六等分の花嫁   作:先導

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伝え忘れたことを1つ、六海ちゃんのアルバイトアンケートの期限はスクランブルエッグ編突入までとさせていただきます。投票がまだの方はぜひともご協力の方をお願いします。

ちなみに現状の結果は漫画家アシスタントとメイド喫茶がいい勝負をしているところです。


愚者の戦い

六海SIDE

 

「・・・で?スペアメガネがどうしたって?」

 

今日の風太郎君の勉強会は六海のアイデンティティーであるメガネの不満によって、六海のお悩み相談に変わっちゃってるんだけど・・・今六海は怒ってる風太郎君の圧を受けながら正座してます・・・。こ、こうしてると風太郎君、怖いよぅ・・・。

 

「えーっと、クリスマスイブの時に風太郎君、川に落ちて六海たちも川に飛び込んだでしょ?」

 

「あ、ああ・・・それは覚えてるが・・・」

 

「風太郎君も知っての通り、あの時に六海のメインのメガネが流されちゃって・・・それ以降六海はずっとスペアのメガネをかけてるんだ」

 

六海がメインに使っていたあの黒縁メガネが風太郎君を助ける際に川に流されちゃって・・・拾いあげようにも川が冷たすぎて潜ることもできないから断念しちゃったんだよね。それでメインのメガネがなくなったから今はスペアのメガネをかけてるってわけなんだよ。

 

「・・・それと今回のことで何の関係があるんだ?」

 

みんなにとっては些細なことなんだろうけど、六海にとってはとっても重要なことなんだよね、これが。

 

「・・・ないの・・・」

 

「あん?なんだって?」

 

全然しっくりこないんだよ!!!!

 

「どおお⁉」

 

六海は自分の思っていることをさっきと同じ大声で叫んだ。みんなは耳をふさいでいるけど、風太郎君はもろに耳に響いちゃってる。

 

「毎日毎日毎日!!今日はこれはダメ!次の日これはダメ!さらに次の日これはダメ!!来る日も来る日も、しっくりきたと思えば次の日にはそうでなくなってる!メガネの度も合わないことが多いし!!さらに言えば強度もゆるゆる!!いつ壊れるのかという不安感!!ていうか2週間の間ですでに壊れちゃったものがあるし!!もう・・・不満が数えきれなくて、頭がどうにかなっちゃいそうだよ・・・」

 

今あげた不満だけじゃなく、他にも不満がいっぱいあるから・・・スペアメガネってほんっとろくでもないって感じる瞬間でもあるよ・・・。

 

「お、おい・・・急にどうした?」

 

「六海はメガネにたいして深いこだわりがあるらしくて・・・自分の要求を満たしていないと、日常生活に支障が出るんだって」

 

「まぁ、言ってみれば禁断症状みたいなものかな?」

 

三玖ちゃんと一花ちゃんの言い方、なんか六海が病気を患ってるな感じでむっとくるけど、言い返せないのが悔しい・・・。

 

「その証拠にあの子のメガネ、今日も変わってるでしょ?」

 

「ん?言われてみりゃあ確かに・・・昨日のメガネとは違うな・・・」

 

二乃ちゃんや風太郎君の言うとおり、六海は毎日のようにその日によってかけるスペアメガネを変えてるよ。ぶっちゃけて言うと、これもめんどくさくて不満の1つになってるよ。

 

「・・・まぁ、なんとなくわかった。要するにお前は自分の持ってるスペアメガネに大きな不満があるわけだな」

 

「ざっくりしちゃうとそうなるのかな?」

 

「五月、しばらくの間メガネ貸してあげたらどうかな?」

 

「1度だけメガネを貸したことがあったんですが・・・ものの2秒でポイ捨てされそうになりました・・・」

 

「早。てかメガネを捨てようとすんなよ」

 

だって五月ちゃんのメガネ、六海の使ってるのと比べて強度がゆるすぎるんだもん。かけた時点で六海には使えないってすぐにわかったんだもん。

 

「しっかし、聞けば聞くほどわかんねぇな。お前のメガネに対するそのこだわりよう。たかがメガネだろ?」

 

むっ・・・風太郎君のその言い分、聞き捨てならないなぁ・・・。

 

「風太郎君、風太郎君はメガネをただの視力安定の道具としか考えてないでしょ?」

 

「何も間違ってないだろ」

 

いや、それは当たってるんだけど・・・そんな回答じゃ合格点は上げられないなぁ・・・。

 

「はぁ・・・いい?メガネっていうのはね、確かに視力安定に役立ってるよ?でもそれはファッションの疎いオシャレ下級者の答案なんだよ」

 

「はあ?」

 

「わからないの?要はアクセサリーの一種だって言いたいの。メガネには様々な形やデザインが催されていて、その人の選んだメガネ1つで、かわいい女の子がより一層にかわいく大変身できるってわけ」

 

「・・・何言ってるのかさっぱりわからん」

 

オシャレ下級者の風太郎君には理解できないかなぁ・・・。じゃあ物は試しっていうことでその証拠を見せてあげようかな。そうだなぁ・・・じゃあ・・・六海のスペアメガネが入ったケースを開けてっと・・・。

 

「うわ、相変わらずすごい数のメガネだなぁ・・・」

 

「口で説明するより実際に見た方がいいかな?じゃあ・・・はい、一花ちゃんはこのメガネ、二乃ちゃんはこのメガネ、三玖ちゃんはこのメガネ、四葉ちゃんはこのメガネ、五月ちゃんはこのメガネをかけてみて」

 

「え?」

 

「あ、アタシ達がかけるの⁉」

 

「なんで?」

 

いや、なんでって・・・。

 

「オシャレに疎い風太郎君に証明できないからだよ」

 

「だからって、私たちに振るかなー?」

 

「私は大丈夫だよ!なんか面白そうだし!」

 

「私も問題ありません。六海の集めたメガネに興味はありましたから」

 

「集めたって、メガネ何個持ってるんだよ・・・」

 

集めたメガネ?そうだなぁ・・・ざっと50・・・いや60種類は集めたかな?

 

「じゃあ、ちょっとかけてみるね?」

 

覚悟が決まったみんなは六海が渡したメガネをかけていった。

 

「うわ!度、キツ!あんたどんだけ視力悪いのよ!」

 

二乃ちゃんがかけたのは紫の縁のフォックス型のメガネだね。やっぱり思った通り、気の強い二乃ちゃんにはピッタリ!

 

「フータロー・・・どう?似合ってる?」

 

三玖ちゃんがかけたのは青の縁のスクエア型のメガネだね。知的な雰囲気がある三玖ちゃんにはうってつけだね!

 

「おお!なんか一気に頭がよくなったように見える!」

 

四葉ちゃんがかけたのは緑の縁のオーバル型のメガネだね。いつも明るくて元気いっぱいな四葉ちゃんには似合ってると思ってたよ!

 

「あはは・・・なんだかお披露目会みたいになっちゃったね」

 

一花ちゃんがかけたのは黄色の縁のブロウ型のメガネだね。一花ちゃんは女優さんをやってるだけあって、絶対に似合うと思ったけど、これは想像以上の出来の良さだよ!

 

「悔しいですが・・・やっぱり六海のメガネは質がいいですね・・・」

 

五月ちゃんがかけたのは六海のメインだったボストン型のメガネ、それの赤縁バージョンだね。五月ちゃんもかけてるだけあってやっぱり様になってるね。それに加えて六海が選んだものだからさらに美しさが際立ってるよ!

 

「ふっふーん!どう?これでメガネはアクセサリーの1つだってわかってくれたよね?」

 

「・・・どんなメガネつけてようが、お前ら全員同じ顔なんだからたいして変わらねぇだろ」

 

「この男はどうしてこうも簡単にデリカシーがない発言ができるのでしょう・・・」

 

本当にそうだよ・・・同じ顔だからどれでも一緒って・・・多少の変化を褒めるってことを風太郎君は知らないのかなぁ?少し褒められるのを期待してた三玖ちゃんは悲しそうな顔してるし・・・。

 

「で?結局どうするの?このままだとアタシ達が勉強に集中できないんだけど」

 

「そうですね・・・放置すれば、また呟きを聞くはめになるかもしれません」

 

「そんなことはない・・・と・・・思う・・・よ・・・」

 

「六海、全然説得力がない」

 

ただでさえ今でもこのスペアメガネは落ち着かないし、先日別のメガネを壊したばっかだから不安感が拭えないんだよね・・・。だから正直言って、このまま勉強を続けるのはちょっと自信がない・・・。

 

「勉強終わった後に買いに行けばいいだろ?」

 

「あのね、風太郎君。そんな簡単に言わないでくれる?前までの生活ならともかくとして、今の現状を考えてそんなお金あるわけないでしょ?それに、六海のお小遣いも、ちょっとピンチで・・・」

 

普通なら自分のお金でメガネを買いに行きたいんだけど・・・この2週間、結構バタバタしてたし、それに先日メガネより貴重なナナカちゃんグッズを買っちゃったから手持ちのお金が全然足りないんだよね・・・。

 

「・・・ちなみに今いくらあるの?」

 

「千五百円」

 

「少な!だから無駄遣いはやめなさいって言ったじゃない!」

 

「俺にとっちゃそれも結構な大金なんだが」

 

無駄遣いになるとはわかってはいたんだけど・・・やっぱりナナカちゃんファンとして、見過ごすことができなかったし・・・。とはいえ、反省はしてるけど・・・。

 

「私、それくらいの値段で買えるいいメガネ屋知ってるよ」

 

えっ⁉千円程度で買うことができるメガネ屋さん⁉

 

「ほ、本当⁉一花ちゃん!」

 

「うん。今後のためにと思って立ち寄ったからさ。今、住所教えるね」

 

む、六海はなんて幸運なんだろう・・・。そんなに安い値段で買えるメガネ屋があったなんて知らなかったよ。いつも行ってる店じゃ三、五千円は当たり前だったもん。

 

「それからさ、お金のことなら気にしなくていいよ。メガネ代くらい出してあげるからさ」

 

「え・・・でも・・・」

 

「困っている妹を放っておくお姉ちゃんなんていません!それに、困ってるならお互い様なんだから・・・遠慮せずに、素直にお姉ちゃんに甘えてもいいんだぞ?」

 

「一花ちゃん・・・」

 

六海は一花ちゃんの長女としての寛大さに少し、感動しちゃった。みんなの方を見てみると、同意したように頷いてる。

 

「じゃ、じゃあ・・・勉強が終わったら・・・買いに行こう・・・かな・・・」

 

六海はとりあえず今日中に新しいメガネを買うことに決めた。お金は・・・一花ちゃんのお言葉に甘えよう・・・かな。ちょっと申し訳ないけど。

 

「仕方ないわね。アタシも付き合ってあげるわよ」

 

「本当⁉️二乃ちゃん!」

 

「今日はスーパーで特売やってるし、あくまでもついでよ」

 

「はい!私も行くよ!荷物持ちは必要だし、何より六海のメガネを選んであげたい!」

 

「二乃ちゃん、四葉ちゃん・・・ありがとう」

 

六海は本当に恵まれてるな。こんなにも優しいお姉ちゃんの妹でよかったと思う瞬間だよ。

 

「一花はどうする?」

 

「私?私は・・・」

 

ヴゥー、ヴゥー・・・

 

「と、ごめん、ちょっと電話」

 

一花ちゃんのスマホから着信が来てすぐに通話してる。あの様子だと多分芸能関係からかな?

 

「三玖ちゃんと五月ちゃんはどうする?」

 

「私は・・・今日は、行かない。ちょっと、やらないといけないことがあって・・・」

 

「すみません・・・私も今日は行けそうにありません・・・この後、少し用事があるので・・・」

 

そっかー・・・、用事があるなら仕方ないかぁ。でも三玖ちゃんのやらなきゃいけないことや五月ちゃんの用事ってなんだろう?・・・と、一花ちゃんが電話から戻ってきた。

 

「ごめん!急な撮影が入っちゃってさ・・・悪いんだけど、今日はパス」

 

「そっかぁ。それなら仕方ないよ」

 

「本当、ごめんね」

 

一花ちゃんは女優なんだから、急なお仕事が入るのは仕方ないよね。

 

「おい、話はまとまったか?そろそろ勉強を・・・」

 

「何他人事みたいに言ってんのよ。あんたも買い物に付き合いなさいよ」

 

「は?」

 

風太郎君までお買い物に連れて行かせようとする二乃ちゃんの発言に風太郎君は唖然となってる。風太郎君とお買い物・・・考えたこともなかった・・・!い、一緒に行きたい・・・!前にキンちゃんとして買い物したことがあったけど・・・あれはノーカンでいいよね・・・!

 

「ちょ、ちょっと待て!何で俺まで⁉️」

 

「荷物持ちに決まってるでしょ?それぐらい察しなさいよ。それとも何?こんなにもか弱い乙女に重い荷物持たせる気?」

 

「む、六海も風太郎君に来て欲しいなぁ・・・。風太郎君にも、メガネ選んでもらいたいし・・・」

 

「俺の意見は聞いてくれないの?」

 

「まぁまぁいいじゃん。行けない私たちの代わりに行ってきなって」

 

「そうですよ!お買い物は、大勢で行った方が、きっと楽しいですよ!」

 

(・・・こいつら・・・無茶苦茶だ・・・)

 

この説得をしていくうちに、風太郎君は観念して、六海たちのお買い物に付き合ってくれることになった。まぁ・・・その分宿題を倍にされたけど・・・風太郎君とお買い物できるなんて・・・!はぁ・・・この胸が幸せでいっぱいになりそうだよ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『三玖のお留守番様子』

 

「じゃあ、行ってくるね!」

 

「お留守番、お願いしますね」

 

「帰ってきたら新しい六海に期待してね!」

 

「うん。いってらっしゃい」

 

今日の勉強(一花は仕事で先に抜けている)を終わらせ、六海たちは買い物、五月は用事とやらで外に出かけ、家に残るのは三玖だけ。しかしこの1人という状況・・・特に風太郎がいない空間というのは今の三玖にとって都合がいい。

 

「・・・よし。さっそく始めよう」

 

そう言って三玖は台所へ向かい、冷蔵庫の隣にある段ボールを開ける。中に入ってるのは六海がまた買いだめした魔法少女マジカルナナカミニフィギュアカプセルチョコだ。張り紙には自由に取っていいよ(ただし、全部食べないで!!)と書かれていた。三玖はカプセルチョコをある程度取り出し、台所へと持っていく。

 

「・・・フータローに喜んでくれるように、頑張ろう」

 

三玖はカプセルチョコを取り出し、中に入ってるフィギュアを全て取り除いていく。そして取り出し作業を終え、チョコを全てボールに入れていき、それを砕いていく。

 

三玖が今作っているのは自分の手作りチョコだ。というのも、2月14日はバレンタインデー。しかし、料理の腕はあまりうまくないことは本人も気づいている。故にこうやって試作品を作っているのだ。全ては、風太郎に最高のチョコを渡すために。

 

「・・・こんな感じでいいかな」

 

チョコを砕いた後は小鍋に砕いたチョコを入れ、火を着けてチョコを溶かす。ある程度チョコを溶かし終えたら、後はかき混ぜ、後はチョコの形を整え、冷やして固めるだけ・・・なのだが・・・

 

ぶしゅわぁ・・・

 

「・・・・・・」

 

チョコにあってはならないドクロの煙がたっている。チョコ自体もなぜかドクロが浮かび上がっている。

 

「・・・こ、これは・・・大丈夫なドクロ・・・うん・・・そうに違いない・・・」

 

三玖はできたチョコのドクロにたいしてそう言い聞かせ、チョコを型に入れ、冷蔵庫の冷凍室に入れる。

 

「・・・つ、次はきっとうまくいく・・・」

 

三玖は次の試作品を作る作業に取り掛かったが、次に出来上がったチョコもドクロが浮かび上がっていたそうな。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「ほわわぁ~!」

 

勉強が終わった後に二乃ちゃんと四葉ちゃん、風太郎君と一緒に一花ちゃんに教えてもらったメガネ屋さんにやってきたわけだけど・・・これは品揃え抜群ですよ店主さん!六海は今きっとすごい興奮状態になってると思う。それだけいいメガネが揃ってるってことなんだよね。

 

「これも・・・このメガネも・・・はたまたあのメガネもとっっっっても品質がよさそう!!しかもこれで千円ほどの値段だなんて・・・最高だよ!!エクスタシーだよ!!」

 

前に通っていたメガネ屋さんでは六海がしっくりくるメガネを見つけるのにすごーっく時間がかかったうえにここより高いんだけど・・・この品質ならすぐにしっくりくるメガネが見つかりそうだよ。

 

「・・・やたらとテンションがたけぇ・・・」

 

「あはは・・・よほどの鬱憤が溜まってたんですね・・・。メガネであんなにテンションが高いのは久しぶりです」

 

「本当、この2週間、よく我慢できた方だわ」

 

遠くで3人とも何か話してるみたいだけど、ここからじゃ聞こえないなぁ。

 

「ほらみんな!そんなとこにいないで選んで選んで!」

 

「もう・・・わかってるわよ。本当、子供なんだから・・・」

 

みんなもそれぞれで六海の合うメガネを探し始めた。六海も早く自分に合うメガネを見つけなきゃ!じゃあ・・・まずはこのオーバル型を・・・装着っと・・・。

 

「・・・う~ん、見た目で騙されやすいけど、強度がゆるいなぁ・・・。なんというかこれは、見た目にこだわって作り上げてる感じが強くあるなぁ・・・。これは没だね」

 

「・・・なんか、専門家みたいな事言ってるが・・・あれは何だ?」

 

「いろんなメガネをかけてるうちに自然とメガネの良し悪しの違いを見分けられるようになったんだってさ」

 

「なんだそりゃ。超能力かよ」

 

「アタシもそう思ったんだけど・・・愛があれば見分けられるんだって。アタシたちと同じように」

 

「メガネにも適応すんのかそのトンデモ理論」

 

六海が自分に合ったメガネを探してると、もうメガネを見つけてきたのか二乃ちゃんと風太郎君がそんな話をしながら近づいてきた。

 

「お、もう見つけてきたのかな?」

 

「あー、まぁ、一応ね。あんたの好きなボストン型?じゃないけど・・・似たような形のメガネをチョイスしてみたわ」

 

「・・・やっぱどれも同じに見えてしまう・・・」

 

風太郎君のオシャレ下級者発言は置いといて・・・二乃ちゃんが選んだメガネはウェリントン型かぁ。ボストン型よりちょっと大きいけど・・・型にはこだわりはないよ。六海が選ぶ基準はメガネの質、強度、しっくりくるかどうかで決めるわけだからね。どれどれ装着っと・・・。

 

「・・・これは強度はあるし品質も高いんだけど・・・どうにもしっくりこないんだよね・・・なんていうかこう・・・これじゃない感?みたいなのが出ちゃってさ・・・。二乃ちゃんには悪いけどこれ没」

 

「判定が厳しいわね・・・少しは納得基準を下げられないのかしら?」

 

「そう言われてもこればっかりはどうしようもないよ。誰がなんと言おうと、メガネの方針だけは変えないよ」

 

「はぁ・・・わがままねぇ・・・」

 

仕方ないじゃん。だっていつの間にかそういう性分になっちゃったんだもん。

 

「おい、それより四葉はどこ行った?」

 

あれ?そういえば、メガネ探しに行ったっきり帰ってこないね。どこまで・・・

 

「六海ー!これなんかはどうかな?」

 

あ、噂をすればなんとやら・・・四葉ちゃんが戻って・・・て、カゴには大量のメガネがある・・・。

 

「な、何よこの大量のメガネ⁉」

 

「お前ずっとこれを集めてきたのか?」

 

「いやー、六海の基準がよくわかんなくて・・・手当たり次第に持ってきました!」

 

「よ、よくこれだけ集めてきたね・・・」

 

「ししし、それほどでもー」

 

「褒められてないわよ」

 

ま、まぁそれはいいよ。これだけあったら1つくらいは・・・て、ちょっと待って。

 

「・・・何?このふざけたメガネは?」

 

多くのメガネの中に紛れて、お笑いなんかで使うパーティメガネや鼻メガネもあったんだけど・・・。

 

「それは場の空気を盛り上げるために私が使おうと思って持ってきたものです!」

 

「「戻してきなさい!!!」」

 

「えー!!?」

 

「いや、大体これいつ使うんだよ」

 

本当だよ。場を盛り上げるって・・・別に今日ってわけでもないでしょ?ていうか今は六海のメガネを買うのが目的だからやめてほしいんだけど・・・。

 

「ま、まぁまぁとにかく、六海、1つずつかけてみてよ!せっかく選んだんだし!」

 

「・・・まぁ、まともなやつもあるからいいけどさ・・・」

 

いろいろ腑に落ちないけど、六海は四葉ちゃんが選んでくれた数多くのメガネを1つずつかけていく。もちろん、おふざけメガネは戻しましたけどね。そんな感じで数分後、数多くのメガネをいろいろ試してみたけど、いい代物が複数個見つけたんだけど・・・どれにしようか迷っちゃうんだよね・・・。

 

「どう?いいのは見つかった?」

 

「うん・・・とりあえずは最有力候補は絞り出したけど・・・未だに決めかねてるんだよね・・・本当、どうしよう・・・」

 

「早く決めちゃいなさいよ」

 

そうは言うけど二乃ちゃん、どれもこれもとっても素敵なメガネだからすっごく悩んじゃって選びきれないよ。・・・あ、そういえば・・・

 

「ねぇ、風太郎君ってメガネ選んでないよね?せっかくだから、風太郎君も選んでよ、六海のメガネ」

 

「はあ?」

 

ずっと見てばっかりの風太郎君にそう言うと、俺は関係ないだろみたいな顔をしてきた。

 

「いや、何その顔・・・ひどくない?」

 

「だって俺関係ないだろ。買い物だって嫌々付き合わされてるだけで・・・」

 

「つべこべ言ってないであんたも探してみなさいよ。アタシ達に探させておいて、不公平でしょうが」

 

「私も見てみたいです!上杉さんの選ぶメガネを!」

 

風太郎君は六海たちの言い分に呆れて頭をかいてる。だって、ここまで来たら、風太郎君がどんなメガネを選ぶか、気になるじゃん?

 

「たく・・・なんで俺が・・・。メガネくらいなんでも・・・」

 

風太郎君が文句を言っていると、1つのメガネに目が留まったみたいだね。

 

「・・・あー・・・じゃあ・・・これなんかどうだ?」

 

「!これって・・・」

 

風太郎君が選んだメガネは六海が前に身に着けていたボストン型の黒縁メガネそのまんまだった。ここにもあったんだ・・・このメガネ・・・。

 

「それって、前に六海がつけてたものと同じですね」

 

「本当ね」

 

「まぁ・・・見慣れているやつの方が俺もしっくりくるし・・・お前だって、慣れたメガネの方がいいだろ?」

 

それはすごく言えてる・・・。あのメガネ、今までの中で1番しっくりきてたし。

 

「ねぇ・・・これ、かけてみてもいい?」

 

「おう」

 

六海は風太郎君が選んでくれたメガネを試してみる。・・・不思議だな・・・。このメガネ自体は前と同じ質で六海にすごく馴染んでる。でも・・・前のメガネとは決定的に違う・・・。だって・・・風太郎君が同じものを選んでくれたということだけで・・・六海の胸がどきどきして・・・温かくなるんだ・・・。

 

「どうだ?」

 

「・・・いい・・・。すっごくいい・・・。前にかけたメガネよりも・・・ずっと・・・」

 

同じメガネであったとしても、こんなにもいいメガネを選んでくれた風太郎君にたいして、六海には感謝の気持ちでいっぱいになってるよ。

 

「ありがとう!風太郎君!こんなにも素敵なメガネを選んでくれて!」

 

六海が笑顔で風太郎君に感謝の言葉を言った後、風太郎君は別にと言わんばかりに頭をまたかいてる。どこまでも素直じゃないんだから。すると、四葉ちゃんがこっちを唖然と見ているの気付いた。でもすぐににっこりと微笑ましい顔つきになった。

 

「よかったね、六海!上杉さんにメガネを選んでもらって!」

 

四葉ちゃんは六海にそう言いながら自分のことのように喜んでくれた。このメガネだけは、何があっても大切に使わなきゃ。もう二度と手放したりもしない。だって、これは・・・好きな人が選んでくれた、とっても大切なメガネだから。

 

ふと気になったことといえば・・・二乃ちゃんが面白くないものを見るような目でこっちを見ていたこと、かな?もしかして・・・いや、まさか・・・ね。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

『五月の用事』

 

時間をさかのぼって、家を出た五月は目的の場所へと向かって歩いていく。家から目的地まで歩いて十数分後、目的地にたどり着いた五月はある人物と出会う。

 

「・・・あの・・・お久しぶりです・・・お父さん・・・」

 

五月と出会ったと人物とは、五月たち六つ子の父親であるマルオだった。そう、五月の用事とはマルオとの話だったのだ。

 

「ご無沙汰だね、五月君。今日は君たちに通告があってきたんだ」

 

娘と出会っても、マルオは無表情で、感情が読み取れない。

 

「あの・・・通告・・・というのは・・・?」

 

「ふむ・・・立ち話もあれだ。カフェで話をしようか」

 

♡♡♡♡♡♡

 

スーパーの中にあるカフェで五月とマルオはお互いに対面している。五月の目の前にはアイスティーがあるが、五月は申し訳なさで中々飲めないでいた。

 

「・・・飲まないのかい?それとも食べたばかり・・・」

 

くぅー・・・

 

「!!?」

 

「・・・ではないようだね」

 

マルオはお腹を空かせている五月のためにサンドウィッチを注文しようとする。

 

「すみません。サンドウィッチを全種ください」

 

「あ、ああっ!そんな!お気遣いなく!」

 

「いらないのかい?」

 

「・・・い・・・いただきます・・・」

 

五月は断ろうとしたが、お腹がすいているのと、せっかくの好意を無下にするわけにもいかず、マルオに甘えることにする。

 

「いい子だ。五月君は素直で物分かりがいい。賢さというのはそのような所を指すのだと僕は思うよ。だから君をここに呼んだんだ」

 

「・・・お父さん。私をここに呼んだ理由とは何でしょうか?」

 

五月は自分が呼ばれた理由を問いかけると・・・

 

「父親が娘と食事をするのに理由が必要かい?」

 

さも当然のようにそう言ってのけた。

 

♡♡♡♡♡♡

 

四葉SIDE

 

六海のメガネを買い終えた後、私たちは近場のスーパーで今日の夕飯に使う食材を買いに来ました。二乃が言っていた通り、今日は、特売日なので、いつもよりお値段が安いです!

 

「~♪」

 

上杉さんが選んだメガネをかけてる六海は嬉しそうに鼻歌を奏でています。見た目は前と同じなんだけど・・・そんなに違いがあるのかな?

 

「とってもご機嫌だね!そんなに嬉しかった?」

 

「もちろん!だって・・・これは・・・///」

 

六海は荷物持ちとしてついてきてる上杉さんを見て、頬を赤くしてます。やっぱりこの顔はあれだね・・・ほの字だよね。・・・うん、間違いないよね・・・。

 

「何だよ?俺の顔になんかついてるか?」

 

「う、ううん!なんでもないよ!」

 

上杉さんはそんな六海の好意に全く気づいていません。これが噂に聞く天然たらし、というのでしょうか?

 

「ほらそこの荷物持ち!そんなとこでくっちゃべってないでさっさとお米持ってちょうだい!」

 

「はいはい・・・。たく・・・さっさと済ませて帰ろうぜ」

 

二乃に急かせれて上杉さんはお米が入った袋を持ち上げようとします。

 

「くお・・・っ!!重・・・!お、落ち着け・・・!ここは力学的に・・・1番効率的なのは・・・っ!」

 

「だ、大丈夫?手伝ってあげようか?」

 

「こ、これくらいなんてこと・・・やっぱダメだぁー!」

 

ああ、やっぱり上杉さんの力じゃ持つことができませんでしたか。

 

「無理しないでください、上杉さん。私が持ちますよ」

 

「し、しかし四葉・・・これ、重い・・・」

 

「え?何か言いました?」

 

私は上杉さんに変わってお米をひょいっと持ち上げました。うん、軽い軽い♪

 

「・・・なんか・・・俺が情けなくなってくるな・・・」

 

「そ、そんなことないよ?六海だって1人じゃあのお米、持てないもん」

 

「無理にフォローするな・・・」

 

地味に落ち込んだ上杉さんは六海に励まされていますが、逆に落ち込んでるような・・・。

 

「はぁ・・・情けないわね。男ならそれくらい持ちなさいよね」

 

「じゃあお前が持ってみろよ・・・結構重いぞ・・・」

 

「嫌よ。進んで重いものなんて持ちたくないわ」

 

「まぁまぁ、お米は四葉ちゃんが持ってるから今はいいじゃん、それは。それより、買うものはこれで全部かな?」

 

「そうね・・・これで買うものは全部かしら」

 

籠に入ってるのは・・・えーっと・・・ニンジン、玉ねぎ、じゃがいも、牛肉・・・牛乳に納豆に・・・お醤油・・・。今日は肉じゃがかなぁ?だってカレーやシチューにはルーが入りますからね!

 

「・・・あ、そうだ。忘れてた。三玖に頼まれてるんだったわ」

 

あ・・・そういえばそうだった!買い物の準備をしていた時に三玖が買ってきてほしいものがあるって言ってたんだった!それを思い出した二乃はお菓子コーナーへと向かっていきます。

 

「何を買うんだ?」

 

「チョコレートよ。三玖が今欲しがってるんだって」

 

「それも1つや2つじゃないよ。だって三玖ちゃん、六海のカプセルチョコを譲ってほしいって言ってたし・・・」

 

「おいおい、そんなに食うのか・・・。鼻血が出ても知らねぇぞ」

 

「違いますよ、上杉さん。三玖が食べるわけじゃありません」

 

だって三玖は甘いものが苦手ですから、自分から食べようとはしません。チョコレートは三玖が使うから買うんです。

 

「食うわけじゃないなら・・・他に何があるってんだ?」

 

「あんた頭いいのに察し悪すぎ」

 

「まだ1月なのに気が早いんだからー」

 

「でも三玖ちゃんの気持ちはわかるよ。うんうん」

 

「????」

 

本当に察しが悪いですねー、上杉さんは。そんなの、バから始まってンで終わるあれに決まってるじゃないですかー。

 

「えっとチョコレートは・・・あ、あった。何個入れる?」

 

「そうね・・・3・・・いや5個でいいんじゃない?」

 

六海がチョコレートを発見して手に取っていきますね。これでお買い物終了・・・あ、私の好きなお菓子、ねりねりねりね発見!あ・・・でも・・・迷惑じゃないかな・・・?ダメ元で頼んでみよ。

 

「チョコも入れたし、これで・・・」

 

「ね、ねぇ、二乃?これ、買っちゃダメ・・・かな?」

 

「え?でも四葉ちゃん、これ買うとお金が余計になくなっちゃうんじゃない?それに、六海のメガネ買ったばっかで財布の中身、結構怪しいかも・・・」

 

「だよねぇ・・・」

 

六海の言葉で撃沈し、私は渋々とねりねりねりねを戻します・・・。うぅ・・・欲しい・・・食べたい・・・。

 

「ふぅ・・・仕方ないわね。いいわよ、これくらい」

 

「本当⁉やったーー!!」

 

「それと、六海も1個だけなら好きなお菓子買っていいわよ。いい?1個だけよ」

 

「え⁉いいの⁉じゃあ・・・どれにしよっかなぁ・・・」

 

いやー、ダメもとで頼んでみるものですね!早く食べたいなぁ・・・ねりねりねりね、おいしいんだよねー。

 

「本当に・・・困ったものね。やっぱり少しくらいのバイトは検討すべきかしらね」

 

「つーかこれ、よく見たらお子様向けの菓子じゃねぇか」

 

「あら、女はいつまでも少女の気持ちを忘れないものよ。お城で舞踏会とか、白馬に乗った王子様とか、未だに憧れてるんだから」

 

「へー、そーなのかー」

 

(そうよ・・・!こいつが私の王子様だなんて・・・絶対にありえないわ!!でないと・・・おかしいわ・・・。こいつとキンタロー君は別人だと割り切ったんだから・・・)

 

「二乃ちゃーん、お菓子入れたよー」

 

「え?あ、あらそう・・・。じゃあ、ちゃっちゃと会計しちゃいましょ」

 

六海が自分のお菓子を入れたところで会計に行こうとしてるけど・・・うぅ・・・ちょっと・・・限界かも・・・。

 

「えっと・・・二乃・・・ちょっと持ってて!」

 

「え⁉」

 

「ごめん!おトイレ!」

 

「あ!待って!六海も行く!」

 

「あっ!また我慢してたでしょ・・・って、重!!」

 

実は前からきてたんだけど・・・も、漏れちゃいそう~!私はお米を二乃に持たせてから六海と一緒におトイレへと向かっていきます。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ふぅ・・・スッキリしました!気分も爽快な気分になってきました。私がスーパーの中にあるカフェのおトイレから出ると、先におトイレを済ませていた六海が待っていました。

 

「お待たせ!」

 

「長いおトイレだったね。よっぽど我慢してたんだ」

 

「あはは・・・ごめんね」

 

ちょっと待たせちゃったかな・・・いやはや、本当に申し訳ない・・・。

 

「じゃあ、早く戻ろっか」

 

「ええっと・・・来た道ってどっちだったっけ?」

 

「ええ?もう、しょうがないなぁ。六海もついてきて正解だったよ・・・」

 

何から何まで六海には苦労かけちゃうなぁ・・・。後で私のお小遣いで何か買ってあげようかなぁ・・・。

 

「・・・あれ?あれって五月ちゃんじゃない?」

 

「え?五月?」

 

六海が指さした方向を見てみると、確かに五月がいました。

 

「本当だ。なんでここにいるんだろう?用事は済んだのかな?」

 

「・・・ていうか・・・え⁉ちょっと待って!五月ちゃんの向かいにいる人って・・・パパじゃない⁉」

 

「え!!?」

 

お、お父さん⁉お父さんがここにいるの⁉気になってじーっと目を細めてみると・・・ほ、本当に私たちのお父さんがいました。でも・・・なんでお父さんが五月と・・・?

 

「ど、どういうこと・・・?私、何が何だか・・・」

 

「四葉ちゃん、落ち着いて!」

 

六海が混乱している私を落ち着かせてくれました。

 

「な、何か話してるね・・・」

 

「ちょ、ちょっと聞いてみようよ・・・」

 

私たちは五月とお父さんの話が聞こえそうで、気づかれにくそうな席に座・・・

 

「お客様、当店では着席前にご注文をお願いしております」

 

「あ、じゃあ・・・ミルクティーのショートを2つお願いします」

 

その前にご注文をしてから着席します。・・・あ、この席なら会話が聞こえる。

 

「君たちのしでかしたことは、この際目をつむろう」

 

「す、すみません・・・」

 

「しかし、どうやら満足のいく食事もできていないようだね」

 

「・・・っ」

 

ちらっと見ましたが、五月側には空になったお皿がありましたね。お父さんに何か食べ物をもらったみたいですね。確かに・・・最近五月、ご飯の量が満足いってないのかお腹すいたってぼやいてましたし・・・。

 

「すぐさま全員で帰りなさい。姉妹全員にそう伝えておきなさい」

 

帰りなさいってことは・・・前に住んでたあのマンションに戻って来いってことですよね・・・。頭の悪い私でもそれくらいはわかります。でも・・・その場合、上杉さんはどうなるのでしょう?

 

「あの・・・お父さん・・・それは、彼も含まれるのでしょうか?」

 

「彼・・・?・・・上杉君のことかい?これは僕たち家族の話だ。彼はあくまで外部の人間だということを忘れないように。それに・・・ハッキリ言って・・・」

 

ハッキリ言って・・・?

 

「僕は彼が嫌いだ」

 

・・・・・・・・・・・・お・・・大人げない!!!え⁉何ですか⁉お父さんからこんな子供じみた発言を聞くの初めてなんですけど⁉

 

「風太郎君、パパにいったい何を言ったんだろうね?よっぽどだよ、あれ・・・」

 

「さ、さあ・・・見当もつかないよ・・・」

 

上杉さん・・・いったいお父さんに何を言ったんですかぁ・・・。

 

「まだ・・・帰れません」

 

と、そんなこと考えてるうちに話が進んでる。

 

「・・・なぜだい?」

 

「彼を部外者と呼ぶにはもう深く関わりすぎています。迷惑をおかけするのは重々承知ですが・・・せめて次の試験までの間、私たちだけで暮らして・・・」

 

「では聞くが、君たちの力とはいったい何だろうか」

 

「・・・っ」

 

「家賃や生活費を払ってその気になっているようだが、明日から始まる学校の学費はどうするんだい?携帯の契約や保険はどう考えているのかな?僕の扶養に入っているうちは何をやっても自立しているとは言えないだろう」

 

うぅ・・・超ド正論すぎてこっそり聞いているこっちも言葉が出なくなってしまいます・・・。六海も・・・話をしている五月も渋い顔になってますし・・・。

 

「それは・・・正論・・・ですが・・・」

 

「・・・ふむ・・・ではこうしよう。上杉君の立ち入り禁止を解除し、家庭教師を続けてもらう」

 

「え?」

 

「「!」」

 

それって・・・お父さんの公認の下でってことなのでしょうか・・・?

 

「ただし、僕の友人のプロ家庭教師との2人態勢でだ。上杉君は彼女のサポートに回ってもらう」

 

しかし、そんな私たちの淡い期待はすぐに薄れていきました。要するに勉強を教えてもらうのはあくまでそのプロ家庭教師さんということですよね・・・。

 

「君たちにとってもメリットしかない話だ。1対6ではカバーできない範囲もあるだろう」

 

確かに私たちにはメリットしかありません。1人で勉強を教えるにしても、上杉さんの負担が大きいですし。でも・・・お父さんの案を受け入れてしまうと・・・上杉さんを家庭教師を続けてもらうために、家を出ていった意味がなくなってしまいます。私はやっぱり・・・この案は受け入れたくない・・・。

 

「しかしみんな・・・この状況の中で一生懸命頑張って・・・」

 

「四葉君は赤点を回避できると思うかい?」

 

!私が・・・赤点回避できるかどうか・・・。

 

「2学期の試験の結果を見させてもらったがどうだろうか?」

 

「それは・・・」

 

「四葉君には悪いが・・・とてもじゃないが僕にはできるとは思えないね」

 

お父さんの言葉を聞いて、私の抑えていた気持ちが溢れてきました。

 

「六海・・・ちょっとごめん!!」

 

「あっ!四葉ちゃん⁉」

 

確かに私は他のみんなよりおバカです。ですがそれでも・・・

 

「・・・そう・・・ですね・・・。2人体制の方が確実ですが・・・」

 

「やれます」

 

上杉さんのおかげで、姉妹のみんなも、1番おバカな私でも、成長を実感できたんです。だから・・・

 

「私たちと上杉さんならやれます」

 

「四葉・・・六海・・・」

 

「私は、7人で成し遂げたいんです。だから・・・私たちを信じてください。同じ失敗は二度と繰り返しません」

 

次の試験で姉妹全員で合格して、上杉さんを本当の意味で、お父さんに認めさせてやりたい!!それが私の、大きく溢れた気持ちです!

 

「では失敗したらどうするんだい?」

 

お父さんは表情を1つも変えずに口を開きました。

 

「東京に僕の知人が理事を務める高校がある」

 

「「「?」」」

 

「あまり大きな声で言えないのだがね・・・無条件で3年からの転入ができるように話をつけているんだ」

 

「え・・・」

 

「もし次の試験で落ちたらその学校に転校する」

 

転校・・・ということは・・・もし次の試験で赤点を取ったら・・・その東京の高校に転校・・・この地を離れて・・・。そんなの・・・

 

「プロの家庭教師と2人体制ならそのリスクは限りなく小さくなると保証しよう。それでもやりたいようにやるなら、後は自己責任だ。わかってくれるね?」

 

嫌だ・・・といっても・・・私の一存で決めるわけには・・・

 

「・・・わかりました」

 

・・・え?五月?

 

「ではこちらで話を進めておこう。五月君ならわかってくれると思っていたよ」

 

「いいえ。プロの家庭教師は結構です」

 

「・・・何だって?」

 

「もしダメなら転校という形で構いません。少なくとも、私も四葉と同じ気持ちです」

 

五月・・・私と同じ気持ちで・・・。

 

「素直で物分かりがよくて、賢い子じゃなくてすみません」

 

五月はお父さんに思うところもあるのか、優しい笑顔を浮かべています。

 

「パパ・・・ごめん!六海も・・・2人と同じ気持ちだよ!」

 

「六海・・・?」

 

「確かにパパの言ってることは何も間違ってないよ。何度も何度も・・・パパにはお世話になったもん・・・それくらい、おバカな六海にだってわかるよ」

 

「・・・・・・」

 

「でも・・・でもね!このわがままだけは譲れない!ううん、譲る気はない!少しの可能性があるなら、そこに突き進みたい!そうでないと・・・多分、一生後悔することになると思うから!」

 

六海も私と五月と同じ気持ちらしくて、堂々とお父さんに向けてそう宣言しました。

 

「・・・ふぅ・・・そうかい。どうやら僕は忘れていたようだ。子供のわがままを聞くのが親の仕事・・・そして子供のわがままを叱るのもまた、親の仕事」

 

お父さんは六海を見て一息吐いて、そっと立ち上がってその場を去ろうとしました。

 

「・・・次はないよ」

 

多分これが、お父さんからの最後の警告なんだと思います・・・。五月と六海・・・姉妹のみんながいるんだ。望むところだよ。

 

「前の学校の時とは違うから!!」

 

「・・・僕も期待しているよ」

 

お父さんはそれだけを言い残して、カフェから去っていきました。

 

「・・・行ったか」

 

「みたいね」

 

「うわっ!!?」

 

「風太郎君に二乃ちゃん⁉」

 

「見てたのですか?」

 

「ああ。バッチリな」

 

お父さんがお店から出ていったと同時に一部始終を見ていた上杉さんと二乃が出てきました。

 

「想像通りの手強そうな親父だったな・・・」

 

上杉さんが見ていた・・・ということは、今の会話も聞いて・・・?ううぅ・・・なんか一気に罪悪感が出てきた・・・。

 

「そうね。六海の言うとおり、あの人が言ってることは正しい。だってあんた1人じゃ不安に決まってるもの。あーあ、プロの家庭教師がいてくれたらな~」

 

「・・・・・・」

 

「す、すみません」

 

「「ごめーん・・・」」

 

「・・・私たちがここまで成長できたのもパパのおかげだわ。当然、感謝してるわ。・・・けど・・・あの人は正しさしか見てないんだわ」

 

確かに・・・お父さんは成功する効率しか見ていない感じはあるような気はします。上杉さんを認めていない感じでしたし・・・。もちろん、私たちのためにというのはわかってはいるんですけど・・・。

 

「・・・しかし、転校なんて話まで出てくるとはな・・・。責任重大じゃねぇか」

 

「我が家の事情で振り回してしまって、申し訳ないです・・・」

 

「転校、したくないね・・・」

 

「うん・・・せっかくここまで来たのに・・・」

 

旭学園で仲良くなった友達だっているし・・・そして何より、上杉さんと離れ離れになるのは・・・やっぱり、嫌だな・・・。

 

「・・・だが、どうでもいい」

 

「「「「え?」」」」

 

「お前らの事情も、家の事情も、前の学校も転校の条件も、全部どうでもいいね」

 

う、上杉さん・・・?

 

「俺は俺のやりたいようにやるだけだ!俺は絶対にお前たちを進級させる!そしてこの手で、全員揃って笑顔で卒業!!俺には、それしか眼中にねぇな!!」

 

上杉さんは私たちに向けて力強くそう宣言しました。私たちにはその力強さが、非常に心強く感じます。

 

「ふふ・・・頼もしいですね」

 

うん・・・そうだよね・・・。私たち姉妹と上杉さんと一緒なら、きっと試験だって乗り越えられるよね!

 

そうして私たちは注文したものを飲んでお会計を済ませて、家へと戻っていきます。帰ったら必死に勉強しなくちゃ!

 

26「愚者の戦い」

 

つづく




おまけ

三女ちゃんと末っ子ちゃんの会話

六海「三玖ちゃん見てみてー!六海の新しいメガネ!」

三玖「・・・前と同じだね」

六海「ただ同じメガネってわけじゃないよ?だって、風太郎君に選んでもらったんだから!いいでしょー?」

三玖「・・・ふぅん、フータローに・・・」

六海「六海、もうこのメガネは絶対に手放さないよ!今までで1番大事なものだもん!」

三玖「そうなんだ。・・・ところで六海、チョコレートの試作品ができたんだけど、味見して。・・・嫌とは言わせない」

六海「( ゚Д゚)」

三女ちゃんと末っ子ちゃんの会話  終わり

次回、六海視点

六海のアルバイトはどれがいい?

  • 漫画アシスタント
  • メイド喫茶
  • コンビニの店員
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