六等分の花嫁   作:先導

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スクランブルエッグ編に入ったところで、アルバイトのアンケート終了!結果は・・・漫画アシスタントに決定いたしました!多くの投票、ありがとうございました!

それから、よければですがこの六等分の花嫁で1番印象に残った、面白かった話があれば教えてください。やっぱり作者として、気になりますので。もちろん、よろしければで構いません。


スクランブルエッグ 一玉目

『2000日の結婚式』

 

ふふっ、風太郎、緊張してるの?

 

5年前のあの日を思い出して。

 

忘れたわけじゃないでしょ?

 

♡♡♡♡♡♡

 

三玖SIDE

 

試験が終わって春休みになってからというもの、ほとんどの姉妹の様子がなんだか変。一花はなんだか妙にため息をつくようになった。二乃は少し、物思いにふけることが多くなった。四葉と五月は・・・まあ、普段通りにしている。六海はというと、どういうわけかぼーっとすることが多くなった。お風呂の時間がいつもより長くなってしまうほどに。とにかくいつも通りの日常に戻った・・・なんてことはなく、みんな普段通りの生活ができていないほどに重傷だった。

 

・・・かくいう私も、実はちょっと悩みがある。あの祝賀会の日、私は今回の試験結果で自分が1番だと確認していた。だから自信が湧いてきた。だから思いきってフータローに告白しようとした。

 

でも・・・覆された。今回1番になったのは一花だった。たった1点差で、私の勇気は地の底まで落ちていった。自信がなくなってしまった・・・というのが正しいのかな。

 

・・・ううん、それだけならまだいいかもしれない。もし・・・もしも私がフータローに告白したら、今までの関係が崩れていくのかもしれない。そう考えると胸が張り裂けそうになる。怖くて怖くて仕方がない。どうしようもなく、臆病な私・・・。

 

そんな思いを胸に秘めながら私はただ1人、個室で戦国武将関連の本を呼んでる。フータローも春休みになってから最近来なくなったし、今頃何してるんだろう・・・。

 

「三玖ちゃん・・・ちょっといい?」

 

「?六海?どうしたの?」

 

ドアの奥から六海の声が聞こえてきた。私はすぐにドアを開けて六海と対面する。

 

「今日は・・・六海が買い物当番なんだけど・・・今は・・・ちょっと・・・1人じゃ・・・」

 

六海にしてはかなり歯切れが悪い。六海自身も何か悩んでるのかな。できれば私が相談に乗ってあげたいけど・・・私には、そんな勇気が湧いてこない・・・。だって、六海もフータローのことを・・・。

 

「・・・私にも来てほしい?」

 

私の問いに六海はコクりと頷いた。

 

「・・・四葉と五月には頼まないの?」

 

「・・・三玖ちゃんしか無理だよ・・・。こんなこと・・・お姉ちゃんたちの中じゃ三玖ちゃん以外相談できないよ・・・」

 

私に何か相談事?それで私に・・・。・・・もしかしたら、フータローに会えるチャンスかも・・・。それに、少しは気分転換にはなるかも・・・。

 

「・・・わかった。一緒に行こっか」

 

「ありがとう・・・」

 

私はひとまず六海のお買い物についていくための準備をしてから、六海と一緒にお買い物しに出かけに行った。

 

♡♡♡♡♡♡

 

私たちは今日の晩御飯の材料を買いにスーパーに向かって・・・いるんだけど・・・

 

「「・・・・・・」」

 

なんか・・・非常に気まずい・・・。六海もなんか悩んでるから相談してって言ったのに・・・全く話を触れようとしてない・・・。私が・・・話を振った方がいいの・・・かな・・・。

 

「「・・・ねぇ・・・」」

 

私が少し勇気を出して声をかけようとしたら六海も声をかけてきた。・・・なんだか・・・思いとどまっちゃった・・・。

 

「・・・先に言っていいよ」

 

「・・・ううん、何でもない・・・」

 

話が全く進展しない・・・。どうしたらいいんだろう、この状況・・・。だ、誰かもう1人でもいれば場は変わってたかもしれないけど・・・。こんなんじゃ全然気分転換にならない・・・。

 

「好きだ♡」

 

「私もよ♡」

 

うわぁ・・・人が悩んでる状況の中、イチャイチャしてるカップルがいた・・・。のんきなものだなぁ・・・私たちはこんなに悩んでるのに・・・。それにしてもこうも好きだなんだって近くで聞かされると・・・

 

「・・・なんか、聞いてたらムカムカしてきた」

 

「三玖ちゃんも?六海もイライラしてきたよ・・・」

 

六海も同じ気持ちらしく、近くにいるカップルにたいして今にも怒りそうな顔をしてる・・・。本当に・・・

 

「全く・・・浮かれちゃってまぁ・・・」

 

近くのカップルにたいして私たちと同じくイライラした様子の人が・・・って、この人・・・

 

「あら?中野さん・・・に、六海?」

 

「ま、真鍋さん⁉」

 

そうそう、この人は六海の友達の真鍋さんだったね。1度だけ孤児院に行ってその姿を見たことがあるからなんとなく覚えていたよ。

 

「真鍋さんもお買い物?」

 

「ええ。子供たちのために日用品やらないやらを、ね」

 

「すごい・・・」

 

あのやんちゃな子供たちのリーダーっていうだけでも大変なのに・・・私だったら絶対に投げ出しそうになるよ・・・。そう考えると真鍋さんを尊敬できるよ。

 

「そういうあんたたちも買い物?」

 

「そう。今日は六海が当番」

 

「そうなんだよー。最近は毎日が大変でねー」

 

六海はさっきまで元気なさそうだったけど、真鍋さんと会ったら元気になってる。思わぬところで友達と会ったことで少しは気分が晴れたみたいだね。

 

「そういう六海と・・・えーっと・・・名前・・・」

 

「三玖」

 

「そうそう。中野さんじゃわかりにくいし、これからは名前で呼んでいいかしら?」

 

「うん。その方が気が楽」

 

ただでさえ六つ子だから結構間違えられるから、せめて名前だけで呼んでもらった方がこっちとしても都合がいい。

 

「ん、オッケー。それで話は戻すけど、あんたたちっていつもここで買い物してるのかしら?」

 

「違う。いつもは近くのスーパーでお買い物してる」

 

ちなみに今私たちはいつも行ってるスーパーとは違うスーパーでお買い物をしてる。いつも通ってるスーパーでもよかったけど、六海がなぜかここのスーパーまで移動していたんだよね。深くは尋ねなかったけど。

 

「つまりわざわざ遠くまで来たってわけね?それはなんで?」

 

「!べ、別にね?風太郎君の家と近くだったからというわけじゃなくて?その、たまたま歩いていたら偶然このスーパーまで来たわけなんだよ。け、決して風太郎君に会いたいってわけじゃなくて・・・」

 

「長文」

 

「あー、はいはい。上杉関連ね。よくわかったわ」

 

「ち、違うって!!」

 

真鍋さんの質問に六海は長文かつ早口で答えた。やっぱり六海もフータローに会いたがってたんだ。考えてること、ほとんど一緒なんだ。そして六海、否定してるけど真鍋さんまでここに来た理由を察してるよ。

 

「え、ええっと・・・風太郎君じゃなくて・・・その・・・」

 

「無理しなくていいわよ」

 

「そうじゃなくて・・・あ!こ、これ!これ目当てで来たの!!」

 

六海は何かを見つけてそこを指をさした。お買い物レシートで豪華賞品を応募するっていう知らせのチラシだった。・・・あ、そういえば、このスーパーではこんなのがあったんだった。

 

「へぇ・・・こんなのがあったのね」

 

「う、うん!この応募、このスーパーしかやってないんだよね」

 

あんまり詳しく読んでなかったからよくわかんなかったけどね。えっと何々・・・賞品は・・・参加賞のポケットっティッシュ、E賞の商品券、D賞がお米、C賞がギフトカタログ、B賞がペアリング・・・本当にいろいろあるんだ。A賞は・・・温泉ペアチケットか・・・。・・・あ、よく見たらこのA賞の温泉ペアチケット・・・。

 

「このA賞の行き先がおじいちゃんの家の行き先なんだ」

 

「あ!本当だ!見覚えがあると思ったら!」

 

「あら、そうなのね」

 

そう、この温泉ペアチケットの行き先は私たちのおじいちゃんと同じ家の場所だったんだ。写真に見覚えがあったからすぐにわかった。

 

「懐かしいなぁ・・・狙うならやっぱりA賞かな?久しぶりにおじいちゃんに会いたいし!」

 

「でも6名様までだし、難しいんじゃない?」

 

「いいじゃない。やるだけやって、当たれば儲けものよ」

 

まぁ、確かに・・・ちょっと狙ってみようかな・・・。

 

「真鍋さんはどれがいい?」

 

「私?そうねぇ・・・院長がここに行きたいってぼやいてたし、狙ってみようかしら・・・」

 

真鍋さんもA賞を狙うんだ・・・。その院長さんのために・・・。やっぱりえらい・・・。

 

「いや、ちょっと待ちなさいよ?このE賞なら子供たちの欲しいものが・・・!いやいや、このB賞、売ったらいくらくらいになるかしら・・・!孤児院の経済費の足しになるわ・・・!」

 

「なんか、フータローと似たようなこと言ってる・・・」

 

「真鍋さんじゃ絶対当たらない気がするよ・・・」

 

「やってみないとわからないじゃない。確か3000円以上だったわね。早いところ買い物を済ませちゃいましょ」

 

こういうのって、欲が深い人ほど当たりにくいと思うんだけど・・・まぁ、やる気があるのはいいことだと思う。

 

「えーっと、今日の晩御飯の材料ってこれで全部だっけ?」

 

「うん。あ、そうだ。私、二乃に頼まれたものがあるんだった」

 

幸いにも二乃に頼まれたものは近くにあったからそれを篭の中に入れる。

 

「・・・ねぇ、三玖ちゃん」

 

「何?」

 

「・・・二乃ちゃん、なんか言ってた?」

 

???六海の質問の意図がよくわからない・・・。何でそこで二乃が出てくるの?

 

「なんかって何?」

 

「う、ううん!何でもない!やっぱ忘れて!」

 

???ますますわからない。何が聞きたかったんだろう?・・・もしかして、さっきのって相談事?

 

「・・・ねぇ、あんたたち」

 

六海と話してるとわざわざ待っててくれてる真鍋さんが声をかけてきた。

 

「あんたたちって、好きな人いんの?」

 

・・・・・・・・・・・・え?

 

「「えええ!!?」」

 

きゅ、急に何を言い出してるの真鍋さん⁉️

 

「きゅ、急にどうしたの真鍋さん⁉️」

 

「いや、その反応で確信したわ。あんたら好きな人いるでしょ絶対」

 

「いや、その・・・それは・・・」

 

確かに好きな人はいる・・・けど、わざわざフータローが好きなんて事、とても言えそうにない。それが女子ならなおさらだよ。

 

「まさかとは思うけど・・・上杉だったりして・・・ねぇ?」

 

「ち、ちち、違うから!!断じて違うから!!ねぇ、三玖ちゃん!!」

 

「う、うん・・・うん・・・!ありえないよ・・・!」

 

「あら、そう」

 

ああ・・・とっさに嘘ついちゃったよ・・・。告白したわけじゃないけど、ごめん、フータロー。

 

(ま、上杉が好きっての、反応でバレバレだけどね)

 

「そ、そういう真鍋さ・・・」

 

「あ、私好きな人なんていないから。以上」

 

「ずるい・・・」

 

実質私たちだけ恥ずかしい目にあってる気がす・・・。なんか好きな人がいない真鍋さんが身軽そうでずるい・・・。

 

「恋愛とかでなんか悩んでるなら、聞くだけ聞いてあげる。少しは気分が和らぐでしょ?」

 

・・・真鍋さんって今私たちが悩んでるのに気づいてるのかな?それともただの偶然?どちらにしても、私たちを気遣ってるのがわかる。

 

「・・・これ、あくまでも六海の知り合いの話なんだけど・・・」

 

少しの沈黙の後、六海が口を開いた。

 

「その人、1人の女の子に告白されてね・・・それでその女の子、返事はいらないって返しちゃったみたいなんだ」

 

「ふーん・・・」

 

「だから、その・・・それをみ・・・じゃなくて、聞いた時、六海は、ちょっと戸惑ってるの・・・。六海は、どうすればいいんだろうって・・・」

 

それが六海の悩みなんだ・・・。知り合いの話を聞いて、自分はどう接したらいいんだろうって・・・。知り合いの話だから六海ならそういうの、気にしないと思ってた。なんだか、妹が成長してるって考えると、ちょっと嬉しいな。

 

「ふふ・・・」

 

「あ・・・もー!三玖ちゃん!こっち真剣なんだから笑わないでよ!」

 

「あ、ごめん、つい・・・」

 

ちょっと気持ちが顔に出てたみたい。少し反省・・・。

 

「・・・で?三玖、あんたはどうなの?」

 

「え?私?」

 

まさか私にまで話を振ってくるとは思わなかったから面をくらってる。

 

「そ、そうだよ!六海が話したんだから三玖ちゃんも1つくらいなんか話してよ!」

 

六海まで・・・。話っていうと私の悩みのことだよね・・・。真鍋さんがいるから、自分の事はあんまり話したくないなぁ・・・。でも、さっきみたいに知り合いって感じに話せば、私も気分が楽になるかも。

 

「・・・私も知り合いの話なんだけど・・・。その子、告白しようとしたらしいんだけど・・・」

 

「え・・・」

 

「うん。それで?」

 

「できなかったらしいの。告白したら最後・・・元の関係に戻れないような気がして・・・。それくらい勇気がいるみたいなんだ、告白って」

 

もちろんあの時、告白ができなかったのは一花が試験で1番をとったっていうのもある。でもそれ以上に告白してしまったら・・・これまで通りの関係が一気に崩れてしまうのではという恐れが出て来て・・・言えなかった。

 

「なるほどねぇ・・・恋心って、いろいろ複雑ねぇ」

 

「うん。すごく複雑」

 

「知り合いの事情なんだけど、ね・・・」

 

私は知り合いの事情ってわけじゃないけど。・・・でも六海の話を聞いて、いろいろと感心する。

 

(やっぱり・・・告白って勇気がいるんだね・・・。だったら二乃ちゃんのあれも・・・)

 

・・・すごいなぁ・・・世の中にはそんな勇気がある人もいるんだ・・・。それに比べて、私は・・・

 

(六海は・・・どうしたらいいんだろう・・・)

 

私は・・・なんて臆病なんだろう・・・。

 

「ああ、そんな難しそうな顔しないでよ。今は春休みなのよ?考える時間はいくらでもあるわ。いざとなったら、私も一緒に考えてあげるわよ」

 

「そう、だね。うん・・・ありがとう、真鍋さん」

 

「さ、さっさと会計してあれ、応募しましょう」

 

「・・・うん」

 

・・・そうだよね。今はまだ春休み。考える時間はいくらでもある。答えが出るまで、ゆっくりと考えよう。私たちは3000円分のお買い物を済ませて、豪華賞品の応募用紙を書き上げる。・・・温泉ペアチケットかぁ・・・。もしかしたら、それが当たって、旅行に行ったり・・・なんてね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

数日後。春休みが続く中、私たち六つ子の姉妹は・・・

 

「ほらみんな!もうすぐ頂上ですよ!早く行きましょう!」

 

「ちょっと待ってよ、五月ちゃん・・・」

 

「あんたはしゃぎすぎよ!少しは三玖や六海を支えるの手伝いなさいよ!」

 

「大丈夫?三玖、六海」

 

「はぁ・・・はぁ・・・しんどい・・・」

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・この山道って、こんなにしんどかったっけ・・・」

 

温泉旅行の一環として、観光スポットがある山を登っていた。

 

・・・あの豪華賞品の応募・・・それもA賞の温泉チケット・・・。まさか、本当に当たるなんて誰が想像できたんだろう・・・。あの時は冗談でそう思っただけなのに・・・。

 

「いやー、本当に懐かしいねぇ。ここに来るのは小学6年生以来だっけ?」

 

「こうやってみんなで旅行ができるのも、三玖と六海のおかげだね!本当にありがとう!」

 

「たまたま運がよかっただけだよ・・・ぜぇ・・・ねぇ、三玖ちゃん・・・はぁ・・・」

 

「うん・・・偶然・・・ふぅ・・・」

 

・・・まぁでも、こうやって旅行してれば、みんなにとっていい気分転換にはなるかな。春休みに入ってからみんな、ちょっと考えることが多くなったから。ただ1つ気になったのは・・・この旅行が決まってから、四葉が少し不安そうな顔つきになっていたこと、かな。

 

「まぁ・・・あの人までついてくることはなかったと思うけど」

 

二乃は1つの不満点を口にしている。二乃の言っているあの人っていうのは・・・言うまでもなく・・・

 

「山道は滑りやすい。みんな、足元に注意しながら登ってくれ」

 

私たちのお父さんである。お父さんは私たちより少し後ろ側に歩いている。お父さんの後ろには江端さんが控えている。

 

「に、二乃、そう言わずに・・・」

 

「それに、あれがなかったらこうしてみんなで旅行してないでしょ?」

 

「はぁ・・・わかってるわよ」

 

旅行に行くきっかけを知っている二乃はこれ以上のことは何も言わなかった。というよりきっかけはこの場にいる全員が知っている。

 

あのペアチケット、本来ならうちに1枚だけ届くはずだった。でも、私と六海はついうっかり届け先の住所を間違えて前に住んでいたマンションにしちゃったんだ。そのおかげでお父さんにペアチケットの存在を知られちゃったわけなんだ。

 

で、話はここからなんだけど、お父さんは学期末試験で私たち全員赤点を回避したご褒美という名目で私たちに家族旅行を提案したってわけ。ペアチケットも家族全員分として私たちが当てたのと合わせて4枚。用意周到って感じだった。まぁとにかく、断る理由もないし、たまに息抜きはということで家族旅行を了承して、今に至るって感じ。

 

「ぜぇ・・・もう・・・その話はいいから・・・早く頂上に行こうよ・・・すごい疲れちゃった・・・」

 

「そうだね。お姉さんも足を痛くなってきたよー」

 

体力がない六海はすごく疲れ切ってて上に行くように急かしてきた。一花も早く頂上で一息付けたいって気持ちでいっぱいみたい。・・・まぁ、私ももう疲れきってるから休憩したい・・・というか早く山登りを終わらせたい・・・。

 

「私が1番乗りですー!」

 

「あ、五月ってば、もう頂上まで辿り着いてるわね」

 

あ、本当だ。頂上のところで五月の声が聞こえてきた。

 

「「やっほーーー!!」」

 

やまびこまでしちゃって・・・はしゃぎすぎ・・・って、先客がいるのかな?他の人のやまびこまで聞こえてきたんだけど。でも、なんか聞き覚えがあるような・・・。

 

「五月ー、ちょっと早いよー」

 

ようやく頂上まで辿り着いて、五月と合流・・・て、え・・・?五月の隣にいるのって・・・フータロー・・・?

 

「あれぇ?上杉さんじゃないですか!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・フータローも・・・来てたんだ・・・」

 

「ぜぇ・・・もしかして・・・はぁ・・・風太郎君も・・・あれ、応募したの・・・?」

 

「・・・嘘・・・でしょ・・・」

 

「・・・ふふふ、ラッキー♪

 

みんなもまさかフータローが来てたなんて思わなくてそれぞれの反応をしてる。五月なんてさっきから驚きの顔をしてるし。

 

「嘘だろ・・・そんなバカな・・・まさかのお前らも家族旅行かよ・・・ありえねぇだろ・・・」

 

フータロー自身も私たちがここにいるとは思わなかったらしく、非常に驚いた顔をしてる。

 

「まさに家族旅行だ。しかし、気をつけねばいけないよ」

 

「!」

 

「旅にトラブルはつきもの、だからね」

 

「・・・っ」ガタガタガタッ

 

フータローはお父さんを見た瞬間、今までに見たことがないくらいに振るえていた。

 

「・・・え・・・何よこの状況・・・」

 

「ほっほっほ」

 

あ・・・真鍋さんもここに来てたんだ・・・。てことは真鍋さんも当たったんだ・・・。別の道からおじいさんを乗せた車いすを押してやってきた真鍋さんはこの状況に目が点になってる。・・・本当、なんだろう、この状況。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

風太郎SIDE

 

「この島の随一の観光スポット、『誓いの鐘』です。この鐘を2人で鳴らすとその男女は永遠に結ばれるという伝説が残されているのです」

 

「は・・・はは・・・どこかで聞いたことのある伝説だな。そういうの、どこにでもあるもんなのかってくらいに多いな・・・コンビニか!」

 

『・・・・・・』

 

・・・・・・・・・。

 

「・・・さて、ここで昼食をとろうか。全員準備を始めてくれ。ただし、何度も言うが足元には気を付けよう。このあたりは滑りやすいからね」

 

・・・くっ!この場を和ませようと思ったが失敗・・・!まさかあいつらがここに来ていたとは・・・いや、それよかあいつらの父親がいる分、余計に気まずい・・・。

 

待て、いったん整理をしよう。俺は先日らいはに頼まれてスーパーで買い物をした。その際に俺はあそこでしかやってない豪華賞品の応募で少しでも取り分を戻そうと思って、B賞のペアリングかE賞の商品券を狙ったわけだ。だが結果は予想していなかったA賞の温泉旅行のペアチケット。親父たちは旅行の計画を立てたからそれを使ってこうして上杉家で家族旅行に来ているというわけだ。ちなみに1人分は自腹で来ている。

 

・・・まぁそれはいい。問題は・・・なぜあいつらがここに来ているかということだ!休み明けに家庭教師を再開するまでいったん距離を置こうと思っていたのに・・・なぜよりにもよって全員揃ってこの島にいるんだ!せっかくあいつらのことは忘れて、家族旅行を楽しもうと思っていたのに・・・!

 

つーかそれよりもだ・・・なんで父親まで一緒に来ているんだ?和解でもしたのか?それとも進級を果たしたから受け入れたのか?・・・いや、まぁ・・・それならそれで全然かまわないんだが・・・その場合、俺の立場はどうなるんだ?家庭教師はクビになっちまうのか?いや、まぁもうすでにクビにされてるわけだが・・・。だがあいつらに限ってそんな・・・。ダメだ、考えれば考えるほどわけわかんねぇ・・・。ちゃんとどういうことか説明してもらわねぇと・・・。

 

「一花・・・この状況どうなってるんだ?説明してほし・・・」

 

「!あ・・・あはは・・・ごめん、忙しいから後でね」

 

一花に説明を要求しようとしたら一花がよそよそしく俺から離れていった。・・・?なんだ・・・?

 

「なら、四葉でもいい。よつ・・・」

 

「ううぅぅ・・・緊張してきたぁ・・・うまくできるかなぁ・・・?」

 

四葉に説明をと思ったら四葉はなんか上の空だな。なんなんだ?あいつらさっきから俺にたいしてよそよそしいな・・・。

 

「ねぇ、ちょっと」

 

少し考え事をしていたらあいつらと一緒にいた真鍋が話しかけてきた。

 

「あんたあの子たちに何したのよ?明らかに様子がおかしいじゃない」

 

あ、お前もそう思うか。俺もおかしいと思ってたところだ。だがその疑問を俺にぶつけるのは解せん。

 

「知るか。こっちが聞きたいわ」

 

「本当に何も知らないわけ?」

 

「知らねぇって言ってるだろ」

 

「ふーん。そういうことにしてあげるわ」

 

まったく、何でもかんでも俺のせいにしないでもらいたいものだ。

 

「・・・つーかお前なんでいるの?あいつらの付き添いか?」

 

「そんなわけないでしょ。でも付き添いってのは間違ってないわ。院長の旅行に同行してるから」

 

「院長?孤児院のトップのか?それって、あの爺さんのことか?」

 

俺が指をさした人物は車いすに乗ってて、誰が見ても結構年がいってる爺さんだ。

 

「そうよ。前に六海たちと買い物の際に豪華賞品の応募でA賞が当たってね、それで院長の面倒もかねて、代表として私が旅行に同行してるわけ」

 

「同行って・・・あのガキ共はどうすんだよ?」

 

「春たちに面倒を見てもらってるから問題ないわ」

 

そういえば春も孤児院に住んでんだったか?それなら問題ない・・・のか?

 

「ねぇ、2人で何の話をしてるのよ?」

 

「!!!!」

 

に・・・二乃・・・!やべぇ・・・まさか二乃に話しかけられるとは思わなかった・・・。正直、あの告白以来、二乃とはどう接すればいいかわからん・・・!

 

「い、いや・・・」

 

「2人で楽しそうにしちゃって・・・」

 

「あー、悪いことしたわね・・・」

 

「本当よ・・・。アタシの方を構いなさいよ・・・フータロー」

 

「!!!!????」

 

二乃が俺の名前で呼んだ時、六海が非常に驚いた顔をして近づいてきた。

 

「ちょ・・・に、二乃ちゃん・・・?そ・・・その呼び方・・・どうしたの・・・?」

 

「え?どうしたのって・・・アタシ達も出会って半年が過ぎたじゃない?そろそろ距離を詰めた方がいいと思ったのよ」

 

「それは・・・前々からずっと考えてはいるんだけど・・・」

 

「あ、そうだわ。フータローにあだ名とかつけるってのはどうかしら?」

 

「お、おい・・・話を・・・」

 

「てことで六海、こういうの得意でしょ?なんか考えてよ」

 

「ええ!!?」

 

な、なんか俺抜きで話がどんどん進んでいく・・・。いや、本当どうなってるんだ?

 

「え・・・ええぇっと・・・上・・・じゃダメだし・・・それなら風・・・フウ・・・フー・・・ふ、"フー君"・・・なんちゃって・・・」

 

おい、なんだそのあだ名は。デジャヴか?

 

「フー君・・・へぇ・・・いいじゃない。気に入ったわ」

 

気に入ったのかよ。

 

「そ・・・そんなこといいから!早くお昼食べようよ!ほら、手伝って!」

 

「はいはい、そんな押さなくてもいいでしょ」

 

「お、おい!!」

 

六海は二乃を連れて他の姉妹のとこに行っちまった・・・。なんだ?二乃はともかく、全員会わないうちによそよそしくなっちまったな・・・。

 

「・・・本当になんも知らないの?」

 

「・・・ああ」

 

本当、あいつらどうしちまったんだ・・・?・・・ん?なんか視線が・・・。振り返ってみると、三玖がじーっとこっちを見てる・・・。

 

「・・・ね、ねぇ、フー・・・」

 

「三玖君。何をしているんだい?」

 

お・・・お父さん・・・!!

 

「そんなところにいないで、早く江端から弁当を受け取ってくれ」

 

「う、うん・・・」

 

「・・・あ、あの・・・先日は・・・」

 

「さあ、準備を始めよう。久々に全員揃ったからね。・・・家族水入らずの時間だ」

 

や・・・やべぇ・・・あれ絶対俺を警戒してるよ・・・。こ、こえぇ・・・。

 

「・・・あんたやっぱなんかしたでしょ?」

 

「・・・否定できんかもしれん」

 

ああ・・・なんでこんなことになっちまってるんだ・・・

 

「おーーい、お兄ちゃーーん」

 

俺が少し頭が痛くなってると、先に行っていた親父とらいはが戻ってきた。

 

「たく、遅ぇぞ。何してんだ風太郎。心配で戻ってきちまったよ」

 

「あれー?なんでみんないるのー?」

 

らいはがあいつらの顔を見ると嬉しそうな顔をしている。

 

「らいはちゃん!」

 

「やはり上杉君も家族でいらしていたのですね」

 

「じゃああの人がお父さん?」

 

「そうだよー。勇也さんっていうんだー」

 

「む・・・確かに似ているわね・・・」

 

「そうかな?」

 

あいつらも親父とらいはの顔を見てそれぞれの反応を示しているな。

 

「・・・ん?ありゃ誰かと思えば・・・やっぱマル・・・」

 

「・・・おや、雨が降ってきたね」

 

は?雨?

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「山の天気は変わりやすくて困ったものだ。仕方ない、下山して宿に向かおう。江端、片づけを頼んだよ」

 

「かしこまりました」

 

・・・どうなってんだ?雨なんて降ってねぇのに・・・。あいつらの父親はせっせと下山していったぞ・・・。

 

「・・・えーっと・・・」

 

「あはは・・・仕方ありませんね・・・。降りよっか」

 

「ええ⁉せっかくここまで登り切ったのに~・・・」

 

「じゃあね、フータロー」

 

「多分同じ旅館よね。また会いましょう」

 

「・・・・・・」

 

あいつらも父親に合わせて、山から下山していったな。

 

「・・・上杉君、後でお話があります」

 

「!あ、ああ・・・」

 

五月だけ俺に耳打ちをしていって、あいつらと一緒に降りていった。

 

「な、何よあれ・・・」

 

「雨なんて降ってないけど・・・」

 

「ふぅ・・・やれやれ・・・。ところでお嬢ちゃん・・・」

 

「あ、どうも・・・」

 

おっとここで親父は俺が真鍋と一緒にいることについて触れたな。

 

「・・・もしかして、風太郎の・・・」

 

「「いや(いえ)、こいつとはただの腐れ縁だ(です)」」

 

「そ、そうか・・・」

 

全く、俺がこんな性悪女の?ありえねぇっての。

 

「恵理子、十分満喫しました。私たちも降りましょう」

 

「え、ええ。じゃあ、上杉、あんたも多分同じ宿よね?また会いましょう」

 

真鍋は親父とらいはに一礼して、爺さんを支えながら山から下山していった。・・・あの車いす、折り畳み式なんだな・・・。

 

その後、俺はらいはと親父に真鍋との関係を話しながら観光してから、下宿先の宿へと向かっていくのだった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

宿にたどり着いたころにはすでに夕方ぐらいになった。うーむ・・・この宿、ずいぶんとぼろ・・・じゃなくて古いな・・・。まぁ、結構昔からやってるみたいだからなぁ・・・。

 

「わぁ・・・お化け屋敷みたい」

 

確かに・・・見方によってはそう見えてしまうな・・・。・・・やってるよな?この宿・・・。まぁいい。さっさとチェックインを済ませよう。・・・そういえば、五月の奴・・・後で話があるって言ってたが・・・後でっていつだよ・・・。まぁいい・・・電話してみるか。そう思ってスマホをてにす・・・あ、そういえば、充電が切れてたのを忘れてた・・・くそ。・・・ん?

 

「・・・・・・」

 

・・・あのチェックインカウンターにいる爺さんが受付をやってるのか?さっきの院長の爺さんより歳くってるみたいだが・・・。・・・まぁいい、ちょっとあいつらの部屋がどこか聞いてみるか。

 

「あのー・・・中野さんって何号室ですか?」

 

「・・・・・・」

 

・・・・・・反応なし・・・。寝てんのか?まいったなぁ・・・これじゃあどうやって五月と話せば・・・。・・・ん?中庭にいるのは・・・五月か?ちょうどいい・・・話はとっとと済ませた方がいいな。

 

「親父、らいは、先に部屋に行っててくれ」

 

「なんだ?便所か?早く戻って来いよ」

 

「おう」

 

俺は急いでその場を後にして、中庭へと向かっていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

俺は五月の話を済ませるために中庭へと向かっていく。確か・・・この辺にいたはずだ・・・。いったいどこに・・・。

 

「・・・えっ⁉」

 

五月を探してあたりを見回していると、五月を発見した。だがその場所は中庭ではなく、宿の2階にいやがった・・・!あ、あいつ・・・いつの間に移動しやがったんだ・・・?・・・て、そうじゃねぇ・・・早いとこ五月と会わねぇと・・・。

 

「・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 

くそ・・・宿に戻ったはいいが・・・五月の奴・・・どこに行きやがったんだ・・・?確かこのあたりにいたはずなのに・・・。俺はどこにいるかあたりを見回す。・・・お、いた。どこかに入っていった。じゃあさっさと・・・。

 

「・・・嘘だろ」

 

話を済ませようと思ったら、あいつが入っていったのは女子トイレ・・・。男が入れるような場所じゃない。なんなんだよ本当に・・・。仕方ねぇ・・・少し待つか。

 

「・・・お客様」

 

トイレで待っていたら、この宿の女将に怪訝な顔で説教をされた。何でも女子トイレの前に不審者いるんだと。・・・うん、まさにそれ、俺のことだな。よく考えたら女子トイレの前で待ってたらそりゃそう思われちまうよな。何をトチ狂ったんだろうな、俺・・・。

 

「・・・ん?ええ!!?」

 

説教が終わった後に窓を見てみると、外に五月がいるじゃねぇか!まったく気が付かなかった・・・。いつの間に外に出やがったんだ・・・⁉と、とにかく、早く中庭に行かねぇと・・・!

 

「本当に・・・行ったり来たり・・・しやがって・・・」

 

しんどい・・・早く部屋に戻りたい・・・。そんな風に思いながら下へ行ってみると・・・また五月の奴がいやがった。また中に戻ってきたのかよ。だが・・・今度こそ逃がさねぇぞ!俺はすぐに五月の奴を追いかけ・・・

 

「・・・なん・・・だと・・・」

 

五月の奴が入っていったのは風呂場だった。当然・・・あいつが入っていったのは・・・女湯。さっきの女子トイレと同じく、男が入れない場所。くそ・・・本当になんなんだ・・・。待ってたらまた女将に怒られちまうしなぁ・・・。・・・仕方ない、一旦部屋に戻るか・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

部屋に戻った後、俺はさっそく温泉に入っている。せっかくの温泉旅行だ。これに入らないと損だろ。・・・だが、今の俺にはゆったりできる気分ではなかった。

 

「・・・上杉、こっち見ないでよ?」

 

「誰も見ねぇって」

 

なぜなら俺の入っている湯舟に真鍋もいやがるんだ。いや、正確には、この場には親父とらいは、真鍋のとこの爺さんが入っている。なんでって言われたらここは混浴だとしか言いようがない。・・・なんで混浴なんてあんだよ?まぁ、そのおかげで家族で入れるのはいいんだが・・・。

 

「つーかなんでお前までこの混浴に入ってくんだよ。おかげで落ち着かねぇよ」

 

俺たちが入っていた時、真鍋の奴は爺さんを連れて入ってきやがった。ちゃんとタオルでいろいろ隠してるからいいんだけどよ・・・。

 

「仕方ないでしょ。院長は身体が弱いから1人で身体を洗うことができないのよ。まぁ、あんたのお父さんもいて、助かったけど」

 

今親父とらいはは爺さんを気遣って、洗い物を手伝っている。物好きだな・・・。・・・しっかし五月の奴、どういうつもりだ?自分から話があると言っておきながら・・・。

 

「・・・向こうが女子風呂か・・・」

 

「ちょっと、変なこと考えてないでしょうね?てかこっち見るな」

 

「考えてねぇし、見てねぇって言ってんだろ」

 

たく・・・真鍋の奴も心配性だな。だいたい見るなっつってもこいつの見どころなんてどこもないだろ。あいつらと違ってひんそ・・・

 

バシンッ

 

「いってぇ!何しやがる!」

 

この性悪女!急に殴りやがったっぞ⁉

 

「今いらないこと考えたでしょこのクズ野郎」

 

こいつ、何俺の心を感じ取ってやがる・・・。無茶苦茶だ・・・。

 

「失礼しますよ」

 

身体を洗い終わった爺さんが俺たちの入っている湯舟に入ってきた。

 

「いやはやすみませんね。こんなジジイが混浴などと・・・」

 

「いや、別に・・・」

 

この爺さん、礼儀正しいな。この混浴に入ること自体も抵抗があったみたいだし・・・。

 

「お兄ちゃーん。のぼせる前にそろそろ出なよー」

 

「おう」

 

「さっさと出なさいよ」

 

「ほっほっほ」

 

らいはに呼ばれて、俺はさっさと風呂を上がる。ふぅ・・・やっとこの場から解放されたぜ。混浴なんて、あんま居合わせたくねぇよ。とりあえず身体を拭かねぇとな・・・。

 

「・・・ん?」

 

脱衣所に入ってバスタオルを取ろうとした時、1枚の紙がタオルに挟んであった。なんだ、これ?気になって俺はの紙を広げてみた。そこに書いてあったのは・・・

 

『0時、中庭』

 

♡♡♡♡♡♡

 

時は過ぎて0時になった時、俺は部屋を出て手紙に指定された通り、俺は中庭へと向かって。こんなもんを俺に置くってことは、五月・・・だよな?なぜこんな回りくどいことを・・・。まぁ考えても仕方ねぇ・・・。こんな暗いところ長くいたくねぇし、さっさと・・・

 

「・・・・・・」

 

「うおっ!!?」

 

び、ビックリしたぜ・・・。スタッフの爺さんだったか・・・。てかこの爺さん、ずっとこの場所にいるな。

 

「な、中庭って、こっち・・・ですよね?」

 

「・・・・・・」

 

・・・・・・またも反応なし。・・・死んでんのか?・・・まぁ、真鍋のとこの爺さんよりよぼよぼだからなぁ。無理もないか。ここはそっとしておくか。

 

「・・・あ・・・」

 

あ、ついに現れやがったな五月・・・。行ったり来たりしやがって・・・。

 

「五月。ちょうどよかった。俺も中庭に行くところだった。話ってなんだ?よほど重要なことか?」

 

「あ、あの・・・とりあえず中庭へ・・・」

 

いや、もうこの際今言え。これ以上逃げ回られてたまるか

 

「逃げ・・・?・・・あ」

 

こいつ・・・自分で言ったことを忘れやがったのか?なんだよ今のあ、は。

 

「ええっと・・・その・・・」

 

五月は言い出しにくそうだが、一息ついて、その口を開いた。

 

「・・・上杉君は・・・私たちの関係をどう思っていますか?」

 

「え?」

 

俺と、こいつら六つ子の姉妹の関係だと?・・・そんなの、パートナー以外何があるっていうんだ?

 

「それは・・・まぁ・・・ぱ・・・パートナーって言っただろう?初めて家庭教師と宣言した時だって・・・」

 

「いいえ・・・。私たちはパートナーではありません」

 

うっ・・・そんなバッサリと否定するか?初めて会った時のことを気にしてんのか?それとも最近あいつらに会えてなかったことか?・・・間違いなく後者だな。

 

「確かに最近は碌に授業もしてないから否定できんが・・・俺が教えられることはまだあるはずだろ?そんなこと言ってると、また成績落ちるぞ?」

 

「・・・・・・」

 

「それに進級できたとはいえ、俺の受けた依頼はそれで終わりじゃない。あくまでもお前たち六つ子の卒業だ。それまでは・・・一応・・・形として、家庭教師を・・・」

 

「もう結構です」

 

・・・ん?

 

「後は私たちだけでできそうです」

 

え?

 

「私たちの・・・この関係に・・・終止符を打ちましょう」

 

「・・・は?」

 

今、五月はなんて言った?結構?自分たちだけで?終止符?・・・終わり!!?

 

「何言ってんだ!!?ちゃんと説明をしてくれ!!」

 

「きゃっ⁉」

 

ガッ

 

「痛っ・・・」

 

わけわかんなくなり、俺は五月の肩を掴み、揺さぶった。その際に五月足が角にぶつかったがそんなことはどうでもいい!それよりもどういうことかちゃんと説明してほしい!!

 

「父親に言われたのか?それともお前らの意思で?なぜ今になってそんなことを・・・」

 

ガシッ!

 

「言ゅん・・・!!?」

 

ダァンッ!!

 

いってぇ・・・!・・・え?え?い、いったい何が起こった?俺は誰かに掴まれて・・・床に叩きつけられた?誰が・・・?こいつらの父親か・・・?

 

「・・・・・・」

 

!!?スタッフの爺さん!!?死んでたはずじゃあ・・・いや、こうして動いてるってことは、生きてるってこと・・・だよな・・・?ま、紛らわ・・・

 

「・・・~~~

 

?なんだ・・・?

 

~~~

 

なんかしゃべってる!!?けど・・・声が小さすぎて聞こえねぇ・・・!

 

~~~

 

「え!!?何ですか!!?」

 

孫に手を出すな

 

「はあ!!?」

 

こうも小さすぎると全然聞こえ・・・

 

「・・・ワシの孫に手を出すな・・・ぶち殺すぞ」

 

・・・・・・なんか、無茶苦茶物騒なことを言いだしたぞこの爺さん。ていうより・・・は?この爺さんが・・・六つ子の祖父?・・・もう・・・わけわかんねぇ・・・。早く家に帰りたい・・・。

 

30「スクランブルエッグ 一玉目」

 

つづく




おまけ

『2000日後の結婚式、別の部屋にて。その1』

中野??「そろそろ始まったかな?結婚式」

中野??「あの2人、うまくできるかなぁ?」

中野??「案外進行がグダグダだったりして」

中野??「うわっ、ありえそう」

中野??「あはは・・・なんだか心配になってくるね」

中野??「それより、いいことを思いついたんだけど・・・」

中野??「?どうしたの?」

中野??「うん。この披露宴が終わったらね・・・」

結婚式会場で中野家六つ子の姉妹の5人はこれからのことを話しあっているのだった。

『2000日後の結婚式、別の部屋にて。その1』  終わり

次回、風太郎視点

六海のアルバイトはどれがいい?

  • 漫画アシスタント
  • メイド喫茶
  • コンビニの店員
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