六等分の花嫁   作:先導

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あけましておめでとうございます。

こうして六嫁の制作ができるのは、これを読んでくださっている皆様のおかげだと思う次第です。

今年も感想やら挿入絵などを募集しております。気に入ってるシーンがあればぜひとも。もちろん、皆様の都合がよろしければで構いません。

それと、この話の次の話が終われば、番外編を投稿しようと思います。

それでは、今年もよろしくお願いいたします。


8つのさようなら

五月SIDE

 

「おい。朝だぞ。起きろ、五月」

 

うぅ・・・まだ眠いですぅ・・・

 

「むぅ・・・もう少しだけ・・・」

 

「今日は早めに出るぞ」

 

「後5分だけぇ・・・」

 

「ダメだ。起きろ」

 

「いいじゃないですかぁ・・・二乃ぉ・・・」

 

「寝ぼけてんのか?いいから、起きろ」

 

!!声のトーンを聞いて、私の眠気は一気に覚めました。顔を見上げてみますと、そこには上杉君がいました。あぁ・・・そういえば私、家出中で、今は彼のお宅に居候中した・・・。

 

「あ、あの・・・おはようございます・・・」

 

私が彼の顔色をうかがってみると・・・

 

「ああ。おはよう」

 

なんだか清々しさを感じさせるような晴れ晴れとした表情をしていました。

 

♡♡♡♡♡♡

 

軽めの朝食を食べ終えた後、私と上杉君は昨日よりも早く学校への道のりを歩いていました。ただし、変な噂を流されるのは嫌だったので、私は隠れながらですが。

 

「安心しました。・・・私たちのせいで気が沈んでるようでしたから・・・」

 

「全くだ。たく・・・手を焼かせやがって・・・」

 

「もう、大丈夫なのですか?」

 

土曜日の出来事から、もう1週間近くたちますから、上杉君にもいろいろと思うところがあるのです。それに、朝の様子も、少し変でしたから。

 

「俺のことを心配する暇なんてあるのか?お前らは自分たちの心配をしてればいいんだよ」

 

「そうはいいますけど・・・」

 

「俺のことはいい。それより、試験勉強は順調か?」

 

「は、はい。あの問題集も終わらせてます」

 

あれほどたくさんの問題集をこなすのは骨が折れましたが、なんとか全部達成することができました。

 

「結構だ。一花と三玖、四葉も六海も全部終えたと聞いている。残るは・・・二乃だけか・・・」

 

「に・・・二乃もやってるんですよね?なら、安心です」

 

「・・・・・・だといいがな・・・」

 

二乃の話になると、上杉君は急に考え込むような表情になりました。そういえば昨日も二乃のホテルに行って様子を見に行っていたような・・・。

 

「だ、大丈夫ですか・・・?」

 

「・・・何でもねぇよ。さっさ行くぞ」

 

上杉君の様子が気になるところですが・・・学校につきましたし、今は教室に向かうとしましょう。・・・上杉君が先に入ったのを見計らって。

 

♡♡♡♡♡♡

 

放課後になった後、私と上杉君は二乃の様子を見に行こうと二乃がいる教室に来ました。正直、二乃と顔を合わせづらいのですが・・・このままというわけにはいきませんからね。ですが・・・肝心の二乃が見当たりません。気になって二乃の友達である山田さんと大鳥さんに二乃が来てないか尋ねてみました。でも、帰ってきた答えが・・・

 

「二乃?今日は休むらしいよ」

 

「え・・・?」

 

「やはりな・・・」

 

二乃は今日は来ていないようで私は少し驚いています。上杉君はやっぱりと言った顔をしています。

 

「あのさ、余計なお世話かもしんないけど・・・」

 

「二乃と仲直りできるといいね」

 

山田さんと大鳥さんは私にそう言って教室を出ていきました。・・・気を使ってくれてるのでしょうか?

 

「直接二乃のところへ行きましょう。場所は知ってるんですよね?」

 

「いや、残念ながらそれは叶わない。その居場所から出ていっちまったからな」

 

出ていった・・・ていうことは、二乃が今どこにいるのかわからなくなってしまったということですか⁉

 

「信じて待つ・・・俺にできることはそれだけだ・・・」

 

二乃がどこにいるのかも気になりますが、朝から上杉君の様子が変なのが気になるところです。

 

「・・・朝から少し変ですよ?昨日、何かあったんですか?」

 

「・・・何でもねぇよ。それより行くぞ。もう1人の問題児のところに」

 

もう1人の問題児って・・・四葉のことですね。上杉君はそのまま四葉のいる陸上部の練習場へと向かっていきました。私も上杉君についていき、陸上部の練習場へと向かいます。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「中野さんやっぱ速いよ~」

 

「ペース配分もできてたよね。こんな短期間で天才だよ」

 

私たちが陸上部の練習場までたどり着くと、四葉は陸上部員の人たちにもてはやされています。確かに四葉は私たちの中で体力も運動能力も高いですしね。

 

「あいつが天才だと?何言ってんだか・・・」

 

「四葉は運動が得意ですから、そのことを指してるんですよ」

 

「そんなことはわかってる。だが四葉だぞ?お前らの中で1番アホなんだぞ?」

 

たびたび失礼なことを言ってますよね、上杉君。でもあまり否定できないのが悔しいです・・・。

 

「あはは・・・最近よく天才って言われるんですよね・・・」

 

「中野さん」

 

四葉の様子を見ていると、褐色肌のポニーテールの人が四葉に話しかけてきました。あの人がおそらく陸上部の部長さんなんでしょうね・・・。

 

「来週はいよいよ高校生駅伝本番だ!あなたがいなければ参加できなかった!走りの天才を頼りにしてるよ」

 

「え、えーっと・・・」

 

「お前が天才とは世も末だな」

 

話を聞いていた上杉君は話に割って出てきました。

 

「う、上杉さん⁉それに、五月⁉」

 

「君は?」

 

「あんたが陸上部の部長か?期末試験があるのに大会の練習だなんて立派だな」

 

「うん。大切な大会なの。試験なんて気にしてられないよ」

 

「あ?試験なんて・・・?」

 

陸上部の部長さんの発言で上杉君から一触即発の雰囲気が漂ってきました。

 

「部長ってことはあんた3年だろ?そいつが・・・」

 

「わー!!わー!!大丈夫です!!勉強はちゃんとやってますので!!」

 

よくない雰囲気を察知した四葉は大声を上げてそれを止めてきました。

 

「四葉、無理してませんか?」

 

「うん!問題なし!」

 

私の気遣いに四葉は何ともないように答えてますが・・・私にはそれが無理してるようにしか見えません・・・。

 

「もういいかな?まだ走っておきたいんだ」

 

「・・・まぁ、四葉がそういうなら止めねぇよ」

 

「ちょ、ちょっと!いいんですか⁉」

 

「四葉が無理しないか俺も走る。それなら邪魔じゃねぇだろ?」

 

え・・・?体力が三玖や六海なみにない上杉君が・・・一緒に走る?大丈夫なんでしょうか?

 

「上杉さん・・・どうして・・・」

 

「・・・まぁ、別にいいけど・・・倒れても責任取らないよ?」

 

陸上部の部長さんの了承も得て、上杉君も走ることになったのですが・・・なんだか不安です・・・。

 

「よーしみんな、練習再開するよー」

 

「ほ、本当に大丈夫なんですよね⁉」

 

「体力がないのは俺自身がわかってる。だから四葉の様子を見たらすぐに帰るから大丈夫だ」

 

「で、ですが・・・」

 

「と、行ったな。俺も行ってくる。五月、お前は先に帰ってろ」

 

「ちょ、ちょっと⁉」

 

上杉君は陸上部のみんなが走り出したと同時についていくように走り出しました。・・・なんだか・・・すぐにばててしまう上杉君の姿が容易に想像ができます・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

上杉君の家に戻り、私は期末試験対策をしながら上杉君の帰りを待っています。ちなみにらいはちゃんは今日も六海と漫画を受け取る約束をしているらしく、買い物ついでに出かけてるようです。らいはちゃんは私のことは六海に話してないようでいまだに六海が迎えに来る様子はありません。

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・」

 

勉強をしていると、汗だく状態の上杉君が帰ってきました。ああ、やっぱりそうなりましたか・・・。

 

「だ、大丈夫ですか・・・?」

 

「大丈夫なわけないだろ・・・見ろこの汗を・・・一生分の体力を使った気分だぜ・・・」

 

「無茶しすぎですよ・・・」

 

上杉君の汗の量を見て、かなり走ってきたようですね・・・。四葉の様子を見るのはいいですが、少しは自分を労わってください。

 

「それで、四葉はどうだったんですか?」

 

「どうもこうもねぇよ。あいつは勉強も部活も両立させるつもりだ」

 

「両立って・・・部活終わりの疲れの中、さらに勉強をしてるってことですか?」

 

四葉らしいといえばらしいですが・・・。通りで最近六海が四葉をマッサージしてる姿をよく見かけるわけです。

 

「でも練習はほぼ毎日行ってるみたいですよ?そんなこと可能なのですか?」

 

「・・・フランスのルイ14世が造営した宮殿はベルリンの宮殿」

 

「え?」

 

「走れメロスの著者は太宰龍之介。周期表4番目の元素はすいへーりーべーべリウム」

 

「な、なんですかそれ?」

 

「これ、全部俺が出した問題の四葉の答えだ」

 

・・・私もその範囲はやったので覚えてはいます。ただ・・・何と言いますか・・・正しいといえば正しいといいますか・・・答えが全部微妙に間違ってます。

 

「これは・・・何というか・・・」

 

「言いたいことはわかる。だが、予想以上に覚えてはいる。だからどうするべきか悩んでるんだ・・・四葉の努力を否定をするマネはしたくないし・・・」

 

「せめて四葉の本音がわかればいいのですが・・・」

 

四葉の本音さえわかれば私たちも行動がしやすいのですが・・・優しさの塊である四葉が素直に自分の本音をしゃべるとは思えませんし・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

結局何の解決策も見つからず、外はもうすっかり夜になり、らいはちゃんももう眠ってしまいました。どうすれば、四葉の本音を聞くことができるのでしょうか・・・?

 

「どうしたものか・・・」

 

ヴゥー、ヴゥー

 

上杉君も悩んでいますと、突然上杉君のスマホが鳴り響きました。

 

「ん?・・・一花?」

 

どうやら着信の相手は一花らしく、上杉君は電話に出ます。

 

「どうした、一花。こんな夜遅くに」

 

≪フータロー君、電話はそのまま通話状態にしておいて≫

 

「?向こうで何があるんだ?」

 

≪いいからいいから≫

 

若干ながら一花の声が聞こえますが、何があったんでしょう・・・?私は気になって聞き耳を立てます。

 

≪送らないの?≫

 

≪うわぁっ⁉い、一花~、心臓に悪いよ~≫

 

!この声・・・四葉の声?一花はいったい何をしようというのでしょう・・・?

 

≪私も歯磨きだよー≫

 

≪そ、そうなんだ。じゃあうがいしよーっと≫

 

≪待って。四葉、歯をよく見せて≫

 

≪え?なんで?≫

 

≪いいから、あーんして≫

 

≪あ、あー・・・≫

 

声からして、四葉は歯磨きの途中のようですね。

 

≪もう、また歯ブラシ加えてただけで全然磨けてないじゃん。ほら、貸して。磨いてあげる≫

 

≪うっ・・・≫

 

≪前はよくしてあげたじゃん≫

 

≪で、でも・・・も、もう子供じゃ・・・≫

 

≪はい、あーん≫

 

≪もごご・・・≫

 

おそらく向こうでは一花が四葉の歯を磨いている最中なんでしょうね。私も六海も昔はよく一花たちに磨いてもらっていましたっけ。でも、一花は何を伝えたいんでしょう?

 

≪に、苦~・・・≫

 

≪私の歯磨き粉。これが大人の味なのだ!四葉には早すぎたかなぁ~?≫

 

≪よ、余裕のよっちゃんだよ!六海には負けない!≫

 

≪じゃあ続けるよ≫

 

≪う、うん≫

 

≪ふふ、体だけ大きくなっても変わらないんだから・・・。ほら、無理してるから口内炎ができてるよ≫

 

!一花はもしかして・・・私たちに四葉の現状を伝えようとしているのでは・・・?

 

≪私、無理なんてしてないよ・・・≫

 

≪ほーら、しゃべらないの。どれだけ大きくなっても四葉は妹なんだから・・・お姉ちゃんを頼ってくれないかな?≫

 

≪・・・・・・・・・私、部活やめちゃダメかな・・・?≫

 

!!これが・・・四葉の本音・・・。四葉も、そうとう苦しんでたんですね・・・。ようやく聞くことができました。一花は、これを聞かせるために・・・。

 

≪やめてもいいんだよ≫

 

≪!や・・・やっぱダメだよ!みんなに迷惑かけちゃう!≫

 

やっぱり四葉は私たちに迷惑をかけまいとふるまおうとしてますね。誰も迷惑だなんて思わないのに。

 

≪勉強とも両立できてるんだから大丈夫だよ。一花がお姉さんぶるから変なこと言っちゃった。姉妹といっても同い年なのに≫

 

≪あははは。こーんなお子様パンツ履いているうちはまだまだお子様だよ≫

 

≪わーー!!それは出さないでーー!!≫

 

い、一花・・・忘れてないでしょうね・・・今電話に出ているのは上杉君なのですよ・・・?

 

≪もう!しまっといてよ!上杉さんが来た時には見せないでよ!≫

 

≪はーい≫

 

電話の音からして・・・四葉は洗面所から出たようですね。

 

≪・・・ちゃんと聞いてた?≫

 

「お子様パンツ」

 

≪よかった。聞こえてるみたいだね≫

 

一花は確認のためにそう聞いて、上杉君が答えます。もっと他の回答はなかったのですか?

 

≪明日陸上部のところへ行こうと思う。フータロー君はどうする?≫

 

「行くに決まってる!!四葉を解放するんだ!!」

 

一花の問いに上杉君は心強い返答をしました。

 

≪よし。じゃあ明日の早朝に会おう。そこで全部話すから≫

 

「ああ。明日落ち合おう」

 

そこまで話し終えると上杉君は通話を切り、私に顔を向けます。

 

「聞いての通りだ。明日陸上部のとこに行く。五月、お前はどうする?」

 

私の答えなんて、当然決まってます。

 

「行くに決まってます!」

 

「よし。なら明日は早朝に出る。さっさと寝ようぜ」

 

「はい」

 

私たちは明日に備えて早めに寝ることにしました。四葉・・・絶対に解放してあげますからね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日の早朝、私たちはすぐに家を出て△△△で一花と合流します。そこで全てを知りました。昨日の練習の後、この土日を使って合宿に向かおうとしていることを。こんな期末試験の最中に合宿を行うなんて・・・考えられません!今現在私たちはこれから合宿に向かうであろう四葉と陸上部の様子を見ています。ちなみに三玖と六海は別行動中です。

 

「四葉も背負い込みすぎだよ・・・」

 

「四葉もだが、陸上部も陸上部だ。こんな時期に合宿なんて考えられん。たく、試験前だってのにとことんまで勉強をおろそかにしやがって・・・」

 

それには同意ですが・・・なんていうか、上杉君が様子を見ているなんて意外です。

 

「あなたのことなのでまた突入するものかと思ってました・・・」

 

「・・・・・・」

 

「それで、どうするの?直接お願いしに行く?」

 

「いや・・・いい方法を思いついた」

 

上杉君はそう言ってスマホを取り出し、誰かに電話をかけました。いい方法とはいったい?

 

「六海か。今△△△ホテルにいるんだな?」

 

どうやら上杉君が電話をしている相手は六海のようです。

 

「ああ。今三玖と一緒なんだな?・・・ああ。ならそのまま三玖を△△△まで連れてきてくれ。俺たちはそこにいる。それに、四葉と陸上部もな。・・・ああ、急いでくれ。これは四葉のためなんだ」

 

六海の通話を終えた上杉君は私たちに向き直ります。

 

「ど、どうするんですか⁉」

 

「四葉が断れないならお前たちがやればいい」

 

「!ま、まさか・・・」

 

一花はいち早く何かを察したようですが・・・え?なんですか?

 

「入れ替わり、得意だろ?」

 

!!そ、そういうことですか!!私たちのうち誰かが四葉になって合宿を断ってこい・・・そういうことなんですね!!

 

「わ・・・私は少し苦手です・・・。前に一花の真似をした時も心臓バクバクで・・・」

 

「だから三玖を呼んだんだよ。三玖が到着したら五月ちゃんの着てるジャージを着てもらおう」

 

「さすが一花だ。呑み込みが早い。だとすると、俺が四葉を連れだして・・・」

 

作戦は理解しましたが・・・本当に成功するのでしょうか・・・?

 

「!!まずい!あいつら出発しやがった!!」

 

「「ええ⁉」」

 

陸上部のみんなを見てみますと、本当に移動を始めてるじゃないですか!

 

「お、追いかけよう!」

 

「駅に着く前にどうにかしなければ!やりたくもない部活で貴重な土日を潰されてたまるか!」

 

「しかし、どうするんですか?」

 

「・・・・・・」

 

私の問いに上杉君は私と一花を交互に見つめています。

 

「「・・・え?」」

 

え?本当に何なのですか?

 

♡♡♡♡♡♡

 

私と上杉君は陸上部のみんなの後をつけています。幸い信号で止まったようです。まぁそれはいいのです。今一花はいったん別行動をしている・・・んですが・・・

 

「ほ、本当にうまくいくのでしょうか⁉大丈夫なんでしょうか⁉」

 

「ああ。問題ない。うまくいくはずだ」

 

彼のこの根拠はいったいどこからやってくるのでしょうか?

 

「お・・・お待たせー・・・」

 

そう話していると、一花が戻ってきました。・・・ジャージに着替え、四葉のリボンを付けた状態で。

 

「あ、あはははー・・・」

 

な、なんというか・・・不安でしかないです・・・。

 

「ど、どうして一花が四葉の役なのでしょうか?」

 

「・・・お前、うまく四葉に演じることができんのかよ?」

 

うっ・・・そう言われてしまうと・・・全く自信がありません・・・。

 

「・・・不安でしかないです」

 

「正直でよろしい。その点一花は申し分ない。三玖ほどではないにしろ、うまく姉妹を演じ分けられていた」

 

「あー・・・林間学校でのことかー・・・」

 

「そのうえ一花は女優だ。四葉を演じることくらい造作もねぇだろ?」

 

た、確かに・・・一花はみんなの真似くらい簡単にやってのけます。さらに女優なので、さらに演技に磨きがかかってることでしょう。

 

「一花、今のお前は四葉なんだ。少なくとも見た目は完璧だ」

 

「完璧・・・かなぁ・・・?」

 

一花は何か不安があるのか心配そうな顔をしています。私も気持ちはわかります。私も不安でいっぱいなのですから。

 

「うまくいくでしょうか・・・?」

 

「よし、作戦を説明するぞ。ひとまず俺と五月が陸上部から引き剥がす。その後一花が何食わぬ顔で集団に戻り退部しろ」

 

「引き剥がすって簡単に言うけど、どうするの?」

 

「・・・五月、ちょっと耳を貸せ」

 

上杉君は私の耳元で四葉を陸上部から引きはがす方法を伝えました。

 

「え・・・それ、本気ですか・・・?」

 

「ああ。これなら四葉は必ず食いつくはずだ。なにせ、超が付くお人好しだからな。困ってる奴をほっとかない」

 

「で、ですが・・・これ・・・捨て身すぎですよ・・・」

 

「ちょっとー、どんな作戦?」

 

「つべこべ言わずやれ。あいつらが行っちまうぞ」

 

くぅ・・・ですが、四葉を引きはがすならこれも効果的なのは事実・・・。ええい!どうとでもなってください!

 

「・・・すぅー・・・・・・痴漢ですーーー!!!痴漢が出ましたぁーーー!!!

 

「!!?」

 

「よし!いいぞ!そのまま続けろ!」

 

私は一花を連れて物陰に隠れて、陸上部のみんなに聞こえるように大声を上げました。

 

上杉君が考えた作戦とは、上杉君自身が加害者側となり、私が被害者となり、大声を上げる。四葉がそれを聞きつけさせて、上杉君が逃げる姿を映し出させて、そのうえで四葉を引き付ける。その間に一花が陸上部に合流して、退部してくるという捨て身な作戦です。被害者がいた方が、より効果的だそうなので、私を被害者に選んだのでしょう。

 

「ま、まさか・・・」

 

一花も作戦の内容を理解して、驚いています。そうですよね、こんな捨て身な作戦があっていいのでしょうか?

 

誰かぁーーーー!!!

 

「え?痴漢?」

 

「まさかあの人が・・・」

 

陸上部のみんなも食いついてきました。それを確認した上杉君は真っ先に逃げていきました。

 

「そこの人!止まりなさーい!!」

 

『中野さん!!?』

 

「こらーっ!待てー!!」

 

かかりました!四葉はまだ上杉君と認識していません!四葉は逃げているのが上杉君と知らずに、そのまま追いかけていきました。

 

「今です一花!行ってください!」

 

「もう・・・無茶するんだから・・・」

 

一花と四葉の姿が見えなくなったのを見計らって一花は陸上部のみんなの元へと向かっていきました。頼みましたよ・・・この作戦が成功することを、信じていますからね。私はすぐに上杉君の元へと合流していきます。四葉が陸上部に戻らないように。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『作戦失敗?』

 

風太郎が四葉を切り離した後、一花は四葉になりすまし、陸上部の皆の元へと何食わぬ顔で合流する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・あはは・・・すみません・・・逃げられちゃいましたー」

 

「もー、いきなり走り出すからびっくりしたよー」

 

「早くしないと予定の電車行っちゃうよー」

 

部員が安堵する中、一花は本題へと入る。

 

「すみません・・・私は、合宿には行けません」

 

「え?」

 

一花を四葉と思い込んでいる部員は戸惑いを隠せそうにない。

 

「あなた・・・何やってるの?」

 

そんな中、陸上部の部長である江場はいたって冷静だった。

 

「迷惑は重々承知ですが・・・私、部活をやめます」

 

本題の言葉を言うことができた一花。

 

「・・・なんで?」

 

それにたいして江場はそんな返しをしてきた。

 

「だって、もうすぐ期末試験ですし・・・」

 

「あー、違う違う。私が言いたいのは・・・」

 

一花が説明をする前に、江場は確信を持った様子で・・・

 

「なんで別人が中野さんのフリしてるの?」

 

そう一花に問いかけた。江場は四葉と一花が入れ替わっている状況に気付いていたのだ。

 

(あぁ・・・やっぱそうなっちゃうかぁ・・・)

 

一花はすぐにばれてしまった要因に心当たりがあり、困ったような顔つきになった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの場は一花に任せるとして・・・確か、上杉君はここを通ったはず・・・。私が曲がり角を曲がると、そこには四葉が上杉君を捕まえた姿でした。

 

「う・・・上杉さん・・・?どうして・・・?」

 

さて・・・作戦とはいえ、上杉君を痴漢と思い込んでいる四葉に誤魔化せばよいか・・・。

 

「どうして痴漢なんて・・・」

 

「なーんて嘘!!お前をおびき寄せるための嘘でした~~!!」

 

う、上杉君・・・もうちょっと粘ってくださいよ・・・身の安全に必死ですよ・・・。まぁ・・・話してしまったなら仕方ありません・・・。私も四葉の前に姿を現します。

 

「すみません四葉!騙すような真似をして!」

 

「五月まで・・・なんでそこまで?というか、なんで私を?」

 

「はぁ・・・お前のためだよ」

 

「私の?」

 

「今一花が四葉の代わりに退部を申し込んでる最中です」

 

「!」

 

事の全てを知った四葉はすぐに上杉君から離れ、陸上部の元へ向かおうとします。そうはさせません!

 

「今戻ったらダメです!」

 

「お願い五月!そこを通して!」

 

「ダメです!通しません!」

 

「私はへっちゃらだから大丈夫だよ!」

 

「四葉!これが本当にあなたのやりたいことですか!!?」

 

「そ、それは・・・」

 

私の一言が効いたのか思いとどまってくれました。

 

「四葉!!お前のそのお人好しもいい加減にしろ!!どっちも大事なのはわかるが、優先順位があるだろ!!お前が1番大切にしたいものはなんだ!!」

 

「・・・っ。で、でも・・・」

 

「・・・!ちょ、ちょっと待ってください!隠れてください!」

 

窓を見てると、一花と陸上部のみんなを見かけましたが・・・何か様子がおかしく思い、上杉君と四葉を窓の下に隠れさせます。

 

「どうも様子がおかしいです・・・」

 

様子を確認するため、私たちは窓をこっそりと覗きます。

 

「な、何を言ってるのですかー?私は四葉ですよー?ほら、見てくださいこのリボン」

 

「うん。似てるけど違う」

 

!!?ま、まさか・・・バレたのですか・・・?ですがなぜ・・・どうしてバレたのでしょう・・・?

 

「だって・・・髪型が全然違うもん」

 

・・・・・・・・・た、確かに!!

 

「くっ・・・なんて鋭い観察眼だ・・・!」

 

「前にもこんなことありましたって!もっと他人に興味持ってください!」

 

「すみません四葉・・・私も完全にノーガードでした・・・」

 

「五月まで!!?」

 

普通に考えればわかることだったのに、全く気が付かなかったとは・・・・私も上杉君に強く言えませんね・・・。

 

「あんなにやる気のある中野さんがそんなこと言うはずないもん。中野さんは六つ子だって聞いたよ。あなたは姉妹の中の誰なのかな?なんでこんなことするの?」

 

ま、まずいです・・・形成が一気に逆転されてます・・・

 

「私のためにありがとうございます!でも、すみません!行ってきます!」

 

「お、おい待て!」

 

「ダメですってば!」

 

「離して五月!」

 

や、やばいです・・・何とか食い止めていますがそれも時間の問題・・・どうすればよいのでしょう・・・?

 

「・・・部長さん、確かに四葉はやる気はあるけど・・・」

 

一花が口を開こうとした時でした・・・

 

「お待たせしましたー。皆さん、ご迷惑をおかけしましたー」

 

「「「!!???」」」

 

「中野さん」

 

「今度は本物だよね・・・?」

 

え?四葉?でも四葉は間違いなくここにいますし・・・

 

「あはは、ちょっとしたジョークですよー。六つ子ジョークですー。なんちゃってー」

 

「四葉・・・」

 

え?え?本当にどういうことなんですかこれ?

 

「なんだ冗談だったんだね。でも笑えないからやめてよ。中野さんの才能を放っておくなんてできない。私と一緒に高校陸上の頂点を目指そう」

 

「・・・まぁ・・・私が辞めたいのは本当のことですけど」

 

「「「「「!!!???」」」」」

 

今、窓の外にいる四葉はなんと?部活を、やめたいと・・・?

 

「な・・・中野さん・・・?なんで・・・?」

 

「なんでって、調子いいこと言って私のこと、ちっとも考えてないじゃないですか」

 

「うぐっ・・・」

 

「そもそも、昨日の前日に合宿を決めるなんてありえません。わかってますよね?」

 

「うぅ・・・」

 

「本当・・・マジありえないから

 

窓の外の四葉は恐ろしい表情をして部長さんを見下ろしています。

 

「は、はい・・・ごめんなさい・・・」

 

窓の外の四葉の恐ろしさに部長さんは膝をつきます・・・て、今そんなことはどうでもいいです・・・こ、これは・・・

 

「ど・・・どういうことだ・・・?」

 

「わ、わかりません・・・」

 

私も上杉君も戸惑いを隠せないでいます。それに四葉も。

 

「つ・・・ついに出た・・・ドッペルゲンガーだーーー!!!私、死にたくありませーーん!!!」

 

「ドッペルゲンガー・・・ということは・・・」

 

「ああ!あいつだ!」

 

ドッペルゲンガーでようやくわかりました。今窓の外にいる四葉の正体が。

 

「五月ちゃん!風太郎君!」

 

確信に近づいた私たちに声をかけたのは、別行動をしていた六海でした。これで本当に確信に変わりました。窓の外の四葉は三玖なのですね!

 

「六海!」

 

「ふぅ・・・どうにか、間に合ったようだね・・・」

 

「間一髪で助かったぜ。お前が三玖を連れてきたおかげで・・・」

 

「私が・・・何?」

 

「「!!?」」

 

????????今六海の後ろに現れたのは、三玖でした。え?え?どういうことなのですか?四葉が・・・2人?そ、そんなはずは・・・

 

「よかったー・・・間に合ったんだね・・・」

 

あ、上がってきた一花の隣には・・・四葉が・・・

 

「私、何もしてない」

 

「髪型的に六海が1番近かったんだけどねー」

 

「!!!???」

 

一花もこの場に変装していない三玖を見て驚いています。そりゃそうですよ。

 

「六・・・五・・・四・・・一・・・三・・・」

 

「!ま・・・まさか・・・」

 

ようやく理解しました。今一花の隣にいる四葉がいったい誰なのか・・・。でも・・・そうなると・・・あれ?

 

「最初は六海がやろうって思ってたんだけどねー・・・本人がどうしてもって言っててさー」

 

「ど、どうしても・・・?」

 

「でも六海、うれしかったんだー。気持ちの変化があったことにさ。ね?・・・二乃ちゃん」

 

リボンを外し蝶のようなリボンをつけたその姿は・・・髪はかなり短くなってますが、間違いなく私たちが知ってる二乃でした。

 

「ほ、本当に・・・二乃・・・なのですか・・・?」

 

「・・・えぇ。そうよ。正真正銘、アタシが二乃よ」

 

「ま、まさか・・・そんなにさっぱりと髪を切るなんて・・・もしかして、失恋?」

 

「ま、そんなとこよ」

 

「キャーー!誰と~?三玖、六海は知ってる?」

 

「知らない」

 

「六海の口からはちょっとねー」

 

「内緒よ」

 

私と上杉君が戸惑っている中、二乃は上杉君に視線を向けました。

 

「・・・何?」

 

「え・・・あ・・・えーっと・・・」

 

「言っておくけど、あんたじゃないから!!いいわね?」

 

「お、おう・・・」

 

??いったい二乃は上杉君に何のことを言っているのでしょう・・・?

 

(さようなら、キンタロー君・・・。そして、さようなら、幼き六つ子のアタシたち)

 

二乃が上杉君に言いたいことを言った後、今度は本物の四葉の方に向き直りました。

 

「四葉」

 

「!」

 

「アタシは言われた通りにしたけど、本当にこれでいいの?こんな手段を取らなくても本音で話し合えば彼女たちもわかってくれるはずよ。あんたも変わりなさい。辛いけど、きっといいこともあるわ」

 

二乃・・・

 

「・・・うん。行ってくる」

 

「六海もついていこうか?」

 

「ありがとう、六海。でも・・・1人で大丈夫だよ」

 

二乃の話に四葉は決意を持って陸上部のみんなと話をつけに行きました。そして私はというと・・・今二乃と向き合っています。・・・き、気まずいです・・・。でも、何か声をかけなければ・・・

 

「あの・・・」

 

「二乃!こいつは・・・」

 

上杉君が何か言おうとした時、一花、三玖、六海が上杉君を私たちから離れさせていきます。

 

「ほーら、フータロー君、私たちはこっちだよー」

 

「え?」

 

「風太郎君、ここは2人に任せよーよ。ね?」

 

「私たちは期末対策を練ろう」

 

「・・・だな。だが試験のことは心配しなくていい。俺にとっておきの秘策がある」

 

一花、三玖、六海・・・ありがとうございます。私たちのことを、気を使ってくれて

 

「二乃・・・先日は・・・」

 

「待って。何も言わないで」

 

私が二乃に謝ろうとした時、二乃がストップをかけました。

 

「あんたは間違ってないわ。悪いのはアタシの方だわ。ごめん。ただ・・・あんたが間違ってるすれば・・・頬を叩く力加減だわ。すごく痛かった」

 

「二乃ぉ・・・」

 

叩いた私も悪いのですが・・・二乃の謝罪と、私の想いが伝わってくれたのがうれしくて、思わず涙が溢れそうになっています。

 

「そ、そうです。お詫びを兼ねてこれを渡そうと思ってたんです」

 

「何それ?」

 

「この前二乃が見たがってた映画の前売り券です。一緒に行きましょう」

 

実は以前から仲直りと思っていたので、この期末試験の合間をとって買っておいたのです。

 

「・・・全く・・・何なのよ。本当に・・・思い通りにならないんだから・・・」

 

こうして私と二乃は仲直りを果たして、四葉の方もちゃんと話をつけて、2つの問題を解決しました。これで後は・・・期末試験だけですね。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

風太郎SIDE

 

四葉の陸上部問題、姉妹喧嘩問題を解決した俺は、中野家にお邪魔している。期末試験対策をするために。で、四葉はというと、俺たちに向けて土下座をしている。

 

「この度はご迷惑をおかけしまして・・・」

 

「朝から大変だったねー」

 

「早朝だったのでご飯を食べ損ねてしまいました・・・」

 

「全ては私の不徳に致すところでして・・・」

 

「帰りに買って帰ればよかったかなー?」

 

「でも今日はシェフがいる」

 

「誰がシェフよ」

 

「大変申し訳なく・・・」

 

「じゃあコックさん?」

 

「言い方の問題じゃないわよ」

 

だがこいつらは四葉の謝罪を全く聞いていない。たく、こいつらはそんなこと気にしたりしねーよ。ちなみに俺も気にしない。

 

「その前に・・・」

 

「「「おかえり!!」」」

 

「「ただいま」」

 

入り口の前には、仲直りし、すっかり元通りの仲になった二乃と五月がいる。

 

「・・・早く入りなさいよ」

 

「お先にどうぞ」

 

「じゃあ同時ね」

 

「せーの・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

二乃と五月は互いに遠慮してんのかなかなか入ろうとしない。早く入れよ。

 

「なんで動かないのよ!」

 

「二乃こそ!」

 

「久々に賑やか」

 

「うんうん!これこそが、だね!」

 

「よーし!このまま・・・」

 

「試験勉強だな」

 

「「「!」」」

 

姉妹の和気あいあいとした雰囲気をぶち壊すかのように俺はこいつらに現実を突きつけた。

 

「よもや忘れたわけじゃないだろうな?明後日から期末試験本番だ。文句がある奴いるか?」

 

「も、もちろんそう言おうとしたよね?」

 

「あ!一花ちゃん自分だけ正当化しようとしてる!」

 

「ずるい」

 

全くこいつらは油断も隙もない。自分の立ち場わかってんのか?

 

「もー、みんなちゃんと聞いてよー」

 

たく、四葉はいつまで土下座してるつもりだよ

 

「いつまでそんなこと気にしてんだ?時間がもったいない。早く入れ」

 

「そんなことよりお腹すいたよー」

 

「私のセリフ⁉」

 

「シュークリームばくばく食べといてよく言うわ」

 

「じゃあ、四葉が今日の朝食当番」

 

「さっ、行こ!」

 

「・・・うん!」

 

♡♡♡♡♡♡

 

全員部屋に入ったところでさっそく試験勉強・・・というわけではなく、まずは腹を満たすために朝食を食べてる。まぁ、腹が減っては戦はできぬっていうしな。ちなみに俺も朝食をもらっている。

 

「わ、このおにぎりおいしー」

 

「塩加減抜群」

 

「確かにね。よくできてるじゃない」

 

「えへへー」

 

「もぐもぐ・・・これもいただきます!」

 

「止まらない・・・食べることが止まらないよー」

 

みんな四葉のおにぎりに夢中でバクバク食ってる。確かに、うまいな。

 

「そういえば、陸上部とはどうなったの?」

 

「あの後ちゃんとお話しして、大会だけ協力してお別れすることになりました」

 

合宿に行くことはなくなったのはいいが・・・やっぱり大会は参加するつもりなのか。

 

「そのまま大会も断っちまえばよかったのに」

 

「1度お受けした以上、それはできませんよー」

 

「あの部長さん、諦め悪そうですしね・・・」

 

「六海は今でも部長さんを許したわけじゃないよ!」

 

「まぁまぁそう言わずに」

 

「言いたいことは一応わかる」

 

ちょっとだけちらって見えたが、あの部長、四葉が退部を申し込んだ時、かなり渋ってたしな・・・。

 

「また何か言われたら教えなさい。今度こそ教育してやるわ」

 

「ありがと、二乃!でも、今度は1人で頑張ってみる!」

 

「あっそ。がんばりなさいよ」

 

今回の件を経て、四葉も成長できるなら、今回の作戦も無駄じゃなかったといえるな。

 

「あ!それから五月ちゃん?ちゃんとらいはちゃんと勇也さんにお礼と一緒に謝るんだよ?」

 

「うん。フータローのとこにお世話になったんでしょ?」

 

「わ、わかってますよ!」

 

ここまで来る際、俺は六海に五月がどこにいるかを尋ねてきた。仲直りしたから、もうあいつが俺ん家にいる理由もないから教えてやった。

 

「・・・さて、腹も膨れたし、そろそろ本題に入るか」

 

朝食を食べ終えた俺はようやく本題に入る。それに合わせて一花は俺が渡した問題集を出してきた。答案は全て解き終えてる。

 

「とりあえず問題集は全員終わらせてるみたいだけど・・・」

 

「私たち、ちゃんとレベルアップしてるのかな?」

 

「なーんか実感わかないよね」

 

一応は終わらせてはいるが・・・一花たちは不安が残ってるようだ。後四葉、ドヤ顔するな。回答が微妙に間違ってるくせに。

 

「ゲームで例えるなら、元が村人レベルだからな。6人合わせてようやく雑魚モンスターを倒せるくらいだ」

 

「それで期末試験を倒せるのでしょうか?」

 

「正直に言えば、難しいといわざるを得ん」

 

「やっぱり、そうよね・・・」

 

こいつらも今の状態では合格は難しいと思ってるようだな。

 

「土日でレベルを底上げするしかない。それに・・・どうにかなる方法はある」

 

「秘策はあるって言ってたよね」

 

「ああ。とっておきのをな・・・」

 

俺は自分の筆記用具からあるものを取り出した。

 

「これは村人のお前らでもボスモンスターを倒すことができるチートアイテム・・・カンニングペーパーだ!!!」

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

カンニングペーパーを取り出し、それを見せたことで六つ子は信じられないといった表情になった。

 

「あ・・・あなたそんなことしないと信じていましたのに・・・」

 

「風太郎君、六海は今がっかりしてます!!」

 

「そんなことして点数をとっても意味ないですよぉ・・・」

 

ま、この反応は予想通りだな。

 

「じゃあもっと勉強するんだな!こんなものを使わなくてもいいようにこの土日の2日間でみっちり叩き込む!!俺も全力で教えてやるから、覚悟をしろ!!」

 

俺の言いたいことを言い終えた後、問題の二乃に視線を向ける。

 

「・・・というように勧めさせていただきますが・・・いかがでしょうか・・・」

 

「・・・何それ。今までさんざん好き勝手やってきたくせに・・・気持ちわる」

 

そ・・・そういわれてもだなぁ・・・。

 

「・・・やるわよ。よろしく」

 

案外すんなりと勉強にやる気になっているようで、ちょっと唖然となってる。

 

「さ、始めるわよ。机、片付けておいて」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

六つ子は机を片付けて自分たちの教材を持って勉強の準備を行ってる。

 

・・・ここまで長かった。最初の時は四葉以外は誰も参加しようとしなかった。今でも鮮明に思い出すぜ。今までの苦難、そして困難の数々を。始めは四葉以外は俺を信用していなかった。

 

『全部間違えてましたー!あはははは!』

 

『頭いいって言ってたけど、こんなもんなんだ』

 

『六海はあなたが嫌い。大っ嫌い!!』

 

『なんでお節介、焼いてくれるの?』

 

『あなたからは絶っっ対に教わりません!!』

 

『あんたなんて・・・来なければよかったのに!』

 

あいつらと1人1人と向き合うのは本当に骨が折れたもんだ。本当にバカだわ、睡眠薬は盛られるわ、むきになるわ、姉妹喧嘩は起こすわで大変だったぜ。だが、俺の目の前に広がっている光景は・・・姉妹たちで協力し合いながら、勉強と向き合ってる。俺が・・・求めていた光景だ。これでいい・・・これでいいんだ・・・。

 

「よかったね、フータロー」

 

俺の様子を見た三玖が優しい顔でそう一言言った。

 

「・・・いや・・・まだここからだ」

 

そう、俺のやるべきことはまだ残っている。まだ・・・終わりじゃない。

 

♡♡♡♡♡♡

 

土日を含めた2日間で六つ子に勉強を教えた次の日、いよいよ迎えた期末試験当日・・・俺は眠気に襲われながらも学校へ行く準備をしている。

 

「風太郎!起きやがれ!」

 

「うるせー!こっちは寝てねーんだよ!」

 

俺は親父に無理やり引っ張り出されてる。外にはすでに五月が待機している。ついでに親父たちに謝ろうと六海もセットだ。

 

「待たせてごめんなー」

 

「えー!!五月さん、もう行っちゃうのー?」

 

「ごめんね、らいはちゃん」

 

らいはは五月を気に入ってたからな・・・いざお別れとなるとやっぱ寂しいんだろうな。

 

「勇也さんもうちの姉がご迷惑をおかけしました。ほら、五月ちゃんも!」

 

「がははは!いいっていいって!気にすんな!」

 

「長い間お世話になりました。あの・・・これ、諸々のお礼なので、受け取ってください」

 

「気持ちだけで十分だ。ありがとうな、五月ちゃん」

 

あぁ・・・眠い・・・早く済ませてくんねぇかなぁ・・・

 

「ほら!シャキッとしろ!!」

 

バシィ!

 

「いて!」

 

お、親父め・・・気合注入とはいえ、背中叩くことねぇだろ・・・。

 

「五月ちゃん、この1週間、楽しかったぜ。今度は六海ちゃんも一緒に、遊びに来いよ!」

 

「試験、がんばってね!」

 

「「はい!」」

 

俺たちは親父とらいはに見送られながら、学校へと向かっていく。いよいよだな・・・ここからが本番だな・・・こいつらにとっても・・・俺にとっても。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『期末試験当日、直前の時間』

 

「ついに当日だねー」

 

「うまくやれるかなー?」

 

「やれることはやったよ」

 

「うぅ・・・緊張します」

 

「大丈夫!きっとできるよ!」

 

学校に到着し、六つ子は各々の思いを抱き、緊張した雰囲気を出している。そんな中で二乃は前もって、風太郎と話していた時のことを思い返していた。

 

『え⁉赤点でクビの条件って今回ないの⁉』

 

『言われてもないし聞いてもないな。ま、安心して気楽にいこうぜ』

 

(早く言いなさいよ・・・深刻な顔してたから勘違いしたじゃない)

 

前回の中間試験で赤点ならば風太郎はクビということを気にしていた二乃は先日の風太郎を見て、気にかけていたようだ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「10分前だ」

 

「じゃあみんな、健闘を祈るわよ」

 

予冷が鳴り、各々が自分の教室に向かおうとした時、ここに風太郎がいないことに気が付く四葉。

 

「あれ?また上杉さんがいないよ?」

 

「らいはちゃんに電話ですって」

 

「え?こんな時に?」

 

「こんな時だからじゃない?自分のスマホは充電切れだから、五月ちゃんのスマホを借りるくらいだからね」

 

そんな話をしている間に教室錬までたどり着いた。

 

「よし・・・じゃあお互い頑張ろう!」

 

「「「「「おーー!!」」」」」

 

六つ子は中間試験と同じようにお互いの親指小指を繋ぎ合わせ、互いに気合を入れ、試験に挑むためにそれぞれの教室へと入っていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

五月からスマホを借りた後、俺はすぐに電話を入れていく。らいはに電話、といったがあれは嘘だ。だいたい、俺のスマホにはあの人の連絡先がない。だから五月からスマホを借りた。その相手というのが・・・

 

「・・・以上が、これまでの成果です」

 

≪そうかい。わざわざ報告ありがとう≫

 

俺を家庭教師の仕事をくれた俺の雇い主・・・あいつら六つ子たちの父親だ。

 

「ええ。6人とも頑張っていますよ。これは本当のことです」

 

≪わかっているよ。では、期末試験、がんばってくれたまえ≫

 

まだだ・・・俺はまだこの人に言わなければいけないことがある。

 

「そこで、勝手ながら、お願いがあります」

 

≪なんだい?言ってみなさい≫

 

俺はいったん深呼吸をして落ち着かせ、本題に入る。

 

「今日を持って、家庭教師を退任します」

 

俺が家庭教師を退任すること・・・それを意味するのは、もうあいつらの家に行くことも、あいつらに勉強を教えることはないということだ。

 

≪・・・理由を聞こうか≫

 

「さっきも言ったように、あいつらは本当に頑張りました。この土日なんてほとんど机の前にいたと思います。しかしまだ赤点は避けられないでしょう。苦し紛れの策を用意しましたが、あんなものに頼らない奴らだとはよく知ってます」

 

≪・・・今回はノルマを設けなかったと記憶しているが?≫

 

「本来は回避できるペースだったんです。それをこんな結果になってしまったのは、自分の力不足に他なりません」

 

≪・・・・・・≫

 

「ただ勉強を教えるだけじゃダメだったんです。あいつらの気持ちを考えられる家庭教師の方がいい。俺にはそれができませんでした」

 

あいつらに俺は不要・・・二乃と五月が喧嘩の最中で思っていたことだ。俺がいたからあんなことが起きた。なら、それを取り除くためにも、俺は家庭教師をやめた方がいい。

 

≪・・・そうかい。引き留める理由はこちらにはない。君には苦労を掛けたね。今月分の給料は後ほど渡そう≫

 

「ありがとうございます」

 

≪では、そろそろ失礼するよ≫

 

まだダメだ・・・この人に言わなければいけないことは、まだある。

 

「あの・・・失礼ですが、1度ご自身で教えてあげたらどうでしょう?」

 

≪!≫

 

「家庭教師では限度があります。父親にしかできないこともあるはずです」

 

≪・・・いや、そうしてやりたいが、私も忙しい身なのでね。それに、赤の他人に家庭のどうこうを言われたくはないな≫

 

赤の他人、ね・・・確かに、俺とこの人とは赤の他人だ。だがこのまま黙ってるわけにはいかない。

 

「最近家に帰ったりとかはしてますか?」

 

≪・・・いいや≫

 

「そうそう、知ってますか?二乃と五月が喧嘩をして家を出ていったことを」

 

≪何?それは初耳だね。もう解決はしたのかい?≫

 

「はい。もう大丈夫です」

 

≪そうかい。それならいい。教えてくれてありがとう≫

 

・・・なんでだ・・・あんたはなんでそこまで・・・自分の娘と向き合おうとしない。

 

≪では、今度こそ・・・≫

 

「それだけですか?」

 

≪?≫

 

「なぜ喧嘩したのか気にならないのですか?あいつらが何を考え、何に悩んでるのか知ろうとしないんですか?」

 

≪・・・言っている意味がわからないな。君は何が言いたいんだい?≫

 

「ああ、すみません。雇い主相手に生意気なことばかり・・・。あ、もう辞めるんだった。なら、遠慮なく言わせてもらう」

 

俺は自分の想いをこのわからず屋の父親にぶつけてやる。

 

少しは父親らしいことしろよ!!!大馬鹿野郎が!!!

 

俺のありったけの想いをぶち明け、通話を強引に切った。

 

「・・・やべ。今月の給料、ちゃんともらえるかな」

 

今月の給料がもらえなくなりそうな気はするが・・・それ以上に俺は、達成感に満ちた気分だ。そう、これでいいんだ。これで・・・。

 

「・・・一花、二乃、三玖、四葉、五月、六海。お前ら6人が揃えば無敵だ。頑張れ」

 

俺はお前たちの可能性を、信じているぞ。みんな・・・この2日間、よく頑張ったな。そして・・・さようならだ。

 

22「8つのさようなら」

 

つづく




おまけ

六つ子ちゃんはマラソンを六等分できない

四葉「私たちも駅伝に参加しよう!」

一・二・三・五・六「ええぇ~・・・」

四葉「陸上部の皆さんと一緒に練習してきて、チームで成し遂げる素晴らしさを知ったんだよ!今こそ6人の絆を発揮する時だよ!」

三玖「そう言われても・・・」

一・二・五・六「やりたくな~い・・・」

その後、四葉に強引に連れてかれ、マラソンをすることに

四葉「大丈夫!隣でサポートするから!」

一花「はぁ・・・はぁ・・・」

四葉「二乃、いい調子だよ!がんばれがんばれ!」

二乃「あ、あんたねぇ・・・」

四葉「三玖!負けないで!」

三玖「し・・・死ぬ・・・」

四葉「五月、ナイスガッツ!」

五月「お、お腹すきましたぁ~・・・」

四葉「六海、あと少しだよ!頑張って!」

六海「おぇ~・・・しんどい~・・・」

四葉「みんなの想い受け取ったよ!後は任せて!」

六海「ぜぇ・・・はぁ・・・もうこれ、四葉ちゃんの1人芝居じゃない・・・?」

一・二・三・五「言えてる」

六つ子ちゃんはマラソンを六等分できない  終わり

次回、三玖視点
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