「あーもう!せっかくの気分が台無しだよー!」
六海たち姉妹は家に戻るなり、各各々の部屋に入り込んでいった。六海も部屋に戻るなり、自分の持ってたかばんを雑に放り投げて、今日買った本、魔法少女マジカルナナカちゃんのキャラクターブックを抱えながらベッドにだいぶする。今の六海はとっても気分最悪だった。と、いうのも・・・
「まさかあの人が家庭教師だなんて・・・信じたくもない・・・」
昨日食堂で一緒に昼食を食べた彼、上杉風太郎君だっけ?名前呼びたくないから忘れがちになっちゃう。その人がパパが雇った家庭教師だというのだから、気分が最悪になるよ。だって、女の子に向かって太るぞっていう失礼な人だよ?そんな人から絶対に勉強教わりたくないよ。
「・・・もうやめやめ!考えるのもうやめ!気分を変えなくちゃ!」
うん、こういうのは考えない方が1番!それがいいに決まってる!さーて、今日買ったナナカちゃんの公式キャラクターブック。どんなかわいらしいナナカちゃんが出てくるんだろうなー?
「・・・て!!どうして誰もいないんだああああああああ!!??」
ビクゥ!!
び、びっくりしたぁ・・・!
そういえばあの後
・・・そういえば思い出したけどクラスのみんなが言ってたっけ?あの
とにかく六海は今日はナナカちゃんのキャラクターブックを読んだら家庭教師さんに勉強教えてもらおうと思ってたけど、その家庭教師が
「さて・・・と。ではでは、改めまして・・・ナナカちゃん、オープン!」
六海がキャラクターブックを開くとナナカちゃんやそのお友達の関係図や活躍した場面なんかがたくさん出てきた。そうそう、こんな展開があったねー♪さて、次は・・・
コンコンッ
六海が次のページをめくろうとした時、ドアのノックの音が聞こえてきた。誰だろう?
「六海ー!四葉だけどー!開けてもらえるー?」
「四葉ちゃん?ちょっと待っててー」
四葉ちゃんが六海が用がある時はだいたい本を貸してほしいときか遊びに誘うときくらいだったよね?何の用だろう?
「四葉ちゃん、何のよ・・・う・・・」
六海がドアを開けるとそこにいたのは四葉ちゃんじゃなくて、あの
「あー・・・えっと・・・き、昨日ぶり・・・で、いいのか?」
「・・・何か用?」
「そのめちゃくちゃ敵意むき出しの顔、どうにかしろ」
六海はどうも気持ちの全てが顔や表現なんかに現れるらしく、六海が何か隠しごとをするときはいつもお姉ちゃんたちにばれちゃうらしい。そんなにわかりやすいかな?でも今は自分でも敵意むき出しなのは自覚してる。
「・・・て、そうじゃねぇ・・・。こほん、あー、改めまして、上杉風太郎だ。今日からお前たち六つ子の家庭教師となった・・・」
「うん。それは知ってるよ。自分で言ってたじゃん」
「そ、そう、だよな。えーと・・・」
この人を見てたら本当にむかむかする。言いたいことがあるならはっきりと言ってほしいものだね。ただし、女子の禁止ワードとかは聞きたくないよ。
「今日からさっそく、お前たちの勉強を見たいと思う。そういうわけで、リビングに集まってくれ」
「六海-!上杉さんと一緒に勉強しましょうー!」
なんだ・・・そんなことか。だったら六海の答えはもうすでに決まってある。
「やだ!!」
「ええー・・・」
「あれぇ⁉」
六海の答えに
「そもそもどうして同級生のあなたなの?この町にはまともな家庭教師はいないの?」
「それはわかった!それ2回も聞いたから!」
どうやら先にお姉ちゃんたちにも声をかけたみたい。まぁ、結局は断られちゃったみたいだけど。
「はぁ・・・昨日のことまだ根に持っているのか?確かに俺が悪かったが、あれは五月に言ったのであってお前には言ってない」
「それでも失礼なことには変わらないじゃん」
「ぐっ・・・」
それに悪かったって言ってるけど、どうだか。そう言っている人ほど自分は悪くないって思ってる人はいるんだし・・・て、この人何さっきからじろじろこっち見てるの?
「・・・何?六海の顔に何かついてる?」
「・・・お前・・・本当にこいつらの妹か?実はこいつらの友達とかじゃないだろうな?」
なっ!この人、いくら六つ子だということが珍しいからって、六海をお姉ちゃんたちの友達と思い始めてる!
「上杉さん!ひどいです!六海は正真正銘、私たちの妹です!」
「・・・お前、ちょっとメガネをはずして眉間にしわを寄せてみてくれ」
この人の言うことを聞く義理はこっちにはないんだけど・・・疑われたままなのはなんか癪すぎる。・・・しょうがない、やってあげるか。一度メガネをはずして眉間にしわを寄せるって・・・こう、かな?
「・・・マジで本当に六つ子なんだな・・・」
「もうー、さっきから言ってるじゃないですか上杉さん!私たちは六つ子、嘘なんてついてないです!」
ふぅ・・・ようやく納得してくれた・・・。
「疑問は解けたよね?じゃあさような・・・」
「待て待て待て!!」
六海がドアを閉めようとしたら
「お前そんなに俺のことが嫌いなのか⁉昨日飯食ってちょっとしたことを言っただけだろ⁉本当に悪かったって・・・」
「・・・嫌いな理由、まだあるよ」
「・・・なんだよ」
「あの時、五月ちゃんは勉強を教えてって頼んだ。そして六海はハンバーグ定食を恵んであげようとしたよ。それも、親しみを込めてだよ?」
「あ、ああ・・・そんなことあったな」
「それを無下にしたのはあなただよ!!」
バタンッ!!
六海はあの人の嫌いな理由を言いたいだけ言ってドアを力強く閉めた。ふぅ・・・ちょっと言いすぎちゃったかな?でも、悪いのはあっちの方だし、六海別に悪くないよね?
それにしてもわからないことがある。四葉ちゃんが
「・・・ま、気にしたってしょうがないか」
いろいろ腑に落ちないことがあるけど、こればっかりは考えたところで答えが出るわけじゃないしね。さあ続きでも読もう・・・と思ったけど、またいつあの人がドアをノックされるかわからないし、ナナカちゃんの方は後回しにしよっと。さて・・・どうしようか・・・。
・・・そうだ。まだメールの更新がどうたらって奴、今のうちにやっとこ。メールの送受信ができないんじゃ今後に響くし。
「ここをこうしてピッポッパ・・・と」
これでよし。後は時間がたてば元のメール画面の状態に戻るでしょ。さてと、やることやったし、今日も日課である絵でも描こう。
「今日は・・・ナナカちゃんの舞台となっている背景でも描こっと」
そうと決まればさっそくナナカちゃんの本を取り出そうと本棚に向かう。えーっと、何巻からが具体的な街の背景が見られるんだったっけ?
「・・・ん、思い出した!確か・・・2巻だ!」
六海はナナカちゃんの2巻を取り出し、背景が映し出された場面を探し出す。・・・お、あったあった。いつも使用しているペンとインクの用意をして、それじゃあさっそく・・・。
コンコンッ
これから描こうとした時、またノックの音が来たよ。いいところなのに・・・誰?
「六海。ちょっといい?」
今度は三玖ちゃんだ。・・・あの人じゃないよね?六海は警戒しながらそーっと、そーっとドアを開ける。そこにいたのは、三玖ちゃんだけだった。
「よかったー・・・三玖ちゃんだけだー」
「どうしたの?」
「いやー、なんでもないよ。こっちの話。それで三玖ちゃん、何か用?」
六海の部屋に三玖ちゃんが来るのはちょっと珍しいからうれしかったりもする。でも何の用だろう?
「私のジャージがなくなったの。赤いジャージ。六海、見てない?」
「ジャージ?いや、部屋に戻った時には見てないけど?」
ジャージねぇ。多分三玖ちゃん、着替えようとしたらそのジャージがなくなっていたから困ってる状況なんだと思う。できる限り手を貸してあげたいな。
「・・・やっぱり・・・もしかしたら・・・」
「えーと、そのジャージがなくなったのはいつなの?」
「さっきまではあったの・・・フータローが来る前はね」
フータロー?・・・ああ、
「今すぐ確認しに行こう!あの人はどこにいるの?」
「私が部屋を出る時には・・・一花の部屋にいたよ」
よ、よりにもよって一花ちゃんの部屋かぁ・・・。でも、背に腹は代えられない!意を決して一花ちゃんの部屋に行くと・・・あ、いた。ちょうど部屋から出た瞬間か。
「!三玖、六海、何の用だ?・・・そうか!勉強会に参加する気に・・・」
「「それはない」」
おお、今日は六海、三玖ちゃんと意気ぴったり!て、それどころじゃない。今がっくりしてるこの人に聞かないと・・・。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
「?」
「三玖ちゃんのジャージがなくなったらしいの。赤いジャージらしいんだけど・・・」
「そうか。見てないな」
「本当に?」
「本当だ」
疑わしい・・・。男の子ってそういうのごまかしたりすることあるらしいから。
「さっきまではあったんだって。・・・あなたが来るまでは」
「・・・・・・」
「まさかとは思うけど・・・」
「盗・・・」
「ってない!!!」
三玖ちゃんの言葉を言い終える前に言葉をかぶせてきた・・・ますます怪しい・・・。
「服なんてなんでもいいって言ってたのに・・・」
「濡れ衣だ!お前ずっと一緒だったろ!」
一花ちゃんの部屋の奥で一花ちゃんの着替えを見繕っている四葉ちゃんが
「もっとよく探してみろよ」
「ありそうなとこは一通り調べた。残るは・・・」
三玖ちゃんの視線の先には、ごちゃごちゃした一花ちゃんの部屋・・・。じょ、冗談じゃないよ!もしここにジャージがあるとしたら探すだけで日が暮れちゃうよ!しかも六海の探し物をすると部屋を散らかす癖があるから日が暮れるどころの話じゃなくなっちゃう!
「前の高校のジャージでよくない?」
「それだ!」
前の高校のジャージっていうと・・・黒薔薇のあれか。
「あんな学校の体操服なんて捨てた」
え、三玖ちゃん、あのジャージ捨てたんだ。まあ、かくいう六海もあの制服を含めて黒薔薇関連のものは全部捨てたけど。
「もったいな!転校前の学校になんの恨みがあるんだよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・え?」
「「・・・・・・」」
「あんなことがあったらね・・・」
この人の無神経な発言で六海たちは沈黙した。恨み・・・なんてちゃちなものじゃないよ。そう考えればこの人の方が何倍かマシだけど。
六海たち姉妹が前に通っていた高校、黒薔薇女子高校はいわゆる名門って言われるほどのお嬢様高校で、六海たちみたいな成績の者は落第して当たり前みたいな場所。だけどそこで六海たち全員に追試のチャンスが与えられて、六海たちは必死に勉強した。姉妹全員で一緒にいられるために。なのに・・・そこで待っていた結果が・・・。もちろん、あれは誰が悪いというわけでもない。転校の話だって、姉妹みんなで選んだ道だもん、悔いはないよ。あれがあったからこそ、以来六海はあの学校が嫌い。大嫌い。
「・・・知らない方がいい。特にフータローは」
「・・・俺関係ないだろ・・・つーか興味もないし・・・」
この人は失礼ではあるけど、こうやって六海たちを詮索しないあたり、非常に助かる。そこだけは評価してあげてもいいよ。て、それよりジャージ・・・
「おーい、そこで何やってんの?」
この無駄に暗い空気を破ったのは、リビングにいる二乃ちゃんだった。
「クッキー作りすぎちゃったけど、食べる?」
二乃ちゃんの手に持っているのは、ちょうど作り立てのクッキーだった。お、おいしそう・・・。
「二乃、今はそれどころじゃ・・・」
「あ!あのジャージ・・・」
ジャージ?二乃ちゃんが着てるジャージがどうか・・・って、あれ?赤いジャージ・・・しかも胸には、三玖ちゃんの名前が・・・。てことはジャージを盗ったのはこの人じゃなくて二乃ちゃんってこと?
「どうすんの?食べるの?食べないの?」
「た、食べる食べる!六海、クッキー大好きだもん!」
「あ!私も行く!」
「ちょうど小腹すいてたんだよねー」
「二乃、それ私のジャージ・・・」
「お、おいお前ら待て!」
六海たちはクッキーを食べにいくために一斉にリビングへと向かっていく。六海が階段を降りようとするとふと六海の隣の部屋、五月ちゃんの部屋が目に留まる。五月ちゃん、クッキー食べたいんじゃないかな?
「?六海?どうした?」
「別に。ただ五月ちゃんを呼ぼうとしただけだよ」
「!!ほ、本当か⁉お前が呼んでくれるのか⁉」
五月ちゃんを呼ぼうと考えていた六海の肩を
「べ、別にあなたのためじゃないよ。五月ちゃんと一緒にクッキーを食べたいって思っただけ」
「ああ!ああ!それでもかまわん!五月を呼んでくれるのならそれで!六海最高!!」
こ、この人、喜びの感情起伏が激しいなぁ・・・。
「ただあなたは下に行ってよ。話がややこしくなっちゃう」
「あ、ああ・・・先に待ってるぞ」
いっそそのまま帰ってくれたらいいのに。でも言ったところで引かないだろうな、あれ。・・・下に行ったか。よし、五月ちゃんを呼ぼう。まずはノック・・・
コンコンッ
「五月ちゃーん。いるんでしょー?開けてー」
「・・・六海ですか?ちょっと待ってくださいね」
ちょっとだけ待っていると、五月ちゃんが部屋から出てきた。
「六海、何か用ですか?」
「五月ちゃん、二乃ちゃんがクッキー焼いてくれたの。一緒に食べよー♪」
「!く、クッキーですか!」
クッキーって聞いた瞬間、五月ちゃんの目がキラキラし始めた・・・けどすぐに怪訝な顔をした。
「・・・それって、あの人もいるってことですか?」
「・・・うん。残念ながらあの人もセットだよ」
「く、くうぅ・・・そうですか・・・」
五月ちゃんは物欲しそうにリビングに視線を向けた。
「六海、申し訳ありませんが私は行きません。みんなでクッキーを食べてください」
「えー!そんなこと言わないで、一緒に・・・」
「できれば私もそうしたいです・・・でも・・・あの人がいる限り・・・絶対に無理ぃ・・・」
「うー・・・五月ちゃん・・・本当にダメ・・・?」
「うっ・・・た、例え六海の頼みであっても、ダメなものはダメなんです!本当に、すみませんが!」
「うー・・・わかったよぅ・・・」
本当にダメだった。五月ちゃんは六海の泣き寝入りにはすごく弱いからすぐ了承してくれると思ったんだけど・・・それだけ
「・・・あ、できれば私の分はラッピングしておいてくださいね」
五月ちゃんはそれだけを言い残して部屋に戻っていった。こういうところ、ちゃっかりしてるなぁ。あれを見てたら、思わず笑っちゃって、悲しかった気分が一気に晴れるよ。よーし、そんな五月ちゃんのためにいっぱい、いーっぱいクッキーをとっておかないとね。六海がリビングまで降りると、そこにはもうみんな集まってる・・・ついでに
「おお、六海!五月は・・・いないみたいだな・・・」
六海はこの人を無視して四葉ちゃんの隣に座る。六海が座ったのを確認すると、
「よし。これで5人だ。五月はいないが始めてしまおう。まずは実力を測るために小テストをしよう!」
そう言ってこの人は持ってきたであろう小テストの用紙を机に置くけど・・・
「「「「「いただきまーす!」」」」」
六海たちはそれには眼中になし。まさにティータイムだよ~♪
「おいし~。これ何味?」
「一花ちゃん!このくまさんクッキーもおいしいよ!ほら!」
「どれどれ・・・ん~、本当だ。おいしい~」
「ね~♪」
六海と一花ちゃんはクッキーを食べるのに夢中になっている。おっと、五月ちゃんの分もとっておかなきゃ。
「なんで私のジャージ着てたの?」
「えー?だって料理で汚れたら嫌じゃん」
「今すぐ脱いで」
「ちょ!やめて!後で返すから!」
三玖ちゃんと二乃ちゃんはジャージの件でけんかになりかけてる。ジャージでなくともこのやり取りはあるから慣れてるけど、仲良くしてほしいなぁ。
「上杉さん、ご心配なく!私はもうすでに始めています!」
「よし!名前しか書けてないがいいぞ!」
というより名前しか書けないの間違いじゃないのかなぁ?
「あ~、食べたら眠たくなってきた」
「さっきまで寝てただろ⁉六海、さっきからクッキーとってないで小テストを・・・」
「やだよ。今五月ちゃんのクッキーをラッピングするのに忙しいんだから」
「三玖!体操服も見つかったんだからやってくれよ!」
「勉強するとは言ってない」
「ねーねー、せっかくだし、今からどっか遊びにいかない?」
「絶対ダメーー!!」
六海たちのマイペースぶりにこの人もほとほと参っている様子だ。だからって同情はしないけど。
「・・・クッキー、嫌い?」
「!いや・・・そういう気分じゃ・・・」
「警戒しなくてもクッキーに薬なんて盛ってないから。食べてくれたら勉強してもいいよ」
二乃ちゃんはそう言いながらこの人に優しく話しかけている。でも六海は知ってるよ。こういう時の二乃ちゃんは何か裏がある。六海もこれまでにそれで何回やられてきたか・・・。
「うわっ、モリモリ減ってる!そんなにおいしい?」
「あ、ああ・・・うまいな・・・」
「本当?うれしいなぁ~」
こんなに心のこもってないうれしいを聞いたのは生まれて初めてだよ。
「・・・ぶっちゃけ家庭教師なんていらないんだよね~」
「・・・っ!」
どうやらこれが二乃ちゃんの本心みたいだ。家庭教師には六海は賛成だけど、この人の場合だと二乃ちゃんの意見に賛成だ。
「・・・なんてね♪はい、お水♪」
「お、おう・・・サンキュー・・・」
この人は二乃ちゃんが持ってたお水を受け取って、そのまま飲み干した。すると二乃ちゃんはすっと立ち上がって、妖艶な笑みを浮かべている。
「ばいばーい♪」
「んあ?」
きょとんとしていた
「あーらら、ここまでやるか」
「・・・ね、ねぇ、二乃ちゃん。あのお水・・・」
「そうよ。あんたの睡眠薬を使ったわ」
や、やっぱり!あの素早い眠りよう見たことあると思ったもん!
六海は別に不眠症というわけじゃない。ただ絵を描いてると妙なテンションになる時があって、その後は必ず眠くならないからそういう時用のために睡眠薬を常備しているだけ。
こういう状況になれば四葉ちゃんはなんか騒ぐはずだけど・・・
「zzz」
あ、寝てた。そりゃ気付かないわけだ。
「・・・どうするの?」
「どうって・・・何がよ?」
「フータロー、このまま放置するの?」
「んー、それよりも、フータロー君の住所って、どこ?」
「・・・あ」
考えてみればそうだ!六海たちはこの人の住所を全く知らない!だからといってこの人をこのまま放置ってのはさすがにやばいし・・・どうしよう・・・!
「な、何ですか、これは⁉」
六海たちがどうしようと焦っていると五月ちゃんが下りてきた。
「買い物に出ようと思って部屋を出てみれば・・・これはどういう状況ですか⁉」
「二乃ちゃんがこの人に六海の睡眠薬を使って眠らせたー」
「ちょっ⁉六海⁉」
「事実でしょ」
ことの全てを聞いた五月ちゃんはため息をして
「はぁ・・・仕方ありませんね。私が彼を送っていきます。二乃、タクシーまで運ぶのに手伝ってください」
「はぁ⁉なんでアタシが⁉」
「事の発端は二乃でしょ」
「六海もこういうことは本来実行犯がやるべきだと思うなー」
「ぐっ・・・わかったわよ・・・!」
二乃ちゃんはいやいやながら
「五月ちゃん、フータロー君の住所わかる?」
「生徒手帳に住所がのってるはずです。それを確認します」
五月ちゃんと二乃ちゃんは
「フータロー君があんな状態だし、もう部屋に戻ろっかな。ふわぁ~・・・眠い・・・」
「六海、四葉を部屋まで運ぶの手伝って」
「はーい」
一花ちゃんは眠そうにあくびをしながら自分の部屋に戻ってった。もうすっかりとぐっすり眠ってる四葉ちゃんを三玖ちゃんと六海で部屋まで運んでいく。本当にぐっすり眠ってる・・・。四葉ちゃんを部屋に戻した後、三玖ちゃんと六海は部屋に戻っていった。
♡♡♡♡♡♡
部屋に戻った後、六海は深夜テンションと同じ勢いでナナカちゃんの舞台の背景を描いている。色なんかはDVDレコーダーでアニメを確認しながら塗ってる。
六海にとって絵は色を塗るまでが絵描きだと思ってる。肖像画にしろ、イラストの絵にしろ、絵に色を塗り合わせることで、そこに命が吹き込むと考えてるの。絵に命があるかどうかは実際にわからない。何しろ非現実的なことだしね。そもそも六海は芸術家じゃないから、そこまで偉そうなことは言えないけどね。
「よし・・・できたー!」
ようやく色を塗り終えて、完成した絵を壁に貼り付ける。で、その後に昨日完成させた絵を取り外して、六海の絵描きファイルに挟んでいく。これが六海の日課、自分が描いた絵を本家の絵と見比べて、その違いを研究だよ。こういう毎日の積み重ねが、六海の夢に繋がる!・・・気がする・・・。
コンコンッ
「六海ー、入るよー」
ノックをした後、六海の許可も取らずに入ってきたのは一花ちゃんだった。せめて六海がしゃべるのを待ってほしいなぁ・・・。
「お、また新しい絵ができてる。しかもすごくうまくできてるじゃん。こりゃあ将来有望だねぇ」
「えへへ、そうかなぁ?」
やっぱり誰かに自分の絵をほめられると、胸の内がスカッとするなぁ。
「で、一花ちゃん、何か用?」
「んー?そろそろ六海が一肌恋しい頃かなーって思ってね。ほら、おいで」
一花ちゃんはその場で正座で座り込み、太ももをぱんぱんと叩いている。いうなれば、膝枕だね。
「もう、一花ちゃん!いつまでも子ども扱いしないでよ!」
「え?もしかして、大人扱いしてほしいの?」
何とまぁ白々しい驚き方なんだろう。
「そりゃそうだよ。一花ちゃんと同じ六つ子なのに、おかしいでしょ?」
「それじゃあ・・・あそこに置いてあるぬいぐるみ、それから、ハートのカーペットに星の壁紙、ついでに動物のベッドシーツはそろそろ卒業しないとね♪」
ええっ⁉そんなの、絶対にダメ!こんなにかわいいのを卒業なんてできないよ!
「もう!一花ちゃんはいじわるだ!」
「あはは、必死になってる必死になってる♪」
本当にもう・・・一花ちゃんすぐ六海をからかうんだから。まぁ、それでも一花ちゃんは優しいから大好きだけど。だから膝枕もお言葉に甘えて受ける。あー、やっぱり気持ちいい・・・。
「・・・ねぇ一花ちゃん。あの人、知ってるのかな?」
「フータロー君のこと?んー・・・多分知らないんじゃないかな?私たちが落第しかけて転校してきたこと」
やっぱり、そうだよね。それに、あの人自身も言ってた、興味もないって。・・・明日は家庭教師の日だっけ?明日も来るのかな?嫌だなぁ・・・。
♡♡♡♡♡♡
翌日の土曜日、学校はお休みだったから家でのんびりとナナカちゃんのアニメを見ようと思った時、五月ちゃんから呼び出しがあった。全員集合ということらしい。五月ちゃんの頼みならしょうがない。六海はピンクのシャツを着て、オーバーオールを履いた後にリビングに向かった。そこにはお姉ちゃんたちが揃っている。一花ちゃんは寝てるけど。そしてその前には、あの
「昨日の悪行は心優しい俺がぎりぎり許すとしよう!」
心、優しい?どこが?
「今日はよく集まってくれた!」
「まぁ、私たちの家ですし」
「zzz」
「まだ諦めてなかったんだ」
「せっかくの休日なのにー。ブーブー」
「・・・・・・」
「友達と遊ぶ予定だったんだけどー?」
寝てる一花ちゃんと四葉ちゃん以外は、六海を含めて全員いい気分ではない。
「てか、家庭教師はいらないっていわなかったっけ?」
「だったら、それを証明してくれ」
証明?何を?六海がそんな疑問を抱いていると、この人は何かの用紙を六海たちに突きつけた。これ・・・昨日の小テストの用紙じゃん。
「昨日できなかった小テストだ。合格ラインを超えた奴には金輪際近づかないと約束しよう。勝手に卒業していってくれ」
本当に⁉合格ライン超えるだけでこの人から勉強を教わることはしなくてもいいの⁉この人もたまにはいいこと言うじゃん!
「・・・なんでアタシがそんなメンドーなことしなきゃ・・・」
「わかりました。受けましょう」
この人の案に真っ先に肯定したのは、五月ちゃんだった。
「は?五月、あんた本気?」
「合格すればいいんです。これで、あなたの顔を見なくて済みます」
五月ちゃんはいつも以上のやる気を出している。その証拠に、いつもはかけない自分のメガネをかけている。
「そういうことなら、やりますかぁ」
「よーし、その条件ならやる気が上がってきたよ!」
「みんな、がんばろう!」
他のお姉ちゃんたちもこの人の出した条件にやる気を出し始めている。
「合格ラインは?」
「60・・・いや、50点あればそれでいい」
ご、50点か・・・ちょっと厳しいなぁ・・・。で、でも!きっと六海たちならやれるはず!
「・・・はぁ。別に受ける義理はないんだけど・・・あんまりアタシたちを侮らないでよ」
二乃ちゃんもやる気になってくれたところで六海たちは小テストを始める。
えーとまず1問目は歴史・・・厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ・・・げ、初っ端からわからない・・・。うーん・・・わかんないよー。思いつく武将でも書こう。徳川家康っと・・・。・・・多分間違ってると思う・・・!でも書いとけば当たりになるかもだよね!次々・・・。
2問目は・・・六海の得意な地理の問題だ!この問題は・・・簡単簡単。さ、次の3問目・・・お、これも地理の問題だ。これは・・・ちょっと難しいけど、解けない問題じゃないね。
中々いい調子だ。次の4問目・・・うげっ、次は六海の嫌いな理科だ・・・!・・・えーん!わかんないよー!もうここはテキトーに書いちゃお。そうすれば当たりが出ると思うし。
それから時間がたって、地理以外は大体苦戦したけど、六海の学力にしてはなかなかできた方だと思う。50点ぎりぎりでもいいから合格してるといいなぁ。おっと、他のみんなも完成したみたい。完成したテスト用紙を
「採点終わったぞ!すげぇ!100点だ!!・・・全員合わせてな!!!」
一花ちゃんが10点、二乃ちゃんが18点、三玖ちゃんが28点。
四葉ちゃんが6点、五月ちゃんが24点、そして六海が14点。
10+18+28+で56で・・・6+24+14で44・・・この2つを合わせるとぴったり合計100点・・・。あまりに悲惨な点数に六海たちはどっと疲れが出てる。
「・・・お前ら・・・まさか・・・」
ま、まずい・・・これはお叱りが来る・・・!
「逃げろ!」
「あ!お前ら待て!てかなんで四葉まで逃げるんだ⁉」
お叱りを恐れた六海たちはいろいろ言われる前に
「あはは!なんか前の学校思い出すねー」
「厳しいとこだったもんねー」
「怒られた記憶しかなかったよー」
「思い出したくもない」
「おかしい・・・勉強したはずなのに・・・」
「ほら、感傷に浸ってないでとっとと逃げるわよ!」
六海たちは前の学校の嫌な思い出を思い出しながら
「こ、こいつら・・・6人揃って赤点候補かよ!!?」
何をいまさら。そうじゃなきゃ、パパが相場6倍のお給料なんて出すわけないでしょうに。これがきっかけで六海たち六つ子と
・・・でもこの時の六海は、まさかちょっと先の日程で
02「合計100点」
つづく
六つ子豆知識
『六つ子の平均体重』
六海「はいはいはーい!六海知ってるよ!6人合わせて300キロだよね!」
五月「なんと6できれいに割り切れますね!1人50キロはほぼ女子の平均体重で健康的です!それでいいですよね?」
二乃「・・・いや、でも・・・」
五月「それでいいですよね?」
六つ子豆知識、今話分おわり
次回三玖視点