「しかしなんだなぁ。新入生も増えたしいよいよライセンス講習の準備を始めるか」
「そうだな」
「はぁ」
「ライセンスですか」
「それって早飲みの?」
「早飲みに決まってんだろ」
「どうしてそうなる」
「ダイビングに決まってるだろ」
「「ダイビング」」
あまりの驚きに伊織と耕平は雷に打たれたかのような衝撃に打たれ酒の入ったグラスも落としてしまった
「そんなバカなぁぁ!」
そして2人はテーブルに手をついて下を向いたまま泣いている
「この反応は俺達が悪いのか?」
「俺は半々だと思うが」
「一応聞くが、お前ら教本に目を通してはいるんだろうな」
「そりゃあもちろん...」
「聞くまでもなく...」
「こいつら絶対目を通してないな」
「1つテストしてみるか」
「うむ。2人ともハンドシグナルは知っているか」
「は、はい...」
「要はジェスチャーですよねぇ...」
「水中での意思疎通に使う重要なサインだ」
「今から俺が実際にやってみせる。それを見て何を訴えたか考えてみろ」
ハンドシグナルは寿の言ったように意思疎通や互いの安全確認のために最も重要なことである。これをできなくしてライセンスなど取れはしない
1ー“止まってください”のハンドシグナル
2ー”こちらを見てください“のハンドシグナル
3ー”潜行します“のハンドシグナル
これを見た伊織の答えがこちら
(つまり...1ーA:そこまでだ。2ーA:この俺が。3ーA:ここでお前を殺す)
「さて伊織。お前はどうしたらいい」
「う〜ん。相手より先に水中銃で撃ちます」
「どういう状況なんだ」
「迂闊に伊織の前でハンドシグナルは使えんな。次、耕平の番だ」
「俺と北原の違いを見せてやりますよ」
「ほざくなボケなす」
1ー“問題発生“のハンドシグナル
(1ーA:やっほー...)
2ー”空気がありません“のハンドシグナル
(2ーA:アイーン...)
3ー”浮上します“のハンドシグナル
(イェイイェイ...)
「どうだ耕平?」
「ふっ、俺は温かい目で見守るぞ」
「独特な発想だな」
「やっぱり勉強していなかったか」
「「すいません...」」
「ま、わかっていたことだけどな」
「というわけで、少しは勉強してみろ」
「今からですか?」
「覚えたら意外といいことがあるかもしれんぞ〜?」
「「はぁ...」」
「ちなみに拓海は全部正解だ」
「「なぬ!?」」
「(* -∀-)」
伊織と耕平が後ろを振り向くといつの間にか用意したホワイトボードに先ほどの答えを書いて出している拓海がドヤ顔をしていた
「拓海は既にプロとしてのライセンスも持っている。何かわからないことがあれば頼るといい」
「(`・ω・´)b」
そして伊織と耕平はそれぞれ教本を開いて目を通し始めた
「伊織くん、ライセンスのお勉強?」
「はい。ハンドシグナルだけですが」
「へぇ〜どれどれ」
(はっ!この感触は...!)
テーブルで教本を読んでいる伊織に奈々華が近づき伊織の背後へと回る。そして無自覚に伊織の背中にその豊満な胸を押し当てる
「まずはここから覚えるといいよ?」
(まさか本当にいいことが起こるとは!なんて素晴らしいんだハンドシグナル!)
「あ、そういえば伊織くん」
「は、はいっ!」
「さっきこんな話を聞いたんだけど、知ってる?」
「何の話ですか?」
「”千紗ちゃんが伊織くんに汚された“って話...」
「...」
おそらく文化祭でのことであろう。奈々華の胸の感触で昂ぶっていた伊織が気分は急激に下がる。そして伊織は1つのハンドシグナルを実践しだした
「おっ、早速役にたっているな」
「あのサインは“問題発生”ですね」
「あぁ。重要なサインの1つだ」
「い・おり・く〜ん」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
奈々華は伊織を奥に連れて行こうとする。こと時もまた伊織は違うハンドシグナルを実践した
「あれは”こっちに来てください”のサインですね」
「助けてと言いたいんだろう」
そして時田達は揃ってグッジョブと返し伊織の助けは届かなかった
そして翌日。本日は実際にペアを組んで海に出てみることとなった。ちなみに時田・耕平。千紗・伊織。愛菜・梓の3組となった
「今日はそれぞれのペアで潜ってもらいます」
奈々華は昨晩伊織から事情を聞いて、一応は納得をした。そんでもって千紗の姉として幼馴染でもある伊織と千紗が仲直りできるようにこのペアを考えた
「それじゃあまず水着に着替えましょうか」
「えぇ!」
「んじゃ着替えますか」
「ここで脱ぐの!?」
「今更気にすることもないだろ」
「そういう問題じゃな...うわぁぁぁ!!!2人とも何してるんです!?」
「え?」
「着替えてるんだけど?」
「男子の前なのに!?」
伊織達だけではなく奈々華と梓もこの場で服を脱ぎ出したことに驚愕する愛菜
「古手川さんも何かってえぇ!」
「下に水着着てるなら別に」
「そうだよ」
「梓のは下着みたいだけどね」
「水着で照れるとは、初々しいな」
「まったくだな」
「先輩方はもう少し初々しくてもいいんですけどね」
(この人達もう嫌...!)
千紗の言う通りこの場合は下に水着を着ていればである。しかし時田と寿が下に水着を着ているわけがないのである
「(・ △ ・)」
「ちょっ、拓海見過ぎだって」
「( ゚д゚)!」
「っ!もぅ...拓海のエッチ...」
最後の千紗の照れ顔に拓海は危うく天に召されるところであった。羨ましいんじゃボケが♪
そしてタンクを乗せた台車を奈々華と伊織が押しながら目的地へ移動
「あの、奈々華さん」
「ん?な〜に伊織くん」
「どうして俺と千紗がペアなんですか...?」
「2人に仲直りしてもらおうと思って」
「むしろ逆効果のような...」
「大丈夫よ。ちーちゃんて海に入ればすごくチョロい子だから」
「そうね〜」
「それ、本人が聞いたらすんごい怒りますよ」
目的地到着、ボンベ装着・・・・・すいません。調子乗りました。ラップ風にできるかなと思ったら全く思いつきませんでした・・・
「それじゃあ伊織。私から離れないようにね」
「お、おう...」
「どうしたの伊織?不安?」
「え?あぁいや...」
「今日はすごく浅いところで泳ぐだけだから。怖かったら無理しないで。何かあったらすぐ教えて」
「お、おう。わかった」
マスクをつけレギュを咥えいざ!海へ!
(よし大丈夫。シャレが通じる空気じゃないな)
千紗の真剣な顔を見てふざけなしで身を引き締めながら海に入る伊織
その後設置されているロープを手で掴みながら少しずつ進んでいく。その最中千紗は何度も後ろを振り返り伊織の安否を確認した
(あれ、千紗のやつ怒っているっていうより何か...あぁそうか。あいつはただ真剣なだけなんだ)
千紗は魚を指差して伊織に知らせたり岩に張り付いていたナマコを手で持って伊織に見せたりしている
(万が一にも俺に事故がないように。できる限り水の中を楽しめるように。水が苦手な俺のために)
まだ見ずに慣れていない伊織を精一杯楽しませようといろんなことを試みる千紗。その光景を拓海は頭ではわかってはいても少し寂しそうな表情で見つめていた
そしてそこまで長くない時間が経ち全員海から上がった
「すっごい楽しかった!」
「気に入ってくれたようだね」
「はい!」
「よかった〜」
愛菜は今回のプチダイビングでテンションが上がっていた。それを喜ばしく思う梓と奈々華。少し離れたところでは伊織と千紗が海を見ながら何やら話していた。それを見つめる拓海の元に奈々華が近づく
「拓海くん」
「(´-﹏-`)」
「そんな顔しないで。別に千紗ちゃんが伊織くんに取られたわけじゃないでしょ?」
「...伊織は」
「ん?」
「伊織はオレの知らない千紗を知ってるんですよね」
「そうね。短い時間ではあったかけど毎日のように一緒だった」
「千紗は、伊織にもあの笑顔を向けるんですね」
「拓海くんて結構女々しい?」
「...」
『二万回死ねーーー!!!』
「あらら〜」
「( ˙-˙ )」
拓海の気も知らずに伊織はまた何か千紗の気に触るようなことを言ったのか千紗に蹴飛ばされた
「もう本当最悪!」
「...」
「拓海!もう一回潜りに行こっ!」
「...」
さっきまでの気分がウソのように心が温かくなる拓海。こうやって何かに誘われるだけで気分がよくなる拓海は案外チョロいのかもしれない
「千紗」
「ど、どうしたの?」
「好きだ。ずっと、これからも」
「えっ!ちょっ!拓海!?」
いきなりの宣言に千紗は慌てふためくが拓海は気にせず千紗の手を引いて海に向かった
「あらあら。結局最後はこうなるのよね〜」
取り残された奈々華は少しだけ、ほんの少しだけさっきまでの心配した気持ちを返してほしいと思った
『ここいい!』
『宮古島かー』
いつだか愛菜と千紗が一緒にダイビングの雑誌を読んでいるときそんな声を拓海は聞いていた。そんなとき拓海はふと思った。もうすぐ夏。そして新入生も入ったし近々サークル合宿があるのではないかと予想した。まぁ合宿すること自体は既に時田と寿から梓経由で情報が入っていたが
そして拓海にはそれまでに1つやっておきたいことがあった。それにはお金が必要であるためこれまで以上にバイトのシフトを増やしていた。そのためGland Blueに顔を出すことも少なくなっていた
拓海がバイトに勤しんでる間になにやら伊織が野島達に酷い仕打ちをされたり例のテニサー、ティンカーベルとテニスのダブルスで勝負をしたりとイベントがあったようだが拓海はほとんど知らなかった。ティンベルとの勝負の中で千紗が辱められたようだが全員それを拓海に伝えることはしなかった。もし伝えていれば今頃ティンベルは壊滅していたかもしれない...
さて話を戻すが予定通りサークル合宿は行われるようだ。問題は場所とその費用だ。そこで先ほどの愛菜と千紗のやりとりである。前々から千紗は拓海の故郷である沖縄に行きたいと言っていた。拓海はこの機会に千紗に沖縄の魅力を伝えるために時田達に意見を具申した。しかもただの具申ではない。時田達が食いつきそうな情報もちゃんと付け加えていた。策士め
費用はというとティンベルとの試合で交通費はゲットしたとのこと。あとは泊まるところと個人の資金だが個人の資金に関してはそれぞれが考えるだろう。泊まる場所だがそれは拓海が責任を持って用意するとのことで時田達は拓海に任せている
「照りつける太陽」
「青い空。青い海」
「行くぜリゾラバ!」
「待ってろマーメイド」
「「沖縄にまっしぐらだー!!!」」
既に身も心も沖縄気分の伊織と耕平が海パンサングラス、浮き輪もつけていた。Ground Blueで。マーメイド...?
「お、いたいた」
「先輩」
「どうかしたんですか?」
「いいバイトが見つかってな。お前達もどうかと思ってな」
「バイト?」
「なんでですか?」
「もちろん、合宿費用のためだ」
「あれ?テニスの賞金で」
「旅費はな。あとはみんな個人持ちだから」
「えっ!」
「そうなんですか!」
「で、バイトやるのか?やらないのか?」
今初めて金が必要なことを聞いた伊織と耕平はもちろん首を縦に振った
「今日は一体どうしたのよあんたら」
「おぉ、ちょっと金が必要でな」
「稼ごうと思うと難しいもんだな」
「合宿費用?」
「あれ?2人ともとっきーにバイト紹介されてなかった?」
「引越しのバイト、ですね...」
「昨日、やってきたんですけど...」
時田に誘われたのは引越しのバイトだった。しかし2人はバイト後に時田と飲みに言ってしまいその日のバイト代をほとんど使ってしまったのだ
「そりゃお店で飲んだらそうなるよ。それで今日とっきーは?」
「昨日使った分をまた稼いでくるそうで」
「2人もそうしたら?」
「あんなキツいの連続は無理だ」
絶賛筋肉痛の2人であった
「ところで今日寿先輩がいませんね」
「ぶっきーもバイトだってさ」
「バイト?」
「あの人が?」
「風俗の客引きか」
「蝶ダンサーという線もあるぞ」
「あんたらの寿先輩のイメージって...」
「あはは、そういうんじゃないよ。じゃあぶっきーのバイト先、行ってみる?」
梓の誘いに伊織と耕平は即了承。千紗と愛菜も興味が湧いて一緒について行くことに
そして時は過ぎ夜。とあるバーの店の前
「ここって...」
「ちーちゃんはよく知ってるんじゃない?」
「「「???」」」
千紗はその店構えをよく知っており、伊織と耕平、愛菜の3人は梓の言ってる意味がよくわからないでいる
「いらっしゃい、お?」
「やっほー。遊びにきたよ」
「おぉ!」
「先輩
「すっごーい!ん?も?」
「バイトでたまに入ってるだけだがな。あいつはこのところ毎日入ってるみたいだが」
「みたいですね」
「ん?どういうこと?」
「どうした?お前ら」
「...」
『20万円になります』
「...」
『ハーイ!カモーン!ハーイ!カモーン!』
伊織は悪い顔をして高額請求を押し付ける寿を、耕平は仮面を被りお札をパンツに挟んで女性の前でクネクネ踊る寿をそれぞれ想像した
「どんな店想像してんの」
「普通のお店なんだけどね。ここ、ぼったくりどころか安い店だよ」
「ワンコインなんですね」
「マスターが学生でも楽しめる店をモットーにしてるからな。お、いらっしゃい」
「確かに若いお客さんが多いですね」
今入ってきたお客さんも若い女性が2人だ
「いらっしゃい、梓ちゃん」
「あーどうも、マスター」
「(^^)」
「あ、拓海」
「「「え?」」」
奥から出てきたのはこの店のマスターと寿と同じタキシード姿の拓海であった
「竜くんの後輩かい?」
「「「はい」」」
「ぶっきーのバイト先を見たいんだって。拓海が今日いるとは知らなかったけど」
「それで?見てみてどうだい?」
「寿先輩に関しては違和感しかないです」
「いつクビになるんですか?」
「ちょっと歯に衣着せなさいよ...」
「彼、お客さんから人気あるんだけどね」
マスターの目線の先には妖艶な女性を前に接客している寿の姿があった
「好きな人がいるんだけど、うまくいきそうもなくて...」
「ははっ、そう悩まずに勇気出して頑張れ」
「でも...」
「うまくいかなかったときは、俺が朝まで愚痴に付き合うからさ」
「えっ...」
酒と共に口説き文句を口にする寿。その寿をみる女性の頰はまだ酒も入っていないのに赤くなっている
「私、彼より竜くんの方が好きかも...」
「ん?」
「マスター。彼の頭にナイフを」
「俺からもフォークを」
「やめなさい」
「なにかおかしくなか!」
「どうしてあれだけで告られる!」
「もしかしたらバーテンという仕事はモテるんじゃないか?」
「あぁ。ジョブの補正としか思えん」
「そうかな〜」
「ぶっきーは天然でいいこと言うからね」
「ん?なら普段しゃべらない拓海はこの仕事ムリなんじゃ」
「確かに。あんな風に女性を口説けないじゃないか」
「拓海くんの場合は千紗ちゃんというれっきとした彼女がいるから口説く必要がないわけで。それを抜きにしても拓海くんの作るお酒は評判高いよ?」
「ちょっ、マスター...」
「「なるほど」」
マスターの暴露に千紗は照れを隠しきれない。一方拓海は照れ顔の千紗を目の保養にカウンターに入った
「それなら君らもやってみたらどうだい?」
マスターの提案により寿と拓海と同じ服に着替えた伊織と耕平。ドアを開けた瞬間のイケ顔はなんか腹たつ...
「へ、へぇ〜...」
「2人とも、似合ってるよ」
「どしたの?」
「いや、まぁ...」
「なんか、まぁ...」
「「はぁ...」」
「酒の席で服を着てるって」
「すごい違和感でさ」
「あーわかるわかる」
「全然わからないんですけど!?」
外で服を脱がないことがまだ頭に残っていてよかった
「さて、2人には梓ちゃん達の接客を頼むよ」
「「あ、はぁ...」」
「ま、気楽に気楽に」
「私達なら失敗しても大丈夫でしょ」
サークル内ならともかくこの2人にバーでの酒事情が理解できてるのか心配でままならない
「お、お前らもやるのか」
「「はい」」
「で、注文はどうする?」
「え!?ちょっと待ってください!」
よく来ている梓や千紗はともかく愛菜はまだバーは慣れていないのだろう。メニューを上から見ていく
「拓海〜、私に“キスミークイック”」
「(_ _)」
拓海は梓のオーダーを受け承った合図として少し頭を下げて作り出す
<キスミークイック>シェーカーにペルノ、キュラソー、アンゴスチュラ・ビターズを入れシェイク。それをコリンズ・グラスに注ぎソーダを注ぐ。ステアして完成。
※ステア:軽くかき混ぜることである
そして出来上がったものをカウンターをゆっくりスライドさせるように梓の目に置く
「( _ _)っ」
「確かに頼んだのはこれだけど〜。ちゃんと
「(。´-д-)」
まぁいつものことである。“キスミークイック“。直訳すると”すぐにキスして“となる。拓海がいるときは必ずこの会話をしていると覚えがあるマスター。そしていつも梓は立って身を乗り出しあたかも今からキスするかのように目を瞑るのだった。それを見た拓海はため息を1つ。そして差し出された口にそっとカットしたライムをくっつける
「んもぅ〜いつまでじらすのよ〜。拓海も好きだね〜」
「( ´⌒`) =3」
「梓さん...さすがに怒りますよ...?」
「いや〜ごめんごめん。冗談だよ冗談」
「まったく。拓海、私はオススメで」
「(_ _)」
次は千紗のオーダー。梓の時と同じ行動をとった拓海は本日の千紗専用オススメを作り出す
<ベリーニ>フルート型シャンパングラスにピーチジュースをグラスの1/4入れてスパークリングワインを注ぐ。その後ステアで完成
そしてまた完成したものを梓のときと同じように千紗の前に差し出す
「( _ _)っ」
「ありがと」
千紗はできたカクテルをまず匂いを楽しみそっと口に注いだ
「美味しい...」
「よかったねちーちゃん」
「はい...」
「なるほど」
「我那覇やるな」
「今寿先輩が出しているのは“ジンライム”と言ったか?」
「あぁ!ジンとライムで“ジンライム”か。名前の通りだな」
<ジンライム>ロックグラスに氷を入れ、ジンとライムジュースを注ぎスネア。あとはカットしたライムを入れてもよし添えるだけでもよし
「よっし!私は“スクリュードライバー”で!」
「スクリュードライバーか」
「了解」
<スクリュー・ドライバー(伊織&耕平作)>ロックグラスに氷を入れ、ウォッカとプラスのドライバーを入れて完成
「ちょっと待て...」
「なにか?」
「明らかに違うじゃない!」
「だから言ったじゃないか!」
「スクリュードライバーって言ったらこれしかないだろ」
<スクリュー・ドライバー>グラスにウォッカとオレンジジュースを入れてスネアして完成
「2人とも私だからって遊んでない!?」
愛菜今にもドライバーを2人に投げつける寸前だ
「い、いや...」
「そんなことはないぞ...失礼しました。先ほどのは軽いジョークです。こちら、スクリュードライバーです」
「ありがと...」
<スクリュードライバー2(伊織&耕平作)>最初のとほぼ同じ。変わったのはプラスドライバーからマイナスドライバーになったとこのみ
それを見た愛菜はカウンターに乗り上げ出されたマイナスドライバーで2人を刺そうとする
「おい!違ったっぽいぞ!」
「だから精密ドライバーにしろとあれほど!」
そういう問題ではないと思う...
「やっぱり注文変える!この“モスコミュール”ってやつで!」
「モス...」
「コミュ...」
伊織と耕平の脳内では“モスコミュール”はMOSS(苔)+COMMUNITY(集団)らしい
「マリモ!」
「それだ!」
「なんの話!?」
<モスコミュール>グラスに氷を入れ、ウォッカ、ライムジュース、ジンジャエールを注ぐステア。最後にカットしたライムを添えて完成
「まじめにやりなさいよ!」
「まぁまぁ」
「何事も練習だ」
「おもしろい子達だね」
「でしょ〜?」
「知らないならこれで調べるといい」
「おぉ!」
「これがあれば怖いものなしだな!」
「できれば最初から渡しておいてほしかったです...」
マスターがカクテル作りの参考資料を2人に渡す。愛菜の言う通り普通は最初に見せるべきものである
「しかしカクテルの名前ってわかりにくいのが多いな」
「それはお前に想像力が足りないからだ」
「そうか?」
「俺なら名前だけで簡単にイメージできるぞ」
「じゃあこれは?“セックスオンザビーチ”」
<セックス・オン・ザ・ビーチ>氷を入れたコリンズ・グラスにウォッカ、メロン・リキュール、レモンジュース、クレーム・ド・フランボアーズ、パイナップルジュースを注いでステア。完成
「ムフフ...ンフフフフフフ...」
耕平が想像したのはムフフンな光景
「“チェリーブロッサム”」
<チェリーブロッサム>チェリーブランデー、ブランデー、レモンジュース、グラナデンシロップ、オレンジキュラソーをシェイカーに注いでシェイク。それをカクテルグラスに注いで完成
「...」
『童貞捨てるぜ』
耕平が想像したのは裸で口にバラを咥えた山本だった
「てんめ!なんてモンを想像させやがる!」
「お前が勝手に想像したんだろうが!」
「やめなさいよみっともない!こういうオシャレなところにもっとふさわしいやり取りがあるでしょ」
「おぉ?」
「例えば?」
「ほら、映画やドラマでよくあるじゃない」
愛菜が想像したオシャレな店でのワンシーン集・・・・・・・・・・無言でシェイカーをシェイクするシーン/『俺のおごりだ』のシーン/綺麗な夜景を外に『君の瞳に乾杯』のシーン
「ほぉ」
「なるほど」
「ま、あんたらには無理だろうけど」
「何を言う!」
「やってやろうじゃないか」
まずシェイカーをシェイクするシーンの耕平ver・・・・・・・・・結果、蓋を閉め忘れ中身全て伊織にかかる
次に『俺のおごりだ』のシーンの耕平&伊織ver・・・・・・・・・結果、途中でグラスが倒れ伊織の服にこぼす
最後に『君の瞳に乾杯』のシーンの耕平&伊織ver・・・・・・・・結果、伊織が耕平の目に酒を入れて耕平の目がすごいことに
「君の瞳
「私の綺麗なイメージ台無し!」
「人の目に酒を流し込むやつがあるか!」
「うるせぇ!人にボカボカ酒をぶちまけやがって!」
「あの2人、中がいいねぇ」
「あいつらいつも一緒にいますからね」
「へぇ〜どんな関係なんだい?」
「あの2人の関係?」
「そうですねぇ」
寿と梓は伊織と耕平のいつもの光景を思い浮かべる
「「裸の関係です」」
「はははは...またまた冗談だよね...?」
「いえ、本当です」
「本人に確認してみては?」
2人の発言に誤解(100%間違ってはいないが)をしてしまうマスター
「ウーロン茶でもどうだ?Peek a Boo特製だが」
「そのウーロン茶はいらない」
「じゃ、じゃあ僕がもらおうかな」
「「「あ...」」」
耕平が愛菜に出そうとしたPeek a Boo特製ウーロン茶(ウォッカ:9、ウィスキー:1分量の完全アルコール)をマスターが飲んでしまい、たちまち倒れた
「ありゃりゃ〜」
「マスター酒弱いんだな」
「あんなの飲んだらこうなるのが普通でしょ」
「参ったなぁ。マスターがこうなると起きないんだ」
「俺達バイトだけじゃ...」
「僕は酔っれらいぞ〜」
「どうっすかなぁ」
「( '-' )ノ」
「ん?お前に任せてもいいのか?」
「( -_- )」
「わかった。なら頼む」
「(。 ー`ωー´) ☆」
「拓海、大丈夫なの?」
「(o´・ω-)b」
「ならいいけど」
酔って眠りこけたマスターに変わり閉店までは拓海が仕切ることになった
「いらっしゃい」
「「い、いらっしゃいませ」」
「(_ _)」
伊織と寿がマスターを奥の部屋で横にして戻ってきたのとほぼ同時に新しいお客さんが来店した。今回も若い女性が6名
「あ!今日は拓海くんいるんですね!」
「寿さんもいる!ラッキー!」
「おい耕平。あれって」
「あぁ間違いない。御手洗の元カノだ」
6名の中に1人伊織と耕平が見知った顔がいた。その女性は先日御手洗を殴り飛ばした(伊織達が原因)元彼女さんであった。もちろん拓海は一切知らない
「寿さーん。私ってなんで彼氏できないんですかね〜」
「ははは、焦る必要はないんじゃないか?」
寿は先程と同様酒を出しつつ女性を慰める
「拓海さん聞いてくださいよ〜」
「(・・。)?」
「私、彼氏と別れたんです」
「( ´ . _ . ` )」
「もう最低男でした...私というものがありながらAV200本も購入してて...それに私の体見られたのに浮気してて...しかも別れ際に言い訳と思って聞いてみたらなんて言ったと思います!?」
「( -_- )」
「”最後に友達紹介して“ですよ!?本当最悪!」
「(´-﹏-`;)」
「実は幼馴染だったんです...でもあんな男になってるとは思いませんでした...なんで私はあんな男と...」
「( ¯−¯ )」
実際は全て伊織や耕平達による陰謀であるのだが拓海がそれを知る由もない
『いちいち思い出してたらキリがないですよ?』
「拓海さん...」
拓海は作ったお酒と一緒に慰めの言葉を記したメモと共にそっと差し出した
『愚痴にも付き合いますけど折角のお酒の席なんです。楽しくいきましょ』
「...」
拓海の言葉(実際は字なのだが)に心がトキメクその女性は目をウルウルさせながら拓海の顔を見上げる
(なんだろ...顔が熱い...お酒のせい...?いやでも...)
「私、拓海さんに惚れちゃいそう...」
「?」
ボソッと呟いた彼女の言葉。それは1番近くにいる拓海の耳には届かなかったにも関わらず少し離れた千紗の耳には届いていた。その後のことは...ご想像にお任せします...