六等分の花嫁   作:先導

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スクランブルエッグ編、完結!

6人のうち、花嫁に選ばれるのはいったい誰なのか・・・ぜひとも考えてみてください。この作品は、そこを考えるのも楽しみだと思っていますので。

それにしても・・・やっぱり写真といっても、文字だけですので誰が誰をしゃべっているのかわかりませんね・・・w


スクランブルエッグ 完成

五月SIDE

 

「そっか・・・この傷、まだ残ってたんだ・・・。それでフータローは足を気にして・・・」

 

私は三玖の真意が理解できませんでした。三玖は最初こそ私と同様、上杉君を拒んでいましたが、今ではすっかり上杉君の味方であり続けていました。それが・・・突然上杉君に家庭教師をやめさせようとしてたとは、信じられませんでした。

 

「三玖・・・なぜ・・・なぜあなたが上杉君の関係を絶とうとしているのですか?私から見て、三玖は上杉君に1番味方であり続けたはずなのに・・・」

 

「ごめん。その前に五月に謝らなきゃ。あの時はおじいちゃんがいたからとっさに・・・いや・・・今となってはそれも言い訳」

 

三玖は表情を1つも変えずに口を開いていきました。

 

「私として・・・三玖として言えなかった・・・。フータローのこと大好きなのに・・・あんなことを・・・」

 

「えっ?」

 

「?」

 

待ってください・・・今三玖は何と言いましたか?大好き?誰を?・・・上杉君って言いましたか・・・て!!

 

「えええ!!?三玖って上杉君のことが好きなんですか!!?」

 

「!!?」

 

私は三玖の衝撃発表に私は驚きを隠せませんでした。

 

「そ、そうだけど・・・」

 

「ああ!!そんな!!なんてことでしょう!!こんなことみんなが知ったら驚きますよ!!」

 

(もうみんな知ってると思う・・・。というか、私がフータローのこと好きなの気づいてなかったの?)

 

なんてことでしょう・・・まさか三玖が上杉君のことを1人の異性として見ていただなんて・・・今年1番の衝撃ですよ!こんなこと他のみんなが知ったら何と思うか・・・。というより・・・

 

「い・・・いいのでしょうか・・・?仮にも、上杉君と私たちは、教師と生徒という関係なのですから・・・」

 

恋愛については私から口出しするつもりはありませんが、仮にも私たちは上杉君の生徒・・・そのような関係で恋をするというのはいかがなものかと・・・

 

「だからこそ、だよ」

 

「?」

 

「私たちは教師と生徒。それでいいと思ってた」

 

「・・・どういうことでしょうか?」

 

いまいち三玖の真意が理解できません。上杉君に家庭教師を辞めさせることとどう関係があるというのでしょうか?

 

「・・・私、学期末テストで、1番の成績を納めたら、フータローに告白するつもりでいた」

 

「告白⁉」

 

えっ⁉もういきなり告白ですか⁉予想外の発言でびっくりしますよ・・・って、1番?1番の成績を収めたのは・・・

 

「1番さえとることができたら、フータローは私を認めてくれると思った。だから、私が1番の生徒になればいいって思ってた。こんな私でも自分を認められる・・・チャンスは誰にでも公平にあるって・・・」

 

「三玖・・・」

 

「でも・・・覆された。1番になったのは一花だった。それも・・・たった1点差で・・・。望みがつぶれて自信がなくなってしまった・・・このままじゃいけないって思った」

 

三玖は・・・学期末試験が終わってから、ずっとそのことで悩んでいたんですね。三玖は自信をもって上杉君に告白するために試験で1番を狙っていたんですね。でもそれを一花が1番を取ってしまったばかりに、また自信をなくしてしまった・・・そういうわけですか。

 

「だから決めたんだ・・・一縷の望みが潰えたなら、今の関係を、終わらせようって。生徒と教師の関係じゃ・・・私とフータローの関係はずっと変わらないから・・・。そのためにも、こうする他に方法がなかったんだ・・・」

 

三玖は三玖なり考えたうえで、今回のような行動に出たのですね・・・。三玖は、生徒と教師という関係から脱したくて・・・それで・・・。ですが・・・

 

「・・・三玖の気持ちはわかりました。そのうえでお願いです」

 

「お願い?」

 

「はい。明日の旅行の最後の日に・・・上杉君に会ってください」

 

「フータローに?・・・わかった」

 

三玖・・・確かに私たちは生徒と教師という立場です。ですが、私は三玖に知ってもらいたいのです。私たちの関係は、決してそれだけではないということを。この話の後は温泉に入り、明日に備えて部屋に戻って早めに就寝しました。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日、今日は家族旅行最終日・・・今日のお昼にはおじいちゃんとお別れしなければいけない日です。私たちはそのための帰り支度をしている最中です。

 

「さあ、昼の船を取ってある。帰り支度を済ませておくようにね」

 

「三玖、トイレから帰ってこない・・・。最後にみんなで温泉行きたいのに・・・」

 

「・・・・・・」

 

三玖・・・今頃は上杉君と会っている頃でしょう・・・。私は、こんな形でしか手助けはできませんが・・・頑張ってください・・・。

 

「いないっていえば・・・二乃と六海もいないね。五月ちゃん、何か知らない?」

 

「え?二乃と六海ですか?私は何も聞いていませんが・・・」

 

言われてみれば・・・先ほどから二乃と六海の姿が見当たりませんね・・・。いったいどうしたというのでしょうか・・・?そういえば・・・六海も何かしら悩みを抱えていたのはわかってはいましたが、今日はそんな雰囲気は出ていませんでした。何かあったのでしょうか・・・?

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

六海SIDE

 

みんなが帰り支度をしている間、六海は今二乃ちゃんを連れてみんなに配るための飲み物を買いに行ってるよ。

 

「一花ちゃんはカフェオレ、三玖ちゃんは抹茶ソーダ、四葉ちゃんはメロンソーダ・・・五月ちゃんは何にしよう・・・?」

 

みんな飲みたいものはバラバラ・・・特に五月ちゃんにいたってはカレーは飲み物とかいうわけわからないことを言ってるもんだから、飲み物を選ぶにしても大変なんだよねー・・・。

 

「無難にコーヒーでいいじゃない」

 

「そうだね。そうしよっか。じゃあ真鍋さんオススメにしよっと」

 

二乃ちゃんの助言で五月ちゃんに渡す飲み物は真鍋さんオススメのコーヒーに決めたよ。こういう時、誰かの意見は助かるよねー。じゃあ後は二乃ちゃんには紅茶、六海は牛乳を買ってっと・・・。

 

「・・・で?話って何よ?」

 

残りの飲み物を買おうとしたら二乃ちゃんが本題に入ってきた。実は六海が二乃ちゃんを呼び出したのは飲み物とは別の本題があったからだよ。

 

「・・・昨日の好きな人の話の続きなんだけど・・・」

 

「!」

 

六海の話のお題目で二乃ちゃんは面をくらった顔になってる。

 

「二乃ちゃんの好きな人って・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!秘密だって・・・」

 

「風太郎君でしょ?あの時、風太郎君に告白してたもんね」

 

「!・・・見てたのね・・・!」

 

ついでに言えば、あの告白を見る前から、何となく気づいてた。ただあの時は確証がなかったからあまり深くは言えなかったけどね。

 

「六海はね・・・ずっと怖かったの」

 

「??」

 

「凶鳥でなくなって以来、六海はもう喧嘩しないって誓っておきながら林間学校で、1人の男の子を巡って喧嘩をしちゃった・・・。その時でも実は怖かったんだ・・・。六海の行動のせいで、姉妹の関係が崩れちゃうんじゃないかって・・・」

 

六海は、何においても姉妹の関係が崩れることは耐えられない・・・。姉妹との交流を断ち切ろうとしたことの辛さを、六海がよく知っているから・・・。それでも林間学校では不思議と、自分の気持ちを優先にしてしまっていたんだ。

 

「それでも六海はキンちゃんに対する気持ちがすごく強かった。それだけ本気だったんだよ・・・六海の気持ちは」

 

「何よ?今更林間学校の話?それはもう終わっ・・・」

 

「だから二乃ちゃんが風太郎君のこと、好きだって知った時、六海は怖くなったんだ。また林間学校の二の舞になっちゃうんじゃないかって・・・もしかしたら、二乃ちゃんとの関係が壊れちゃうんじゃないかって・・・ずっと思ってた」

 

「・・・!あんた・・・まさか・・・」

 

「でも、もういいの。この気持ちに嘘はつけない・・・だから、六海は六海の好きにやるって決めたから」

 

六海は今でも関係が崩れることは怖いよ。でも、それでも・・・六海はこの恋に従うことにしたよ。二乃ちゃんや三玖ちゃんがライバルとなるなら、正面からぶつかるし、喧嘩になっちゃっても、わかってもらえるまで何度も、何度も話し合うつもりだよ。これが六海なりの解決策。これも全部、昔の六海を思い出したから・・・そのきっかけをくれた四葉ちゃんのおかげだから。

 

「二乃ちゃん・・・今でも風太郎君のこと、好き?」

 

「・・・好きじゃなかったら、告白なんてしないわよ」

 

「・・・だよね。そう言うと思ったよ。六海も、風太郎君のこと好きだからわかるよ」

 

「・・・っ!やっぱり・・・」

 

六海の告白に、二乃ちゃんは面をくらって、少し苦虫を嚙み潰したような顔になってる。そうだよね・・・いきなり恋のライバルが現れるんだもん。でもその気持ちは六海も味わったもん。お相子だよ。だから二乃ちゃんの気持ちは気にしてなんかいられない。

 

「本当、なんでこういう時、好きな人が被っちゃうんだろうね?」

 

「本当よ・・・できれば聞きたくなんてなかったわ・・・」

 

「ごめんね。でも六海は、そんな二乃ちゃんを構ってなんかあげない」

 

六海は少しイタズラ心、少し仕返しを込めて、少しだけ笑顔を見せてこういうよ。

 

「だってこれは六海の恋なんだもん。六海が幸せにならなきゃ意味がない・・・でしょ?」

 

「・・・っ!仕返しのつもり?言ってくれるじゃない・・・」

 

そんな六海の発言に二乃ちゃんは意外にも挑戦的な笑みを浮かべてる。少しは六海のことをライバルとして、見てくれてるのかな?

 

「まあいいわ。あんたがその気なら受けてたってやるわ。こっちだって、遠慮なんかしないっての。じゃないとフータローをとられるかもしれないし・・・」

 

二乃ちゃんは六海に向けてそんな事を言ってきた。一応はよかった・・・のかな?林間学校みたいにならな・・・

 

「まあ、最終的にはアタシの方に振り向くはずだし、それはないか。アタシはどこぞのヘタレで引っ込み思案の泥棒猫とは違うしねぇ?」

 

ぶちっ!

 

「こ、この・・・!言わせておけば・・・!」

 

「あーら、誰もあんたとは言ってないわよ?」ニヤニヤ

 

に・・・ニヤニヤした顔でからかってくる・・・!嘘だ・・・絶対六海のことを言ってるよ・・・!せっかく気を使ってあげたのに・・・また泥棒猫なんて・・・!

 

「そ・・・そうだよね!六海のことじゃないよね!だって二乃ちゃんは誰のことも気にしたりしないほどの猫かぶりだもんね!」

 

六海は嫌味を含めた発言をするよ。

 

「あら?嫌味のつもり?むしろ褒め言葉に聞こえるわね」

 

ひ、開き直っちゃったよ!恋に本気な二乃ちゃんには利かなくなっちゃったの⁉

 

「言っておくけどね!六海の方がリードしてるもんね!この前なんて、六海は風太郎君とデートしたもんね!」

 

「はあ!!?何よそれ⁉そんなの聞いてないわよ!!?」

 

「言ってないも~ん」

 

ふふん、どう、二乃ちゃん?六海はこーんなに進んでるだよ?まぁ、と言ってもこれキンちゃんの時の話だけど。

 

「ぐぐぐ・・・べ、別にいいわよ。フータローはアタシがお菓子を作ってる時、傍にいて手伝ってくれたのよね。それも付きっ切りでね!」

 

「何それ⁉そんなの聞いてないよ⁉」

 

「言ってないからね。

(まあ、キンタロー君の時の話だけど)」

 

に、二乃ちゃんってばいつの間にそんなことまで・・・!これはもっとインパクトが強い奴じゃないと驚かないかも・・・!ええい、恥ずかしいけど・・・!

 

「な、なら!六海はお風呂で裸を見られたんだからね!」

 

「あら奇遇ね。アタシは2回も裸を見られたわ。あんたと違ってね」

 

「そんなの屁理屈だ!」

 

「屁理屈なのはどっちよ!」

 

六海と二乃ちゃんの間にはものすごい火花がバチバチと散ってる。

 

「・・・ぷっ、ふふふ・・・」

 

「あははは・・・」

 

なんかもう、林間学校と同じようなケンカしちゃったけど・・・不思議と前みたいな嫌悪感はなかったな。これが、変化っていうのかな?

 

「大分長く話し込んじゃったわね」

 

「そうだね。そろそろ皆のところに戻ろっか」

 

早くしないとパパに怒られちゃうから、買った飲み物を持って部屋に戻らなきゃ。・・・あ、そうだ。これだけは二乃ちゃんに言っておかなきゃ。

 

「・・・六海、二乃ちゃんには負けないから」

 

「アタシだって、この恋は譲る気はないわよ」

 

六海と二乃ちゃんはお互いに笑いながら宣戦布告に似たことを言った。こうして今も仲良しでいるけれど、きっと六海たちの関係はもう今までの関係と違うと思う。1人の男の子を思う、好敵手、ライバルの関係・・・そんな感じになったと思う。

 

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♡♡♡♡♡♡

 

三玖SIDE

 

私はみんなにトイレに行くって嘘をついて、大広間までやってきた。五月に言われた通り、フータローに会いに。でも・・・これにいったいなんの意味があるんだろう・・・。気乗りしないな・・・。・・・考えても仕方がない。意を決して私は大広間へと入っていく。それと同時に、フータローもこの大広間に入ってきた。

 

「・・・お前は初日の夜、俺と話した偽五月ってことで間違いないんだな?」

 

「・・・はい。私の正体は・・・」

 

「待て」

 

こうして会っても意味がないと思って私はすぐに正体を明かそうとしたらフータローに止められた。

 

「結局俺は六つ子ゲームに勝つことができなかった。俺の負けだ。降参だ。だが、このまま負けっ放しで終わるほど癪なものはない」

 

・・・それってつまり・・・

 

「リベンジマッチだ。全員は無理でも、せめてお前だけでも俺が正体を見破ってやる」

 

フータロー・・・どうしてそこまで必死になるの?もういいのに・・・。

 

「全ての経緯は本物の五月から聞いてはいるな?」

 

「・・・はい」

 

「なら話は早い。俺は偽五月の特定のために・・・何よりお前らを放っておく訳にもいかんから頼みを引き受けた。あいつに頼まれたことを今から説明するぞ」

 

フータローは真剣な顔をして、私と面を向かって話す

 

「五月以外の全員、何かしらの悩みがあるらしいな。俺に課せられたのは、お前らの悩みを聞き出すことだ。解決すれば、お前の真意がわかると思い、引き受けた」

 

「・・・そうですか」

 

「まず最初に四葉。あいつの悩みはこの旅行自体にあった。昨日の偽五月5号が話してくれた。悩みが変装であるのなら、この悩みは家に帰れば自然に解決する」

 

旅行が決まってから、四葉の様子がおかしいのはそういうことだったんだ・・・。確かに四葉は変装は得意じゃないからね・・・。

 

「そしてお前は四葉じゃない。昨日はわからなかったが、嘘をつけないあいつのことだ。どこかでボロを出しそうだ」

 

「・・・正解です」

 

「ふぅ・・・じゃあ次に二乃だ。お前は二乃でもない。あいつは少々詰めが甘かった。顔の見分けはつかないが、ポイントはあった。あいつは足の爪に塗るマニキュア・・・」

 

「ペディキュアですね」

 

「そ・・・それを落とし損ねていたんだ。たった今、確認した」

 

「待ってください。顔の判別もつかないのに、なぜペディキュアを塗っていたのが二乃だってわかったんですか?」

 

確かにペディキュアを塗ってるのは二乃だけだけど、どうしてそれをフータローが気づいたのかがわからない。二乃だってそんなこと、言ってないはずなのに。

 

「そ・・・その話は置いといてくれ・・・ちょっとトラブルがあってな・・・」

 

トラブル?何それ?しかもなんかはぐらかされたような気がする・・・。まぁ、別に何でもいいんだけど・・・。

 

「・・・まあいいです。正解です。では、二乃の悩みというのは?」

 

「それは・・・そうだな・・・すまん・・・これだけは・・・言えない」

 

???なんか妙によそよそしく感じる・・・。逆に聞いたら、困らせちゃうかな。

 

「・・・わかりました。聞かないことにしましょう。これでは私は一花か三玖、六海に絞られたわけですが・・・」

 

「あー、待った。その前に・・・デミグラス」

 

「えっ!!?で、デミ・・・?」

 

え?え?急にどうしたの、フータロー?なんか今日はちょっと変だよ?

 

「???」

 

「いや、その反応で安心したぜ・・・。念のための確認をだな・・・」

 

?確認って何の?変なフータロー。

 

「とりあえず話を戻すぞ。これで一花、三玖、六海に絞られたが・・・お前がこの3人の中の誰かなのは間違いないが・・・俺はその誰かというのを、まだわかっていない」

 

「・・・っ!!・・・そうですか・・・」

 

・・・いったい私は何を期待しているんだろう・・・もう期待なんかしないって昨日決めてたはずなのに・・・。

 

「・・・ところでさ・・・えーっと・・・俺のこと呼んでくれない?」

 

「!」

 

きっとこれはフータローの誘導尋問なんだね。こんな簡単な引っ掻けに引っかかるのは妹3人ぐらいだけ。私はその手には乗らない。

 

「上杉君」

 

「なっ・・・!」

 

「その手には引っかかりませんよ」

 

「ぐぅ・・・。まだだ。質問を続けるぞ」

 

・・・まだ続けるの?

 

「徳川四天王って酒井、本多、榊原と・・・後誰だっけ?」

 

「わかりません」

 

「ちょっとここで絵を描いてみてくれねぇ?」

 

「用紙がないので描けません」

 

「内緒話があるから耳を貸してくれ」

 

「左耳ならどうぞ」

 

(ぜ、全然ボロを出さねぇ・・・!)

 

・・・フータロー・・・もうやめて・・・こんなことするのは意味なんかないよ。フータローじゃあ・・・私を見つけられない・・・。わかりきってるから・・・。

 

「・・・あー、もう無理だ。お手上げだ」

 

フータローは私のことを最後までわからなかった。やっぱりフータローじゃ無理だったんだ。

 

「・・・そう・・・ですよね」

 

「ああ。俺の負けだ。降参だ。だからあいつを呼んできてくれ」

 

「あいつ?」

 

「ほら、あいつだよ。この六つ子ゲームを仕掛けてきた・・・次女の・・・えーっと、名前なんだっけか・・・」

 

・・・ああ、そういうこと・・・。それが私たちを特定する最後の質問か。どうせ今の関係を終わらせるつもりだったし・・・これ以上、やる意味はない。だから・・・

 

「・・・二乃ちゃんのこと?」

 

「!!ははははは!かかったな!二乃・・・もとい姉妹全員にちゃん付けで呼ぶのは六海だけだ!そして一花は五月だけにちゃん付けで呼ぶ!よってお前の正体は六海だ!!」

 

ほら、私がちょっと六海の真似をしたら間違えてくれた。結局、フータローは私たちのことを、ただの生徒としか見ていないんだ。だからもう、終わらせよう。

 

「ちぇー、引っかかっちゃたよー。風太郎君、六海を嵌めたなー」

 

「たくっ、相変わらず手のかかる奴だ。お前と一花の悩みだけ検討がつかなかったしさ。一花は仕事の悩みか?」

 

「へぇ、すごいや。そんな事までわかっちゃうんだ」

 

「お、当たりか。それで、お前の悩みはなんだ?また二乃と喧嘩でもしたか?」

 

誰がなんの悩みを持っていても、私が知るわけがない。だって私は一花でも六海でもないから。

 

「まぁ、そんなところかな?でも解決したから大丈夫だよ」

 

「だったらなぜ・・・」

 

「じゃあ六海、帰り支度あるから、またね」

 

「え?いや・・・」

 

私は話を終わらせるためにフータローを待たずに部屋を出ようとする。これでよかったんだ。これで・・・。今の関係を終わらせないと、私たちの関係は変わらない。こうでもしないと・・・。だから今のやり取りに意味なんて・・・

 

「・・・・・・三玖か?」

 

意味・・・なんて・・・

 

「・・・何で?さっき六海だって言ったじゃん」

 

「あ・・・いや・・・気のせいだったらすまん。ただ一瞬・・・ほんの一瞬だけ・・・お前が三玖のように見えた」

 

「・・・フータロー!!

 

 

 

 

 

当たり」

 

 

 

 

 

フータローが私を見つけてくれた・・・私はそれにたいして嬉しくて、涙が溢れさせながらフータローに思い切って抱き着いた。その勢いで私とフータローは倒れこんだ。

 

「・・・ま・・・マジか・・・本当に当たった・・・」

 

「・・・1つ聞いていい?」

 

「な、なんだ?三玖」

 

「私の悩みは心当たりがありそうだったよね?私が偽五月じゃなかったら、なんだと思ったの?」

 

フータローの話を聞いている限り、そこが気になっていた。フータローの顔を見てみたら、なんだか言いにくそうな顔をしてる。

 

「・・・あー・・・さっき間違えてたとわかった今となっては恥ずかしい話なんだが・・・」

 

「フータロー・・・いいよ。話して」

 

「う・・・笑わないで聞いてくれ」

 

フータローは気恥ずかしそうに口を開いて、私の悩みを言った。

 

「ば・・・バレンタイン・・・。そのお返しを返してないことに腹立ててんのかと思ったんだ・・・」

 

全然違うけど・・・フータローはそんなことを気にしてくれてたんだ・・・。それは素直に嬉しいけど・・・それ以上におかしくて、つい思わず笑っちゃう。

 

「あはははははは!」

 

「ば・・・笑うなって言っただろ!あー、恥ずかしい!」

 

だって、あまりにも柄じゃなさそうなことをフータローが言い出しちゃうんだもん。笑っちゃうくらいに。

 

「そ、そういうお前だってなんで俺に家庭教師を辞めてほしいと思ったんだよ?」

 

「あ、やっぱそれなしで」

 

「はあ!!?なんじゃそりゃ!!?」

 

フータローは教師・・・私は生徒・・・その関係は変わらない。でも、全部が変わらないなんてことはなかったんだ。ほんの一瞬だけだったかもしれないけど・・・フータローは私を見つけてくれた・・・それが何よりの証拠になるし、それだけでも十分だった。

 

フータロー・・・私を見つけてくれて、ありがとう。

 

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四葉SIDE

 

3日続いたこの旅行も今日が最終日。二乃と六海、そして三玖も戻ってきたところで、私たちは全員揃って女湯で、この旅行最後の温泉に入っています。途中で上杉さんたちと真鍋さんたちと偶然出会っちゃったので、らいはちゃんと真鍋さんも一緒です!えへへ・・・賑やかで楽しいなぁ~。

 

「・・・やっぱりこの差はあんまりだわ・・・」

 

「えええ!!?きゅ、急にどうしたんですか、真鍋さん⁉」

 

何故か私たちを見て、真鍋さんがかなりへこんでるんですけど、私、何かしました⁉

 

「あー、なんか察したわ・・・」

 

「あ、あのね、真鍋さん、おっぱいが大きくてもいいことは・・・」

 

「それ前にも聞いたわよ・・・。はぁ・・・らいはちゃんだけよ・・・私の味方でいてくれるのは・・・」

 

「???」

 

「それは・・・どうなのでしょう・・・」

 

いったい何に落ち込んでいて、なぜらいはちゃんが真鍋さんの味方なのか、まったくわかりません!そしてらいはちゃんの頭をなでて・・・羨ましいです!そ、それはそうと・・・

 

「ねぇ、らいはちゃん」

 

「なーに?四葉さん」

 

「今日で旅行もおしまいだけど、どうでしたかー?」

 

「うん、すっごく楽しかったよ。昨日はお父さんと一緒に遊びに行ったんだー。その時に、恵理子さんが遊んでくれたりもしたよー」

 

「なんか・・・四葉?が悲しそうな目で私を見つめてくるんだけど・・・」

 

「あはは・・・六海も四葉ちゃんの気持ちはわかるけどねー・・・」

 

ま、真鍋さん・・・らいはちゃんと一緒に遊べて・・・本当に羨ましいです・・・。私もそっちに行けばよかった・・・。

 

「お兄ちゃんがいなかったのは残念だけど、すごいところにブランコがあってね・・・それでね・・・恵理子さんが中学生の時のお兄ちゃんのお話をいっぱいしてくれてね・・・」

 

らいはちゃんが楽しそうに話している姿を見ていると、こっちまで嬉しくなっちゃいますね。

 

「この旅館も最初は驚いちゃったけど・・・とってもいいところだって、学校が始まったら千尋ちゃんたちに自慢するんだー」

 

きゅんっ、きゅんーー♡

 

「わーー!!らいはちゃんやっぱりいい子だよー!意地でもお持ち帰りしたいー!!」

 

「フータローに怒られるわよー」

 

「でも六海の気持ちわかる!!戸籍改ざんという犯罪ギリギリの手を使ってでも私の妹にしたいですー!!」

 

「思いっきり犯罪ですが・・・」

 

だってだって!こんなにかわいいんだよ⁉妹にしたいっていう欲求は当然だと私は思うな!

 

「こらこら、らいはちゃんが困ってるでしょ?らいはちゃん、こっちにおいで。髪、洗ってあげるわよ」

 

「わー!恵理子さん、ありがとー!」

 

「「あー、らいはちゃーん・・・」」

 

あー、らいはちゃんが離れていくー・・・もっとスキンシップしたいー・・・

 

「こほん・・・真鍋さんはこの旅行はどうでしたか?」

 

五月が咳払いをして真鍋さんに旅行の感想を聞いてきました。

 

「ええ。楽しかったわよ。院長の付き添いで来たけど、基本的には自由気ままにのんびりできたし、この島の景色もよかったし、旅館の料理もコーヒーもおいしかったし・・・今度は孤児院のみんなで一緒にまたここに行きたいわね」

 

真鍋さんもこの旅行が楽しかったのか、嬉しそうな顔をして笑っています。そこまで気に入ってもらえると、こっちまで嬉しくなっちゃいます。

 

「・・・そういえば・・・三玖さんと一花さんはどこ?」

 

「2人ならそこのサウナじゃないかなー?」

 

「へー!そんなのあったんだ!」

 

「でもあれからずいぶん経ったわよ?長くないかしら?」

 

そういえばそうですね・・・。三玖も一花も、のぼせてないといいんだけど・・・。

 

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♡♡♡♡♡♡

 

一花SIDE

 

サウナに入って、三玖と我慢比べをしてからもうどれくらい経ったんだろうね・・・もうお姉さん、だいぶいい感じに汗をかいてるんだけどなぁ・・・。汗を流したらきっと温泉はさらに気持ちがいいんだろうなぁ。

 

「三玖・・・もう限界なんじゃない・・・?」

 

「ま・・・まだ平気・・・」

 

わぁ・・・三玖ってばまだいけるんだ。このサウナに入ったタイミングは一緒なはずなんだけどなぁ・・・。

 

「すごいね・・・お姉さん、そんなに無理はできないよ・・・。熱中症になっちゃうかも。私の降参でいいよ」

 

自分で我慢比べ、なんて言っておいて情けないなぁって思うけど、やっぱ無理はよくないよね、うん。さ、早いところ外に出て涼んで、温泉入ろっと。

 

「一花」

 

「!」

 

外に出ようとしたら、急に三玖が話しかけてきた。

 

「学期末試験・・・本当はすごく悔しかった。しかも1点差だから余計に・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・多分、顔に出てたから気づいてたよね」

 

いや、いつもの無表情だったけど・・・。でも、不思議と悲しさは結構伝わってたから、あの時は本当に心苦しかったよ・・・。

 

「でも・・・もういい」

 

「!」

 

「私たちは生徒と教師だけど・・・勉強だけが全てじゃないって今日わかったから・・・。勉強を諦めたつもりはない・・・だけど・・・私は私を好きになってもらえる、何かを探すって決めたんだ」

 

三玖・・・朝トイレに行くって言ってたけど・・・その間に何かいいことでもあったのかな?今の三玖の顔、すごく晴々としているよ。妹のこういう姿を見るのは、姉としては嬉しいけど・・・どうせフータロー君関連とかでしょ?そう考えると、ちょっとおもしろくないんだよね。だから・・・せめてもの抵抗。

 

「へぇー・・・そうなんだ」

 

私はサウナの外に出るのをやめて、三玖の隣に座って、我慢比べを続けることにしたよ。

 

「・・・降参、したんじゃなかったっけ?」

 

「・・・なんか、負けたくなくなっちゃったよ」

 

私だって、好きなようにふるまうんだし、これくらいいいよね。だって、私だって、フータロー君のこと、大好きなんだし、さ。・・・あ、そうだ。いいこと思いついちゃった。帰ったらさっそくみんなに提案しよっと♪

 

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二乃SIDE

 

今日の六海のカミングアウトには本当に驚いたわね。まさか・・・フータローを巡るライバルが1人増えるなんて誰が想像できたのかしら。おかげで今日は六海と思いっきり口喧嘩しちゃったわ。ま、あの子が自分の気持ちを素直に出すのは喜ばしいけど、なんか複雑だわ。

 

・・・そしてさらに複雑って言えば・・・一花よ一花。あの長女、いったいどういうつもりなのよ。昨日アタシはパパを止めるように言ったはずなのに、来るはずのないパパがやってきて部屋に連れ戻されるし・・・。これはこう考えるべきよね。一花は意図的にパパを見逃した。例えパパが旅館から出たと言っても、ここからならすぐに追いつける距離だし、絶対そうしか考えられないわ。

 

・・・となると、残された可能性として考えられるのは・・・一花もフータローのことを狙っている。だからあえてパパを見逃す行為に走った。完っ全にやられたわ・・・。今日1日だけで恋のライバルが一気に増えるだなんて・・・もうとんだ災難だわ!

 

「あの、二乃、六海、どうしたんですか?」

 

「・・・二乃ちゃん・・・」

 

「ええ・・・わかってるわ・・・。まさか三玖やあんただけじゃなかっただなんてね・・・」

 

六海に昨日のことを話したら、六海も同じ考えに至ったらしいわね。まさか一花まで加わるなんて、思わなかったわ。こんなことなら相談なんてするんじゃなかったわ!

 

「してやられたわ・・・」

 

「抜け駆けしようとするから罰が当たったんだよー」

 

「ぐぐぐぐ・・・」

 

あんたはお風呂以外じゃ特に行動しなかったくせに偉そうなこと言ってるんじゃないわよこのバカ末っ子。でも強く言い返せないのもまた悔しいわ・・・!

 

「・・・こんなにライバルが増えるなんて・・・もうなりふり構ってられないかもしれないわね・・・」

 

「六海だって、負けるつもりないもん!!」

 

「あの・・・2人は何の話をしているのですか?」

 

あら、五月は話がついていけてないみたいね。けど・・・一花といい六海といい、これ以上ライバルが増えるのは、あまりよくないわ。不利になるかもしれないし・・・。

 

「・・・五月、あんたはアタシに隠し事してるんじゃないでしょうね?」

 

「!」

 

「五月ちゃん?どうなの?」

 

「・・・あったとしても言えないから、隠し事なんですよ」

 

「・・・そうだよね」

 

「・・・それもそうね」

 

六海みたいなカミングアウトされても困るし、五月に隠し事がないか聞いてみたけど、答えてくれないわね。まぁ、あの様子だと、可能性としては薄いでしょうけど。これからいろいろ対策を考えないといけないわね・・・。フータローに振り向いてもらうのは、アタシなんだから!

 

「六海、ちょっとサウナに付き合いなさい。嫌とは言わせないわよ」

 

「それくらいいいよ。ただ普通に入るのはつまんないし、我慢比べで勝負しようよ。負けたら勝者の言うことを何でも聞くってどう?」

 

「へぇ・・・面白そうじゃない。やってやろうじゃない」

 

「じゃあ、行こっか」

 

六海は何かしら自分の得を得ようと思って勝負を仕掛けてきたんでしょうけど好都合だわ。逆に利用して、アタシの恋に有利に使わせてもらうわよ・・・!

 

バチバチバチッ!

 

「に、二乃?六海?」

 

アタシと六海の間には、目には見えない火花が散っているのが自分でもわかる気がするわ。

 

「ふぅ・・・なんだかこの温泉、最初に入った時と比べて、熱くなった気がするわ・・・」

 

「そうですかねー・・・」

 

「絶対そうよ。らいはちゃんもそう思うわよね?」

 

「うん。お兄ちゃんたち、のぼせてないといいけど・・・」

 

ふぅ・・・フータローは今頃、男湯でのんびりしてるんでしょうね・・・。なんだか昨日のお風呂が心残りだわ・・・。怒らず、もうちょっと粘ればよかったわ・・・。

 

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♡♡♡♡♡♡

 

風太郎SIDE

 

・・・さみぃ・・・。温泉に入ってるはずなのに、こんなに寒く感じるのは初めてだ・・・。なんでって言われたら、この男湯に入っているメンツが、なぁ・・・。いや、親父や真鍋のとこの爺さんはまだいい方なんだよ。だが問題は、親父の隣にいる人・・・

 

「カーッ!たまんねぇなぁ!お前も飲めよ、マルオ!」

 

「上杉、僕を名前で呼ぶな」

 

・・・六つ子の父親もいるんだよなぁ・・・。どうにも二乃の一件以来、俺はこの人に警戒されてるらしく、結構警戒の目でこっちを見てくるんだよなぁ・・・。しかも真顔で俺が嫌いだって大人げないことを言うくらいだし・・・正直、苦手だ・・・。つか親父、あの人と知り合いだったのか?

 

「それに酒は苦手だ。特別な日にだけ飲むと決めている」

 

「ったく、お前は昔からかてぇーんだよ。長湯して、少しはふやけたらどうだ」

 

「ほっほっほ・・・」

 

ダメだ・・・いたたまれねぇ・・・。この空間、とても耐えられそうにねぇぞ・・・。爺さんは笑ってみてるだけだし・・・。

 

「じゃ、俺先に出るから・・・」

 

「おー」

 

こんなとこ、長居は無用だ。さっさと上がって、部屋で帰りの準備を進めないと・・・

 

「・・・そういや中井さんから不思議な話を聞いたんだが・・・」

 

「やめてくれ。僕とお前は世間話をする間柄でもないだろう」

 

「まぁそう言わずに聞けって。知っての通りこの旅行はうちの息子と院長さんとこのお嬢ちゃん、お前んとこのお嬢ちゃんが偶然当てたもんだ。けど、こんな偶然があると思うか?6組限定だぜ?」

 

!風呂場の方から、親父の会話が聞こえてきた。いや・・・偶然な訳がねぇ。俺は昨日、六つ子の父親と爺さんの話を聞いちまったから断言できる。

 

「そこで中井さんに質問したんだ。この旅行券が当たった客は何組来ましたかってな。それで中井さん、なんつったと思う?」

 

「・・・・・・」

 

「驚いたね。俺らより先に既に5組来てたんだってさ」

 

「・・・確かに、不思議な話だな」

 

「だろー?そう思うだろ?」

 

・・・俺は早いとこ服に着替えてその場を早足で離れていく。

 

俺たちより先に既に来ていた5組の客・・・1組は真鍋たちで間違いねぇ。そして残り4組は・・・恐らくあの六つ子と父親なんだろう。だが、三玖が同じ旅行券を何枚も当てたなんて偶然はいくらなんでもありえない。だったらどうしてか?多分だが、残りの旅行券は、あの父親が用意した偽の旅行券だろう。

 

そしてあの父親がわざわざ偽の旅行券を作り出してまでここに来た理由・・・そんなの、決まってる。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『最後くらい孫たちとまともに話してはどうだろうか?あなたに残された時間は少ないのは、わかっているはずだ』

 

『思い出は残さぬ。あの子らに、二度と身内の死の悲しみは与えたくない』

 

♡♡♡♡♡♡

 

正論しか言わねぇあの人のことだ。昨日の話は本当のことだろうな・・・。その後の会話ことは、あまり聞いてないが・・・。考え事をしていたら、フロントまでたどり着いた。そこには、相変わらず爺さんが突っ立っていた。

 

「あのー・・・実は昨夜の話を聞いたんですが・・・」

 

「・・・・・・」

 

・・・やっぱ返事がないな。・・・死んだのか?つーか本当に死んでそうだから笑えねぇし・・・というか、洒落になんねぇよ。・・・つーか俺はいったい何をするつもりでここに来たんだ?だいたいこれは他所の家の事情だろ?俺にできることなんて、何もないはずだ。・・・だが・・・

 

「・・・お世話になりました」

 

俺は爺さんに頭を下げ、敬意を示した。この爺さんには、あいつらのことで世話になったからな。せめてもの礼儀は示さなきゃ、失礼ってもんだ。

 

「・・・孫はワシにとって最後の希望だ。娘の零奈を喪った今となってはな」

 

「え?」

 

今この爺さんはなんて言った?零奈だと?なんで爺さんがその名を?てか・・・ちょっと待て。娘って言ったか?だが俺が会った零奈は俺と同年代だったぞ?・・・いや、待てよ?そういえばあの時あいつ、本名は明かせないって言ったな。そしてこの爺さんは娘は亡くなったって・・・。・・・まさか・・・あの時俺が出会った零奈の正体は・・・

 

「・・・若いの。孫たちに伝えてくれ」

 

「?」

 

「己を隠さず、自分らしくあれ、と」

 

「!!爺さん・・・」

 

この爺さんは、最初から気づいていたんだ・・・爺さんのために姉妹全員が五月の変装をしていたということを・・・。そうでなきゃ、こんなことを言いだすわけがねぇ・・・。やっぱりこの爺さん・・・ただ者じゃねぇな・・・。

 

「・・・爺さん。あいつらは・・・きっと乗り越えます。あなたの死も。あいつらはとても強い。あいつらとは短い付き合いですが、それは必ず保証します」

 

「・・・・・・」

 

「またここに来ます。あなたとの思い出を作りに。その時は・・・」

 

「・・・その時は・・・6人の顔くらい見分けられるようになってるんだな」

 

超最難関な課題を出したもんだな。だが・・・上等だ。この旅館に再び来るまでに、必ず見分けられるようになってやるぜ。爺さんに言いたいことを言い終えたから、さっさと帰る準備しに俺は部屋に戻っていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

旅館から出て、爺さんと別れを告げた後、この旅行に来ているメンバー全員は記念写真を撮るという名目で島1番の観光スポットである誓いの鐘だっけか?そこで集まっている。姉妹たちの姿は・・・変わらず五月の姿だった。

 

「それでは撮りますよ。はい、チーズ」

 

カシャッ!

 

江端さん、だっけか?この人。まぁいい。この人が撮った記念写真は・・・うーん・・・傍から見るとやっぱ五月が6人いるとしか見えないんだよなぁ・・・。

 

「よかったー、みんなで撮っておきたかったんだー」

 

「この姿のままでよかったのかなぁ?」

 

「これはこれで記念だね」

 

「いやぁ、じっくり見ても誰が誰だかわかんねぇなぁ」

 

「確かに。全然わかんないですね、これ」

 

「お父様も見分けられますよ。があれば!!」

 

「愛で(アイ)を補うってか?ガハハハ!」

 

「寒っ!」

 

「ほっほっほ・・・」

 

「さあ、行こうか。この辺りは滑りやすくて危険だ」

 

・・・愛があれば見分けられる・・・か・・・。

 

「・・・だとすれば・・・あの時俺が三玖だとわかったのは・・・」

 

いや、それは言い換えれば他の奴らも見分けられるってことになるよな?だとしたら、特別な何か、とか?・・・まさかな。見分けられたのは一瞬だけだったし、それはないか。う~ん・・・何だろうなぁ・・・。

 

「お兄ちゃーん、1人でブツブツと不気味に呟いてないで、早く帰るよー」

 

「おう」

 

おっと、俺が考え事をしてる間にもあいつらもう遠くまで行っちまったな。いろいろ腑に落ちないが・・・。

 

「・・・ふっ、何はともあれ、1人見分けたことには変わりねぇな。ふっふっふ・・・これであいつらに騙されずに済みそうだ」

 

これ以上考えても答えが出なさそうだし、早いところあいつらと合流しないとな。・・・ん?誰かこっちに近づいてきたな。

 

「!えーっと・・・なんだ?」

 

俺のところに近づいてきたのは六つ子の姉妹の誰か・・・って、なんだ?なんで俺の顔まで近づけてくるんだ?

 

「~~~っ!」プルプル・・・

 

「・・・いや、本当になんだよ・・・」

 

こいつ・・・いったい何なんだ?俺の顔まで近づけて、そんなプルプルと震えて・・・

 

ツルッ!

 

「うおっ!」

 

「!」

 

足元を滑らせちまって、俺は体勢を崩して、こいつまで巻き込んでしまって、倒れてしまってそのまま・・・

 

 

ゴーンッ、ゴーンッ、ゴーンッ・・・

 

 

そして・・・鐘の音は、鳴り始めた。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『2000日の結婚式の別部屋で』

 

風太郎と○○の結婚式会場の式場とは別の部屋、○○の姉妹たちは過去の写真を見ながら、昔を懐かしがっている。その中の1枚が特に感慨深いものを見つけた。

 

「あ、これいつの写真だっけ?」

 

「おじいちゃんの元気なころだから・・・2年前くらい前かな?」

 

「あの頃は本当に楽しかったよね」

 

「この式も早ければ・・・なんて考えちゃうね。でも、見て」

 

「ふふふ・・・おじいちゃん、とっても楽しそう」

 

姉妹が見せた写真には大人になった六つ子の姉妹と、彼女たちの祖父が写っていた。

 

一花の姿はショートヘアーをさらにきれいに整っている。

 

二乃は髪が伸び、その髪を2つのシュシュで後ろにくくっている。

 

三玖は髪を真ん中に分けるようになり、素顔がより美しく見えるようになっている。

 

四葉はちょこっとだけ髪が伸び、髪を後ろに少しだけ括れるようになっている。

 

五月は髪自体は変わっていないが、常にメガネをかけるようになっていた。

 

六海は見違えるくらいに髪が伸び、髪をある程度カチューシャを止めるようになっている。

 

全員バラバラだが、それぞれの個性が出ている孫たちを見て、祖父は嬉しそうな顔をしている。これは、そんな写真なのだ。

 

ゴーンッ、ゴーンッ、ゴーンッ・・・

 

「あ、そろそろ誓いのキスかな?」

 

「あはは、2人とも緊張してそー」

 

「でもこっそり聞いたんだけど・・・5年前のあの日、2人は既に・・・」

 

♡♡♡♡♡♡

 

『誓いのキス』

 

結婚式会場式場には、風太郎や六つ子の姉妹と関わりのある者が集まっていた。上杉家と中野家はもちろんのこと、前田夫婦や坂本と真鍋のカップル、春やRevival店長と様々な方がこの結婚式に参列している。そんな関係者に見守られながら、風太郎と○○の結婚式はつつがなく進行されていく。

 

「あなたは新郎を病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し敬い、慈しむことを誓いますか?」

 

「はい・・・誓います」

 

「それでは、指輪の交換を行います」

 

「あ・・・」

 

順調に式が行われていた時、ここで問題が発生した。風太郎が指輪を新郎部屋に忘れてしまったのだ。

 

「?」

 

「「・・・・・・」」

 

「なんだ?」

 

「どないしたんや?」

 

「あ、あいつまさか・・・」

 

中々進行が進まないので、結婚式に参列している者はざわつき始めた。

 

「・・・すみません。一旦飛ばして次行きましょう」

 

「ええ!!?」

 

まさかのスケジュール飛ばしという前代未聞のアクシデントにらいはは誰よりも驚愕した。

 

「えー・・・気を取り直して・・・」

 

「はぁ~・・・せっかく指輪持ってきたのに・・・こんな結婚式、前代未聞だよ・・・」

 

指輪を届けたにも関わらず、指輪を忘れてしまう兄にたいして、らいは非常にあきれる。

 

「それでは・・・誓いのキスを」

 

ゴーンッ、ゴーンッ、ゴーンッ・・・

 

風太郎が誓いのキスを○○にした時、誓いの鐘が、鳴り響いた。

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの日・・・きっとあの日からだ。

 

彼女を特別だと感じたのは・・・あの瞬間から

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・き・・・な、なんで・・・」

 

「・・・・・・」

 

い、今何が起こったんだ・・・?俺は躓いてしまって・・・こいつを巻き込んでしまって・・・そして・・・その瞬間・・・き、き・・・

 

「おーい」

 

「!」

 

姉妹の誰かが呼んだと思ったら、こいつはせっせと行っちまった。

 

「ま、待て・・・待ってくれ・・・えーっと・・・」

 

俺は急いで行っちまう前にあいつの名前を呼ぼうとしたが・・・

 

「・・・・・・やっぱり・・・誰が誰だかわかんねぇ・・・」

 

全く名前が浮かんでこなかった・・・というより、あいつが誰が誰なのかが全くわからねぇ・・・。どうやら俺があいつらを見分けるのは、まだまだ先になっちまうかもしれねぇな・・・。

 

32「スクランブルエッグ 完成」

 

つづく




おまけ

『2000日後の結婚式、別の部屋にて。その2』

中野??「披露宴、お疲れさまー」

中野??「ふぅー・・・緊張したぁー」

中野??「ねぇ、それよりいいことを考えたんだけど・・・」

中野??「?どうしたの?」

中野??「実は・・・ひそひそ・・・」

中野??「へぇ・・・面白そうだね」

中野??「でしょ?」

中野??「どうする?」

中野??「うん、やってみようよ」

中野??「よーし、じゃあ準備しようか」

さて、六つ子の姉妹はいったい何を企んでいるのでしょうか・・・。

『2000日後の結婚式、別の部屋にて。その2』  終わり

次回、三玖、六海視点
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