六等分の花嫁   作:先導

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ちょっと力を入れて試行錯誤してたら予定より遅くなっちゃいました。面白くできてるかわかりませんが、ぜひとも読んでください。

今回もちょっとアンケートを取ります。まぁ、前回の続きというわけですけどね。


恋人のふり作戦

「えー・・・全員集まったところで・・・六海主催、六つ子緊急会議を開きたいと思います」

 

お昼休みになって、食堂でご飯を食べようと思った時、急に六海から全員集合のメールが私に届いた。お昼は屋上でとるから各自購買部で何か買うようにとも内容にあったなー。で、今現在私たちは六海の呼びかけに応じて屋上に集まってるよ。

 

「急に呼び出したと思ったら・・・」

 

「六海から六つ子会議を開くなんて珍しいね」

 

「アタシたちを呼び出したからには、相当なことなのでしょうね?」

 

六つ子会議っていうのはね、何かしらの議題を出してみんなで話し合いながら議題の問題解決策を探そうというもの。六つ子裁判とは似て非なるものだね。

 

「四葉、顔が赤いですが、どうしましたか?」

 

「・・・///」

 

この中で四葉だけ顔を赤くしてるけど、いったいどうしたんだろうね?

 

「えー・・・今回の六つ子会議の議題は・・・」

 

「・・・今朝男の子に告白されたこと・・・だよね・・・?」

 

四葉が口にしたと思ったら・・・はい?告白?

 

「なぜそれを!!?」

 

「は?」

 

「へ?」

 

「うん?」

 

「え?」

 

え?ちょっと待って・・・告白って・・・男の子が・・・六海に・・・?

 

「「「「えええええええ!!??」」」」

 

こ、これは驚いた・・・!まさか・・・ついに六海にも春がやってきたとは・・・!今まで絵が六海の恋人みたいなものだからなおさら、ね。

 

「あううぅぅ・・・まさか見られてたなんてぇ~・・・///」

 

六海は恥ずかしさのあまり、両手で顔を隠してる。いやぁ、隠してても首元までトマトみたいに真っ赤っかだからわかりやすいなぁ。

 

「四葉!本当ですか⁉男の子が・・・六海に・・・こ、こ、こ・・・」

 

「この目で見たもん!間違いないよぉ!」

 

「あ、あの六海が・・・ねぇ・・・。お姉ちゃん、びっくりだよ」

 

「二乃、六海に先越されて悔しいでしょ?辛かったら泣いてもいいんだよ?」

 

「ちっがうわよ!!別に悔しくなんかないし!!それにアタシは・・・」

 

「アタシは、何?」

 

「何でもないわよ」

 

みんなもまさかの衝撃発表に混乱してる様子だね。うん、無理もない。

 

「・・・ち、ちなみにお相手は誰ですか・・・?」

 

「・・・サッカー部の・・・坂本君・・・///」

 

「ん?今坂本君って言った?」

 

男の子の名前、というより苗字を聞いた瞬間、三玖は少しだけ目を見開かせた。

 

「何?三玖知ってるの?」

 

「知ってるも何もクラスメイト」

 

「へぇ。そうなんだ」

 

三玖から見た・・・坂本君の印象はこうみたい。見た目は黒毛のくせ毛が特徴で顔はそれなりのイケメンなサッカー少年。それから、どうも関西出身らしく、しゃべる時はいつも関西弁らしい。実際会ったことないからよくわからないんだけどね。

 

「ていうかそっか。だから私に六海の名前を教えてほしいって聞いてきたんだ。ついでに私たちの見分け方を」

 

「六海の場合はメガネかけてるからそれで見分けられるんじゃないかな?」

 

「いえ、私もメガネはかけますので・・・いざという時になると・・・」

 

「確かに!上杉さんは六海をメガネをかけてる五月と間違えてたから!」

 

「あの時は本当に頭にきたものだよ・・・て、それはどうでもいいとして・・・」

 

私たちの見分け方の話になっちゃったけど、話を戻して六海はようやく本題に入る。

 

「それでね・・・みんなに教えてほしいことがあるんだ・・・」

 

「ん?何かな?お姉ちゃんたちに聞かせてごらん」

 

まぁ・・・聞きたいことはある程度想像できるんだけどね。

 

「好きって・・・いったいなんですか・・・?///」

 

あらら、やっぱり聞いてきたのはそれかー。と、いうのも・・・

 

「中野六海、17歳・・・この17年間生きてきて男の子に好きと言われたことなんて1度もなく・・・///」

 

そう、六海はここまで生きてきて男の子に愛の告白をされたことがなくて人生初の告白に戸惑いを隠せないでいるんだ。

 

「そ、そんなこと言われても・・・」

 

「私にもわかりませんよそんなこと!」

 

「・・・///」

 

「こ・・・答えられない・・・///」

 

「お姉ちゃんも、ちょっと・・・ね・・・」

 

五月ちゃんは本当にわからないでいるんだろうけど、三玖は好きっていう気持ちは知ってる。でも・・・答えられるわけないよね。たとえ姉妹であっても好きな人がいるから気持ちはわかる、なんて。でも二乃まで顔を少し赤くしてたけど・・・まさかね。四葉と私は・・・どうなんだろう・・・ね。自分でもよくわからないや。

 

「ま・・・まぁでもよかったんじゃないかな?ようやく六海にも春が来て・・・」

 

「ちっともよくないよ!!むしろ大迷惑なんだよ!!」

 

あれ?六海のこの反応からして・・・

 

「もしかしてだけど・・・返事を断りたいの?」

 

「・・・うん・・・」

 

わあ・・・もしかしてと思ったら、本当に当たってたよ。なんかもったいない気がするなー。

 

「はあ?なんでよ?」

 

「何でも何も・・・そもそもな話、どうして好きでもない人とお付き合いしなくちゃいけないの⁉️」

 

「え・・・ええええ!!?話の流れ的にその坂本さんと付き合うんじゃないの!!?」

 

「ちっっっがーーう!!何でそんなことになるの⁉好きでもない相手と!!」

 

「で・・・では・・・付き合う気はないと・・・?」

 

「さっきからそう言ってるじゃん!好きでもないんだから!」

 

六海・・・そんなに好きじゃない好きじゃないって言わないであげて。もう坂本君がかわいそうになってきたよ。

 

「だったら早く断るべきだと思うけど・・・」

 

「それはわかってるよ。わかってるけど・・・」

 

六海は断るべきなのは理解してるみたいだけど・・・んー?なんか反応がよろしくないなぁ・・・。

 

「煮え切らないわね。一言ごめんなさいって言えばいいだけの話でしょ?」

 

「それができないからこうしてみんなに相談してるんじゃん」

 

「どうして?」

 

「だって・・・断ったら・・・いろいろ追及されそうだし・・・。例えば、彼氏いるの・・・とか・・・そんな感じの・・・」

 

「あー・・・わかる。私も似たようなことあった」

 

そっかぁ・・・なるほど・・・六海は断った後の質問を恐れて中々返事を返せないでいるのかぁ・・・。三玖のそれはあの時私と入れ替わってた時のことを言ってるんだね?前田君といろいろあったって聞いたし。

 

「でもね、六海。こういうことは返事を遅らせれば遅らせるほど、相手にも自分にもお互いに辛いんだよ。そこはわかってくれるよね?」

 

「それは・・・わかるけど・・・でも・・・」

 

「これは・・・思っていた以上に難しい問題ですね・・・」

 

「うーん・・・六海のためにどうにかしてあげたいけど・・・」

 

「その坂本って奴が他の女に目移りしてくれれば多少はあれだと思うけどねえ・・・」

 

「坂本君は決めたら一直線なところがあるから、その可能性は低い」

 

六海の告白問題にはみんなどう答えを導きだしたらいいかわからなく、難儀をしているねぇ。六海も私の言ってる意味を理解してるけど・・・うーん、どうしたらいいんだろう・・・?

 

「・・・およ?目移り・・・?他の・・・?・・・・・・・・・思いついたぁ!!!」

 

「「「「「わっ⁉」」」」」

 

私たちが悩んでいると六海が何か閃いたような大声を上げた。び、ビックリしたよぉ・・・。

 

「その手があったかぁ!いやぁ、なんで今までそんなことを思いつかなかったんだろう?これも二乃ちゃんのおかげだよ!ほんっとうにありがとう!!」

 

「え、ええ・・・よかったわね・・・。アタシ・・・なんか言ったっけ・・・?」

 

よほどいい案が浮かんだのか六海はその発端?となった二乃の手を握ってぶんぶんと振って感謝してる・・・本当、なんか言ったっけ・・・?

 

「こうしちゃいられない!すぐにでも行かなきゃ!」

 

「えっ⁉む、六海ー⁉どこいくのですかー⁉」

 

六海は非常に浮かれた様子で私たちを置いていったままどこかへと行っちゃった・・・。あのー・・・六つ子会議はどうなるの?これ・・・

 

「・・・これ、もう解散でいいのかな・・・?」

 

「・・・そだね・・・」

 

もう何が何だかわからなく、ものすごく締まりがないけど、六つ子会議はこれにて終了ということになっちゃったけど・・・うーん、なんか嫌な予感がするなぁ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『キンちゃんを呼んで!or坂本登場』

 

「キンちゃんを!呼んでほしいの!」

 

「・・・は?」

 

教室で自習をしていた風太郎の元にやってきた六海は突然そんなことを言ってきた。突然ということもあるが、その前に今呼ばれたキンちゃんという名に風太郎は呆気にとられる。

 

「・・・あれ?聞こえなかった?だからキンちゃんを呼んでほしいんだけど・・・」

 

「いや、聞こえてはいる。2回も同じ言葉は言わなくていい」

 

突然のこと過ぎて話に全くついていけない風太郎はかなり困惑している。

 

「・・・あ、ごめんね。突然のこと過ぎて戸惑ってるんだよね?」

 

「・・・もういいから・・・。それより今なんつった?キンちゃんを呼べって言ったような気がするが・・・」

 

「うん。呼んできてほしいの」

 

「・・・はああ~・・・何を言い出すかと思えば・・・勘弁してくれ・・・」

 

六海の何気なく言った言葉に風太郎は頭を抱えさせている。というのもキンちゃんこと、金太郎を呼ぼうということは風太郎にとって都合が悪すぎるからだ。なぜならその金太郎が・・・風太郎自身なのだから。

 

「そもそもなんで金太郎に会いたいんだよ?それが意味わからん」

 

「うん・・・実はね・・・かくかくしかじかでうまうまで・・・」

 

六海はどうして金太郎に会いたいのかという理由をこれまでの事情を踏まえて風太郎に説明する。

 

「ふーん、色恋にかまけてるアホの返事を断るために・・・ねぇ・・・」

 

「うん。だからね・・・」

 

「・・・普通に断ればいいだろ」

 

「もう!簡単に言わないでよ!それに話はちゃんと最後まで聞いてよ!」

 

あまりに素っ気なく、1番シンプルな解決策を述べる風太郎に六海は頬を膨らませ、ほんの少しだけ怒りが現れる。

 

「ほら、風太郎君だっていやでしょ?あーだこうだっていう変な質問をされ続けるのは・・・ね?」

 

「あー・・・まぁ、そりゃ嫌だが・・・」

 

「でしょ?だったら・・・六海はあなたと付き合えないっていう証拠を突き付けてやればいいんだよ!私はこの人と付き合ってますって感じの雰囲気の嘘証拠をさ!」

 

「そりゃまためんどくせぇな・・・」

 

「でも・・・だからといって風太郎君と付き合うっていうのは・・・ちょっと・・・ね。だって・・・」

 

「おい。不細工って言おうとしてるだろ?あれはさすがに傷つくんだぞ?」

 

「あ、あの時は風太郎君が嫌いすぎて・・・だからあれは冗談なんだってば!」

 

六海の説明にいろいろと納得していく風太郎。9月ごろのことでほんの少しディスられかけて少しこめかみをひくひくさせる風太郎。

 

「・・・まぁ、だいたいの事情はよくわかった」

 

「じゃあ・・・!」

 

「だが、呼び出すことはできない」

 

「え・・・ええええええ!!?」

 

風太郎自身、そういうことで金太郎になるということ自体があまりよくないと考えているので風太郎は提案を拒否する。当然ながら六海は驚愕する。

 

「なんでなんでー⁉いいじゃんそれぐらい!電話番号持ってるんでしょ?」

 

「いや、登録してるのはお前らのと家族のアドレスだけだ。あいつにはしてない」

 

「じゃ、じゃあ・・・住所・・・」

 

「俺はあいつの住所を知らない」

 

「風太郎君の役立たず!!」

 

半分本当、半分嘘の回答で風太郎はこの場をやり過ごす。が、六海の役立たず発言には少しイラっと来た風太郎。

 

「はぁ・・・もういいよ。・・・もうちょっと考えてみる・・・じゃあ・・・」

 

金太郎を呼べないことがわかった六海は気力を無くしたような歩き方で教室を出ていった。その姿を見て風太郎はちょっと悪いことをしたなと考え始める。

 

「はぁ・・・たく・・・」

 

もう一気にどっと疲れが出て風太郎は肩を落胆させる。

 

「おい、そこのがり勉男。お前やお前」

 

「はあ?」

 

教室に戻ろうとした時、誰かに呼び止められた風太郎。そこに視線を向けてみると、黒のくせ毛をしたそこそこ顔がイケてる男がいた。

 

「お前・・・さっきの、見とったぞ。お前六海さんとどういった関係や?」

 

「は?」

 

いきなりの質問に怪訝な顔をしたが、すぐに男の特徴に気づいた。黒のくせ毛に関西弁。六海が話していたのと一致している。この男こそが、六海に告白した坂本なのだ。それに気づき、風太郎はめんどくさいのに絡まれたなぁと思った。

 

「どうなんや?漢ならはっきりせんかい」

 

「別に。ただあいつとは勉強を見てやってるだけだ」

 

「・・・ホンマか?」

 

「嘘を言ってどうする?」

 

嘘は言ってはいない・・・が、坂本はどうも風太郎が信用できず、怪訝な顔をしている。

 

「・・・怪しいのう、お前」

 

「は?」

 

「俺は知っとるぞ。お前、あの六つ子以外の奴らと関わっとらへんやろ。それはなんでかはというと、あの六つ子の誰かに気があるとしか考えられへんわ」

 

「何言ってんだお前?」

 

本当のことを言っているのにも関わらず、信じてもらえてないどころか、変な疑惑まで持たれてしまっており、風太郎はもうほとほと参っている。

 

「俺は嘘は好かん。正直に話しぃや」

 

「ちょ・・・待て!俺にはあいつらに恋愛感情なんてないぞ!そもそも恋愛なんて・・・!」

 

キーンコーンカーンコーン

 

風太郎が坂本の言い分に反論しようとした時、予冷のチャイムが鳴り響いた。

 

「ちっ・・・おい。俺は放課後は部活で忙しいから今日はこれくらいにしたるけどなぁ・・・お前が本当のこと話すまで何度でも付きまとったるからな!覚悟しぃやぁ!」

 

「ストーカーかよ。本当に勘弁してくれ・・・。俺に人権はないのか・・・」

 

風太郎は坂本の宣言に頭が痛くなってくる。この当時は風太郎はどうせすぐ忘れるだろうとのんきに考えていた。

 

だが翌日、その次の翌日、さらに翌日、坂本は宣言通りお昼休みくらいに毎回毎回風太郎に付きまとい、同じような質問を繰り返された。それはもう、耳に胼胝ができるくらいに。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ある日の学校の食堂でたまたまフータロー君と出会って、三玖と一緒にご飯を食べようとして・・・るんだけど、今の風太郎君の顔、ものすごく不機嫌そうにしてる。心なしか疲労も交じってるような顔つきだよ。

 

「ふ、フータロー君?大丈夫?」

 

「これが大丈夫に見えるならお前の目は節穴とみなすぞ」

 

そんないい方しなくともいいじゃん。これでも心配してるんだよ?あ、ちなみに二乃は友達とどこかでご飯を食べに、四葉と五月ちゃんは先生の手伝いみたい。六海は・・・今どこに行ったか分からない・・・。

 

「ちくしょう・・・あの坂本って奴・・・毎日毎日同じような質問してきやがって・・・俺は嘘なんか1個も言ってねぇだろ・・・。名前まで覚えられてるし・・・」

 

「ごめん、フータロー・・・」

 

「いや、三玖が悪いわけじゃねぇから気にするな」

 

三玖と坂本君は同じクラスらしいから三玖なりに思うところがあるんだろう。フータロー君にたいして申し訳なくなってる雰囲気が出てるね。

 

「いやぁ・・・これはあれだね。完全にフータロー君に嫉妬の目を燃やしてるねぇ、それは」

 

「らしいな・・・くっそ・・・おかげで勉強に身が入らねぇ・・・なんでこんなことになるんだ・・・」

 

「フータロー、今日も追いかけまわされてたもんね・・・」

 

どうやら一度決めたら曲げないのは本当のことらしいね。フータロー君の疲れが何よりの証拠だからね。

 

「つーか、今回の件は俺だけの問題じゃねぇぞ。そもそも坂本に告白されたのは六海だろ?そのあいつが最近勉強会に参加しねぇとはどういうことだ?」

 

ここ最近女優の仕事であまり勉強会に参加できてないから、詳しいことはよくわからないけど、どうも六海は勉強会に参加することがなくなったみたい。原因は・・・やっぱり今回の件だよね・・・。

 

「・・・それだけならまだいい方かも」

 

「・・・どういうことだ?」

 

「実はね、ここ最近六海、家でもどこでもぼーーっとすることが多くなってね・・・ご飯食べてる時もおかずはボロボロこぼすし、授業中でもぼーっとしてたらしいし・・・挙句の果てには大好きな絵にもなんか無気力って感じでさ・・・」

 

「ふむ・・・思ってた以上の重症だな・・・」

 

もうとてもじゃないけど見ててこっちが痛々しくなってきたよ・・・あんなのいつもの六海じゃない。坂本君に何とか説得できればいいんだけど・・・。

 

「・・・やはり・・・あの手しか・・・ないのか・・・」

 

「?何かいいアイディアがあるの?」

 

フータロー君は何か策を持ってるようだけど、あまり乗り気じゃないみたい。え?本当に何を思いついたんだろう・・・?

 

「・・・一応作戦はある。が・・・それを口にすることはできん」

 

「「??」」

 

フータロー君はそう言ってその作戦を説明することを拒んだ。むぅ・・・ちょっと教えてくれたっていいのに。お姉さん、ちょっといじけちゃうなー。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから日が立って日曜日のお休み・・・今日は私は仕事はないから完全にオフ。今日は三玖と2人で六海のために何かプレゼントを買いに向かおうとしてる。というのも、先日作戦会議の後フータロー君と別れて家に帰ってみると六海が肌が潤ったような表情になっていたんだ。何があったかは知らないけど、元気になってよかったよ。その翌日の家庭教師の日にも参加するようになったりしたけど、その時も表情が幸せそうだったのを覚えてる。あまりの浮かれっぷりに二乃たちは怪訝な顔になってたけど。まぁとにかく、元気なったお祝いにと思ってプレゼントを買いに行ってるよ。

 

「それにしても・・・フータローの作戦って何だったのかな?」

 

「うーん・・・あんなに浮かれてる様子だったからたぶん成功なんだと思うけど・・・」

 

結局フータロー君の作戦はわからずじまいだったなぁ・・・。いったい何をやったんだろう?謎が多いよ。

 

「あ、一花・・・あれ・・・」

 

三玖が何かを見つけたように本屋に指をさした。遠くから本屋を見つめていると・・・オシャレな服装をしている六海がいた。着ている服もミニスカートもどれもかわいらしい服装。なんだかそわそわしてる感じが伝わってきてるよ。

 

「あれ?六海じゃん。そこで何やってるんだろう?」

 

「なんかそわそわしてる・・・」

 

「あ、せっかくだし、声をかけてみよっか。おーい!むつ・・・⁉」

 

「・・・え?」

 

私は六海に声をかけようとした時、誰かが六海に近づいてきた人がいた。その人物を私は知ってる・・・。

 

「ふ・・・フータロー・・・?」

 

「フータロー君・・・だよね?金髪の鬘かぶってるけど・・・」

 

そう、その人物とはフータロー君だった。しかも何故か林間学校で見せた金髪の鬘をかぶってる。え?どうしてフータロー君が六海と?

 

「あ!キンちゃん!!」

 

「よ・・・よぉ・・・待ったか・・・?」

 

「ううん!六海も今来たところだから!」

 

キンちゃん⁉いったい誰のことを言ってるの⁉

 

「な・・・何あれ!!?」

 

「ど、どういうことこれ・・・?夢でも見てるの・・・?」

 

三玖は三玖でかなり混乱してる。そりゃそうだよ。どうしてこんなことになってるわけ⁉

 

「まさかキンちゃんが六海のために来てくれるなんて思わなかったよ!本当にありがとう!」

 

「い、いや・・・そ、それにしても風太郎もしょうがない奴だなー、あははは・・・」

 

?六海のために?それに、なんか六海、あの人がフータロー君だってことに気が付いてないの?まるで別人と話してるような雰囲気が出てるけど・・・。

 

「じゃあさっそく・・・行こうか?」

 

「あ!待って待って!その前に・・・写真撮ろうよ!」

 

「いきなりか・・・まぁ、それで誤魔化せるなら・・・」

 

六海はスマホを取り出して写真を撮る体制になる。え?嘘・・・本当に何なの?いったい六海は何をやろうとしてるの・・・?

 

「えへへ・・・えい♪」

 

「なっ⁉」

 

六海は不意を突いたようにフータロー君の腕を自分の腕に絡ませた。そ、そんな積極的に・・・!ま、まさか六海は・・・いやいや・・・そんなはずは・・・

 

「・・・・・・」ゴゴゴ・・・

 

ちょっ⁉三玖⁉六海にたいして怒ってるの⁉それともフータロー君にたいして⁉さっきから殺気が感じるんだけど⁉

 

「お、おい!」

 

「ご、ごめんね!こうした方が恋人のふりらしくなると思ったんだけど・・・迷惑だった・・・?」

 

「・・・い、いや・・・何でもねぇ・・・悪かったな・・・

(い、言えん・・・さっきので胸が少し当たったなんて言えん・・・)」

 

うわ・・・うわ、うわぁ・・・なんだかこの雰囲気・・・まるで恋人同士じゃんか・・・もう頭が混乱しすぎてどうにかなっちゃいそうだよ・・・。・・・て、ん?今恋人のふりって言わなかった?

 

「で、さっきの写真で終わりなのか?」

 

「何言ってるのー。まだまだ、こんなものじゃ坂本君はきっと納得しないよー。もっと多く写真を撮らないと」

 

「そ・・・そうか・・・」

 

え?坂本君?

 

「・・・なんでそこで坂本君の名前が出てくるの?」

 

「・・・あ、そういうこと?」

 

ここまでの流れでようやく理解してきた。どうやら六海は本気で今のフータロー君を別人だととらえていることを。そしてこれはたぶんフータロー君が言っていた作戦なんだ。これはたぶんあれだね・・・恋人のふり作戦!何ともまぁフータロー君らしからぬ作戦を思いついたものだよ。

 

「ま・・・まぁ疑問も晴れてよかったよかった!六海も本気で付き合ってるわけじゃなさそうだし!」

 

「それはそうだけど・・・でも・・・ずるい・・・」

 

三玖は六海を恨めしそうな顔で見つめてる。うむぅ・・・そう言われると反論しにくいなぁ・・・。それに・・・あれを見てると、何で胸のあたりがもやもやするんだろう・・・?

 

「それじゃあ!さっそく行こうよ!六海、見たいものがたくさんあるんだ!」

 

「お、おい!引っ張るな!」

 

す・・・すごいな・・・六海ってばあんなに積極的に・・・いや、これは純粋で無邪気にはしゃいでるだけなのかな?どっちなんだろう・・・?まぁ、あくまで恋人のふりなんだけどね。・・・ふりなんだよね?

 

「六海・・・有罪・・・帰ったら切腹・・・」

 

あのー?三玖さーん?これはあくまで恋人のふりですよー?わかってますかー?明らかに私怨が混じってますよー?

 

「・・・六海を追いかけよう」

 

「え?三玖?」

 

「いけない1線を超えさせはしない・・・」

 

三玖は明らかに六海にたいしていい感情を示してない。というかいけない1線って六海はそういうことをやる子じゃないよ?こうしてわけもわからず六海とフータロー君を追いかけることにした。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『もうおしまいよ!四国の人間は全員ゾンビになってしまったわ!』

 

『やむおえん!!瀬戸大橋を落とせぇ!!』

 

『瀬戸大橋、封鎖できませぇん!!』

 

(・・・まさか2度もこれを見るはめになるとは思わなかった・・・)

 

六海たちが最初に来たのは映画館。これ本人が言ってたことなんだけど、この映画は私が出てる映画だから六海はずっと気にはなってたらしいんだ。でもなにせゾンビが出てくるから見る気にはなれなかったみたい。六海、五月ちゃんなみに怖いのダメだからなぁ・・・。今はフータロー君がいるから見れているのかな?まぁ、別人として見てるみたいだけど。

 

「すごい・・・一花が映画の中にいる・・・」ボソッ

 

あはは・・・ほめてくれてうれしいけど・・・自分が出てる映画を見るのは、やっぱり恥ずかしいっていうか、未だに抵抗があるなぁ・・・。ちなみに私たちの席はフータロー君たちとかなり離れた場所にいるよ。でもちゃんと2人も見れてるよ。さらに言えば私と三玖は変装用にメガネをかけているよ。

 

「・・・あ、あのー・・・六海さん?」

 

「・・・・・・!」がくがくブルブル

 

「そろそろ離れてくれるとありがたいんですけど・・・」

 

「・・・・・・!!」ぶんぶんぶん!

 

ちょ、ちょっと六海・・・そんなにフータロー君に抱き着かないで。怖いのはわかるけどそんな全力で首を横に振りながら抱き着く力を強めないで。

 

「六海・・・猿轡で切腹の刑・・・」

 

あれ?三玖?前は切腹だけって言わなかったっけ?なんか猿轡まで追加してるような気がするんだけど・・・。

 

『いやああああ!!助けてええ!!』

 

『貴美子ーーー!!』

 

「あ、一花が死んだ」

 

「ぎゃあああああ!!?一花ちゃんが死んじゃったーーーー!!!」

 

「ああ。一花が死んだな」

 

ちょっと!それは私が演じている貴美子の話であって私じゃないから!私死んだわけじゃないから!勝手に私を殺さないで!というか本人がいるのに死んだって言わないで!心が傷つく!後六海、映画館では静かに!

 

♡♡♡♡♡♡

 

映画が終わった後は近くのレストランでお食事をするみたい。

 

「いやー・・・最後まで本当に怖かったけど・・・それでもおもしろかったよ!さすが一花ちゃんが出てる映画!あ、その一花ちゃんはさっそく死んじゃってたけど。いや、この場合は貴美子ちゃん?」

 

「どっちでもいいわ、そんなこと・・・」

 

六海とフータロー君は今日見た映画の話で盛り上がってた。まぁ、フータロー君は微妙な反応だったけど。ちなみに私と三玖はフータロー君たちにばれない程度の場所の席に座ってるよ。

 

「本当なら私がフータローと一緒に見てたのに・・・悔しい・・・」

 

三玖は本当に悔しそうに頬を膨らませている。まぁまぁ・・・後で私が埋め合わせしてあげるから、ね?

 

「あ、そうだキンちゃん。この映画雑誌で気になる映画とかってあった?」

 

「別に。そんなのねぇよ。興味もねぇし」

 

「風太郎君と似たようなこと言うんだね。もったいないよそれ」

 

似たようなっていうか・・・本人なんですけど・・・。て、いうかそのキンちゃんってネーミングは髪が金髪だから?まぁ、鬘なんだけど。

 

「六海が気になってるのはねー・・・これ!魔法少女マジカルナナカちゃんTHE1stMOVE!まぁ、見ての通りちゃん付けはいらないんだけどね。この作品、六海のお気に入りなんだー!早く公開しないかなー?あ、その次に気になってるのがこれ!それから・・・」

 

「全部アニメーション系かよ」

 

フータロー君は六海のテンションにほとほと参ってるご様子。まぁ、この作戦自体乗り気じゃなさそうだったしね・・・。

 

「お待たせしました。カレーライスとスパゲッティでございます」

 

「わぁ!おいしそう!いっただっきまーす!」

 

六海は届いたスパゲッティをさっそく口に運んでいる。フータロー君もこの様子を見ながらカレーを食べてるね。ちなみに私はコーヒー、三玖は抹茶だけを頼んでこの2人を監視してるよ。

 

「ねぇねぇキンちゃん」

 

「ん?」

 

「ほら、あーん♪」

 

!!?まさか六海、フータロー君にあーんして食べさせる気⁉

 

「え?」

 

「ほら。口開けてよ。あーん♪」

 

「い、いや・・・自分で食えるから・・・」

 

「あーん♪」

 

「や、だから・・・」

 

「あーん♪」

 

「・・・あーん・・・」

 

あまりに六海がしつこかったからフータロー君は観念して口を開けてスパゲッティを食べた。いいなぁ・・・て違う!!何を考えてるの私⁉

 

「なんで六海ばっかり・・・」

 

三玖は羨ましそうにこの光景を見てる。これ、帰ったら六海無事でいられるのかな・・・?

 

「どう?おいしかった?」

 

「お、おう・・・」

 

「よかった♪じゃあ今度は・・・あーん♪」

 

「え?」

 

フータロー君が食べたのを確認すると、六海は今度は口を大きく開けてる・・・てまさか!!?

 

「え?どゆこと?」

 

「ほら、キンちゃんのカレー。あーんして食べさせて♪」

 

や、やっぱり!!六海、本当に今か今かとカレーが口に入るのを待ってる!

 

「いや・・・さすがにこれは・・・」

 

「キンちゃん。六海、スパゲッティ食べさせてあげたよね?だったら今度は六海の番♪だから・・・あーん♪」

 

「だ、だが・・・」

 

「六海を坂本君から助けると思って・・・ほら♪あーん♪」

 

よく見たら六海、スマホを構えて撮影をスタンバってるじゃん。よっぽど坂本君とは付き合いたくないの?フータロー君とは付き合えてるのに?別人として見てるけども。

 

「ぐっ・・・仕方ねぇ・・・ほら」

 

「あーむ♪」

 

フータロー君はやむを得ない表情のままカレーをよそって六海の口まで運んで、六海はそれをぱくり。うーん、胸のもやもやが強くなっていく・・・!

 

「うん、おいひ♪」

 

カレーがおいしかったのかあーんしてもらえたのがうれしいのか六海はご満悦な様子。私たちはあんまりいい気分じゃないけど。

 

「六海・・・猿轡で石抱の刑・・・」

 

三玖は三玖で六海への罰がエスカレートしていってるし!これやられたら六海絶対泣くからやめてあげて!

 

♡♡♡♡♡♡

 

食事の後はゆったりと雑貨屋さんでお買い物を満喫している六海とフータロー君。こっちはもういろいろありすぎて疲れちゃってるんだから・・・もう本当に許してよ・・・。

 

「いろいろ楽しんだ後は、やっぱりショッピングだよね♪」

 

「当たり前のように千円を超える品ばっか」

 

フータロー君の家庭事情はピンチなのは知ってるから、ここの雑貨屋はフータロー君にとってはあまりよろしくないご様子だね。

 

「うーん・・・ここまでついてきたけど・・・六海がやたらと積極的なの以外は普通にデートって感じだね」

 

「デート・・・私の誘いの時は断ったのに・・・」

 

これ、一応は作戦・・・なんだよね?もうだんだん何が目的でこうなってるのかわからなくなってくるよ・・・。

 

「何か欲しいものがあったら言ってねー。六海が買ってあげるから♪」

 

「い、いや・・・別に俺は・・・」

 

「お小遣いピンチなんでしょ?でなきゃ、お昼の時お金出してくれ、なーんて普通言わないよ?」

 

「ぐっ・・・」

 

そうだよね。ただでさえフータロー君はお金のことに関してケチなとこあるからなー。そう言われちゃぐうの音も出ないよね。

 

「・・・ん?この教材・・・なかなか使えそうじゃないか。今後のために参考にしておきたいところだな。ふっふっふっふ・・・」

 

ふ、フータロー君?なんか悪そうな顔してるけど、まさかそれで私たちに課題を増やそうっていう魂胆じゃないよね?・・・て、あれ?六海、フータロー君を見つめてどうしたの?

 

「?どうした?」

 

「キンちゃんって、風太郎君と同じことを言ったり趣味が同じだったりするよね?」

 

「え?あ・・・」

 

六海は何か感づいたのかそんなことを口にしていた。フータロー君自身も自分の素を明かしすぎてやってしまったって顔をしてるよ。

 

「フータロー・・・今ここで正体を明かしてデートを終わらせて」

 

三玖、それはちょっと極端すぎない?

 

「もしかしてだと思うけど・・・キンちゃんって・・・ふう・・・」

 

「い、いや?違うけど?こ、こんなもん興味ねぇし?」

 

「の、割には目が教材にいってるけど・・・」

 

うわ!六海、こういうところでぐいぐい来てるなぁ。めちゃくちゃ勘ぐってるし。

 

「ちょ、ちょっとあいつとは趣味が合うんだ!たまに会ってこういう話をしたり・・・」

 

「ふーん。じゃもう1個質問ね。親戚ならどうして風太郎君に電話登録しなかったの?」

 

「き、昨日スマホデビューしたんだ!今日は忘れてきちまったけど!後、家は最近引っ越してな!」

 

フータロー君・・・いろいろ必死すぎ。余計なこと言ってるような気がするよ。

 

「フータロー、必死すぎ・・・」

 

うん、それは私もそう思うよ。こんなんで六海を騙せるわけ・・・

 

「そうなんだ!やっぱり風太郎君とは別人なんだね!」

 

「あ、ああ・・・」

 

信じちゃったよ!もうちょっと疑いの目を持っていいんじゃない?例えば、フータロー君のことを敵視していた時みたいにさ。

 

「あ!このペンケース!六海が前から欲しかった奴だ!やっと見つけたー!」

 

六海が発見したのは・・・あれは・・・マジカルナナカのペンケース?あはは・・・相変わらずぶれないなぁ・・・そのマジカルナナカ好きは。

 

「欲しいのか?」

 

「うん!これは即買い決定だね!」

 

「・・・じゃあそれ、買ってやるよ」

 

・・・え?今フータロー君は何て言った?買ってやる?あのお金にうるさくケチなフータロー君が?

 

「ほえ?でも・・・お金ないんじゃないの?」

 

「どっかの誰かさんのおかげで使う予定だった金が使えなかったんだ。これくらいの値段なら苦じゃねぇよ」

 

「どっかの・・・?」

 

「・・・それに、一応お前には感謝してるんだ。だから、その礼だ」

 

フータロー君・・・六海にもそんな風に思ってたんだね。なんだかんだ言ってちゃんと六海もみてる辺り、評価が上がっちゃうね。

 

「・・・六海、キンちゃんにそんなお礼を言われるようなことしたっけ?」

 

「!い、いや!風太郎の世話になったって意味だ!」

 

て、そういえあそうだった。今の六海は今のフータロー君を別人として見てるんだった!

 

「と、とにかくこれは俺が買ってやるから!ちょっと待ってろ!」

 

「う・・・うん。キンちゃん・・・ありがとう・・・すごく・・・うれしいよ」

 

フータロー君は逃げるようにペンケースをもってレジの方へと向かっていっちゃった。

 

「・・・えへへ・・・キンちゃんのプレゼント・・・♪」

 

六海は本当にうれしそうな顔をしてる。本当に・・・恋する乙女の顔だなぁ・・・。

 

「もう我慢できない。今すぐ・・・」

 

「ちょ、ちょっと待って三玖!出てきちゃダメだって!」

 

「離して。卑しい末っ子におしおきできない」

 

三玖はもう我慢の限界が来たのか六海に向かっていこうとしてる。ちょ!ダメだって!今の三玖、なんか怖いよ⁉

 

「?・・・!!!」

 

あ、六海がこっちの存在に気が付いた。私たちを見た瞬間顔を赤くしながら驚愕してる。

 

「おーい、買ってきてやったぞ・・・て、何して・・・」

 

ガシッ!

 

「え?」

 

え?フータロー君が来た瞬間、六海はフータロー君の手を掴んで・・・

 

「キンちゃん!!こっち!!」

 

「は?え?え?」

 

あ!逃げた!六海は私たちから逃げるようにフータロー君を引っ張って走りながら店を出ていっちゃったよ!

 

「六海・・・逃がさない・・・絶対に猿轡で石抱して切腹させる」

 

「三玖⁉それはやめてあげて!」

 

私たちも急いで六海を追いかけたけど・・・こういう時に限って機転を回しながら逃げていってるから全然追いつけない!もう見失っちゃったよ!

 

♡♡♡♡♡♡

 

『さようなら』

 

六海は一花と三玖の存在を気づいてから風太郎を連れて逃げていく。逃げていく最中に部活の助っ人で走り込みをしてる四葉に見つかりそうになったり、同じくショッピングに出ていた二乃と五月に出くわしそうになったりで逃げる道順を変えながら走っていく。そうしていくうちに・・・河原の方までたどり着いた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・お、お前なぁ・・・いきなり・・・」

 

いきなり自分を連れて走り出した六海に文句を言おうとしたが・・・

 

「はぁ・・・は、あはははははは!」

 

六海の本当に楽しそうにしている顔を見たらその気も失せた風太郎。

 

「あー、しんどかったけど面白かったー!ねぇ、キンちゃん。気づいてた?あの雑貨屋でね、一花ちゃんと三玖ちゃん、六海のお姉ちゃんがいたんだよ?」

 

「え?マジか・・・」

 

それを聞いて風太郎はなぜ走り出したのかが納得いった。

 

(・・・こりゃ明日なんか言われそうだな・・・)

 

「逃げてる先でもお姉ちゃんたちがいて・・・もう本当に楽しかったよ!はははは!」

 

笑いごとで済ませてるようにみえるが、もし姉妹に、特に二乃見つかったら、何と言われるかわからないゆえ、大事になるのではと考える風太郎。

 

(・・・まぁ、あいつが楽しそうならいいか)

 

そう考えていると、六海の姿が5年前に出会った少女と重なって見える風太郎。

 

(未練がましいぞ俺。こいつらじゃなかったんだ。いい加減、折り合い付けないとな・・・)

 

5年前の少女は彼女たちじゃないと決めながら、そう念じて前を見ると、六海の姿がなかった。

 

「あ、あれ?あいつは・・・」

 

「キーンちゃん!はい!」

 

辺りを見回していると、六海が近くにある雑貨屋から出てきてメガネの形をしたキーホルダーを風太郎に渡した。

 

「何?くれるの?」

 

「うん!キンちゃんのおかげで嘘の証拠写真がいっぱい撮れたからね!そのお礼!」

 

「・・・まぁ、デザインはともかく、もらえるもんはありがたくもらう」

 

風太郎は六海からキーホルダーを受け取り、あ、そうだと思いだし、1つの紙袋を取り出した。

 

「これ、さっきのペンケースだ。ありがたく受け取れ」

 

「わぁ・・・ナナカちゃんのペンケース!ありがとう!大切にするね!」

 

六海は受け取った紙袋からペンケースを取り出し、大事そうにしている。

 

「へへ・・・贈り物をもらっちゃった・・・これでもう、思い残すことはないかな」

 

「・・・ん?どういうことだ?」

 

六海の言った思い残すことはない発言が引っかかる風太郎。

 

「実はね、キンちゃんのことで二乃ちゃん・・・お姉ちゃんと大喧嘩しちゃってね・・・」

 

「あ、あー・・・」

 

風太郎自身が思い当たることがありすぎて若干困った顔をしていた。

 

「六海は・・・もう2度とあんな喧嘩したくない。それなら・・・六海がキンちゃんから手を引けば解決するんだよ」

 

そう言っている六海の笑顔は悲しそうにも見えた。

 

「だから・・・このデートが終わったら、もうキンちゃんとは会わない。六海は・・・今回の件で満足だから」

 

その哀愁ただよう雰囲気に風太郎はどう答えればいいのかわからなかった。ましてや金太郎は自分だというのに、このままでいいのかという考えまで至る。

 

「バイバイ、キンちゃん。さようなら」

 

六海は風太郎の顔を一切見ず、一方的な別れを告げ、帰り道へと歩いていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『まさか、バレた?』

 

あの六海の悲し気な笑顔を見て、風太郎は鬘を外していろいろと考えている。さようならといっても、風太郎としていつでも会えるのだから別にいい、むしろ金太郎になることがなくなって好都合ともいえる。だが、それでも・・・

 

「・・・本当に、これでいいのか・・・?」

 

そんな思考のパズルから抜け出せないままでいると、もう風太郎の家までたどり着いた。考えても仕方ないと思い、家の中に入る。

 

「らいは、ただいま」

 

「あ!おかえりー!お出かけは楽しかった?いやー、お兄ちゃんが外に出かけるって聞いた時は驚いちゃった。明日雨でも降るのかなー?」

 

いろいろ失礼なことを言われた気がするが、らいはを見ていると、そんなことがどうでもよくなってくる風太郎。

 

「あ、そうだ。お兄ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

「金太郎さんって誰?」

 

「!!??」

 

らいはの口から金太郎の名前が出てきて、風太郎は目を見開く。どうしてらいはがそれを知ってるんだといわんばかりに。

 

「な、なぜその名を・・・?」

 

「さっき六海さんから電話がかかってきてねー。金太郎さんにありがとうって伝えてって。でも・・・うちの親戚にそんな名前の人いなかったよね?」

 

「・・・!!ま、まさか・・・そのことを・・・?」

 

「?うん。そんな人はいないって言ったけど?」

 

「なんてことだ・・・なんてことだ・・・!」

 

まさからいはに電話してくるとは思わなかったために、今まで以上に焦りが生じる風太郎。どうして自分のスマホに電話をかけないんだと思ってスマホを確認する。

 

「・・・!しまった、充電切れ・・・!」

 

ついつい自分のスマホの充電を忘れてしまう風太郎。それがかえって裏目に出ることに風太郎は苦虫を噛みしめるような顔をする。もしかして、バレたのではないのかと、気が気でない気持ちでいっぱいになった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日、私は昨日の一件をどうしても聞きたかったからこのカフェの入り口でフータロー君を待ち伏せているよ。ちなみに六海は三玖のお仕置きを受けさせられた。内容は三玖の料理をとことんまで味見するということ。でも・・・帰ってきたときの六海、元気なさそうだったけどどうしたんだろう?と、そう考えていると、待ち人であるフータロー君がやってきた。

 

「あ、フータロー君。おっはー♪」

 

「!い、一花か・・・」

 

なんか一瞬ビクッとなっていたけど、どうしたんだろう?

 

「あ、朝から何の用だ?」

 

「学校すぐだけど、今日は一緒に登校しようかなって思って」

 

「お前は妙に目立つから嫌なんだが・・・」

 

「そう?ふふふ」

 

私は別にそんなこと言われても気にしない方だからあんまし傷つかないよ。

 

「それより、昨日はずいぶんお楽しみだったねー?六海のデート、楽しかった?」

 

「やっぱ見てやがったか・・・」

 

多分六海から聞いて気づいたからだと思うけど、顔が赤いなー。ふふふ、おもしろ。

 

「で?実際のとこどうなの?六海とは?いい雰囲気だったじゃん?」

 

「別に何とも思ってねーよ。あの作戦だって俺が考えたんじゃなくて六海の案だからな」

 

え?そうなの?まぁ、確かにフータロー君が考えるような作戦じゃないしね。あ、あの時六つ子会議から突然抜け出したのはそういうことだったんだ。

 

「じゃあ、六海とは何とも思ってないの?」

 

「そう言ってるだろ?だいたい恋愛なんてくだらねーし」

 

へー、そっかそっか。六海のことはそういう目で見てないんだ。よかったよかった。・・・何がよかったんだろう・・・?

 

「ふん、そんなことを考えるなんて、暇人だな。そんなお前のために新しい勉強法を教えてやる」

 

「もー、またそんなこと言うー」

 

本当に・・・フータロー君はいじわるだよ・・・。不愛想で、気が利かなくって・・・いじわる・・・。

 

・・・・・・なんで私、フータロー君のこと、好きになっちゃったんだろう・・・?

 

「と、学校についたね」

 

「ああ、そうだ・・・!!」

 

学校にたどり着くと、フータロー君はなんだか目を見開いた顔をしていた。その先にいたのは、六海だった。

 

「なーんだ、六海じゃん」

 

「・・・む、むつ・・・」

 

「風太郎君。放課後、話があるから」

 

声をかけようとすると六海はこっちを見ることなく、一方的にそう言って学校へと入っていっちゃった。え?何あの冷めきった態度?

 

「な、何あれー?」

 

「・・・一花。放課後付き添ってくれ。いやな予感がする」

 

???いきなり付き添ってくれだなんて・・・急にどうしたの?それに・・・フータロー君、なんか冷や汗すごくない?

 

♡♡♡♡♡♡

 

放課後、フータロー君は六海に言われた通り、指定された場所で六海の話を聞こうとする。私はフータロー君の付き添いだよ。

 

「は・・・話って・・・なんだ?」

 

「もうわかってるんじゃないの?キンちゃんのことだよ」

 

ああ、そう言えば、変装してたフータロー君のことを別人だととらえてたよね・・・て、フータロー君、なんか冷や汗がすごくなってる・・・。

 

「昨日、らいはちゃんに言われたよ。金太郎さんはうちの親戚にはいないって。でも六海は昨日キンちゃんに会った。おかしいよね?話が全然食い違ってるんだもん」

 

うわ、フータロー君、冷や汗どころか顔色まで悪くなってるけど大丈夫⁉

 

「ねぇ風太郎君・・・昨日、どこにいたの?」

 

「ど、どこって・・・」

 

「・・・質問を変えよっか」

 

六海はフータロー君に問いかけながら顔をフータロー君に合わせる。

 

「風太郎君・・・六海になんか隠してる?」

 

フータロー君を見ている今の六海の顔は・・・誰が見ても怒ってるようにしか見えなかった。

 

17「恋人のふり作戦」

 

つづく




次回、六海、三玖視点

おまけ

学園の生徒紹介

坂本

外見は黒毛のくせ毛、そこそこイケメン

イメージCV:GOD EATER 2のギルバート・マクレイン

2年生。三玖と同じクラスでサッカー部に所属している期待のエースともいえる。関西出身で常に関西弁でしゃべる。一度決めたことにたいしては絶対に音を上げることもなければ、曲げることもしない熱血漢。情にも熱く仲間思い。
林間学校で六海を見かけ、一目惚れをして告白をしたが、今はその返事を待っている。その際に六海と風太郎の姿を見て、話してる姿を見て嫉妬をしてたりもする。一応は風太郎のことを成績トップの噂程度で知っている様子。その噂のせいで疑いの目も強い。
2000日の未来では真鍋と結婚を約束している。

選ばれた花嫁の番外編、どっちから先に見る?

  • 一花か二乃
  • 三玖か四葉
  • 五月か六海

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