六等分の花嫁   作:先導

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攻略開始

『最後の試験が二乃の場合』

 

ありえない・・・ありえないわ・・・!アタシがあいつのことを好きだなんて・・・絶対に認めないわ!

 

変化が起こったのはあのクリスマスイブの時からだったわ。あの1件以来、アタシは上杉を変に意識してしまっているわ。初めはただ、キンタロー君のことを忘れられないだけと思っていたわ。

 

だけれど・・・1月や2月、3月まで経っても、アタシは上杉とキンタロー君と重なってしまう。思い出さないようにしているのに・・・上杉と会うたびに、度々思い出してしまう。

 

それでふと思ってしまったことがある。アタシが好きな人・・・アタシの白馬の王子様は上杉なんじゃないかって。

 

・・・いいえ・・・いいえ!絶っっ対にありえないわ!出会いも最悪だし、上杉に反抗してきたアタシが今頃・・・しかもよりにもよって上杉に恋しただなんて・・・認めてたまるものですか!このままでは頭がパンクしてしまいそうになるわ・・・。

 

アタシはあいつのことをなんとも思ってない。そしてあいつも、アタシのことを、なんとも思ってないわ。

 

だから・・・もうあいつには会わないわ。これ以上、どうにかなってしなわないように。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『伝言』

 

ケーキ屋Revivalで六つ子の姉妹5人と風太郎は返ってきた試験結果を発表しあいながら二乃の到着を待っている。

 

「今のところ一花が1番だね!」

 

「いや~、お姉さん、頑張っちゃったよ」」

 

「本当に・・・お仕事もあるのにすごいです」

 

「だね!六海はてっきり今回も三玖ちゃんが1番だと思ってたからびっくりだよ!」

 

「!」

 

六海の発言で自分が1番を取ってしまい、三玖を蹴落としてしまった結果に一花は罪悪感がふつふつとこみ上げてくる。1番を取ると三玖が決意していたことを唯一知っていたのだから無理もない話だ。

 

「三玖・・・私・・・そんなつもりじゃなくて・・・」

 

1点差で1番を逃してしまった三玖は寂しそうな笑みを一花に向けた。

 

「一花、おめでとう。私もまだまだだね・・・」

 

そんな三玖の顔を見て、一花は何とも言えない気持ちでいっぱいになってしまう。

 

「私たちばかりでなく、あなたは何点だったのですか?教えてくださいよ」

 

「あ!やめろ!見るんじゃない!」

 

五月はテーブルに置いてあった風太郎の成績表を見ようと手を伸ばしたが、一歩手前で踏みとどまった。

 

「はっ!あ、危ないところでした・・・。危うくまた罠にかかって100点満点の自慢にされるところでした・・・」

 

「ちっ・・・無駄に賢くなりやがって・・・」

 

「やっぱ気に入ってたんだね・・・」

 

試験結果の定番ネタを見抜かれたことに風太郎は舌打ちをする。その様子を六海はジト目で見つめている。だがどことなく風太郎は結果を見られなくて安堵しているようにも見える。

 

「みんな、試験突破おめでとう。今日はお祝いだ。上杉君の給料から引いておくから好きなだけ食べるといいよ」

 

「もー、店長ってばご冗談ばっかり。なぁ、春」

 

「え~っと・・・それはどうだろう・・・?」

 

「・・・なんで否定しないんだ?まさか・・・嘘だろ?嘘だよな?嘘だと言ってくれ」

 

「あう~・・・」

 

店長は六つ子の姉妹の試験突破を祝い、風太郎の給料から引いてケーキをごちそうすると宣言する。風太郎は冗談だと思っているようだが、春は何とも言えないような表情をしている。本気でやりかねないのではと思った風太郎は春の肩を揺さぶりながら動揺している。

 

「ありがとうございます!」

 

「ゴチになりまーす!」

 

お店からの奢りと聞いて四葉と六海は笑みを浮かべて礼を述べる。

 

「でも、もう少し待ってください。もう1人来るはずなんです」

 

五月の二乃を待つ発言に春は思い出したかのように口を開く。

 

「あ~・・・その子だったら店長が席を外してた時に先に来て、この紙を置いてまた出ていっちゃった」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「どうしてもっと早く言わなかったんだい春ちゃん」

 

「すみません~、忘れてました~」

 

5人は二乃が置いていった紙を確認をしてみる。その内容は学期末試験の結果だった。

 

「!これ、試験結果だ!」

 

5人は二乃の試験結果をいち早く確認してみる。その間春は風太郎に声をかける。

 

「フータロー君、これ後で伝えておこうと思ったんだけどね、中野さんから伝言を預かったよ」

 

「二乃からか?なんて言ってたんだ?」

 

「えっと~・・・」

 

春は二乃から預かった伝言を風太郎に伝えていく。伝言の内容は・・・

 

『おめでとう。もうあんたは用済みよ』

 

♡♡♡♡♡♡

 

二乃の試験結果

 

国語34点

数学35点

理科40点

歴史46点

地理38点

英語58点

 

総合点290点

 

結果:合格

   たいへんよくできました!

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・・・・や・・・やったーーー!!!」

 

「見事全員赤点回避を成し遂げましたね!」

 

「これで転校の話もなしだね!!」

 

姉妹全員が赤点を回避したことにより、5人は大いに喜んだ。風太郎は二乃の伝言に頭をかいているが、すぐに5人に視線を向き直す。

 

「これも、お前らの頑張りの成果だ。よくやったな。特に三玖、お前は他の姉妹の誰よりも安全圏に入り、教える側に立ってくれた。俺だけじゃどうにもならなかった。助かったぜ」

 

「・・・うん・・・」

 

「・・・・・・」

 

風太郎は三玖の頑張りに礼を述べる。三玖はうれしいのやら悲しいのやら複雑そうな表情をしている。風太郎に褒めてもらえるのはいいが、結局関係は変わらなかったのだから無理もない。その原因を作ってしまった一花は何とも言えない表情になっている。5人に向ける労いの言葉の後、風太郎は店を出ようとする。

 

「あれ?風太郎君、どこ行くの?」

 

「祝賀会は全員強制参加だ。無理にでも二乃を連れて来る」

 

「もうすぐバイトの時間だ。行くなら、これを使って行きなよ」

 

店長は風太郎に鍵を渡し、風太郎はその鍵を受けとる。

 

「!どうも」

 

「少し遅れても大丈夫~。なんとか繋げてみるから~」

 

「悪いな。すぐに戻ってくる」

 

店長と春の気遣いを受け取り、風太郎は二乃を探しに今度こそ店から出ていった。

 

 

夜ごろ、アタシはただ1人、前に住んでいたマンションの前に立っていた。まさかここに1人で戻ってきたなんて思わなかったわ。みんなは今頃、ケーキ屋にいるでしょうね。そんな考えにふけっていると、1台のリムジンが止まった。リムジンから出てきたのは、アタシの待ち人、パパだった。

 

「帰ってきていたか、二乃君」

 

「その君づけ、ムズムズするからやめてって何度も言ってるでしょ」

 

パパはアタシだけじゃなく、姉妹全員に君づけで呼んでる。正直言って、他人行事みたいでむず痒いからやめてほしいと本気で思っているわ。

 

「それはすまなかったね、二乃。できる限り善処しよう」

 

「それは今はいいわ。それより、聞いてるんでしょ?」

 

「ああ。先ほど姉妹全員の試験合格の報告を聞いたところだ。君たちは見事7人で成し遂げてみせたね。おめでとう」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

パパは無表情のままで労いの言葉をかけた。相変わらず感情が読み取りづらいわね・・・。

 

「どうやら、上杉君を認めざるを得ないようだね。明日から上杉君の立ち入り禁止を解除しよう。だから早く家に帰って来るんだ」

 

アタシがここに来たのはこのマンションに帰るためじゃない。パパに今のアタシの気持ちを伝えるために来たのよ。

 

「いいえ、あいつとはもう会わないわ。それと・・・もう少し新しい家にいることにしたわ」

 

「・・・なんだって?」

 

あのアパートで過ごすと聞いたパパは無表情だけど、確かに反応した。パパのことだもの、絶対快よく思ってないわよね。

 

「6人で話し合って決めたことよ。当然、一花だけに負担はかけさせない。アタシも働くわ」

 

「・・・・・・」

 

「自立なんて立派なことしたつもりはない。正しくないのも承知の上よ。でも、あの生活が、アタシたちを変えてくれそうな気がする・・・。少しだけ、前に進めた気がする。今日は、それを伝えたくてきたの」

 

アタシの言いたいことを伝えると、パパはやっぱり無表情のままで口を開いた。

 

「・・・理解できないね。前に進むなんて抽象的な言葉になんの説得力もない。君たちの新しい家とやらも見させてもらったがどうだろうか?僕には逆戻りしてるようにしか見えないね」

 

・・・っ、パパってば、言ってくれるじゃない・・・。確かに昔は結構な貧乏だったのを覚えてるけど・・・

 

「5年前までの生活を忘れたわけではないだろう。もうあんな暮らしは嫌だろう?いい加減わがままを言うのはやめて・・・」

 

キイィィィッ!

 

「⁉️何・・・?」

 

突然アタシたちの目の前に光が発した。

 

「・・・え?」

 

光の出所を見てみると、思わぬ人物がバイクに乗ってやってきた。その人物はアタシが用済みと言ったはずの上杉だった。

 

この時アタシは、目の前にいる上杉が白馬の王子様のようにも錯覚して見えた。

 

「ここにいたか、二乃。帰るぞ」

 

「はあ!!?」

 

上杉は突拍子もないことを言いだした。

 

「な、何よそれ⁉️」

 

「いいから早く言乗れ。もうすぐバイトが始まっちまう。春はいいが、遅れたら店長に何言われるかわかったもんじゃねぇ」

 

「ええ!!?」

 

もうあまりに驚きっぱなしで何が何だか・・・

 

「二乃」

 

「!パパ・・・」

 

「君が行こうとしているのは茨の道のりだ。うまくいくはずがない。今はよくても、後悔する日は必ず訪れるだろう。そうならないように、こっちに来るんだ」

 

・・・っ、アタシはもう上杉に会わないって決めてたのに・・・。だけど・・・アタシは茨の道だろうと険しい道だろうと、自分で決めた道に進むって決めたんだ。例え抽象的であろうと、アタシの意見は変えるつもりはない。

 

「・・・パパ、これからのアタシ達を見てて!」

 

アタシは上杉の乗っているバイクの後ろ座席へ乗り込む。

 

「上杉、行って!」

 

「・・・え、えーっと・・・お父さん・・・」

 

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

 

「えと・・・あの・・・娘さんをいただいていきます・・・」

 

上杉はパパに何か言った後にアタシを乗せたバイクを運転して、その場を去っていく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『喜び?怒り?』

 

風太郎と二乃がバイクで去っていく姿をマルオはじっと見つめている。

 

「・・・江端」

 

「はい」

 

「喜ばしいことに娘たちが全員試験を突破したらしい。僕は・・・笑えているだろうか・・・」

 

「もちろんでございます、旦那様」

 

「・・・そうか・・・父親だからね・・・当然だよ・・・

 

マルオのこの時の表情は、笑みは浮かべているが、目は笑っていなかった。いや、むしろ怒気を含んでいるといった方が正しいだろう。

 

♡♡♡♡♡♡

 

パパと別れた後、上杉はアタシを連れて多分ケーキ屋を向かっていってると思う。それよりも気になることがある・・・

 

「あんたはもう用済みって伝えたはずなんだけど」

 

そう言ったはずなのにこいつはアタシの前に現れた。本当、どうしてきたのかしら・・・

 

「ああ。ちゃんと聞いたぞ。だが、面倒くさいことに人間関係ってのは、片側の意見だけじゃ話は進まないということだ」

 

「はあ?何それ?」

 

それってアタシの意見は通らないってことじゃない。本当に面倒くさいわね・・・。

 

「っていうかこのバイク・・・」

 

「ああ、店長に借りた」

 

「はあ?あんた免許は?」

 

「言っただろ?前に出前のバイトをしてたって。その時に無理して免許を取ったんだよ」

 

「ふーん・・・ビックリするほどに似合わないわね」

 

本当、ビックリするほどに・・・。

 

「もう知ってるかもしれないが他の5人も試験合格だ」

 

「え?試験が何⁉風で聞こえないわ!」

 

試験って単語は聞こえたけど、その後は風でよく聞き取れなかった。それでふと、上杉のポケットに何かの紙があった。あれが試験の紙かしら?

 

「これのこと?」

 

「あ!やめろ!見るんじゃねぇ!」

 

アタシは上杉の成績表を開いて、試験結果を見る。

 

♡♡♡♡♡♡

 

風太郎の試験結果

 

国語91点

数学97点

理科96点

歴史91点

地理95点

英語93点

 

総合得点563点

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・っ。あんた・・・」

 

アタシは上杉の成績表を見て驚いた。いつもいつも100点満点を取っていたはずの上杉が全教科の成績を落とすなんて・・・。

 

「一生の不覚だ。マジで恥ずい」

 

上杉が成績を落とした原因って言わずとも・・・

 

「アタシ達のせい・・・?」

 

「ちげぇよ。お前らが気にすることじゃねぇよ。そんなことより、飛ばすぞ。しっかり掴まってろ」

 

・・・本当、強がっちゃって・・・。でも・・・なんだか上杉の背中が、やけに温かく感じるわね。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

これ以上の会話が続かないわね。アタシはこいつを用済みって言ったけど・・・なんだかんだ言って、これまでの関係が終わるのはやっぱり、寂しいものね・・・。

 

「・・・寂しくなるな」

 

「・・・!」

 

この男は・・・本当に・・・ここぞって時に・・・

 

「・・・ていうか、なんで私だけノーヘルなのよ!おかしいでしょ!」

 

「だってお前が行けっていうから・・・」

 

「危ないでしょ!バイクの死亡率を知らないの⁉」

 

「つーかヘルメットはこれ1つしかねーわ」

 

「はあ⁉何で1つしかないのよ⁉あんたのをよこしなさいよ!」

 

「わかった!わかったっての!とりあえず止めるとこを探すからそれまで暴れんな!!我慢しろ!!」

 

「・・・全く・・・嫌になるわ・・・あんたはいつだってそうだわ・・・」

 

「・・・・・・」

 

本当、こいつはいつだってそう。アタシの気も知らないで・・・。自分勝手で・・・身勝手で・・・ノーデリカシー男・・・

 

「ほんと、最低。最悪。後は・・・そうね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きよ」

 

 

 

 

 

 

 

アタシの・・・愛しい人・・・白馬の、王子様。

 

♡♡♡♡♡♡

 

・・・や、やっと・・・みんながいるケーキ屋についたみたいね・・・。け、けど・・・

 

「上杉さーん、二乃を連れてきてくれたんですねー。ありがとうございますー。さ、こっちですよこっちー」

 

「おう。今行くぞー」

 

・・・言っちゃった・・・言っちゃった・・・!こいつが好きだなんて・・・いったいどうしちゃったのよアタシ⁉初めての告白なのに・・・!何で突然言っちゃったのかしら・・・!あー!どうしようかしら・・・!・・・っと、いうより・・・

 

「なんだ、まだ注文してなかったのか」

 

アタシが告白したっていうのに、なんでこいつこんな無反応なのよ!!?あー、もどっかしい・・・もどかしいにもほどがある!このアタシの告白になんの反応もしないなんて・・・!声をかけてみようかしら・・・。

 

「ね・・・ねぇ・・・さっきの話だけど・・・」

 

「ん?」

 

「上杉君!間に合ってよかった!」

 

「あ、店長」

 

アタシが声をかけようとしたらこの店の店長が出てきたわ。

 

「早いところキッチンに入ってくれないか?春ちゃんだけじゃとてもじゃないけど対処できそうにない」

 

「わかりました。あ、後、バイクありがとうございました」

 

「あ・・・」

 

上杉は店長に呼ばれてキッチンの方へ入っていった・・・。話があったのに・・・。

 

「おーい、二乃ちゃーん、早く早くー」

 

他の姉妹はアタシをずっと待っている様子だわ・・・。

 

「・・・ふん、まあいいわ。後で話すことにするわ」

 

とりあえず今は姉妹たちと一緒に祝賀会を楽しみましょうか。話はその後でも構わないわ。アタシは姉妹が待っている席に座ってケーキとドリンクの注文をするわ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

姉妹が頼んだケーキとドリンクがアタシ達の席に届いたところで、試験突破記念の祝賀会が始まったわ。

 

「「「「「「期末試験突破!お疲れ様!かんぱーい!!」」」」」」

 

アタシ達は乾杯をして各々が頼んだドリンクを飲んだ。それにしても、やっぱりケーキもドリンクも、頼んだものはみんなバラバラね・・・。

 

「まさか本当に赤点回避できるとは思わなかった」

 

「うんうん!この答案用紙を額縁に入れてうちに飾りたいね!」

 

「それは・・・もうちょっといい点を取ってからにしようか・・・」

 

「ちょっと・・・お祝いだからって、これだけ贅沢しても大丈夫かしら・・・」

 

ただでさえ家の貯金はギリギリなんだから・・・ちょっと怖いところではあるわね・・・。

 

「それなら大丈夫です。店長さんがご祝儀としてご馳走してくれるみたいですから」

 

「まぁ、その代わりレビュワーとかで星5を入れてって言われちゃったけど」

 

それは何ともまぁ・・・すごいハングリー精神ね・・・。まぁでもそういうことなら、店長のお言葉に甘えちゃおうかしら。

 

「それにしても、私たちの注文するケーキはやはりバラバラですね・・・」

 

「まぁこれは平常運転だよね」

 

「そうだね。何を今さらって感じだよねー」

 

まぁ、それは言えてるわね。そんなの今に始まったことじゃないし。

 

「ねぇ、四葉」

 

「ん?なにー?」

 

「はい」

 

三玖は自分の注文したケーキの一切れを四葉に向けているわね。

 

「?え、なにこれ?」

 

「現代文の問題、四葉の予想とドンピシャだった。そのお礼」

 

ああ・・・確かに。あの試験に出てくる問題、四葉が予想していた範囲が多くて、おかげで点数も多く取ることができたわ。

 

「あー、確かに」

 

「そうでしたね」

 

「あれは助かったわね」

 

「おかげで赤点回避できたもんね!」

 

確かに。四葉の予想がなかったら、また赤点を取ってたかもしれないしね。

 

「じゃあ私もお礼として、はい」

 

「アタシも」

 

「私もです」

 

「六海のもあげるー!」

 

「えええ⁉」

 

みんな考えてることは同じみたいでアタシを含めてみんな自分のケーキの一切れを四葉に与えるわ。

 

「・・・あーん」パクッ

 

四葉はアタシ達のケーキの一切れを一口食べたわね。

 

「ししし・・・おいしいね!」

 

ふふふ、四葉ってば、いい笑顔をするじゃない。

 

「あ、でも、私もみんなに助けてもらったからお返ししないと・・・」

 

「それを言ったら私たちも・・・」

 

そうね。助けてもらったのは何も四葉だけじゃないわ。一花、三玖、五月、六海にもいろいろと助けてもらったわけだしね。

 

「では、少しずつシェアしましょう」

 

シェア・・・というと、アタシ達のケーキの一切れを他のみんなにも、与えるってわけね。いいアイディアじゃない五月。

 

「きっとこの試験も、そうやって突破できたですから」

 

「うん・・・私もそう思う」

 

「それに、いろんな味が楽しめてお得です!」

 

「五月ちゃん、本当はそれが狙いなんじゃないの・・・?」

 

「ち、ちちち、違いますよ⁉」

 

五月・・・なんだかんだ言ってもあんたもぶれないわね・・・。声も裏返ってるし・・・。

 

「あはは・・・まぁいいじゃん。それじゃあみんなシェアに・・・」

 

「はい、一花」

 

「!」

 

みんなでシェアにと決めた時、三玖が自分のケーキの一切れを一花に向けてるわね。

 

「数学、教えてくれてありがとう。そして1番、おめでとう」

 

ああ・・・そういえば、今回の試験結果、一花が1番だったわね。

 

「まさか一花が1番とはね・・・。意外・・・といったら失礼かもだけど、どこにそんな力を隠してたのよ」

 

「あ・・・あはは・・・運がよかっただけだよー」

 

「・・・今回は一花が1番だったけど・・・次は負けない」

 

「・・・うん・・・」

 

一花は三玖のケーキの一切れを口に入れたわね。

 

「わっ!五月のケーキすごくおいしい!」

 

「本当だー。とってもおいしいよ五月ちゃん!」

 

四葉と六海は五月のケーキを一口ずつ食べているわ。

 

「ええ。私のオススメです。もう1度食べてみたかったんですよ」

 

あら?もう1度?

 

「もう1度って・・・」

 

「あんたいつの間に1人で来たのよ」

 

試験勉強中はケーキ屋なんて行く暇なんてなかったはずなんだけど・・・いつの間に・・・。

 

「えっと・・・その時もご馳走してもらいまして・・・」

 

「ご馳走って・・・誰に?」

 

「えっと・・・MIHOさんのお姉さんです」

 

「えっ⁉先生のお姉さん⁉いつの間にそんな人に会ってたの⁉」

 

MIHO?・・・ああ、そういえば中学生の時に六海がお世話になった有名漫画だったわね。アタシ自身はあんま関わってなかったから聞いた程度だけど・・・。

 

「ええ。その時に少し・・・」

 

「へぇ・・・いいなぁ・・・六海も会ってみたいなぁ・・・」

 

「ええ。今度会わせてあげますよ」

 

「本当に⁉やったぁ!で、先生のお姉さんってどんな人?」

 

「その方は塾の講師をやっていまして・・・」

 

?急に黙り込んでどうしたのかしら?

 

「・・・みんなに話しておきたいのですが・・・」

 

「「「「「?」」」」」

 

話?いったい何かしら?

 

「私・・・学校の先生になりたいんです・・・」

 

・・・・・・え?五月が・・・学校の先生・・・?

 

「え・・・」

 

「それって・・・」

 

「も・・・もちろんすぎた夢ではありますが・・・」

 

「いいと思う!」

 

五月の夢に真っ先に賛同をしていたのは四葉だったわ。

 

「五月の授業、わかりやすかったもん!ピッタリだよ!」

 

「四葉・・・」

 

ま、確かに似合わなくはないわね。アタシ達の中で多分五月が1番似合ってるんじゃないかしら。

 

「五月ちゃんが先生かぁ・・・。それが五月ちゃんが選んだ道なら、六海は応援するよ!頑張ってね!」

 

「六海・・・ありがとうございます」

 

「当然、私たちも応援するよ」

 

他の姉妹も五月の夢を賛同しているわ。当然、アタシだって五月の夢を応援するわ。

 

「・・・ということは五月は大学受けるんだ」

 

「いよいよ3年生になるって感じね」

 

大学の話はまだ早いって思ってたけど、こうして話してみると、いよいよ3年になるんだなぁって実感がひしひしと感じるわね。

 

「・・・あ、進級といえばお父さんに連絡しないと」

 

「それなら私がしといたけどまだ返事が・・・」

 

「あー、それなら大丈夫よ。さっきアタシが直接話してきたから。今の家に住むことを含めてね」

 

姉妹たちがパパへの連絡の話をした時、アタシはパパにあってきたことを包み隠さず話すわ。

 

「やっぱりマンションに行ってきたんだね」

 

「それで・・・お父さんはどのような反応を・・・?」

 

「当たり前だけど、いい反応はもらえなかったわ」

 

「やっぱり・・・パパならその反応だよね・・・」

 

あの頭の固いパパのことだもの、当然といえば当然の反応よね。

 

「今はまだ甘えさせてもらってるけど・・・いつかけじめをつけないといけない日が来るはずだわ」

 

「でもマンションに行ったにしては帰ってくるのが早かった。それなりに遠かったはずだし・・・」

 

「それが聞いてよ。笑っちゃったんだから」

 

アタシはあのマンションまで上杉がアタシを迎えに来てくれたことを話したわ。バイクに乗っていたことももちろん、ね。

 

「「「「「ええっ!!?バイク!!??」」」」」

 

ふふ、やっぱり普段の上杉とは想像がつかないからみんな驚いているわね。

 

「なんだか想像つかないね・・・」

 

「イメージと違いすぎるね・・・」

 

「でも普段と違う風太郎君・・・素敵だなぁ・・・」

 

「うん。かっこいい」

 

「え・・・」

 

みんなそれぞれの反応を示しているわね。三玖は予想通りの反応だけど・・・六海もうっとりしてるのは予想外の反応ね。

 

「ほんと、似合わなかったのよ。調子狂うわ」

 

あいつってば本当、似合わないくせに柄にもないことしちゃって・・・。それでも・・・かっこよくみえたわね・・・。アタシの調子が狂うほどに。

 

「・・・だから・・・あんなこと言っちゃったのよ・・・」

 

「?あんなこと?」

 

「な・・・何でもないわ!」

 

と、いけないいけない・・・!アタシってばつい思ってもないことを口に・・・!

 

「そ、それより、お皿片付けよっかな!」

 

「二乃、なんで焦ってるの?」

 

「あ、焦ってないわよ!つ、ついでに店長さんにお礼言ってこないと」

 

「あ、私もお手洗いのついでに手伝うよ」

 

「六海もおトイレ行くー。ついでに六海も手伝うよー」

 

アタシは空になったお皿を持って、上杉や春、店長さんがいるキッチンへと向かっていく。一花と六海はお手洗いの方へと向かっていったわ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『バレンタインのお返し』

 

六つ子の姉妹が祝賀会をやっている間、風太郎は春と共にキッチン側の仕事をこなしていた。少し時間が経ってようやくひと段落したところまできている。

 

「よし、一段落。僕は少し休憩に入るけど、春ちゃんもやること済ませたら休憩とってね」

 

「はーい」

 

仕事が一段落して店長が休憩しようとした時、風太郎が呼び止める。

 

「あ、店長。プリンを1つ取り置きしてもいいですか?」

 

「え?プリンかい?いいけど・・・君ってそんなに好きだったかい?」

 

「いえ、バレンタインのお返しと思って・・・」

 

「!!!???」

 

バレンタインのお返しと聞いて店長はまるでムンクみたいな表情になっている。

 

「君は仲間だと思っていたのに・・・裏切り者・・・!」

 

「いや、妹にあげるやつですけど・・・」

 

バレンタインのお返しは妹のらいはのためだと聞いた店長はほっと一安心する。

 

「な、なんだそういうことか・・・。僕はてっきりあの6人のお友達の誰かからだと思ったよ・・・」

 

「なんですかそれ。ありえませんよ」

 

店長が休憩室に入っていくと、春がくすくすと笑みを浮かべながら声をかけてくる。

 

「本当にそうかな~?乙女心っていうのはね~、フータロー君が思ってる以上に複雑なんだよ~?」

 

「なんだよ・・・お前までんなこと言ってんのか?」

 

「1人くらいいるんじゃないの~?ほら、心当たりとかあるんじゃない?」

 

「・・・まぁ、もらった奴はいるっていえばいる」

 

風太郎の答えを聞いて、春は歓声を上げている。

 

「キャー!本当に⁉相手は誰なの⁉ちゃんとお返しは考えてある⁉」

 

「いう必要はねぇし、返しはバレンタインにもう渡したわ。チョコのおまけだったけどな」

 

風太郎の回答を聞いた春はあんまり面白くなさそうな顔になり、ため息をこぼす。

 

「はぁ~・・・フータロー君は乙女心をわかってないな~・・・。じゃあ私も休憩に入るけど、後はよろしくね~」

 

「おう」

 

春も休憩に入り、風太郎は1人でお皿の洗い物をする。

 

(・・・もらったといえばもう1人・・・1月からもらってたか・・・)

 

風太郎が考える1月からチョコをもらっている相手といえば三玖しか思い浮かばなかった。

 

(・・・て、そんなわけないか)

 

だがありえないと考えて風太郎は皿洗いを再開させる。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『一花のモヤモヤ』

 

「・・・はぁ・・・うまく隠せてたかな・・・」

 

お手洗い場で一花は自分の手を洗いながらトイレに行っている六海を待っている。そんな中で、一花は三玖のことでいろいろとモヤモヤを感じている。

 

(三玖を応援してた気持ちに偽りはない・・・はずなのに・・・あの時、私が成績が1番になった時、一瞬だけ・・・)

 

一花は三玖の恋路を応援はしていた。はずなのだがどういうわけか一花が成績1番になったことにたいして、少なからずほっとしていた。自分が言っていることとかなり矛盾していることに一花は少なからず戸惑っていた。

 

(三玖は1番になったら告白するって言ってたけど・・・今回は私が1番だった・・・。なら・・・)

 

『早い者勝ちだから・・・』

 

「・・・私が告白・・・しても・・・いいのかな・・・」

 

少なからず一花は風太郎に好意を寄せている。そしてさらに三玖が早い者勝ちと言っていた。それならば、自分が告白してもよいのではという考えが一花によぎった。そこでトイレに行っていた六海が戻ってきた。

 

「一花ちゃーん、お待たせー・・・どうしたの?」

 

「な、何でもないよ?さ、二乃と合流しよっか」

 

「?うん」

 

六海は一花の様子が気にはなったが、本人が何でもないと言っているので気にしないことにした。一花と六海は二乃と合流しようとキッチンの方へと向かっていく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ふぅ・・・危ない危ない・・・うまく誤魔化せたかしら・・・。アタシのこの気持ちを他の姉妹には知られたくないもの・・・。さて、と・・・上杉のいるキッチンはここかしら・・・あ、いたいた。

 

「ご苦労様・・・って、あら?春と店長さんは?」

 

キッチンに入ってみるとそこにいるのは上杉1人だけだった。春と店長はどこ行ったのかしら?

 

「2人とも休憩に行ったぞ」

 

あら、タイミングが悪かったかしら・・・お礼を言いそびれたわ・・・。

 

「あら、そう・・・少し待とうかしら・・・」

 

「そうか・・・」

 

・・・・・・。

 

「「・・・・・・」」

 

か、会話が全然続かないわ・・・。バイクでいきなり告白したからだと思うけど・・・こういう時、上杉となんて話をしたらいいかわからないわ・・・。ふと上杉が洗い物をしているのに目が入った。

 

「そ、そうだわ、待つついでだから洗い物、手伝ってあげるわよ」

 

「え?いや、そんなのいいから・・・」

 

「アタシがやるって言ってるんだから素直に甘えときなさいよ」

 

「お、おう・・・」

 

ふぅ・・・なんとか場を繋げられたわね・・・。アタシは上杉と一緒にお皿を洗っていくわ。

 

「・・・悪いな、二乃。洗い物を手伝ってくれて」

 

「ご馳走になったお礼よ。これくらい当然だわ」

 

「そうか・・・」

 

・・・あら?今思ったのだけれど・・・これって共同作業になるのかしら・・・。・・・や、やば・・・今になって顔が赤くなってくるわ・・・ていうより、何でこいつはこんな無反応なのよ!

 

「おい、ここまででいいぞ。後は俺がやっとく。店長には言っとくからお前は席に戻っとけ」

 

「そ、そうね!そうするわ!」

 

少し居たたまれなくなってアタシはキッチンから出ていこうとした・・・けど、思い止まった。

 

「?二乃?どうした?」

 

「・・・バイクで言ったこと、やっぱり忘れてちょうだい」

 

「!」

 

あの時は上杉はなんの反応を示さなかったけど、やっぱり気にしてるわよね・・・。だったら、これ以上黙ってるわけにはいかないわ。

 

「あんたが困ってしまうのは仕方ないわ。突然すぎたものね。少しアクセルを踏みすぎたみたい。本当、何やってんだろ、アタシ・・・」

 

「・・・・・・」

 

沈黙が長いように感じるけど、それも仕方ないと思ってるわ。よりにもよってアタシからの告白ですもの。何て言いかわからな・・・

 

「二乃」

 

「!」

 

「・・・すまん、なんのことだ?」

 

・・・・・・・・・え?

 

「・・・ええ!!?」

 

今、こいつ何て言ったの?なんのことかわからない?

 

「いや、本当に心当たりがないんだが・・・。ていうか、あの時は結構風強かったし・・・もしかしたら、聞き逃してたのかもしれん。すまん」

 

「な・・・な・・・何よそれーーー!!!」

 

アタシはあまりのことで思わず絶叫してしまったわ。

 

「なぁ二乃、いったいなんのことを・・・」

 

「何でもないわよー!」

 

アタシはなりふり構わずキッチンから出ていった。

 

・・・なんだ・・・聞こえてなかったんだ・・・そりゃそうよね・・・そもそもあいつにとってアタシ達は恋愛対象外・・・三玖のバレンタインチョコだって気づかないくらいだし・・・。

 

・・・聞かれなくてむしろよかったわ・・・好都合だわ。アタシは歩んだ道を引き返して、上杉のいるキッチンに引き返す。ちょうど皿洗いが終わったところね。

 

「店長、皿洗い、全部片付きましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたのこと、好きって言ったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

もうこの気持ちを隠したりしないっての。アタシは、アタシの好きなようにさせてもらうわ。

 

「・・・・・・・・・は・・・?え・・・?なんだって・・・?」

 

「返事なんて求めてないわ。本当、ムカつくったらありゃしないわ」

 

上杉は戸惑っている様子だけど、アタシには知ったことじゃないわ。恋愛対象外だっていうのならなおさらの話よ。

 

「恋愛対象外なら・・・無理やりにでも意識させてやるわ!」

 

この恋を自覚したからには、アタシを振り向いてもらえるように、攻めて、攻めて、攻めまくってやるわ!

 

「アタシ、前に行ったわよね?あんたみたいな男でも好きになる女子が地球上に1人くらいいるってね」

 

「お、おう・・・」

 

「その女子というのがアタシよ!残念だったわね!」

 

「・・・っ」

 

上杉・・・いいえ、フータロー、アタシはこれからはバンバンと猛アピールしてあんたを振り向かせたやるわ。覚悟してなさい、アタシの素敵な王子様♡

 

♡♡♡♡♡♡

 

こうして二乃は自分の気持ちに正直になり、風太郎に再度告白するに至った。だが二乃は気づいてはいない。この告白の場面を目撃していた人物がいたことを。

 

「・・・・・・っ!」

 

1人は、同じく風太郎に好意を持ちつつ、関係の現状維持を望んでいる一花。そして・・・

 

「・・・嘘・・・」

 

同じく風太郎に好意を寄せて、なおかつ二乃とのケンカを望んでいない六海。2人にとってこの二乃の告白は、絶対に見たくはなかったものである。

 

29「攻略開始」

 

つづく




次回、三玖、風太郎視点

Revivalの店員紹介



見た目は三つ編み髪、瞼を閉じたような目をしている。

イメージCVは幼女戦記のヴィーシャ

黒薔薇女子学院高等部の2年生。ケーキ屋Revivalで働いているアルバイト店員。ゆったりとした性格でいつもおっとりしている。風太郎のアルバイトとしての先輩。
孤児院に住んでいるため、真鍋と同僚なのだ。学校やアルバイトがない日は子供たちに歌やお絵描きを教えている。孤児院組の中で母性本能が高く、ついつい子供たちを甘やかす。
孤児院内で春は特に発育がよく、胸の大きさは子供たち曰く六つ子の姉妹より大きいらしい。そのため真鍋からは憎らしい目で見つめられることがしばしば。
ちなみに六つ子の姉妹が黒薔薇に在学中でも、全く知らなかったのは、単純に会ったことがなかったからである。(朝遅刻したりもするので朝礼にも参加できてないから顔も見たことがなかった)

六海のアルバイトはどれがいい?

  • 漫画アシスタント
  • メイド喫茶
  • コンビニの店員
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