六等分の花嫁   作:先導

34 / 55
アルバイトを探そう

三玖SIDE

 

「六海たち、ついに来週から3年生だね!」

 

「私たちが最上級生ですか」

 

「進級できて本当に良かった」

 

家族旅行から帰宅して後日、来週になったらまた学校が始まる。そして、学校が始まったら私たちは3年生になる。私たちは3年生になっても頑張ろうっていう話をしている。

 

「みんな!これから頑張ろう!」

 

「うんうん。ところで話は変わるんだけど、いいかな?」

 

「どうしたのよ、急に」

 

一花が急に話の腰を折るなんて珍しい。いったいどうしたんだろう?

 

「うん。来週からなんだけど・・・お家賃を6人で6等分します」

 

・・・え?

 

「払えなかった人は、前のマンションに強制退去だから♡」

 

「「「「「・・・っ!」」」」」

 

「みんなで一緒にいられるように頑張ろうって、言質取ったからね♡ということで・・・よろしくね♡」

 

・・・どうやら私たちはこれからは、今までとは違う生活を送ることになりそうな予感・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

一花から家賃6等分と打ち上げられてから、私たち妹5人組はアルバイトを探すためにアルバイトの求人広告多く取り出し、お仕事探しをしている。ちなみに一花はもうお仕事に行っちゃった。

 

「コンビニ・・・新聞配達・・・みんな大変そう・・・」

 

「全員で同じところでできたら安心なのですが・・・」

 

「でも募集って言っても2、3人が限界じゃないかなぁ?」

 

「それに得意なこともそれぞれ違うんだし、この人数は無理よ」

 

うーん、普通に考えたらそうかも・・・。どこの企業も、それぞれの能力を求められるだろうし・・・。

 

「私に接客業なんてできるかなぁ?悪-いお客さんとか来たらどうしよう?」

 

「例えばクレーマーとか?」

 

「時にはもっと悪いお客さんも来るかも・・・」

 

「強盗さんとか?」

 

「う~ん・・・お金を稼ぐって大変だなぁ・・・」

 

私と六海が例えを言ったけど四葉、なんか物騒な展開を考えてたりしない?ない、とは言えないけど、四葉が考えてることは多分ないから。

 

「それでも家賃6等分となった今、アタシ達はお金が必要なんだもの。やるしかないわ」

 

二乃の言うとおり。こうなった以上、私たちが今必要なのはお金。お金を稼ぐためには働くしかない。なら、早いところお仕事見つけないと。

 

「それにしてもまさか一花ちゃんがあんなことを言い出すとは思わなかったね・・・」

 

あ、それは私も思った。突然すぎたし・・・

 

「ま、どのみち働くつもりだったから、求人集めててよかったわ」

 

「うん・・・でも・・・一花のあの感じ、懐かしかった・・・」

 

でもそれ以上に一花が昔みたいになったみたいで、懐かしさの方が強かった。今まで我慢してたようにも見えたから、嬉しくも感じる。

 

「あ、それ私も思った!」

 

「むしろ今まで一花ひとりに無理させすぎましたからね」

 

「そうね・・・。ああなった一花はなかなか手強いわよ・・・。それにしても強制退去って・・・」

 

「もしそうなったら・・・あのマンションで1人っきり・・・」

 

うわっ、ただでさえ1人でも広く感じるほどのあのマンションに文字通り1人はさすがに堪える・・・。でもそれ以上に・・・

 

「もしかしたら、お父さんと2人きり・・・」

 

「む・・・無駄に緊張感はあるわね・・・」

 

「あわわ・・・一刻も早くお仕事見つけようよ!」

 

お父さんと一緒って言った途端、みんなより一層にアルバイト探しに集中しだした。そうだよね、お父さんと2人きりなんて、会話も続かないし、何より落ち着かない・・・。

 

「五月は目星付けた?」

 

「いえ・・・まだ決めかねています・・・」

 

他のみんなもだいたい同じみたい。みんなの表情でまだ悩んでいるのがわかる。私も同じだしね。

 

「アルバイトをするからには自分の血肉となりえる仕事がしたいのですが・・・都合よくそんなもの見つかりませんね・・・」

 

「血肉って・・・それって賄いが出るってこと?」

 

「う、上杉君と一緒にしないでください!夢に繋げるって意味ですよ!」

 

「じゃあ休憩中でも、ご飯は食べないって断言できるかな?」

 

「ば、バカにしないでください!余裕でできますよ!」

 

・・・なんか五月と六海が変な漫才をしてるなぁ・・・。

 

「まぁでも、どうせならやりたいことをやるってのは同感だわ」

 

・・・やりたいこと、かぁ・・・。このアルバイト探しで、もしかしたら、私を好きになってもらえる何かが、見つかるかも・・・。でも五月の言うとおり、そんな都合よく・・・

 

「あ!上杉さんと言えば!こんなバイト募集を見つけました!」

 

「「!」」

 

四葉が取り出したのは1枚の求人広告。店の名前は・・・Revival・・・って・・・

 

「ここって・・・」

 

「フータローが働いてるケーキ屋・・・」

 

少しの沈黙が流れて・・・

 

バッ!

 

バシッ!

 

私は四葉の持っている求人広告を取ろうとすると、二乃にそれを取られた。

 

「・・・二乃、それ渡して」

 

「は?なんでよ?これはアタシの得意分野よ?口出ししないで」

 

「得意分野が料理なら他にもあるはず。なんでわざわざフータローのいるところなの?」

 

「うっ・・・べ、別になんだっていいじゃない!まぁ?あいつがいるのは不本意・・・ふふ、不本意だわ・・・」

 

不本意って・・・二乃、その顔は絶対に不本意って顔じゃない。

 

「ま、そういうわけだからこれはアタシがもらうわ。味音痴のあんたは大人しく諦めなさい」

 

むむむ・・・二乃の勝ち誇った顔・・・私だってそのアルバイトやりたいのに・・・。

 

「私はやっぱりみんなで一緒にお仕事したいなー・・・。あ、三玖、このお掃除のバイトなんていいんじゃない?一緒にやろうよ」

 

「むむむ・・・」

 

四葉がお掃除のアルバイトの求人広告を出してきたけど・・・私は別にお掃除がやりたいってわけじゃない。五月の言うとおり、血肉になりえるものはやりたいし・・・それに・・・ケーキ屋さんのアルバイト、どうしてもやりたい・・・。

 

「・・・ごめん四葉、そのアルバイトは私にはちょっと・・・」

 

「え~・・・そんなぁ・・・」

 

四葉は少し残念そうな顔をしている。ごめん、四葉。

 

「あ、五月と六海はどう?一緒にやらない?」

 

「すみません・・・私はもう少し探したいです・・・」

 

「六海は・・・そうだなぁ・・・簡単そうだし、まずはコンビニの面接を受けようと思うよ」

 

「う~ん、残念・・・あーあ、私1人かぁ・・・」

 

五月以外はとりあえずは問題ないみたい。・・・それより、今はケーキ屋の求人・・・。

 

「さて、と、アタシはちゃちゃっと履歴書を書かないと・・・」

 

「待って。私も書く」

 

「あんたにはこの仕事は向かないわよ。いいから諦めてアタシに譲りなさい」

 

「諦めない」

 

結局私と二乃はこの後お互いにいがみ合い、いつものようにけんかが始まったのだった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「はい、今日は面接ということでね~、まずは店長が作った募集を見てきてくれて、ありがとね~」

 

翌日、私はどうしても諦めなかったためにケーキ屋、Revivalにアルバイトの申し込みをして、今日は面接に来ているよ。

 

「・・・・・・」

 

「でもまさか2人同時に来るとは思わなかったな~」

 

でも諦めきれなかったのは二乃も同じだったみたいで二乃と一緒にいるはめになってるわけなんだけどね・・・。ちなみに面接官は同じくアルバイトの春とフータローの2人みたい。店長さんは団体のお客さんの対応で忙しいみたい。

 

「なぜお前らがここのバイトを受けてるんだ!!」

 

「まあまあフータロー君、それぐらいいいでしょ~?」

 

「なんでこの子がいるのか、アタシも知りたいくらいだわ」

 

私はやりたいことのために、自分の意志でここに来たんだから、文句を言われる筋合いはない。

 

「私としては2人とも採用してほしいんだけど・・・店長が言うには、向かいにあるパン屋さんが原因とかで今はギリギリみたいで・・・定員は1人だけなんだって~」

 

「「!1人だけ・・・」」

 

「誰か1人辞めてくれたらなぁ~・・・例えば~フータロー君とか~」

 

「おいこら」

 

「やだな~、冗談だってば~。本気にしないで~」

 

このアルバイトに採用できるのは1人・・・ここで自分をアピールしなくちゃ・・・。そうすればきっと、採用してくれるはず。

 

「私・・・ケーキ、作れます。ケーキ作りたいです」

 

「「!!?」」

 

私がケーキを作れると言ったらフータローと二乃は驚いた顔になっている。

 

「へぇ~・・・お菓子作り、得意なんだ~。私と同じだね~。じゃあ・・・」

 

「ちょ、ちょっと!!アタシの方が得意よ!この子の腕はいまいちよ!」

 

むっ・・・ここぞってばかりに二乃が反論してきた・・・。確かに二乃の方が料理は得意だけど、これだけは譲れない・・・。

 

「今年に入ってからチョコを何度も作りました。かなりうまくなりました」

 

「あ、あんたねぇ・・・それこそアタシの手助けあってじゃない。威張れるほどじゃないでしょ!」

 

「最後は1人で作れた。これだって大きな進歩」

 

「「・・・・・・」」

 

これが面接であるというにもかかわらず、フータローと春をよそに私と二乃はいつもの言い争いを始めてしまった。

 

「・・・フータロー君フータロー君、みんなは恵理子ちゃんと同じ旭学園の友達だよね?」

 

「え?あ、ああ・・・一応、そうだな・・・」

 

「なんだか~、難しそうだから~、フータロー君に任せていい~?」

 

「うおおおおおおい!!?」

 

私か二乃、その採用がフータローにゆだねられたと聞いて、私と二乃はフータローに向き直る。

 

「そういうわけで、どうするのよ?」

 

「フータロー、どうするの?」

 

「おい・・・おいおいおい・・・」

 

「あんたなら当然、アタシを選ぶわよね?」

 

「私にできることならなんでもするよ」

 

「「だから・・・選んで」」

 

「ちょ・・・待て・・・待てって!いったん落ち着け!」

 

あっと・・・ついつい迫りすぎちゃった・・・。この仕事に採用してもらえるためにちょっと必死になってた・・・。

 

「・・・はぁ・・・たく、店長といい、春といい、なんで責任を俺に押し付ける・・・」

 

フータローは疲れたのか、私たちに呆れてるのかわからないけど、軽いため息をついている。

 

「バイトするのは別にいいが、まずお前らやる気あるのかよ?」

 

「ある」

 

「当たり前じゃない。バカにしないでよね」

 

「まぁ、やる気なかったら、即クビだと思うからね~」

 

私、このお仕事・・・特にスイーツを作りたいから十分に、仕事に対する意欲はある。

 

「シフトとかはどうする気だ?毎日は・・・」

 

「私、24時間以上働ける」

 

「それを言ったらアタシだって年中無休でいけるわよ!」

 

「マジかよ・・・」

 

「気持ちはありがたいけど~・・・身体壊しちゃうからそれはダメ~。お休みもちゃんととってほしいなぁ~」

 

・・・なんだかこのままじゃ埒が明かない。こうなったら、あれで決めようか。すごくシンプルな方法で。

 

「・・・じゃあ、料理対決」

 

「「「え?」」」

 

「できたケーキで1番評価がよかった方が採用」

 

これなら公平で決めることができる。そして、成長した私の料理の腕をフータローに見せつけられるチャンス。言い出しっぺだから、負けるわけにはいかない。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・それで、2人は料理対決することに?」

 

「・・・まぁ、はい」

 

「すみません~、面接で終わらせるつもりが~・・・」

 

「まぁ、僕としては全然構わないから気にしないでいいよ」

 

料理対決が採用されて、私と二乃はキッチンの前に立っている。キッチンの前にはケーキを作るための材料がたくさんある。ちなみにここには客足が落ち着いたのか、店長さんが戻ってきている。

 

「う~ん、やはり惜しいなぁ・・・。2人とも雇ってあげたいけど、向かいにある糞パン屋のせいでこっちもギリギリだからなぁ・・・。上杉君が辞めてくれたら別なんだけど・・・」

 

「またまた~、店長~・・・あはははは・・・」

 

なんかフータローと店長さんが変な漫才をやってる。試験合格の時にも似たようなことがあった気がするけど・・・。

 

「三玖、勝負を取りやめるなら今のうちよ?恥をかかないうちにさっさと引き下がった方がいいんじゃない?」

 

むっ・・・二乃が勝負は決まった、みたいな顔をしてる・・・。私をいつまでも料理下手な私とは思わないで。

 

「あれから私は腕を上げた。今なら二乃にも勝てる・・・ううん、勝ってみせる」

 

「へぇ、言うじゃないの」

 

バチバチバチッ!

 

私と二乃の間には目には見えない火花が散っている。絶対に負けられない。

 

「はいはいは~い、そこまで~。じゃあとりあえず、簡単なルール説明しちゃうね~」

 

そんな私たちを制するように、春がこの料理対決のルールを説明し始めた。

 

「ルールはとってもシンプル。2人には今からケーキを作ってもらいま~す。1番評価がいいケーキを作ることができた方が、アルバイト採用になりま~す。評価の基準は~・・・やっぱり見た目と味だね~。お客さんにいい印象を持ってもらうには、この2つは何よりも重要だからね~」

 

「まぁ、確かにそうだな」

 

「目の前にある材料は店長の許可もあるから自由に使っていいよ~。それでどんなケーキを作るかは、作り手次第♪おいしいケーキができるよう、いろいろ試してみてね~」

 

私たちの目の前にある材料は・・・小麦粉、砂糖、卵に牛乳、バターにバニラエッセンス・・・見た目を彩るためのクリームやフルーツが盛りだくさん・・・。どんなケーキを作るか迷う。

 

「あ、最後に1つ、作り直しは一切受け付けないから注意してね~。説明は以上で~す」

 

作り直しは受け付けないのか・・・これは慎重に作っていかなくちゃ。採用されるかどうかがかかってるからね。

 

「さて、準備はいいかな~?」

 

「大丈夫」

 

「いつでもいいわよ」

 

「それじゃあ・・・よ~い、スタート!」

 

春のスタートの合図で私と二乃はすぐに行動を開始させる。まずは生地作り・・・小麦粉は適量に測って・・・ボールに卵と牛乳、それから砂糖を入れて・・・バターやバニラエッセンスはまぁ今はいいか。

 

「ねぇ、フータロー君。実際のところどうかな~?どっちの方が料理上手かな~?」

 

「見た目だけでいえば二乃の方がうまいが、味ならどっちも負けてねぇよ。俺が保証する」

 

「う~ん、なんだか不安になってくる回答だなぁ~」

 

「え?何で?」

 

「何でって・・・自覚ないの?まぁ、いいや・・・完成まで楽しみにしとくよ~」

 

なんだかフータローと春が楽しそうに会話してる。むぅ・・・いいなぁ・・・。・・・と、いけないいけない、今は調理に集中しなくちゃ。でも、なんだかうまく混ざらない気がする・・・牛乳を足してみようかな。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ケーキを作りはじめて50分くらいが経過して、ケーキが完成した。今ケーキは審査までは蓋で閉じている。でも・・・私の作ったケーキ、うまくできたかなぁ。・・・ううん、味にはかなり自信がある。きっと大丈夫・・・。

 

「じゃあ、お互いにケーキが完成したから、審査に移ろうか。春ちゃん、上杉君、頼んだよ」

 

「はぁ・・・」

 

「は~い。じゃあまずは~・・・君の作ったケーキから見よっか~」

 

わ、私からだ・・・。春が私の作ったケーキを隠してる蓋を開けたことによって、それが露になる。私が作ったケーキはチョコレートケーキにした・・・んだけど・・・

 

「・・・これは・・・」

 

「う、う~ん・・・なんて言えばいいかなぁ~・・・」

 

「相変わらず独特な形だな・・・」

 

私のケーキはなんかうまく形にできなくて・・・所々が崩れちゃってて、かなり不格好なケーキが出来上がっちゃった。

 

「ほら言わんこっちゃないわね。これはもうアタシの勝ちでしょ?」

 

「ま、まだ・・・味なら・・・味なら自信がある・・・」

 

こうなったら形は諦めて、味で勝負するしかない・・・。

 

「まぁ、見た目はこれでも、意外に味はいいかもしれないけどね・・・うーん・・・」

 

「と、とにかく、試食してみましょう~」

 

いよいよ試食タイム・・・店長さんと春、フータローは私の作ったケーキを一口パクリ・・・。き、緊張する・・・。ど、どうかな・・・?

 

「・・・まぁ・・・うん・・・」

 

「い・・・いいんじゃない、かな・・・なんというか、意外性があって・・・」

 

店長さんはなんかいつもの表情をしたままだし、春はなんか顔を青ざめてる・・・。私、失敗したかなぁ・・・

 

「うん、普通にうまいな」

 

ふ、フータロー・・・!

 

「はあ!!?毎回思うんだけど、あんたの味覚っていったいどうなってんのよ!!?」

 

「なんだよ、俺は本当のことを言ったぞ?お前も食うか?」

 

「いらないわよ!!」

 

二乃とフータローがもめてるけど、私にとっては今はどうでもいい。誰か1人でもおいしいって言ってくれる・・・それも、フータローがおいしいって・・・それだけで、私の気持ちは嬉しく感じていく。ああ・・・やっぱり私のやりたいこと、私の好きなことは・・・。

 

「さて、時間も押してるし、彼女のケーキも見てみようか」

 

「そうですね~。こっちのケーキはどうかな~?」

 

私のケーキの審査が終わって、次は二乃の番。二乃が作ったケーキは王道系ともいえるイチゴのケーキだった。やっぱり二乃のケーキは本当に完璧といえるほどの出来映えだった。

 

「おお、これはすごい!」

 

「本当だ~。これ、お店でも十分に通用できるかも~」

 

「え~?そんな事ないですよ~。ねぇ、フータロー?」

 

「なぜ俺に振る」

 

店長も春も二乃のケーキに絶賛してた。むぅ・・・私の時と反応が違う・・・。

 

「これは味の方にも期待できるかもね」

 

「じゃあ、いただきま~す」

 

「どうぞ、ご賞味あれ♪」

 

店長と春、フータローが二乃のケーキの一口を口にいれた。

 

「お・・・おお!これは!」

 

「お・・・おいしい!こんなにおいしいケーキを食べたのは初めてかも!」

 

「ふふ、ありがと」

 

うっ・・・さすが姉妹1の料理人・・・店長が絶賛してるかのような顔をしてる。春にいたっても閉じてるような目が全開に見開くほどだし・・・。二乃は勝ち誇った顔になってる。気になるフータローは・・・

 

「うん。普通にうまいな」

 

「・・・反応薄ーー!!」

 

あ、私の時と反応が全く同じだ。

 

「あ、あ、あんたねぇ!貧乏舌だと言っても、もう少しまともな反応ができないの?」

 

「そう言われても・・・別に驚くほどでもないし」

 

「驚きなさいよ!!」

 

「なんで⁉」

 

二乃、料理でそう言うのをフータローに求めるのは無理だよ。

 

「はいは~い、もう本当に時間がないから、ちゃちゃっと結果発表しちゃうよ~」

 

審査が終わって、いよいよ結果発表・・・。き、緊張してきた・・・。

 

「・・・今回、採用が決まったのは・・・」

 

♡♡♡♡♡♡

 

「じゃあ、来週からよろしく」

 

料理対決を経て、アルバイトの採用が決まった。・・・二乃が、だけど・・・。私は文字通り、負けちゃって落ちちゃった・・・。

 

「ま、負けた・・・」

 

「そりゃそうでしょ・・・あんたが料理対決なんていうから・・・いったい何の勝算があったっていうのよ・・・」

 

店長と春が二乃のケーキをかなり絶賛していたから何となく予想はしていたけど・・・やっぱりショック・・・。フータローだけはどっちも上げることはなかったけど・・・。はぁ・・・ここで働きたかったな・・・。ふと前に視線を戻してみると、向かいの方にもお店があった。あ、そういえば向かいってパン屋さんだっけ。・・・?お店になんか張り紙が張ってある・・・。何々・・・?

 

『こむぎや

 

アルバイト募集中!

 

時給900円

 

私たちと一緒においしいパンを作ってみませんか?』

 

「まぁ、でも・・・悪いとは思って・・・」

 

「向かいのパン屋さんでもアルバイト、募集してるんだ。私、こっちにしようかな」

 

「⁉」

 

パン屋さんってことはパンを作ることに関われるってことだよね?だったら、何もケーキ屋に拘る必要はないから。フータローがいないのは残念だけどね。

 

「ず、ずいぶんと切り替えが早いわね・・・。そのパン屋にあいつはいないけどいいの?」

 

「うん。私の目的はフータローじゃないから」

 

「!」

 

私の本当の目的は自分が本当にやりたいことを見つけること。そのためにケーキ屋のアルバイトを募集した。だから今回ケーキ屋は落ちちゃったけど、収穫自体はあった。

 

「今日ケーキを作って、改めて思った」

 

思い返すのは、結果発表の時のフータローの言葉・・・

 

『悪いな三玖。三玖は努力してるし、味も全然悪くないんだが・・・』

 

「私、どうやら作るのは好きみたい」

 

私自身、誰かに私の作った料理をおいしいって言ってくれるのは嬉しいし、作り甲斐がある。無念な結果にはなったけど、逆にやる気に満ちて、何か作りたい気分にもなったりもした。私自身、やっぱり料理に関連したお仕事がやりたい。それがわかっただけでも大きな収穫だった。

 

「それに・・・」

 

私は覚えてる・・・フータローが好きな人のタイプランキングの結果を。1位は放っておいて、2位の方は、料理上手だった。それは、私にとって好都合だった。私は・・・フータローに好きになってもらえる私になるんだ・・・。

 

「・・・・・・」

 

「?どうしたの?」

 

「何でもないわよ。ほら、早く帰るわよ」

 

「うん」

 

面接が終わって、私と二乃は家へ続く道のりを歩いていく。帰ったらさっそくさっきのパン屋さんに電話入れよう。新しい履歴書買っておかなきゃ。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

六海SIDE

 

・・・落ちちゃった。今日コンビニのアルバイトを申し込んでみて、さっそく面接を受けに行ったんだけど・・・見事に落ちちゃった。どうして落ちちゃうんだろう?六海に何か問題があったのかなぁ?そりゃ、今の今までアルバイトなんてしたことなかったけどさ・・・。はぁ・・・憂鬱だなぁ・・・。

 

「あ、六海」

 

「帰って来てたのね」

 

「あ、三玖ちゃん、二乃ちゃん、おかえりぃ~」

 

憂鬱な気分でアパートに戻ったらちょうど三玖ちゃんと二乃ちゃんと鉢合わせしちゃった。

 

「どうだった?コンビニの面接」

 

「・・・ダメだった・・・」

 

「そ、それは残念だったわね・・・。で、でも大丈夫よ!あんたに向いた仕事なんて、いくらでもあるわ」

 

「だといいんだけどね・・・」

 

六海がかなりネガティブになってたのを察したのか必死にフォローしてくれている。嬉しいような、悲しいような・・・。

 

「それで、そっちはどうだった?2人ともケーキ屋さんだったでしょ?」

 

「アタシは受かったわ。本格的に働くのは来週になるわ」

 

まぁ、確かに二乃ちゃんなら受かるとは思ってたよ。誰よりも料理上手だしね。あーあ、風太郎君と一緒っていうのが羨ましいよ・・・。六海も行きたかったけど、誰かの手を借りないと料理できないからなぁ・・・。

 

「私は落ちた・・・」

 

「ありゃりゃ・・・お気の毒に・・・」

 

「でも、いいんだ。他によさそうなアルバイト、見つけちゃった」

 

あ、もうやってみたいお仕事見つけちゃったんだ・・・。・・・でも何だろうな・・・あの三玖ちゃんの晴れやかな笑みは?なんか・・・その顔を見てると、胸の奥がむかむかするのはなんでだろう?

 

「ほら!こんなとこで立ってないで、中に入るわよ!」

 

「え?あ、うん・・・」

 

それとは対照的に二乃ちゃんは受かったにも関わらず、なんだか納得いってないみたい。いったいケーキ屋で何が起こったの?まぁ、いいけども・・・。

 

「ただいまぁ~」

 

「あ、みんな、おかえりー」

 

「3人とも、面接、お疲れ様でした」

 

六海たちの部屋に入って、リビングで迎えてくれたのは、もうすでに帰ってきていた四葉ちゃんと未だにアルバイトの広告を見てる五月ちゃんだった。

 

「何五月、あんたまだ踏ん切りがつかないの?」

 

「うぅ・・・お恥ずかしながら・・・。何というか・・・これだっていうお仕事が見つからないんですよ・・・」

 

五月ちゃんの夢って言ったら学校の先生になることだからそれに繋がる仕事をしたいみたいだけど、そんなアルバイトってあったかなぁ?なんていうか、五月ちゃんの求めるのって、かなりハードルが高いと思うんだけど・・・。

 

「四葉はお掃除のアルバイト、どうだった?」

 

「うん!問題なく受かったよ!」

 

「わぁ、おめでとー」

 

四葉ちゃんもお掃除のアルバイト、問題なく受かったみたいだね。これも、日ごろから一花ちゃんのお部屋を掃除してたおかげだね!さすが我が家の清掃隊長!

 

「六海は・・・て、その顔で何となく察したよ・・・」

 

「六海って、そんなにわかりやすい・・・?」

 

「二乃は問題なく受かったんですね」

 

「ええ。定員は1人だけだったから、三玖は落ちたけど」

 

「でも別のアルバイト見つけたから別にいい」

 

「へぇ~・・・そっちは受かるといいね!」

 

二乃ちゃんと四葉ちゃんが受かって、三玖ちゃんは新しいアルバイト見つけて・・・この中でまだお仕事見つかってないの六海と五月ちゃんだけになっちゃった・・・。くぅ・・・なんだか悔しいなぁ・・・。

 

「とにかく!お家賃払えなかったらあのマンションに戻されるんだから一刻も早くアルバイト見つけないと!五月ちゃん、頑張ろう!」

 

「は、はい!」

 

うじうじしてても仕方がない。気持ちを切り替えて、新しいアルバイトを探そう!ちょうど新しい求人広告を持ってきたし、探したら見つかるはず!

 

「あ、みんな帰って来てたんだー。おかえりー」

 

「一花・・・」

 

やる気を見せた途端、事の発端である一花ちゃんが部屋から出てきた。なーんか、私、余裕ありますよ?的な顔が今の六海には腹がたってくるよ・・・!

 

「いやぁ、みんなお仕事探し大変そうだねぇ。なんかみんなを困らせてるみたいで申し訳なく思うよー」

 

「あら・・・それ嫌味でも言ってるつもりかしら?」

 

「そうだよ!社長さんにスカウトされて今に至る一花ちゃんには六海たちの気持ちはわからないんだ!」

 

「あはは・・・ごめんごめん・・・ちょっと急すぎたね。せめて来月にすればよかったかな?」

 

「そういう問題じゃないと思う」

 

六海たちの文句に少し悪びれた様子で一花ちゃんは苦笑しながら謝ってきた。まぁ、元々一花ちゃんに負担をかけさせないために前から働こうとは思ってたけどさ・・・それにしたってあのマンションの強制退去はやりすぎだって・・・。

 

「でも仕方がないんだ。今まで家賃のために確実な仕事しかしてこなかったけど・・・そろそろ私も、自分のやりたいことをやってみようかなーって、思ってね」

 

???やりたいこと?

 

「そのやりたい事って何?今回のこととなんか関係あるの?」

 

「それは~・・・ひ・み・つ♡」

 

うわ!はぐらかされた!しかもハートって・・・なんかムカムカする上に嫌な予感までするんですけど!

 

「でも、遅かれ早かれ、働かなくてはいけないと思っていましたし、むしろ都合がよかったと思います」

 

「うん。それに、一花にだって、やりたいことはあるだろうし、いいと思う!」

 

「四葉、五月ちゃん・・・ありがとうね」

 

いや、まぁ、確かに・・・一花ちゃんだけ我慢するっていうのは六海としてもよくないと思うよ?思うんだけど・・・なんだか釈然としないんだよねぇ・・・。原因はわかってるつもりだよ。

 

「六海」

 

あんまりぱっとしないでいると、二乃ちゃんが一花ちゃんには聞こえないような小声で耳打ちをしてきた。

 

「一花には気をつけなさいよ?わかってるとは思うけど・・・ああなった一花は一筋も二筋も手強くなるわよ。もしかしたら・・・一花が・・・フータローを・・・」

 

「わかってるよ二乃ちゃん・・・お互い要注意、だよね」

 

どうして一花ちゃんにそんなに警戒してるのかと言うと、ある疑惑があるから。一花ちゃんが・・・風太郎君のことが好きかもしれないっていう疑惑が。一花ちゃんのことは信用してるけど・・・恋となったら話しは別。どんな手で攻めてくるかわからない以上、警戒しないわけにはいかないからね。

 

「二乃、六海、2人で何ひそひそ話してるの?」

 

「何でもないわよ」

 

「うんうん、三玖ちゃんは気にしないでねー」

 

「???」

 

ごめんねー、三玖ちゃん。この話ばかりは教えられないよー。変なことを口走って相手を有利にはさせたくないからさー。六海たちだって必死なんだから。

 

「おおっと、そろそろ行かなきゃ遅刻しちゃう。じゃあみんな、引き続きお仕事探し、頑張ってよー」

 

一花ちゃんは六海たちに手を振ってから映画の撮影に行っちゃった。

 

「あ!そうだった!こんなことしてる場合じゃなかった!」

 

それと同時に六海は現実に引き戻されちゃった。そうだよ・・・アルバイト落ちちゃったんだから今話し込んでる場合じゃないじゃん!

 

「せめて学校が始まるまでにお仕事を見つけないと!危機感を持っていこう!危機感を!」

 

「え?あ、は、はい!」

 

「ま、頑張りなさいよ?アタシは晩御飯の準備するから」

 

「私はさっそくパン屋さんに電話するから。こっちも忙しいからそっちは手伝えない」

 

うぅ・・・二乃ちゃんと三玖ちゃんの薄情者~・・・。

 

「だ、大丈夫だよ!私も一緒に探してあげるから!頑張ろう!」

 

うぅ・・・四葉ちゃんだけだよ・・・こんな哀れな妹たちを助けてくれるのは・・・。よーし、こっちには五月ちゃんもいるし、四葉ちゃんも手伝ってくれるんだ。きっとお仕事だってすぐ見つかるはず!

 

♡♡♡♡♡♡

 

・・・・・・はい、全滅しました・・・。あれから数日が経ちましたけど応募してたアルバイト、全部落ちてしまいました・・・。六海はもう泣くしかないんじゃないかなっていうくらいズタボロ状態だよ・・・。

 

「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ・・・」

 

まさかここまで落ち続けるなんて誰が想像できたんだろうね。というか本当にやばい・・・気が付けば学校が始まるまでもう明後日になっちゃう・・・。しかもまだアルバイトを見つけれてない状況・・・このままだと六海は前のマンションに退去して・・・1人・・・もしくはパパと2人で・・・。

 

「はぁ・・・何か六海に向いたいいお仕事ないかなぁ・・・」

 

六海は今気分を落ち着かせるためにカフェでカフェオレを飲んで考えをまとめてるよ。今まで行けそうと思った仕事を選んだけど、もういっそのこと六海の得意なお仕事で行ってみる?といっても・・・六海の得意な絵に関われるアルバイトなんてそうそうないからなぁ・・・。そっちの方を探しても、募集してる場所はなかったし・・・。はぁ・・・どうしよ・・・。

 

≪お姉ちゃん電話だよ♪お姉ちゃん電話だよ♪≫

 

あれ?電話?誰からだろう?もしかして、さっきのアルバイト先からやっぱ採用!とか?・・・なーんて、都合よくあるわけないか・・・。スマホの着信画面を見てみるとMIHO先生の名が・・・って、MIHO先生⁉️六海はすぐに電話に出た。

 

「もしもし、MIHO先生!お疲れ様です!」

 

≪おー、出た出た。六海ちゃーん、元気してたー?≫

 

「はい!おかげさまで!先生こそどうですか?東京での活動は?」

 

≪うん。ぼちぼちやらせてもらってるよー。いやー、こっちも大忙しでさー・・・人気者は辛いわ、マジで≫

 

辛いって言ってるわりには余裕ある感じはするけど・・・まぁ、先生が元気そうで何よりかな。

 

「それで、先生から六海に電話なんて珍しいですね。何かあったんですか?」

 

≪あー、そうそう。実は六海ちゃんに折り入って相談したいんだけどさ・・・≫

 

相談?先生が六海に?一体なんだろう?

 

「何でしょうか?」

 

≪いやー、実はさ、うちの後輩漫画家君がそっちに住んでんだけどさー・・・その後輩君のアシスタント君、漫画家デビューしたらしくてアシスタントやめちゃったらしいんだよねー≫

 

漫画アシスタント・・・漫画家を目指すなら誰もが通る道のりと言われてるみたい。六海も漫画家を目指してるから将来は一時はそれでやっていこうと考えてはいるけど・・・それがどうしたんだろう?

 

≪で、アタシ、後輩君にアシスタントを頼めないかって言われたんだよねー≫

 

「それでなんて答えたんですか」

 

≪うん・・・ほらアタシって東京で活動してるじゃん?そっちで本業とアシスタントをやるためにいちいち往復すんのはちょっとさ。そっちに泊まるにしてもすぐ戻んないといけねーから、パスしちった≫

 

「本当に忙しそうですね・・・」

 

≪・・・んで、こっから本題なんだけどさ・・・六海ちゃん。六海ちゃんは漫画家目指してるよね?≫

 

「え?あ、はい・・・そうですけど・・・」

 

≪六海ちゃんがその気があるなら・・・やってみない?≫

 

・・・?え?やってみないって?何をやってみないかって?

 

「あの・・・先生・・・何をやるって・・・?」

 

≪はは、またまた~、とぼけちゃって~。漫画アシスタントに決まってんじゃ~ん≫

 

・・・WHAT?漫画アシスタント?六海が・・・本物の漫画家の・・・って!

 

ええええええ!!??

 

ちょっ・・・え?本気?先生は本気で言ってるの?六海が・・・ま、ま、漫画アシスタントって・・・

 

「ちょっ・・・ちょっと待ってください先生!何で六海が⁉」

 

≪もちろん、いくら君でも友人っていう理由だけでアタシも誘わないよ?ちゃんとした理由はあるよ≫

 

わ、わざわざ六海を指名した理由?

 

≪まず1つ、アタシの知っている知人の中で六海ちゃんがダントツにレベルが高かった。それこそ、高校生とは思えないほどに、ね。漫画家は絵がうまくないとやってられないしね≫

 

ラーメン屋で描いた絵が先生にそれほど評価されていたなんて・・・

 

≪2つ、漫画家を目指そうとしている若者へ先輩からの心からの支援ってやつだよ。作家も漫画家も、一種のエンターテイナーだからね。そういった人種が増えるのはこっちとしても喜ばしいんだよ。そして最後に3つ・・・≫

 

3つ目の理由を口にした先生の口調はいつもの口調より・・・すごい重かった。

 

≪漫画家は君が思ってるほど甘い世界じゃない≫

 

「!!」

 

≪アタシから見れば六海ちゃんはまだまだ素人感が拭えてないんだよね。甘ったるい考えで漫画家になられると、身を亡ぼすことだってある。まずは漫画アシスタントになって、現実をしっかり見てきな≫

 

先生の発言はいつも以上に的確だった・・・。電話越しでも、並々ならぬ威圧感がある・・・。これが・・・プロとしての威厳・・・。

 

≪・・・ま、とはいえ、そんな気負う必要はねーよ?ただ仕事場を見て、どんだけ大変かっていうのをわかればそれでいいしさ。それに、後輩君は気さくだから、六海ちゃんも気に入ると思うよ?≫

 

いつも通りの口調に戻った・・・けど、先生の言うことは一理ある・・・。六海は、本物の仕事場を知らない・・・全部気楽な気持ちでやってた・・・。だから今までのアルバイトは不採用になったのかな・・・。

 

≪さて、どうする?後は全部六海ちゃんの気持ち次第だよ?やるの?やらないの?≫

 

ここで断るのは非常に簡単だと思う。でも断ったら、もしかしたら漫画家への道が遠のいてしまう・・・。でも・・・ちょこっと聞いてみようかな・・・。

 

「あの・・・そのお仕事って、お給料って出るんですか?」

 

≪ん?ああ、それはもちろん。頑張り次第じゃボーナスも出るかもねー≫

 

決まりだ。お金が出るなら・・・そして何より、先生がそこまで言ってくれたんだ。せっかく掴んだチャンスを・・・掴みとって見せる!

 

「やります!そこで働かせてください!」

 

≪ん。オッケー。後輩君と担当編集者にはアタシから話を通しておくよ≫

 

や・・・やった!なんだか思わぬところでお仕事ゲット!今日は六海はついてる!しかも夢に繋がるお仕事だなんて・・・ラッキー!

 

≪あー、それで、忙しかったら申し訳ないんだけど・・・できれば明日すぐにでも出てもらえるかな?何分締め切りが迫ってるんだってさ≫

 

「それは大丈夫ですよ。住所さえ教えてくれればすぐにでも行きますよ」

 

≪マジ?いやー、助かるわー。これで後輩君の愚痴を聞かずに済むわー≫

 

≪先生、次のページのペタ塗りをください≫

 

≪おっとめんごめんご。はい、これね。じゃ、今忙しいから切るよ。住所は後で教えるから六海ちゃん、明日がんばってねー≫

 

先生はお仕事に戻るために六海との通話を切っちゃった。アシスタントさんにも急かされてたし、先生も忙しそうだなー・・・。明日からだったよね・・・。・・・よし!六海も負けてらんない!しっかりと現場の勉強してこなくちゃ!

 

♡♡♡♡♡♡

 

「み・・・MIHO先生のご紹介に預かりました!中野六海です!こ、これからよろしくお願いします!」

 

翌日、六海は指定された住所に赴き、MIHO先生の後輩の先生と先生のアシスタントさんに自己紹介をするよ。これが本物の漫画家の仕事場・・・き、緊張してきた・・・。

 

「さて、聞いての通り、今日から僕たちの仲間になる中野六海さんです。彼女も慣れないだろうから、みんなもサポートに回ってあげてね」

 

「「「よろしくお願いしまーす」」」

 

先生はどこにでもいそうな中年男性って感じがする・・・。アシスタントさんは六海と同じくらいの年の人もいれば、オジサン系の人もいる・・・。あ、きれいな女の人もいる・・・。

 

「さて中野さん、君のことは先輩からいろいろ聞いてるよ。先輩から送られた君の絵の方も申し分ない。時間がないからさっそく仕事に取り掛かってもらおうかな」

 

「は、はい!」

 

「時に中野さん、君はGペンを使った経験はあるかい?」

 

「もちろんです!毎日使用してます!」

 

「そうかい。じゃあ使い方の説明はいらないな。君にはキャラクターの活躍を彩るための背景を描いてもらうよ。まぁ、初めてのアシスタント経験だから、わからないことがあったら遠慮せず僕かみんなに言ってくれ」

 

「わかりました!」

 

「よし!じゃあみんな、さっそく作業に取り掛かってくれ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

先生の合図とともにアシスタントさんたちはいっせいに作業に取り掛かった。六海もさっそく作業に取り掛からなくちゃ!初めてのお仕事・・・頑張らなくちゃ!

 

♡♡♡♡♡♡

 

わからないところを聞いたり、今まで以上の精密な背景を描いてかなり時間が経って・・・ようやく全ページが完成して、締め切りまでに間に合わせた。

 

「はい、ではこの原稿は編集部へ送らせていただきます。お疲れ様でした」

 

「「「「「お疲れ様でした」」」」」

 

先生の担当編集者が原稿をもって、部屋から出ていった。その瞬間、先生はぐだーっと椅子に背を持たれこんじゃった。

 

「ふぅ~・・・ようやく一段落ついた・・・。みんな、お疲れ様。今日はもう上がり。家に帰って、日ごろの疲れを癒してね」

 

先生は六海たちをきちんと気を配らせている。MIHO先生の言った通りの人だなぁ・・・。

 

「ふわあああぁぁ~・・・一時はどうなるかと思ったぞ・・・」

 

「下手したら間に合わないかもって思ったからね。それもこれも、中野さんが来てくれたおかげだよ」

 

「本当、助かったよ。ありがとな、嬢ちゃん」

 

オジサン系アシスタントさんと美人アシスタントさんが気さくに話しかけてきた。同い年の子は・・・絵を描いているのかな?

 

「しかし、あのMIHO先生のお知り合いなんてすごいじゃん!いったいどこで知り合ったの?あ、私、一ノ瀬ね。漫画家歴は2年目、かな」

 

「おいおい、あんまり年下を怖がらせるんじゃないぞ?」

 

「怖がらせてませんって!」

 

「大丈夫です。むしろ声をかけてくれて、ありがとうございます」

 

「そうかい?ならいいがな。あ、俺、高木な。漫画家じゃないが、アシスタント歴はもうかれこれ20年はやってるな」

 

仕事の時は結構厳しかったけど・・・みんな優しい人たちで安心したよ。六海、この仕事、うまくやっていけそう。

 

「あ、そうそう、中野さん。仕事やシフトの説明とかするからちょっとこっちに来てくれるかい?」

 

「あ、はーい!すみません、先生に呼ばれたのでこれで・・・」

 

「うん、お疲れさまー」

 

「お疲れー」

 

六海は先生に呼ばれたので、アシスタントさんたちに一礼してから先生の部屋へと入っていったよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「はあぁ~・・・めっっっっちゃ疲れた・・・」

 

初仕事を終えてアパートに戻った瞬間、どっと疲れが出てきた・・・。いやぁ・・・アシスタントさんのお仕事は頭では理解してはいるけれど・・・いざ行動するとなると、すっごく大変だった・・・。細かい指示に応えていくってこんなに大変だったんだ・・・。

 

「・・・まぁでもこれで・・・肩の荷が下りたかな・・・」

 

とりあえずお仕事とお給料の確保はできたし、これでマンションの強制退去は免れたかも・・・。ちなみにシフトは週に4回お仕事に行くって感じになったよ。

 

「・・・明日もお仕事だし、今のうちにお仕事の見直しでもしよっかな」

 

お仕事がうまくいくにはまず基礎からって言ってたし、今からでも見直しても損はないかな。確かこの本棚に漫画でわかりやすくアシスタントさんのお仕事が載ってるやつがあったはず。えっと・・・どこだっけ・・・。

 

「あ、あったあった、これこれ」

 

六海はアシスタントさんとは何かという漫画を手に取り、さっそくページを開いた。

 

パラッ・・・

 

あれ?なんか落ちてきた。この漫画に挟んであったのかな?これは・・・写真?何が写ってるんだろう・・・。

 

「・・・っ!これ・・・」

 

気になって見た写真に写っていたのは中学時代の六海・・・つまり、凶鳥と呼ばれていた頃の姿だった。またこの姿を見ることになるとは思ってなかった・・・。

 

「・・・まだこの写真、残ってたんだ・・・」

 

凶鳥時代の写真は全部処分したと思ってたんだけどなぁ・・・。この姿は六海にとっては黒歴史以外の何物でもないから、見たくはなかったな・・・。だって、この姿を見ていると・・・嫌でもあの頃のことを思い出しちゃうから・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

バキッ!バキッ!

 

「ち・・・ちくしょう・・・覚えてやがれ!」

 

「ふん!一昨日来なさいってのよ!」

 

全く・・・どいつもこいつも、懲りないったらありゃしないね。ああいう連中が私の前でウロチョロされていると、迷惑だっていうのよ。いつつ・・・このケガを見たら、また五月に怒られるだろうね・・・。あいつもいちいちうるさいっての・・・。

 

「あーあ、また髪が痛んでるし・・・。自慢だっていうのに・・・」

 

ま、嘆いていても仕方ないか。帰ったらこの長い髪の手入れをしなくちゃね。私は武器の竹刀を肩に抱えて、あのマンションへと戻っていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

中野六海、14歳。黒薔薇女子学院中等部所属。あだ名・・・凶鳥。

 

彼女がなぜそう呼ばれているのか・・・なぜ凶鳥が忌み嫌われるのか・・・。全ては・・・あの日から始まったのだ・・・。

 

33「アルバイトを探そう」

 

つづく




おまけ

六つ子ちゃんは布団を六等分できない

アパートに引っ越した当日、1つの問題が・・・。

四葉「お布団探してみたけどこれ1つしかなかった・・・」

一花「ええ⁉なんでお布団1つしかないのー?残り5つはー?」

二乃「仕方ないわね・・・みんなで分け合って寝ましょう。・・・絶対狭いけど・・・」

というわけで実行。

六海「う~ん・・・狭いよぅ・・・もっとそっち詰めて~・・・」

三玖「寒い・・・もっと奥いって。入らない」

五月「お、押さないでください・・・はみ出てしまいます・・・」

そして翌日・・・

風太郎「おい、朝だぞ。お前らいつまで寝て・・・」

二乃、五月の顔が一花の右手が、六海の左足が四葉の左手、三玖の右足が布団のところどころにはみ出ている。

風太郎「うわあああああああ!!?朝からなんて光景だよ!!」

六つ子ちゃんは布団を六等分できない  終わり

次回、六海視点(幼少時代&凶鳥時代)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。