「六海ー!ほら、早く早くー!これさえ走ればもう終わりだからねー!」
「ぜぇ・・・はぁ・・・よ、四葉ちゃん・・・は、早すぎ・・・もうちょっとスピード落として・・・ぜぇ・・・」
私、中野四葉は2番目の妹の六海と一緒に渡しおすすめのランニングスポットでジョギングを行っています!え?なんでこんなことやってるのかですって?よくぞ聞いてくれました!体力づくりは、もちろんのこと、六海に頼まれたからです!回想はこちら!
『ねぇ、四葉ちゃん、ちょっといい?』
『六海?うん、いいよ。どうしたの?』
『六海ねー、体力をつけたいんだけど・・・どうすればいいの?』
『ふんふんなるほど・・・大丈夫!私に任せて!』
本当にうれしかった。あの体力が絶望的な六海が体力をつけようとしてること、それで私に頼ってくれていることが。そういう経緯もあって私は六海の体力を底上げしようとジョギング中です!
「もー!そんなところで立ち止まってると、上杉さんの授業に遅れちゃうよー!」
「はぁ・・・はぁ・・・そんなこと言ったって、今日の参加者は六海たちと三玖ちゃんでしょ?一花ちゃんはお仕事、二乃ちゃんと五月ちゃんは参加の意思なし・・・遅れてもいいんじゃないの?」
「ダメー!そもそも体力づくりを頼んだのは六海なんだからしっかりしてよー!」
「はぁ・・・はぁ・・・もう無理・・・きつい・・・」
う~ん、今の六海じゃ体力はもう持たないだろうし・・・しょうがないなぁ・・・。私は体力の限界が近い六海を背負って家まで走っていきます。
「今日の分はここまで!さ、お家に帰ろう!」
「え・・・待って・・・今、今日の分って言った・・・?」
「当然だよ!今日やっただけじゃ体力はつかないよ!明日もこのコースをやるからね!」
「ひ・・・ひぃ~・・・」
六海を担いだ時の六海の問いかけに私が答えた時、六海はかわいらしい悲鳴を上げました。
♡♡♡♡♡♡
ジョギングを終え、私たちはシャワーを浴びた後、私服に着替えて疲れをいやすためにリビングでのんびりしています。やっぱり体を動かすのは楽しいな。
「んーー!楽しかったー!ね、六海!」
「ちっとも楽しくないよ!六海にとっては地獄の時間だったよ!これなら絵を描いてた方が何倍も有意義だったよ!」
あれれー?六海はあまり楽しくなかったみたい。でも地獄は言いすぎじゃないかなー?
「あははー、ごめんごめん。次からは休憩多めに取らせてあげるからね」
「・・・六海、もう四葉ちゃんとジョギングしない。自分のペースで体力つけるもん」
「ええー!!」
それはなんかショック!せっかくお姉ちゃんとして頼ってもらえてるのにー!
ピンポーンッ
私が悲しい気持ちを抱いているとピンポンの音が聞こえてきました。きっと上杉さんが来た合図だ。今六海は立つこともままならないから私が代わりにインターホンに出ます。
「あ!上杉さん、いらっしゃーい!こっちは準備万端です!いつでもどうぞー!」
オートロックを解除させて、後は上杉さんを待つだけ。さあ、今日もがんばろー!
「あ、そうだ四葉ちゃん。前からずっと疑問だったこと聞いていい?」
「どうしたの?私に答えられることならなんでも聞いて!」
「四葉ちゃんはさ、なんで最初っから風太郎君の授業を受けたり、味方になったりしているの?六海たち、初めて風太郎君と会ったのは転校したての時だったんだし、そんな義理ないと思うんだけど・・・」
「!!!」
六海が何気ない質問に私は驚愕交じりに目を見開かせます。今でこそ上杉さんをそれなりに信用してる六海だけど、ずっとそのことが引っかかってたんだ・・・。私が・・・上杉さんを味方している理由・・・。その時私の脳裏に浮かび上がったのは、5年前に出会った金髪の男の子・・・。
「・・・それは・・・」
どうしよう・・・なんて答えよう・・・もういっそのこと全部話す?それとも・・・
「あ、四葉、六海、ちょうどいいところに」
私がなんて答えようか悩んでいると、キッチンの奥から三玖が出てきました。
「み、三玖!どうしたの?」
「ちょっとまた料理に挑戦してみた。味見してみて」
三玖の作った料理かー。そういえば三玖は料理を作るのが好きなんだったね。出来栄えはちょっといまいちだけど・・・。
「え・・・やだよ。六海、もうあれ食べたくないよ」
どうやら六海は前に三玖の料理を食べたことがあるらしく、苦い顔をして拒否してます。そんなにあれだったのかな?
「大丈夫。今回は自信ある。六海にリベンジする」
「えー・・・」
三玖の言葉にたいして六海はまだ顔を歪ませてますね。
「私は全然大丈夫だよ!作った料理をここに持ってきて!」
「うん。わかった」
私の言葉に三玖は少しうれしそうにしながらキッチンに向かっていった。一方の六海はというと私にジト目を向けてきている。
「・・・四葉ちゃん、さっきのしつ・・・」
「み、三玖が作った料理ってなんだろう!楽しみだねー!」
「・・・逃げた」
逃げてないよ。心の整理が追い付かないだけだよ。少しだけ待っていると、キッチンから三玖が料理を持って出てきました。私たちの前に置かれた料理は・・・黒い塊のようなものでした。
「「・・・何これ?」」
「コロッケ」
コロッケ?コロッケってあれだよね?茶色くて食べるとじゃがいもの味が広がってサクサクした食感のする食べ物のことだよね?
「石じゃなくて?」
「炭じゃなくて?」
「味は自信ある。食べてみて」
このコロッケ?を見て私と六海はお互いに顔を見合わせます。うーん、せっかく三玖が作ってくれたんだし、食べないと失礼だよね。
「・・・じゃあ食べるよ?」
「い、いただきます・・・」
「おはぎ作ったのか?いただき」
「あっ・・・!!」
私と六海、いつの間にかリビングにやってきた上杉さんは三玖の作ったコロッケ?を一口食べます。・・・うーん、確かにコロッケって言われればそうとも取れるけど・・・なんか、炭の味が強くて口に合わない・・・。
「コロッケか!普通にうまい!」
「炭の味がきつすぎるよー!」
「あんまりおいしくない!」
六海は正直な感想を言っているけど、上杉さんは私たちとは反対の感想を言ってますね。そういえば二乃が言ってたっけ。上杉さんは貧乏舌だって。
「なんだ、四葉と六海はグルメなんだな。わがままな奴らめ」
「上杉さんが味音痴なだけですよ!アンチ!アンチ!」
「そうだよ!おかしいのは風太郎君の味覚だよ!アンチ!アンチ!」
「どっち・・・?」
まったく、こんなに炭の味が強いものをおいしいだなんて・・・上杉さんにはちょっと同情しますよ。
「じゃあそれでいいよ。そしたら試験の復習を・・・」
「待って」
上杉さんが試験の復習を始めようとした時、三玖がストップをかけました。
「・・・完璧においしくなるまで作るから・・・食べて」
「「「え?」」」
この後私たちはお腹いっぱいになるまで三玖に無理やりコロッケ?を食べさせられました。
♡♡♡♡♡♡
三玖の作ったコロッケ?で1番の被害にあっているのは上杉さんでした。私も六海はお腹いっぱいの状態になっているだけマシといえましょう。上杉さんにいたってはお腹を壊してしまっていますから被害が大きいです。
「風太郎君、お腹大丈夫ー?」
「三玖がすぐにお薬買ってきますか安静にしててくださいねー」
「・・・くっ・・・せっかくの家庭教師の日だってのに不覚・・・」
私たちの脳裏に浮かび上がったのは三玖にコロッケ?を食べさせられる光景だった。
『次、これ食べて』
『い、いや、三玖・・・これもうまいんだし、もういいだろ?』
『ダメ。せめて四葉と六海がおいしいっていうまで・・・』
『『ひぃ~・・・』』
「倒れるまで食べさせられるとは思わなかったぞ」
「六海お腹いっぱーい・・・」
「私もお腹ぱんぱんです・・・」
まさか私たちがおいしいって言うまで食べさせらるなんて思わなかったです・・・。まぁ、その前に上杉さんがお腹を壊してコロッケ?地獄からは解放されましたけど。
「お前らが文句言い続けたせいだ!俺は本当にうまいと思ったが、嘘も方便だろ!」
「六海たちが嘘ついたって意味ないもん!」
「そうですよ!だって私たちの嘘は三玖に気付かれますから!」
六海は嘘をつくとき必ず表現や顔に現れることがあるからわかりやすいんですけど、私の嘘もなぜか三玖に気付かれてしまうので嘘をつくより本当のことを言った方が事なきを得ると思ったんですけど・・・現実はそうはなりませんでした。
「はぁ・・・好きな味とでも言っておけば誤魔化せるだろ?」
「好きな味・・・!確かにそれなら少しは誤魔化せるかも!」
「なるほど、勉強になります!上杉さん、ありがとうございます!」
いつも嘘がばれる私にとっては朗報です!次に三玖の料理の味見を頼まれたらそう言おう!
「はぁ・・・そんなこと教えるために来たんじゃないんだけどな・・・」
上杉さんがそんなことを言って嘆いています。あはは、すみません。
「あれー?人ん家でのんきにお昼寝ですかー?薬でも盛られたのかしらー?」
するとそこに偶然二乃と五月がやってきました。二乃は上杉さんに挑発的な言動を放っています。
「二乃・・・五月・・・。皮肉なもんで今日は逆に薬が欲しいくらいだ・・・」
「ふーん。どうでもいいけど。行くわよ、五月。ランチに遅れちゃう」
「え、ええ・・・」
「あ、二乃ちゃん五月ちゃん、外で食事するなら帰りにおみやげ買って来てー!」
「はあ?おみやげー?外でっていっても近場なんだけど・・・」
「まぁいいじゃないですかそれくらい。カプセルチョコのお詫びもしたいので」
二乃と五月は六海と話しながら外へ出ようとします。そういえばもう昼食の時間だっけ・・・私たちはコロッケ?でお腹いっぱいなったからいらないけど・・・。
「四葉、四葉!」
「はい、何でしょう、上杉さん?」
私が2人を見ていると、上杉さんに声をかけられました。
「そろそろ二乃や五月にも勉強させてやりたい!次の試験まで1日も無駄にしたくない!だが、六海は見ての通りで止める気配がない!だから四葉、とりあえずお前が何とかして引き留めてくれ!」
「えぇっ⁉ど、どうしましょう・・・。正直、自信ないですよー」
「嘘でもなんでもつけばいいんだよ!」
!嘘をついて2人を引き留める・・・!
「わかりました!やってみます!」
正直三玖に嘘を見抜かれてるから私にできるか自信ないですが・・・上杉さんのために頑張らないと!
「わかったわかった、なんかよさそうなものを・・・」
「二乃、五月、待って!」
「「?」」
私はとりあえず2人を呼び止めてここで渾身の嘘をつきます!
「見ての通り、上杉さんが重い病に侵されたんだよ!!看病してあげて!!」
「「え?」」
「重い・・・病・・・?」
(四葉・・・お前・・・嘘下手すぎんだろ!!)
どうですか、上杉さん!私の渾身の嘘は!なかなかの出来栄えでしょう!でも正直言って、バレるかどうかで汗がいっぱい出てきちゃってます・・・。
「本当ですか?それなら病院に行った方が・・・」
「そ・・・!それはできないかな!」
「はぁ?なんでよ?」
「動くと死んじゃう病気らしいよ!!」
この嘘は自分でも何を言ってるかわかりません。それほどまでにてんぱっちゃってます。
「えー?そんな奇病聞いたことないけど・・・て、ちょっと待って。病気っていうのおかしくない?」
「え⁉な、何が⁉」
「だってお腹壊す前までは風太郎君、ばっちり動いてたじゃん」
「ええ?」
し、しまったーーー!!六海は今日ずっと私と一緒にいるんだからさっきのが私の嘘だっていうのがわかってしまう!!
「ちょっと四葉、どういうこと?」
「えーっと、えーーっと・・・」
何か、何か他に何か嘘は・・・あ!そうだ!!
「も、もしかしたら、中っちゃったのかな⁉」
「中る?」
「ほら!あそこにあるコロッケできっとやられちゃったんだよ!」
「あれのどこがコロッケよ!!」
その反応は当然だと思う。だって私も最初は石だと思っちゃったし。
「え・・・何それ・・・怖すぎるよ・・・」
「わ、私たちはきっと運がよかったんだね!いやー、中らなくてよかったー!」
「・・・ますます怪しいですね・・・」
や、やばい・・・この嘘は無理ありすぎたかも・・・3人の疑いの目が強くなってる・・・ここで一芝居打たないとばれちゃう・・・けど・・・どうすれば・・・
「ゴホッ!ゴホッ!」
私がどうすべきか悩んでいると、上杉さんが急に咳ごみました。
「あぁ・・・やべっ・・・少し動いて死にかけたぜ・・・」
上杉さんを見てみますと口元に血らしき液体がありました。
「うわわっ!ふ、風太郎君!大丈夫⁉」
「な、何をしてるんですか⁉安静にしててください!」
五月と六海は上杉さんを心配そうに駆け寄ってきました。そして私は見逃しませんでした。上杉さんが3人に見つからないように何かを投げたのを。これは、ケチャップですね。なるほど!これで血に見せかけたんですね!上杉さん、ナイス演技です!
「・・・ま、弱ってるってのは本当みたいね。でも五月と六海がいれば十分でしょ。後は薬飲んで寝れば治るわよ」
な、何とか病気にかかってるって嘘を信じてくれたけど・・・二乃が外に出たらこの嘘は意味なくなっちゃう!引き留めないと・・・!
「ほ、ほら二乃!お昼ならコロッケがあるよ⁉」
「それで病気になったってさっき言わなかった⁉」
う・・・そうだった・・・!ええっと・・・二乃を引き留める方法・・・引き留める方法・・・お昼・・・そうだ!
「二乃は料理上手でしょ⁉お粥作ってあげなよ!」
上杉さん、お腹いっぱいで困ってるところすみません!!でも二乃を止めるにはこれしか・・・!・・・て、二乃がこっちをじっと見てる・・・。
「・・・そのくらいわけないわ。卵入ってるやつでいいわね?」
「あ・・・ああ・・・頼む・・・」
よし!何とか二乃を引き留めることに成功!二乃はお粥を作りにキッチンへ入っていき、その様子を上杉さんは若干困ったような表情をしてみています。本当、ごめんなさい、上杉さん!
「あなたがそんな重い病を患ってしまったなんて知りませんでした・・・」
「下手したら六海もこうなってたってこと?うわぁ・・・今度試食する時気をつけないと・・・」
うまく騙すことに成功した五月と六海は上杉さんを心配そうに見つめてます。なんか、心が痛む・・・。
「四葉、私たちにできることはありますか?」
えっ⁉この状況で五月と六海にできること⁉えーっと、えーーっと・・・何があるんだろう・・・⁉あ!そうだ!!思い出した!!
「手でも握ってあげたらどうかな!!?」
「「「!!??」」」
「ほら、小さい頃寝込んだ時にお母さんがよくしてくれたでしょ?よくなるおまじないだって!」
私の出した名案に五月は拒否を示しています。
「嫌です!それとこれとは話が違います!!」
「四葉、お前もうしゃべんな・・・あ・・・いててて・・・!」
「だ、大丈夫ですか⁉」
上杉さんが少し起き上がろうとした時、腹痛で少し痛がっています。やっぱり心配になってきますよ。
「わかった!それで風太郎君が元気なるなら喜んでやるよ!」
「六海⁉」
「は?」
上杉さんの様子を見て六海は上杉さんに手を握ろうとしますが途中で戸惑っています。しかも心なしかプルプル震えているような・・・。
「・・・やっぱり無理だよー!!五月ちゃん、代わってーー!!」
「ええ⁉私ですか⁉」
「お前まだ俺を嫌っていたのか・・・」
やっぱり上杉さんを心の奥底までは信用しきってない六海は限界が来て五月に交代を申し出ました。ここでもっと仲良くなってほしいのに・・・。
「し、仕方ありませんね・・・あくまで病気を治すため・・・治すためです・・・」
「え?」
今度は五月が上杉さんに触れようとしますが・・・さっきの六海と同じ反応で触れようともしません。
「・・・くっ・・・!やっぱ無理ぃ・・・!」
「よほど俺のことが嫌いのようだな」
まだ上杉さんに思うところがあるのか五月は上杉さんの手を触れずにいました。何というか・・・うまく言葉にできませんが・・・このままじゃダメだと思う!
「やっぱり仲良しの方がいいよ!五月も一緒に勉強しよ!」
「えぇ?」
「これからは一緒に上杉さんの授業を受けようよ!6人一緒の方が絶対楽しいよ!」
不思議なことに私が今抱いている気持ちは嘘をつくときよりもすらすらと言えました。やっぱり私は下手に嘘をつくより、思うがまま、素直に言葉にした方が1番あってます!
「・・・考えてみます」
五月の言葉に六海はパーッと顔が笑顔に満ち溢れています。五月の授業参加を誰よりも望んでいるのは六海だから誰よりもうれしいんだろうね。
「はーい、お粥できたわよー。ごはんが残ってて助かったわ」
と思っている間に二乃が出来上がったお粥を持ってこちらにやってきました。さて二乃にも説得・・・
ぐしっ
「あ」
と思っていたら二乃は足元にあったケチャップの容器を踏んづけてしまい、転んでしまいました。そしてそのまま手に持っていたお粥のお盆が飛んでいき・・・お米が上杉さんの頬に直撃しました。
「あっっっっっっっ!!!???熱いだろ!!!!!」
上杉さんはお粥のあまりの熱さで勢いよく立ち上がり、地団太を踏んでいます。
「ご・・・ごめん・・・大丈・・・」
「て、あれ?普通に動いてる?」
「・・・あ」
・・・あ。私は今までなんて言ったっけ。上杉さんは動くと死んじゃう病気にかかってるといった。そして今、上杉さんは動いています・・・それは当然・・・。
「・・・は、ははは・・・直ったみたい・・・」
嘘がばれてしまいました。今の二乃と五月と六海の顔は怒りで染め上がっています。
「私たちを騙したんですね!!最低です!!」
「ふざけんじゃないわよ!!」
「バカー!!最悪!!信じらんない!!噓つき嘘太郎!!」
二乃と五月は怒ってそのまま外へ出ていき、六海は部屋に戻っていきました。扉を閉める際の音がめちゃくちゃ大きかったです。
「・・・結局、2人だけになっちまったな・・・」
「あはは・・・すみません」
「はぁ・・・これじゃあ試験前と同じだ」
2人だけになってしまったリビングで上杉さんがそんなことを言ってました。同じ、ではないと思いますが・・・。
「そうでしょうか?」
「え?」
「気づきませんでした?上杉さんがうちにいるのに、二乃が追い出そうとしなかったんです」
「ああ、それか。・・・たまたまだろ」
いいえ、たまたまなんかじゃありませんよ。それは確信をもって言えます。
「二乃や五月だけでなく、一花も三玖、六海も変わっているのがわかります。成長してないのは私くらいですよー。テストの点数も悪いままですし、えへへ・・・」
「・・・そんなことないだろ?」
・・・え?
「お前が最初に変わってくれたんだ。まっすぐ素直な奴が1人でもいて助かったんだぜ」
上杉さん・・・私のことをそう思ってくれていたなんて・・・。
「・・・て、少し褒めすぎか。嘘もつけないほどまっすぐすぎて、今日は痛い目に、もとい熱い目にあったしな」
そんな上杉さんの言葉をよそに思い浮かべたのは、六海が言った言葉・・・
『四葉ちゃんはさ、なんで最初っから風太郎君の授業を受けたり、味方になったりしているの?』
そしてもう1つ・・・5年前、
「・・・何で上杉さんの味方をしてるかわかりますか?」
「?なんだそれ?成績を上げたいからだろ?」
「・・・違いますよ」
上杉さん・・・
・・・・・・
私は・・・あなたのことが・・・
「・・・好きだから」
学校の食堂で、あなたに出会えたこと・・・本当にうれしかった・・・胸が張り裂けそうなくらいに・・・。
「・・・え?は?ちょ・・・?」
願うなら、今この時間がずっと続けばいい・・・そう、このまま2人の時間を・・・。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
ダメ。やっぱりこんなこと許されない・・・こんな気持ちは抱いちゃダメだ。だから私は・・・。
「嘘♪」
嘘をついて、自分の気持ちに蓋をする。
「やーい!引っかかりましたねー!私だってやればできるんでーす!」
私は上杉さんから離れて自分の部屋へ戻っていきます。
姉妹みんなのおかげで今の私が成り立ってるんだ。何も変われてない私が、
「・・・もう誰も信用しない・・・」
何か上杉さんがそんなことを言ったのが聞こえてきたような・・・。
♡♡♡♡♡♡
「林間学校♪林間学校♪」
翌日の学校、私の気持ちはとてもうきうきしています!というのも、楽しみにしていた林間学校がもうすぐで始まるからです!楽しみだなー♪帰ったらしおりをちゃんと読まなきゃ!そんな気持ちを隠さずに図書室に入ります。あ、いたいた、上杉さんに三玖♪
「上杉さーん!もうすぐ林間学校ですよー♪」
「四葉か」
鬘を被った上杉さんがこちらを振り向くと・・・怖そうなピエロの顔が⁉
「うわああああ!!??」
「俺だ」
怖そうな顔になったと思いきや・・・あれはお面だったみたい・・・よかった・・・。
「上杉さん!」
「・・・」お面装着
「誰えええええ!!??」
「俺だ」お面外し
「よかったー・・・」
「・・・」装着
「誰ええええええ!!?」
「俺だ」外し
「うわあああああ!!?」
「・・・」装着
「助けてええええ!!!」
「図書室ではお静かに!」
「「すみません・・・」」
あのショートコントを大声でやったせいで図書委員に怒られちゃいました。反省・・・。ふと見てみると上杉さんの近くには怖そうなお面がいくつも入った段ボールがありました。
「その金髪の鬘、絶妙に似合ってますよ!こんなに仮装道具持ってきてどうしたんですか?」
「肝試しの実行委員になったんだって」
肝試しの実行委員といえば・・・林間学校の実行委員を決めるあれですか。ちなみに私はキャンプファイヤー係です!
「へぇ~、上杉さんが珍しく社交的ですね・・・」
「やりたくてやってるわけじゃない。うちのクラスは肝試しを担当してたらしいんだが・・・クラスの奴ら、俺が自習してる隙に面倒な役を押し付けらえたんだ」
あらら、ということはやりたくもない役をやらされたというわけですか・・・
「お気の毒に・・・」
「自業自得」
「とびっきり怖がらせて、この恨み晴らしてやる・・・忘れられない夜にしてやるぜ・・・」
「ノリノリだね」
無理に押し付けられたとはいえ、今の上杉さん、すごく生き生きしてます!
「同じクラスなのに五月は手伝ってくれなかったんだ」
「そうです!1人にやらせるのはひどいです!ちょっと1組に抗議してきます!」
「やめとけ。三玖の言うとおり、俺の自業自得だ」
私が1組に抗議しようとしたところに上杉さんがストップをかけました。でも・・・やっぱり納得がいかないです・・・。
「それに、林間学校自体がどうでもいいしな」
うーむ、それはそれでなんだか寂しい感じがします。
「では、林間学校が楽しみになる話をしましょう!クラスの友達に聞いたんですけど、この学校の林間学校には伝説があるのを知ってますか?」
「伝説?」
「最終日に行われるキャンプファイヤーのダンス。そのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは生涯添い遂げる縁で結ばれるというのです!」
ああ・・・聞いただけでもロマンが広がります!憧れちゃうな~・・・。
「非現実的だ。くだらないな」
「うん」
「冷めてる現代っ子!!キャンプファイヤーですよ⁉結びの縁ですよ⁉ロマンチックだと思いませんか⁉」
「・・・」
「ちっとも思わんな」
こんなにもロマンあふれる話なのに、三玖も上杉さんも無関心!高校生としてそれはダメだと思うのにー!
「さあ、もう勉強を始め・・・」
「やっほー♪」
上杉さんが勉強会開始の合図すると同時に一花がやってきました。
「一花、遅いぞ」
「何その恰好?」
「いいから。今日は数学だ」
「ごめーん。これから撮影が入ってるんだー」
どうやら一花はこの後お仕事みたいでそれを伝えるために来たみたいですね。
「それでね、そういうのを事前に伝えた方がいいと思って・・・はい」
そう言って一花はかばんの中からスマホを取り出し、上杉さんに見せます。
「え?何?くれるの?」
「「「・・・・・・」」」
上杉さん・・・それはさすがにないですよ・・・。
「メアド交換しよってこと!」
「・・・メアドねぇ・・・。そういうの必要あるのか?」
上杉さんは必要ないだろといわんばかりの声でスマホを取り出し、一花とメアドを交換します!私はとってもいいアイディアだと思います!
「アドレス交換大賛成です!上杉さん!私もぜひ参加させてください!・・・あ、その前にこれ、終わらせちゃいますねー」
私は上杉さんにそう言って自分のかばんからいろんな色の折り紙を取り出し、鶴を折っていきます。
「はーい、登録完了♪」
「・・・四葉、一応聞くが、何やってんだ?」
「千羽鶴です!友達の友達が入院したので!」
「それほぼ赤の他人じゃねぇか!!勉強しろ!!」
私にとっては赤の他人じゃありません!それに頼まれたものでもありますし、断れませんよ!
「ちっ・・・半分よこせ!これ終わったら勉強するんだぞ!」
「はい!」
「あ、やってあげるんだ・・・」
「ふふ」
文句言いながらも手伝ってくれる上杉さん、本当に好きです!友達として!
「おお、中野・・・の四女」
「!先生」
私がちょうど何個目かの鶴を折り終えた時に、歴史の先生がやってきました。
「いいところにいた。このノート、みんなの机に配っておいてくれないか?」
「はーい!」
先生に頼まれ、私は大量あるノートを受け取ります。何度もお手数をおかけしてすみません、上杉さん。私、頼まれたら断れませんから!
「それじゃあ、行くね?」
「がんばって」
「一花、ファイトー!」
一花はそう言って図書室を後にしました。
「・・・ん?メール?・・・一花?・・・広められたくなければ、残り5人のアドレスをゲットすべし?・・・!!!??」
ちょうど上杉さんのスマホの着信が届いて、それを見た上杉さんはみるみる顔を青ざめています。え?何が書いてあったんでしょう?
「・・・いやー、やっぱ家庭教師としては⁉6人のメアド知っておかないとなー!!みんなのメアド知りたいなー!!」
よくわかりませんが、メアド交換に積極的になったのはうれしいです!ただ、なんかやけくそ気味になってません?
「協力してあげる」
上杉さんの言葉に三玖は自分のメアドを上杉さんに見せます。上杉さんはすぐに三玖のメアドを登録します。
「わーい、やったぜー(棒)。五月と二乃は今度でいいとして・・・六海の奴はまだ来ない・・・どこにいやがるんだ、あいつ・・・?」
「六海なら二乃と五月と一緒にお腹を満たしてから行くと言ってましたから、食堂にいます!さー、行きましょうー!」
「お、おい!お前のアドレスは・・・」
私は先に先生の頼まれごとを済ませてから二乃たちがいる食堂へ向かいます。上杉さんも後からついてきました。
♡♡♡♡♡♡
「お断りよ。お・こ・と・わ・り」
食堂には案の定に二乃と五月、六海がいましたが、メアドを聞こうにもやっぱり断れてしまいました。それにしても五月のパンもおいしそう。六海もおいしそうにちゅるちゅるとラーメンを啜ってます。
「教えるのはいいけど六海たちのメアドを聞いて得するの風太郎君だけじゃん。全然フェアじゃないよー」
「確かに、私たちにはあなたのアドレスを聞くメリットがありません」
「・・・想定してた通りの反応だな・・・」
あははー、3人の反応を見て上杉さんは少し渋い顔をしてます。
「だが!これならどうだ!今なら俺のアドレスに加えて、らいはのアドレスもセット!お値段も据え置きお買い得だ!」
ら、らいはちゃんのアドレスですってー⁉それを交渉材料に使うなんてそれこそフェアじゃないです!私だってほしいです!
「・・・背に腹は代えられません」
「よし」
「身内を売るなんて卑怯よ!」
らいはちゃんのアドレスが欲しい五月は上杉さんにメアドを教えます。五月、後で私にもらいはちゃんのアドレス教えてね。
「忘れたの、風太郎君?六海はらいはちゃんと約束できるほどの仲なんだよ?当然らいはちゃんのメアドは持ってるんだよー♪」
う、羨ましい・・・!
「あー、そう。お前はメアドを教える気がないと」
「教えないとは言ってないよ?六海のメアドが欲しいなら高級スイーツはもらわないとねー♪」
「そうか、交渉決裂だな」
六海の要求を上杉さんは即答で答えた瞬間、六海は勝ち誇った顔をしています。
「なら仕方ない・・・周りが幻滅してしまうお前の恥ずかしい秘密をここで大暴露するしかないな。それも、とびっきり大声でな」
「んなあああ!!?」
う、上杉さん!それ単なる脅しですよ⁉秘密は確かに気になりますけど・・・そうまでして知りたくありません!
「おーい!!中野六海は禁・・・」
「わーー!!わーー!!教える!!メアド教えるからそれだけはやめてー!!」
「よし」
よし、じゃないですよ!有言実行しかけてるじゃないですか!見損ないましたよ上杉さん!
「うっわ、サイテー」
「卑怯者です!」
「見損ないました!」
「六海は汚されてしまいました・・・」
「何とでもいえ。後六海、誤解を招く言い方はやめろ」
私たちの軽蔑に上杉さんはどこ吹く風といった様子で六海のメールアドレスを登録してます。
「二乃は教えてくれないのか?」
「当たり前よ」
「そうか。なら仕方ない。では、お前抜きで話すとしよう。俺と5人で内緒の話をな」
「・・・・・・か、書くものをよこしなさい」
「よし。なら俺の生徒手帳を使え」
どこまでもゲスい発言をしている上杉さんは二乃に生徒手帳を渡し、二乃は手帳に自分のメアドを書きます。まぁ、何はともあれ・・・
「これで全員分揃いましたね!」
「何言ってんだ?後1人いるだろ?」
え?後1人?他に誰かいましたっけ?えっと、一花、五月、三玖、六海、二乃・・・。
「ああああ!!四葉!!私です!!」
「やっぱこいつただのアホだ」
あ、アホとは心外な!ちょっとド忘れしただけですのに!
「こちらが私のアドレスです!」
「・・・電話来てるぞ」
「え?・・・あ・・・」
私が自分のメアドを見せたと同時に着信が鳴りました。相手は・・・バスケ部の部長さんからでした。
「バスケ部からって・・・まさかお前、まだ連中と・・・」
「あ・・・ああ・・・私、まだ1つ頼まれごとがあったんでしたー。それじゃー、上杉さーん、失礼しますねー」
上杉さんに変に質問される前に私は変に嘘をついてこの場を後にしました。ごめんなさい、上杉さん。でもこの問題は、私が解決しないといけないことなんです。
♡♡♡♡♡♡
バスケ部の部長さんの電話の後、私はすぐさま部室棟にあるバスケ部の部室に向かっています。電話の内容はバスケ部の入部の件でした。
実は先日・・・バスケ部の臨時メンバーとしてバスケの試合に参加していた時、そのバスケ部の部長さんから正式に入部しないかと勧められてきました。当初は断ることもできず、とりあえず保留という形にしましたが・・・今日はきちんと答えを持ってきました。と、部室につきましたね。とりあえず扉を開けてご挨拶。
「皆さーん、お疲れ様です!」
「中野さん!この間はありがとね!」
「いえいえ!お役に立てて何よりです!」
骨折で抜けてしまっていたメンバーもすっかり回復したようで何よりです!
「それで、中野さん。入部の件、考えてくれた?」
来た!私の答えは、もう決まっています。
「はい!誘ってもらえてうれしいです!」
「よかったー!それじゃあ・・・」
「でも・・・ごめんなさい。お断りさせてください」
私は誠意をもってバスケ部の皆さんに頭を下げて謝罪します。バスケ部の皆さんに残念な気持ちにさせてしまうのは心苦しいですけど・・・これが私の気持ちです。
「バスケ部の皆さんが大変なのは重々承知の上ですが・・・放課後は大切な約束があるんです」
『・・・・・・』
「も、もちろん、試合の助っ人なら、いつでもOKですので!」
バスケ部の皆さんは私の気持ちを聞いた後、少し残念そうな笑みを浮かべます。
「そっか・・・なら、仕方ないね。せっかくの才能がもったいない気もするけど・・・」
いいえ、私には何の才能もありません。それは私の中間試験の点数が物語っています。ただ・・・
「才能がない私を・・・応援してくれる人がいるんです」
いつも文句を言いながらも、私たちのことをしっかりと見てくださっている上杉さんの期待に応えたい・・・だから私だけつまずくわけにもいかない・・・それが私の気持ちなんです。
「では、失礼します」
私はバスケ部の皆さんに笑顔で見送られながら、部室のドアを閉めます。ふぅ・・・これで少し荷が軽くなりました。私が図書室に向かおうとしますと、なんと上杉さんがいました!
「ぬわっ⁉う、上杉さん⁉なぜここに⁉」
「・・・図書室に行くところだ」
図書室にですか?図書室は部室棟の全く真逆のはずだったんですが・・・おっかしーなぁ・・・構内図があってないのかな?
「用事は終わったか?これからもしごいてやるから覚悟しろ」
そう言って上杉さんは部室棟から去っていきました。あはは・・・やっぱり嘘がばれてましたか・・・。敵わないなぁ・・・。
「はい!覚悟しました!」
上杉さんもああいってるんです!私も頑張らないと!そんな気持ちを抱きながら家まで帰宅します。なんでって?閉門の時間が迫っているからです。
♡♡♡♡♡♡
家に戻った後、私は今日の晩御飯を取りながら今日起こった出来事をみんなに話します。
「って、ことが今日あってねー」
「だから遅かったんだね」
「図書室に行ってみたら三玖ちゃん、心配してたんだよ。ね♪」
「べ、別に・・・」
あはは、心配かけてごめんね、三玖。ちょっと申し訳なくしていると私のスマホから上杉さんのメールが届きました。
「フータローからだ」
「私も!」
「六海もきてる!」
「一斉送信でしょうか?」
「あはは、上杉さんったら、メアド交換したからって浮かれちゃって・・・」
そんなことを思いながらメールを確認してみたら私の想像とは裏腹に、参考書とかに乗ってる問題集がいっぱいありました。
『これ全部宿題な』
・・・やっぱり断った方がよかったね・・・。
♡♡♡♡♡♡
「信じられない!!こんな朝から乙女の部屋に無断に入るなんて!!」
「私が許可した」
「あんたに何の権利があるのよ!」
「朝からすごい悲鳴だったねー」
翌日の朝、私が目覚めてリビングに向かっていると、すでに二乃と三玖、六海が起きていました。
「また問題を起こしたのですか、この男は」
「朝ごはん食べていきますかー?」
二乃、三玖、六海の視線にはなぜか正座をさせられている上杉さんがいました。
「俺が悪かった。一刻も早く生徒手帳を返してほしかっただけなんだ」
生徒手帳?あ、そういえばあの時自分の生徒手帳を二乃に渡してましたね。ということは返してもらうのを忘れてしまったんですね!意外と上杉さんってドジですね!
「やけに素直ね。何かこれに隠してるんじゃないの?」
二乃が上杉さんに問い詰めていると、一花が下りてきました。
「おはよ、フータロー君。二乃、これ。昨日言ってたもの」
一花が机に置いたのは、耳に穴をあけるための道具、ピアッサーでした。
「1人でできる?」
「で、できるって言ってるでしょ!バカにしないで!」
二乃はそう言ってるけど私は知ってるよ。二乃は痛いのが来るのが怖いんだって。そう思ってると上杉さんはこっそりと二乃から生徒手帳を取り戻そうとしますけど、二乃の視線に気づいて元の姿勢に戻りました。
「・・・返してほしかったらついてきなさい」
「・・・え?」
二乃は上杉さんの生徒手帳を持って自分の部屋に持っていきます。上杉さんはわけもわからずに二乃についていきます。
「・・・ねぇねぇ、あの道具何?」
「あれはピアッサーって言ってね、ほら、私の耳についてるピアス、あるでしょ?これをつけるために耳に穴をあける道具だよ」
ピアッサーの存在を知らない六海は一花が説明する。すると六海は少し難しい顔になる。
「・・・ピアスって不良さんのアイテムじゃないの?」
「六海の不良の印象って何なんですか・・・?」
ちょっとずれた認識を持っている六海に五月は苦笑してます。
「そんなことないよ。それに、ほら。花嫁さんだってこういうピアス、つけるんだしさ」
「!!!花嫁さん!」
花嫁さんの単語に六海の目はきらきらとさせます。
「六海、耳に穴開けてピアスつけたい!」
「え⁉六海、本気⁉」
六海の発言に私は非常に驚いています。
「六海もきれいになりたーい!」
「でも、あれ痛いんじゃないの?」
「うん。痛いよ。でも最初だけだし、大丈夫なんじゃない?」
「え・・・痛いの・・・?」
ピアッサーを使えば耳が痛くなると聞いた瞬間、六海は顔を青ざめていきます。
「や・・・やっぱり、六海にピアスはない、かなー?」
「六海にはまだ早すぎたかー。まだまだ、お子様ってわけだ」
一花と六海のやり取りに私たちは笑いながらテーブルの席に座り、朝食にありつきます。
♡♡♡♡♡♡
朝食を食べ終えた後はいったん部屋に戻って制服に着替えて後は二乃と上杉さんを待つだけです。みんなもすでに準備を終え、各各々で暇をつぶしています。そうしていると、二乃が降りてきました。
「二乃、終わった?」
「・・・よく考えたら、焦る必要なかったわ。少なくとも、花嫁衣裳を着るまでに開けられればね」
あ、結局耳に穴開けなかったんだ。そして二乃の言葉に六海はビクッとなってます。
「あ、それより!この写真見てみて!」
二乃が取り出したのは・・・わあ!私たちが小学生の頃のアルバムだぁ!!懐かしいなぁ~・・・。
「あ!これ!6人の写真だぁ!みんなかわいいね!」
「これいつのころの写真だっけ?」
「6年生」
「5年前っていったら、京都の修学旅行の時だったね!」
「懐かしー!この時はまだ六海はメガネかけてなかったわね!」
「私たちもずいぶん雰囲気が変わりましたね」
アルバムの中の写真には5年前の修学旅行で撮った私たち6姉妹の写真がありました。この時はみんな、何もかもがそっくりで・・・本当に、懐かしいなぁ~・・・。
♡♡♡♡♡♡
『始まりの写真』
六つ子が思い出アルバムで華を咲かせている中、風太郎は何とか二乃から生徒手帳を返してもらい、この中に入ってある写真を取り出す。その写真には金髪の少年、かつての風太郎が写っていた。風太郎がどうしても生徒手帳を返してほしかったのはこの写真を見られたくなかったからだ。
(・・・二乃には俺の写真を見られちまったが・・・半分だけでよかった・・・)
風太郎が取り出した写真には折り目がついてあり、もう半分が隠れていた。
(5年前か・・・少し色あせてきたな・・・)
写真の半分には・・・今六つ子が見ている写真に写っている幼き六つ子の1人が写っていた。それはつまり、風太郎は幼き頃、六つ子のうちだれか1人に会ったことがあるということだ。
(また会えるといいな・・・)
だがそれは、風太郎自身は全く気が付いていないのだ。
10『人好きのお人好し』
つづく
六つ子豆知識
『四葉はスポーツ万能』
三玖「四葉はスポーツ万能」
二乃「ルールとか覚えられるの?」
四葉「む!当然だよ!」
六海「じゃあバスケのルールは?」
四葉「ボールを籠にいれたら3点入る!」
六海「あってるといえばあってるけど・・・」
三玖「てきとう・・・」
四葉「後、練習帰りは買い食いしがち!」
二乃「それただの部活あるあるー!!」
六つ子豆知識、今話分終わり
次回、三玖、六海、五月視点