ぐらんぶるろまんす   作:てこの原理こそ最強

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本日も既に夕方。Ground Blueにはいつものメンバーが揃いテーブルにはさまざまな酒と料理が並んでいる。そんな中伊織が刺身と割り箸を持って千紗と愛菜に近づく

 

「2人とも、これどうだ?」

 

「お刺身?」

 

「伊織が捌いたの?」

 

「いや、捌いたのは拓海だが。味見してくれないか?」

 

「わかった」

 

「別に拓海が作ったものに疑うことないんだけど」

 

愛菜はともかく千紗は拓海のどうして作ったものを味見?と少し疑問を感じたが2人揃って伊織の持っている割り箸を受け取る。しかしそれが事の始まりとも知らずに...

 

「「ん?」」

 

「王様ゲーム!!!!」

 

『イェーーーーーーーーイ!!!!!!!!』

 

そう、王様ゲーム。飲み会などで定番のレクリエーションゲームの一種。 ランダムに決まった「王様」が出した命令(罰ゲーム)を、ランダムに決まった参加者が行うレクリエーションである。愛菜と千紗が取った割り箸は王様ゲーム用の番号が書かれたものであった

 

「せーの!」

 

『王様だーれだ!』

 

「はいストーップ!」

 

「どうしたケバ子」

 

「なぜ止めるケバ子」

 

「ケバ子言うな!」

 

「ダメだよ愛菜」

 

「クジを引いた者は参加しないとな」

 

「これは刺身に使えって渡されただけで」

 

「何を言うか」

 

「さっき北原が言ったことを思い出せ」

 

それを聞いて千紗と愛菜はさっきの伊織の言葉を思い出す

 

『これ、どうだ?』

 

確かに刺身に使えとは言っていない

 

「「刺身とは一度も言ってないよなぁ〜」」

 

「卑劣...」

 

「ということは、もしかして拓海もグル...?」

 

「いや、拓海はなんも知らない」

 

「ふぅ...」

 

拓海が絡んでいなくて少しホッとする千紗。しかしこいつらホントにゲス野郎共である

 

「まぁそんな嫌がらないで、ね?」

 

「一度やってみて嫌だったら辞めてもいいからさ」

 

「どうする?」

 

「はぁ...一度だけなら」

 

「あ、拓海は余りのこれな?」

 

「( ˙-˙ )?」

 

伊織は丁度キッチンから戻ってきた拓海に残ったクジを渡す。急なことで拓海はなにがなんだかわからない様子だ

 

「よっしゃ!そんじゃあ改めて!」

 

『王様だーれだ!』

 

「うふふ...私だね」

 

「では命令を」

 

「オッケー」

 

王様クジを引いた梓の前に耕平が命令を待つ騎士のように片膝をつく。しかし耕平がパンイチなのでどちらかといえば奴隷にしか見えない

 

「じゃあ私以外の全員は...」

 

「「...」」

 

どんな命令がくるのか固唾を飲んで待つ千紗と愛菜

 

「このゲームに最後まで付き合うこと」

 

((やられた...))

 

「どうしてそこまで参加させたがるんですか!?」

 

「どうしてだろうね〜」

 

「王様の命令は絶対なんですって、千紗ちゃん」

 

「お姉ちゃんまで」

 

(バカめ。その2人は既に買収済みよ)

 

あの奈々華が参加することに困惑する千紗と単純に参加を嫌がる愛菜を伊織が計画通りといったゲスい顔で眺めている。まぁ奈々華は千紗に、梓は奈々華と拓海にそれぞれイタズラできるから参加するのだが...

 

「じゃあ2回戦いくぞー!」

 

『王様だーれだ!』

 

「ありゃ、また私だ」

 

「連続ですか」

 

「引きが強いな」

 

「じゃあ命令はね...”1から8番の人が1枚脱ぐ“で」

 

『ふん!』

 

「脱ぐの早すぎるんですけど!」

 

伊織達の脱ぐ早さは既にギネス級である

 

「さぁさぁ、奈々華も脱いで脱いで♪」

 

「えっと...それじゃあ...」

 

「「おぉー!」」

 

奈々華が服をはだけさせ胸を揺らせながら下着が少し見えると伊織と耕平が興奮して息を荒げる

 

「ストーップ!」

 

「どうしたの?愛菜ちゃん」

 

「脱ぐにしても靴下で十分ですから!」

 

「「くっ!」」

 

「今回は見逃すけど」

 

「そっかそっか」

 

「今後そういうイヤらしい命令はNGですから」

 

「えー」

 

「「えー」」

 

「ま、仕方ないか。でも拓海は命令通り1枚脱いでもらうからね♪」

 

「っ!拓海も靴下で...あっ...」

 

隣に座っている拓海が脱ぐと聞いて慌てる千紗。拓海も靴下で済ますよう拓海の足元を見るが不幸なことに今日の拓海はサンダルであった

 

「ほら脱いだ脱いだ♪」

 

「(。´-д-)」

 

「〜っ!!!」

 

拓海は仕方なくTシャツを脱ぎその引き締まった体を露わにした。千紗はできるだけ見ないように試みるがいかんせん体は正直なもので、チラチラと横を見ては逸らしの繰り返しである

 

「んじゃ次!」

 

『王様だーれだ!』

 

「私です」

 

「「ん“〜」」

 

「命令はなんだ?」

 

「一応常識の範疇でな」

 

「わかりました。1から8番までの全員は...」

 

「「おう!」」

 

「次の飲み会で服を脱がないこと」

 

「オウサマノメイレイハ...」

 

「ゼッタイ...」

 

飲み会で服を脱がないなど時田達にとっては死活問題。案の定時田と寿は白目を向いて顔を歪めた

 

「服の着脱に関する命令は常識はずれだろ!」

 

「恥を知れ恥を!」

 

「常識のために脱ぐなって言ってんの!」

 

「まぁ仕方ない」

 

「前向きに善処する方向で見当しよう」

 

「約束ですからね」

 

「んじゃ次いくよ」

 

『王様だーれだ!』

 

「今度は私ね。じゃあね、3番の人が左隣の人に“お姉ちゃん大好き”って愛の告白をしてください」

 

「ほら、照れずに告白してこい」

 

「え?」

 

「3番てお前なんだろ?」

 

「違うけど」

 

3番が千紗だと勘違いした伊織。千紗が見せたのは2番のクジ。では3番は一体誰...

 

「ワタシデス...」

 

寿だった。伊織の右隣の...

 

「これはダメです!絶対トラウマになるやつです!」

 

「えっと...」

 

「伊織うるさい」

 

「王様の命令は絶対なんでしょ」

 

「いや...いや...」

 

「お姉ちゃん大好き!!!」

 

「い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!!」

 

伊織、ご愁傷様です...安らかに眠れ...

 

「じゃあ次!」

 

『王様だーれだ!』

 

「あ、私だ」

 

「ちーちゃん命令は?」

 

「えっと...」

 

千紗はこのとき隣にいる拓海のクジの番号が見えていた。そして自分が王様を引いた瞬間頭の中で”天使の千紗“と”悪魔の千紗“の戦いが勃発した

 

『これはチャンスだ。拓海といくとこまでいっちまえ!』

 

『ダメです。考え直すのです。拓海もこんな大勢の前でなんて望んでいないはずです』

 

『この猫かぶりが!こういうときじゃなきゃいつするってんだ!』

 

『チャンスなどこれからいくらでもあります。初めてのものこそTPOを弁えるのです』

 

千紗の脳内戦争、所要時間わずか0.5秒

 

「...5番の人は、王様と手を繋ぐ...で...」

 

「そうか。5番は誰だ?」

 

「(・ω・)ノ」

 

「なーんだ拓海か。つまんなーい」

 

千紗と拓海が手を繋ぐなんて普通すぎて梓にはお気に召さなかったようだ。もしかしたら少し羨ましがっていてその裏返しの言葉かもしれない

 

「...」

 

「...」

 

別に手を繋ぐ時間が定められていたわけでもないのに手を繋いだままの2人。隣同士で座っていることもあるだろう。普通の繋ぎから恋人繋ぎに変わったとき驚いた千紗は拓海を見る。そんな千紗に拓海は優しく微笑みかけ、千紗は顔を真っ赤にして俯いてしまった。この狭い空間でそんな甘い空気を漂わせる2人を見て伊織と耕平は悔しさから持っている割り箸を折りかけそうになったとか

 

「それじゃあ次だ!」

 

『王様だーれだ!』

 

「ふふん、俺ですね」

 

「はっ!」

 

(やったぞ北原!)

 

(でかした耕平!あとは千紗が何番を引いたかだが、あの割り箸には細工をしてある。先端の長さが違うものが奇数でそうでないものが偶数。先端が丸まっているものが前半の数字で四角いのが後半の数字)

 

そこまでして...まぁイカサマもバレなければなんとやらというが...

 

(あの形状なら1番か3番。あとは2択だ!任せたぞ耕平!)

 

(オッケー)

 

「じゃあ耕平くん。命令をどうぞ」

 

「はい。俺の命令は今度王様に飲み会で友達を紹介するです」

 

『え?』

 

「何番の人が?」

 

「それは無論...4番です!」

 

「なんで4番なんだよこのバカ!」

 

「お前が4本指を立てたんだろ!」

 

「あれが1番と3番だ!」

 

「やっぱりまた何か企んでる...」

 

「はいはい、ケンカはそこまでね」

 

「はぁ...はぁ...やれやれ」

 

「作戦は失敗か」

 

「ちょっとは悪びれなさいよ」

 

「で?なにが目的だったの?」

 

「目的っていうと」

 

「話せば長くなるんだが」

 

「端的にまとめて」

 

「「金と女」」

 

「「最低」」

 

「それは誤解だ。俺達は合コンを組んだら金を受けとる約束で」

 

「これはいわば合宿費用を稼ぎサークル活動の一端で」

 

「はいはいそうですか」

 

「まったく、バイトでもして稼いだら?」

 

「取り付く島もねぇ。仕方ない。違う対策を考えるか」

 

「時間もないから急がないとな」

 

「「というわけで...拓海(我那覇)!女友達紹介してくれ!!!」」

 

「全然反省してないでしょ!」

 

その後、最後の命令を守るべく4番を引いていた時田の友達と一緒に飲み会に連行された伊織と耕平であった

 

「それにしてもちーちゃんと拓海はいつまで繋いでるの?」

 

「あっ...」

 

「忘れてたんだ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、伊織達5人はなんの偶然かGrand Blueへの道でばったり出会って共に歩いていた

 

「結局合宿のお金はなんとかなったの?」

 

「まだ足りなくてな」

 

「明日稼いでくるんだ」

 

「まともなバイトでしょうね...」

 

「梓さんの紹介でイベントスタッフをな」

 

「うわ、キツそう」

 

「俺もそう思ったがそれしかなかったんだ」

 

「金がなかったら一緒にどうだ?」

 

「飛び込み参加OKらしいぞ?」

 

「遠慮しとく」

 

「私も」

 

「((-ω-。)(。-ω-))」

 

「こんちわーっす」

 

「よう」

 

「5人一緒か」

 

「そこで偶然出会いまして」

 

Grand Blueには既に時田達がおり奈々華と梓はなにやら雑誌を広げて話していた

 

「”ダイコン“が安いんだよね〜」

 

「”大根“がいるんですか?」

 

「どうしようかと思ってね」

 

「もう1本欲しいんだけど予算オーバーで」

 

「じゃあ俺が買ってきますよ」

 

「え?」

 

「あー、それはちょっと...」

 

「そんな遠慮しなくても」

 

「そりゃあね...」

 

「そうね...」

 

「「結構高いし...」」

 

(俺どんだけ金がないと思われてるんだろう...)

 

「いやいや、いくら俺でも大根1本ぐらい買えますって」

 

「ん?」

 

「あー!あのね伊織くん...」

 

奈々華が何かを言いかけたところで梓が奈々華の口を手で抑えた

 

「ねぇちーちゃん。伊織がダイコン買ってくれたらどうする?」

 

「...じゅ、15分だけ.......15分だけ人間扱いしてあげてもいいです」

 

「だってさ伊織」

 

「(o´・ω-)b」

 

「むしろ今までなに扱いされてたか気になるところです。でも大根が欲しいなんてどうしたんです?」

 

「あはは」

 

「違うよ伊織くん。”大根“じゃなくて”ダイコン“の話をしてたの」

 

「ダイコン?」

 

「そ。ダイブコンピューターのこと。ちなみに値段はこれくら」

 

ダイブコンピューター:水深や潜水時間、水温など、安全にダイビングを行うために必要なデータをリアルタイムで表示してくれる、ダイバーにとって必要不可欠なアイテム

値段は30,000〜100,000ほど

 

「お前、これだけのものを買わせておいて...」

 

「最大限譲歩したつもりだけど」

 

「( ̄▽ ̄;)」

 

「んじゃ、全員揃ったし行くか!」

 

「そうだね」

 

「え?どこへです?」

 

「今日はダイビングの機材を見に行こうと思う」

 

ダイビングショップ到着

 

「「「おぉ!」」」

 

「随分いろいろな機材があるんだな〜」

 

「正直なにを見ていいのかわからん」

 

「なにか買っておくべきものはあるんだろうか」

 

「最初はレンタルで十分って言われたが」

 

「うん、私もそう言われた」

 

「おう」

 

「その通りだ」

 

「「最初はタオルだけあればいい」」

 

「「なるほど」」

 

「水着は...?」

 

「自分のものを買うなら最初はマスクがオススメだ」

 

「どうしてです?」

 

「まぁ比較的購入しやすい値段というのもあるが」

 

「なによりダイビングの目的は海の中を見ることだからな」

 

「自分に合わないマスクで見ずらかったら嫌だろう?」

 

「確かに」

 

「他にはダイコンから揃えるべきという考え方もある」

 

「自分用の安全機材を持って減圧症などのリスクを減らそうという考えだな」

 

「俺達これまでダイコンなんてつけてないんですが...」

 

「大丈夫だったんですか...?」

 

「それは心配無用だ」

 

「危険な深さまで潜らせていないからな」

 

「それにそういったことがないようにインストラクターが目を光らせている」

 

「ある程度の深さまで潜ったりインストラクターから離れて動き回るダイバーのために必要な機材ってわけだ」

 

「あ、これはなんですか?」

 

「“カレントフック”だ。文字通り引っ掛けて使う」

 

「これは?」

 

「“フロート”だ。中にエアーを入れて膨らませて使う」

 

「「なるほど」」

 

さて、ここで2人はそのアイテムの使い方をどう想像したのでしょう

 

「海の中って怖いな」

 

「まったくだ」

 

(あの顔、絶対バカなこと考えてる)

 

愛菜の考えは的を得ていた

 

「それじゃあゆっくり見て回っていいぞ」

 

「わからないことがあったら声をかけてくれ」

 

「「うーっす」」

 

「はーい」

 

伊織、耕平、愛菜の3人は初めてのダイビングショップを楽しんでいた。ほとんどのものが初めて目にするものばかりで興味を全てに興味をそそられていた

 

「なにを見てるんです?」

 

「ちょっと珍しいカメラだよ」

 

「こういう形で撮影できるんだって」

 

千紗と梓が目を惹かれていたのは海中の底に置いて360度全方向を撮影出来るカメラだ

 

「確かにこれは珍しいな!」

 

「おもしろいよね!」

 

「はっ!伊織伊織」

 

「ん?」

 

「早く!」

 

「他にはこんなのも」

 

「これは?」

 

「水中で会話ができる機会みたいよ?」

 

「マジですか!?」

 

「骨伝導で音を拾うんだって」

 

「現代科学ってすげぇ!」

 

「ただ会話には少しコツがいるみたい」

 

「本当だ。事前に使う単語を打ち合わせて置くとGOODか」

 

「レギュを咥えてると発音しにくいもんね」

 

「すみません、ちょっと質問が」

 

「どうしたの?」

 

「レギュレーターはどうやって選べばいいですか?」

 

「え?レギュ?」

 

「まだレンタルでいいと思うけど」

 

「い、いやぁでも...か...」

 

「「か?」」

 

「関節キスになっちゃうし...」

 

「このサークルにいてまだそんなことを考えてるのか」

 

「考えたこともなかった」

 

「大丈夫だよ。関節キスとは違うから」

 

「そうですか?」

 

「ほら、マウスピースを咥えるときを思い出してみてよ」

 

「確かに関節キスとは違いますね」

 

「そうそう。だからどっちかっていうと歯ブラシを共有してる感じだよ」

 

「もっと嫌!」

 

「で、実際はどうなんだ?」

 

「ウチでは毎日消毒してるかな」

 

「もし気になるなら1度直接しちゃうのが手だけど」

 

「実は俺、関節キス気になってたんです」

 

「最低...」

 

「クズ...」

 

「あんなのほっといて向こう行ってみよ」

 

「確かに水着、新調してもいいかな」

 

「俺、そんなに酷い発言しましたかね」

 

「どうだろうね」

 

伊織にとっては大したことなくとも千紗と愛菜にとっては大したことある発言だったのであろう

 

「そういえば古手川さん」

 

「千紗でいいよ」

 

「じゃあ私も愛菜で。それでちょっと聞きたいんだけど...」

 

「なに?」

 

「...伊織って彼女いるのかな......?」

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

少しの間

 

からの千紗の言葉では表しずらい歪んだ顔

 

「うん、その顔だけで十分わかった」

 

「そもそも...」

 

「お客様!?」

 

「ん?」

 

「着替えは試着室でお願いします!」

 

「しまった。いつものクセで」

 

「こら、通路で着替えるな伊織」

 

「脱いだ服が邪魔になるだろう」

 

「そういう問題ではありませんが!?」

 

「あんなのに彼女できると思う?」

 

「確かに...」

 

本人の知らない間に酷い言われよう...いやそうでもないか

 

「ところで耕平はどうした?」

 

「そういえば見ないな」

 

「ちょっと探してきます」

 

おいっ!その格好でか!?はっ、よかった。ちゃんと服は着たようだ

 

伊織が耕平を探すべく店内を捜索しているとその耕平はSALE品売り場の前で地面に膝をついていた。耕平の前にあったのはなんとかの有名なアニメで巨大な汎用人型決戦兵器に乗って謎の生命体と戦い人類を守る少女達が着ていたスーツのそれではないか!

 

「なにやってんだお前」

 

「北原!お前もここへ導かれたのか!?」

 

「いやお前を探してただけだが。ウェットスーツが欲しいのか?」

 

「買う気はなかったがこれは気になっている!」

 

「確かに珍しいデザインだが」

 

「うぉーーーーん????」

 

「なんだよその目は」

 

「北原...まさかお前はこのアニメを知らないのか...?」

 

「これしかサイズないんじゃ試着はムリだな」

 

「いやこれは俺が着なくていいんだ!」

 

「ん?あぁなるほど。着られるやつに感想を頼めばいいのか」

 

「いやそういう意味じゃ...」

 

「おーい」

 

耕平の説明を聞かず千紗と愛菜にそれぞれ赤と白のスーツの着用をお願いする伊織

 

「うん、着心地いいと思う」

 

「ただジッパーがないものだから好みが別れるかも」

 

「だとさ耕平」

 

「は”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!!!!!!!!!!!」

 

スーツを着終わって出てきた2人を見た耕平は大声量で奇声を発し倒れた

 

「今日だけはお前を心の友と呼んでもいい!」

 

「突然なんだ気色悪い...」

 

「「?」」

 

なにがなにやらわからない千紗と愛菜は揃って疑問の表情を浮かべる

 

「それであれはどうするんだ?」

 

「今はムリだがいずれ必ず!」

 

「そもそもあれレディースだったんだけど」

 

「どうだ?お前ら」

 

「なにか欲しいものはあったか?」

 

「いろいろあって目移りするんですが」

 

「とりあえずオススメ通りマスクにしようかと」

 

「愛菜は?」

 

「私もマスクにします」

 

3人は揃ってマスクを購入するようだ。水中マスクと言ってもいろんな種類がある。視界が広く空間が広いためダイバーの表情が認識しやすいという特徴がある一眼レンズタイプ。マスククリアがしやすい二眼レンズタイプ。

 

※マスククリア・・・ダイビング中にマスクの中に入った海水を水中でマスクの外に出すダイビングスキル

 

マスクを装着したときに実際に顔に当たる部分で柔らかさやフィット感を左右するスカートという部分にも種類がありそれぞれ用途が違ってくる。よってマスクはダイビングするにあたって視力の悪い人にとってのメガネぐらい重要なものである

 

「なぁ千紗、マスクの選び方って...」

 

寿や時田に意見を求める耕平や愛菜と同じように伊織もマスクの選び方について千紗に助言を求めようとしたが千紗は手になにかを持って真剣な表情で考え詰めていた

 

「千紗?」

 

「ちーちゃんてばカワイイよねー♪青春!青春よ!」

 

「なんの話です?」

 

「いや〜一生懸命カメラを選んでるのがかわいくってね」

 

「記念に写真を撮りたいってだけでは?」

 

「だからよ。きっと、同年代で一緒に潜れるの仲間ができて嬉しいんだろうね」

 

「あいつ、よっぽどダイビングが好きなんですね」

 

「そうだね」

 

手に持ったカメラを見ながら微笑んでいる千紗を見た伊織は声をかけるのをやめ、寿に教わっている耕平と合流した

 

一方千紗は悩んで悩んで悩み抜いて買うと決断したカメラを持ってレジへ向かおうとする。が、肩を掴まれて止められた

 

「拓海?」

 

「(*´-ω・)」

 

「これ?思い切って買おうかと思って」

 

「((-ω-。)(。-ω-))」

 

「なんで?」

 

旅費

 

「あ...」

 

千紗はもの選びに夢中で旅費が自身持ちだってことをすっかり忘れていた。このカメラを買ってしまうと所持金が大幅に減ってしまう。誰かに借りる。拓海なら喜んで貸しそうだが千紗の性格上それは絶対ありえない。千紗は悔しさと悲しさをグッと堪えてカメラを元の場所に戻した

 

「そうだ、みんなにも伝えないと」

 

「( ´-ω-)σ」

 

拓海が指差す方では既に会計を済ませている面々が目に入った

 

「みんな大丈夫かな」

 

「(;´Д`)」

 

「そだね。ありがと拓海。教えてくれて」

 

「(。・`ω・´)☆」

 

そういう千紗の顔は悲しみに溢れていた。ムリもない。さっきまで考えていたことが全て水の泡になったのだから。拓海はそんな千紗の悲しそうな背中を見送ってから何か買うのかレジに向かった

 

すっかり日も落ちた時間に全員揃ってGrand Blueに戻ってきた

 

『ただいま〜』

 

「おかえりなさい。いっぱい買ってきたのね」

 

「はい。俺達はマスクを」

 

出迎えてくれた奈々華に買ってきたマスクを見せる初心者3人

 

「あらあら頑張ったのね」

 

「ん?」

 

「頑張った?」

 

「ただ買い物をしてきただけですが」

 

「ううんそうじゃなくて、沖縄に行くお金もかかるのにさらに機材まで買っちゃうなんて」

 

「「「あ...」」」

 

奈々華の爆弾発言により自分の過ちを認識してしまった3人は床を転げ回ってさっきまでの自分を恨んだ。そんな3人の横ではソファに座って天井を見上げる千紗。お金は使わなくてすんだがそれ以上にカメラのことを考えている様子

 

そんな空間を拓海は先程買ったものの袋を片手に1人抜け出して千紗の部屋へ向かった。しかし千紗の部屋に入ることはせずに手に持っていた袋をドアノブにかけて戻っていった

 

「あら、拓海くんおかえり?」

 

「m(*_ _)m」

 

奈々華の問いに頷くだけして拓海は千紗に近づいて顔の前で手を振った

 

「ヾ(・ω・`)」

 

「あ、うん。またね拓海」

 

本来なら見送るはずの千紗がこの状態。仕方なしに拓海は踵を返して店を出た

 

「はぁ...お姉ちゃん、私部屋に行くね」

 

「はーい」

 

こんな日はすぐに寝てしまおう。そう思って自室に戻ろうとする千紗。しかしみなさんおわかりのように千紗の部屋のドアには拓海の置き土産があるのでした

 

「なにこれ」

 

千紗は躊躇なく袋の中に手を入れて中のものを取り出した。それはキレイにラッピングされており丁度千紗の両手に収まるほどの箱であった。千紗はラッピングを丁寧に取って中の箱を開けてみた

 

「これっ...拓海!」

 

千紗は中を確認し入っていた1枚のメモを読んだ。そこには・・・

 

『遅くなってごめん

 

誕生日おめでとう

 

これでたくさん思い出撮ってこ』

 

と記されていた。それを見た瞬間千紗は店を飛び出して拓海を追いかけた

 

「拓海!」

 

「?」

 

そしてまだ遠くまで行っていなかった拓海に勢いよく抱きついた

 

「ありがとう!ありがとう!」

 

「(´ー`)」

 

千紗は涙を流し拓海に感謝の言葉を言い続ける。拓海は千紗が贈ったものを持っていることを確認して喜んでくれていることに嬉しさを感じた。そして優しく千紗の頭を撫でる(実は千紗の頭がいいとこに当たって少し痛いのを我慢してるのは秘密)

 

「ありがとう!本当にありがとう!」

 

「(。-`ω´-)」

 

「でもこれ、拓海、お金は...」

 

「...」

 

千紗の嬉しさはやがて心配になるも拓海は首を横に振る。そして千紗の持っているものからさっき千紗が見たメモを取って笑顔でそれを千紗に見せる

 

「うん...私も拓海とたくさん思い出の”写真“撮りたい...」

 

ウルウルとした瞳で拓海を見上げる千紗。それを優しい眼差しで見つめる拓海。2人はお互いの唇を重ねた

 

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