六等分の花嫁   作:先導

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今回が六嫁今年最後の投稿となります。この作品を読んでくださってる方、本当にありがとうございます!来年も頑張って達筆がんばります!

それから1つ謝罪を。リアルの関係上、番外編は予定よりだいぶ遅くなりそうです。そうですね・・・原作でいう7つのさようなら編が終わったくらいになるでしょうか。誠に申し訳ございません。

それから、アカウントを持っていない方のためにアンケートの答えを発表します。今回番外編のトップバッターに選ばれたのは、六海ちゃんでした!

来年も感想、挿入絵の募集の制限はないので、気軽にお待ちしております。

それでは、よいお年を。


6人で全員1人前

性懲りもなく、アタシが泊まってるホテルにまた上杉が来てたから文句を言おうとしたけど気が変わった。だって、いつもの自分勝手な様子は微塵もなく、落ち込んでいる様子だったから。あんな様子は初めてだったし、見ていられなかったから、アタシの部屋に入れた・・・けど・・・

 

「「・・・・・・」」どんより・・・

 

正直、今のこいつを見てると、気分が滅入るわ。いつもの身勝手ぶりはどこへやらって感じよ。本当に、調子が狂うんだから・・・。

 

「はあ~あ、やだやだ・・・辛気臭いわね」

 

「はぁ・・・人のこと言えた義理かよ。どういう風の吹きまわしだ?5人から解放されて、自由の身になったんじゃないのかよ?」

 

本当はこんなこと、望んでやったわけじゃないんだけど・・・こういう時自分が嫌になってくるわ。自身の意地がそれを邪魔するもの。

 

「そうよ。テレビは見放題、エアコンの温度は自由自在、誰も部屋を散らかさない。1人ってちょー最高よ。べ、別に1人が寂しいからってあんたを入れたわけじゃないんだからね!」

 

言わなくてもいい一言をつい言ってしまう・・・自分で言っておいてなんだけど、寂しいってことがまるわかりな答え方ね。まぁ別に寂しくないけど。

 

「・・・・・・」

 

「って、聞いてすらないわね・・・」

 

全く人の気も知らないでぼーっとして・・・何がしたいのかしら・・・。て、ちょっと待って。・・・やっぱり匂うわね。匂いの元は・・・やっぱ上杉か・・・。

 

「ていうか、辛気臭いだけじゃなくて本当に臭いわね。今日雨じゃなかったでしょ?なんで濡れてんのよ?」

 

「ああ、これか・・・。諸々とあってな・・・そのトラブルで川に落ちた」

 

「どんな諸々よ・・・」

 

つーかそんなべっちょりとした体で平気でいるとか・・・どうかしてるんじゃないかしら?それに、そんな体だと今上杉が座ってるソファーが濡れるでしょうが。

 

「何でもいいから、シャワー浴びてきなさいよ」

 

「え?俺は濡れた程度、気にしないが・・・」

 

「アタシが気にすんのよ!!」

 

本当マジで神経イカレてんじゃないの⁉べっちょりした服に・・・べたついた髪・・・ううぅぅ・・・!見てるだけで鳥肌が立ってきたわ・・・!

 

「もう我慢の限界!!ちょっとこっち来なさい!!」

 

「な、なんだよ⁉」

 

アタシは濡れないように手にタオルを持って上杉を洗面所の隣にあるお風呂場まで連れていかせる。

 

「もうね、あんたの今の姿見てて鳥肌が立ってくるのよ!!着替えは乾かしとくから、あんたはさっさと洗ってきなさいよ!!」

 

「いや、俺は別にそんなの気にしな・・・」

 

「い・い・か・ら・は・い・れ!!!」

 

「・・・わかったっての・・・」

 

ようやく納得したのか上杉はシャワーを浴びることになった。アタシはせっせと洗面所を出て、エアコンの温度を調節して、上杉の服を乾かす。・・・ちゃんとシャワーしてるんでしょうね?

 

ちょっと気になってアタシは洗面所まで戻ってきた。・・・あ、シャワーの音が聞こえる。どうやらちゃんとやってるみたいね。あのままだったらもう蕁麻疹が出そうな勢いだったから、安心したわ。

 

「いい?ちゃんとシャンプーだけじゃなくてトリートメントもするのよ?」

 

「へーい。たくっ、面倒だな・・・お前はよくそんな長い髪でいられるな。ケアとか大変だろ?」

 

!!アタシ達六つ子にとって、幼い頃の特徴である、長い髪・・・。上杉の言うことは最もね。正直邪魔くさいわ。でも、アタシにとってこの髪は、大切なもの。でも・・・それと同時に、枷でもある。

 

「そ、そうね・・・毎日きれいに洗ってるわ。その分整えるのも一苦労だわ。あんたにこの量の髪がケアできるかしら?」

 

「まずそんなに伸ばさねぇよ。邪魔くせぇ」

 

「ていうかロン毛のあんたを想像したら気持ち悪くなってきたわ」

 

「あ?似合ってるかもしれねぇだろ?俺のポテンシャルを甘く見ると痛い目見るぜ?」

 

「何言ってんのよあんた・・・。おえー、気持ちわる・・・」

 

「吐き気催してんじゃねぇよ、泣くぞ?」

 

・・・あれ?いつもは険悪なのに・・・アタシ、なんで上杉とこんなに話せるのかしら・・・。

 

「つーか髪型なんてなんでもいいしな。邪魔さえならなければ何でも」

 

「じゃあその変な髪型やめなさいよ。イケてないわよ?」

 

「らいははこの髪型にしかカットできない」

 

「なんで妹に髪切ってもらってるのよ?美容院に行きなさいよ」

 

「うちにそんな金があると思うか?なんだったらお前も妹に髪切ってもらえよ。四葉あたりなら器用じゃねぇか?」

 

「絶・対・嫌!」

 

アタシって、1対1とでなら、こいつともすんなり話せるのね・・・今気づいたわ。そういうことなら・・・1番気になってることでも聞こうかしら・・・。

 

「・・・ねぇ、何かあったの?」

 

「・・・は?何が?」

 

「だから、ここに来るまでに何があったのって聞いてるの。あんなずぶ濡れになってさ」

 

「・・・・・・別に、何もねぇさ」

 

「嘘!あんたが落ち込んでるとこなんて初めて見たわよ」

 

「お、落ち込んでねぇよ!」

 

「いいから聞かせなさいよ。1人は楽で快適だけど、話し相手がいなくて暇すぎるのよ」

 

「・・・・・・」

 

上杉は長い間をあけて、ようやくここに来るまでの経緯を話してくれたわ。

 

「・・・5年前・・・1人の女の子に出会ったんだ。その子と一緒に、ちょっとした誓いを立てたこともあった」

 

え・・・ちょっと・・・何よそれ・・・上杉のくせに・・・めっちゃロマンチックじゃないその展開。

 

「・・・その子がな、今になって俺の前に姿を現して・・・意味の分からないことを言い残して・・・で、そいつは俺の前から姿を消した。はい、終わりだ」

 

・・・ちょっと・・・本当に何なのよそれ・・・5年ぶりの再会と思ったらいきなりのお別れだなんて・・・そんなの・・・

 

「・・・二乃?・・・反応なし。寝てるのか?悪いな、こんなつまらん話をしちまって・・・って・・・」

 

ものすごく切ないじゃない・・・気づけば涙があふれて本当に止まらないわ・・・。

 

「・・・えっ・・・えぇ~~・・・何で泣いてんの?」

 

「だ・・・だって・・・あんた5年もその子のこと好きだったんでしょ?いきなりさよならなんて・・・切なすぎるわよ・・・」

 

「い・・・いや・・・好きとかじゃねぇよ・・・感謝と憧れがあっただけだって・・・」

 

「それ好きだってことじゃない!明らかにほの字じゃない!」

 

「だからそういうのじゃねぇって・・・。しかし、意外だぜ。たかが俺のためにそこまで泣い・・・」

 

「あーちょうどいい泣ける話だったわ!!めっちゃちょうどいい!!もう感涙よ!!感涙!!」

 

「最低。半分面白がってるだろ」

 

別に面白がってないわよ!ただ最近本当に潤いが足りてなかったからこの手の話題にちょうどいいって本気で思っただけよ。

 

「でもさ、元気出して。あんたみたいなノーデリカシー男でも好きになってくれる人が1人でもいるわよ」

 

「お前・・・」

 

アタシは上杉に聞こえるように洗面所に顔を向けて言っ・・・た・・・

 

「って!!!何出てきてんのよ!!!露出魔!!!」

 

視線を向けた先には裸の上杉が立っているじゃないの!!ちゃんとバスタオルで下半身は隠しているけど!!

 

「露出魔とは心外だな。ちゃんと隠してるだろ?それに、俺とお前は裸の付き合いだろ?忘れたとは言わせんぞ」

 

「いつの話してんのよ!!!ていうかそれは忘れろーー!!!」

 

アタシは上杉から離れた。上がるなら上がるって言いなさいよ!あんたの裸なんか見たくなかったわよ!

 

バサァッ

 

「ん?なんだこれ?」

 

「あ!それは・・・!」

 

離れる際にアタシは近くに置いといた紙袋を蹴飛ばしてたみたい。それで中に入ってたものが散らばってしまってる。

 

「!これ・・・」

 

紙袋に入っていたのは、上杉が作った問題集よ。自分で破ったものも、テープで補強してるものもあるわ。

 

「・・・やっていたのか・・・わざわざテープで止めてまで・・・」

 

「・・・これ、個別で問題を分けてたんでしょ?実を言うと・・・あの時、これを払いのけたけど・・・それでこれが手書きだっていうのに気付いた」

 

本当に偶然気が付いたんだけど・・・その時はイライラしてたし、アタシ自身も意地を張ってたから、上杉の頑張りを認められなかった。だから・・・一応は反省してるわ。

 

「本当は・・・い、一応は・・・悪かったと思ってるわ。だから・・・ごめん」

 

・・・なんだか柄にもなくしおらしくなった気分だわ。でも、一応は謝ることはできてよかったわ。

 

「ああ、いいぞ。許してやる。だからその調子で五月にも謝るんだ」

 

「それは嫌よ!!」

 

「えぇ~・・・なぜ?」

 

でもそれとこれとは話が別!五月には意地でも謝りたくないわ。

 

「はぁ・・・まだ五月に叩かれたこと根に持ってんのか?許してやれよ」

 

「・・・昔はあんなことをする子じゃなかったのよ。なんだか・・・五月が知らない人になったみたい」

 

もし五月に謝ってしまったら、そのことを認めてしまいそうで・・・それが嫌だから・・・謝ることがどうしてもできないのよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『居心地が悪い!!』

 

二乃が泊ってるホテルから出た後、風太郎は家に戻り、ホテルで起こったことを全て五月に話した。仲直りして、また仲のいい姉妹に戻ってもらうために。だが・・・

 

「二乃が謝罪したって・・・そんなにすんなりいくものなんですか?申し訳ないですが・・・にわかには信じられないのです」

 

このように五月は半信半疑の状態で、信じてもらえてない。

 

「お前に謝ることは拒否ってたが・・・俺に謝ったのは本当だ!反省してるんだからお前も許してやれ。いつまでも意地はってんじゃねぇよ」

 

「お兄ちゃんいつもより髪サラサラだー」

 

「そう言われましても信じられないものは信じられないのですが・・・」

 

あまりに煮え切らない様子の五月だが、風太郎は諦めず説得する。

 

「ほら、前に一緒に映画見に行ったことがあったろ?またその時みたいに・・・」

 

「・・・そうは言いますがあの時だって・・・」

 

五月は前に映画を見に行った時のことを話した。映画が始まる前に映る他の映画の広告があったのだが、二乃と五月の好みは見事に違っていた。

 

二乃が愛のサマーバケーション。

 

五月が生命の起源~知られざる神秘~

 

ちょっとした好みが違い、お互いにかなり小さな喧嘩を起こしたことがあったようで、五月はそれが根に持っているようだ。ちなみに風太郎はどちらも不評のようだ。

 

「あ!今日まだゴミだしてないや。まだ間に合うかなー?」

 

「大丈夫ですよ。今日は不燃ごみの日だったのでまだ間に合います。私が代わりに出しておきますね」

 

「わーい!五月さんありがとー!」

 

「・・・ん?」

 

五月が上杉家に馴染んでいる姿に若干もやもやが生じる風太郎。

 

「あれ?俺の腕時計どこだったっけか・・・」

 

「それならこちらに置いてありましたよ。どうぞ」

 

「おお!助かったぜ!ありがとな、五月ちゃん!」

 

「五月さーん!この輪ゴムって分別どっちだっけー?」

 

「それは可燃ですね」

 

「いやー、五月ちゃんがいると助かるなー!がはははは!」

 

「・・・居心地がわりぃ・・・」

 

もう上杉家の住人のようにふるまっている五月を見て、風太郎はかなりイライラした気持ちになり、二乃の気持ちがものすごく理解した気分になった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日の放課後、今日も上杉がアタシの泊まってるホテルに来た。で、今はアタシの部屋のソファーに座っている。

 

「なんか五月がうちに信じられんくらいに馴染んでな・・・正直居心地が悪くてたまらんかった。なんだか俺がお前たちの家に居座った時、お前のイライラしてた気持ちがものすごくわかってきたぜ」

 

「ふーん。どうでもいいけど。それより、ルームサービス呼ぶけどあんたなんかいる?」

 

「うーん・・・じゃあ喉乾いたし、飲み物頼むわ」

 

「はーい。こっちで適当になんか頼むわね」

 

アタシはルームサービスを頼むために電話の取っ手を掴み・・・

 

「・・・って!!なんで当たり前のようにあんたいるのよ!!」

 

あっぶな!軽く流すところだったわ!なんでアタシ、こいつを当たり前のように部屋に入れたのよ!アタシのバカ!

 

「なんだ?頼まねぇのか?飲み物くらい出してくれよ」

 

「めっちゃ図々しいわね!!昨日のしおらしさはどこに消えたのよ!!」

 

「うるせーな。誰かさんがぎゃーぎゃー騒ぐからそんな気分じゃなくなったんだよ」

 

その誰かさんってアタシのことじゃないでしょうね⁉もしそうだったらはっ倒すわよ!!

 

「それに、とりあえず今は、今目の前の問題を解決しないといけねぇしな」

 

「目の前って・・・ああ、期末試験ね」

 

「・・・期末試験・・・。そっか・・・期末試験のために動いてたんだったっけか。すっかり忘れてたぜ」

 

え、ちょっと本当に意外過ぎるんだけど。期末試験のために動いてたのを忘れるだなんて。

 

「昨日のことは正直、確かにショックだった。この時期に、このタイミングに、なぜあの子が俺の前に現れたのかはわからない。だが、あいつのおかげで1つ教えられたことがある」

 

「?」

 

「人が変わっていくのは避けられない。前に進むために、過去は忘れて今を受け入れなければいけないとな」

 

!過去を・・・忘れて・・・今を受け入れる・・・

 

「だからお前も仲直りして帰ろうぜ。みんな待ってる」

 

それは・・・アタシ自身もよくわかってる。自分だって、このままじゃいけないってことは重々承知。でも・・・どうしても割り切ることができないのよ。

 

「忘れたらいいって・・・そんな簡単に割り切れるなら苦労しないわよ」

 

アタシ達六つ子のことを例えるならこの羽ペン・・・羽で連想するもの・・・ひな鳥、その子供だわ。

 

「ここはアタシの部屋だから、これは単なる独り言」

 

「?二乃?」

 

「アタシ達が同じ外見、同じ性格だった頃、まるで全員の思考が共有されているような気がして、とっても居心地がよかったわ。でも・・・5年前から変わった」

 

アタシ達が変わり始めたのは・・・アタシ達のお母さんが・・・病気で亡くなった後・・・

 

「みんな少しずつ変わっていった。中にはガラッと変わってた子もいたし、一花が女優をしていたなんてしらなかったわ。日がたつにつれて、みんな当たり前のように変わっていく。まるで六つ子から巣立っていくように、アタシだけを残してね」

 

六つ子の中で1番変わってないのも、いつまでも過去を引きずってるのも・・・たった1人・・・アタシだけ。

 

「アタシだけがあの頃を忘れられない。だからこの髪の長さだって変えられないまま。だから無理にでも巣立たなきゃいけない。ただ1人だけ、取り残されないように」

 

これが解決法になるとは思ってはない。でもそれでもアタシは・・・

 

「・・・お前は本当に、それでいいのか?」

 

「いいのよ。あんたの言うとおり、過去は忘れて前へ向いていかなきゃ。後は・・・そうね・・・心残りがあるとすれば・・・林間学校・・・というか、キンタロー君」

 

「!!!!」

 

あの林間学校で出会い、アタシに付き添ってくれたり、助けたりしてくれたあのキンタロー君。あいまいな別れ方をしたから、どうしても気がかりなのよ。

 

「ふふ・・・しっかりお別れできてなかったからかしら・・・もう1度会えばケリ付けられるかもって、思ったんだけど・・・どうしてもキンタロー君のことが気がかりで・・・忘れさせてくれないわ・・・」

 

キンタロー君・・・今どこにいるのかしら・・・。できることなら・・・もう1度だけでもいいから・・・あなたに会いたいわ・・・。

 

「・・・もしかしたら・・・今日がその時なのかもな・・・」

 

「え?」

 

上杉は今なんて言ったのかしら?声が小さすぎて聞こえなかったわ。

 

「なぁ・・・もし会えるっていったら・・・お前はどうする?」

 

「えっ!!?」

 

会えるって・・・まさか・・・キンタロー君に⁉

 

「どうなんだ?」

 

「そ、そりゃ・・・会いたいけど・・・呼べるの⁉」

 

「あ、ああ・・・ひとっ走りで呼んできてやるが・・・どうする?」

 

こ、これは・・・願ったり叶ったりの展開だわ・・・!あのキンタロー君に会えるなんて・・・!

 

「じゃ・・・じゃあ・・・お願い・・・できるかしら・・・」

 

「ああ。わかった。ひとっ走りして呼んできてやるから、部屋で待ってろよ」

 

アタシの望みを聞いた上杉はソファーから立ち上がってキンタロー君を呼びに部屋から出ていったわ。・・・やばい・・・どうしよう・・・なんだか緊張してきたわ・・・!はっ!そうだわ!キンタロー君が来るんだし、部屋の片づけをしないと!ああ・・・こんなに胸が高鳴るのは久しぶりだわ!

 

♡♡♡♡♡♡

 

『四葉が心配』

 

中野家で一花たちはリビングで集まって風太郎が用意した問題集を進めている。いや、正確には一花と三玖はもう終わらせ、六海もたった今終わらせ、残るは四葉だけだ。

 

「終わったー!!ノルマ達成ー!!」

 

「お疲れさまー。よくがんばったね、六海」

 

「ほら、後は四葉だけ。頑張って」

 

「うぅ・・・六海が終わったなら、私だって!!」

 

四葉は自身の脳をフル回転させ、問題を進めていく。数十分の時間がたち、ようやく終わりの時が来た。

 

「よーし!!終わったーーー!!!」

 

「「「よっ、天才!!」」」

 

「えへへ・・・もう一生分勉強したかも・・・」

 

ここまで頑張った四葉に3人は労いの言葉をかける。四葉もやり切った風ないい笑顔をしている。

 

「・・・五月と二乃も、今頃これをやってるのかな・・・?」

 

「どうなんだろ?二乃ちゃんはこれ、破っちゃってるし・・・」

 

「一応は2人の居場所はわかってるんだよね?詳しくは知らないけど・・・」

 

「・・・きっとすぐ戻ってくる」

 

五月と二乃の様子が気になる4人がそんな話をしていると、四葉のスマホからメッセージが届く。

 

「あ・・・もしかして・・・ついに2人から連絡が・・・!」

 

四葉はすぐに届いたメッセージを確認すると、一気にしゅんとした顔つきになる。

 

「・・・って、ごめん・・・陸上部の部長さんからだった・・・」

 

「・・・四葉・・・その陸じょ・・・」

 

「あ!大変!もうお風呂入って寝ないと!」

 

「あ・・・」

 

四葉が陸上部の練習を続けていることに三玖は少し話をしようとした時、四葉はすぐに浴室へ続く洗面所へと入っていった。

 

「・・・一花・・・」

 

「うん・・・当事者同士で解決するのが1番だと思ってたんだけど・・・」

 

「でももうすぐ試験だよ?そうも言ってられないんじゃない?」

 

「そうなんだよねぇ・・・う~ん・・・」

 

少し無理をしている傾向のある四葉を心配する3人は自分たちに何ができるかというのを考える。

 

「・・・あ、全然関係ない話なんだけど・・・誰か六海の睡眠薬知らない?後1つしかなかったんだけど・・・」

 

「え?うぅ~ん・・・ごめん、何も知らないや」

 

「私も。不眠症じゃないし」

 

「えぇ~?おっかしぃなぁ・・・容量は守ってるのに・・・」

 

二乃と五月が家出中のため、最近寝付けない六海は睡眠薬を今現在使っている。それがいつの間にか1つしかなくなっており、一花たちが盗ったのではと考えていたようだが、どうも一花と三玖は本当に知らないようだ。

 

「四葉ちゃんと五月ちゃん・・・は絶対ないだろうし・・・そうなると・・・」

 

「二乃しかいないね・・・」

 

「それ以外考えられない」

 

「やっぱりか!!」

 

優しい四葉と真面目な五月は人のものを取ることはないので、なくなった原因は二乃であることが判明した。

 

「困ったなぁ・・・返してもらおうにも話す前に無視されるし・・・」

 

「もう全部使われてたりして・・・」

 

「それはない・・・と思ったけど、睡眠薬使って風太郎君を追い出したこともあったから否定できない・・・」

 

「あー、家庭教師初日のあれかー。懐かしいね」

 

二乃が拒絶すること、薬はもう使いきってしまった可能性があると考えて、返してもらうことは諦める六海。

 

「しょうがないなー。もう1回ドラッグストアで買いに行こ。ついでになんか欲しいものってある?」

 

「んー、じゃあ、コーヒーお願いできるかな?」

 

「私は抹茶ソーダ」

 

「オッケー。じゃあすぐに行ってくるね」

 

「気を付けて行って来てね」

 

六海は自分の財布とスマホをもって、睡眠薬が売ってるドラッグストアへ向かっていくのだった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

アタシは部屋を片付けた後、キンタロー君のために甘ーいお菓子を作っている最中だわ。今日のメニューはシュークリーム。きっとキンタロー君も気に入るはず・・・♪

 

「ふーんふーふふーん♪」

 

キンタロー君がこのホテルに来る・・・そう思うだけでアタシの心は六海流で言うならポカポカ状態だわ!でも上杉が走って呼びに行く意味でもあったかしら?電話で呼べばいいと思うけど・・・。・・・もしかして、キンタロー君とわざわざ2人っきりにさせてくれるってことかしら?だとしたらたまにはいいことするじゃない、あいつも。

 

コンコンッ

 

あ、このノックの音・・・もしかして、もう来たのかしら?

 

「はーい!」

 

アタシが入り口のドアを開くと、そこには見間違えるはずもない・・・林間学校で出会った・・・あの写真の男の子・・・キンタロー君がいた。

 

「いらっしゃい、キンタロー君♪」

 

「ど、どうも・・・」

 

「さっ、遠慮せずに入って♪」

 

「お、お邪魔します・・・」

 

アタシはキンタロー君を部屋に入れてあげたけど・・・今さらながら緊張してきたわ・・・て、ちらっと見たらキンタロー君は少しそわそわしているわね・・・ちょっといじわる言ってみようかしら・・・。

 

「ねぇ、アタシになんか言うことあるでしょ?」

 

「・・・っ。そうだ・・・言わなくちゃいけない。悪かった」

 

あら・・・思ってたより誠実に謝ってきたわね。まぁ・・・いじわるといってもあれはただアタシが一方的に約束したものだし、そこまで怒ってないわ。

 

「実は・・・俺は・・・」

 

「いいよ。キャンプファイヤーをすっぽかされた件は水に流します」

 

「!いや・・・そうじゃなくて・・・」

 

「ま、流すも何もアタシがただ一方的に言っただけなんだけどね」

 

「や・・・だから・・・」

 

「はい、この話はおしまい。それから、これ、返すね。今日はずっと付き合ってくれる約束でしょ?破ったら今度こそ許さないんだから」

 

アタシはキンタロー君からずっと借りていたもの、腕につけていたミサンガをキンタロー君に着けてあげた。これも心残りだったから、返すことができて内心ほっとした。

 

「じゃあそこらへんに座ってね。今お菓子作ってる途中なの。本当はキンタロー君が来るまでに作っておきたかったんだけど・・・思ったより早かったわね」

 

アタシはキンタロー君のためにお菓子作りを再開する。生地もクリームももうできてるから・・・

 

「・・・あの・・・実は俺・・・」

 

「待って!集中してるから!」

 

キンタロー君がいるのだもの。失敗できないわ。えーっと、次に焼く作業に入るわけだけど・・・

 

「よし。手伝おう。その方がすぐ終わるだろう。で、何作ってんだ?」

 

えっ・・・ちょっと待って・・・手伝ってくれるって・・・キンタロー君が・・・?

 

「えっと・・・ごめん、ちょ、ちょっと待ってね・・・電話してくるから」

 

「お、おう・・・」

 

アタシはいったんベランダに出て、キンタロー君のヒントをもらおうと上杉に電話を入れる。・・・あ、出たわ。

 

≪も・・・もしもし?≫

 

「あ、もしもし?上杉?キンタロー君、ちょー優しすぎるんだけど。ていうか、緊張しすぎて顔がまともに見れないわ!」

 

≪そんなこと言いたかったのかお前は・・・。で、何の用だ?≫

 

「あ、ごめんごめん。今シュークリーム作ってんだけどキンタロー君ってシュークリーム嫌いじゃないわよね・・・?」

 

≪え?あ、ああ・・・大好きだと思うぞ・・・多分・・・≫

 

「ん。オッケー。教えてくれてありがと」

 

聞きたいことを聞き終えてアタシは通話を切ってキンタロー君に顔を向ける。

 

「シュークリーム作ってるんだけど・・・どう?」

 

「い、いいね・・・シュークリーム・・・大好物だ・・・」

 

よし!もし嫌いだったらどうしようって思ったけど・・・大正解だったみたいね!一応上杉に聞いてよかったわ!

 

「で?何すればいいんだ?」

 

「そうねぇ・・・生地とクリームはできてるし、後は焼くだけなんだけど・・・」

 

「え?そうなのか?」

 

うぅ~ん・・・でも、せっかくキンタロー君が手伝ってくれるんだし、なんか申し訳ないなぁ・・・

 

「そうだ!冷蔵庫にフルーツがあるから、よかったら取ってもらえる?」

 

「え?フルーツいるの?」

 

「だ、ダメだった・・・?」

 

「い、いや・・・大丈夫だ」

 

やっぱキンタロー君優しいわ・・・。は!いけないいけない・・・見惚れてないで早く焼かないと後はこの出来上がった生地をオーブンに入れて・・・15分にセットして後は待つだけ。

 

「フルーツってこれでいいのか?」

 

「あ、ありがとう」

 

いちご、みかん、ぶどうに桃・・・いろいろ持ってきたわね。でもこれだけあればいろいろデコレーションできるかも。

 

「「・・・・・・」」

 

あ、後は待つだけなんだけど・・・キンタロー君とおしゃべりしたいんだけど・・・会話が続かないわ・・・。

 

「ごめん、ちょっと電話」

 

「またか」

 

アタシはまたベランダに出てまた上杉に電話をかける。

 

≪・・・何の用だ?≫

 

「ぜ、全然会話が進まないんだけど、キンタロー君の趣味って何?」

 

≪そこかよ!本人に聞けよ!≫

 

「それができないからあんたに聞いてんでしょうが!」

 

≪面倒くさい奴。べんきょ・・・読書かなんかだろ?・・・多分」

 

「ん。ありがと」

 

もう1回通話を切って、アタシはキンタロー君の顔をちらちらと伺う。

 

「コノ前見タ映画面白カッタナー。アノ映画ノ原作ッテ小説ダッタッカナ~。詳シイ人イナイカナ~?」

 

「棒読み間半端ねぇな。下手くそか」

 

そんな風なやりとりをしている間に15分がたった。しっかり出来上がってるかしら・・・。アタシはオーブンを開けて生地を確認・・・え・・・嘘・・・

 

「き・・・生地が・・・」

 

「膨らんでないな・・・」

 

こ、ここに来て失敗するだなんて・・・。こうも膨らまないことに、アタシは思い当たる節がある。

 

「霧吹き忘れたかも・・・いつもはそんなことしないのに・・・」

 

そう、霧吹きを忘れてしまったのよ。それをやっとかないとシュークリームの生地は焼いても膨らまないし、ただ焦げるだけだわ・・・。こんなこと・・・キンタロー君の前で・・・失態だわ・・・

 

「まさか二乃が料理に失敗するとはな・・・」

 

・・・え?今キンタロー君が口にしたことをアタシは見逃さなかった。

 

「き、キンタロー君、今なんて・・・?」

 

「あ・・・いや、料理が得意って風太郎から聞いたから・・・」

 

「そうじゃなくて・・・ちょっと電話!」

 

料理が得意とか、失敗とかなんて些細なこととだわ。アタシはすぐにリビングに出て3度目の上杉の電話をかける。

 

「ど・・・どうしよう、上杉・・・!彼、私のこと、名前で呼んだわ!」

 

そう、キンタロー君はアタシのこと、二乃って・・・

 

≪んなどうでもいいことで電話してくんな!!!≫

 

ブチッ!

 

あ!切られたわ・・・少しくらい聞いてくれたっていいのに・・・と、上杉よりもキンタロー君だわ。お菓子作り・・・失敗したわ・・・どうしよう・・・

 

「ご、ごめんね、キンタロー君・・・いつもならちゃんとしてたのに・・・」

 

「き・・・気にするな・・・料理の失敗は成功の元っていうだろ?また作り直せばいいさ」

 

き、キンタロー君・・・なんて優しいの・・・!キンタロー君に励まされて、俄然やる気が出てきたわ!

 

「よーし!もう1回作るわよー!」

 

アタシはすぐに生地の作り直した。今度は霧吹きを忘れずに・・・そしてこの生地をもう1度15分間焼いと・・・。

 

そして15分・・・今度はしっかりシュークリームの生地が完成したわ。後はこの生地にクリームを包み込んで、仕上げにフルーツを取り入れて、完成!

 

「出来上がり!さ、食べて!」

 

「・・・俺の知らないシュークリームだ・・・。普通のはないのか?」

 

え・・・キンタロー君、こういうのじゃなくて普通のがよかったんだ・・・せっかく作ったのに・・・。でも、できる限りキンタロー君のリクエストには応えたいし・・・

 

「ご、ごめんね!すぐに作り直すから!」

 

「い、いや・・・それじゃあ負担がかかるだろ?ちゃんと食うよ」

 

キンタロー君はアタシの作ったシュークリームを手に取って一口パクリ・・・。ど、どんな反応かしら・・・

 

「・・・ん、うまいな。こういうのも悪くない」

 

おいしいって言ってくれた・・・!もう・・・本当に・・・うれしい・・・!1回失敗しちゃったけど・・・一生懸命作った甲斐があるわ・・・!

 

「よかった!さ、どんどん食べて!たくさん作ったから!」

 

「本当にたくさんだ・・・」

 

アタシが作ったシュークリームはなにも1個だけじゃない。もう数えきれないくらいにあるわね。

 

「・・・こんなにたくさんあるんだ。独り占めはよくねぇ。姉妹を呼んで食べてもらおうぜ」

 

!!・・・姉妹たちを・・・呼んで・・・。確かにあの子たちを呼べば、これくらいの数は一瞬でなくなる・・・。でも・・・でも・・・アタシは、そんなことしたくない。

 

「・・・そんなこと言わないでよ。せっかく2人っきりだもん。誰にも邪魔されたくないわ」

 

「邪魔だなんて・・・そんな・・・」

 

「特に六海・・・1番下の妹・・・キンタロー君、会ったことあるでしょ?」

 

「あ、ああ・・・二乃と別れて、すぐに、な」

 

「あの子・・・あの子にだけは・・・邪魔されたくないわ。だって、あの子は君に特別な感情を持ってるんだもん・・・」

 

(もうそれ解決したけどな・・・)

 

林間学校で妙に浮かれてたから問いただしてみたら案の定だったし・・・。あの時は仲直りはしたけど・・・それでもこの気持ちだけは譲りたくない・・・。

 

「それにアタシは・・・姉妹でいるより・・・キンタロー君さえいれば、それでいい・・・」

 

「二乃・・・」

 

・・・それにしても、キンタロー君がこんなことを言い出すなんて・・・。

 

「やっぱ従兄弟だね。上杉も同じこと言ってたわ。アタシも中間試験であんなこと言っちゃったし・・・。絶対、迷惑かけてると思うけど・・・」

 

「そうじゃない」

 

「そうに決まってるわ!!だってあいつ、勉強ばっかで・・・」

 

「そうじゃないんだ!!」

 

「!!?」

 

「試験なんてどうでもいい!!俺はお前たち姉妹6人で一緒にいてもらいたいんだ!!」

 

・・・・・・あれ・・・キンタロー君の言葉に・・・何か違和感が・・・。まるで・・・そこに上杉がいるような・・・。

 

・・・もしかして・・・

 

「二乃・・・大切な話がある」

 

!大切な話って・・・しかも・・・あんな真剣な顔・・・

 

「俺は・・・金太郎は・・・」

 

「ちょっと待って!!」

 

「!!」

 

「なんか長くなりそうな予感がするわ。ちょっとトイレ行って来てもいい?」

 

「え?あ、ああ・・・」

 

と・・・いけないいけない・・・。まだ確信がないのに決めつけはよくないわね。ちゃんと確かめないと・・・。そのためにも・・・ちゃんと上杉に話をしないとね。アタシはすぐに上杉に電話をかける。

 

≪・・・今度はなんだ?≫

 

「上杉、あんた今ホテルの近くにいる?」

 

≪え・・・?まぁ・・・近いといえば、近いな・・・≫

 

「そう。ならちょうどいいわ。今すぐ1階のカフェまで来て」

 

≪・・・え?≫

 

さっきキンタロー君にトイレに行くっていうのは嘘。本当はカフェに直行しているわ。確かめたいことがあるから。

 

「言っとくけど拒否権はないわすぐに来なさいよ」

 

≪ちょ・・・まっ・・・≫

 

ブチッ

 

上杉に有無を言わさず、一方的にそう言って通話を切った。・・・思い違いならいいけど・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

1階のカフェで待つこと数分後・・・やっと上杉が来たわ。何故か汗だくになりながら。

 

「遅いわよ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・!急に呼び出して・・・どうしたんだ・・・?」

 

「なんでそんな汗だくなのよ?すみません、こいつにアイスコーヒーを」

 

アタシは従業員さんにアイスコーヒーを頼んだ。ちなみにアタシは紅茶を頼んだわ。

 

「・・・俺、コーヒー無理なんだけど・・・」

 

「そんなの、砂糖かシロップで誤魔化せばいいじゃない」

 

そう言ってる間にアイスコーヒーが来たわ。

 

「こうして砂糖とシロップを入れたら、苦みが少しは中和するでしょ?」

 

「・・・で?何の用だ?」

 

上杉のアイスコーヒーにシロップと砂糖を入れてる間に、上杉が話を振ってきた。

 

「・・・アタシ、キンタロー君に・・・彼にコクられるかも」

 

「・・・はあ・・・どうしてそう思う?」

 

「だってあんな真剣な顔して大切な話って何よ?そんなの1つに決まってるわ」

 

「うぅ~ん・・・そうかなぁ・・・?」

 

「きっとそうに違いないわ。・・・で?あんたはどう思う?」

 

「え?俺は・・・」

 

「あ!キンタロー君!!」

 

「!!?」

 

アタシはそんなことを言って何もないところに指をさした。それと同時に、上杉まで同じ方向を向いた。

 

「・・・いるわけないでしょ」

 

「・・・だよね」

 

ますます怪しさが残るけど・・・まだよ。ちゃんと明確な確証が欲しいもの。今はまだ・・・

 

「ていうか、あんたの意見なんてどうでもいいわ。ただ人に聞いてもらって自分の状況を整理したかっただけ。これから彼の話を聞くことにするわ」

 

アタシはそう言って、上杉に握手の手を差し出す。

 

「今日は彼に会わせてくれて感謝してるわ。ありがとう」

 

「なんだよ・・・礼なんて・・・らしくねぇな・・・」

 

「この先どういう結果になっても・・・彼との今の関係に区切りをつけるわ」

 

「二乃・・・何もできなくて悪い。頑張れよ」

 

上杉はアタシが差し出した手を握って、握手を交わした。

 

・・・その瞬間、アタシは上杉の腕を引っ張りこんで、こいつの服の袖をめくりあげた。

 

「!!?」

 

「!・・・やっぱり・・・あんただったのね」

 

握手を交わした上杉の腕には、アタシがキンタロー君に返してあげたミサンガがあった。それを意味するところ・・・それは、キンタロー君の正体は上杉だということ。

 

「ま、待て!これは・・・順を追って・・・」

 

上杉が言葉を紡ごうとした時、上杉は急にふらつき始めた。それもそのはず・・・アイスコーヒーにはシロップと砂糖だけを入れたわけじゃない。眠れない時用のために六海からこっそり盗った睡眠薬も入れたのよ。変なことを言わせないためにね。

 

「約束を破ったら許さないと言ったはずよ」

 

「・・・っ・・・ま、まさか・・・また・・・」

 

「あんなところで会うなんて詰めが甘いわね。前回と違って、顔がよーく見えるわ」

 

「に・・・のぉ・・・」

 

上杉はアタシを呼ぶや否や、睡眠薬の効果でぐっすりと眠っていったわ。

 

「・・・変装なんてすぐばれるのよ。六つ子じゃないんだから」

 

眠ってしまった上杉を見て、アタシはキンタロー君・・・上杉が言ったが頭に浮かぶ。

 

『お前たち姉妹6人で一緒にいてもらいたいんだ!!』

 

「・・・バイバイ」

 

今更そんなことできるわけがない。アタシの事情を聞いたうえでそんな・・・。ほんと、自分勝手なんだから。

 

♡♡♡♡♡♡

 

キンタロー君が上杉とわかった後、アタシはあのホテルからすぐにチェックアウトして、別のホテルに泊まりこんだわ。ここはあそこと同じく快適だし、誰にも邪魔されることはない。そして、誰も入ってこれない。本当、いい場所を見つけたもんだわ。

 

・・・本当、何やってんだろ、アタシ・・・。こんなこと、何の意味があるのかしら・・・。そんなことを考えてたら、学校に行く気分じゃなくなったから、昨日は学校を休んだ。姉妹はいいとして、友達に心配をかけることは、心苦しいわ・・・。で、今日は学校は休みだから、部屋でゆったりとしてる。・・・本当、1人は暇ね・・・。

 

ガチャッ

 

・・・・・・ガチャッ?ていうか・・・え?ドアが開いて・・・

 

「・・・お邪魔します」

 

「み、三玖・・・?」

 

アタシがぼーっと肌のメンテをしてる時、部屋に入ってきたのは、アタシの変装をした三玖だった。な、なんで三玖がこのホテルにいるのよ・・・⁉

 

「なんで・・・ていうか、鍵は?」

 

「前と同じ手段を使ったら開けてくれた」

 

「もうほんと何なの!!?」

 

どこもかしこも、ガバガバセキュリティでまいるわね!!

 

「はぁ~・・・もう・・・」

 

「あ、ここに来てるの、私だけじゃない」

 

「は?」

 

嘘でしょ?三玖だけじゃなくて・・・他にもいるの・・・?いったい誰よ・・・?

 

コンコンッ

 

・・・本当にいるわね・・・誰かしら・・・?

 

「二乃。私です。五月です」

 

!!!???い、五月⁉よ、よりにもよってあの子が・・・⁉というか、なんで・・・⁉

 

「二乃、私、どうしても二乃に直接謝りたくて・・・ここを開けてください」

 

・・・っ!なんだっていうのよ・・・!今更・・・そんな謝罪なんて・・・!

 

「・・・今更・・・」

 

「入っていいよ」

 

「ちょっ、ちょっと三玖!!」

 

三玖はアタシの許可なしでドアを開けて五月の入室を許可した。・・・て・・・

 

「・・・やった♪大成功♪どう?五月ちゃんの真似。似てたでしょ?」

 

「うん。参考になる」

 

部屋に入ってきたのは五月じゃなくて五月の髪の鬘をかぶった六海だった。やっぱ声だけじゃわかんないわ・・・。

 

「六海まで・・・アタシにプライバシーはないのかしら」

 

プライバシー侵害もいいところだわ・・・勘弁してほしいってのに・・・。

 

「二乃・・・」

 

「2人揃ったり、何を言ったところで、アタシは帰る気はないから!」

 

「ねぇねぇ2人とも、お茶入れるけど飲むよね?」

 

「うん」

 

「ここアタシの部屋なんだけど!!?」

 

六海は部屋にあったポットを使ってお茶を入れようとしてる。この子本当に自由気ままね!

 

「・・・一昨日は上杉、今日はあんたら2人・・・少しは1人にさせなさいよ・・・」

 

「・・・フータロー、来てたんだ・・・2人で何してたの?」

 

「・・・えー?なにー?気になっちゃう?どうしよっかなー?教えよっかなー?」

 

「・・・そう。話したくないならいいけど・・・」

 

・・・っ、少しからかってやろうと思ったのに・・・予想斜めで無反応ね・・・。

 

「・・・つまんないわね。大した話はしてないわよ」

 

「ふーん」

 

ガチャガチャ

 

「あれ?こうだっけ・・・?えい!うわ熱⁉」

 

て、六海はポット操作に苦労してるわね・・・

 

「・・・何やってんの?貸して」

 

ガチャガチャガチャ

 

「・・・?」

 

ガチャガチャガチャガチャ

 

「あっ・・・熱・・・」

 

「三玖ちゃんもダメダメじゃん!!」

 

「う、うるさい・・・///」

 

ガチャガチャガチャガチャガチャ

 

・・・ああ、もう!!ガチャガチャガチャガチャうるさいわね!!2人揃って全然だめじゃない!!

 

「あーもう!鬱陶しいわね!アタシがやる!紅茶でいいわね!」

 

「・・・六海、ミルクティーがいい!」

 

「私は緑茶で」

 

「図々しいわね!!」

 

勝手に上がっといて飲むものまでこだわるとか、おこがましいにもほどがあるわよ!!

 

「はぁ・・・何やってんかしら・・・アタシ・・・」

 

「あ、冷蔵庫にシュークリームがあるー。これ食べようよ」

 

「あんたは自由すぎよ!!」

 

六海は勝手に冷蔵庫を開けて一昨日作ったシュークリームを見つけてるし・・・アタシのプライバシー、壊されまくりよ!!・・・まぁ結局、要望通りのものは全部出したけど・・・。

 

「はーむ・・・。甘~い!おいひぃ~!」

 

「それ、飲んだり食べたりしたら帰ってよね」

 

「久しぶりの二乃ちゃんの味~・・・しあわへ~・・・」

 

「て、全然聞いてないわね・・・」

 

六海はシュークリームに夢中なのか全然話を聞いてない。そんなに夢中になるほどなのかしら・・・。て、それよりアタシも紅茶飲も。砂糖を入れてっと・・・。

 

「そんなに入れると病気になる」

 

「アタシの勝手でしょ?その日の気分によって甘さをカスタマイズできるのが紅茶の強みよ」

 

「よくわかんない。甘そうだし」

 

「そんなおばあちゃんみたいなお茶飲んでるあんたにはわからないわよ」

 

「この渋みがわからないなんて、二乃はお子様」

 

「誰がお子様よ・・・て、バカらし・・・こんな時まであんたと喧嘩してられないわ」

 

「おぉ・・・二乃ちゃん、大人の対応だ・・・」

 

うるさいわね・・・喧嘩する余裕がないだけよ。ていうか、ちゃっかり聞いてんじゃないわよ。

 

「ていうかそもそも、なんでこの場所がわかったのよ?」

 

「前のホテルに一昨日行ったんだ。でもそこでホテルから飛び出す二乃を見た」

 

「つけてたってわけね・・・ガチのストーカーじゃない」

 

「六海は違うよ?ドラッグストアで睡眠薬を買った帰りに二乃ちゃんがここに入っていくのをみたよ」

 

「・・・全然気づかなかったわ」

 

本当、うかつだったわ・・・。周りはちゃんと見てみるものね・・・。

 

「・・・それで、もう1度聞きたいんだけど・・・フータローと何してたの?」

 

一昨日の出来事・・・できることなら思い出したくないのだけれどね・・・

 

「一昨日を一言で顕すと・・・最悪ね。あいつ・・・絶対に許さないわ・・・!」

 

「二乃ちゃんが怒ってる・・・!ふ、風太郎君はどんなひどいことを・・・?」

 

「聞いて驚きなさい!!あいつ変装してアタシを騙していたのよ!!」

 

アタシが惚れたキンタロー君に変装して・・・そもそもキンタロー君が上杉だったなんて・・・重罪だわ・・・!

 

「・・・なんだ」

 

「うん。心配して損したね」

 

・・・・・・・・・

 

「反応薄ーーー!!!」

 

何なのこの2人⁉のんきにお茶なんか啜って・・・全然アタシの気持ちわかってない!!

 

「ちょっと!本当にひどいんだから!なんか反応しなさいよ!」

 

「だって・・・ねぇ?」

 

「うん。私たちがいつもやってることだし」

 

い、言われてみれば確かに・・・って!そうじゃない!!

 

「そ、そうだけど・・・六海!あんたはどうなのよ⁉️」

 

「え?」

 

「キンタロー君の正体が、あいつなのよ⁉️なんとも思わないの⁉️」

 

「いや・・・だって・・・六海、キンちゃんが風太郎君って、知ってるし・・・」

 

妙に落ち着いてると思ったらそういうことだったのね・・・って!そうじゃなくて!!

 

「あ、あんたは悔しくないの⁉️だってキンタロー君が、あいつだったのよ⁉️林間学校でのケンカの原因もあ・い・つ!!あの時も・・・あの時も・・・あいつだったなんて・・・!許さない・・・許さないわ・・・!!」

 

(ああ・・・バレちゃったんだね・・・ご愁傷様・・・)

 

本当にバカみたい・・・!今まであいつだと気づかずに、あそこまで思い続けてきただなんて・・・!あいつ・・・次に会ったらただじゃおかないわ・・・!

 

「他に何もなかった?」

 

「それだけよ!本当に・・・それだけよ・・・」

 

「本当に・・・?」

 

・・・いや、たった1つだけ思い当たるものがあったわ・・・。一昨日、あいつが言った一言・・・

 

「姉妹6人でいてほしいって言われたわ。試験とか関係なしに」

 

「え・・・?本当に・・・?」

 

「フータローが・・・そんなことを・・・」

 

「アタシの都合を聞いたうえでね。自分勝手だわ」

 

今回の家でだって前から考えてたことなのに、人の気持ちとか関係なしに・・・勝手すぎるわよ。

 

「・・・二乃はうちに戻りたくないの?」

 

「はあ?なんで戻らなくちゃいけないのよ?一緒にいるだけでストレスがたまるわよ!昔と違ってすれ違いも増えたわ!性格も個性もバラバラのアタシたちがそこまで一緒にいなきゃいけない理由がわからないわ!一緒にいる意味ってあるの?」

 

「・・・六海、おバカだから二乃ちゃんの納得いく答えかわからないけど・・・姉妹だから・・・家族だから、じゃダメかな?」

 

!!家族だから・・・

 

「二乃は私たちが変わったと思ってるんだろうけど・・・私たちから見たら、二乃も変わってる」

 

え?アタシも・・・変わってる・・・?

 

「変わってるって・・・何がよ?」

 

「「昔は紅茶は飲まなかった」」

 

「それだけ!!?」

 

「六海たちは16点2人、17点4人で6分の1人前だからね。えーっと・・・例えるなら・・・」

 

「ん・・・」

 

六海が例えを悩んでいると、三玖は問題集が入った紙袋に指をさす。

 

「その問題」

 

「あ!勝手に見ないでよ!」

 

「問3の問いが違う。正解は長篠の戦い」

 

「え?そうなの?六海、関ヶ原の戦いって答えたよ」

 

「全然違う」

 

三玖はアタシの解いた問題に指摘をしてきた。

 

「何?自分は勉強しましたって言いたいの?」

 

「元々好きだから。戦国武将」

 

・・・はい?戦国武将好き?

 

「戦国武将って・・・あの髭のおじさんが?」

 

「うん」

 

「あ、だから戦国黙示録借りてたんだ・・・」

 

「今気づいたの?」

 

三玖と六海のやり取りも今知ったけど・・・三玖が歴女なんて初耳よ・・・

 

「これが私の17点」

 

「あ、それなら六海も1つ。この地理の問題の問9、二乃ちゃん間違ってるよ。正解は中部地方だよ」

 

「え?そうなの?私、九州って書いた」

 

「違うよー」

 

ほ、本当に得意不得意がバラバラね・・・アタシ達・・・。で、結局何が言いたいのよこの子たち。

 

「聞いての通り、これが六海の16点だよ。そして・・・」

 

六海がそう言うと三玖はアタシが飲んでる紅茶を一口飲んだ。

 

「え、ちょっと・・・」

 

「・・・うっ・・・やっぱ甘すぎる・・・」

 

「何やってるのよ?」

 

「でも・・・二乃がいなければこの味は知らなかった」

 

「!」

 

「それから、このミルクティーの存在を知ったのだって、六海が紅茶に牛乳を入れてたのがきっかけ」

 

そういえば・・・アタシ達が細かいことを知ることができたのは・・・みんなの性格がバラバラだったおかげ・・・だったっけ・・・。

 

「六海たちは確かに昔は6人そっくりで諍いもなく、平和だったよ。でもそれじゃあ点数は伸びないよ。笑ったり、怒ったり、悲しんだり、そして喜んだりして・・・1人1人違う経験をして、足りない部分を補い合って・・・それでようやく、1人前になれるんだ。だから・・・同じじゃなくていい・・・違ってていいんだよ」

 

「それに・・・みんな違ってる方が、新しい発見もできる、でしょ?」

 

「うん!」

 

「!!!」

 

「だからね・・・二乃ちゃん。お家に帰ろう?二乃ちゃんが見つけたこと、共有しあおうよ。それで、六海たち6人全員で、1人前になろうよ」

 

1人だけじゃ6分の1人前・・・それぞれ違うことで新しい発見・・・それの共有・・・不足部分は、みんなで補い合い・・・それで・・・ようやく1人前・・・。

 

・・・そうよね・・・。衝突もあったけど・・・アタシ達は今までそうやって協力し合いながら過ごしてきた。なんでアタシ、今までこんなことに気付かなかったのかしら・・・。

 

「あ、ちなみに二乃ちゃんがいない間六海たちの食生活は滅茶苦茶だよ。出前ばっかりで栄養バランスボロボロー」

 

「そこは自分たちで何とかしなさいよ!!」

 

「六海たちにそんな器用なことができると思う?」

 

「・・・ごめん、無茶ぶりだったわ」

 

「私はできるのに・・・」

 

「どの口が言ってんのよ下手くそ」

 

「下手くそじゃない」

 

ふふふ・・・この姉妹とのやり取り・・・久しぶりな気分ね・・・。

 

「・・・ふん、そのお茶よこしなさい」

 

アタシは三玖の有無を言わさず三玖の緑茶を一口飲む。・・・うわ、何このお茶。ただ苦いだけじゃない。

 

「苦っ。こんなの飲もうとは思わなかったわ。でもこれではっきりしたわね。やっぱり紅茶の方が勝ってるって」

 

「紅茶だって元は苦い」

 

「何よ!こっちは気品ある苦みなのよ!きっと高級な葉から抽出されてるに違いないわ!」

 

「緑茶は深みのある苦み。こっちの方がいい葉を使ってる」

 

アタシと三玖はお茶の葉とかで言い争いを起こした。これも久しぶりな気がするわ。

 

「・・・あ」

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと紅茶と緑茶の葉の違いを調べてたんだけど・・・」

 

「「どうだって⁉」」

 

「・・・2つとも同じ葉だって。発酵度の違いなんだって」

 

・・・え?てことは何?アタシ達のこの言い争いは結局のところ意味なし?

 

「・・・ふふっ」

 

「はははは!何それ!面白いわ!今度みんなに教えてあげ・・・」

 

!!みんなに・・・教えてあげる・・・か・・・。これが・・・新しい発見・・・その共有しあい・・・。

 

「・・・過去は忘れて今を受け入れる・・・か。いい加減覚悟を決めるべきなのかもね」

 

「「?」」

 

アタシは机の引き出しに向かって、あるものを探す。確かここに・・・あ、あった。

 

「「!!??」」

 

アタシが取り出したのは、ハサミよ。

 

「あんたたちも・・・覚悟しなさい」

 

ハサミを見た瞬間、三玖と六海は互いに抱き合ってがくがく震えてる・・・って思ったら三玖は六海を盾にしたわ。

 

「六海、助けて。姉に殺される」

 

「ちょーー!!?妹を盾にするってお姉ちゃんとしてどうなの⁉」

 

「妹は姉を守る存在。だから守って」

 

「普通逆でしょ⁉こんなの横暴だーー!!」

 

「あんたら何勘違いしてんのよ・・・」

 

全く、アタシを何だと思ってるのよ。勘違いもいいところだわ。

 

「髪切るのよ。さっぱりとね。やってちょうだい」

 

「「・・・え?」」

 

アタシの発言に三玖と六海はきょとんとしてるわ。

 

「・・・何?変なこと言った?」

 

「いや・・・だって・・・」

 

「あんなに髪切るの嫌がってたのに・・・?」

 

「うるさいわね・・・髪切ろうが切るまいがアタシの勝手でしょ?」

 

それに・・・そろそろちゃんと前に進まないといけないでしょ。過去を決別して、ね。そう・・・この子がやったように、アタシだって・・・。

 

「・・・私、無理・・・絶対失敗する・・・お願い、六海がやって」

 

「うええぇ⁉六海ぃ⁉」

 

「誰でもいいからやりなさいよ」

 

アタシの言葉に六海は変な顔をしてたけど、長い沈黙の後、ハサミを受け取って、アタシの後ろに回る。

 

「い、言っておくけど、バッサリいくからね!後で文句言ったって受け付けないよ!」

 

「ど・・・どんと来いよ・・・!」

 

「六海、がんばって」

 

アタシが決めたこととはいえ・・・や、やっぱり結構緊張するわね・・・。

 

「い、いくよ・・・?」

 

ちょきんっ

 

い、いった・・・本当にいったわ・・・。アタシの長い髪がパサリと落ちるのがよくわかるわね・・・。

 

ちょきちょきちょき・・・

 

け、結構スムーズにいくわね・・・。案外六海、髪を調節するのうまかったり・・・?

 

ちょきちょきちょき・・・

 

「ちょ、ちょっと待って!これ、髪切りすぎじゃない⁉」

 

「髪切れって言ったの二乃じゃん」

 

「そうだけど・・・こんなの初めてだし・・・」

 

「大丈夫大丈夫ー♪二乃ちゃん、かわいくなったよ♪」

 

「ほ、本当でしょうね!」

 

「うん♪そう思うでしょ?」

 

「うん。かわいい」

 

そういうことならいいけど・・・大丈夫かしら・・・本当に・・・。

 

髪を切ってから数分後・・・

 

「後はリボンをつけて・・・完成ー♪」

 

「出来上がったよ、二乃。ほら」

 

三玖が差し出した鏡を見てみると、アタシの長かった髪はすっかり短くなって、ショートボブのツインテールが目立つような髪型になってる。

 

「キャーー!!かわいいーー!!見てよほら!」

 

「うん。やっぱりかわいい」

 

「そ、そう?あ、ありがと・・・」

 

この子は・・・こういう気分を味わったのかしら・・・。なんだか新しい自分になったようで新鮮な気分だわ・・・。

 

≪お姉ちゃん電話だよ♪お姉ちゃん電話だよ♪≫

 

「・・・六海、電話」

 

「あ、うん。今出るね」

 

「またその着メロつけてるのね・・・」

 

六海はスマホを操作して、電話する。ちなみにさっきの着メロはマジカルナナカのナナカボイスよ。電話が鳴ったら今みたいにナナカがしゃべるって感じの奴。

 

「もしもし?風太郎君?どうしたの?・・・え?うん・・・うん・・・」

 

話が進むにつれて六海の顔が真剣なものに変わっていった。・・・何かあったのかしら・・・?

 

「・・・わかった!すぐに連れて来るよ!絶対に何とか間に合わせるから!」

 

話が終わった後、六海は私たちに顔を向けた。悪ふざけなしのマジの表情で。

 

「ど、どうしたの・・・?何か・・・」

 

「・・・実はね・・・」

 

六海はさっきの電話の内容を包み隠さず私たちに話した。それなら、六海が・・・いえ、姉妹全員が真剣になるのも納得だわ。

 

「そ・・・それで・・・それで、何とかなるの?私がそれをやれば・・・」

 

「何とかなるじゃなくてやるんだよ!四葉ちゃんのためだもん!どうこう言ってられないよ!」

 

「そ・・・そうだよね・・・うん。だったら、やろう」

 

「よし!さっそく急いで準備・・・」

 

「待ちなさい」

 

「二乃?」

 

「二乃ちゃん・・・?」

 

「その役目・・・アタシにやらせなさい」

 

これはアタシのけじめみたいなもの。それをやっとかないと、本当に前に進んだとは言えないわ。それにこれは、姉妹のためよ。だったら、行かないわけにはいかない。アタシはもう逃げたりなんかしない。

 

21「6人で全員一人前」

 

つづく




おまけ

六つ子はウサちゃんを六等分できる

六海「風太郎君ー!見てみてー!ほらー!かわいいウサギちゃん!どう?かわいいでしょー?」

風太郎「ほー・・・どこで手に入れたんだ?」

六海「ゲーセンのUFOキャッチャーでみんなで協力してゲットしたのー!」

風太郎「なんつーか、お前らしいな」

六海「でしょー?」

風太郎「でもそういうの、二乃とか四葉とか欲しがるだろ?」

六海「もちろん。みーんな欲しがってたよ。でも六海たちは6等分・・・そういうの分かち合うべきなんだと思うんだー」

風太郎「ふむ・・・」

六海「だから、分け合ったの♪一花ちゃんが体、二乃ちゃんが右手、三玖ちゃんが左手、四葉ちゃんが左足、五月ちゃんが右足、六海が頭って感じに♪」

風太郎「ひっ・・・ひぃぇぇぁぁ・・・・ぬいぐるみのバラバラとかいらねぇよぉ・・・」

六つ子はウサちゃんを六等分できる  終わり

次回、五月、風太郎視点
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