私がこんなに奥深くまで愛せる作品は中々にありませんでした。なので、五等分の花嫁の作者である春場ねぎ先生を大変深く尊敬しております。
春場ねぎ先生、五等分の花嫁の完結、おめでとうございます!お疲れ様でした!
『就寝時間』
新年を迎えて1、2日後くらいの深夜、中野家六つ子の姉妹はぐっすりと眠っている。1つの寝室で6人でぐっすりと。
「う~ん・・・」
そんな時だった。五月は二乃が被っている布団に入り込んだ。
「う・・・うぅ・・・」
二乃は五月の長い髪のこそばゆさを感じ取った。それによって、思うように寝れなかった。しかし、異変が起こったのはこれだけではなかった。
「ぐう・・・」
ゲシッ
「ぐふぅ・・・」
四葉はごろんと寝返りを打つ際、布団を蹴り飛ばし、その蹴りが六海の腹部に直撃した。
「むにゃむにゃ・・・」
さらに四葉は寝転がっていくさい、六海の覆い被っている布団を片手で奪い取った。
「・・・うぅぅ・・・寒いぃ・・・」
布団を取られたため、六海は冬の寒さによってがくがくと震え、身体を温めるかのように丸まって眠る。
「すぅ・・・」
ドゴッ
「ぐえ・・・」
寝相が悪い四葉はこれでもかと言わんばかりにまた寝がえり、その際に拳が三玖の頬に直撃した。
「zzz・・・」
この中で唯一被害にあってない一花はただ1人だけぐっすりと眠り、英気を養っているのだった。
♡♡♡♡♡♡
二乃SIDE
「こんな生活もううんざり!!!!」
朝一番でアタシは今この生活の不平不満を爆発させる。本当にもう何なのよ⁉寝室がここ1つしかないからみんなで一緒に寝るのはいい。いいんだけども!一昨日は四葉に殴れたりするわ、昨日は布団を取られるわ、挙句の果てに今日は五月が布団に入り込んでくるし!もう・・・ゆっくり寝られないじゃないのよ!!
「なんであんたアタシの布団に潜り込んでくるのよ!!」
「さ、寒くて・・・」
「あんたの髪くすぐったいのよ!!さっぱり切っちゃいなさい!!」
「あー!!自分が切ったからってずるいです!!」
ずるいも何もないわよ。この子の髪本当にくすぐったいし、むずむずするし・・・おかげで、何回くしゃみが出そうになったことか・・・。
「・・・お前ら・・・一部屋で寝てたのか・・・」
「あ、上杉さん、おはようございます!」
いつの間にかうちにやってきた上杉は呆気にとられたような表情をしているわね。
「二乃ちゃんの方がまだマシな方だよ・・・六海なんか四葉ちゃんに蹴られただけじゃなく、お布団まで取られたんだから・・・」
「ごめーん・・・。お布団で寝るのは久々だから、まだ寝付けなくて・・・」
「四葉はもう少し寝付けない方がいいと思う・・・。私なんか四葉に殴られたし、なぜか簀巻き状態になってるし・・・」
三玖も六海も四葉の被害にあったらしく、不平不満が募っているわね。不思議といえば、なぜか三玖が布団で簀巻き状態になってることね。
「ふわ・・・眠・・・ふかふかのベッドが恋しいわー・・・」
「そうですね・・・私もお布団は久々・・・」
「・・・おい・・・」
「・・・というわけではありませんが・・・慣れるまで我慢しましょう」
ああ、そういえば五月はアタシ達の家出問題で上杉の家にお世話になったんだったっけ?
「でも、私のお布団が消えたのは不思議です・・・」
「・・・本当に不思議・・・」
「このままじゃ風邪ひいちゃいそうだよー・・・」
「でも、ベッドから落ちなくなったのはいいよね」
「四葉、あんただけよ」
「はぁ・・・新生活始まって早々これか・・・先が思いやられる・・・」
アタシ達の就寝問題を見て上杉はため息を吐いたわね・・・。ため息を吐きたいのはこっちよ・・・。
「一花を見てみろ!これだけの騒ぎの中ぐっすり寝てるあいつを少しは見習え!」
「見習えって・・・」
「すでに汚部屋の片鱗が見えてますが・・・」
「あんなのを見習えって言われても無理だよ・・・」
この騒ぎの中で寝てる一花の周りだけ物を置いてあって、あの汚部屋を思い出す光景ね・・・。
「おい一花!!朝だぞ!!早く起きて勉強をするぞ!!」
「あ!上杉君!」
「う・・・う~ん・・・」
上杉は一花を起こそうとして・・・て、ちょっと待ちなさい・・・一花の癖を考えると、今の一花の姿は・・・
「・・・あ、フータロー君。おっはー」
や、やっぱりね!布団をかぶってるけど、今の一花の姿は裸・・・!
「一花!!」
「フータローは見ちゃダメ!!」
「・・・ていうか・・・仮にも乙女の寝室に勝手に入ってくんな!!」
「わー・・・」
アタシは勝手に寝室に入ってきてる上杉を無理やり寝室から出して。まったく・・・本当に無神経な男よね・・・。はぁ・・・なんでアタシ、こんな男を意識してんのかしら・・・。
♡♡♡♡♡♡
就寝問題を我慢するということで話がまとまって、アタシ達はパジャマから私服に着替えてから勉強道具をもってリビングに向かっていく。リビングには上杉が相変わらず勉強をしながら待っててくれてたわ。
「よし、揃ったな。これでやっと始められ・・・!」
アタシ達がこたつに入って勉強道具を机に置くや否や、一花はまだ眠いのか座った瞬間、うとうととし始めたわ。
「・・・おい・・・」
「一花」
「・・・あっ、ごめん・・・。フータロー君も先ほどをお見苦しいものを見せて申し訳ないね。あ、そ・れ・と・も~・・・ご褒美だったかなー?」
「お前なぁ・・・冬くらいは服着て寝てくれ」
まぁ、それには激しく同意するけど、一花のことを考えると、それも無駄になるわね。
「あははは・・・習慣とは恐ろしいものでさー・・・なぜか寝てる間に着ている服を脱いじゃってるんだよー」
そういうこと。だから言ったところで、無意味だということよ。
「え!授業中とか大丈夫⁉」
「あはは、家限定だから大丈夫だよ」
「それはそれですごい気がする」
「授業中になる前提で話を進めてる・・・⁉」
「だ、ダメだよー。そんな話したら風太郎君が・・・」
上杉の方を見てみると・・・うわっ⁉なんか鬼のような形相みたいな顔つきになってる!そうとう怒ってるわね・・・。
「なんだと・・・?ふざけてるのか・・・?」
「あ・・・あはは・・・大丈夫だって。寝ないから安心して。これからは勉強に集中できるように仕事をセーブもらってるんだ」
まぁ、それができてるなら普通は勉強に手中できるわね。できてるなら、ね。
「次こそ赤点回避して、お父さんをギャフンと言わせたいもんね」
前までのアタシなら、そんなことは鼻で笑っていたところだけど・・・今なら一花の言葉に少なくとも同意できるわね。
「うん」
「私も今度こそ・・・」
「そうですね」
「うん!全員で試験に合格して、パパに風太郎君を認めさせよう!」
他の姉妹たちもこれまで以上にやる気を見せているわね。
「・・・ふん。30点以下で赤点という低いハードルに苦しめられるなんて思わなかった。しかし・・・3学期末こそ正真正銘ラストチャンスだ。これまで以上に気を引き締めてかかれよ」
アタシ達のやる気に上杉自身にもやる気を見せてくれたわ。
「1秒でも時間が惜しい!さっそく始めるぞ!まずは俺と一緒に冬休みの課題を終わらせるぞ!!」
「「え?」」
「え?」
上杉はアタシ達がまだ冬休みの課題を終わらせてないと思っているんでしょうね。だけど・・・
「・・・ふふ」
「あはは」
「フータロー・・・」
「あんた、舐めすぎよ。課題なんて、もうとっくに終わってるわよ」
アタシ達は冬休みの課題を少しずつ、てこずりはしたけど、家庭教師の日までに全部終わらせたのよ。その証拠としてアタシ達は上杉にその冬休みの課題を見せた。
「え・・・ほ、本当だ・・・」
ふふん、呆気に取られてるわね。今までのアタシ達は違うってことよ。
「・・・じゃ、じゃあ・・・通常通りで・・・」
「あなたは今まで何をやってたのですか?」
「・・・・・・」
「六海たちが手伝ってあげよーか?ねぇ?全教科100点さん?」
「う、うっせーよ!ほ、ほら!始めるぞ!!」
五月と六海が上杉をからかうっていう逆の立場の光景は中々に珍しいわね。2人が上杉をからかった後、勉強を開始させる。
「ねぇ、フータロー。さっそくわからないところがあるんだけど・・・」
「ん?どれだ?」
「ここ・・・」
「どれ・・・」
「!///」
上杉は三玖がわからない場所を教えに傍まで近寄った。
「目の和が奇数になる場合は何通りか・・・。これはな、サイコロは3つだから奇数になるのは二パターンある。偶数偶数奇数となる。後は奇数奇数奇数・・・」
「///」
・・・・・・・・・・・・・・・。
じぃ~~~・・・
「?どうしたの二乃ちゃん?さっきから三玖ちゃんを見つめて・・・」
「!べ、別に何でもないわよ・・・」
と、いけないいけない・・・三玖・・・というより上杉をじっと見つめるなんてね・・・。こんな奴より、勉強に集中しないと・・・・。
「・・・すぅ・・・」こっくり、こっくり・・・
て、一花ってば本当に眠そうにしてるわね。勉強も身が入らないって感じに。
「!おい一花。寝るな。起きろ」
「あ・・・。い、いやー・・・ごめんごめん・・・。寝て・・・ない・・・よ・・・zzz」
「寝たーーー!!?」
やっぱり限界が来て寝てしまったわね・・・。まだ30分も経ってないし・・・。まぁ、今の一花の現状を考えればそうでしょうね。
「この野郎・・・何がぎゃふんと言わせる、だ。おい一花、起き・・・」
「少しは寝かせてあげなさいよ」
「は?」
「一花、さっきは仕事をセーブしてるって言ってたけど・・・本当は前より仕事を増やしてるみたいなの」
そう、さっき一花と言ってたこととは全く逆。そうでなきゃ、こんなに早くに眠るなんてありえないもの。
「生活費を払ってくれてますもんね」
「貯金があるから気にしなくていいって本人は言ってたけど・・・」
「こうやってフータローに教えてもらえてるのも全て、一花のおかげ」
「うん。だから一花ちゃんには感謝してもしきれないんだよ」
「・・・だからって、無理して勉強に身が入らなきゃ本末転倒だろう」
私たちの説明をしても上杉はあまり納得した様子はなかった。まぁ、いってる意味はわかるんだけどね。そりゃ、一花に負担はかけさせてるって自覚はあるし・・・。
「おい一花、起きろ。勉強を・・・」
「あの・・・私たちも働きませんか?」
「「「「え?」」」」
働くって・・・それって、アルバイトをする・・・ていうことよね、やっぱり。
「も、もちろん勉強の邪魔にならないようにします」
「・・・なんでだ?」
「す・・・少しでも一花の負担を減らせたらと思いまして・・・」
それには同意するわね。さすがに今回ばかりは一花に負担をかけすぎているもの。
「ふむ・・・。では聞くが、今まで働いた経験は?」
「あ・・・ありません・・・」
「勉強と両立できるのか?赤点回避で必死なお前らが」
これは・・・何も言い返せないわね・・・。
「うっ・・・そ、それなら・・・私もあなたのように家庭教師をします!!」
「「「「!!??」」」」
「は?」
五月が・・・家庭教師?
「教えながら学ぶ!これなら自分の学力も向上し、一石二鳥ですよ!」
・・・それって逆に言い換えると、教えるはずの生徒に勉強を教えられるってことになっちゃうわよ?
「いや本当にやめてくれ・・・お前に教えられる生徒がかわいそうだ・・・」
「だいたい、家庭教師ってそれなりの学力がないと無理でしょ絶対」
「うっ・・・そうですよね・・・すみません・・・今のは忘れてください・・・」
全く何を言ってるのやら・・・。教師っていうのは似合うんだけど・・・今の段階じゃ無理でしょ絶対・・・。
「それならスーパーの店員ならどうでしょう?近所にあるのですぐに出勤できますよ!」
「・・・なんだかレジだけで手間取っていそうな気がするなー・・・」
「うん。即クビだな」
「あれー⁉」
確かに四葉ならありえそうでクビになる未来しか見えないわね・・・。
「じゃあ、本屋さんはどう?大好きな本に囲まれて働くのって幸せじゃない?」
「・・・とかいってお前、商品の本を読み漁るんじゃないだろうな?」
「・・・・・・てへ♪」
「てへじゃない。その時点でもうアウト」
六海らしいものが出てきたけど、考えてること丸わかりで全く話にならないわね。
「むぅ・・・そういう三玖ちゃんはどんなアルバイトするの?」
「私?私は・・・メイド喫茶をやってみたい・・・」
メイド喫茶・・・ねぇ・・・。三玖がメイド・・・。・・・い、意外にメイド姿が似合いそうね・・・。
「え、えーっと・・・あの、萌え萌えきゅーん♡みたいなあれ?」
「い、意外と人気が出そう・・・」
「却下だ却下!!断固として認めん!!」
「・・・しゅん・・・(´・ω・`)」
メイド喫茶でアルバイトすることを認められなくて、悲しそうな顔になったわね、三玖。
「・・・二乃はやっぱり女王様?」
「やっぱって何よ!!やらないわよそんなの!!」
アタシのことをいったい何だと思ってるのよ・・・。アタシにそんな趣味なんかないわよ。
「二乃はお料理関係だよね!」
「ふん。まぁやるとしたらね」
普段から料理はするし、作ることは嫌いってわけでもないから、アタシがアルバイトするとしたら、やっぱりそれ関連ね。
「だよねー♪だって二乃ちゃんの夢は自分のお店を出すことだもんね♪」
「!」
「へぇ・・・初めて聞いたな・・・」
「こ・・・子供のころの戯言よ。本気にしないで・・・」
子供のころに夢見ていたことを出すなんて・・・恥ずかしいじゃない・・・。もう・・・。
「・・・まぁ、それはともかく・・・だ。居酒屋、ファミレス、喫茶店・・・和食に中華にイタリアン・・・ラーメン、そば、ピザの配達・・・俺は様々なバイトを経験してきたが、どれも生半可な気持ちじゃこなせなかった・・・」
「食べ物系ばっかりですね」
「まかないが出るからでしょう」
「意地汚いよー」
「意地汚くねぇ」
いい意味で言えば、少しでも食費を浮かせられるということね。でも逆に言いかえてみると、食い意地があるという意味でもあるから、確かに意地汚いわね。まぁ、なんとも言えないんだけど・・・。
「・・・つまり、俺が何を言いたいかって言うと・・・仕事舐めんなってことだ!!!!」くわっ!
「「「「「わっ⁉️」」」」」
び、ビックリするわね・・・急に顔を強ばらないでよ・・・!
「試験を突破し、あの家に帰ることができたら全て解決する。そのためにも今はまず勉強だ。一花が女優を目指したい気持ちもわからんでもないが、今回ばかりは無理のない仕事を選んでほしいものだ」
まぁその言い分には大きく賛同できるけど・・・一花はそんなこと言ったところで聞かないのは目に見えてるし・・・やっぱりアルバイトしようかしら・・・。
「・・・んん・・・」
ぬぎっ・・・
!!!!????ちょ、ちょっと!!一花ってばまた自分の服を脱ごうとしてるじゃない!!
「⁉一花ダメだってば!」
「時と場所を考えて!」
一花が服を脱ごうとしているところを四葉と六海が必死に止めて・・・って・・・今この場には上杉が・・・!
「フータロー!!見ちゃダメ!!」
「うおっ⁉」
「一度ならず二度までも・・・!!」
「俺⁉俺なんもしてないだろ⁉」
「問答無用よ!!この・・・変態!!!」
結局この日は一花だけ寝室に送って、残ったアタシ達5人だけで勉強を進めることになったわ。
(・・・この仕事・・・舐めてたぜ・・・)
SIDEout
♡♡♡♡♡♡
『知ってる女優いましたわ』
翌日。今日の風太郎の予定はケーキ屋Revivalでアルバイト・・・そしてアルバイト後は今日も六つ子たちの勉強会となっている。そして今風太郎は自分が作ったパイをRevivalの店長に見せて給料アップを交渉している。
「どうですか俺の作ったパイは!店長のにそっくりだ!ランクアップして給料上げてくださいよ」
六つ子の要望によって家庭教師を続けているが、六つ子の父、マルオからクビを言い渡されているため、実質給料は無収入なのだ。だからこそここで少しでも稼いでいかないといけないため、風太郎なりに頑張っているのだ。
「・・・・・・」
店長は風太郎のパイを見ても口にしようとはしなかった。そこにフロントを担当していた春が入ってきた。
「店長~、こっちのお仕事終わりました~」
「うん。ご苦労様、春ちゃん」
「あ、これフータロー君が作ったの~?1つもらっちゃお~」
「あ!おい!!」
パイを見つけた春は1切を口の中へと運んでいった。そして反応は・・・
「・・・おええぇ~・・・なんか生っぽい・・・」
あまりにもひどい味わいらしく、春は口にしていたパイを思わず吐いてしまった。
「何っ⁉そんなはずは・・・!」
ありえないといわんばかりに風太郎はパイを一口食べる。
「・・・おええぇ~・・・マジだ・・・。これは三玖のことバカにできねぇな・・・」
そして先ほどの春と同じく、風太郎は食べたパイを吐いてしまう。
「ま、つまりそういうことさ。厨房に入れるのはまだまだ先だね。その失敗作、早いとこ片付けちゃって」
「「はい・・・」」
「・・・あ、そうそう、上杉君、春ちゃん。もう帰っていいから。お疲れ」
「「⁉」」
店長からもう帰っていいということに反応してしまう風太郎と春。
「え・・・なぜ・・・?」
「も、もしかして・・・クビ・・・ですか・・・?」
「あー、ごめん。言葉足らずだったね。クビにはしないから安心して」
先ほどの発言は店長の言葉足らずのようで少し勘違いをした風太郎と春は一安心する。
「今日は午後から休みなんだ。映画の撮影に店を貸すことになってるからね」
「あ、そういえば今日でしたね~」
「それは早く行ってくださいよ・・・」
どうやら映画の撮影をこのお店でするらしく、そのために仕事は午前だけになっているらしい。
「主演は今を時めくみぃちゃん。りなりなやこんタンも出るらしい。生で見れちゃうかもよ・・・」
「詳しいですね・・・」
主演俳優を聞いても全然ぴんと来ない風太郎。世間に疎い男ともいう。
「私、見学しちゃおっかな~♪素敵な女優さんのサイン、みんなのお土産にしよ~っと♪」
「そういえばお前真鍋と一緒に住んでんだったな」
「フータロー君もけんが・・・」
「では帰ります。1人たりとも知らないんで。お疲れっした~」
「そうかい。まぁ、僕もあんまり詳しくないんだけどね」
女優を知らない以前にそういうことには全く興味がない風太郎は即答で見学を断った。
「失礼します。今日はよろしくお願いします」
そう話しているうちに映画スタッフと主演女優たちが入店してきた。
「わー!おいしそー!」
「よろしくお願いしまーす!」
「わ、来た~。子どもたちのお土産、確保しなくっちゃ~」
「ぼ、僕もサインもらっちゃおうかな・・・」
「ミーハーかよ・・・」
春と店長は女優のサインをもらおうと考えているが風太郎は違う。早く六つ子のアパートに行って昨日の一花の遅れを取り戻そうとばかり考えている。だがその考えは、入店してきた女優を見て気が変わった。
「よろしくお願いしまー・・・すぅ・・・」
「・・・は?」
何故なら先ほど入店してきた女優は一花だったからだ。
「え!!?あ!!しま・・・!このお店は・・・!」
「店長・・・春・・・やっぱ俺も見学します・・・。よ~く知ってる女優がいましたわ」
風太郎は圧が強い目線で一花を見つめながら見学を申し出たのだった。
♡♡♡♡♡♡
一花SIDE
うわぁ・・・忘れてたぁ・・・Revivalってフータロー君がアルバイトしてるお店じゃん・・・。さらには春ちゃんまでいるし・・・。しかも最悪なことに、さっきフータロー君、見学するって言ってるし・・・。できれば今日やる役だけは見てほしくないんだけどなぁ・・・。
「カメラチェックしまーす」
「ケーキ用意してもらってる?」
「台本確認しよっと」
「照明どこに置きましょう?」
スタッフの人たちももうすでに準備してるし・・・そもそも仕事を降りるなんてことはしたくないしなぁ・・・。
「・・・ふぅ・・・。よろしくお願いしまーす!」
うん。見なかったことにしよう。フータロー君は今日はシフトじゃなかったと思い込もう、そうしよう。私は奥の席に向かって、先輩女優と一緒に髪のセットを整えたり、台本のチェックを行うよ。ふとしたところに、春ちゃんと目線があった。
ぐっ♪
春ちゃん?それ何のグッドサインかな?もしかしてあれかな?私のこと褒めてる感じ?だとしたらちっとも嬉しくないんだけど・・・逆に恥ずかしすぎるんだけど・・・。
「リハーサル開始しまーす!」
と・・・いけないいけない・・・今は撮影に集中集中・・・。今は役に演じ切ることに集中しなくちゃ・・・。
「それでは、シーン37の4・・・3、2、1・・・アクション!!」
監督の合図と同時に、私は・・・自分の役を演じる。
♡♡♡♡♡♡
『撮影の見学』
一花が出演するということもあって風太郎は予定を変更して撮影現場を少し見学することにした。
「あ、何だ~、フータロー君も少し興味あったんだ~」
「まぁ・・・少しだけな。それにしても・・・冬休みの書き入れ時に撮影なんてよく許可したよな」
「本当だね~」
風太郎のこの疑問に答えたのは、なぜか得意げな顔をしている店長だった。
「ふふふ、この頃は向かいにある糞パン屋にお客を取られてる厳しい状況でね。もしこの映画がヒットしたら聖地としてファンが押し寄せるに違いないよ・・・!」
つまり向かいにあるパン屋、こむぎ屋に対する対抗意識が1つの理由。もう1つの理由は映画に紛れて自分の店をさりげない宣伝だ。
「とりあえず撮影に使うこのパイに店名の入ったピックを差し込むんだよ。上杉君、春ちゃん、手伝ってくれ。積極的にさりげなくアピールするぞ」
「店長がやる気に満ち溢れてる・・・!」
「見習いたいハングリー精神だな・・・」
やる気・・・というより、悪巧みしてそうな顔つきになっている店長。
「リハーサルを開始しまーす!こちらのパイでよろしいですね?」
「ええ!できればこっちの向きでお願いします!」
店長が用意したパイをスタッフがリハーサル撮影の準備をしている際、春がふと一花と視線が合う。
ぐっ♪
春は一花に応援に意味、かわいいという意味を込めてグッドサインを送った。
「・・・何してんだお前?」
「何でもないよ~♪」
「・・・別にいいけど・・・。にしても・・・さすがに雰囲気があるな・・・」
店の雰囲気が一気に映画の雰囲気に変わっていき、さすがの風太郎も息をのむ。そして、スタッフの合図で撮影が開始される。
「それでは、シーン37の4・・・3、2、1・・・アクション!!」
「ここのケーキ屋さん、一度来てみたかったのです~(・∀・)」
「・・・へ?」
「・・・は?」
明らかに一花らしからぬ言動、そして表情に春と風太郎は素っ頓狂な顔つきになる。
「タマコ!そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「え~?何の話です~?(・∀・)」
「それ呪いのリプライだよ!」
「送られると死んじゃうっていう・・・」
「う~ん・・・タマコには難しくてよくわからないのです~(・∀・)それよりケーキを食べるのです~(^▽^)/」
「・・・まぁ、私たちも本気にしちゃいないけど・・・」
風太郎が固まっている間にも一花は役を淡々と演じている。ちなみに今一花が演じてる役名はタマコちゃん。
「・・・何の映画だよ、これ・・・」
「さ、さあ・・・」
「一応ホラーって聞いてるけど・・・」
風太郎たちは撮影の邪魔にならない程度の場所で話している。
「・・・私の中野さんの印象が一気に崩れちゃうよ~・・・」
「・・・雰囲気が違うどころの話じゃねぇな・・・。配役、絶対間違えてるだろ・・・」
風太郎が一花が演じている役に対して呆れていると・・・
「間違ってないよ。一花ちゃんは幅広い役を演じられる女優だと私は信じている」
「!」
一花が所属している事務所の社長、織田が風太郎に話しかけてきた。
「やあ、上杉君。久しぶり」
「・・・ど、どうも・・・。菊は元気?」
「ああ。おかげさまでね。君にたいしてかなりの憎まれ口をたたいていたよ」
「あのクソガキ・・・!」
織田社長の娘の菊が自分に憎まれ口をたたいたと聞いた途端、風太郎はこめかみをひくひくしている。
「けど・・・その時の顔は本当にいい笑顔だったよ。妙に大人ぶって笑わなかったあの菊がね。本当にいい影響を与えてくれたみたいだね。父親として、感謝するよ。ありがとう」
「・・・ふん、やっぱ素直じゃねぇな・・・」
なんだかんだ言っても菊は自分を認めてくれていることが伝わっているのか風太郎は頬を少しかく。
「君は本当に興味深いね。花火大会の一花ちゃんの件といい・・・菊の件といい・・・君には人の心を動かしている何かを持っているね。一種の才能と言ってもいいよ」
「ん?何の話だ?」
「そんな君だからこそ、このまま手放すのは、実に惜しい」
織田社長が何の話をしているのかわからないが、風太郎にはなぜか嫌な予感がひしひしと感じ取っている。
「どうだろうか、上杉君。我が織田プロダクションに入社し、マネージャーをやってみないかい?」
「は?」
風太郎は織田社長の言っていることが理解できなかった。スカウト、というのはわかっているが、何故自分を雇おうとするのかが風太郎には理解できない。
「君のように人にいい影響を与える人材はなかなかいないよ。君が我が社に入社すれば、今後の芸能界にいい影響を与えてくれることは間違いない」
「ちょ・・・待て!何言ってんだ!俺は特別な能力なんてねぇぞ!せいぜい勉強ができるだけで・・・」
「謙遜を。君のおかげで一花ちゃんは代役オーディションに合格できたんだ。私はこれでも人を見る目には自身があるよ」
「そうは言っても・・・」
「もちろん、我が社に入社すれば、働き次第で大きな給与も与えることも約束するよ」
給与を与える・・・というのは風太郎にとっては魅力的な話だが、そもそもな話風太郎はコミュニケーションは皆無といってもいいほどに下手だ。最悪、五月と初めて会った時みたいなことになりかねない。そして、そんな面倒事は風太郎は何が何でも避けたいのだ。
「・・・勘弁してくれ。そんなとこに入ったら嫌でも面倒事が起こる。面倒事なんてあの六つ子だけで十分だ」
風太郎が誘いを断ると同時に織田社長は非常に残念そうな顔になる。
「そうか・・・それは残念だよ。君のような逸材はなかなかいないんだけど・・・君の意思を尊重しよう」
「ふぅ・・・」
「けど・・・もし我が社に入りたくなったら、私に連絡をしてくれるかい?私はいつでも君を歓迎するよ」
(いらねぇ・・・)
織田社長はそう言って風太郎に自分の連絡先が入った名刺を渡した。
「君はまだまだ若いからね。考える時間はいくらでもある。よく考えた上で君のベストな選択をしてもらいたいね」
「・・・・・・」
「じゃ、私は失礼するよ。また後でね♪」ちゅっ・・・♡
「・・・っ」ぞぞぞ・・・
織田社長の謎の雰囲気に風太郎は一気に寒気が走った。織田社長が去った後に店長と春が話しかけてきた。
「今のって・・・事務所の社長さんかい?」
「すごいね~、フータロー君。そんな人と知り合いだったなんて~」
「・・・まぁ、たまたまな・・・」
少し驚いている店長と春にそういって風太郎ははぐらかすように目線を一花に向き直る。
「・・・・・・」
リハーサル撮影を行っている一花は風太郎が気になって演技に集中できていない。
「?どうした?」
「次、一花だよ?」
「え?あ・・・すみません・・・ちょっといいですか?」
「カーット!」
一旦撮影を中断し、一花は席から離れ、風太郎の下に向かっていく。
「店員さん、ちょーーっとだけ、いいですか?いいですよね?行きましょうか」
「お、おい!どこ行くんだタマコちゃん!」
「しゃ、シャラップ!」
一花は風太郎を強引に店の物置部屋まで引っ張って連れていった。
「・・・青春だね~♪」
その様子を見て春はいつも以上にニコニコしている。
♡♡♡♡♡♡
ドンッ!
撮影を一旦中断させて、私はフータロー君を物置部屋まで連れて来て壁ドンをフータロー君にかました。
「・・・なんだよ、タマコちゃん」
「・・・あのね、フータロー君・・・。その呼び方やめてくれない?後、恥ずかしいからあんま見ないでくれるかな?///」
フータロー君を気にしないで撮影に集中しようと思ったけど・・・やっぱ無理!!フータロー君の視線がっめちゃくちゃ気になるし・・・何より、私がタマコちゃんを演じてるのを他の姉妹たちにだけは見られたくない!!
「恥ずかしがるような役やんじゃねぇよ・・・顔真っ赤だぞ」
私だってこんな恥ずかしい役なんてやりたくなかったよ!けど、今の現状じゃ仕方ないじゃん。
「みんなには誤魔化してるけど貯金が心許なくてね・・・」
「まぁ、事情は一応はあいつらから聞いてるが・・・」
「いやー、食費やら光熱費やらって、思ったよりお金がかかるもんだからまいるよ。だからどんな小さな仕事でも引き受けるって決めたんだ。あの子たちのためにも、私が頑張らなきゃ・・・」
今姉妹の中で働いているのは私だけ・・・だったら、長女として、みんなが勉強に集中できたり、安心して暮らせるためにも、私がやらなくちゃいけないんだ・・・!
「だから止められたって、私は・・・」
「・・・別に働くのをやめろといってるわけじゃねぇ」
・・・え?
「お前のその努力を否定するつもりもない。それにな、家庭教師を続けるチャンスを作ってくれたお前には感謝している」
い・・・意外だなぁ・・・フータロー君なら勉強のために止めろって言いそうなのに・・・。いや、そうでもないのかな・・・。
「だがそれとこれとは話が別だ。お前ならもっと器用にできるだろう。この仕事、まだ拘束の割に実入りは少ないんじゃないか?まだ売れたわけじゃねぇんだからな。だから今だけは女優に拘らなくてもいいんじゃねぇか?」
むっ・・・そんな風に言われると、何が何でも女優の仕事を拘りたくなってくるんだけど・・・。ていうか別の仕事を選ぶ気もないけど。とにかく・・・今はフータロー君を黙らせないと・・・。あ、そうだ・・・あれがあった・・・。
「一時的に別のしご・・・」
「い・・・いいから!言うことを聞いて!でないと・・・この写真をばら撒くよ?」
私がスマホから取り出してフータロー君に見せた写真は、秋の花火大会で撮ったフータロー君の寝顔姿。しかも、私の膝枕付きの、ね♪
「・・・そういえばあったな、そんな写真・・・」
フータロー君がこの写真を知っているのは、以前姉妹のメアドの件で私がこの写真をフータロー君にメールと一緒に送ったからね~。効果は絶大でしょ。
「ふん・・・送りたきゃ好きにしろよ。今更寝顔なんて見られても何とも思わねぇよ」
「あらそう。じゃあみんなに一斉送信しちゃおーっと。フータロー君が・・・私のふとももの上ですやすや眠っているところです」
「ちょっと待ってくれ。それはやめてくれ。俺が悪かった」
私があの時のフータロー君の状況を口にしたらフータロー君が止めてきた。
「あまりにぐっすりだったから起こすのも悪いと思ってね♪」
「あの感触・・・そういうことか・・・。やっべ、恥ずい・・・」
あの時のことを知ったフータロー君は顔を赤くしてる。ふふふ、かわいいとこもあるじゃん♪
「でも・・・これで言うこと聞いてくれるよね?」
「ああ、わかったわかった・・・。で?どうすりゃいいんだ?」
「もうこの際見学は別にいいけど、撮影中は私の視界の映らないところにいて。それから、姉妹のみんなにも内緒ね。お姉さんとの約束だぞ♪」
「・・・ちっ、わかったよ。大人しくしといてやる」
ふぅ・・・これで姉妹たちが私がこの映画に出てるってことを知られる危機は回避できた。これで安心して撮影に挑めるよー。
♡♡♡♡♡♡
フータロー君との打ち合わせを終わらせた後、さっきのシーンの撮影を再開させた。とりあえずはなんとかさっきのシーンは2回目でOKをもらって、今はその次のシーン。次は私がパイを食べて笑顔になる瞬間をシーンを撮る。これ、意外にむずいんだよねー。
「う~ん、おいしいのです~(^ω^)」
これでOKをもらえるといいんだけどなー。
「はいカットー!」
「一花ちゃん、今のいいねー!今のもいいけど、もう一パターンいってみようか!」
「はい!」
もう一パターンかぁ・・・次のパターンはさっきよりもいい笑顔にできるようにしっかりしなくちゃね。でないと、おいしいパイを作ってくれた人に失礼だもんね。
「2テイク目のパイを用意しますので少々お待ちください」
スタッフさんは1テイク目に使ったパイを下げて、2テイクに使うのパイの用意しに行った。私はその間に先輩女優に演技のノウハウを教えてもらった。
「お待たせしました。2テイク目のパイです」
「ありがとうございます!」
いろいろ教わっている間に2テイク目のパイが私の元に運ばれてきた。うーん、これもおいしそうだなあ・・・。
「スタンバイできました!」
「本番!3、2、1・・・アクション!!」
撮影と開始と同時に、私は出されたパイを一口・・・。
ぱくっ
・・・んんん?なんだろうこのパイ・・・何というか・・・めちゃくちゃ生っぽい・・・。ハッキリ言ってまずいとしか言いようがない味が口に広がってきた・・・。でも今は撮影中・・・間違っても口や顔に出しちゃいけない・・・!何とか演技で誤魔化さないと・・・!
「う~ん、おいしいのです~(^ω^)」
パアアアアッ
何とか笑顔を引き出したけど・・・どうかな・・・?
「はいオッケー!!いいねぇ!!最高だよ!!」
「ありがとうございます!」
ふぅ・・・何とか私の本心が漏れずに済んだ・・・。実は結構危なかったから・・・というより誰?こんな生っぽい生地のパイ作った人?なんだか運営が心配になってくるんだけど・・・。
「それでは、休憩を挟んで次の撮影に移りまーす」
ふぅ・・・やっと休憩だ・・・。でも、だからといってのんびりできない。むしろ私にとって本番はこの休憩時間といっても過言でもないよ。
♡♡♡♡♡♡
休憩時間を利用して、私は出入口にあるベンチでただ1人で必死に勉強に集中している。ただでさえ昨日は寝てしまってフータロー君に迷惑かけてしまったからね。昨日の分の遅れは取り戻さないと・・・。
ぽんっ
「数学の問5の問題、間違えてるぞ」
私が勉強に集中していると、もう制服からいつも着ている服に着替えて帰る気満々のフータロー君がいた。
「あ・・・あははは・・・見られちゃった・・・結構恥ずかしいなぁ・・・」
「ここで勉強してたのか。わざわざ隠す必要ないだろ」
「こういうのは陰でやってる方がかっこいいんだよ。六海の言うところの・・・ロマンスってやつかな?」
「勉強にロマンスも何もあるかよ」
まぁ実際にはそうなんだけど・・・少しはかっこつけさせてくれたっていいじゃん。
「ほら、これ。お前の台本だろ?」
フータロー君の手には、私の名前が書かれた台本があった。店のどっかに落としたかなぁって思ってたら、フータロー君が拾っていたんだ。なんだか申し訳ないなぁ・・・。
「ありがとうね。でも、もう使わないからそこに置いてくれていいよ」
「使わないって・・・台本見なくてもいいのかよ?」
「うん。そっちは最後まで覚えたからね。だから使わない」
「なぜそれを勉強に活かせないのか・・・謎で仕方ないんだが・・・」
いやぁ、もちろん普通なら覚えるのにものすごく時間がかかるんだけど、タマコちゃんの役は非常に覚えやすかったよ。というのも・・・
「あはは・・・私の役、タマコちゃんは序盤で呪い殺されるから、出番が極端に少ないんだよねー」
タマコちゃんはすぐに死ぬことになってるから、セリフも登場シーンもものすごく少ないんだよねー。
「貴美子といい、タマコちゃんといい、お前はよく死ぬな」
確かに・・・どういうわけか結構序盤で死ぬ役が私に回ってくるんだよねー。なんでだろう?
「あ、そうそう・・・っていうか・・・ここのケーキ大丈夫?何というか・・・よく言えば個性的な味・・・悪く言えば三玖の手料理だったんだけど・・・」
「あー・・・うん・・・それはすまん。あれ、俺が作った失敗作だ」
えっ⁉あれフータロー君が作ったの⁉てことは私、フータロー君の作ったケーキを・・・って、何を考えてるんだろう私⁉・・・うん。気にしないことにしよう。考えてたらいろいろと頭がおかしくなっちゃいそうだし・・・。
「まぁ、そんなわけでだ。口直しと思ってよ・・・春に頼んで、クッキーを譲ってもらった。パイの件は俺に非があるからな。受け取れ」
「え・・・?あ・・・ありが・・・とう?」
フータロー君はラッピングされてるクッキーを私に渡してきた。な、なんというか・・・意外すぎる展開が続くんだけど・・・。驚くべきなのか、喜ぶべきなのかよくわかんないや・・・。
「それにあの場面では俺も助かったわけだからな。その礼でもある。あれはたいした嘘だったぜ。驚かされた」
「もう!演技だと言ってよ!」
「・・・だが、驚かされたのは本当だ」
え・・・?
「何というか・・・そうだな・・・。・・・じょ・・・女優らしくなったんじゃねぇか?」
!!
「あーなんからしくねぇこと・・・って!!寝てるし!!」
トクンッ
「あ、あぶねー。今の完全に俺らしくなかったから、聞かれなくてよかったぜ・・・」
トクンッ、トクンッ
「しかし、あんな大勢の前でよく恥ずかしげもなくできるもんだ。本当にあいつらに見せてやりたいぜ。お前の頑張りをな」
トクンッ、トクンッ、トクンッ
「・・・チケットが余ったら観に行ってやるか。・・・今日はお疲れ、一花」
トクンッ、トクンッ、トクンッ、トクンッ
・・・さっきから胸のセンサーが高まりっぱなしだよ・・・。こんな時にまで寝た演技だなんて・・・。これじゃあ本当に噓つきだよ・・・。でも・・・
こんな顔・・・フータロー君には見せられないよ・・・。
今の私の顔は、今真っ赤な状態になっていると思う・・・。
♡♡♡♡♡♡
昨日の映画撮影から次の日、今日は一応は仕事休みだから今日の勉強会には参加できてるよ。できてるんだけど・・・ここでちょっと問題が発生。
「・・・・・・」ぶつぶつ・・・
六海が洗面所から戻ってきてから勉強の時間までずーっとぶつぶつぶつぶつとなんか呟いてる。なんかいやーな予感がするなー・・・。
「・・・ぶつぶつうるさくて集中できないんだけど・・・」
「そうよ。ちょっとは口を閉じられないの?」
「・・・・・・」ぶつぶつ・・・
三玖と二乃が注意しても上の空なのか呟きが止まらない。
「・・・おい、聞いてんのか?」
「・・・り・・・」
「あ?何だって?」
フータロー君が六海の呟きを聞き取ろうとした時・・・
「もうスペアメガネにはうんざりだよ!!!!」
「うおっ⁉️」
近所迷惑にもなりかねない大声で六海の不平不満が爆発した。あー・・・そういえばまだスペアのメガネだったっけ・・・。これを何て言うのかな?確か・・・一難去ってまた一難っていうのかな?
25「今日はお疲れ」
つづく
おまけ
タマコちゃん
呪いのリプライ、公開初日目
真鍋「ふふふ、結構楽しみにしてたのよね、この映画。ホラー映画好きの私を、唸らせられるかしら?」
六海「ね、ねぇ、真鍋さん・・・やっぱり帰らない・・・?怖い映画見たって、何にも面白くないよ・・・?」ガクガク・・・
真鍋「今更何言ってんのよ?ここまで来ておいて今更帰るとかなしに決まってるでしょ?それに、あんたの苦手克服のためでもあるのよ?」
六海「ううぅぅぅ・・・でもぉ・・・」ブルブル・・・
真鍋「あ、始まるわよ」
六海「うぅ・・・やだよぅ・・・」ガクガク・・・
タマコちゃん『ここのケーキ屋さん、一度来てみたかったのです~(・∀・)』
真・六「( ゚Д゚)」
映画が終わった後、六海は真鍋と別れてアパートのリビングでのんびりする。
六海「びっくりしたなぁ~・・・。一花ちゃんがまさかあんな役を・・・。
・・・・・・タマコちゃん、かぁ・・・。かわいかったなぁ・・・。・・・・・」
一花「ただいまぁ~・・・。今帰ったよ~」
六海「・・・タマコ、難しくてよくわからないのです~(・∀・)」
一花「!!?ぎゃああああああああ!!??」
六海「へ?・・・きゃああああああああ!!??」
一花は自分の黒歴史を妹が演じていたのを見て、六海は姉の演じてた役をやってるのを姉に見られて、恥ずかしさのあまりお互いに絶叫したとさ。
ちなみに映画、呪いのリプライは爆発的ヒットなんて都合のいいようにならなかったが、とあるシーンで男の霊が映っていると噂になり、風太郎のバイト先で心霊スポットとして一部のファンの聖地となったようだ。
タマコちゃん
終わり
次回、六海、四葉視点
六海のアルバイトはどれがいい?
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漫画アシスタント
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メイド喫茶
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コンビニの店員