三玖SIDE
≪三玖、話って何かな?≫
フータローが言っていた平等じゃなくて公平でいこう・・・この言葉に衝撃を受けた私はすぐに一花に電話をして話を聞いてもらおうとしたけど・・・いざ話そうとなるとなかなか切り出せそうにない。それに、平等じゃなくて公平でいい・・・なら、私はどうしたらいいんだろう?
≪もしかして、キャンプファイヤーのこと?≫
「う、うん・・・」
一花の方から話を振ってくれた。これなら少しは話しやすくなったかも・・・。
「クラスのみんなが話てた・・・伝説は、フィナーレの瞬間・・・手を結ばなきゃいけないって・・・」
私がこのことを知ったのは昨日、これにはちょっとだけ驚いていたりする。ずっとフィナーレで踊るとそうなるって思ってたから。
「・・・そうだ。フータローの手は2本ある。両手に花でいこう」
うん・・・我ながらいいアイデアだと・・・
≪ごほっ!ごほっ!・・・え?どうするって?≫
「な、何でもない・・・」
・・・考えてみれば本当、何言ってるんだろう私。さっき平等じゃなく公平でいこうって決めたのに・・・。
≪ごほっ・・・ごめんねー。朝より咳がひどくなってきたかも・・・≫
言われてみれば・・・今朝の時よりちょっと咳がひどくなってる気がする。
「それならスキーしてないで安静にしてて」
≪えー!せっかくウェアに着替えたのにー!私もスキーしたいよー!≫
「ダメ、病人はベッド」
≪はいはい、戻りますよー≫
「お大事に」
電話越しで一花がすごく文句を言っているように聞こえたが、安静にしてないと治るものも治らない。それでよくスキーに来れたものだって今でも思う。
「おお、なんだ、一花か。やっぱりお前も悪化したか。お互いついてないな」
!!?私が電話している間に・・・フータローが戻ってきて・・・て、ていうより・・・顔が近い・・・///
≪あれ?フータロー君に体調悪いって言ったっけ?≫
「いや、さっきお前が・・・」
「す、スピーカー!」
こ、これ以上フータローと顔をくっつけられたら私、どうにかなっちゃいそう・・・///だからそうなる前にスマホの通話をスピーカーモードに切り替えてフータローにも一花の声が聞こえるようにさせる。
≪まぁ、いいや。三玖とフータロー君、一緒なんだね。ちょっと安心・・・かな・・・≫
一花・・・まだ思いつめてる・・・。もう気にしないでっていおうと思ったんだけど・・・フータローがいるんじゃあ・・・
≪じゃあ私は戻るから、2人にお願い。1人でいる五月ちゃんを見つけてあげて。本当は寂しいはずだから≫
五月を・・・?そういえば・・・ここに来ているって聞いたけど・・・1回も姿を見てないかも・・・。
「ああ。わかった」
「一花、ちゃんと部屋に戻ってて」
≪わかってるって。じゃあ、よろしくね≫
一花の話が終わって私は通話を切った。私の話はまだだったんだけど・・・それはフータローがいない時でいい。近くで聞かれるのは、よくない。
「よし、とりあえず五月を探すぞ」
「でも、どこにいるんだろう」
「ま、あいつがいそうなところに行けばいいだろう。俺に心当たりがある」
フータローの心当たりって・・・なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。とにかく私とフータローは五月を探しに向かった。
☆
私の感じた嫌な予感は的中した。フータローの心当たりのある場所っていうのは・・・スキー会場のお食事エリアだった。絶対そうだろうと思った。でも、五月の姿はどこにもいなかった。
「おかしい。ここに五月がいないとは・・・雨でも降るんじゃないか?」
「五月に失礼・・・」
確かに五月は食いしん坊だけど・・・そこまで食い意地を張ってるわけじゃない。・・・自信ないけど・・・。
「そもそもスキーを始めてから1回も見てないな」
「携帯も繋がらないし・・・もしかしたら、上級者コースに行っちゃったのかな・・・?」
あそこは電波の様子が悪いから、着信に気付いてないのかも・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「!フータロー?汗すごいけど・・・大丈夫・・・?」
私が推察している間にフータローは調子が悪そうにしている。そういえばさっきから息遣いが荒いし・・・寒いにも関わらず汗がいっぱい出てるし、今にも倒れこみそう・・・。
「具合悪そう・・・部屋に戻って休んだ方がいい」
今にして思えば、林間学校初日からおかしかったような・・・
「三玖と上杉さんみーっけ!!」
「わっ・・・⁉」
私がフータローの心配していると、後ろから四葉が抱き着かれて、私たちはその勢いで転んでしまった。・・・そういえば追いかけっこしてたんだっけ・・・。
「へへー、こんなところで油断してちゃダメですよー」
「・・・忘れてた・・・」
「四葉・・・」
「一花も二乃も六海も捕まえたし、残るは五月を見つけるだけですね!」
「お前も五月を見つけてないのか?」
「はい!残念ながら!」
四葉もまだ五月を見つけられてないのか・・・四葉なら見つけられると思ってたんだけど・・・。
「おーい、こっちこっちー!」
声のした方向を見てみると、二乃と六海・・・一花までいる・・・。二乃と六海はともかく、一花はまだ残ってたんだ・・・忠告したのに・・・。
「まったく・・・アタシも人探してるんだけど?」
「見つけてどうするつもりなの?どうせフラれるくせに!」
「なんですってこの泥棒猫!!」
「なんなの!二乃ちゃんの猫かぶり!!」
「ま、まぁまぁ、2人とも落ち着いて落ち着いて・・・」
「「ふん!!」」
今もなお一触即発の空気を漂わせてる二乃と六海。一花のストップもあって場はあれずに済んだけど・・・いつ爆発するかわかったものじゃない。
「お前らまだ喧嘩してたのか?いい加減仲直りしたらどうだ?」
「「無理!!」」
「即答かよ・・・」
わかってたこととはいえ、仲直りにはまだ時間がかかりそう・・・て、そんなことより・・・。
「一花・・・休んでてって言ったのに・・・」
「ご、ごめーん!四葉に捕まっちゃって・・・」
四葉も四葉だよ。一花は具合悪いのに・・・そういうのは考慮すべきだと思う。いや、事前に伝えなかった私たちのミスか。
「さあ、一花もフータローも、コテージに戻るよ」
「ま、待ってくれ・・・」
私が一花とフータローをコテージに戻させようとすると、フータローがストップをかけた。
「四葉、五月には逃げられたのか?」
「?いえ、探しましたが見かけもしませんでした」
「それがどうかしたの?風太郎君」
四葉の答えを聞いてフータローは重々しい表情になったような気がした。
「事態は思ったより深刻かもしれない」
「え・・・?」
「何よ?話、詳しく聞かせなさいよ」
フータロー・・・そんなに重々しい顔して・・・どうしたんだろう・・・?
「五月は・・・遭難したかもしれない」
「!!!」
「「「「・・・え?」」」」
五月が・・・遭難・・・?
「いくら広いゲレンデはいえ、6人がこれだけ動き回って誰も会わないのは不自然だ」
「だからって⁉」
言われてみれば・・・確かに私たちの誰もが五月と会えてないのは不自然すぎる・・・。私は気になってもう1度五月に電話をかけてみる。
「・・・ダメ。やっぱり繋がらない。一花、五月は本当にスキーに行くって言ってたんだよね?」
「え・・・?う、うん・・・」
「じゃあ、上級者コースは?そこに行ったんじゃないかな?」
「そこはアタシも行ったけどいなかったわ」
上級者コースにもいなかった・・・?五月、本当にどこ行ったの・・・?
「・・・ちょうど入れ違ったのかも。私、ちょっと見に行ってくるよ」
「!待って!ここ、まだ行ってないかも!」
「え?どこ?」
「ここ!」
ゲレンデの地図に四葉が指さしたのはプロフェショナル・コースだった。・・・え、でもそこって・・・
「このあたりって・・・最初に先生が言ってたよね?まだ整備されてない危険なルートだから、立ち入り禁止って・・・」
私も聞いた。近づいちゃダメだって・・・。・・・まさか・・・五月はこのコースに・・・?そこまでの考えに至ると六海はどんどんと顔を青ざめていってる。
「む・・・六海、このコースに行ってくる!」
「待ちなさい!今行ってどうなるの⁉あんたまで遭難するかもしれないのよ⁉」
「でも・・・でも二乃ちゃん・・・五月ちゃんが・・・」
「わかってる!まずは本当にコテージにいないか見に行ってみましょう!」
「わ、私は先生に行ってくるよ!」
「ちょ・・・ちょっと待って・・・もう少し探してみようよ」
思っていた以上に深刻な状況にみんな大慌ての中、一花がそんなこと言ってきた。
「なんでよ!場合によってレスキューが必要になるかもしれないのよ⁉」
「えっと・・・五月ちゃんもあまり大事にしたくないんじゃないかなーって・・・」
「もう十分に大事なんだよ!!!!!」
「!!?」ビクッ
一花の言い分に六海は今までにないくらいの大声を叫んだ。
「五月ちゃんの命がかかってるんだよ!!?そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!!?」
「・・・っ」
「・・・六海・・・嫌だよ・・・大好きなお姉ちゃんが・・・1人でもいなくなっちゃうのは・・・うぐ・・・ひっく・・・」
六海は不安が強まって、思わず泣き出してしまう。すると、さっきまで喧嘩していたはずの二乃が六海の頭を優しく撫でている。
「・・・ごめんね・・・」
一花もさっきの言葉に非があると認め、弱弱しく謝ってる。
「ぐっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
!五月の方も心配だけど・・・それと同じようにフータローも具合がどんどん悪くなっていってる・・・。
「フータロー・・・もう休んだ方がいいよ・・・」
「上杉さん・・・?」
私と四葉が声をかけても何も反応を示してくれない・・・本当に心配になってきた・・・。
「とにかく、六海はみんなといなさい。アタシが先生を呼んでくるから」
「・・・待ってくれ。俺に心当たりがある」
「フータロー・・・?」
二乃が先生を呼びに行こうとした時、フータローが止めた。心当たりっていったいどういうこと・・・?
「心当たりって・・・」
「大丈夫だ。おそらく見つかる。お前たちはここで待っていてくれ」
「・・・信じていいのよね?」
「ああ。一花、ついてきてくれ」
「え?う、うん・・・」
フータローは一花を連れて五月を探しに向かっていっちゃった・・・。2人とも体調悪いのに・・・。大丈夫だよね・・・?・・・お願い・・・五月を連れて無事に帰ってきて・・・。
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
『五月発見!』
五月を探しに向かった風太郎と一花はゲレンデがよく見えるゴンドラに乗り、五月を探している。
「もしかして心当たりって・・・ここから探すこと・・・?」
「まぁ、そんなところだ。しかし・・・意外と高いな・・・」
「確かによく見えそうだけど・・・」
一花はそう言って何故か風太郎の顔を見つめ、悲しそうな顔をしている。ふとしていると、一花は目の前のゴンドラに乗っているカップルが寄り添っている姿を見て、顔を赤らめる。
「や・・・やっぱやめない・・・?」
一花は捜索を切り上げようとすると、風太郎は何か発見する。
「あ、あれ、五月じゃないか?」
「え?どれ?」
「あれだよあれ」
「あれじゃわかんないよ」
「今真下にいる女子だ」
一花は風太郎が発見した人物を見て煮え切らないような顔をしている。
「あー、あの人・・・」
「あれ絶対五月だろ」
「そうかなぁ・・・」
「よく見ろって!似てるって」
「う~ん・・・違うような・・・」
「・・・だよな」
「え?」
「だってあれ、どう見てもおっさん、男だぜ」
先ほど風太郎が発見した人物は全く知らない男だった。一花の煮え切らない反応に確信をもって一花の被っていたフードを下ろさせる。フードが下りた瞬間、一花にはないであろう長髪が風になびかせていた。
「見つけた」
風太郎の隣にいたのは一花ではなく、探し人である五月だった。そう、これまで自分たちとずっと一緒にいた一花の正体は、五月だったのだ。
♡♡♡♡♡♡
五月SIDE
スキー会場に行く前、私は昨日の倉庫の一件で風邪をひいてしまった一花の看病をしております。一花も上杉君も濡れた様子でしたし、当然と言えば当然です。
「いやー・・・悪いねー・・・。こんな時に体調を崩すなんて、ついてないなー・・・」
「事故とはいえ、不注意が招いた結果です。安静して、日中は大人しくしていてください」
「え~・・・」
一花もスキーに行きたいのか、不満の声を漏らしています。えー、じゃないですよ全く・・・。
「あー・・・五月ちゃんは私に付き合わなくていいから、スキーしてきな」
「ですが・・・」
「大丈夫。私も回復したら、合流するから」
それでも、今の一花を置いていくわけには・・・それに・・・上杉君のこともありますし・・・。
「・・・それとも、フータロー君と顔合わせづらい?」
「!・・・・・」
「あの旅館から、ずっと警戒してたもんね」
「やはりあれは一花でしたか・・・」
林間学校初日で泊まったあの旅館で朝上杉君の近くにいたのは予想通り一花でした。四葉も六海も髪は短いですが・・・あの短さは一花と一致していましたから・・・。
「まだ3か月です・・・。あの日、食堂で六海と一緒に勉強を教えてもらおうとした時には考えもしませんでした。まさかこんなことになるなんて・・・」
「ははは・・・そんなにフータロー君は悪い奴に見えるかな?」
「そ、そういうわけでは・・・」
いくら3か月の付き合いでも、デリカシーがないこと以外は悪い人ではないのはわかります。
「ただ・・・男女の関係となれば話は別です。私は彼のことを何も知らなさすぎる。男の人は、もっと見極めて選ばないといけません」
私は・・・姉妹たちにお母さんのように苦しい思いをさせたくありません。そのためにも私が、しっかりしないといけません。そのためにも・・・
「・・・五月ちゃんは、まだ追ってるんだね・・・」
「・・・・・・」
「大丈夫。フータロー君はお父さんとは違うよ」
・・・それでも、それでも私は彼を、上杉君を見極めなければいけません。もう二度と、あの日のことを繰り返さないように・・・。
♡♡♡♡♡♡
その後は私は一花に成り代わり、上杉君と合流しました。何としてでも・・・彼のことを見極めるために。
聞けば上杉君は三玖と六海と一緒に四葉にスキーを習っていたようです。なら、これを利用しない手はありません。
「追いかけっこ!上手な四葉が鬼ねー!」
これならみんなバラバラに行動するはずですし、うまく上杉君に話を聞くことができます。
滑っていくさい、三玖が上杉君から離れたり、六海に大惨事が起こったりといろいろありましたが・・・ようやく上杉君と話をすることができます。
「確認したいことがあるんだけど・・・」
「!一花・・・」
「昨日のこと、誰にも言ってないよね?」
私が聞いているのは当然ながら、泊まった旅館での一花の出来事です。一花と一緒にいたのは見間違えるはずもなく、上杉君なのですから。
「・・・言えないだろ、あんなこと」
「・・・それって・・・」
昨日の今朝の出来事を知っているって・・・ことですよね・・・?
「・・・一花。・・・・・・これ、どうやって止めんの?」
・・・・・・え?
「え・・・えええ⁉上杉くーん⁉」
上杉君はスピードが止める方法がわからず、そのまままっすぐと滑っていきました。・・・聞きそびれてしまいました・・・。
その後は四葉に捕まり、さらに二乃と六海に合流しました。あの2人、昨日から喧嘩したままですが・・・いったい何があったのでしょう?
しかしその後・・・まさかあんな大事になるとは思いもよりませんでした。
「五月は・・・遭難したかもしれない」
事の発端は上杉君の言葉でした。話を聞けば、みんなが動き回ってる中で誰も私こと五月を見たものがいないとのこと。改めて考え直してみれば確かに不自然であると今になって気づきました。こんなことなら一旦変装を外して私として出てくればよかったです・・・。
それからというもの、もうみんな大騒ぎでした。私は場を鎮めようとしましたが・・・
「もう十分に大事なんだよ!!!!!」
「!!?」ビクッ
「五月ちゃんの命がかかってるんだよ!!?そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!!?」
「・・・っ」
「・・・六海・・・嫌だよ・・・大好きなお姉ちゃんが・・・1人でもいなくなっちゃうのは・・・うぐ・・・ひっく・・・」
違う・・・違うんです・・・こんな・・・こんな事態になるとは思わなかったんです。もう私じゃ止められない・・・。自分は五月だって言い出すには・・・場があまりにもそんな雰囲気ではなくなってしまいました。
「俺に心当たりがある。
大丈夫だ。おそらく見つかる。
一花、ついてきてくれ」
え・・・?上杉君・・・いったい何を・・・?
その後に私は上杉君に言われるがまま、ゴンドラに乗り込んでいました。事の大きさでもうどうすればいいのかわからなくなってしまいました。
「あ、あれ、五月じゃないか?」
上杉君がそんなことを言っていたのがとても信じられませんでした。だって、五月は私であって、いくら探してもいないはずなのに。上杉君は指をさしますが、私はあまり視力がよくないのではっきりと見えませんでした。
「だってあれ、どう見てもおっさん、男だぜ」
私の態度で何やら確信ついた様子で上杉君は私のフードを下ろしてきました。
「見つけた」
そして、現在に至ります。
♡♡♡♡♡♡
「お前は六海と同じく目が悪いから、メガネかコンタクトがないと見えにくいだろ?」
上杉君は私が一花ではなく、五月であると気づいていたから、姉妹から離れてわざわざこんなところまで・・・。
「・・・悪いな、大事にしちまって。言い出しづらかっただろ?」
「・・・いつから・・・気づいたんですか・・・?」
私はそこだけが気になって仕方なかった。だって、未だに私たちの顔を見分けることもできなかったのですから、余計に・・・。
「気づいたのはさっきだが・・・きっかけはあの時、お前が俺を"上杉君"と呼んだからだ」
!!あの時といえば・・・上杉君が滑るのを止めることができずにいた時に思わず言ったあれを・・・。
「はー・・・一花は俺を名前で呼ぶ。いくら俺だってな・・・それくらいはお前たちのことを知ってる」
上杉君・・・私たちの細かいところまで、知っていて・・・。
「・・・すみま・・・せんでした・・・。私・・・確かめたくって・・・」
私は上杉君に対し、姉妹たちにたいして申し訳ない気持ちでいっぱいになりました・・・。私が、余計なことをしなければ、こんなことには・・・。
「バカ不器用め・・・。つめが・・・甘いんだよ・・・」
!!上杉君がそう口にした時、彼は私の肩に顔を引っ付けてきました。こ、これじゃあまるで、前のゴンドラに乗っている人たちと同じ・・・///
「あ・・・あの・・・///上杉君・・・それは、ちょっと・・・///」
私が声をかけても、上杉君は何も反応しませんでした。
がくんっ!
「えっ⁉」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・上杉・・・君・・・?」
このくらみ具合に嫌な予感がして私は彼のおでこに触れてみました。
!!!ひどい熱・・・!まさか・・・上杉君はこんな状態の中で、ここまで・・・⁉
「上杉君!!しっかりしてください!!上杉君!!上杉君!!」
私はすぐに上杉君を抱えて急いで姉妹たちの元へと戻っていきます。上杉君・・・持っていてください・・・絶対にコテージまで連れていきますからね!
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
二乃SIDE
アタシ達が上杉と五月の帰りを待っていると、五月が上杉を抱えて戻ってきた。五月が戻ってきたのはよかったけど・・・問題はそこじゃない。上杉は明らかに体調がやばそうな状況にある。そんな状況であるため、当然三玖をはじめとする姉妹たちは上杉を心配している。アタシも、一応は心配している。
話を聞く限り、五月は一花に成り代わっていたという。一花はもうすでにコテージに戻っていたらしい。つまり事の原因は五月の行動の問題ということになる。全く人騒がせなことしてくれちゃって・・・。
アタシ達はすぐに上杉をコテージにいる先生のところまで連れていき、事情を説明した。
「よくここまで連れてきてくれたな。上杉はこの部屋で安静させて様子を見る。これ以上悪化するようなら私が病院に送ろう。誰か、こいつの荷物を持ってきてくれ」
「はい・・・私が行きます」
「私も・・・行きます。事の原因は私にあります」
上杉の荷物をまとめる役は四葉と五月が名乗りを上げた。
「ごめん・・・私のせいだ・・・」
昨日、何があったか知らないけど、一花も今回の件で責任を抱いてるみたいね。
「お前たちは着替えて広場に集合だ。じきキャンプファイヤーが始まる」
「あの・・・私・・・付き添います」
「一花・・・」
「むつ・・・いえ、私も付き添います!残らせてください!」
一花も六海も上杉のために残ろうとしてる。
「ごほっ・・・お前たちがいても仕方ないだろ・・・1人にしてくれ・・・」
・・・何なのその態度。みんなあんたを心配して言ってくれてるのに。アタシは上杉のその態度が気に入らなかった。
「ちょっと、冷たいんじゃない?みんなあんたを心配して・・・」
「ということだ。早く行きなさい」
アタシの言い分を止めるように先生がキャンプファイヤーに行くように指示してきた。
「でも、先生・・・」
「安静といっただろ。これよりこの部屋は、立ち入り禁止とする」
「「「「「「えっ⁉」」」」」」
「見つけたら罰則を与えるからな」
罰則を与えられるんじゃどうしようもなくなってみんなキャンプファイヤー会場に向かっていく。
「・・・二乃ちゃん。いこ」
「・・・わかってるわよ」
アタシと六海もこの場を先生に任せてアタシ達もキャンプファイヤーに向かおうとすると・・・
「・・・二乃、六海。ちょっといいか?」
「「!」」
上杉に呼ばれたわ。いったい何の用かしら?上杉はアタシと六海を部屋の近くまで連れてこられた。
「金太郎についてなんだが・・・」
「「!!」」
ここでキンタロー君の話が出てくるなんて・・・やっぱりスキー場で見かけた彼はキンタロー君だったのね。
「外せない用事ができたらしい。スキー場でたまたま会って頼まれたんだ」
それって・・・キャンプファイヤーには来られない・・・て、ことよね・・・。
「やっぱり彼だったんだ・・・」
「そっか・・・それなら、仕方ないよね・・・」
「・・・てことは、嫌われちゃったのかな?少し重たかったのかしら・・・」
「ん・・・いや・・・」
「でも、一応待つだけ待ってみるね」
「・・・なぁ二乃、六海。あれは・・・」
「上杉!何をしている!早く休みなさい!」
上杉が何か言いかけた時、先生が部屋に入るように上杉に言ってきた。
「・・・悪い。元気出せよ」
上杉はアタシ達にそう言って部屋に向かっていった。それを見届けた後、六海はアタシを連れてキャンプファイヤー会場に向かっていく。
♡♡♡♡♡♡
キャンプファイヤーが始まって、周りはフォークダンスどうするかで話し合ったり、今日踊りに誘っている人たちが何人もいるわ。アタシと六海はそんな中でキンタロー君が来ないか待ってる。・・・本当、くっだらないわ。来るはずがないって言われたばかりなのにね。
「真鍋さん、僕と踊ってくれませんか⁉」
「悪いけど私、噂とか信じないタイプなのよね。それに、君好みじゃないし」
「そ、そんなぁ・・・」ガーンッ
目の前で失恋現場を見るのは初めてだわ。
「すごいなぁ、真鍋さん。あんなハッキリと・・・」
「いったい何を見せられてんのかしらね、アタシ達」
六海は六海であの真鍋って子に関心を抱いてるわね。
「・・・やっぱり来ないね、キンちゃん」
「・・・そうね。お互い、フラれちゃったわね」
「・・・・・・」
「その・・・元気出しなさいよ」
お互い喧嘩をしておいて虫がいい話なのはわかってるけど・・・落ち込んでるかもしれない六海をアタシは励ます。すると六海はアタシに抱き着いてきた。
「ちょ・・・ちょっと六海⁉」
「・・・ごめんね、二乃ちゃん。さんざんひどいこと言っちゃって・・・」
「え・・・?」
六海はアタシに向かって謝罪の言葉を言ってきた。先に言いがかりをつけたのはアタシなのに・・・なんで・・・?
「六海、あんな気持ち初めてで・・・どうすればいいのかわかんなくて・・・。キンちゃんを横取りするつもりはないのに・・・本当に・・・ごめんね・・・」
六海・・・。
「ううん、悪いのはアタシ。あんたがキンタロー君に会ったどころか、踊る約束までしたって聞いて、ついカッとなって・・・。アタシが間違ってたわ」
「えへへ・・・これで仲直り、だね♪」
仲直り、か・・・。上杉があんなことになった後だから全然実感わかないわね。
「じゃあ六海、そろそろ行くね」
「え?どこ行くのよ?」
「風太郎君とこ。キンちゃんがここに残ってたなら、絶対寄り添うと思うから」
六海は話したいことを話し終えたら上杉のいる部屋へと向かっていったわ。
『悪い。元気出せよ』
・・・1番元気のないあんたが言うなっての。恩着せがましく心配なんてして・・・少しは自分の心配しなさいよ。
『信じていいのよね?』
『・・・ああ』
・・・本当、ムカつく・・・。
「・・・仕方ないわね」
アタシはキャンプファイヤー会場を後にして、とある場所目指して歩いていく。
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
一花SIDE
キャンプファイヤー、盛り上がってるなぁ・・・。きっと本当なら、フータロー君もここに来ていたんだろうなぁ・・・。それを私が昨日のことで・・・本当、申し訳ないよ・・・。
「・・・あ、相手がいないなら、踊ってあげてもいいけど///」
「え?・・・お、おう///」
話には聞いていたけど、前田君、踊る相手が見つかってよかったじゃん。お姉さん、安心しちゃった。・・・三玖のその場しのぎの約束は、彼から始まったんだよね。本当、三玖には本当に悪いことしたな・・・。
ピトッ
「おぉっ⁉」
今頬に暖かい感触が!
「あげる。風邪には水分補給が大事」
「あ、ありがとう・・・三玖・・・」
さっきのは三玖がやったんだ・・・。手に持ってるのは・・・抹茶ソーダかぁ・・・。受け取ってみると、本当に暖かさが伝わってきた。
「へぇー、ホットもあるんだ・・・抹茶ソーダ・・・」
ちょっと驚いたけど・・・できれば別の飲み物がよかったなーって、わがままがある。
「・・・」
三玖は私のおでこと自分のおでこを引っ付けあってる。・・・熱を測ってくれてるのかな?
「・・・よかった。治ってる」
「・・・やっぱり、私が移しちゃったのかな・・・?」
「フータローは最初からおかしかった」
「え?」
最初からおかしかったって・・・この林間学校が始まってからのこと?確かにあの時からテンション高かったけど・・・
「今にして思えば、ずっと具合が悪かったんだと思う。もっと、よく見てあげてたら・・・私も、自分のことで必死だったから・・・」
三玖・・・。三玖のその気持ちをちゃんと理解してあげられてたら、こんなことにはならなかったのかな・・・。
「・・・ごめんね」
「え?」
「ダンス、断るべきだった。もっと早く気づいてあげてたらよかったのにね・・・。伝説のことも・・・三玖の想いにも・・・」
そして・・・私の抱いてる、この気持ちにも・・・。もう何もかもダメだなぁ、私。長女失格だよ・・・。そんな自責の念を抱いてると三玖は私を抱いてきた。
「え?三玖?」
「ずっと気にしてた。一花や二乃、みんながどうフータローと接しているのか。私だけ特別なんて、平等じゃないって思ってたから・・・」
「そんなこと・・・」
「でも、もうやめた」
え・・・?三玖、いったい何を・・・?
「私は・・・フータローが好き。パートナーじゃなくて、1人の異性として好き」
!!三玖が・・・自分の素直な気持ちを・・・自分から・・・。
「だから、好き勝手にするよ。その代わり、一花もみんなも、お好きにどうぞ。負けないから」
三玖・・・そこまでのことを言えるようになったなんて・・・お姉さん、ちょっと安心した。これもフータロー君のおかげ、かな?私は抹茶ソーダをぐびっと一口飲む。
・・・うっ、これは・・・抹茶独特な苦みにソーダのしゅわしゅわとした刺激がのどにきて・・・これ、控えめにしても豪快にしても・・・
「うーん・・・絶妙にまずい・・・」
「そうかな・・・?」
「でも、効力バツグンだよ。ありがとうね、三玖」
三玖のおかげでちょっとは元気になった、かな?
「じゃあ、いこっか」
「うん」
私と三玖はとある場所に向かってキャンプファイヤー会場を後にする。
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
四葉SIDE
私は先生に頼まれていた通り、上杉さんの荷物を持ってくるように言われて、上杉さんが持ってきた荷物をかばんに詰めています。
「ふぅ・・・これで後は、しおりを入れるだけっと・・・」
私がそこまで至ると、ふと罪悪感が芽生えてきた。上杉さん、私が今日部屋に来た時からだるそうにしていたのは気づいていましたが、まさか風邪にかかっていたなんて思いもよりませんでした・・・。だから私、後悔してるんです。上杉さんを無理にスキーに連れていったことを・・・。私が思いとどまっていれば・・・。
今にして思えば私、"あの時"から何も変わってない・・・。そんな自分が嫌になります。そんな自己嫌悪を抱きながら上杉さんのしおりに手を触れようとした時・・・
「!これ・・・」
しおりには付箋がいっぱいついて、ボロボロの状態になっているのに気づきました。
「四葉、上杉君の荷物はまだ・・・」
私がしおりを見てしんみりしていると、五月がやってきたのに気づきました。
「四葉?」
「・・・これ・・・上杉さんのしおり・・・付箋やメモがいっぱい・・・こんなに楽しみにしてたのに・・・」
「・・・・・・」
「具合の悪い上杉さんを連れまわして・・・台無しにしちゃった・・・。私が余計なことしたから・・・」
私、バカみたい・・・後悔のない林間学校にしようって、上杉さんに言ったのに・・・大きな後悔を残しちゃった・・・。
「・・・結局のところ、上杉君がどう感じたのか、何を考えているのか、本人に聞かないとわかりません」
そうは言うけど・・・
「!・・・ただ、無駄ではなかったと思いますよ」
そう言って五月は私が渡したしおりを私に見せてきました。そこには、1枚のメモがありました。
『らいはへの土産話
楽しかった話
・車内で六つ子ゲーム
・四葉が手伝ってくれた肝試し
候補
3日目のスキー
(四葉が教えてくれるらしい)
驚いた話
・5年ぶりの旅館
・五月を二乃と探す
・六海の友人を本人と探す』
!!このメモ・・・内容からして、昨日書いたものだというのがすぐにわかった。最後は悲しい終わり方だったけど・・・もしかして・・・上杉さん、林間学校を楽しんでくれてた・・・?
「これ、本当かな⁉三玖は寂しい終わり方って言ってたけど、楽しかったのかな⁉」
「・・・ふふ、さあ」
うん、いつまでもくよくよしてるのは私らしくない!このメモを見たら、黙ってこのまま終わり、なんてもってのほか!というわけで・・・
「上杉さんに聞いてみる!」
「え⁉今からですか⁉」
「こっそり行けば大丈夫だって!」
そうと決まれば善は急げ!私は上杉さんの部屋に向かって急いで向かっていく。もちろん、こっそりとね、にしし♪
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
六海SIDE
・・・・・・・・・。
「ごほっ!げほっ!」
「⁉おっと・・・寝てしまった。すっかり暗くなったな・・・。電気電気・・・」
ガチャッ
「主任、キャンプファイヤーも終盤です。手伝ってもらえますか?」
「ああ、わかった。手伝おう」
「寝てたでしょ?」
「え⁉あ、いや・・・」
バタンッ
・・・あわわわ・・・ば、バレずに済んでよかった~・・・。六海が来てた時には先生が寝てたからこっそり入ってみたけど・・・電気をつけてたらばれてたよ・・・。・・・お姉ちゃんたち以外でこんなことするなんて初めてだから、自分でも戸惑っちゃってるよ・・・。ただ1つわかってるのは・・・風太郎君を1人にさせちゃいけないってこと。
と、とにかく電気つけなきゃ・・・。こう暗いときは・・・壁伝いに歩けって言ってたっけ・・・。
コツンッ
いた・・・足が何かにぶつかっていたい・・・。でも、手の感触からしてこれは・・・壁だ。よし・・・こうやって壁伝いにたどって・・・あ、暗いけど、電気見っけ。これで辺りが見えるはず・・・
パチンッ
「「「「「「・・・えっ⁉」」」」」」
電気をつけた瞬間、六海の視界に映ったのは・・・六海のお姉ちゃんたち、全員だった。
「ええーーー!!?みんな来てたのー!!?」
「よ、四葉、静かに!」
「な、なんであんたたちがいるのよ⁉」
「二乃こそ意外」
「あ、アタシはよく効くお守りを貸そうと思っただけ・・・」
「私たちもフータロー君が心配で来たんだよね」
「うん」
「私は、四葉に見習おうと思って・・・気づいたら、ここまで・・・」
「えへへへ、なんかうれしーなー!全員同じこと考えてたんだね♪」
「あ、アタシは違うって言ってるでしょ⁉」
「素直じゃない」
六つ子ってここまで似てるんだなぁって考えると、妙に感心したりして、それがうれしくって六海は思わず笑みを浮かべちゃった。六海は風太郎君の側まで近づく。
「ねぇ、風太郎君。みんな風太郎君に元気になってもらいたくて、ここまで来たんだよ。はっきり言って、風太郎君がいったいどういった人なのか、まだよくわからないんだ。だから・・・元気になったら、風太郎君のこと、もっとたくさん聞かせてね。約束、だよ♪」
最初はあれだけ嫌だったのに・・・手を触れたいとすらも思わなかったのに・・・でも、今なら・・・この手を、触れられるような気がするよ。
そして、外では・・・フィナーレの花火が、鳴り響いた。
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
『?????』
「パパパパーン、パパパパーン・・・」
とある家で、1人の女子高生が結婚式でよく聞くメロディを口ずさんでいる。そんな時、女子高生のスマホから着信が来た。女子高生はすぐに電話に出る。
「はーい。もう会場についた?・・・え?えーー!!?なんでそんな大事なものを忘れるの⁉・・・もー、持っていくけどさー・・・」
≪・・・すまん。頼んだ・・・らいは≫
「もう大人なんだからしっかりしてよ、お兄ちゃん・・・」
女子高生、上杉らいはは兄の上杉風太郎に呆れながら通話を切った。
「なんだ?風太郎からか?」
「結婚指輪を家に忘れたって。こんな新郎他にいないよー」
「ふっ・・・血は争えんな・・・」
「もう1人いるんかーい!」
結婚指輪を忘れるという風太郎の行為を父、上杉勇也は笑みを浮かべている。それにツッコミをいれるらいは。
「がはははは!」
「決めた!私、お兄ちゃんやお父さんよりいい人と結婚する!」
「ゆるさーん!!!俺を1人にしないでくれーー!!!」
らいはの宣言に勇也は悲痛な叫びをあげる。
「彼氏は⁉彼氏はまだいないんだよな⁉」
「はぁ・・・お兄ちゃんも仕事以外無頓着なのは相変わらずなんだから・・・」
「ああ・・・そうだな。それでも学生の頃より、マシになった方だろ」
「そうだけど・・・あんなんでいい旦那さんになれるか心配だよー・・・」
らいは兄風太郎に呆れながら、朝食を並べていく。その朝食はサラダと目玉焼きだけ。
「おいおい、朝食がこれだけって・・・そんなに家計がやばいのか?」
「やばいけど違うよ。今たくさん食べたらもったいないじゃん」
らいははそう言ってにかっと笑みを浮かべる。
「今日のお昼ご飯はすっごい豪華なんだから!」
らいはや勇也が笑うのも無理はない。なぜなら今日は・・・風太郎とその妻との結婚式なのだから。
♡♡♡♡♡♡
結婚式会場到着し、上杉家と中野家の親族とあいさつを済ませたらいは風太郎に結婚を指輪を届けようと新郎の部屋へと向かっていく。
「うわぁ~・・・なんだかお城みたい・・・」
らいははあまり豪華な建物に感服しながら新郎の部屋を探していく。
「なんでこんなことになってるの?」
「本当ですね・・・手配ミスでしょうか・・・?」
スタッフがそんなことをぼやいている間に、らいはは次の部屋へと入っていく。
「わぁ~・・・1日でこんなに着替えるんだ~。いつか私も着る日が来るのかなー」
らいはは何着もあるウェディングドレスを見て、夢を膨らませている。
「髪を上げますね」
「お願いします」
その先の部屋は新婦の部屋となっており、その扉の先にいる新婦、六つ子の姉妹の1人、中野○○が髪の毛をスタッフがあげている。
「わー・・・」
○○の美しさにらいはは見惚れている。そんな時にふと隣の部屋を見てみると、新郎である風太郎が居眠りしている。
「あー!いたいたぁ・・・今日が特別な日だってわかってるのかなー?」
眠りこけている風太郎を見て呆れている。
「今から結婚するんだよ?でも超現実主義者だからなぁ・・・そういうの気にしてな・・・」
らいはがそこまで言うと、風太郎の腕にもうボロボロになっているミサンガをつけていることに気付く。
「懐かし・・・これいつ作ったんだっけ・・・?まだ持ってたんだ」
自分が作ったお守りを見てらいははにっこりと微笑んでいる。
「結婚おめでとう、お兄ちゃん」
らいはは風太郎に祝福の言葉をかけて、結婚指輪を置いて、新婦の部屋を去っていった。
♡♡♡♡♡♡
そして、ついに始まった結婚式・・・
「新郎、入場」
新婦の言葉と共に会場の扉が開かれ、新郎、上杉風太郎が入場する。
「おーい、上杉ー」
「上杉ー、こっちやー」
風太郎が前に進んでいくと、男女のカップルが声をかけてきた。
「や。久しぶりー」
女性は茶髪の短髪で左目下にほくろがついているのが特徴だ。
「結婚おめっとさん。めでたいわー」
男性は黒髪できれいに整えられていて、関西弁が特徴となっている。
「・・・あ!あんたまた中学の同級生の顔忘れたでしょ!いい?私は・・・」
「今度はちゃんと覚えてるさ。真鍋だろ?・・・いや、もうじき坂本になるんだったな」
「おう!俺らの結婚式には招待したる!」
風太郎は友人である真鍋と坂本に笑みを浮かべて、また前に進んでいく。
「相変わらずね、あいつ」
「しっかし、上杉がとうとう結婚かー。くうぅ・・・キャンプファイヤーのあの日が心残りや。そしたら、結婚も早かったやろし・・・」
「またその話?私はそういうくっだらない噂は信じてないっていつも言ってるでしょ?」
「いやいや、あれガチな噂みたいやぞ⁉前田夫婦だって、そのおかげで結ばれたってもっぱらの・・・」
真鍋と坂本が話している間に、風太郎は前の席にいる前田夫婦ともあいさつをしている。
「仮に噂が本当だとしても、他所は他所、うちはうち。それでいいじゃない。現に私たち、こうして結ばれたんだし・・・ね?」
「・・・はは、そうやなぁ」
真鍋と坂本は学生時代のキャンプファイヤーの噂でそんな会話を広げていた。
「キャンプファイヤーといえば、知っとるか?」
「もう、言ってる側から・・・」
「まぁ聞けって。あん時のフィナーレの瞬間、上杉たちも・・・」
「新婦、入場」
話をしている間に、風太郎の運命の相手、新婦、中野○○が入場してきた。結婚式に参列している参加者は皆、○○の美しさに見惚れていた。
♡♡♡♡♡♡
結びの伝説・・・キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を結んだ2人は生涯結ばれるという。
林間学校のフィナーレの瞬間、六つ子の姉妹はこの瞬間、確かに風太郎の手を触れていた。しかし・・・それは1人、というわけでなく、6人同時にである。
「あの時もずっと耐えてたんだねー。私も周りが見えてなかったなー」
「らしくないこと言ってないで、いつもの調子に戻りなさい」
「私たち6人がついてるよ」
「私のパワーで元気になってください!」
「この林間学校で、あなたは何を感じましたか?」
「元気になったら、その気持ち、聞かせて。おもしろおかしく、ね♪」
六つ子の姉妹は風太郎が元気なることを、心から祈った。その瞬間・・・
「・・・・・・」むくっ
なんと、言ってる側から風太郎が起き上がった。
「わっ!起きた!」
「元気になったんですね!」
「おまじないすごーい!」
「わー!すごい!奇跡だよ!」
「安心した」
「紛らわしいのよ!」
六つ子の姉妹は風太郎が起きたことに喜び合っているが・・・
「・・・うるさい・・・」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「・・・・・・うるせえええええええ!!!寝られないだろおおおおおお!!!」
「「「「「「わーー!!」」」」」」
風太郎はあまりにもうるさく感じて、六つ子の姉妹に向けて怒鳴り声を上げる。
「さっさと・・・出ていけええええええ!!!!」
風太郎に怒鳴られ、六つ子の姉妹は部屋を出ていく。逃げていくよう時の六つ子の姉妹の顔は、みんな笑顔だった。
♡♡♡♡♡♡
あの時のことは正直、よく覚えていない。
だが、災難続きだった林間学校には、不思議と嫌な覚えもなかった。
ほろ苦い思い出さえ幸福に感じるのも、多分みんながいたからだ。
今なら言えるかもしれない。あの時言えなかった一言・・・
傍にいてくれて、ありがとう
♡♡♡♡♡♡
林間学校が終わってから数日後、風太郎は今日も勉強をしながら学校への道のりを歩いている。
「フータロー君!」
「上杉!」
「フータロー」
「上杉さん!」
「上杉君」
「風太郎君!」
そんな時、六つ子の姉妹は風太郎に出会い、朝の挨拶をする。
「お前ら・・・」
「「「「「「おはよう((ございます))!」」」」」」
「おう」
「体はもう大丈夫?」
「ああ。入院して休んだ分を取り戻さないとな」
風太郎がやる気に満ちている中、二乃は風太郎が身につけているミサンガを見つめている。
「・・・もうちょっと貸しといてあげるわよ」
「何か言ったか?」
「別に。てか五月食べすぎ!」
「なっ!あ、朝はお腹がすくんです!」
「あー!六海、歩きながらお絵描きはダメだよ!危ないよ!」
「えへへ・・・風太郎君のながらが移ったのかな?」
「そうだ!フータロー君復活祝いに、放課後は駅前のクレープ・・・」
「もちろん勉強だよな!!!」
「あ、あははは・・・」
復活しても勉強一筋の風太郎に一花は苦笑いする。
「フータロー。また勉強、たくさん教えてね」
「みんなで勉強かー。がんばろうね!!」
「ちょっと!アタシはそんなの・・・」
「だったら二乃ちゃん以外のみんなでやる?」
「!参加しないとは言ってないでしょ!」
「上杉君。よろしくお願いしますね」
六つ子の姉妹全員の参加の意思に風太郎は少し戸惑ったが、すぐにやる気になる。
「ああ。期末試験に向けてビシビシいくからな!」
「「「「「「え・・・」」」」」」
期末試験と聞いて六つ子の姉妹は顔を青ざめている。
「覚悟はいいかお前ら!!」
「逃げろーーー!!」
「「「「「わーーー!!」」」」」
さっきまでのやる気はどこへやらと言わんばかりに六つ子の姉妹は風太郎から逃げていく。初日と似たような光景が、今ここに広がっているのだった。
14「結びの伝説2000日目」
つづく
予告
六等分の花嫁 第2章開幕!
過去に風太郎と出会った女の子との記憶
「買ったのか・・・もらったのか・・・よく覚えていませんが、確か・・・京都で5年前」
「この中で昔俺と会ったことあるよって人ー?
勤労感謝の日で四葉とデート?
「欲しいものはもうもらいました」
揺れ動く六海の風太郎と金太郎に対する思い
「六海さん!俺と付き合ってください!」
「嘘・・・キンちゃんが・・・風太郎君・・・?」
「上杉にとってあんたら六つ子はね、特別な存在になりつつあるのよ」
二乃と五月の家出⁉
「この家はアタシを腐らせる」
「今回ばかりは二乃が折れるまでは帰れません」
風太郎とあの子の再会
「久しぶり。上杉風太郎君」
部活の件で苦しむ四葉
「私、部活やめちゃダメかな・・・?」
覚悟を決める二乃
「いい加減覚悟を決めるべきなのかもね」
風太郎の家庭教師退任⁉
「今日を持って、家庭教師を退任します」
六つ子の新たな生活
「ここが私たちの新しい家」
六つ子の転校の危機⁉
「もし次の試験で落ちたらその学校に転校する」
六海が漫画家を目指すわけ
「あの頃は結構荒れてたじゃーん♪」
「もう嫌なんだよ!5人の姉も、私をバカにする連中も!」
自覚した二乃の気持ち
「あんたを好きって言ったのよ」
上杉家と中野家の家族旅行の出来事
「私たちはもうパートナーではありません」
「五月の森・・・!」
「当ててほしい。フータローに」
「だから好きになったって・・・そんなの都合よすぎない?」
「お前は誰だ?」
「誰にも取られたくなかったんだ」
「私たちは教師と生徒。それでいいと思ってた」
六等分の花嫁 第2章 制作開始
あの日・・・きっとあの日からだ。
彼女を特別だと感じたのは・・・あの瞬間から