六等分の花嫁   作:先導

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やっとできた~。一応は過去編なので六海ちゃんの口調は違うので、違和感があるとは思います。ご了承ください。

後、次回でこの物語の2章が完結します。


凶鳥となった日

6年前・・・

 

私たち6人は何もかもがそっくり。思ったことも、やりたいことも、好きなものも嫌いなものも、意見が違ったことなんて1度もない。まぁ、六つ子だからかもしれないけど私はそれを面白く思うし、嬉しくも思う。実は私の自慢だったりする。

 

「お母さんの誕生日プレゼント、どうする?」

 

「どうしよっか・・・私たち、お金ないから・・・」

 

「おいしいケーキも買えないしね・・・」

 

そんな私たち六つ子の姉妹にとって外すことはできないとっても大事な行事の話し合いをしているよ。その大事な行事というのはね・・・私たちの大好きなお母さんのお誕生日!そんな大事な日だからこそ、お母さんには笑ってほしいと思って、何をプレゼントしようかって話し合ってる。

 

「うーん・・・どうせなら心のこもった贈り物がしたいよね」

 

「だよね!お母さんが喜んでもらえるような、とびっきりのやつ!」

 

「じゃあ、お花で冠を作ってみる?」

 

こうして話し合っていても、なかなか決まらないものだなぁ・・・。困ったなぁ・・・お母さん、笑ってる姿なんてほとんど見たことないから、好みがわからないよ・・・。

 

「おーい、そこの六つ子たちやーい」

 

話し合いながら道を歩いていると、河原で絵を描いてるお爺さんが声をかけてきた。私たちはこの人のことを、親しみを込めてお絵描き爺さんって呼んでるよ。

 

「あ、お絵描き爺さんだー」

 

「お絵描き爺さん、こんにちわー」

 

「こんにちわ。いつ見ても君たちは仲良しだね。いい画になるよ・・・絵を描きたいくらいにね」

 

このお爺さんはお絵描き爺さんと呼ばれるくらいにまで絵が好きで毎日のように、絵の話を私たちにしてくるんだ。私たちにたまに絵のモデルにしてくれって頼まれるけどね。

 

「またここの絵を描いてるの?飽きないねー」

 

「同じ絵を描いてて楽しい?」

 

「景色というのはね、日々によって変わるものだよ?だからその質問はナンセンスというものだよ、一花、五月」

 

あ、お絵描き爺さん、一花と五月を間違えてる。

 

「私、一花じゃないよ」

 

「え?」

 

「私が五月で・・・」

 

「私が一花だよ」

 

「NOOOOOOO!!未だに!!違いが!!わからん!!」

 

あははは、お絵描き爺さん、頭を抱えてるよ。おっかしー!思わず笑っちゃいそうだよ。まぁ、私たちは同じワンピースに同じ長い髪をしているといった感じに見た目は全く同じだもん。当然だよね。

 

「おっと、すまないね・・・こんなことを言ったら君たち、傷ついたかな?」

 

「ううん、気にしないで!同じ、は私たちの褒め言葉だもん!」

 

「うんうん、私たち、六つ子だもんねー!」

 

二乃と三玖が自慢げにそう口にした。確かに、同じと言われると嬉しくなっちゃうよね。まさしく褒め言葉だよ。

 

「そ、そうなのかい?うーん、よくわからない感性だね・・・」

 

「えへへ・・・それで、私たちに何か御用?」

 

「うん?いや、たまたま通りがかった君たちに挨拶をって思って呼び止めたのさ」

 

「え?それだけ?」

 

「ああ」

 

・・・なーんだ、せっかく四葉が本題に戻してくれたと思ったのに、たいした用がないだなんて、つまんないなー。

 

「じゃあもう行ってもいい?私たち、お母さんの誕生日プレゼント買いに行かないと・・・」

 

「おお!あの美人教師の奥さんかい?そういえば今日があの人の誕生日だったか・・・。そりゃ、何か祝わないとね・・・」

 

お絵描き爺さんはおひげをいじりながら考えだして、私たちに向けて笑顔を向けた。

 

「おお、そうだ!そういう時こそ絵だよ!君たち、奥さんのプレゼントは絵にしなさい!」

 

「「「「「「え~~~?」」」」」」

 

お絵描き爺さんの提案に私たちはあまり納得のいってない声を出す。

 

「絵を描いても・・・ねぇ?」

 

「うん。お母さんが喜ぶかわかんないし・・・」

 

「君たち、相手が喜ぶ贈り物っていうのはね、品質がよければいいというわけじゃない。いかに真心がこもっているかどうかだよ」

 

「真心?」

 

「特に自分たちの手で作り出したものは、相手にとってかけがえのないものになるだろう。それが親子ともなれば尚更さ」

 

????お絵描き爺さんの言っていることがよくわからないや。私たちが子どもだから理解が遅いからかもだけど。

 

「?それってどういうこと?お絵描き爺さん」

 

「言っている意味がよくわかんないよー」

 

「やってみればすぐにわかるさ。ほら、騙されたと思って描いてごらん」

 

そう言ってお絵描き爺さんは私たちに1枚ずつ用紙と下敷きをくれた。

 

「うーん・・・仕方ない、やってあげよっか」

 

「こういうのに付き合ってあげるのも、優しさ、だからね」

 

「よーし!そうと決まればやってみよー!」

 

「もー、また一花が仕切りだしたー」

 

とりあえず私たちはお絵描き爺さんの言うとおりにしてみることにした。本当に絵でお母さん、喜んでくれるかなー。というか、それ以前に何を描けばいいのかわかんないよ。

 

「とはいえ、何を描こうか?」

 

「川とか描いてもしょうがないし・・・」

 

「動物とかは?」

 

「うーん・・・普通すぎない?」

 

「六海は何かいいアイディアない?」

 

「私?うーん、そうだなぁ・・・」

 

何がよければお母さんに喜んでもらえるんだろう?う~ん、悩むなぁ・・・。

 

「・・・あ、そうだ!」

 

みんなの顔を見た途端、私、いいアイディアが思い浮かんじゃった。

 

「どうしたの?何かアイディア見つかった?」

 

「うん!あのね・・・私たち、みんなの顔を描くっていうのはどう?」

 

「「「「「私たち?」」」」」

 

私が出した提案にみんなはきょとんとする。

 

「あのね、お母さんは今は1人で病気で入院してるでしょ?それで思ったんだ。1人できっと寂しい思いをしてるんじゃないかなって」

 

「確かに。私もそう思うよ」

 

「お母さん、かわいそう・・・」

 

「うん。だからね、そんなお母さんを元気付けたいって思ったんだ。私たちがついてるよって、お母さんは1人じゃないよって。どうかな?」

 

私が出した提案にみんなはお互いに顔を見合わせて、にっこりと頷いた。

 

「それいいと思う!」

 

「うん!きっとお母さん、喜ぶよ!」

 

「えへへ・・・実は私も同じこと考えてたんだ・・・」

 

「三玖も?私も同じ考えだよ」

 

「みんな考えてることは一緒だったんだね。実は私も」

 

「みんな・・・」

 

みんな、私と同じことを考えてくれてたんだ・・・。私は、姉妹の気持ちが1つに纏まってくれているのが嬉しくて、気持ちがぽかぽかしているよ。

 

「よーし!じゃあさっそく始めよっか!私、五月を描こうっと!」

 

「わっ!ずるい!じゃあ私三玖を描く!」

 

「えー⁉じゃ、じゃあ・・・私は六海を!」

 

「もう・・・みんな早い者勝ちみたいに・・・。私は四葉を描くけど」

 

「私は二乃を描こうかな。四葉はどうする?」

 

「うーん・・・私は余った一花を描こうかなー」

 

みんなが早い者勝ちといわんばかりに姉妹を指名して絵を描き始める。一花は五月、五月は三玖、三玖は私を、私は二乃を、二乃は四葉を、四葉は一花という感じになった。

 

「でも・・・本当にこれでお母さん喜んでくれるかなぁ?」

 

「うん・・・だって・・・ねぇ?」

 

「うん・・・こんなに下手な絵をあげてもねぇ・・・」

 

私たちはお世話にも絵があまり・・・というか、めちゃくちゃ下手なんだよね。線がところどころ曲がっていて、うまく形にできない。

 

「ほぉ~・・・なかなかうまいじゃないか。こいつは、立派な絵だ」

 

そんな中でお絵描き爺さんは私たちの絵を誉めている。でもその褒め言葉は私たちをバカにしてるようにしかみえない。

 

「ちょっとー!お絵描き爺さんは見ないでよ!」

 

「そうだよ!私たちをバカにしてるでしょ!」

 

「そうだそうだ!心にもないことを!」

 

「いや、ワシの目に狂いはないさ」

 

私たちの文句にお絵描き爺さんは確信を持っているよう雰囲気でそういいはなった。

 

「絵の価値というのは心の表れによって変わるものだ。君たちのその絵は6枚合わさって初めて完成するまさに姉妹愛溢れる素晴らしいものだ」

 

「「「「「「そうかなぁ~?」」」」」」

 

「特にこれを提案した六海。姉妹愛だけでなく、奥さんを思うその気持ちこそが、この絵の最大の価値であり、最高傑作なのだよ。君がそうでなくとも、心の奥底ではそれがわかっている。もしかしたら六海は、将来絵に携わる人間になるかもな」

 

「私が?」

 

お絵描き爺さんはこう言ってるけど・・・この提案はみんなの顔を見て思いついただけだし・・・お母さんのことも考えてはいるけど・・・やっぱりお絵描き爺さんの思い過ごしじゃない?

 

「本当にそう思ってる?」

 

「もちろんだとも。もし奥さんが喜ばなかったら君たちの好きなものをいくらでも買ってあげるよ」

 

「・・・じゃあ信じてあげるけど・・・ダメだったら何か買ってよね!」

 

お絵描き爺さんの言質をとったところで私たちはお絵描きを再開させる。喜んでくれるならいいけど・・・これでダメだったら思いきって高級品を買わせてやるんだから!

 

♡♡♡♡♡♡

 

絵を描き終わったところで私たちは今お母さんが入院している病院までやってきた。ちなみにお絵描き爺さんとはバイバイしてきた。何でもお爺さんがお祝いしても喜ばないだろうってことみたい。そんなことないと思うけどなぁ・・・。

 

「ううぅ・・・緊張してきた・・・」

 

「ね、ねぇ、やっぱりやめにしない?別のものの方が・・・」

 

「ここまで来て何言ってるの!きっと大丈夫だって!」

 

「そうそう、お絵描き爺さんも大丈夫だって言ってたし」

 

「でも・・・こんな絵だよ?信用できるかなぁ・・・」

 

「ダメだったら高級品を買ってもらおうよ。さ、行こ」

 

若干ながら不安はあるけど、私たちは意を決して病院の中に入った。病院に入ったら看護師さんにお母さんがいる病室に案内してもらっちゃった。207号室・・・この病室にお母さんが入院してるんだけど・・・今更ながら緊張してきちゃった・・・。

 

「失礼しま~す」

 

他の患者さんの迷惑にならないように、静かに入って私たちはお母さんのいるベッドへ向かっていく。奥へ進んでいくと、私たちが会いたかった人・・・私たちにとって最愛の人・・・私たちのお母さんがいた。

 

「「「「「「お母さん!!」」」」」」

 

私たちはお母さんを見つけてすぐにお母さんに抱き着いた。だって会えて嬉しいんだもん。

 

「あなたたち・・・来ていたんですね」

 

「うん!どうしても会いたかったから!」

 

「それから・・・お母さんに渡したいものがあったから!」

 

「渡したいもの・・・ですか?」

 

「「「「「「せーの・・・」」」」」」

 

私たちはせーのの合図でお母さんに私たちの描いた絵を見せつける。

 

「「「「「「お母さん、お誕生日、おめでとう!!」」」」」」

 

「!」

 

「本当は家でお祝いしたかったんだけど・・・まだ退院できないから・・・」

 

「私たち、どうしてもお祝いがしたくて・・・我慢できなかったんだ」

 

「これ、私たちが描いたんだよー」

 

「これで病院でも寂しくないね」

 

「お母さん、早く元気になってね」

 

「病気なんかに負けないでね」

 

「・・・・・・」

 

私たちはお母さんに私たちの絵を渡したけど、何も反応してくれない。

 

「あれ?反応してないよ?」

 

「嬉しくなかったのかなぁ・・・」

 

「やっぱりこれじゃあダメだったんだ・・・」

 

やっぱりダメだった・・・そう思った時、お母さんは私たち6人をぎゅっ、て抱きしめてきた。

 

「あなたたちがいつまでも元気でいてくれる・・・それが私にとってかけがえのない大切なものです」

 

「「「「「「お母さん?」」」」」」

 

「素敵な贈り物をありがとう・・・私の娘たち」

 

お母さんは私たちの頭を撫でた後、私たちが描いた絵を愛しそうに見つけてる。お母さんが喜んでくれてる・・・お絵描き爺さんの言った通りだ・・・。お母さんの喜ぶ顔が見られて、とても嬉しい・・・。私たちはお互いに喜びを分かち合うように笑いあった。

 

それから数日後、お母さんは病気が治ったみたいで退院できたみたい。私たちはその日、お母さんの退院を大いに喜びあった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

お母さんが退院してから、あっという間に日にちが過ぎていった。ある日には京都へ修学旅行に行って来て楽しんできたり、家族旅行としておじいちゃんがいる旅館に行って来たりしてとても楽しい日々を送ってきた。その際に気になったのは、最近四葉が私たちとは違う姿をするようになった。どんな姿と言われたら、頭にウサギみたいなリボンをつけてたよ。そんな四葉を見て五月も星形のヘアピンをつけるようにもなってるね。今まで同じ姿でいたから変な気分だよ。それに以前と比べて私たちといる回数もだんだん減ってきているし・・・。・・・でもそれ以上に気になってるのは・・・

 

「お母さん、大丈夫?」

 

「心配をかけてすみません。私は大丈夫ですよ」

 

日が経っていくたびに、お母さんの体調が悪くなってきている。どうして?病気治ったんだよね?治ったから退院できたんだよね?

 

「六海、ここはもういいですよ。後はやっておくのでみんなと遊んできなさい」

 

「うん・・・無理しないでね」

 

私はお皿洗いのお手伝いを終わらせ、姉妹のところに戻・・・

 

「ええええええん!」

 

えっ⁉️五月が泣いてる⁉️

 

「五月、どうしたの⁉️何で泣いてるの⁉️」

 

「うぐ・・・ひぐ・・・私の・・・ううぅ・・・」

 

「ああ、泣かないで・・・ね?」

 

五月がこんなに泣くなんて・・・どうしたんだろう?

 

「みんな、何か心当たりない?」

 

「・・・それが・・・えっと・・・」

 

「実は・・・一花がまた・・・おやつを・・・」

 

三玖と二乃の説明で私はすぐに一花に視線を向ける。あ!こっそり逃げようとしてた!

 

「一花ぁ!!また人のおやつをぉ!!」

 

「げっ!」ビクッ!

 

私は怒ってすぐに一花を問い詰める。一花はすぐこっちを向いて必死の言い訳をする。

 

「こ・・・これは・・・違うんだ!その・・・お腹がすいたとかじゃなくて・・・味見!味見してただけ!」

 

「言い訳しない!!人のものを取るなっていつも言ってるでしょ!どうしていつもいつそんなことするの!」

 

「うっ・・・うるさいなぁ!別に怒んなくたっていいでしょ!」

 

ベシッ!

 

「いたっ!」

 

一花は私の言い分にイラついたのか叩いてきた。私はすぐにやり返す。

 

「何すんの!!」

 

ベシッ!

 

「たぁ!もう怒った!痛めつけてやる!」

 

「逆ギレしないでよ!」

 

私と一花はお互いに怒って取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。

 

「わわわ・・・け、喧嘩はやめて!」

 

「そうだよ!一花、六海、やめて!」

 

「う、うううぅぅ・・・」

 

三玖と二乃が止めてきたけど関係ない。今日こそは一花が反省するまでやめるつもりはない。

 

「何をやっているのですか?」

 

かなりドスのきいた声が聞こえて私と一花はピタリと喧嘩を止めた。私たちが恐る恐る振り替えってみると、そこにはいつも通りの無表情のお母さんがいた。まずい・・・これ、絶対おしおきしてくる目だ・・・。

 

「ち・・・違うの!これは・・・六海が先にやってきたんだ!」

 

あ!一花!自分だけ逃れようとしてる!そうはさせるか!

 

「ちょっと!嘘言わないでよ!先にやったのは一花でしょ!」

 

「何さ!ちょっとぐらいつまみ食いしたくらいでそんなに怒ってさ!」

 

「元はと言えば一花が五月の許可もなく勝手におやつ取るからでしょ!」

 

「あーあー!聞こえない!なーんにも聞こえないよー!」

 

私と一花はお母さんが目の前にいるにも関わらず、激しい口論をした。

 

げんこつッ!×2

 

「そんな事で喧嘩しないでください」

 

「「~~~!!」」

 

「「「あわわ・・・」」」

 

当然ながらお母さんからおしおきとして私と一花にげんこつを放ってきた。い・・・痛い・・・お母さんのげんこつ、普通の人より痛いんじゃ・・・?

 

「一花、あなたは姉妹の長女、妹たちのお手本にならなければいけないのはわかっていますね?」

 

「う、うん・・・」

 

「では、やっていいことと悪いことの区別や、今やらなければならないことは、わかりますね?」

 

お母さんのお説教を受けて、一花は少し涙目になってきている。

 

「う・・・ごめんなさい・・・」

 

「謝る相手が違いますよ」

 

一花はお母さんの指摘を受けて今度は五月に目線を向けた。

 

「・・・ごめん・・・」

 

「うん・・・もういいよ・・・許してあげる」

 

「一花、よくできました」

 

「えへへ・・・」

 

一花が五月に謝ったら、お母さんが一花を優しく頭を撫でた。いいなぁ・・・私もしてほしい・・・。

 

「六海」

 

「!」

 

「人のために行動できるあなたの優しさはとても素晴らしいものです。しかし、だからといって、一方的に怒って相手を傷つけていい理由にはなりません」

 

「うぅ・・・」

 

お母さんの指摘に私は何も言えなかった・・・。だって私は・・・すぐに怒ってしまうから・・・。

 

「人と付き合うにあたり、わだかまりは大なり小なり起きうるものです。2人の喧嘩と同じように。しかし、それらを恐れず、しっかり向き合ってあげてください」

 

お母さんは一花を抱きしめながら、もう片方の手で私の頭を撫でてきた。

 

「いいですか?怒りに身を委ねるのではく、優しく寄り添い、相手の気持ちをよく理解し、手を差しのべてあげるのですよ。六海なら、きっとできるようになります」

 

お母さんの言っていることは正直に言うと、よくわかんない。でも・・・なんだろう・・・なんだか気持ちがぽかぽかしてくるよ・・・。私はお母さんの慈愛に満ちた顔をじっと見つめる。

 

「姉妹のために、人のために役立てるようないい子になってください。それだけが、私の望みです」

 

この会話が、私とお母さんの、最後の会話になるとは、この時の私は、そんな事を考えたこともなかった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日になって、お母さんは病気で命を落として、私たちの前からいなくなってしまった。やっぱりお母さんの病気は治ってなかったんだ。そんな事を今さらながら気づいた私たちはお母さんの死に対して、深く悲しんで泣いた。お母さんはもう、私たちの前には二度と現れないから。

 

お母さんが死んでから、私たち姉妹全員はお母さんが入院していた病院のお医者さんに引き取られた。なんでも、お医者さんはお母さんの病気が治ったらお母さんに告白をするつもりだったみたい。あの人がどういう心境で私たちを引き取ったのかはよくわからない。けど、姉妹と一緒にいられる機会を与えてくれたことには、深く感謝してる。それにしてもこうなった以上は今まで通りのお医者さんとは呼べないな。お母さんと結婚を考えてたみたいだから・・・お父さんって呼ぶべきかな。うん、今後はお父さんって呼ぼう。

 

そんなわけで、お父さんに引き取られてから私たちの生活は大きく一変した。住む場所はボロアパートから高級マンションに移ったり、私たち姉妹がもらうお小遣いの量も比べ物にならないくらい高く、服も食べ物も高級なもので何1つ不自由のない生活になっていった。本来の私たちなら大きく驚いたのだけど、お母さんの死もあって、驚く気力は私たちにはなかった。

 

だけど1カ月が経って、みんなだんだんと前に向かって生活していく。私も、少しずつだけど、お母さんの死を乗り越えようと、お母さんの分まで今を精いっぱい生きているよ。私は今、そのことの報告を兼ねて、ちょっと早いけどお母さんのお墓参りに来ているよ。でも、線香を上げて手を合わせた後は、特にやることもなく、ただただお母さんのお墓を見つめるばかり。ただ思い浮かべるのは、お母さんが残した言葉だけ。

 

『姉妹のために、人のために役立てるようないい子になってください』

 

正直、人の役に立てれば何が起こるのかはわからない。でも、お母さんは私たちにそうなってもらいたいと願っていた。それなら・・・私がお母さんの願いを・・・叶えてあげたい。

 

「お母さん・・・私、なるよ。お母さんが願っていた・・・人の役に立てられるような人間に」

 

私はお母さんのお墓に一礼をして、持ってきたお花を供えて墓地から出て、あのマンションへと戻っていく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから1年の時が流れて・・・私たちは小学校を卒業し、中学生になった。ただ、私たちが通う学校は普通の学校とは一味違っていた。

 

黒薔薇女子学院・・・ここは中高一貫となっているほどの大きい学校で名門と言われてるみたい。頭の悪い私たちがそんなすごい学校に通えるのはお父さんの計らいであったりする。うまく学校に馴染めてるか不安だけど・・・それでも私たちはここを通わせてもらったお父さんの期待に応えるべく、頑張って勉学に勤しんでるよ。

 

そんなある日の黒薔薇のお昼休み・・・

 

「どうすれば人の役に立てるんだろう?」

 

私は二乃が作ったお弁当を食べながら突拍子もなくそう口を開いた。

 

「えぇ?」

 

「え、えーっと・・・」

 

一緒にお昼を食べている姉妹たちは当然困惑の表情をしてる。そりゃ突然こんなことを聞いたらそうなるよね。

 

「六海、それはどういう意味?」

 

「いや、これはずっと考えてたことなんだけどさ、何が人のためになって、何を頑張ればいいんだろうなって思ってさ・・・」

 

「すみません、ちょっと何言ってるのかわからないのですが・・・」

 

大丈夫、私だってわかってないから五月は気にしなくていいよ。

 

「あー、ひょっとして、前にお母さんが言ってたことを気にしてるの?」

 

「そうそう。なんだ一花、ちゃんと覚えてたんだ」

 

「ちょっとー、それくらいは覚えてるって」

 

そう言われても一花ってなんかだんだんちょっと怠け癖が出てきてる傾向があるから、一蹴するのかと思ってたから、以外に覚えててビックリした。

 

「そういえばそんな事言ってたね」

 

「ねぇ、それってなんの話?」

 

「ああ、そっか。四葉だけ聞いてなかったっけ?」

 

ああ、そういえばあの時あの場には四葉だけがいなかったんだっけ?

 

「でも、難しく考える必要はないと思いますよ?六海は六海らしく、自分の思ったように行動すればそれでよいかもしれませんよ?」

 

「・・・そうは言ってもなー・・・」

 

私は五月の言動が気になりながらも、頭をうんうん捻る。五月はお母さんがいなくなってから、お母さんと同じようなしゃべり方をするようになった。なんでも自分がお母さん代わりになると考えてるみたいだけど・・・正直に言えば、五月のその言葉遣いが、私の中では非常に腹立たしく、ムカムカとしてくる。だから気に入らなくてしょうがないんだ。

 

「六海ちゃんはちょっと気張りすぎなんだよ。あんまり頭が固いと、いつかぽっきりいっちゃうよ?」

 

「でも・・・」

 

「結果に急がないで、まずは自分のやりたいことをじっくり探してごらん?きっと六海ちゃんの求める答えが見つかるかもしれないよ?私たちも手伝ってあげるからさ」

 

「一花・・・」

 

・・・うん、そうだよね。ちょっと急かしすぎてたかも考える前にまずやりたいことを見つけないとね。話はそれからだ。・・・というかそんなことより・・・うぅ・・・

 

「そのちゃんづけやめてくれない?さっきからむず痒くて・・・」

 

「えっ⁉️今いいこと言ったのにその返し⁉️」

 

いやだって・・・友人とかはともかく・・・姉妹・・・それも六つ子からちゃんづけされるとなんかこう・・・むずむずしちゃって至るところが痒くなってくるんだよね・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

やりたいこと、と言ったものの、私のやりたいことってなんだろう?正直に言えば、これが難しい。幼稚園だった頃、私はお母さんみたいな先生になりたいって言った覚えがあるけど、ぶっちゃけて言えばあの時は今以上に幼かったから本気で言ったことじゃない。第一、私は頭がよくないから先生なんてなれっこないんだけどね。まぁ、将来の夢=やりたいこととは限らないからなぁ。というより、自分が何になりたいかなんて今のところわかんないけどね。でも本当に困った・・・どうしようか・・・。

 

「ね、ねぇ・・・中野さん・・・」

 

「ん?」

 

おっと、考え事してたらクラスの子に話しかけられた。この子・・・誰だっけ?入学してまだ一カ月も経ってないからまだ名前が覚えられないなぁ。ちなみに姉妹は全員違うクラスに在籍してるよ。

 

「その筆箱についてるキーホルダーって・・・魔法少女マジカルナナカでしょ?」

 

「え?ああ・・・これ?うん。私、これ好きなんだ」

 

魔法少女マジカルナナカ・・・これは最も注目を集めてる人気作品で、私がつけてるキーホルダーはその主人公であるナナカ本人なんだ。私たちが小学5年生くらいに連載が始まって、お母さんがそれを私たちに読み聞かせてくれて以来、私はこの作品にすっかり虜になった。他の姉妹はどうかは知らないけど。読み聞かせと言っても漫画としてではなく、友達?らしい人からわざわざ紙芝居を作ってもらったものでなんだけどさ。

 

「えへへ・・・実は私も好きなんだ・・・マジカルナナカ」

 

「え?本当?じゃあ質問ね。ナナカのライバル魔法少女のウェンディが登場するわけなんだけど、現在までの話数でウェンディが使用してきた魔法の回数は?」

 

これは何度も何度も読み返さないと絶対に答えられないものだと思うけど・・・ちょっといじわるしす・・・

 

「えっと・・・72回、でしょ?」

 

え・・・マジ?この子当てちゃったよ。ぴったり正解しちゃった。それなら・・・

 

「じゃあ次、ナナカが使った魔法・・・」

 

私がこの子にファンなら絶対に知っておくべきことを質問したら全問正解してきた。この子・・・完全なるマジカルナナカラブだね!

 

「すご・・・全問正解・・・」

 

「ふふ・・・私ばっかりもなんだし、私も質問しよっかな。ナナカとウェンディの決戦編でナナカがウェンディと向き合うために新しい魔法を編み出そうとしてたけど、その魔法の名と編み出し方はなんでしょう?」

 

「う~ん・・・ちょっとばかり難しいけど・・・」

 

難しい質問だけど、私はナナカが魔法を編み出す特訓方法、そしてその魔法の名を突き付けた。

 

「どう?当たってるでしょ?」

 

「正解。じゃあ次ね。本編の20話で・・・」

 

たくさんマジカルナナカについての質問をされたけど、私は全部答えてやったよ。

 

「ふふ、すごいね。中野さんも全問正解だよ」

 

「まぁね。一応私、ナナカファンなわけだし」

 

私とこの子はナナカ談議で大いに盛り上がった。なんか、姉妹以外でこんなに話したのは、初めてかも。話もすごく馬が合うし。

 

「私たち、気が合うね」

 

「そうだね。・・・えーっと・・・名前・・・」

 

私がこの子の名前を尋ねると、おかしそうにくすくすと笑った。

 

「私は姫路。改めて、よろしくね」

 

姫路さんはすっと手を伸ばし、私はその手をぎゅっと握って握手を交わした。この黒薔薇で初めて友達ができた・・・私は、そんな気持ちになった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それ以降、私は姉妹以外では、姫路さんと一緒にいることが多くなった。ある時はお昼休みで一緒にご飯食べたり、ある時はナナカ談議をしたり、またある時はナナカイベントを2人で楽しんだりと・・・とにかく姉妹より姫路さんといることが多い気がする。短い期間だけど、それこそ、親友って呼べるんじゃないかってくらいに、親しくなった。そんなある日のこと、私は今日は姫路さんと一緒に本屋に立ち寄ってマジカルナナカの最新刊を買いに行った。2人とも最新刊を買うことができて、お互いににやけ顔が止まらなかった。

 

「週刊誌で1度読んだものとはいえ・・・やっぱりこればっかりは・・・ふへへ・・・」

 

「中野さん・・・にやけてるよ・・・ふふ・・・」

 

「姫路さんだって・・・」

 

でも気持ちはわかるよ・・・あの勇姿がこの1冊に込められてると思うと・・・ぞくぞくするからね。

 

「さて、と。この後ラーメン屋でも行かない?あそこのラーメンはおいしいよぉ?私が保証するよ」

 

行きつけのラーメン屋に誘おうとすると、姫路さんは少し申し訳なさそうな顔をした。

 

「ご・・・ごめん・・・この後、ちょっと用事があって・・・遅れるわけにはいかないから・・・」

 

「そっか。そういうことならしょうがないか。じゃ、また今度誘うよ」

 

「うん。ありがとうね。じゃあ、また明日」

 

「また明日ー」

 

姫路さんは私に向けて手を振って、その場を立ち去った。私も手を振って、姫路さんを見送った。・・・姫路さんの用事っていったい何だろう・・・?ま、これは人の事情だし、私が首を突っ込んでいい事情じゃないか。さーって、私はラーメン屋に行って、空いた小腹を満たそうかな。私は早速ラーメン屋に向かって足を運んでいく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

ラーメン屋でラーメンを食べ終えた私は満足げに街を歩いていく。はぁ・・・麺のあののど越し・・・スープの濃くも薄くもないあの味わい・・・本当、何度食べても飽きないよ。今度は姫路さん・・・さらには姉妹たちも連れていこうかな。そう考えていると、ふとガラの悪いスケ番が路地に入っていくの見かけた。

 

「ああ、怖い奴がいるなぁ・・・ああ、やだやだ・・・関わらない方が身のため、だね」

 

この場を見てみぬふりをしようとしていると、スケ番と一緒にいる子が視界に映った。

 

「・・・姫路さん?」

 

そう、さっき視界に映ったのは姫路さんだった。なんでこんなところに?用事終わって・・・じゃなくて!なんであんな奴らと一緒に?嫌な予感がして、私は彼女らにバレないように隠れながらついていった。ついていってたどり着いた物置場の先で・・・私は見た。見てしまった。姫路さんが・・・スケ番たちに茶色い封筒を渡してる姿を。これは・・・まさか・・・やっぱり・・・。

 

「わっ・・・やば・・・こっち来た・・・」

 

バレないよう私は身を縮こんで、物置に隠れた。あいつらは姫路さんを置いて、そのままどっかに行った・・・。バレてない・・・みたい・・・。ふぅ・・・危なかった・・・じゃなくて!

 

「姫路さん!」

 

「きゃっ⁉️な、中野さん⁉️」

 

姫路さんは私が隠れてた物置から出て来て驚いてるけど、今はそんな気にしてるの場合じゃない。

 

「ごめん、今の見てたよ。それより大丈夫⁉️どこもケガしてない⁉️」

 

「だ・・・大丈夫・・・」

 

「よかった・・・」

 

とりあえず姫路さんが無事で一安心した。もし姫路さんに何かあったらと思うと・・・ぞっとするよ。

 

「・・・姫路さん、教えて・・・今のは、何?あいつらに脅されたの?」

 

「・・・・・・」

 

私の問いかけに姫路さんは答えずらそうにしている。

 

「黙ってたら何もわかんないよ」

 

黙秘を続けていた姫路さんはようやく口を開いてくれた。

 

「ごめん・・・ここでは・・・話せない・・・。明日、学校で、話すから・・・」

 

「う、うん・・・わかった」

 

「じゃ、じゃあ、また・・・」

 

姫路さんは早足で物置場から去っていった。事情は明日話してくれるみたいだけど・・・あいつら、姫路さんに何かしてみろ・・・絶対に許さないから。私は少しもやもやとした気分になりながら自分たちのアパートへと戻っていく。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日のお昼休み、私は誰も使われてない教室に姫路さんを連れてきた。

 

「姫路さん・・・事情を・・・話してくれるよね?昨日のあれは何?」

 

私の問いかけに姫路さんは押し黙り、数分後で事情を話し出した。

 

「・・・私・・・脅されてるの」

 

「脅された?あいつらに?」

 

姫路さんはこくりと首を頷かせた。

 

「詳しくは言えないんだけど・・・ちょっとした事情で木下さんに目を付けられちゃって・・・」

 

木下・・・それがあのスケ番たちのリーダー格の名前か・・・。

 

「お金さえ払っておけば、何もしてこないんだけど・・・もし・・・お金を払えてなかったら・・・私・・・うぅ・・・何されるか・・・」

 

「・・・っ!あいつら・・・!」

 

姫路さんはうっすらと涙を浮かべているのを見て、私の中で怒りがふつふつと湧き上がってくる。よくも姫路さんに怖い目を・・・!あいつら絶対に許せない!

 

「中野さん、どうか抑えて・・・私自身が我慢すれば・・・それで済むから・・・」

 

「姫路さん・・・」

 

姫路さんはこう言ってるけど・・・こうして目の前で泣いている友達を放っておいたら・・・私は、自分自身が許せなくなる!私は・・・姫路さんを木下から解放してあげたい・・・。本当の意味での笑顔にさせてあげたい。

 

「姫路さん・・・私を木下のところまで案内してくれない?」

 

「中野さん・・・何言ってるの・・・?」

 

「私が、姫路さんを自由にしてあげる!だから、案内して」

 

「だ・・・ダメだよ・・・危ないよ・・・最悪・・・怪我どころじゃすまないかも・・・」

 

私が出した提案に姫路さんはそれをよしとしなかった。正直に言って、本当は滅茶苦茶怖い・・・。でも・・・何より怖いのは、友達が危険な目にあって、大怪我してしまうことだ。

 

「だからって、このまま何もしないで見てる方が、もっと嫌だ」

 

「で、でも・・・暴力は・・・」

 

「安心して。こっちからは手を出さないよ。あくまでも、話し合いで解決するつもりだから」

 

「中野さん・・・」

 

きっと、お母さんが生きてたら、きっと話し合いで解決してくださいって言うはず・・・。なんでか知らないけど、そんな気がするんだ。

 

「大丈夫。私が・・・姫路さんを守ってあげるから!」

 

もしかしたら、人のためにできることって、こういうことを言うんじゃないかな?私、初めて自分が誇らしいと思えたような気がする。きっとこれが正解なんだよね・・・お母さん・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

放課後、姫路さんに木下の縄張りに案内してもらって、私は今、木下と面会をした。木下は部外者が入ってきたみたいな顔つきで私を睨んでる。

 

「姫路よぉ・・・今日は用はないっつったよなぁ・・・。それにそいつ誰だよ?」

 

「そ、そのぉ・・・」

 

「あんたが木下?あんたに話があって来たんだけど」

 

「あ?」

 

私の態度が気に入らなかったのか睨みがさらに強くなった。周りにいる不良たちもこっちを見る目つきがきつくなってるのがわかる。

 

「あんた、姫路さんからお金を取り上げてるでしょ」

 

「は?」

 

「姫路さんは迷惑してるんだよ。だから、今すぐにこんなことやめて」

 

私の出した話にここにいる不良は全員唖然として、そして・・・

 

『ぎゃははははは!!』

 

一斉に笑い出した。

 

「マジかよ!そんなことのためにわざわざ来たってーのか?」

 

「ははは!笑える!腹いてぇ!」

 

「何がおかしいの!」

 

「はは・・・悪いねぇ・・・意味がないことに対して、ずいぶん必死だなってね」

 

「意味がないですって⁉️」

 

「わかりやすく言ってやろうか?・・・無駄な行為なんだよ!!」

 

ドガッ!

 

「がっ・・・⁉️」

 

「中野さん!」

 

木下は私のお腹に蹴りを放ってきた。

 

「う・・・うぐぅ・・・」

 

「お前、こいつが迷惑してるっつったよな?ものわかり悪そうだから言ってやるよ。てめぇの意見なんざ、どうだっていいんだよ!」

 

ドガッ!ドガッ!

 

痛みで踞ってる私に追い討ちをかけるように木下は蹴りを放ち続ける。

 

「木下さん!もうやめて!もっとお金払ってあげるから、これ以上は・・・」

 

「姫路さん・・・いいから・・・」

 

「中野さん・・・」

 

姫路さんはこいつらによって十分苦しんだ。だから私が・・・終わらせる。

 

「・・・お金がほしいなら、私が望むくらいにあげるから・・・だからお願い・・・。これ以上は彼女に関わらないで」

 

私の必死の懇願に木下は私の制服の裾を引っ張って、私を近くまで引き寄せた。

 

「ほぉ~。美しい友情だねぇ・・・。そういうの、反吐が出るぜ!!」

 

木下は拳を強く握りしめた。やられる・・・!

 

パサッ

 

「おっと・・・」

 

殴られる前に木下の懐から封筒が落ちてきた。あれが、姫路さんが渡したお金・・・。お金が入った封筒を見て、私は目を疑った。

 

「ねぇ・・・姫路さん・・・どういうこと?」

 

「・・・どういうことって・・・何が・・・?」

 

「だって、姫路さんはここまで来るまで、木下のことを、さん付けで呼んでたでしょ?それなのにどうして・・・あの封筒には・・・

 

 

 

木下のことを、呼び捨てにしているの?」

 

あの封筒には木下の名前がかかれていた。恐らくは木下に送るためにつけたものだとわかる。でもそれなら呼び捨てでなく、様とかさんをつけないと、反感を買うはずだ。だけど木下にはそれが全く感じられない。そこで私は、嫌な予感が頭に浮かぶ。

 

「姫路さん・・・本当にこいつらに脅されてるの?」

 

「・・・・・・」

 

「本当はこいつらと・・・繋がってたんじゃないの?」

 

お願い・・・どうか・・・どうか気のせいであって・・・。予感を外して・・・。

 

「・・・くっ・・・くっくっく・・・あはははは!」

 

長い沈黙に木下は笑いだした。周りの奴らもニヤニヤ笑ってる。

 

「姫路、もうやっちまおうぜ。こんな三文芝居、とっとと終わらせちまおうぜ」

 

三文・・・芝居・・・?

 

「・・・好きにしな」

 

「おっしゃあ!」

 

そ・・・そんな・・・姫路さん・・・何で・・・

 

「ほら、これで無駄の意味がわかったろ?」

 

やめて・・・聞きたくない・・・。

 

「アタシらが姫路を従えさせてたわけじゃねぇ。むしろその逆さ。姫路がアタシらのボスなのさ」

 

「なっ・・・」

 

「アタシらは金で雇われた用心棒ってことなのさ。つまり、お前のそれは、姫路にとっちゃ余計なお世話ってことなのさ」

 

そんな・・・私のやってきたことは・・・姫路さんにとっては意味がない・・・?いや・・・それよりも・・・

 

「どうして・・・?どうして・・・こんな奴らと・・・?」

 

「・・・いじめられないためよ」

 

私の問いかけに姫路さんは淡々と答えた。

 

「小さい頃から私はいじめられて生きてきた。苦しくても・・・痛くても・・・私を助ける相手なんて誰もいなかった。誰も救ってはくれなかった。なら、どうすればいい?簡単。安心な場所を捜せばいい」

 

「安心な・・・場所・・・?」

 

「中野さんにはわかる?安心な場所はどういった場所なのか。それは・・・強い者の後ろよ。強い者の後ろにいれば、誰も私をいじめないでしょ?」

 

それが・・・姫路さんが木下と一緒にいる理由・・・。でも・・・そんなの・・・

 

「そんなの・・・間違って・・・」

 

「あんたに何がわかる!!!」

 

間違っていることを指摘しようとした時、姫路さんは声を荒げた。

 

「あんた、前に言ったわよね?守ってあげるってさ・・・。ふざけんな!!あんたみたいに何の苦労も知らない奴ほどみんなそう言う!!心のこもってないことを言ったってちっとも嬉しかねぇよ!!ちょっと仲良くしてやろうと思ってたのに・・・勘違いして盛り上がって、本当うざい!!!」

 

「・・・っ!姫路・・・さん・・・」

 

「あんたみたいな奴は、飽きて用が済んだら私を見放して、嘲笑って、いじめるんだろうが!!!」

 

違う・・・私は・・・そんなこと思ってない・・・。私は・・・本気で姫路さんと・・・本気で友達になろうと思っただけなのに・・・。

 

「おしゃべりタイムは終わりだよ!!」

 

バキィ!!

 

木下はこれ以上話す必要はないと言わんばかりに私を殴り飛ばした。

 

「今、楽にしてやるよ」

 

私は・・・いったいどこで間違ってしまったんだろう・・・。何が姫路さんのためになったんだろう・・・。そう考えていると、木下と部下たちはじりじりと私に近づいてくる。目の前にいる奴らを見て、私は中に、黒い何かがふつふつと湧き上がってくる。何かが限界まで達した時、私は考えるのをやめ、落ちてあった鉄パイプを拾い上げ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・あ、あれ・・・?」

 

ふと気が付くと、私の視界には白い天井が映った。ここは・・・どこ?私は、今まで何を・・・。

 

「あっ!気が付きましたよ!」

 

「六海・・・よかった・・・」

 

「もう・・・心配させないでよ・・・」

 

辺りを見回していると、私の隣に姉妹たちの姿が映りこんできた。

 

「みんな・・・どうして・・・」

 

なんで姉妹たちがいるの?それにここは・・・病院?なんで私・・・病院のベッドで寝てるんだっけ?私は確か・・・木下たちの暴力にあって・・・。

 

「・・・!!そうだ!木下は・・・姫路さんはどうなったの⁉」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

私の問いかけに姉妹たちは押し黙った。あの後姫路さんは・・・いったいどうなったの⁉

 

「・・・何で黙ってるの?何か知ってるの⁉」

 

「それは・・・」

 

「僕が説明しよう」

 

五月が口を開いた時、誰かが病室に入ってきた。入ってきたのは、私たちのお父さんだった。

 

「今日はもう遅くなる。一花君たちは早く帰りなさい。六海君のことは、僕に任せておきなさい。それに、君たちも説明しづらいだろう」

 

「う、うん・・・」

 

「六海、明日もお見舞いに行くからね」

 

お父さんに言われて、みんなは私がいる病室から出ていった。その中で五月だけが私に向けて申し訳なさそうな顔をして見つめてる。

 

「六海・・・あの・・・」

 

「五月君」

 

「は、はい・・・。六海・・・ごめんなさい」

 

お父さんの視線によって五月は今度こそ退室していった。ここに残っているのは、私とお父さんだけになった。

 

「さて・・・昨日君は大怪我を負って状態で発見され、この病院に搬送されたよ」

 

「昨日も・・・?」

 

「困惑してるようだね。無理もない。丸1日も君は気を失っていたのだからね」

 

1日も・・・?私、そんなに長い時間を眠っていたの?・・・待てよ?私がここに入院してるってことは・・・。

 

「・・・木下は?」

 

「木下君?・・・君と一緒に運ばれた子のことかい?彼女たちも大怪我をしていてね、今ここに入院しているよ」

 

木下もこの病院に入院?それに大怪我?いったいどういうこと?

 

「彼女たちとは会わない方がいい。君も会うのはあまり気乗りしないだろう。それに・・・彼女たちは君たいしてかなり怯えていたよ。みんな、口を揃えて君にこういったみたいだ。鬼・・・とね」

 

鬼?私のことを指しているの?それに怯えていたって・・・。・・・・・・まさか、木下たちが怪我をした原因って・・・。ううん、今はそいつはどうでもいい。

 

「・・・姫路さんは、どうなったの?」

 

「・・・・・・」

 

私の問いにお父さんは少し黙り込んだ。何なのいったい。何があったっていう・・・

 

「・・・君にとっては残念な知らせになるが・・・」

 

「?」

 

「彼女ならもうこの街にはいない」

 

・・・・・・・・・え?この街には・・・いない・・・?

 

「な、何それ・・・どういうこと・・・?」

 

「昨日の事件の後、姫路君はすぐ学校に転校届を出し、この街から出ていったよ。もうこの街で彼女と会うことはないだろう」

 

「なんで・・・どうして・・・?」

 

「六海君は姫路君と仲が良かったと聞く。そんな君にこんなことを言うのは辛いが・・・もう君には二度と会いたくないそうだ」

 

そ、そんな・・・姫路さんが・・・この街から出ていった?私の・・・私のせいで・・・。私が出しゃばらなければ、こんな・・・。

 

「六海君、気をしっかり持ってくれ」

 

「・・・姫路さん・・・ごめん・・・ごめんね・・・」

 

姫路さんが町を出ていったこと・・・そして、姫路さんの気持ちを理解したつもりでいた自分が悔しくて・・・私はただ1人で泣いた。

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの一件は私も被害者ということで、無実となった。だけど、私が病院から退院して、学校に行ったら、周りの反応は冷たかった。私が学校に来ることにたいして、快く思ってない子が多くて、怯えられたりする姿をよく見るようになった。そのため、姉妹以外の子は私から離れていく。姉妹は姉妹で私を励ますことが多くなった。

 

そんな環境の中私は今、帰り道を歩きながら考えていた事をしていた。いったい何が姫路さんをあそこまで苦しめていたのか・・・姫路さんが何で木下を雇おうとしたのか・・・それを踏まえたうえで、私はいったい、何をすればいいんだろう・・・。それに、私にできることなんて・・・あるのだろうか・・・。

 

「おら、金出せよ」

 

「あ・・・あ・・・か、かえ・・・」

 

考え事をしていたら、不良が誰かにお金を取り上げようとする声が聞こえてきた。その声を聞いたら・・・姫路さんのことを思い浮かべてしまう。・・・あいつらみたいなのがいるから姫路さんは苦しみ、木下を雇ったんじゃないか?ここであの子を放っておいたら、姫路さんみたいなことになってしまうのだろうか?

 

・・・そんなことはさせない。もう二度と、姫路さんのような人をこの目で見たくはない。姫路さんみたいな過ちは、決して生み出させない。この考えが正しくないのはわかってるつもりだ。それでも・・・それで負の連鎖が止められるなら・・・

 

私は喜んで、悪に転じよう。

 

私はマスクをつけ、お金を要求する不良に近づいて、持っていた鞄を上にかざし、そいつに向かって振り下ろした。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それからというもの、私はこのような行為を繰り返すようになった。悪を見つけては粛清し、弱き者を悪から遠ざける。見返りなんていらない。蔑むのなら蔑めばいい。それで、あの連鎖から止められるのなら。

 

そのような行為を続けていくうちに、周りは私をさらに恐れ、畏怖の念を抱き、こう呼ぶようになった。

 

凶鳥・・・災いをもたらす鳥。

 

誰がそんな風に呼び出したかはわからないけど、そんな事は些細なことだ。もう私には、この道に進むことしかできないのだから。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『とある会話』

 

「ちくしょう!覚えてやがれー!うおおおお!」

 

「あ、上杉、ちょっとあれ見なさいよ」

 

「ん?」

 

「あれ、○○高校の奴らじゃない?まーた凶鳥ってのにやられたのかしら」

 

「知らねぇよ」

 

「凶鳥って確か春がいる学校にいたわよね。あの子、大丈夫かしら・・・」

 

「・・・・・・」

 

「ちょっと、会話のドッジボールくらいしなさいよ」

 

「知らん。勉強で忙しいんだ。後にしろ」

 

「勉強勉強って・・・まるでオウムみたいね」

 

「うるせ。つーか、お前誰だよ」

 

「真鍋だって言ってるでしょ。覚えなさいよこのクズ野郎」

 

「なんだとこの性悪女」

 

♡♡♡♡♡♡

 

あれから1年の時が流れ、私は公園のベンチで学校新聞というものを読んでる。内容は、私がどれだけ恐ろしい存在かを載せたものだ。

 

「・・・デタラメもいいとこだっての」

 

だけどそのほとんどが身もふたもない単なるくだらない噂程度なもの。つまり私がやってないことを大げさに広めてるだけ。全く、くだらなさすぎる。どれだけ新聞のネタに飢えてるんだっての。

 

「おかげでいい迷惑よ」

 

私のやったことでなら別にいい。蔑まれるのはいつものことだし。でもやった覚えのないことで騒がれるのはいい気分はしない。いちいち身に覚えのないことで先生に呼ばれてたまったもんじゃない。

 

「・・・帰ろ」

 

私は新聞をくしゃくしゃに丸めて、適当に投げ捨てて、帰ろうとした時・・・

 

「ちょっと君?さっき今ゴミを捨てたよね?アタシ、見ちゃったんだけど?」

 

なーんかやたらとしゃべる女に話しかけられた。なんか派手なファッションをしているけどさ・・・

 

「ダメだよー?治安が悪くなっちゃうじゃん?きれい1番を心掛けないとー」

 

いや・・・本当・・・あんた誰よ?

 

♡♡♡♡♡♡

 

これが初めての出会い。友と思っていた者を今も思い続け、凶鳥となった六海。そして、絶対的な人気を誇る漫画家、MIHO。この出会いによって、今の六海を徐々に変えていくだろう。

 

凶鳥から、神話鳥へと変化していくのは、もう間もなくである。

 

35「凶鳥となった日」

 

つづく




六つ子豆知識

六海(中学生)

外見はストレートロングで黒カチューシャをしている。メガネはかけてない。

六海が中学生の頃の姿。母より褒めてもらった長い髪が非常に自慢。姉妹以外触ることは許さない。
性格は始めは姉たちとほとんどそっくりだが、怒りん坊で事あるごとにすぐに怒りを示すことがしばしば。だが凶鳥となった後は口調が変わり、少しずつ荒れていっている。
黒薔薇で初めてできた友達と思っていた姫路に裏切られてもなお、姫路のことを友達と思っている。彼女の過去の苦しみを理解できなかった罪と、彼女と同じ思いをする人間を生み出したくないという考えの元で、不良たちに喧嘩を吹っ掛けていった。その行為が周りから恐れられるようになり、畏怖を込めて凶鳥と呼ばれるようになった。喧嘩をする際は姉たちのことを思い、顔を隠すようにマスクをつけている。
姉たちのことは今も大切に思ってはいるが、いろいろと思うところが増えて、少し煩わしいという気持ちもあるのは姉たちには内緒だ。
凶鳥から卒業し、現在の甘えん坊になったのは、我慢していたものから解放され、タガが外れたのだと思われる。
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