伊織が10年ぶりに伊豆へ戻ってきた次の日、本日は伊織や千紗、それと拓海達伊豆大新入生へ初日のガイダンスが行われる。その朝、拓海は千紗と一緒に大学へ行くべくa.m.8:00に”Grand Blue”の前に千紗を迎えに来ていた
5分ぐらい経ったとき店のドアが開いて中から千紗とその姉の奈々華が出てきた
「じゃあ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
2人はまだ拓海の存在に気づいてないらしい。千紗が店の階段を下りたところで拓海に気がついた
「あれ、拓海?」
「(。・・)ノ」
千紗が拓海に気づいてそそくさと近づいてくるのに対して拓海は手を少しあげて応える
「なんで?もしかしてずっと待ってた?」
「((-ω-。)(。-ω-))」
千紗の質問に拓海は首を振るだけで返す
「それならいいけど、来るなら前もって言ってよ」
「(´^ω^`)」
「まぁいいけど。さっ、行こ」
どうやら事前に待ち合わせをしていたわけではないらしい。だけれども両人とも朝一番にお互いに会えるのは嬉しいわけで、2人は表情に出さないだけで心はルンルン気分で学校へ向うのであった。その光景を下唇を噛み締めながらものすごい表情で見ている奈々華の存在に気づかずに...
桜が綺麗に咲き乱れている大学内、校門近くにカメラを片手にしたたくさんの人の群れがあった。何か気になって中を覗くとパンイチ姿の時田や寿、そして伊織がいた
「はぁ...」
伊織の姿を見た千紗からため息が一つ
「(-ω-;)?」
「うん、あれがそう」
「('_':)」
「時田先輩や寿先輩と知り合いなのかは知らない」
「( ˙-˙)σ?」
「あんなのに声かけるなんて絶対にイヤ。もう行こ」
千紗は眉間にシワを寄せながら呆れているようだった。そしてもう関わりたくない感じを醸し出し拓海の手を引いて講堂へ向かった。その道中千紗の寄せられていたシワは段々となくなっていった。なぜかって?拓海と手を繋げたからに決まっている
(希望に満ちた新たな出会いと新たな生活は...入学と同時に灰色に染め上げられていた)
学内でパンイチで寝ていたと噂され、それだけでは留まらず服が見当たらなかった伊織はその格好のまま今の席についている。それも相まって伊織のマイナスイメージはどんどん増える一方であった
「ねぇねぇ、あの人ちょっとカッコよくない?」
そんな伊織の耳に女子の会話が入ってきた。伊織が目を向けた先には金髪で長髪、顔立ちも整っている男が座っていた
(確かに美系...えっ!?)
伊織はその顔立ちは美系と思いつつ目を下にやるとその着ている服に驚いた。それはアニメキャラクターがプリントされているものだった
彼は今村耕平(いまむらこうへい)。耕平も伊織に気がつきその容姿を確認して一つ鼻で笑った
((こいつとだけは関わるまい))
2人は同時に同じことを考えていた
「説明は以上です」
ガイダンスも終わりそれぞれがサークル見学やそのまま帰路につく中、伊織は講堂冗談に座っていた千紗に気がついた
「千紗、お前はサークル見学に...お、おい」
伊織が呼びかけるも千紗は逃げるように出口へ向かった。そして千紗と伊織の間にこれ以上千紗に近づかせんとでも言いたげな雰囲気を醸し出している拓海が割って入った
「そんな格好で話しかけないで」
「言われてみれば...帰って服を着たいが帰り道がわからん...」
「じゃ。私は帰るから。拓海行こ」
「よぉし、じゃあそうしよっか」
「...どうしてついてくるのよ」
「道案内してもらおうと思って」
「絶対にイヤ!」
「どうして?」
「言わなきゃわからないの!?」
「いやなんとなくわかる...」
「できればはっきりわかってほしいんだけど...じゃあ私は帰るから」
「お前が一緒に帰りたくないのはわかった。でも俺も困っているんだ。だからお前の服をくれないか...ウガッ!」
伊織がとんでもない発言した直後、拓海が伊織の顔面を殴り飛ばす
「な、なにをす...!」
ガンッ!
「...る......」
殴られた衝撃で壁に激突し地面にへたりこんだ伊織。拓海に抗議しようと頭をあげるがその頭のすぐ横の壁に足をドンとして伊織を見下す伊織。壁ドンの足バージョンとでも言おうか
「拓海!こんなやつほっといていいから!」
「...」
未だに伊織への怒りは治らないが千紗が言うので仕方なく手を、いや足を退く拓海
「イテテ...千紗!俺達いとこ同士だよな!?俺の困りごとはお前の困りごと!お前の服は俺の服!そういう助け合いが必要だろ!?」
ジャイ◯ンみたいなことを言っても何を言っているか理解ができないがとりあえずもう一発殴ろうと腕に力を込めるが千紗によって抑えられる
「拓海抑えて!ちょっとそういうのやめてよ!人前でいとことかそういうの...」
「...なら。服をくれなきゃ人前でいとこだって言いふらす」
「っ!...わかった......脱ぐ...脱ぐから......それだけは...家のことだけは、言いふらさないでください......」
「ちょ、ちょっと待て...それ側から見ると俺がすっごい...あぶしっ!!!」
「死ね...クズが...」
伊織の脅迫に涙を流した千紗。これを見てもう黙っていられなくなった拓海は伊織の腹に回し蹴りを食らわし、伊織は窓から落ちっていった。そしてすぐさま千紗を抱きしめる
「ごめん...」
「うんん...拓海はなにも悪くない」
好意を持っている相手の腕の中で安心した千紗は同じように拓海の背中に腕を回す。そして2人の空間だけピンク色に染まった。今ここがどこだか忘れて
「あぁ、君たち。学校の廊下でそういうのはやめなさい」
「「っ!」」
教師から声をかけられて今の状況を理解しサッと離れるがお互いに蒸気が出るくらい顔を真っ赤にするカップルであった
「俺が一体なにをしたっていうんだ...」
窓から落とされた伊織は運良く植木の上に落ちたため蹴られた箇所以外の損傷はなかった。運のいいやつめ...
「お前こんなところで一体なにをしているんだ?」
「うぉっ!ってなんだお前か。いろいろと事情があるんだ」
「事と次第によっては助けてやらんこともないが」
「お前実はいいやつだったんだな!」
「今村耕平だ。それでなにがあったんだ?」
「聞いてくれ!千紗のやつ俺を家へ連れて行かないばかりか服すら脱がないんだ」
「警備員さーん」
「うぉー!ワンモアチャンスプリーズ!!!」
「ストーカーに公然わいせつ、話を聞く余地なんてないだろ!」
「これには事情が!」
「ならその事情とやらを留置所で話すんだな!」
伊織はなんとか助けを請うべく耕平の服を掴むが耕平はそれを振りほどく
「じゃあな」
「待った!話はもういい。その代わり!着ているものを脱いでくれ!」
「変態!」
ストップザ公然わいせつ。相手が男だからってやっていいものではない。どんどんと罪を重ねていく伊織は耕平にも顔面を殴られ見捨てられてた。当然である
「あの野郎...とりあえず服をなんとかしないとな。他に知り合いといえば...」
「ダイビングサークル、”Peek a Boo(ピーカブー)”です」
伊織が最終的に訪れたのは時田や寿が参加をし、今日サークル紹介に参加している”Peek a Boo”のブースだった
「もう大丈夫だぞ?」
「ふぅ〜。助かりました」
「で?なんだ?」
「服を貸してもらえませんか?」
「変なことを言いだすやつだな。この後飲みに行くんだから二度手間だろ」
「俺が飲みに行って服まで脱ぐことを前提にするのやめてくれますか?」
「今日は新入生歓迎コンパだぞ」
「それはいいですが、まずは服をなんとか...」
「じゃあ誰か新人を1人でも引っ張ってきたら服を貸してやる」
「ノった!」
「ところで宛はあるのか?」
「えぇ、任せてください!」
なぜか自信満々な伊織は20分もしないうちに戻ってきた。耕平を連れて
「「ウェ〜ルカ〜ム!!!」」
「謀ったな貴様ー!!!」
連れてこられた耕平は即座に時田と寿に拘束された。約束通り伊織は服を貸し与えられた。下はパンツだが...
「はぁ〜、服は人類の叡智だなぁ」
「さぁ新歓コンパを始めるぞ!」
『うぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!』
「伊織、なに飲む?」
「ウーロン茶でお願いします」
「よしわかった」
ウォッカ:9、ウイスキー:1
「ほい、ウーロン茶」
「これは俺が知ってるウーロン茶じゃなぁい!」
「なにを言う、ウーロン茶の
「しかも色だけじゃなく」
ブシュー
「火もつくんだぞ」
「火がつく時点で大部分がアルコールだ!」
「なら水でどうだ?」
伊織は時田からもらったグラスに疑いを持ち、試しにライターの火を近づけてみた。すると驚いたことにグラスの中の水に火がついたではないか!
「どうして火がつくんですかね...?」
「可燃性なんだろ」
「色は水だから気にすんな」
「あなた方は色でしか飲み物を判別できないんですか!?」
火がつく時点でそれはもう飲んで楽しむための酒でもない気がするのは気のせいであろうか...
「じゃあ行くぞ。杯を乾すと書いて!」
「乾杯と読む!」
『かんぱーい!!!!』
杯を交わす男連中の熱のすごさに伊織は即刻その場を立ち去った
「千紗、来てたのか。それと...」
「...」
「ひっ!」
伊織が逃げた先には静かに缶チューハイに手をつけていた千紗と拓海がいた。伊織は先ほどのことと拓海の目つきの悪さに退いてしまう
「お父さんが行けって」
「...」
「あ、紹介まだだった。この人は我那覇拓海。んでこっちが北原伊織」
「よ、よろしく...」
「(〃..)) 」
「あぁ、拓海ってほとんど声発しないから早く慣れてね」
「そ、そうか...2人はこのサークルに入るのか?」
「不本意ながら。伊織は?」
「俺は御免被る」
「ふ〜ん。逃げ切れるの?」
「は?ひぃー!!!」
「「わーっしょいわーっしょい」」
伊織はいつの間にか背後にいた時田と寿に捕まり胴上げされながら連行されていった
「ほら伊織、ちゃんと乾杯しなきゃダメだろ」
「ちょっ!待って!」
「...バーカ」
「( ̄人 ̄)」
千紗は缶に口をつけながら連行されていく伊織を見ていた。その様子を横目で見ている拓海。拓海はこのとき少しばかり嫉妬していたのだ
「杯を干すと書いて!」
「干杯!」
「はぁ〜濃いな〜」
「水も飲まないと倒れるぞ?」
「あぁすいません」
伊織は寿特性ウーロン茶を飲み干すと水と言って渡されたものに口をつける。しかしがただの水ではないことが判明し試しにライターの火を近づけてみるとなんと火がついた
「ウォッカぁぁぁぁーーーー!!!!」
「いい飲みっぷりだな、北原伊織」
「耕平!復讐のつもりか」
「そんなつもりはない。ただな...1人ぐらい犠牲にして入会させないと逃げれそうになかったんでな」
「はぁ...わかった。お前を連れてきた責任もある。俺が酒を飲むからお前はウーロン茶でも飲んでいてくれ」
「ははっ、なんて美しい自己犠牲の精神なんだ」
耕平は伊織から受け取ったウーロン茶
「貴様ぁ!」
「なにも犠牲になるのが俺である必要はないよな!」
「この外道が!」
「こらこら、ケンカはいかんぞ!どうしてもモメるなら勝負にしろ」
「「勝負ー?」」
「あぁ。代々伝わるパブ式のにらめっこだ。ルールは簡単!口に含んだ酒を吹いたら負け。それだけだ!」
「わかりました」
最初は伊織が酒を口に含み耕平が変顔をするらしい
『にーらめっこしましょ、ピーカーブー!』
「ウィ〜」
「...」
どんな変顔をしても伊織は吹き出しそうになかった
「耕平。真面目な話をしてみるのも一つの手だぞ?」
「真面目な話?」
「あぁ。笑っちゃいけない状況では意外と真面目な話で笑っちまうもんだ」
「なるほど、なら俺の悩みでも話してみます。ここだけの話なんだが...実は俺、こう見えて昔はオタクだったんだ」
「プーーー!!!!」
「ふっふっふ、驚きを隠しきれなかったようだな」
「隠しきれてないのはお前のオタクの方だろ」
「伊織、粗相だな」
「ちきしょー!」
吹き出してしまった伊織はグラスの酒を一気に飲み干した(※危険なので良い子はマネしないように)
『にーらめっこしましょ、ピーカーブー!』
「おい伊織」
「おい、大丈夫か?」
伊織はフラフラ〜っと少し小太りな先輩の前に四つん這いになる
「バスケが、したいです...」
「プーーーー!!!!ゴホッ!ゴホッ!」
「よっしゃー!お前も飲んでもらうぞ!」
「また粗相だな、伊織」
吹き出してしまった耕平と先輩に粗相をした伊織は2人揃って一気に飲み干した(※お酒は節度を持って嗜む程度にしましょう)
「やってくれるじゃねぇか!」
「貴様もな!」
「こうなったらとことんまでやってやらー!」
「上等だ!白黒ハッキリさせてやる!」
その後もにらめっこは続き決着のつかないまま伊織と耕平は吐くまで飲み続けた(※こうなるからお酒には気を付けましょう)
「まったく」
「「水〜」」
「それにしても意外だった。お前らがそんなに飲みたがりだったとはな」
スピリタス:アルコール度数96%
「その酒ならお前達でも満足できるだろ」
「「水じゃねぇぇぇぇーーーー!!!!」」
「おい耕平...このままだと俺達2人揃って死んじまうぞ...」
「そうだな...さすがにこれ以上は...」
「俺にいい考えがある...」
「ほう...それは一体...」
「あいつも俺達と同じ新入生だ」
伊織が指差したのは千紗と楽しそうに静かに飲んでいる拓海だった
「なるほど...あいつを酔わせて俺達は入会を回避する作戦だな...?」
「その通りだ耕平...目つきは悪いがああいうやつに限って酒は弱い可能性が高い...実際にあいつはまだ缶チューハイ2本目だ...」
「本当か...?なら話は早い...」
「「あいつに酒を飲ませろ!」」
さっきまでケンカしていた2人が利害の一致を機に共闘するようだ
「よぉ。楽しくやってるか?」
「伊織。と...」
「俺は今村耕平。俺も新入生なんだ」
「私は古手川千紗。こっちは我那覇拓海」
「(〃..)) 」
千紗の紹介に合わせて拓海は軽く会釈をする
「実は新入生同士で飲みたくてな。少しつきあってくれないか?」
「おう!ナイスアイディアだ耕平!」
「「...」」
伊織と耕平の見え見えの演技に呆れて声も出ない千紗と拓海
「ま、まぁともかくこれもなにかの縁ってわけで4人で乾杯にしよう」
「ほらほらグラスを持って!」
「ねぇ2人とも。実は拓海って...」
「「乾杯!!」」
「あーあ」
千紗の静止も聞かずに乾杯の音頭を取ってしまった伊織と耕平。2人は一杯目は飲まないと怪しまれると踏んで一杯目はなんとか飲もうと打ち合わせていたため、吐き気をグッと我慢して一気に飲み干した
「グッ...ほら2人も...」
「一気に...オウッ...」
「今にも死にそうじゃん。拓海どうする?」
「(・ω・)」
拓海は少し考えてから千紗のグラスを取り、自分のと合わせて飲み干した。しかしそれでもフラついたり顔が赤くなったりと酔った症状は見られなかった。伊織と耕平は驚きつつも次の酒を注いだ。もちろんさっきと同じ4人分。拓海が千紗のも飲むのであれば拓海が飲む量は伊織と耕平の倍。有利とでも思ったのだろうが浅はかであった。3杯目を飲んだところで伊織と耕平はぶっ倒れてしまった
「バ、バカな...」
「ど、どうして...」
「あーあ、だから止めようとしたのに。拓海、お酒はサークル1強いんだから」
「( ̄^ ̄)」
千紗に褒められたので拓海は自然とドヤ顔になって2人を見下ろす形になってしまった
「なら...なぜチューハイなぞ...」
「...私がお酒弱いから、その...いつも私に合わせてくれる......」
「(*⌒▽⌒*)」
千紗は恥ずかしそうに拓海を見上げながら、拓海はそれに対して優しく返し見つめ合う
「なんだ...この甘い空間は...」
「爆ぜろリア充...」
そこで酔いつぶれた2人の意識はなくなった