六等分の花嫁   作:先導

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もうすぐで第2章も終わりを迎えますが、2章の方針は最期の試験後にスクランブルエッグ編、その後に六海ちゃんの過去の話で進めようと思っています。早くスクランブルエッグ編を書きたいわけですから。


最後の試験が六海の場合

「それでは、試験を開始します」

 

今回の試験・・・絶対に合格しなくちゃ・・・!決めたんだ・・・六海は、いつかちゃんと過去を向き合えるような自分になるって!そのためにもまずは・・・頭の悪い自分から脱却しなくちゃ・・・!

 

♡♡♡♡♡♡

 

パパから転校の話から数日・・・1月8日。冬休みが終わって、今日は学校。今日の分の授業を終わらせて六海たちは直行で自分たちの家に戻ってすぐに勉強の準備を進めるよ。

 

「冬休みも終わっちゃったね」

 

「あんたたちのクラスも進路希望調査もらった?」

 

「進路と言われても、何を書けばいいかわからない」

 

風太郎君が授業の準備をしている間、六海たちは今日渡された進路希望調査書の話をしている。ちなみに六海の進みたい道は漫画家一択だよ。

 

「一花と六海はすぐ書けるね」

 

「ですね。六海は漫画家希望、一花はすでに女優ですからね」

 

「うーん・・・私はまだ学校に女優のこと言ってないんだよねー・・・」

 

「まぁ、それなりに勇気いるもんね、自分は女優ですって言うの」

 

まぁでも、一花ちゃんが女優やってるっていうのが知れ渡るのも、時間の問題だと思うけどね。

 

「よーし、お前ら、今日も授業を始めるぞ」

 

お、やっと風太郎君が来た。待ちくたびれたよー。早く勉強したい気分だよ。今回の試験ばかりは絶対に赤点全部回避したいしね。

 

「やりましょう・・・いえ!ぜひやってください!!そして確かめてください!!試験突破に何が必要なのかを!!」

 

おおっ⁉五月ちゃん、今日はいつになくやる気だなぁ・・・。びっくりしちゃった・・・。

 

「お、おう・・・。乗り気なのは助かる・・・だからいったん座れ・・・」

 

「はっ・・・!す、すみません・・・つい取り乱して・・・」

 

食い気味に顔まで近づいたのに気づいた五月ちゃんは顔を赤くしてこたつの座席に座り込んだよ。

 

「まぁ、今はとにかく授業だ。目指せ、30点越え・・・」

 

ツゥー・・・

 

「わっ⁉」

 

うぇい⁉風太郎君の鼻から突然鼻血が⁉

 

「だ、大丈夫ですか⁉上杉さん⁉」

 

「どうしたのよ?」

 

「お姉さんが思うに、エッチな本でも見たんじゃない?」

 

「エッチ⁉風太郎君、エッチなことはダメだよ!!」

 

「ちげぇよバカ。てか六海、お前が言っても説得力がねぇ」

 

?違うの?じゃあ何で突然鼻血なんか・・・。

 

「ふぅ・・・この鼻血はな、三玖のせいだ。何故か最近ずっと市販のチョコを無理やり食わせてきやがる」

 

三玖ちゃんの両手には市販のチョコレートがたくさんあった。・・・あー、なるほど・・・チョコレートの食べ過ぎってわけかぁ・・・。六海もカプセルチョコでよく鼻血だしてたのを思い出したよ。

 

「今日も持ってきた。フータロー、食べて」

 

「あら、ちょうど甘いものが食べたかったのよ。アタシにも1つちょうだいよ」

 

「二乃にはあげない」

 

「はぁ?なんでよ?1つくらいいでしょ?独り占めしないでよ」

 

「・・・しないよ。まだ・・・ね」

 

文句を言っている二乃ちゃんに三玖ちゃんは静かに微笑んでそう言った。・・・しないって・・・いったいどう言う意味で言ってるのか、六海にはよくわからないよ。

 

「・・・ていうことで、今日も全部食べて感想、聞かせてね」

 

「・・・なぁ、何の罰ゲームだ・・・これ・・・」

 

「わ・・・私も1つくらい・・・」

 

「ダメ。これはフータローのもの」

 

「そんないっぱいあるのにー。ケチー」

 

「ケチで結構」

 

六海や五月ちゃんもチョコを要求しようとしても三玖ちゃんは拒んでる。まぁ、来月はバレンタインだから気持ちはわかるけどさー。だからってこんなの不公平だよー。

 

「もー、みんな、そろそろ勉強するよー?試験まで後2か月なんだからー」

 

「そうだ!お前ら、四葉を見習え!」

 

三玖ちゃんの・・・というか風太郎君のチョコ独占にはいろいろ納得がいかないけど・・・そうだよね。そろそろ勉強をしなくちゃ。少しでもテスト範囲を頭に詰め込まないと・・・。六海たちはその後は風太郎君の教えの下で勉強に励んだよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

1月14日、3学期が入って1週間くらいの日にちがたった。今日は日曜日・・・普段なら遊びに出かけるんだけど、その時間も惜しいから今日も風太郎君と一緒に勉強。・・・その予定だったんだけど・・・

 

「今日が三学期が始まって1週間・・・せっかくの日曜日・・・これからだって時に限って・・・なぜ五月がいない!!!」

 

今日は五月ちゃんが1人で外に出かけちゃってるから、すぐに勉強を始められないんだよね・・・。

 

「ぜひやってください!!そして確かめてください!!って言ってたじゃねぇか!!」

 

五月ちゃんがいない状況に風太郎君はかなり嘆いてる。それより五月ちゃんのものまねうまかったなー。すごく似てたよ。

 

「まぁまぁ、落ち着いて」

 

「静まって」

 

「カルシウムが足りないんじゃないの?」

 

「うっせぇ!余計なお世話じゃ!」

 

一花ちゃんと三玖ちゃん、六海が落ち着かせても全然苛立ちが収まってないね・・・。カルシウムがないなら毎日牛乳を飲むことをお勧めするよー?

 

「でも本当にどこ行ったんだろう・・・」

 

「ほら、五月はあれよ。今日は・・・"あの日"なのよ」

 

「?あの日・・・?」

 

あ・・・そういえば・・・。だから五月ちゃんは1人で・・・。

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「・・・あ⁉なんだよそのあの日っていうのは⁉ハッキリ言えよ!!」

 

「直球に聞いてきた・・・」

 

「今の空気で堂々と聞いてくる?普通」

 

「ノーデリカシーの名を欲しいがままにしてるね・・・」

 

今の空気明らかにしんみりしてたよね?その空気をぶち壊すように聞いてくるとか・・・風太郎君はなんでそこまでノーデリカシーなんだろう?

 

「あの・・・なんというか・・・非常に言いづらいのですが・・・」

 

なんだよ?あの日とやらは試験をすっぽかすほどに大切なことなんだろうな?もしそうじゃねぇなら許さねぇぞ・・・

 

「ううっ・・・それ・・・は・・・」

 

風太郎君からものすごい圧をかけられて四葉ちゃんはさらに言いよどんでる・・・。怖い・・・怖すぎるんだけど・・・。

 

「お・・・女の子に・・・」

 

「いや、普通に母親の命日」

 

四葉ちゃんが言いかける前に二乃ちゃんが今日が何の日かを風太郎君に教えた。四葉ちゃん、いったい何を言おうとしたの?というより、そんなに隠すようなことかな?言いづらいのはわかるけども・・・。

 

「・・・そうなんだ・・・。じゃあみんな、席について。授業を始めましょうね」

 

事情を聞いた風太郎君はさっきのをなかったことにするかのように六海たちの勉強を・・・

 

「・・・って!!そんなわけあるかぁ!!」

 

なんてことはなく、話を戻してきたよ。

 

「俺は騙されねーぞ!だいたいお前らだって母親は同じ・・・はっ!!」

 

風太郎君は最後まで言い切る前に、何か考える動作をした。

 

「・・・すまん・・・。お前らも事情があったんだな・・・。俺が悪かった・・・。とりあえず、先に勉強を始めるか・・・」

 

あれ?なんで六海たちを哀れむような顔になってるの?

 

「なんかいらぬ深読みしてない?」

 

何を考えたのかは知らないけど、風太郎君の思ってることとは全然違うからね。

 

「ていうか今日、ママの命日じゃないよ?」

 

「え?どういうことだ?」

 

「あはは・・・正確には8月14日が命日なんですよ」

 

「あー、何だ。月命日ってやつか・・・。俺はてっきり、別々の母親がいるのかと・・・」

 

「フータロー君は私たちを何だと思ってるの?」

 

風太郎君の変な解釈は置いといて・・・つまりはそういうことなんだよね。

 

「とにかく、あの子は律儀に毎月14日に墓参りに行ってるのよ」

 

「近くだから、フータローも今度お線香をあげてよ。お母さん、喜ぶと思う」

 

「律儀ねぇ・・・」

 

五月ちゃんがママが大好きなのはわかるけど・・・本当に律儀ってだけなのかな?五月ちゃんは・・・今でもママの代わりになろうとしてるんじゃないの?五月ちゃんは姉妹で1番好きだけど・・・六海は五月ちゃんのそういうところだけは本当に嫌いだな。五月ちゃんには悪いけど・・・五月ちゃんがママの代わりになれるわけないのに・・・。六海は・・・ありのままの五月ちゃんでいてほしいと思ってるんだけどなぁ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから2週間くらいたって、1月29日。今日は六海1人で本屋さんでお買い物。といってもいつもみたいに漫画とかを買うためじゃないよ。今日の目的は試験範囲をカバーするために必要な教材を買うこと!今は漫画のことは考えないようにしてる。あくまでそれは、試験が終わってから!それくらいの区別はできるようになったんだよ?・・・そういえば三玖ちゃん、うまくやってるかなぁ?と、それより資料っと・・・。

 

「えーっと、必要な教材はこれで全部かな?」

 

六海はテスト範囲のプリントと、本の中身を少し確認してみる。・・・うん。テストに出そうな範囲が全部載ってる。これで全部だね。じゃあ早く会計して学校に戻らなくちゃ・・・と思った時・・・。

 

「!!?こ、これは!!?今では幻と言われている伝説の恋愛漫画、同じ屋根の下で君は、だ!!まさかこんなところでお目にかかれるなんて!!」

 

この漫画は六海も欲しいと思ってる漫画なんだけど、かなり古い漫画だから今じゃどこを探しても見つからないどころか、その姿さえ見ることも叶わなかった代物・・・!ほ、欲しい・・・!けど・・・今は試験期間中!漫画に手を出してる暇はない!!ああ・・・でも・・・このチャンスを逃したら二度と巡り合えないかも・・・!

 

「・・・か、買うだけなら・・・いいよね?」

 

これは試験が終わったご褒美・・・今は買うだけでいい!せめてこの漫画を・・・六海のものに!!そう思って幻の漫画に手を触れようとした時、他の人と手が重なってしまった。

 

「ふぇっ⁉」

 

「おっとっとー、君もこれを狙ってるのかなー?」

 

う、うかつだったよ・・・!これを欲しがる人は六海だけじゃないということを忘れてたよ・・・!六海は警戒してさっき手を重ねた人の姿を・・・て、へっ!!?こ、この人は・・・⁉

 

「み・・・MIHO先生⁉」

 

「おー、誰かと思えば、六海ちゃんじゃない」

 

この人はMIHO先生。これはペンネームであって、本名は別にあるらしいんだけど・・・ペンネームが気に入ってるのかそう呼んでほしいって言われてるよ。

 

「お、お久しぶりです!!こ、こんなところでお会いできるなんて・・・!!」

 

「あっはははー、まぁ落ちつきたまえ」

 

六海はこのMIHO先生にとっても頭が上がらない。なにせこの人はとっても偉大な漫画家であり、六海の大好きな漫画、魔法少女マジカルナナカちゃんの原作者であり、六海の恩人であり、そして・・・六海が漫画家を目指すきっかけをくれた人でもあるから。

 

「てかマジで久しぶりだねー。君が中二の時以来だったから・・・4年ぶりかぁ。元気にしてたかなー?髪型とか口調とか変わってるけど、もしかしてイメチェン?いやー、似合ってるよー、本当」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

この人の饒舌っぷりは変わってないなぁ。少し安心したよ。

 

「と、ところで先生はなぜここに?お仕事の方は・・・?」

 

先生の主な活動場所は東京だからここにいること事態がとっても珍しいんだ。

 

「今日はお休みだよ。せっかくの休日なんで地元でぶーらぶらしてから、姉さんに顔を見せに行こうと思ってね。だから帰ってきたってわけ」

 

なるほど・・・里帰りってやつなのか・・・。納得したよ・・・。

 

「それはそうと、それ、六海ちゃんもほしいわけ?」

 

「あ・・・い、いえ、これは・・・」

 

ど、どうしよう・・・ぶっちゃけていえば欲しい・・・!でも先生もこれを狙っていたわけだし・・・しかもこれ、最後の1冊だし・・・。

 

「じゃあ、いいよ。六海ちゃんにプレゼントしよう!」

 

え・・・!そ、そんな・・・先生からこれをいただくなんて・・・。

 

「い、いえいえ!悪いですよ!やはりここは、先生が・・・」

 

「いいのいいの。アタシがそうしたいんだからさ。再会記念にってことで」

 

「ですが・・・これは貴重な・・・」

 

「だからこそだよ。見つけるのは難しいけどさ、たった1冊の本で君の悲しむ顔は見たくないしさ」

 

先生・・・六海のことを気を使って・・・しかも、迷いのない笑顔で・・・。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

六海は本当にこの人に感謝してもしきれない・・・。何か恩を返す事ってできないのかな?

 

「その代わりといっちゃなんだけど・・・この後ご飯でも食べに行かない?いろいろ話、聞きたいしさ」

 

「ご飯・・・ですか?そういうことなら喜んで!」

 

幻の漫画1冊の交換条件が六海と一緒にご飯なんて安いものだし、先生のお誘いは断れないからね。それに、ちょうどお腹減ってたしね。

 

「よーし、決まりだね。じゃあちゃちゃっと会計しちゃおっか」

 

六海と先生は本の会計を済ませてから本屋さんを後にしようする。この会計の際、ちゃっかり教材まで買ってもらって・・・なんだか申し訳ない気分だよ・・・。

 

「ま、まさか本当にエッチな本とか⁉️」

 

「お、おい!」

 

んんん?今なんか一花ちゃんと風太郎君の声が聞こえてきたんだけど・・・エッチな本って・・・まさか・・・

 

「ん?エッチ?今エッチな本って誰か言ったかな?」

 

「な、何でもないですよ!さあさ、行きましょう!!」

 

て・・・危ない危ない・・・近くに先生がいるんだった・・・。先生はエッチなことに敏感なんだよね。軽蔑的な意味じゃなくて、好奇心的な意味で・・・。おかげで話題をそらすのが大変だよ・・・。・・・後で一花ちゃんと風太郎君に確認してみよう・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

本屋さんから出た後は先生がオススメのラーメン屋さんで食事をすることになったよ。懐かしいなぁ・・・このラーメン屋さん・・・。中学の時、よく食べてたっけ。

 

「ん~・・・この匂い・・・相変わらずだなぁ・・・。六海ちゃんもよくここで食べてたでしょ?」

 

「は、はい。と言っても・・・もうここに来ることはないって、思ってたんですけどね・・・」

 

「そうなんだ。だったら久しぶりの味を心行くまで堪能しなさいな。あ、おっちゃん!ラーメンを2つね」

 

先生はおじちゃんに注文を入れた後、コップの水を一口飲んだ。

 

「いやー、しっかし、本当に変わったよねー。散髪に、口調に、おまけにそのメガネと来た。前とは比べ物にならないくらいの変化だよね」

 

「そ、そうですか・・・?」

 

「だって君、あの頃は結構荒れてたじゃーん♪」

 

先生の発言はかなり飄々としているものの、どこか的を射ぬいたようなものを感じる。

 

「そうでしょ?黒薔薇史上初の不良にして、誰からも恐れられていた・・・凶鳥六海ちゃん?」

 

凶鳥・・・そのあだ名は六海が中一から中二まで呼ばれていたもので・・・六海にとって最も忌むべき存在であり、六海の過去から1番消し去りたい黒歴史・・・。

 

「あはは・・・お恥ずかしい限りです・・・。あの時はお見苦しいものをお見せして、すみません・・・」

 

「いやいや、あの頃の君も、やんちゃでかわいかったよ~?あの時の罵声も、癖になりそうだったしね。あっち行けーとか、しゃべんなーとか、殺すぞーみたいなあれ・・・快感みたいなのに目覚めそうだったよ」

 

「や、やめてください!!!」

 

いやーー!!本っ当に恥ずかしいから!!こんなところで六海の黒歴史暴露しないでぇ!!

 

「いやー、ごめんごめん。つい、ね?」

 

「つい、じゃないですよぅ・・・」

 

「でもここでなら別にいいでしょ?ここって、君の過去を気にしない人たちが集まってるしね」

 

「それは・・・どうですけど・・・」

 

六海にとってはそういう問題じゃないんだよね・・・。さっき先生が言った六海の発言でわかるとおり、凶鳥時代の六海は今みたいな性格じゃなくて、もっと荒っぽい感じで・・・年上相手に反抗は当たり前、敬語は使わずため口、気に入らなければすぐ舌打ちしたりともうダメダメ揃いの性格だったんだよ・・・。

 

姿の方はというと、髪はストレートロングで当時はメガネはかけてなかった代わりに黒のカチューシャをしてたんだよ。それはいいんだけど制服は正しく着てないし、不良さんみたいなマスクをつけてたりしてたからこれもあんまり思い出したくないんだよね・・・。

 

・・・前に一花ちゃんが風太郎君に見せた写真に写っていたのは、その時の六海の姿だよ。

 

「・・・ま、まぁそれはいいです!先生が元気そうにしてて安心しました!」

 

六海はこれ以上凶鳥の話をされたくなかったから無理やりにでも話を切り替える。

 

「お?何々~?アタシのこと、心配しててくれた?」

 

「そりゃ・・・しますよ。だって、ナナカちゃんと先生のファンですし・・・先生は、六海に絵を教えてくれた人でもありますから」

 

「あの時の君のド下手くそな絵にはびっくりさせられたよ・・・」

 

実を言うと、昔の六海は絵がそんなにうまいってわけじゃなかったんだよ。今で言うと、四葉ちゃんのあの化け物トラレベルくらいだったと思う。そんな六海の絵の腕を磨かせてくれたのは、他でもない、このMIHO先生なんだよ。でも本人を前にド下手くそって・・・。

 

「で?どうなわけ?あれから絵の腕は上がった?あのド下手な絵よりマシになったかな?」

 

「もう!さっきから下手下手って言わないでください!六海の絵はあの日より、確実に、格段に!!成長していますよ!!今なら先生を超えられるほどに!」

 

さすがに下手下手言われるのはあまりにも許せなかったので六海は思わず対抗心を見せている。しかも、尊敬する漫画家相手に。

 

「お~、言うねぇ~。なら、その成果を、見せてもらおうじゃない?」

 

「いいですよ!見せてあげますよ!六海の努力の結晶を!今!この場で!!描いてみせますよ!!」

 

「どんな絵ができるか楽しみだねぇ」

 

六海は成長ぶりを見せつけるためにかばんからキャンパスと鉛筆を取り出して・・・

 

「へいお待ち!!」

 

「・・・と、その前にラーメン、いただいちゃおっか」

 

「ですね」

 

絵を描こうとしたらおじちゃんの作ったラーメンが届いたから。六海と先生は先にご飯を食べる事にしたよ。う~ん、この匂い・・・懐かしいなぁ・・・。この懐かしさを噛みしめながらまずは麺を一すすり・・・。

 

「ふふ、おいひぃ・・・」

 

久しぶりに食べるこのラーメンの味・・・本当においしい。この一杯のために生きてるっていうこと大袈裟に言ってたのを思い出すよ・・・。変わらないなぁ・・・この味・・・。六海と先生は昔を懐かしみながら、他愛ない話すで盛り上がったよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ラーメンを食べた後はお店の絵を描いたよ。六海の描いた絵を見せた時の先生のビックリした顔はしてやったぜみたいな気分で気持ちよかったよ。そして、先生とお別れの時はやってきたよ。

 

「今日はありがとうございました!ラーメン、ごちそうさまでした!」

 

「いやいや、こっちも久しぶりに六海ちゃんに会えて嬉しかったよー」

 

先生は本当にうれしそうな顔で六海の頭をなでてくれた。この人まで六海のことを子ども扱いする・・・。先生は一応大人だけどね・・・。

 

「しっかし、あの六海ちゃんの絵が、ねぇ・・・?あまりの上達っぷり・・・しかも独学と来たもんだから驚きだよ」

 

「まぁ、その辺もいろいろありまして・・・」

 

絵に関心を持つようになってから、いろいろなことがあって・・・最終的には自分で腕を磨くことになったんだよね。これもあんまり思い出したくはないけどね・・・。

 

「そのいろいろってさ、凶鳥と関係あり?」

 

!!先生・・・どうしてそこまで六海の黒歴史に触れてくるんですか・・・。もう話しすらしたくない内容なのに・・・。

 

「・・・関係ありませんけど・・・同様にいい思い出じゃないので話せません」

 

「・・・そんなに凶鳥は嫌い?」

 

先生は確信をついたようにそんなことを言ってきた。

 

「嫌いですよ。あだ名でも触れられたくありません・・・」

 

「・・・・・・」

 

「あの時の六海は本当に大バカ者でした。ケンカばっかりしてたから・・・みんなからも嫌われて・・・お姉ちゃんたちやパパにも叱られて・・・挙句にはお姉ちゃんを危険に巻き込んでしまって・・・。凶鳥時代は本当に後悔しかなくて・・・無駄な2年間になってしまいました」

 

今になって思えば、六海はなんであんなに荒れてしまったんだろうと常々思えてくるよ・・・。何が六海をあんな風に・・・。

 

「なるほど・・・どうやら・・・君は前を向いてる歩いてるように見えて、そうではないみたいだね・・・」

 

「・・・・・・」

 

前を向いて歩いてはいない・・・か・・・ある意味そうなのかもしれないね・・・。

 

「と、ごめんね?ただ君が心配だったから、どうしても確かめてみたかったんだ」

 

「いえ・・・そんな・・・」

 

「・・・1ついいことを教えてあげるよ」

 

?いいこと?それは、いったい・・・?

 

「アタシ達創作者にとって1番必要となるのはね、イマジネーション。別の言い方をすれば着想・・・つまりは想像力。その想像力が何を糧にしているか知っているかな?」

 

「???」

 

「それはね、自身が蓄えてきた記憶や自身が経験してきた実体験だよ。その記憶や体験を元によって、その先の未来を想像したり、現実とは違う、新たな物語を作り上げることができるんだよ。アタシの言ってることの意味、わかる?」

 

「い、いえ・・・」

 

「つまりはね・・・人生において、無駄なことなんて何1つとしてないってこと。辛いことも、嫌なことも全部、ね」

 

人生で・・・無駄なことなんて・・・ない・・・。

 

「そりゃ凶鳥は君にとって嫌な思い出だってのは知っているよ?けどね、アタシは誰よりも君の才能を見出したんだ。君が漫画家を目指すと言った時から、ね?」

 

「先生・・・」

 

「だからアタシは君を誰よりも応援するし、自分のトラウマに負けないでほしいんだ。いつかトラウマを克服し、それを糧にして、最高の漫画を描いてほしいんだ」

 

トラウマ・・・本当の意味で六海の黒歴史を乗り越えた・・・最高の漫画・・・。そんなの・・・今でも凶鳥であった自分を捨てたい六海には無理だよ・・・。

 

「ま、とはいえ、こればっかりは本人の気持ちの問題だしね。これ以上アタシがとやかく言うのは、筋違いよね。でもさ、これだけは覚えておいてよ。凶鳥の本当の姿を知っている人は必ずいるってね」

 

凶鳥の本当の・・・姿・・・。そんなの・・・

 

「これがどう言う意味かは自分で考えなよ?じゃないと君のためになんないんだからさ」

 

「・・・はい」

 

「じゃあこれは、次に会うまでの宿題にしようか。ちゃんと考えるんだぞ?」

 

次に会うまでの宿題、かぁ・・・。難易度が高すぎるよ・・・。でも、他ならない先生の課題だし・・・触れたくはなかったけど・・・ちゃんと考えないとね・・・。

 

「じゃ、アタシは姉さんに会いに行くよ。六海ちゃん、マルオパイセンにもよろしく伝えといてねー」

 

「は、はい!ありがとうございました!」

 

先生は笑いながら手を振って六海と別れた。・・・凶鳥の本当の姿、かぁ・・・。本人でもわかってないのに、どうやってそれを理解できるかなぁ・・・。

 

・・・と、それは今はいい!今は試験勉強の方に集中しなくちゃ!先生の課題は後回し!そんな思いで六海は風太郎君主催の勉強会へと戻っていく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

先生の再会から5日後・・・日つけは2月3日の土曜日。試験開始まで後1か月になったよ。今日も風太郎君の授業を受けてはいるん・・・だけども・・・

 

「試験まで残り1か月を切った。いいかよく聞け」

 

風太郎君がこうして六海たちの赤点回避のために勉強を教えてくれるって言うのはもちろんプラスになるんだけども・・・

 

「・・・ということでここで重要となってくるのは作者の気持ちを答えるというより、読者のお前らが感じたことを書くわけでって・・・。・・・・・・あー・・・お前ら、大丈夫か?」

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」どよ~ん・・・

 

なんていうかね・・・完っ全に行き詰まっちゃった!!実を言うと、いつかこうなるんじゃないかと常々思っているわけなんだけど・・・いくら家庭教師といっても風太郎君も六海たちと同じ学生の身分。教師としてのノウハウは当然ながらにないわけで・・・わからない部分を補うことができないんだよね。というよりかは・・・

 

「えーっと、私が感じたことってなんだろう・・・」

 

自分たちでも、何がわからないのかわからない!そのせいで風太郎君が六海たちにどう教えてほしいのかもわからない!これじゃあちっとも勉強が進まないよー・・・。

 

「くっ・・・これぞ、万事休すって奴か・・・!」

 

「よくわからないけど失礼なこと言われてる気がするわ」

 

「どうせ六海たちと自分の頭の良さのどうこうとか考えてるんじゃない?」

 

「なぜわかった⁉」

 

「張っ倒すわよ!!」

 

やっぱり失礼なこと考えてた!!こういう時って風太郎君顔に表れるんだもん!!いや、事実なんだけども!!ものすっごい腹立つー!!

 

「うーん・・・というか、問題を解く以前に・・・」

 

「みんな・・・集中力の限界・・・」

 

「連日勉強漬けですからね・・・」

 

「わ、私はまだやれるよ!」

 

「そうは言っても、これは個人じゃなくて全員の問題だよ・・・」

 

「で、でも・・・」

 

四葉ちゃんがやる気なのはいいけど・・・六海を含めてみんなやっぱり集中力が切れちゃってるね・・・。

 

「むむむ・・・成果は出ているがあと一押しは欲しいところだ・・・。何かいい打開策は・・・」

 

風太郎君は何か策を講じようと何かの本を読みだした。

 

「・・・時には飴も必要か・・・」

 

何か案を閃いたのか風太郎君は本を閉じて人差し指を指した。え?何々?

 

「「「「「「?」」」」」」

 

「決して余裕があるわけではないが・・・明日は1日だけオフにしよう」

 

風太郎君から持ち出された提案は・・・1日だけ勉強を忘れて、どこかに遊びに行こうっていう提案だった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日の2月4日、今日は1日休みということで、六海たちは風太郎君に連れられてある場所に電車で向かってるよ。なんかもう・・・六海の胸はさっきからドキドキしてるよ・・・!だって・・・これって・・・

 

「ふふ、休日デートにここを選ぶなんて、フータロー君も下手だねえ」

 

「デート・・・!」

 

完璧にデートだよね・・・!今回は風太郎君として、デートができるだなんて・・・!まぁ、お姉ちゃんたちも一緒って言うのは納得できないけど・・・それでも十分にうれしい!

 

「他に行きたいところがあったら言えよ?それくらいの希望は叶えてやる」

 

「いえ、私たちも久方ぶりなので、楽しみです」

 

「ふふ、ママに連れてってもらった以来かしらね」

 

六海は風太郎君が選んだ場所ならどこでも楽しいと思うけど・・・それ以上の楽しみが沸き上がってくる場所だよ!でも・・・こうもあれだと、後からが怖いな・・・。

 

「・・・・・・」

 

「ね、本当にいいの⁉楽しんできてもいいの⁉」

 

「ああ。今日だけは勉強を忘れることを許そう。思う存分羽を伸ばせ」

 

風太郎君に連れていってもらった場所は夢の国といいても過言じゃない・・・遊園地!六海たちは風太郎君と一緒に遊園地を満喫するために、その入口へと入っていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

遊園地の中へと入って、六海たちは思う存分アトラクションを楽しんだよ。一花ちゃんと五月ちゃんがジェットコースターに乗ったりしたり、風太郎君と二乃ちゃんがお化け屋敷に入ったり、六海と三玖ちゃんと四葉ちゃんでメリーゴーランドに乗ったりして、日ごろの勉強の息抜きを満喫しているよ。

 

「次はあれに乗りましょう!絶対に楽しいですよ!」

 

「五月ちゃん・・・ちょっと待ってぇ・・・絶叫系連続はきついってぇ・・・」

 

ははは、五月ちゃんってばすっかり絶叫マシーンの虜になっちゃってるねぇ。最近で1番いい笑顔を見せてくれて、六海もうれしいよ。そして連れられてる一花ちゃん、ご愁傷様・・・。

 

「1番真面目なあいつがはしゃいでやがる・・・」

 

「というよりこっちが素だと思うわ」

 

「言えてる」

 

「そんなことより六海たちも早く行こうよー」

 

「あー、わかったわかった」

 

六海たちも五月ちゃんに負けないくらいに楽しみたいからせっせと次に乗るアトラクションに向かおうとみんなを急かしたよ。

 

「・・・あれ?四葉はどこ行ったのかしら?」

 

え?四葉ちゃん?そういえば四葉ちゃんの姿が見えないなぁ・・・。

 

「今度こそ迷子だったりしてな」

 

「あながち否定できないから困るなぁ・・・」

 

「どうせまたトイレでしょ?そう思うのも仕方ないけど」

 

おトイレ行くのはいいけど、こっちに戻る時に迷子にならないといいけど・・・大丈夫だよね?

 

「四葉ならお腹痛いからトイレだって。メールが来てる」

 

「なぜ直接言わない」

 

本当におトイレだったんだ・・・。・・・ちゃんと戻ってこれるよね?

 

「・・・!・・・じゃあ、俺も便所に行ってくる」

 

「あっそ。先行ってるわよ」

 

「おう」

 

あらら、今度は風太郎君がおトイレに行っちゃった。まぁ、それなら四葉ちゃんと合流できるかもしれないから迷子にならずに済むのかな?・・・て、なんか二乃ちゃんが風太郎君をじっと見つめてる・・・。まさか・・・本当に・・・?いやいや、そんなはずは・・・でも・・・

 

・・・じと~・・・

 

「・・・!な、何よあんたたち・・・」

 

「別に」

 

「な~んでもな~い」

 

と、いけないいけない・・・つい二乃ちゃんを凝視しちゃった・・・。今はそういうことを忘れて、今は遊園地を楽しもうっと。

 

その後はおトイレに行っていた四葉ちゃんと風太郎君が戻ってきて、最後に7人で楽しめるアトラクションで休日の幕を閉じたよ。楽しかったなぁ・・・。また7人でどこかに遊びに行きたいなぁ・・・。そのためにも、明日から試験勉強頑張らないと・・・!

 

♡♡♡♡♡♡

 

次の日の2月4日、今日は風太郎君が六海たちに大事な話あるということで、六海たちはすぐに自分たちの家に戻って待機してるよ。風太郎君からの話っていったい何だろう・・・?まぁ、十中八九試験勉強のことだろうけど。

 

「よーし、集まってるな」

 

ようやく風太郎君がうちにやってきて、自信満々な顔を六海たちに向けてきた。何かいい打開策でも思いついたのかな?

 

「いいか?これからは・・・全員が家庭教師だ!!」

 

・・・・・・うん?全員が家庭教師?どういうこと?家庭教師は風太郎君でしょ?全員ってどういう意味?

 

「・・・どういうこと?」

 

「前々からお前たち姉妹には自分の得意科目が各々あるというのは気づいている。そしてその自分の得意科目を他の姉妹たちに教えてやってくれ」

 

自分の得意科目を教える・・・?それってつまり・・・六海の場合は得意科目である地理の問題をお姉ちゃんたちに教えるってこと?

 

「これなら十分な効果は望めるだろう。当然俺もできる限りサポートするが、俺がいない時もお互いに高めあってくれ!そうして全員の学力を1科目ずつ上げてくれ!」

 

なるほど・・・六海の苦手なところは他のお姉ちゃんが教えてくれて、お姉ちゃんが苦手な科目は六海がってことか。これが・・・全員家庭教師作戦・・・。

 

「じゃあ!さっそく始めるぞ!」

 

風太郎君の合図で今日の授業が始まった。さっそく六海も問題に取り組もう。早いところ苦手なところ克服したいし・・・。

 

「六海ー、地理でちょっとわからないところが・・・」

 

「あ、うん。今行くー」

 

ちょうど一花ちゃんが地理でわからないところがあったみたいでさっそく六海を頼ってくれてる。

 

「どこがわからないの?」

 

「えーっと、ここ、なんだけど・・・」

 

「ああ、そこか。難しそうに見えるけど実際は簡単だよ。まず、その地域の・・・」

 

一花ちゃんが苦戦している問題を六海は自分が感じたことをわかりやすく一花ちゃんに説明をしてあげてるよ。

 

「・・・で、そこから導き出せること答えは・・・」

 

「!そっか。そういうことか。いやぁ、助かったよ六海。すごくわかりやすかった。ありがとうね」

 

!ありがとう・・・ありがとうか・・・。心にこもったその言葉を聞くだけで、六海の胸は、ぽかぽかしてる・・・。そうだ・・・六海は・・・最初は、その言葉が聞きたくて・・・。

 

・・・って!今はそんなことはどうでもいいよ・・・。今はそんなことより勉強!この調子で他のお姉ちゃんのわからない箇所を教えてあげるぞー!・・・あ、もちろん、六海のわからないところは風太郎君か他のお姉ちゃんたちに教えてもらうけどね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

全員家庭教師案から6日が経って2月11日。今日はクラスの日直だったから少し帰りが遅くなってるよ。後はこの次の日直の人の名前を書いて・・・日直の仕事完了!さ、早く家に戻らなくちゃ!そう思って外に出ると、風太郎君と出くわしちゃった。

 

「あ、風太郎君」

 

「よう。お前も日直だったか」

 

どうやら風太郎君も日直だったらしくて帰りが遅くなったみたい。

 

「今日もうちに来るでしょ?一緒に帰ろうよ」

 

「ああ。今日もみっちりと勉強を教えてやるぜ」

 

試験も後3周間まで迫ってきたからね。1問でも多く解けるようにならないと。・・・そういえば・・・こうして風太郎君と2人で一緒に帰るの、初めてかも・・・。

 

「で?あれからどうなんだ?」

 

「どうって?」

 

「とぼけんな。全員家庭教師案についてだ。俺がいなくてもちゃんとできてんだろうな?」

 

「ああ、それか・・・」

 

風太郎君が持ち出した全員家庭教師案は結論から言わせてもらうと、もう絶好調って感じだよ。

 

「うまくできてるよ。正直に言うと、風太郎君に教えてもらうより、わかりやすいところも多くあったよ。もしかしたら、風太郎君の案は大成功するかもしれないよ」

 

「最後まで油断すんなよ。赤点回避できるどうかは、お前ら次第なんだからな?」

 

「わかってるってー」

 

風太郎君ってば、心配しちゃって・・・。でも、風太郎君が心配する気持ちはわかるかも。まだ始まったばかりだし、まだなんとも言え・・・

 

「助けてーーー!!!」

 

「「⁉️」」

 

な、何?今の声?今、助けを求めていたような・・・。何だか嫌な予感がする・・・。

 

「何だ?今のは・・・」

 

「風太郎君、ちょっと待ってて!様子見てくる!」

 

「お、おい六海!!」

 

嫌な予感がして六海はすぐに声が聞こえてきた路地裏に向かって、隠れてその奥を確認する。そこで六海が見たのは、他校の男の子が複数人の不良さんに絡まれてる。嫌な予感的中・・・当たってほしくなかった・・・。

 

「大声あげんじゃねぇ・・・よ!!」

 

ドゴッ!

 

「ぐあ!」

 

ああ!男の子が蹴られた・・・て、あいつら・・・よく見たら凶鳥の時代に六海がボコボコにしてやった不良さんじゃん。まだあんなことしてたなんて・・・!

 

「俺らに迷惑かけられる立ち場か?あぁん?」

 

「お前みたいな無能はな、黙って言うことを聞いてりゃいいんだよ」

 

「う・・・うぅ・・・」

 

どうしよう・・・このままじゃあの男の子がやられちゃう・・・でも・・・あの時と比べて体力はガタ落ち、それ以前に六海は暴力沙汰なんかやらないって心から深く誓ったんだ・・・。今更・・・

 

「なんだその目は?まだお仕置きが足りねぇってか?」

 

・・・だからって、こんなのを見て、黙って見過ごすわけにはいかない!幸い、あいつらが苦手としてることを思い出した。これなら、喧嘩しなくても・・・!六海はすぐにそれを実践する。

 

「おまわりさーーん!!!あいつらです!!あいつらがあの子にひどいことをーーー!!」

 

六海は大声を上げて、おまわりさんを呼ぶふりをする。

 

「げっ!!誰かに見られやがった!」

 

「くそっ!察の世話になってたまるか!」

 

「どけおら!!」

 

「うあ・・・」

 

おまわりさんに見つかるのを恐れたあいつらは一目散に逃げていった。たいていの不良さんはおまわりさんは苦手だからね。と、それより男の子・・・。

 

「大丈夫?もう安心だからね」

 

「あ・・・ありがとうございます」

 

怪我は軽く済んでるようでよかったよ・・・。

 

「またあいつらに絡まれたら、さっきみたいに助けを呼んで。誰かがきっと、助けに来てくれるよ」

 

「は、はい」

 

よし・・・。あいつらもどっか行ったし、六海も早く風太郎君と合流・・・

 

「なんだか、あなたを見ていると、凶鳥さんを思い出します」

 

!!凶鳥・・・ここでもその名前が出てくるなんて・・・

 

「ああ!すみません!で、でも・・・その・・・きょ、凶鳥さんは、悪い人ではないですよ・・・?」

 

凶鳥が・・・悪い人じゃない・・・?

 

「どうして?」

 

「実は・・・僕は以前、あの人に助けてもらったことがあったんです」

 

え・・・?六海が・・・この子を・・・?って、よーくじっくり見てみたら、確かに1度だけ見たことのある顔だ・・・。気が付かなかったよ・・・。

 

「あの人は、さっきみたいな人に絡まれた時、突然現れて、僕を守ってくれたんです。巻き込まれたくなかったら逃げろって・・・」

 

そういえば、そんなことを言ったような気が・・・。

 

「噂じゃけんかばかりやってたみたいですし、世間から嫌われていたみたいですが・・・僕は知ってます。あの人の優しさ・・・人の思いやる心を持っていることを。だから僕は、あの人を尊敬してます」

 

六海が・・・凶鳥が・・・優しかった・・・?人を思いやる心・・・?・・・ああ、そうだ・・・。六海は最初は、この人みたいな人の助けになりたくて・・・さっきみたいなのから守りたくて・・・そんな思いから、あいつらからこの子たちを守りたくて、喧嘩を始めたんだ・・・。でもそれとは逆に怖がられっぱなしで・・・いつかその思いすら忘れてしまっていたんだ・・・。

 

「あ・・・べらべらとすみません・・・。このご恩は忘れません。機会があればまたお会いしましょう。では、僕はこれで・・・」

 

あの人はペコペコと頭を下げながら六海と別れていった。そっか・・・あの人、六海の顔は覚えてないけど、凶鳥に憧れてたんだ・・・。

 

「凶鳥、なぁ・・・」

 

「おわっ⁉️風太郎君⁉️」

 

び、ビックリしたぁ・・・。六海の後ろにはいつの間にか風太郎君がいた・・・心臓に悪いよ・・・。

 

「い、今の、聞いてた?」

 

「お前が警察を呼ぶフリをしてた辺りからな」

 

それってほぼ最初っからじゃん!だったら手伝ってくれてもいいのに・・・。て、それよりも・・・

 

「凶鳥って・・・風太郎君は知ってるの?」

 

「噂程度だがな」

 

噂って・・・そっか。噂なんて今はばったりと消えてるけど、昔はかなり広まってたし、知ってて当たり前か・・・。

 

「さっきの連中とやり合って、なおかつ後始末も悪いから悪い印象ばかりがついたんだってな。中には病院送りにされた奴もいたか・・・。正直言って迷惑極まりないな」

 

・・・実際間違ってないから困る・・・。そうだよね・・・世間一般じゃ悪い印象しかないよね・・・。風太郎君だって凶鳥のことをよく思ってないし・・・。

 

「・・・だが、俺は凶鳥が悪い奴とは思わない」

 

「え・・・?」

 

今、なんて・・・?風太郎君は凶鳥は悪い奴じゃないって言ってるの?

 

「真鍋から聞いたのを思い出したが、実際に被害にあってるのはあいつらみたいな問題行為をしている奴だけだったらしいな。もし凶鳥があいつらと同類なら、今頃お前が守った奴は・・・最悪自殺、なんてこともあり得る。凶鳥は、そんな奴らに勇気を与えようとしてたんじゃねぇか?」

 

「あ・・・」

 

「まぁ、やり方は確かにアウトだが・・・凶鳥は、案外お人好しなんじゃねぇかって、俺は思うぜ」

 

さっきの男の子や、風太路君は、凶鳥のこと、そう思っていたんだ・・・。凶鳥が優しいやお人好し、か・・・。そんな風に言われたの、初めてかも・・・。もしかして先生は、中にはこんな人もいるってことや、凶鳥は優しかったって思い出してほしかったのかな・・・?

 

「・・・ねぇ、もし・・・もしもだよ?」

 

「ん?」

 

「もしもその凶鳥が・・・六海だって言ったら・・・風太郎君はどう考える?」

 

「は?」

 

・・・・・・え?今六海、何言いだしてるんだろう⁉全然思ってもいないことを口にしたよ⁉わー!!六海のバカバカ!!

 

「お前・・・」

 

ほら・・・絶対風太郎君は嫌な・・・って、なんか今にも笑いをこらえてそうな顔してるんだけど・・・。

 

「くくく・・・お前が・・・凶鳥?・・・ぷはっ・・・ダメだ、やっぱ笑うわ・・・w」

 

「も・・・もー!!こっちは真剣に言ってるのにーー!!」

 

知らないとはいえ、凶鳥本人を目の前にして笑うってどういうこと⁉すごい失礼なんだけど!!

 

「だが、お前が凶鳥だった場合か?・・・別になんも変わんねぇよ」

 

え・・・?

 

「過去に何をやっただとか、自分が凶鳥だとかなんて、俺にはどうだっていい。大事なのは、過去じゃなくて、今をどうするか、だろ?」

 

「今を・・・どうするか・・・」

 

「それに、覚えてる奴も少なからずいるが、凶鳥の噂は今じゃすっかりなくなってる。お前が凶鳥だっていうなら、つまりは・・・そういうことなんだろ?」

 

「!」

 

「間違っちまって後悔することはそりゃあるだろう。だがそれで終わりってわけじゃねぇ。過去を反省して、今を進めりゃいい。お前が、さっきの奴を助けたことのようにな」

 

風太郎君・・・。風太郎君は・・・本当にずるい・・・。ここぞってばかりに、六海のかけてほしいことを言ってくれる・・・。確かに後悔は終わりじゃない・・・間違ったことを正し、今に活かすことだってできる・・・。さっきの警察を呼ぶふりだって、過去の経験がなかったら、絶対思いつかなかった。

 

六海は・・・弱い自分を変えたい・・・。いつまでもこの後悔を抱えたままにするのは、終わりにしたい。

 

「まぁ、あくまでもお前が凶鳥だったら、の話だ。それより早く行こうぜ。あいつらが家庭教師サボってないか見てやらねぇと・・・」

 

「風太郎君!」

 

六海はせっせと元いた道のりに戻ろうとした風太郎君を止める。

 

「六海・・・頑張るよ!詳しくは言えないけど・・・頑張って、弱い六海を克服してみせるよ!だから・・・今の六海を見てて、風太郎君!」

 

六海は風太郎君に向けて、笑顔で決意表明を明かした。

 

「?お、おう・・・?なんだ?なんかいいことでもあったか?」

 

「ふふふ、なんでもなーいよ♪」

 

六海と風太郎君はこの後は寄り道は一切せずにそのまままっすぐアパートに向けて、試験勉強を真剣に取り組んだよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

学期末試験終了後の3月9日。今日はテストが返却される日。

 

六海は、今でも凶鳥のことを引きずったままでいるよ。でも、先生の課題や、風太郎君のおかげで、何となく見えてきたよ。過去は変えられないけど、間違いを正し、未来を変えることはできる。全部は自分の気持ち次第なんだ。凶鳥の全部を否定したら、変えられるものも、変えられないのかもしれない。

 

六海は・・・弱かった自分と克服するんだ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

六海の試験結果

 

国語42点

数学38点

理科32点

歴史48点

地理71点

英語42点

 

総合点271点

 

結果:合格

   たいへんよくできました!

 

27「最後の試験が六海の場合」

 

つづく




次回、三玖、四葉、五月、一花視点

おまけ

MIHO先生の紹介

MIHO

外見は金髪のセミロング、たれ目。

イメージCVは戦姫絶唱シンフォギアの立花響

東京を活動拠点にしている有名漫画家。六海のお気に入りの漫画、魔法少女マジカルナナカの原作者でもある。六海が凶鳥であると知っている数少ない人物。性格はちょっぴりお調子者であるが、それは高校時代からの名残かもしれない。派手さやかわいいものに目がなく、漫画においても取り入れたりしたり、そうでなかったり。MIHOとはペンネームであり、本名は別にあるが、結構気に入ってるらしい。
六海が凶鳥時代から立ち直らせた人物でもあり、漫画家を志すきっかけを作った人物ということもあって、六海からは尊敬な目で見られている。本人はまんざらでもない様子。
また、教師である六つ子たちの母親の元教え子でもあり、1つ年上の姉と共に、よく鉄拳交じりの説教を何度も味わったが、今となってはそれもいい思い出である。

六海のアルバイトはどれがいい?

  • 漫画アシスタント
  • メイド喫茶
  • コンビニの店員
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