...今のは座布団3枚はもらえたな

 

「それではみなさーん。ミーティング始めますよー」

 

『はーい』『うーっす』

 

今回のダイビング行程は奈々華の一任となった。計画はルートなどは拓海も手伝ったが耕平達のライセンス講習を見ていたのはほぼ奈々華だったので今回も奈々華がいいだろうという意見の元の決定であった

 

「という感じのポイントです。震度は17m、潜水時間は40分を予定しています。それではみなさん、準備をお願いします!」

 

『うぃーっす』

 

「はいはい!更衣室で着替えましょうね!」

 

奈々華からの説明が終わりその場で脱ぎ出す先輩達を更衣室へ促す愛菜。もうその位置付けが鉄板になってきな

 

「お前はどうするんだ?」

 

「何がだ?」

 

「震度17mだとライセンスがないと...」

 

「それなら大丈夫だ。1、2本目は体験ダイビングに混ぜてもらうことになった」

 

「3本目はどうするんだ?」

 

「みんな3本潜る予定みたいだけど」

 

「俺は船の上で待機だな」

 

「私もそっちに混ぜてもらおうかな...」

 

「あ?なんでだ?」

 

「だって上手く潜れるか自信ないし...」

 

「何をバカなことを先輩達もフォローしてくれるしこいつもいるだろ?」

 

そう言って拓海を千紗の腕を掴んで引き寄せる。その光景を離れた場所から拓海が悲しそうな目で見ていた

 

「こんな綺麗な海なんだから行けるところまで行ってこいよ」

 

「うん...」

 

『体験ダイビングの方!集まってください!』

 

「おっと、んじゃそっちはそっちで楽しんでこいよ!」

 

そして耕平と愛菜は奈々華先導千紗補助の元ライセンス所得後初のダイビングへ乗り出した

 

ー1本目終了ー

 

1本目を終えたPaBメンバーは各々感想を言い合っていた

 

「ウミガメが近くまで来てくれたな」

 

「すごかったですよね!」

 

「親子連れとはついてたね」

 

「二次元のような素晴らしさだった!」

 

「伊織のところからは見えなかったか?」

 

「残念ながら」

 

「写真なら撮ったぞ〜、ほれこんな感じだ」

 

「おぉ!できれば近くで見たかったですね」

 

「なーにライセンスを取ればまたチャンスはあるさ」

 

「次は頑張れよ?後輩」

 

「お前に言われると異様に腹がたつな」

 

その後一同2本目の時間になるまで円になって盛り上がっていた

 

「お茶取ってきます」

 

「...」

 

席を立った伊織の背中を心配そうに見つめる千紗。そしてまたもその光景をボンベに空気を充填させながら見つめる拓海。千紗が伊織をそのような目で見る度に拓海の不安は募るばかりであった

 

そして2本目。奈々華に連れられて千紗、耕平、愛菜の3人はとあるポイントに辿り着いた。そこから海面を見上げると光の反射で幻想的な光景が広がっていた

 

(ここ...水族館に似てる)

 

千紗がたまに手伝う水族館のこと。先程の伊織の表情。そして水族館の後に言っていた伊織の言葉。千紗は伊織も見れないかと体験ダイビングの方に目を向ける

 

(あそこからじゃ遠いよね...)

 

ー2本目終了ー

 

2本目を終え、PaBメンバーは昼食を取っていた

 

「すごい幻想的でした...」

 

「あれはカメラが欲しくなりますね」

 

「光の差し方がいい時間帯だったからな」

 

「なかなか見られるもんじゃないぞ」

 

「あれ、伊織は?」

 

「デッキで休むとか言ってたな」

 

「ふ〜んそっか。今日の伊織は随分おとなしいね」

 

「あ確かに」

 

「具合でも悪いのかもしれんな」

 

確かに今日の伊織は静かだ。風邪の振り返し?みんなと一緒に泳げないから?答えは本人にしかわからない

 

そして伊織となんと千紗も3本目は船で待機となった。なんでも2本目のとき耳をやってしまったらしい。ほとんどの人がそれを信じ3本目に向かっていったが拓海だけは千紗が伊織が心配で残ったのだと思っていた。そんな拓海は他のメンバーとは遅れて、千紗が伊織の元に向かっていくのを見てから潜っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸に戻ってきた一行は夜まで各々自由に過ごした。疲れたので一眠りする者。街へ観光に出る者。今晩の店の確認に赴く者。そして時は過ぎ夜、大広間に全メンバーが集った

 

「みんな聞いてくれ。宮古島に来た理由の8割を占めるオトーリ体験だが」

 

「予定していた店がなぜか臨時休業になったため断念することになった」

 

『あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

「オトーリってエンドレス飲みのことだよね?」

 

「あぁ」

 

「終わりのない世界戦から逃れられたか」

 

「いや〜これで平和な宮古島の夜が...」

 

「だがせっかく宮古島まで来たんだ!」

 

「せめて俺達なりのオトーリをやってみようじゃないか!」

 

『いぇーーーーーーい!!!!!!』

 

全速力でその場を逃げる耕平と伊織!しかし先輩の1人がぶち撒けた酒で足が滑りその間に違う先輩に行く手を阻まれる!

 

「おいおいそんなにはしゃぐなよ1年坊。さぁ始めようか」

 

そこは既に酒を愛する魔王達の館。かくして抗戦虚しく捕まった2人の運命やいかに!

 

 

 

 

 

 

「俺達なりのオトーリってなんですか!」

 

「まぁそう焦るな」

 

「今から説明してやる」

 

「今回は同じ甕の酒を飲もうと思う」

 

「せっかくの合宿だからな」

 

「同じ釜の飯みたいなもんですね」

 

「ところがだ...」

 

「全員の好みが一致する酒ってのは意外と難しい」

 

「それはそうですね」

 

「だがここでみんなの感想が異なるのは寂しいだろ?」

 

「それはそうかもしれませんね」

 

「合宿の思い出の酒ですし」

 

「だから俺達は考えたんだ」

 

「「ならば!公平になるよう全員きちぃ酒にすればいいと!」」

 

「「公平の取り方おかしくないですか!?」」

 

「で、今からこの甕を回して好きな酒を注いでもらうわけだが」

 

「そのとき何でもいいから一言口上を述べてくれ」

 

「口上?」

 

「オトーリは何か一言述べてやるものらしい」

 

「美しい島と海に捧げます、とかな」

 

「なるほど」

 

「まずは俺達が少し真面目に述べさせてもらおう」

 

酒が関わっている場なのに時田と寿が真面目な話とは些か違和感があるがまぁ聞いてください

 

「出身地がバラバラの俺達がこうして同じ時に同じ場所に集い」

 

「同じ船に乗り同じ甕の酒を飲めることを嬉しく思う」

 

「この場にいる全員が同好の士であり仲間だ」

 

「いずれそれぞれの道が別れようとも同じ時間を過ごしたことは変わらない」

 

「どうかみなの人生における青春の思い出として!」

 

「今日という日を忘れないでほしい!」

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!』

 

いいこと言った。言った、のだが...その手にはスピリタス(アルコール度数96%)が...それをトボトボと甕の中へ

 

「アホかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「何が青春の思い出だ!」

 

「思い出以前に記憶すら残す気ないだろ!」

 

「俺!お前らと過ごしたこと一生忘れないからな!」

 

その手にはまたもスピリタス。それを甕の中へ

 

「ならなぜそれ注ぐ!」

 

「本当に覚えておく気があるのか!」

 

「ほれ、東」

 

「お、おう」

 

「どうした東?」

 

「いや俺、化学の勉強ばっかやってきたからこういうとき気の利いたことできなくってさ。だからせめて、俺のできることで...」

 

そう言ってポケットから取り出したのは消毒用エチルアルコール(アルコール度数60%)。というか酒ですらねぇ!しかもそんなでっかいものポッケからってあなたのポケットは四次元に繋がってるんですか!?

 

「「入れるなー!!!」」

 

「はっはっは、冗談だ」

 

「こんなもん混ぜたら度数下がっちまうぜ」

 

「消毒用アルコールよりキツいだと!?」

 

「これ絶対飲み物じゃねぇ!こんなもんで乾杯したら命の保証はない!」

 

「斯くなる上は!」

 

(何食わぬ顔で水でも入れて)

 

(度数を安全圏まで下げる!)

 

「ほーらお前らも」

 

「はい!」

 

「わかりました!」

 

自分達の身を守るため水を注ごうとした瞬間伊織の目を強烈な刺激が襲った

 

「目ガ!目ガァ!」

 

「グハッ!」

 

その勢いで伊織の肘が先輩の顔面に直撃してしまった

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

「おいおい何やってんだ」

 

「すみません」

 

「なーに気にするな」

 

「怒らないんですか?」

 

「このくらいでキレるガキはPaBにはいねぇよ」

 

「先輩...」

 

「じゃあ、俺のも入れますね」

 

なんて理想的な先輩像なのか。伊織と耕平も感動したところで再度水を注ごうとすると先程とは打って変わって鬼の形相の先輩に止められる

 

「おいこら伊織!」

 

「ふざけた真似してんじゃねぇぞ!」

 

「肘打ちはOKなのに...」

 

「キレるポイントおかしいだろ...」

 

「それならせめて...」

 

「これでなんとか...」

 

「う〜む」

 

「まぁギリギリ認めよう」

 

「待て待てお前ら」

 

「その前に一言だろ?」

 

「あぁそういえば」

 

時田と寿に指摘されソワソワし出す耕平

 

「どうした耕平」

 

「口上が思いつかん」

 

「なんだ、こういうの苦手なのか」

 

「どうしたらいいんだ...」

 

「改めて自己紹介してみたらどうだ?」

 

「なるほど!じゃあ名前と趣味と座右の銘辺りでも言っておくか」

 

「それで十分だろ」

 

「じゃあ1年ども」

 

「口上を述べてくれ」

 

「はい」

 

「名前趣味座右の銘名前趣味座右の銘...」

 

さて、どんなおもしろ...心に響く口上が聞けるのか

 

「えぇ、俺はこのサークルのお陰でずっと嫌いだった「今村耕平!」の魅力がわかりました。最初は流されて始めた「アニメとゲーム!」をいまではいいものだと思っています。これからは一層努力して自分から「耕平お兄ちゃん結婚して!」と言えるよう頑張りたいと...ざっけんなゴラァ!」

 

「てんめ!何しやがる!」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

「なかなかいいスピーチだったな」

 

「まさか2人の中が縮んでいく経緯を語るとは」

 

なぜそうなる。それになぜ梓は涙を流し奈々華は拍手をしているのか

 

「さて、全員酒はあるな!」

 

「ここまでたっぷり注がんでも...」

 

「見ろ北原。正しいオトーリの作法が載ってるぞ」

 

「なんだと!ってことはこれを見せれば」

 

「この飲み方から解放される」

 

※オトーリ(御通り)は

 

1、参加者で「親」となるものが立って口上を述べた後、同じ杯に酒を注ぎなおしてとなりの参加者に渡す。注がれたものはその杯を飲み干し、杯を「黙って」親に返す。

2、「親」は、返された杯に、再度酒を注ぎ、先程飲み干した人の次の人に杯を渡す。杯を渡された人は、同じように一口で杯を干し黙って親に杯を返す。

3、参加者に杯が一巡するまで上記を繰り返し「親」の一人手前までオトーリが回ると、「親」の手前の人は杯を干した後、その杯へ酒を満たし「親」へ返杯する。

4、「親」はその返杯を飲み干した後、自分のオトーリへ最後まで付き合ってくれた礼を述べ、最初の「口上」で述べ足りなかったことがあればそれにも言及し、〆の挨拶を行いって次の「親」を指名する。

5、以上が最初の「親」ひとり分のサイクルである。

 

上記の「親」から指名された人が新しい「親」となり、同じように口上を述べたあと、上記の手順を延々と繰り返す。

『Wikipediaより』

 

・・・伊織前期説明中・・・

 

「なるほど」

 

「ということは...最低12回は乾杯する必要があるな」

 

「となると酒が足らんな」

 

「この辺のも全部入れるか」

 

耕平、伊織による高速往復ビンタ炸裂

 

ほうはふほはよほうはいは(こうなるとは予想外だ)

 

「まぁいい!こっちは強い酒に飲み慣れている!」

 

「確かに!それよりも大事なのは!」

 

「酒を飲んでも飲まれないという強い精神力!」

 

2人にそんな精神力あるわけないではないか

 

「「ウェーーーーイ!!!」」

 

「いいぞお前らー!」

 

「それでこそ俺達の後輩だ!」

 

ほーらなかった

 

「あっと言う間に見慣れた光景に」

 

「はぁ」

 

「みんな楽しそうね」

 

「落ち着くね」

 

そんな男どもを見て女性陣は各々違う感想を述べるのであった

 

「ん?」

 

「どした?」

 

「酒が切れた」

 

「もうですか!」

 

「そりゃあんな飲み方してたらね」

 

足りなくなった酒の買い出しは酒を飲んでおらず車の運転ができる愛菜となった。それに加え愛菜の指名で伊織が手伝いで同行することとなった

 

買い出しは無事終わって戻ってきた。まぁ途中パン1で助手席に座っていた伊織のせいで警官に止められはしたが安全に帰還した。

 

「本当信じられない!」

 

「ついうっかりだったんだ。そう怒るなよ」

 

「どうした?」

 

「こいつこの格好で車から降りたんですよ!」

 

「あまりに暖かかったんで」

 

「道理だな」

 

「リゾート地ならではの開放感ってやつか」

 

「よくあることだ」

 

「どうして全員伊織に賛同するの!?」

 

「だがケバ子、よく考えてみてくれ」

 

「なによ?」

 

「南の島、満点の星、男と2人でドライブ。これこそお前の言う青春じゃないか」

 

「相手が半裸の変態じゃなければね!」

 

「そうか、すまん」

 

「わかってもらえた?」

 

「だがいくら俺でも、全裸というのは...」

 

「脱ぎ方が足りないって意味じゃないから!そもそも飲むときも脱ぐ必要ないでしょ!」

 

『.......』

 

「何言ってるのかわからないって顔しない!!!」

 

「まぁまぁ落ち着きなよ」

 

「ったく!」

 

男達のこの考えを改めない限り愛菜の青春は訪れないだろう。まぁ青春なんて御伽噺だけどな!

 

「ん?拓海はどうした」

 

「そういえばさっきから見かけんな」

 

「あいつ乾杯のときからいなくなかったか?」

 

「口上のときもいなかったな」

 

ようやくと言ったところか、メンバーは拓海がその場にいないことに気づいた

 

「ねぇちーちゃん」

 

「はい?」

 

「昨日、拓海となんかあった?」

 

「?いえ、特にこれと言って」

 

「そっか。昨日拓海酷く落ち込んでてさ。ちーちゃんと何かあったのかなーって思って」

 

「拓海が」

 

「うん。今日拓海とは話した?」

 

「そりゃ当然...」

 

そこで千紗は口は止まり今日1日のことを振り返る

 

(あれ、そういえば今日拓海と話したっけ...というか拓海のこと見てた時間あった...?)

 

千紗は昼間のことを思い出し目を見開く。そう、今日千紗は一言も拓海と会話をしていないのだ。千紗は今日1日ずっと拓海ではなく伊織を気にしていた

 

「千紗ちゃん?」

 

「...どうしようお姉ちゃん」

 

「どうしたの!?」

 

「今日、拓海と話してない...」

 

千紗の表情で心配する奈々華の腕を掴んで今にも泣きそうになっている千紗

 

「あー!!!」

 

「ど、どうしたの愛菜...」

 

「忘れてた!千紗!」

 

「な、なに...」

 

()()()()()()、拓海も聞いてたんだった!」

 

「え...」

 

愛菜の言葉に千紗の顔は一気に青ざめた

 

「どういうことだ?」

 

「実は...」

 

愛菜は一昨日キッチンでの伊織と千紗の聞き間違えの件について全員に話した

 

「そういうことね〜だから拓海」

 

「私はその夜に誤解だって気づいたんですけど、拓海は...」

 

「...」

 

「千紗ちゃん、今すぐ行ってあげて」

 

「でも、どこにいるかもわかんないし...それにもう拓海は...」

 

「そんなことわかんないでしょ!」

 

「っ!お姉ちゃん...」

 

「とにかく行ってちゃんと話して誤解を解いてくるの!多分浜辺にいると思うから!」

 

「なんで...」

 

「昔かなちゃんから聞いたことあるの。拓海くんは何かあると1人で海を見るって」

 

「...わかった」

 

千紗は急いで外へ出て駆け出した。家の前の浜辺にはいない。暗い中浜辺沿いを走って懸命に探す。すると400mほど言ったところにボートに乗るときに使われる快適な岸があった。そこに1人座っているのが見えた。千紗は駆け寄り声をかける

 

「拓海...?」

 

「ん?あれ千紗」

 

それは紛れも無い拓海であった。千紗はなんだか数年ぶりに会った感覚に見舞われすぐにでも泣きそうなのをぐっと堪える

 

「拓海...えっと、この前のは...あれはそうじゃなくて...」

 

「あぁ梓さんから聞いたのか。言わなくていいよ。全部わかったし」

 

「っ!」

 

「まぁ気づいたのは途中からだけどな。最初は驚いたけど」

 

「ちがっ...」

 

「いやーでもあんなに泣いたのは久しぶりだ。本当に枕が濡れるまで泣けるもんだな」

 

「話を聞いて!」

 

「おわっ!おととととと!!!!んぐっ!ふぅ...千紗、危ないでしょうが」

 

「あ、ごめん...」

 

いきなりの背後からの千紗の突撃で危うく海にダイブするところだった拓海は間一髪助かった

 

「違うの拓海!あれは誤解で!伊織のダイビングの練習に付き合ってたって意味で!だからそのえっと...!」

 

「ん?知ってるぞ?」

 

「え...」

 

え・・・?

 

「俺の千紗への愛舐めんなよ?」

 

「〜っ!」

 

「まぁでも最初は信じちゃったけどな。でも仕方ないだろ?伊織が”付き合ってくれ”って言ったのに千紗は”嬉しい”って返すんだから。あ、また泣けてきた...」

 

「...」

 

「でも今日1日千紗と伊織の行動見ててわかったよ。千紗は伊織の心配してただけなんだなって」

 

「...」

 

「めっちゃ嫉妬してたけどな。船に2人で残ったときなんか特に」

 

「...」

 

「でも千紗は優しいから。それも仕方ないって思うことにした。伊織が千紗の腕掴んだのはムカついたから後で一発殴る」

 

「ふふっ」

 

「ちくしょうめ。せっかくのオレと千紗のアバンチュールがあいつのせいでズタボロだ。こんなことなら奈々華さんに任せずオレがみっちり叩き込んどくべきだったかな〜」

 

「それは辛そう」

 

「ははっちげぇねぇ。さて、まぁざっとこんなところだ。んで千紗」

 

「ん?」

 

「ここまで来てくれたってことはそう捉えていいんかな」

 

「え?」

 

「こんな女々しいオレだけど、まだお前の1番はオレでいいのか?」

 

「...拓海じゃなきゃイヤ。それにずっとじゃないともっとイヤだよ」

 

「〜っ!こんのカワイイな千紗は!」

 

「ちょっ!拓海!」

 

拓海は千紗を抱きしめ盛大に頭を撫で回す

 

「ふぅ〜」

 

「もう、髪ぐちゃぐちゃ」

 

「後で梳いてやんよ」

 

「当然」

 

「はいよお嬢様」

 

拓海と千紗は頭上に広がる夜空を見上げる。そして千紗はそっと拓海の肩にもたれかかった

 

「ねぇ拓海」

 

「ん?」

 

「また来ようね」

 

「それはまたサークルでか?それとも2人でか?」

 

「う〜ん。どっちも」

 

「左様で」

 

「うん」

 

「そろそろ戻るか」

 

「うん。でも...」

 

「ん?」

 

「今回拓海との思い出あまり作れなかったから...その...」

 

「ん?」

 

「最後に...拓海との思い出......欲しい........」

 

「ふむ。それに関してはこっちからお願いしたいね」

 

月明かりに照らされてキラキラと光る海を前に2人は今回の仲直りと最後の思い出、その他もろもろを含めて暑い口付けを交わした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だぁー!!!最後までなんと羨ましい!ごちそうさまです!!!

 

最後に一言

 

末永くお幸せに爆発しろこの幸せもんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、サンキュー」

 

「あ、ありがと...」

 

 

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