さて、前回言った通り、番外編アンケートは今回で最後です。このアンケートの結果次第で、トップバッターが決まります。
「ちょっと五月!離しなさいってば!」
「だーめーでーすー!二乃もちゃんと来てくださいよー!」
期末試験が残り1週間を迎えた土曜日、今日から上杉君と1週間みっちりと期末対策に向けて勉強をしなくてはいけない・・・のですが、二乃だけが参加する気がなく、こうして逃げようとしてるところを私が引き留めています。変に暴れるので非常に苦労しています。そういえば・・・他のみんなは・・・
「わ・・・わ・・・来るよ・・・次キスシーン来るよ・・・!」
「はわわ・・・」
「ドキドキ・・・」
「ははは・・・みんなテレビで緊張しすぎだってー」
仲良くテレビを見ているじゃないですか!何やってるんですか!こっちは苦労しているというのにのんびりと!
「・・・あー!いいところで次回予告だー!」
「うぅ・・・こう区切られると続きが気になる・・・!」
「一花、女優のコネで続きとか・・・」
「こらこら、ネタバレ厳禁だよー。来週まで待とうねー」
「みんなテレビ見てないで二乃を止めるの手伝ってくださいよー!」
「は・な・し・な・さ・い~!」
私の一声でみんながこっちを向いてくれました。早く手伝ってください!1人では止めるのが限界があります!
「六海、ちょっと五月ちゃんを手伝ってあげて?勉強道具取らなきゃいけないから」
「えー!六海だって勉強道具取らなきゃだよ!三玖ちゃんが行ってきてよー!」
「なんで私?四葉、二乃止めてきて」
「うええ⁉私ぃ⁉」
「全員で来てくださいー!!」
こんなところで変なショートコントなんてしなくていいですから!私の説得でみんなしぶしぶといった様子で二乃を止めるのを手伝ってくれました。そんなに暴れる二乃と関わりたくないのですか?
「わかった!わかったわよ!逃げも隠れもしないから!」
みんなで止めた甲斐もあってようやく踏みとどまってくれました。ふぅ・・・やっとですか・・・。
「さて、と。全員揃ったし、そろそろ勉強の準備始めよっか」
一花の仕切りに合わせてみんな筆記用具と教科書を用意しました。一花と六海は勉強道具を取りに一旦部屋に戻っていきました。二乃だけがしぶしぶといった感じですが・・・私も教科書と筆記用具を出さなければ。
「それにしても・・・フータロー、遅い・・・」
いわれてみれば確かに・・・今の時刻はもうすでに上杉君が来てもおかしくない時間です。先ほどの二乃を引き留める場に居合わせなかったのが不幸中の幸いというべきなんでしょうが・・・10分以上もオーバーしているとは・・・。
「上杉君に何かあったのでしょうか?」
「でも上杉さん、今日ちゃんとピンポン押してたから来てるはずだよ」
「はっ、近くまで来てるのに来ないだなんて、家庭教師の身でいい度胸ね」
二乃だけ上杉君の当たりがきついですが、三玖と四葉は素直に上杉君を心配してくれていますね。
「私、もう少し上杉君を待ってみますね」
「わかった。じゃあ私たち、先に始めてるね」
上杉君は近くに来ているのだとわかっているのなら、もう少しだけ待ってみることにします。みんなは先に勉強を始めるようです。
それから5分か10分・・・未だに上杉君が来る気配はありませんでした。
「・・・遅いですね。今日は家庭教師の日である土曜日・・・なのに近くまで来ているのに未だに来ない・・・せっかくみんな集まっているのに何をしているんでしょう?」
あまりにも遅いので私はしびれを切らして玄関のドアを開けて、どこまで来ているか様子を・・・てっ!!
「う、上杉君!!?」
ドアを開けた瞬間、扉の前で上杉君が倒れていました!!な、なんですかこれ⁉いったいどういうことですか⁉
「ど、どうし・・・」
私は上杉君の安否を確かめるべく、彼の顔を見た瞬間、私は上杉君の異変に気が付きました。
「死・・・死んだように寝てる・・・」
上杉君は死んだ魚のような目をしながらぐっすりと眠っていました。というか目を開けて寝ている上杉君、怖いですよ⁉と、とにかく上杉君を起こさなければ・・・。
「上杉君!起きてください、上杉君!」
「・・・はっ!!こ、ここは・・・」
私が上杉君を揺さぶると、起きてくれました。目を開けて寝てたので目が覚めたといっていいのかわかりませんが。
「私たちの部屋の前ですよ。上杉君、ここで寝てたんですよ?」
「・・・あ・・・そうだった・・・かなりの睡魔が襲って、眠ってしまったんだった・・・」
私の説明で上杉君は全てを理解し、やってしまったといった顔つきになっています。
「またやってしまった・・・勉強に集中しすぎて気づいたら朝になってた・・・。もう少し時間に気を付けないと・・・いや・・・しかし朝勉は効果的と聞くし、一概に悪いとは言えないか・・・」
「悪いに決まってますよ。朝まで勉強することを朝勉とは言いませんから」
「そ、そうだよな・・・すまん・・・」
まったく、上杉君らしいといえばらしいですが・・・心配して損しましたよ。
「あなたがあまりにも遅いので、みんなで先に勉強、始めてますよ」
「お、おう・・・そうか・・・。そいつは頼もしいな。試験まで後1週間だ。テスト範囲を詰め込めるだけ詰め込めておきたい。そこで・・・これを用意してきたぜ!!」
上杉君が私に見せてきたものは・・・軽く20枚以上はある問題集でした。
「あの・・・上杉君・・・これは・・・」
「今回の範囲を全てカバーした想定問題集だ。人数分用意してきたので今日の課題が終わり次第始めてもらう。かなり多いが、こいつを一通りこなせば勝機は見えるはずだ」
え・・・ただでさえ課題もあるというに・・・さらにそこにこの問題集をやれというのですか・・・。な、なんて拷問に近い仕打ち・・・
「や、やっぱり今日の家庭教師の約束はなしでお願いします!お引き取りください!」
「こら!逃げようとすんじゃねぇ!予定通り勉強するぞ!お前がこれを引き取るんだよ!」
私は上杉君から逃げようとしましたが、すぐに捕まり、問題集の束を押し付けられてしまいました。
「・・・こんなにたくさん・・・」
大量にある問題集を見て、私はため息が出そうになりましたが、私はこの問題集をじっと見ると、とあることに気づいてしまいました。まさか・・・
「・・・呆れました。これが原因で徹夜してたんですか?」
「そ・・・そんなことどうでもいいだろ?ただ、お前たちだけにやらせてもフェアじゃないからな。家庭教師として、俺がお手本になんなきゃと思ってな・・・」
!お手本になるって・・・またずいぶんと懐かしい言葉が出てきましたね・・・。それが上杉君の口から出てくるとは思いもよりませんでしたが・・・
「つーか、誰か逃げ出さないうちに早く行こうぜ」
「は、はい。そうですね。また二乃を引き留めるのは骨が折れそうですから」
「あいつもう逃げようとしてたんだ・・・」
二乃が逃げようとしていた事実に上杉君は頭を抱えている様子がうかがえます。
「あいつ・・・ただでさえ姉妹たちより遅れてるってのに・・・一言お灸をすえてやらねばならんな」
「あ、あの・・・揉め事は勘弁してくださいね。時間は限られているんです。みんなで協力し合いましょう!」
「むむ・・・それもそうか・・・変に拗らせるのは俺も本意じゃない」
そんな話をしながら私と上杉君は皆が集まっているリビングへ向かいま・・・
「二乃、その手を放して」
「それはこっちのセリフよ!」
「・・・仲良く・・・ねぇ・・・」
リビングへ入るなり、ニ乃と三玖がいつものようにケンカをしている光景が広がっていました。その様子に一花、四葉、六海は参っている様子です。これじゃあ上杉君に偉そうなこと、何も言えませんね・・・。
「いい加減その手をどけなさい、三玖!」
「ニ乃の方こそ諦めて」
「はあ?あんたが諦めなさいよ!」
「諦めない」
喧嘩の様子から見て、ニ乃と三玖は何かを取り合っているようですが・・・何が原因でけんかを・・・?
「あ・・・あのー、お2人さん?何やってんの?」
2人の様子を見かねた上杉君が喧嘩の原因を尋ねてきました。
「三玖がテレビのリモコンを渡さないのよ。今やってるバラエティにお気にの俳優が出てるっていうのに」
「だって、この時間はドキュメンタリー。今回の特集は見逃せないから」
さ、さっきまでテレビを見ていたのに、またテレビですか・・・。そんな細かいことでけんかなんて、2人らしいですが・・・今はやめてほしいです。
「ねぇ、フータロー。どっちの番組・・・」
「はーい、勉強中は消しまーす」
上杉君はリモコンを取り上げてテレビの電源を消しました。
「あ・・・特集・・・」しゅんっ・・・
「ちょっと!何すんのよ!」
三玖はちょっと悲し気な反応、二乃は上杉君に抗議をしようとしてきました。
「お前らなぁ・・・そんなに見たいなら録画でもしとけよ。ビデオくらいあんだろ?」
「フータローがそう言うなら・・・そうする・・・」
「ちっ・・・!」
正論を言われ、三玖と二乃は喧嘩をやめてくれました。ほっ・・・ひとまずは安心ですね。
「上杉さん~、助かりました~。ありがとうございます!」
「・・・なぁ、お前ら。前から思っていたんだが、二乃と三玖、仲が悪いのか?」
「う~ん・・・どうなんだろうね?一言で言うと、犬猿の仲?っていうのかな?」
「うん。そうだね。特に二乃。あんな風に見えてあの子が1番繊細だから、衝突も多いんだよね」
言われてみれば確かに・・・三玖の細かいことにも突っかかりますし、林間学校では六海と喧嘩していましたからね・・・。
「はーい、フータロー君も来たし、勉強再開するよー」
一花の合図でみんな勉強再開の準備を進めていますね。おっと、私も早く準備しなくては。
「それじゃあ、フータロー君。これから1週間、私たちのことをお願い致します」
「ああ。リベンジマッチだ!」
中間試験のようにはいきません。汚名返上できるように、がんばらないといけませんね。私も、姉妹みんなも。
♡♡♡♡♡♡
こうして家庭教師の日で姉妹全員が揃うのはこれが初めてかもしれませんね。私たちは上杉君に苦手な個所を見てもらいながら勉強を進めて・・・いるのですが・・・。
「「・・・・・・」」
二乃と三玖との間がすごく険悪なムードが出ています・・・。あんな些細なことですぐに喧嘩するのですから・・・何が起こるのか想像もつきませんよ・・・。
「・・・二乃と三玖以外、全員よく聞いてくれ」
その様子を見かねた上杉君が2人に聞こえないように声をかけてきました。
「こうして全員集まったのはいい。だが新たな問題発生だ」
「・・・二乃と三玖、ですね?」
「ああ。もしあいつらが仲違いでもしてみろ。目標達成が一気に遠のいてしまう・・・中間試験のリベンジも夢のまた夢になってしまう」
確かに・・・ただでさえあの2人は・・・
「ちょっと、それ私の消しゴムよ。返しなさいよ」
「借りただけ。すぐ返す」
「・・・ふん」
「あ、私のジュース飲まないで」
「借りただけよ・・・てまずーー!!」
あの様子ですからね・・・。そして二乃、ジュースを飲む=借りるというのはないですよ。
「・・・そういうわけだ。アイディア募集中だ。何とかならないか?」
「はい!六海と四葉ちゃんにいい考えがあるよ!ね?」
「うん!きっとうまくいくこと間違いなしです!」
2人が仲違いしないようなアイディアを六海と四葉が1つ上杉君に提供しました。そのアイディアが・・・
みんな仲良し作戦 by四葉&六海
「2人とも慣れない勉強できっとむかむかしてるだけなんだよ」
「ですから上杉さんがいい気分に乗せてあげたら喧嘩も収まるはずですよ」
いかにも四葉と六海らしいアイディアですが・・・うまくいくのでしょうか・・・。
「うーむ・・・三玖はともかく・・・二乃にこの作戦は効くのだろうか・・・。まぁ、やってみるが・・・」
上杉君も不安が残っているようですが、作戦決行のために二乃と三玖に近づいていきますね。
「はっはっは。いやー、いいねぇ。2人とも素晴らしい!」
「え?フータロー?」
「何よ、急に・・・」
いきなり褒められているので三玖は戸惑い、二乃は怪訝な顔をしてますね。
「二乃も三玖もいい感じに進んでるね。何というかすごくいい」
・・・んん?なんだかほめ方が怪しくなってきましたね・・・
「しっかりしてて・・・健康的で・・・いいね・・・うーん・・・とにかくえらい!!」
「「褒めるの下手くそーーー!!!」」
何となく予想はできていましたが・・・ここまで褒めるのが下手な人は初めてですよ。
「急にどうしたの?フータロー・・・」
「本当、気持ち悪いわね」
「むっ・・・そんなことない。気持ち悪くはないから」
「本当のこと言っただけでしょ?」
「それは言いすぎ。取り消して」
「あっれー?てことはあんたも少しはそう思ったんじゃない?」
「思ってない。フータローはかっこいい」
「はあ?どこがよ?」
「・・・・・・」
仲良くさせるどころか二乃の一言でまたけんかが始まってしまいましたね・・・。
「・・・作戦失敗。次の提案挙手」
「じゃあ次はお姉さんが。こんなのはどうかな?」
一花が出したアイディアは・・・
第3勢力作戦 by一花
「あえて厳しく当たることでヘイトがフータロー君へ向くはずだよ。共通の敵が現れたら2人の結束力が高まるはずだよ」
なるほど・・・あえてアンチ・ヘイトを作り上げてその矛先をそれに向け、協力して倒す、みたいな展開というわけですね。そしてその役が言わずとも上杉君ですね。こういうのは得意分野でしょうし。
「う~ん・・・」
「ん?どうしたの?」
でも上杉君は何か渋ったような声を出してますね。何か不満でもあるのでしょうか?
「一応それなりに頑張ってるあいつらに強く言うのは心が痛む・・・」
「あなたに人の心、それも良心があったのですね・・・」
まさか上杉君に良心があったなんて誰が想像できたでしょうか?少なくとも私は想像できませんでした。
「まぁ・・・とりあえずはやるだけやってみるが・・・」
上杉君は作戦決行のために再び二乃と三玖に近づきます。
「おいおいおい!まだそれだけしか課題終わってねーのかよ!」
「「!!」」
「といっても半人前のお前らは課題を終わらせるだけじゃ足りないけどなぁ!!あ!違ったか!半人前じゃなくて6分の1人前かぁ!!ふははははははは!!」
「あれ⁉フータロー君、なんか生き生きしてない⁉」
良心があるとは到底思えないほどに生き生きしてますね。やっぱりこの人に良心なんてあるわけないです。
「あんたに言われずとももうすぐ課題が終わるところよ。ほら」
「ほう・・・・・・ん?そこ、今回のテスト範囲じゃないぞ」
「え⁉あれぇ⁉やっば・・・」
二乃は今回のテスト範囲とは別のところをやっていたところに動揺していますね。
「二乃。やるなら真面目にやって」
「・・・っ!こんな退屈なこと、真面目にやってられないわ!自分の部屋でやってるからほっといて!」
「お、おい二乃!」
三玖に言われて気が障ったのか二乃は自分の部屋へ戻ろうと移動を始めました。
「はあ・・・せっかく作ったのに・・・問題集がワンセット無駄になっちまった・・・」
「「!!??」」
「弱気にならないでください。お手本になるのでしょう?頼りにしてますよ」
「・・・だな。もうちっと粘るか」
私の励ましが効いたのか上杉君は二乃を呼び止めようと動きます。
「待てよ二乃。始めてまだ5分も経ってねぇ。もう少しだけでも残れよ」
「・・・・・・」
「お前だってあいつらと喧嘩するのは本意じゃないだろ?ただでさえお前は出遅れてるんだ。他の5人にしっかり追いつこうぜ」
「・・・さい」
「ん?」
「うるさいわね!!アタシ達のこと、何も知らないくせに!!」
「に、二乃ちゃん・・・?」
「あんたにとやかく言われる筋合いはこれっぽっちもないわ!!あんたなんかただの雇われ教師!!部外者よ!!!」
上杉君に言われて癪に障ったのか、今までの我慢が限界が来たのか二乃は大きな声を上げました。すると三玖は上杉君が作った問題集を持って、二乃に渡してきました。
「これ、フータローが私たちのために作ってくれた。受け取って」
「・・・問題集作ったくらいでなんだっていうのよ。そんなもの・・・いらないわよ!」
バシィッ!
バサッバサッバサッ・・・
二乃は三玖の手を払い、持っていた問題集が三玖たちの周りに散らばりました。
「ね、ねぇ・・・一旦落ち着こうよ。ね?」
「そうだ・・・お前ら・・・」
「・・・二乃。問題集、拾って」
「こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ・・・今日だって遅刻してたじゃない。こんなもんなんか渡して・・・いい加減すぎるのよ!!こんなので教えてるつもりなら大間違いだわ!!!」
ビリリリィッ!!
「!・・・二乃!いい加減に・・・!」
「三玖!俺のことはいいから・・・」
パチンッ!!
「「「「「!!!???」」」」」
「・・・二乃・・・上杉君に謝ってください」
もう我慢の限界です。今まで通り突っぱねるくらいならまだ我慢はできました。ですが・・・上杉君の頑張りを踏みにじるように用紙を破った行為にはさすがに見過ごすことはできません。私は・・・二乃を叱るように頬に1発平手打ちをしました。
パチンッ!!
ですが二乃もやり返しと言わんばかりに私に平手打ちをしてきました。
「五月・・・!急に何を・・・!」
「・・・この問題集は上杉君が私たちのために作ってくれたものです。決して粗末に扱っていいものではありません」
「五月・・・」
「二乃・・・上杉君に謝罪を」
「あんた・・・!いつの間にこいつの味方になったのよ・・・!」
私が上杉君に味方しているのが面白くないのか、二乃は歯ぎしりしています。
「・・・はっ!まんまとこいつの口車に乗せられたわけね。そんなただの紙切れで熱くなっちゃってさ・・・バッカみたい!!」
・・・私は今の二乃にたいして本当にあきれています。これがただの紙切れ?そうでないことくらい、この用紙を見ればわかるというのに。
「ただの紙切れじゃない。ちゃんとよく見て」
「はあ?」
「待て!二乃の言うとおりだ!俺が甘かっただけで・・・」
「あなたは黙っててください」
私は上杉君の言い分を黙らせて話を戻させます。
「彼はプリンターもコピー機も持っていません。かといってコンビニでコピーを使うほどお金も持ち合わせてません」
「何が言いたいのよ・・・」
「まだ気が付かないのですか?本当にあきれました。これは・・・全部手書きなんです」
上杉君が今日遅刻した理由・・・それはこの問題集を人数分手書きで作っていたから。私たちのためにここまで頑張ってくれているんです。だからこそ、二乃のあの行為は許せなかったのです。
「!!・・・だ・・・だから何だっていうのよ・・・!」
「上杉君がここまで頑張ってるんです!私たちも真剣に取り組むべきです!!上杉君に負けないように!!」
私は今の気持ちを二乃に本気でぶつけていきます。
「・・・アタシだって・・・」
「二乃・・・」
「ま、まぁまぁ・・・」
「お、落ち着こうよ・・・」
一花たちはこの様子を見かねて仲裁に入ろうとしていますね。
「二乃。いい加減受け入れて」
「・・・わかったわよ。あんたたちはアタシよりこいつを選ぶってわけね・・・」
二乃は顔を俯かせ、手を強く握りしめ・・・
「いいわ・・・出ていってやるわよ!!こんな家!!」
「なっ・・・!」
「「「「「えっ・・・!」」」」」
今、二乃は何と・・・?この家から出ていく⁉
「ま、待て二乃!早まるんじゃない!冷静になれ!」
「そうです!そんなことしたって、誰も得なんてしません!」
「得かどうかなんて関係ないわ。それに、前々から考えていたことよ。この家はアタシを腐らせる」
二乃は決意が固いのか何を言っても聞き入れてくれません。ですが・・・諦めません!何としてでも止めないと・・・
「に、二乃!こんなのお母さんが喜びません!悲しんでしまいます!やめましょうよ!」
「お母さんって・・・あんたのそういうとこ、うざったいのよ!未練がましく母親の代わりを演じちゃってさ!いい加減にやめなさいよ!」
!!未練がましく・・・母親を・・・。わ、私はそんなつもりでやっているわけでは・・・。ただ・・・みんなをまとめたいだけで・・・
「い、五月ちゃん!二乃ちゃんは本気で言ってるわけじゃないから!」
「そ、そうだよ!二乃、早まらないで!」
「いったん話し合おうよ。ね?」
「話し合いですって?先に手を上げてきたのはあっちよ。あんなドメスティックバイオレンス肉まんおばけとは一緒にいられないわ!!」
「!!!???ド・・・ドメ・・・肉・・・!!」
だ、誰がドメ肉ですか!!体重だって私たちで六等分!平等なはずです!もうカチンときました!二乃が反省しないのなら、こっちにだって考えがあります!
「そんなにお邪魔なようなら私が出ていきます!!」
「あっそ!!勝手にすれば!!」
「もー!何でそうなるのー⁉」
「三玖ちゃーん!風太郎くーん!ヘルプー!!」
「お、俺はどうすれば・・・」
その後は私と二乃は家を出ていこうとしましたが、一花たちに説得されて、今はこの場を治めることができましたが・・・もう勉強会どころではないかもしれません。
♡♡♡♡♡♡
「・・・じゃあ、まぁ・・・今日はもう・・・帰るが・・・その・・・仲良くな?」
「ははは・・・今日はごめんねー」
「本当にすみませんでした・・・」
今日の家庭教師の時間が終了となり、私たちは上杉君を玄関まで見送りをしています。当然といいますか・・・二乃はこの場にはいません。
「えーっと・・・じゃあ、戻ろっか?」
「う、うん・・・」
上杉君がエレベーターに乗ったのを確認した後、私たちはリビングルームへ戻っていきます。リビングルームには二乃がつまらなさそうな様子でいました。
「・・・みんなで見送りなんて・・・よっぽどあいつに毒されたってわけね」
「!二乃・・・いい加減にしてください!」
まだ反省していない様子・・・もう私は怒りで頭がパンクしてしまいそうですよ。
「言っておくけど、家を出ていくっての、マジだから。後はそっちで勝手にやりなさいよ。アタシには関係ないから」
またそんなことを言って・・・!
「だ、だからダメだってばー!」
「ですから!お邪魔でしたら私が出ていくって言ってるじゃないですか!二乃だってそう望んでるんでしょ!」
「それで思いとどまるとでも?大きな間違いなのよ!」
「に、二乃も五月ちゃんも落ち着いて・・・」
「そ、そうだよ!2人とも、考え直して!」
「こんなの誰も望んでない」
「さっきも言ったけど前から決めてたことよ。止めたって無駄だから」
六海たちが私たちを止めているようですが、だんだんとエスカレートしていきます。
「大体あんたのことは前からムカつくと思ってたのよ!お母さんの代わりになる?寝言は寝て言いなさいよ!!」
「・・・っ!だったら二乃はみんなをまとめることができたんですか!!」
「その質問、そっくりそのまま返してやるわよ!あんたに何ができるってのよ!」
「何が言いたいんですか!」
「本当に母親代わりができたなら、六海をどうにかできたんじゃないかってことよ!」
なっ・・・!二乃、中学校のことを引き合いに・・・!六海の顔をもそれを聞いて顔を俯かせてます。
「この子が変わったのは中学入学後のすぐ後よ!今でこそ柔らかくなったけど、どうにかできたのはあんたじゃなくて赤の他人!これをどう説明するつもりかしら!」
「す、少しやんちゃをしただけじゃないですか!それに、中学校のことは関係ないじゃないですか!!」
「六海だけの話じゃないわよ!!四葉の様子がおかしかったの、あんた気付いてたでしょ!!」
「だからあの頃は関係ないって言ってるじゃないですか!!」
ああ言えばこう言う!ニ乃が今日ほど面倒だと感じたのは初めてですよ!
「「・・・・・・」」
「気にしない方がいいよ」
「ニ乃だって本気で言ってるわけじゃないし、もう済んだことだから・・・ね?」
「「うん・・・」」
あの頃に迷惑をかけたと感じているのか四葉と六海の顔色が暗いです。誰も迷惑とは思ってませんのに。
「ふん!話にならないわね!ていうか、こんなドメ肉と話しすら時間の無駄ね!」
「だ、誰がドメ肉ですか!!よっぽど私のことがお邪魔のようですね!いいですよ!出ていってやりますよ!ええ、出てってやりますとも!!」
「あっ!ちょっと!五月ちゃん⁉」
あまりに反省の素振りがない二乃にたいして私は我慢できず、この家を飛び出してしまいました。一花たちが止めるような声が聞こえてきましたが、それよりも感情の方が勝ってしまい、気にすることなく家を飛び出しました。これが私にとって人生初の家出というべきなんでしょうね。
♡♡♡♡♡♡
家を飛び出した後、私は公園の遊具であるトンネルの中で1人でしんみりとしています。
今にして考えれば、なぜ家を飛び出してしまったのでしょう。私はただ、二乃に反省してもらいたかっただけですのに。これじゃあ逆に私がみんなの心配をかけてしまっていますよね・・・。・・・やはりこんなことはダメですよね。早くみんなに連絡しなければ。そう思って私はスマホのラインを立ち上げてみますと、すでにみんなからメッセージが届いていますね。
〈二乃も五月ちゃんもどこにいるの?〉
〈心配だから早く帰ってきて!!!〉
〈今喧嘩してる場合じゃないでしょ⁉〉
〈仲直りして〉
うぅ・・・やっぱりみんなに心配かけられてますね・・・早いところみんなに連絡を・・・と思っていたら先に二乃から連絡が来ましたね。
〈嫌よ。二度と連絡してこないで〉
二乃・・・結局家を出たのですか・・・。少しは反省するかと思えば、全然そんな気配ないじゃないです。・・・気が変わりました。二乃が反省するまで私は一切帰りません。時間が立てば自分が悪いと自覚するはずです。ただ、それまでみんなには迷惑をかけてるので申し訳ない気分になります。一応は連絡しないとですね。
〈私も断固帰るつもりはありません。4人には心配かけて申し訳ありませんが、二乃がこの件を反省しない限り、戻るつもりはないです〉
ふぅ・・・さて、これでいいとして・・・今日の寝泊まりする場所はどうしましょう・・・。誰かの家に突然押し掛けるのも申し訳ないですし・・・無難にどこかのホテルに泊まるほかないですね。そう思ってトンネルから出ようとした時、ふと思い出してしまいました。
「あ・・・財布が・・・」
そう、財布を家に忘れてきてしまいました。ど、どうしましょう・・・ホテルに泊まるにしたってお金は入ります。どこかでご飯を食べる時だって、家で食べるわけではないのでお金が必要・・・かといって今家に戻るわけには・・・
くぅー・・・・
「お、お腹がすきましたぁ・・・」
空腹でお腹が鳴ってしまいました・・・何か食べたいですぅ・・・でもお金もないし・・・どうすれば・・・
「ぐすんっ・・・ぐすんっ・・・」
私が困り果てながらトンネルを出ますと、ベンチに座って1人で泣いている女の子がいました。この子、迷子でしょうか?とにかくこれは放っておくわけにはいきませんね。
「どうかしましたか?どうして泣いているのですか?」
「・・・純君と喧嘩したぁ。お前なんか・・・大嫌いって・・・」
あらら・・・この子は迷子ではなくお友達と喧嘩をして泣いていたようですね。
「もうやだぁ・・・純君が一緒にいるくらいなら家出するぅ・・・」
一緒にいる、ということは姉弟かなにかでしょうか?その子によほど嫌なことを言われたのか家出をすると言い出しました。家出をした私が言うことではないと思いますが・・・嫌なことを言われたから家を出るのは違うと思います。
「そんなこと言わないでください。お家の人たちが心配しますよ?」
「お父さん・・・お母さんと離婚してどっか行っちゃった・・・お母さんも重い病気にかかって死んじゃった・・・」
「す、すみません・・・無神経なことを・・・」
こ、この子・・・思っていたより相当つらい出来事を経験したのですね・・・。
「だから純君たちと一緒に住んでるの。お姉ちゃんたちが言ってた。痛みも辛さもみんなと一緒に分かち合って、協力し合えば、何でも乗り越えられるって。でもお姉ちゃんは噓つき!」
「どうしてそう思うのですか?」
「だって喧嘩したから!こんな辛さなんて分かり合えなかったから!もうなにも信じられない!皆大嫌い!」
どうやらこの子はお姉さんの言っていたことと純君という子とのケンカでいろいろ矛盾を感じてしまって拗ねているようですね。
「そうですか・・・。でも、私はあなたの気持ち、わかりますよ。私も、同じですから」
「お姉ちゃん・・・も・・・?」
「ええ。私には姉がいるのですが、今その姉と喧嘩してしまいまして・・・姉が反省するまで家出中なんですよ。まぁ、その姉も家出中なんですが」
「お姉ちゃんも・・・家出・・・?」
「私の気に障るようなこと言ってきましたよ。ええ、言ってきましたとも!ドメ肉なんて言われて辛かったですとも!」
「ドメ・・・?」
「ですが・・・家出した私が言うのもなんですが・・・いつか仲直りできる信じたいです。ただの綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが・・・」
「・・・どうして信じたいって思えるの?あたちはそんなこと考えたこともないのに・・・」
私の言葉に疑問を抱くこの子はそう言いながら大きく首をかしげます。
「生きていくうえで、誰もが通る道だからです。今回のことと限らず、私たち姉妹はたくさんケンカしました。そしてその度に、何回も仲直りしてきました。その時に、いつも思うんです。私たちの繋がりは決して切れないと」
「!!」
「だから何が起きようともいつかわかりあえる、私たち姉妹の絆は決して折れないと」
それがこれまで生きてきて私が感じてきている全ての思いです。
「・・・と、思っているんですが・・・今回は事が事ですので今はそう言いきれる自信がなくなっています・・・。というか、家出してる時点で説得力ありませんよね・・・」
この子を励ますつもりが、逆に私が落ち込んでしまいそうです・・・。昔はいろいろありましたからつい・・・。こんなことではこの子を励ますなんて・・・
「・・・たい」
「え?何です?」
「お姉ちゃんの話、もっと聞きたい!聞かせて!」
これは・・・好感を持ってくれたのでしょうか?それとも同情したのでしょうか?よくわかりませんが・・・この子がせめて家出をしないでくれるなら話をしましょう。私はこれまでの経験談をこの子に話してあげました。
「そっか・・・お姉ちゃんのお姉ちゃんと妹ちゃんでいろいろ苦労してたんだ」
「ええ、まぁ、一応は・・・」
今思い返せば、あの頃は本当に大変なことばかりでした。
「それなのにあたち・・・たった1回のケンカくらいで・・・ムキになっちゃって・・・」
この子は私の話で思うところがあったのか顔を俯かせています。
「・・・あたち、やっぱり家出したくない。純君と仲直りしたい。でも・・・あたちにできるかなぁ・・・」
「・・・大丈夫ですよ。その思いがあれば、純君だってわかってくれます」
「本当?本当に本当?」
「ええ。と言っても、私が言っても信じられないですよね・・・」
「ううん、信じる!お姉ちゃんも、お姉ちゃんと仲直りできるといいね!」
家出した身で元気付けられるか不安でしたが、元気になってよかったです。家出も思い直してもくれて本当によかった・・・。
「あ!そういえば、お姉ちゃんどこかで見たことある顔だと思ったら、この間うちに来たお姉ちゃんと同じ顔だー!」
「え?」
この間、うちに来た人と同じ顔?それってまさか・・・
「「千尋ー!千尋ー!」」
「千尋ちゃ~ん、どこにいるの~?」
「くそ!見つからねぇ!」
「あ!お姉ちゃんたちだ!」
何やら名前を呼ぶ声が聞こえてきたのでそこを振り向いてみますと、私たちの同学年の男女がいました。この子がお姉ちゃんと呼んだということは、あの人たちはこの子を心配して探しに来たようですね。名前は千尋ちゃんですか。かわいらしい名前です。
「さ、行って来てください」
「うん!」
千尋ちゃんはすぐに探しに来た人たちの元へと走っていきます。
「お姉ちゃーん!お兄ちゃーん!」
「!千尋ー!!」
千尋ちゃんとあの人たちは走ってきてお互い抱き着いてきました。
「よかった~。本当によかったよ~」
「たく!心配かけやがって!」
「ごめんなさーい!」
「謝る相手が違うでしょ?ほら、純君。行きなよ」
「う、うん・・・」
お兄さんの方を見てみますと、小さな男の子が隠れていましたね。どうやらこの子が純君のようですね。
「純君、ごめんなさい!ひどいこと言って!」
「お、俺こそ・・・ごめん。な・・・仲直り・・・してもいいか?」
「うん・・・うん・・・!もちろん!仲直りしよう!」
千尋ちゃんと純君は仲直りの印にお互いに抱き合っています。よかった・・・ちゃんと仲直りできて・・・。私も・・・できるといいんですが・・・。
「中野さん?」
「あ・・・えっと・・・あなたは確か六海の・・・」
「真鍋よ。真鍋恵理子」
男女の中には六海の友達の真鍋さんまでいました。え・・・千尋ちゃんが言っていたお姉さんって・・・
「もしかして、一緒に住んでるお姉さんって・・・」
「そう!この人達が私が住んでる孤児院のお姉ちゃんとお兄ちゃん!」
孤児院ですって⁉そ、そういえば六海はそんなこと言ってましたっけ・・・。純君と一緒に住んでるってそういうことでしたか!
「中野さんが千尋を見つけてくれたの?」
「え?あ、はい」
「・・・どうやら千尋が世話になったみたいね。孤児院生代表として、感謝するわ。ありがとう」
「「「ありがとうございます!」」」
「い、いえそんな・・・」
真鍋さんは同学年の男女と一緒に私に向かって感謝の言葉とお辞儀をしてきました。
「何かお礼がしたいわね・・・。春、バイトで余ったケーキもらってたでしょ?中野さんに渡してあげて」
「相変わらずだね、恵理子ちゃんのそういうとこ」
「え~?でもこれ、子供たちのためのデザートなんだけど・・・」
「いや、ここで渋るんじゃねぇよ・・・」
「あ、あの・・・お気遣いなく・・・」
くぅー・・・
ううぅ・・・この人たちの気遣いを丁重に断ろうとしたらお腹が鳴ってしまいましたぁ・・・。ほ、本当はそのケーキ、喉から手が出るほどに欲しいです・・・。
「姉ちゃんたちがもめてるぞ!どうする?」
「あ!だったらお姉ちゃん!このお姉ちゃん、家出中なの!お礼ならうちに泊めてあげて!」
「え?」
「「は?」」
「あら~」
「・・・じ、実はですね・・・」
千尋ちゃんの言葉で怪訝な顔をしている真鍋さんたちにこれまでの事情を説明しますと、真鍋さんははぁとため息をつかれました。
「あんたら六つ子はなんでこう・・・家出癖があるのかしら・・・」
「恵理子が疲れ顔になってやがる⁉」
「ま、まぁいいんじゃないかな?泊めてあげても?」
「中野さん、辛かったね~。今日はうちに泊まっていいからね~」
「あ、ありがとう・・・ございます・・・?」
のんびりとした女性が私をあやすように声をかけてきました。同い年・・・ですよね・・・?
「・・・まぁ、中野さんは千尋の恩人だし・・・泊めてあげてもいいけど・・・六海に連絡は入れさせてもらうわよ?」
「うぅ・・・わかりましたぁ・・・」
まぁ、そうなりますよね・・・。六海がここに来ると絶対に家に連れ戻しに来ますから連絡は入れてほしくないのですが・・・もう遅い時間ですし、来るといっても明日になるでしょう。なら、渋々ながら了承するしかありません・・・。
「よし。じゃあ帰りましょうか。中野さん、案内するからついてきて」
「は、はい」
「千尋ちゃん、純君、一緒に帰りましょうね~」
「「はーい!」」
これからのことを考えると不安ですが・・・とにかく今日の分の寝泊まりは確保できました。でも、明日六海が迎えに来るのなら・・・この先の寝泊まりについても考えないといけませんね・・・。
♡♡♡♡♡♡
今日の寝泊まり先の孤児院に入るなり、中にいた子供たちはみんな千尋ちゃんと純君の仲直りをお祝いしていました。私はここの院長さんにご挨拶しましたが、とてもいい人で安心しました。その後は子供たちと一緒に過ごしたりもしましたね。その間、真鍋さんは本当に六海に連絡を入れてしまったようです。明日には迎えに行く、と言っていましたが・・・私は二乃が反省するまで絶対に家に帰りませんよ!
とまぁ、今現在はみんな揃ってのごはんの時間ですが・・・
「おかわり!」
「おかわりください!」
「中野さん、あんたは自重して!今何杯目だと思ってんの⁉」
やはりご飯を食べられるというのは最高です!確かに人様の家でご飯を何杯も食べるのは気が引けますが・・・この食欲には逆らえないんです!ごめんなさい!
「は~い。中野さん、い~っぱい食べてね~」
「春!あんたもちょっとは止めなさいよ!はぁ・・・孤児の経済費が食費に潰えていく・・・」
春、さん?苗字はわかりませんが、この人は真鍋さんのように食費のことは気にせず、私にご飯を山盛りに盛ってくれました。
「皆食べ盛りだもん。食べれるうちはし~っかり、食べないとね~」
・・・真鍋さんは同い年って言ってましたけど、本当にこの人同い年でしょうか?実は年上、なんてことはないですよね?
・・・それにしても・・・
「慌てないで。ゆっくり飲んでね」
「だぅ~」
「あ!それ俺の肉!」
「いーや、僕のお肉だ!」
「だー!俺のくれてやるからケンカすんな!」
「はい、千尋ちゃんも、どーぞ♪」
「ありがとー!」
「院長、経済費なんだけど・・・」
「それは後で聞きます。今は食事を楽しみましょう」
生まれもここに来るまでの経緯は全員違いますけれど・・・それでも皆、本当の家族のような暖かさが感じられます。その姿は、私たち姉妹との絆と似たようなものも感じられます。これほどの暖かさ・・・本当に居心地がいいです。このままこうしていたい気分です。
・・・ですが、この暖かさは孤児院生たちのものであって、私個人のわがままでそれを消してしまってはいけません。千尋ちゃんたちにはこの場所で末永く、幸福の日々を送ってもらいたいです。なので・・・明日の朝一にはここを発ちましょう。私のわがままで、迷惑をかけてしまわないように。
♡♡♡♡♡♡
翌日の早朝、みんなが起きないように私は忍び足をしながら孤児院の外まで歩いていきます。扉の前までたどり着き、外へ出ようと扉に手を・・・
「お姉ちゃん、もう行っちゃうの?」
扉を開けようとした時、早起きした千尋ちゃんが私の後ろにいました。
「起こしてしまいましたか?」
「平気だよ。それより・・・」
「・・・はい」
「・・・そっか」
私の返答を聞くと、千尋ちゃんは顔を俯かせましたが、すぐに笑顔を見せてくれました。
「また、会いに来てくれるよね?」
「・・・ええ。もちろんです」
「約束!」
私と千尋ちゃんは、またいつか会おうという約束の指切りをしました。私は、千尋ちゃんに見送られながら、この孤児院から去っていきます。さて・・・今後の寝泊まり、どうしましょう・・・。家には戻りたくありませんし・・・
くぅー・・・
お、お腹がすきましたぁ・・・。せめて朝食はいただいてから出てった方がよかったと、今更ながら後悔を抱き始めてしまいました。
19「壮絶なる姉妹喧嘩」
つづく
おまけ
六つ子はゲームを六等分できない
三玖「・・・暇だね・・・」
一花「本当だねぇ・・・」
風太郎「そういう時こそ勉強だろ!さあ、さっそく・・・」
四葉「おーい!ゲーム買ってきたよー!」
風太郎「おい・・・」
六海「わー!これ1番流行りのゲームだー!」
三玖「さっそく対戦しよう」
五月「しかし・・・私はこういうのは苦手で・・・」
一花「て、あれ?これよく見たら4人用じゃない?」
四葉「あ!本当だ!」
風太郎「あー!残念!これじゃあゲームできないな!仲間外れはよくないなぁ!」
二乃「まったくよ」
風太郎「だろ?だから・・・」
二乃「これじゃあ後ゲーム機とテレビ合わせて5台買わないといけないじゃない」
五月「え?それでいいんですか?」
六海「だってこれ、インターネット繋げればみんなでできるしね」
風太郎(・・・いい時代になったものだね・・・ははは・・・ちくしょう・・・)
六つ子はゲームを六等分できない 終わり
次回、風太郎視点
選ばれた花嫁の番外編、どっちから先に見る?②
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五月
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六海