理由は、四葉ちゃんの方はプールに行く話の後にしようと思っているのです。
五月ちゃんの方はというと、話が真っ先に思いついたので、1番手は彼女にしようと思っているからです。
そんなわけなので、ご協力お願いします。
四葉SIDE
「え?誕生日のこと聞き忘れた?」
私たち姉妹は学校に向かってる最中、昨日上杉さんと同じバイトにいたであろう二乃に上杉さんのお誕生日プレゼントについて聞こうとしました。ところが二乃はプレゼントのことを聞き忘れてしまったようです。
「二乃ちゃん、風太郎君とアルバイト一緒じゃなかったの?」
「ええ、一緒だったわ」
うーむ、どうも上杉さんと一緒だったみたいだけど・・・。
「・・・何やってたの?」
「んー?何してたと思う?」
三玖の問いかけに二乃はなんだか幸せそうな顔をしています・・・。
「何かいいことでもあったのでしょうか・・・」
「なんだか幸せそうだね」
「でもプレゼント、どうしよっか?」
「んー・・・とはいえ、フータロー君に欲しいものを聞くのはなー・・・」
二乃が幸せなのはいいけど・・・う~ん・・・上杉さんが欲しがりそうなもの・・・思いつかないなー・・・。
「・・・あ!そうだ!クラスのみんなに聞いてみようよ!」
クラスの中には上杉さんと一緒のクラスの子もいたし、その子たちに聞けば、少しは上杉さんの好みがわかるかもしれない!うん!いい考えだと思う!
「う~ん、じゃあそうしてみる?」
「そうですね、何もしないよりはいいかもしれませんし」
みんなも了承もしたし、学校についたらさっそく上杉さんの欲しいものをクラスのみんなに聞いてみよう!
♡♡♡♡♡♡
学校について、私はさっそくクラスのみんなに上杉さんの欲しいものを聞いたんですけど・・・
「え?上杉って・・・誰さ?」
「ほら、学級長の。四葉さんが推薦してたろ?」
「あー・・・そんな名前だっけか?」
も、もう忘れられてる・・・!仕方ない・・・別の人に聞いてみよう。それじゃあ・・・あ、武田さんに聞いてみよう!
「上杉君にプレゼントかぁ・・・」
「はい」
「でも彼はそういうのは受け取らないタイプだと思うけど・・・ね」
う~んダメかぁ・・・。それじゃあ次は・・・そうだ!中学生の時一緒だったって言っていた真鍋さんなら何かわかるかも!
「上杉にプレゼント、ねぇ・・・」
「何がいいですかね?」
「あいつが喜びそうなものってやっぱ金じゃないの?中学の時から結構がめついし」
「い、いえ・・・そういうものではなくて・・・」
確かに上杉さんなら喜びそうですけど・・・そんなの全然真心がこもってないですよぉ・・・。
「もっとこう・・・真心がこもって・・・ちゃんとしたものを・・・」
「あー・・・ごめん。だったら知らないわ。あいつとはどっちかっていうと、腐れ縁の仲だしね」
「そうですか・・・」
真鍋さんならわかると思ったんだけどなぁ・・・。クラスが一緒だった女の子ならどうかなぁ・・・?
「うーん、全然わかんないやー」
「だよねー」
「そうですか・・・」
みんなの意見を聞けばって思ったんだけど・・・なかなかうまくいかないなぁ・・・。
「あ、それより四葉ちゃん、小耳に挟んだんだけど、これ本当?」
「え?何ですか?」
「ほら、あれだよー。四葉ちゃんと上杉君が付き合ってるって噂」
・・・え?私が・・・?上杉さんと・・・付き合って・・・?
「・・・・・・ふぁっ!!?」
わ、わわわわわ、わ、私が・・・上杉さんと・・・つ、つつつ、付き合っているって・・・!!?いったい誰がそんな噂を!!?
「2人とも学級長で仲良さそうだし、あんな大胆に推薦するなんて、勘ぐっちゃうよねー♪」
「でも火の立たないところに煙は立たないって言うしねー♪」
「そ・・・そそそ・・・そんな!とんでもない!わ、わわ、私が上杉さんとつ・・・つき・・・なんて・・・お、おおお、恐れ多いです!!」
そうとも・・・私が上杉さんと付き合ってるだなんて、ありえないし・・・それ以上に・・・恐れ多いですよぅ!
「いやー、それはどうかなー?」
「案外上杉君は、満更でもないかもよー?」
う・・・上杉さんが・・・?本当に・・・私を・・・?だとしたら・・・私は・・・いったい・・・どうすればよいのか・・・。ありえないはずなのに・・・どうしても考えてしまう・・・
♡♡♡♡♡♡
私と上杉さんが付き合ってるという話はいったん忘れましょう!今は体育!体育の時間です!今はそっちに集中しましょう!今日は50m走でしたね。よーし・・・。
「位置について・・・よーい・・・」
パァン!
先生の合図で50mまで走り出す。これなら新記録は期待できそうかも。
「中野さん、6.9」
「すげぇ・・・6秒台・・・」
「坂本と同列じゃん。鬼速ぇ・・・」
うーん、まずまずってところでしょうかね。もう少しタイムを上げたかったですが・・・。
「情けないわねぇ。もう少し粘りなさいよ、この体力なしトリオ」←8.5秒
「ぜはー・・・ぜはー・・・う、うるせぇ・・・」←10.3秒
「ふぅ・・・ふぅ・・・む、無理・・・」←10.5秒
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・気持ち、悪いよぅ・・・」←10.8秒
体力がない上杉さんと三玖、六海は案の定にバテて休憩入ってる・・・。真鍋さんはまだ余裕はある感じですね。
「体育委員いるかー?これ片付けておいてくれ」
「あ、今日は休みです」
「そうか。では、学級長、頼めるか?」
「はい!」
「うげー・・・」
授業が終わって、生徒指導の先生(体育担当)からお休みの体育委員さんの代わりに私たち学級長に体育道具を片付けるように言われました。さて、早く片付けちゃいましょうか。
「くっ・・・こんなの不毛だろ・・・。50mタイムの記録なんて計ったって何の役にも立たないだろう・・・」
「ほらほら、文句を言わずに、一緒に運びま・・・」
『案外上杉君は、満更でもないかもよー?』
!!・・・私が上杉さんと付き合ってる・・・か。あの子たちが言ってたことが頭によぎる・・・。私と上杉さんは・・・別にそういうわけではないなんだけど・・・。
「え・・・えーっと・・・べ、別々の方が持ちやすいかもしれませんね!」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・え?そ、そうか・・・?」
と、とにかく!これ以上変な噂が流れないようにしないと・・・。とりあえずはいったん上杉さんから離れないと・・・。
「それじゃあ私はこの重そうな・・・」
「・・・いや、俺が・・・この重いやつを運ぶから・・・細かいのを・・・頼む・・・」
上杉さんが重たいものを?大丈夫かなぁ・・・。
「せーの・・・ふん!!くっ・・・ぬおおおおお・・・!!」
「・・・無理しないでください」
ああ、やっぱりだめでしたか・・・。といっても、上杉さんは引こうとはしないからなぁ・・・。仕方なく私は上杉さんと砲丸入れを運ぶことにしました。
「ほら、やっぱりー」
「絶対何かあるよねー」
「ん?なんか見られてるような・・・」
見られてる・・・というかじっと見ていますよ。あの子たちまたあんなことを言って・・・そんなんじゃないのに・・・。
「・・・あの・・・変なことお聞きしますが・・・上杉さんって・・・私のこと・・・」
「どう?学級長の仕事は?中々に大変でしょう?」
「2人じゃ大変・・・手伝う・・・」
「三玖、真鍋さん・・・」
砲丸入れを運んでいると、真鍋さんと三玖が手伝いを申し出てくれました。それより・・・え?私今何を聞こうとしたの?上杉さんと私の関係を聞こうとしたの?・・・三玖を差し置いて?
「で、四葉。何が聞きたかったんだ?」
「な、何でもないです!!忘れてください!!」
「?お、おう・・・」
ダメだ・・・このままじゃ絶対にダメだ・・・何とかしないと・・・
♡♡♡♡♡♡
パンッ!!
「五月!六海!お願い!!どっちでもいいから学級長の仕事、変わって!!」
「「えっ・・・」」
お昼休みでご飯が一緒になった五月と六海に私は学級長を変わってもらえないか必死に懇願しています。
「あのー・・・四葉ちゃん?急にどうしたの?」
「そうですよ。あんなにやる気だったじゃないですか。それがなぜ・・・」
最初は確かにやる気だったけど・・・今はダメなものはダメなの!!
「お願いだよー・・・焼きそばパンあげるからー」
「た・・・食べ物で釣ろうとしたってそうはいきませんよ!・・・焼きそばパンはいただきはしますが!」
「む、六海でもいいよ!ほら、前に欲しがってたナナカグッズ買ってあげるから!」
「ま・・・毎回毎回欲しいもので釣ろうとしてもダメだからね!!学級長なんて、六海には無理!!」
そ、そんなー・・・少しの間だけもいいのに・・・。
「四葉・・・何かあったんですか?」
「あのね・・・変な噂が流れてて困ってるんだよー・・・。だからしばらくの間どっちかに学級長をやってほしいんだよー・・・」
「噂・・・というと・・・?」
「そ、それは・・・わ・・・私と・・・上杉さんが・・・つ・・・つき・・・つっつき・・・」
「え?何?突っつきあい?」
「ちーがーうー!!」
もう!私は真剣に悩んでるのに、こんな時にボケようとしないでよ六海!
「・・・あー!もー!!こんなことになるなら推薦しなきゃよかったー!!もー、私のバカ!!」
「えーっと・・・四葉ちゃん・・・?」
「・・・みんなに悪いよ・・・。私はただ・・・上杉さんがすごい人だって、みんなに知ってほしかっただけなのに・・・」
それがまさか・・・こんなことになるなんて・・・。どうして、私の思ってることが、みんなに伝わらないんだろう・・・。
♡♡♡♡♡♡
それから放課後になって先生から学級長のお仕事として、私はノートをみんなの机に配っている最中です。・・・ついでに、上杉さんも・・・。
「たくっ・・・学級長といっても雑用ばっかじゃねーか。面倒くせー・・・」
・・・本当にどうしよう・・・。このまま上杉さんと一緒にいたらまた変な噂が流れて・・・
「おい、こっちは終わったぞ。お前の方は終わったか?」
「・・・・・・」
「・・・四葉?」
いや、私は上杉さんは嫌いではないんですけど・・・周りにそういう噂が流れると困るというかなんというか・・・。
「おい四葉、それ半分よこせ」
「!!」
か、考え事をしていたら上杉さんが私の目の前まで・・・!す、すごく・・・近いです・・・///
「・・・こんな面倒な仕事、さっさと終わらせるぞ」
「は、はぁ・・・」
や、やっぱりこのままじゃ変な噂が広がっていく・・・!どうにかして・・・それを阻止しないと・・・!
「・・・上杉さん・・・上杉さんは、私のこと、どう思ってますか?」
「?急にどうした?」
「私は上杉さんが嫌いです」
「は?」
これ以上の噂が広がらないように、私は上杉さんにそう言い放ちました。
「ほ、本当ですからね!だから、もう私に近づかない方が身のためですよ!」
「身のため?」
「で、ですから・・・その・・・た、大変なことになりますからね!」
「大変なことってなんだよ?」
「そ、それは・・・その・・・」
た、大変なことって・・・何があるんだろう・・・?どうしよう・・・うわさが広がらないように考えないと・・・考えないと・・・
「・・・お前、何気にしてんだ?さっきから変だぞ?」
「う、うぅ・・・」
あ、もうダメだ・・・。いくら誤魔化しても上杉さんに見破られてる・・・。これ以上は・・・隠せない・・・。
「・・・そのー・・・ですね・・・実は・・・」
私は観念して、上杉さんに噂の詳細を話しました。
「はあ!!?俺と四葉が付き合ってるだと!!?」
「そ、そうなんですよ・・・」
上杉さんは噂の内容にやっぱり驚いています。
「・・・たくっ・・・変によそよそしいのはそういうことか・・・。どうしたらそう見えるんだよ・・・。どう見たってありえないだろ・・・」
「ですよねー・・・」
・・・・・・まぁ、反応的には予想はできてはいましたが、何もそんな簡単に一蹴しなくても・・・。
「でも女の子ってそういう恋バナ大好きですから、仕方ないですよー・・・」
「・・・恋バナ、ねぇ・・・」
「あ!」
そういえばそうでした・・・上杉さんは恋バナは好きではなかったですね・・・。ものすごい拗らせ方でしたからね・・・。
「えっと・・・恋バナはお嫌いでしたよね。前に言っていましたよね?学業から・・・えーっと・・・なんでしたっけ?」
「最もかけ離れた愚かな行為。付き合うということは、そいつの人生のピークだ」
そうそう、そう言ってましたよね。思い出してきました。
「・・・そう、思っていたんだがな・・・」
「?」
「あそこまで真剣な気持ちを前ほどバカにする気が不思議と起きないな」
お?上杉さんが・・・恋愛話をバカにしないで・・・?ちょっと驚きはしましたけど、私はすぐにこっと笑います。
「どうしたんですか?まさかついに好きな人が?」
「え?」
恋愛についてバカにしないということはそういう・・・はっ!!ま、まさか・・・
「もしかして!!ほ、本当に私のことを!!?」
「ねーよ。何言ってんだ」
でっすよねー・・・。でもそんな簡単に否定しなくても・・・。
「つーか、そんなこと自分で聞くか、普通?」
「ししし、火のない所に煙は立たないらしいですので!」
「誰から聞いたんだ、そんなこと。それに特定の誰かがいるってわけではなくてだな・・・」
「そうなんですかー?誰も好きじゃないんですか~?ほら、三玖とかはどうですか~?」
三玖は上杉さんにたいして好意を抱いてますし、お似合いじゃないのかなーって思って、私はそう問いかけました。
「・・・なんでそこで三玖が出てくるんだ?」
「うーん・・・道のりは長そうですね・・・」
三玖の好意に気付いてないのかなぁ?今までのことを考えると、すぐにわかると思うんだけどなぁ・・・。
「でも、一歩前進、ですね」
「そうか?」
「・・・よかった、上杉さんが恋愛を愚かじゃないと思ってくれて」
上杉さんはまだ誰かを好きになったという気持ちは知らないみたいですけど、少しは恋愛をバカにしないでいてくれた。それだけでも今は十分です。
「この先、上杉さんにも好きな人ができるかもしれません。その時、誰を好きになって・・・どんな恋をしたとしても・・・私は上杉さんの味方です」
「四葉・・・」
上杉さんがどんな女性を選ぼうとも、誰かと付き合おうとも・・・私は全力で上杉さんを支えます。
「私、中野四葉は、上杉さんを全力で応援しています!!」
当然、上杉さんを思う女性の中に、私はいません。
「・・・全く、気が早すぎなんだよ・・・」
「あはは。では、お仕事も終わったので、みんなのところに行きましょう」
「お、おう。だがその前にトイレに寄っていくから先行っててくれ」
「え?はーい」
上杉さんはトイレに行ってしまいました・・・。私たちのアパートに来るんですから、待つのに・・・。大きい方かな?
「四葉ちゃーん」
あ、あの子たちがまた私に話しかけてきた。また噂の話でしょうか?
「また上杉君いたでしょ!」
「見ちゃったよー!」
「放課後の教室で2人っきりだなんて・・・」
「きゃー!!ロマンティックーー!!」
ああ、やっぱり私と上杉さんの関係ですか・・・。でも・・・この2人の望む答えを、私は持ち合わせていません。
「やっぱり上杉さんと四葉ちゃんってつきあって・・・」
「ないよ」
「「・・・え?」」
そうだ・・・私と上杉さんが付き合うなんてことは、あってはならないんだ。
「ありえませんよ」
「「そ・・・そうなんだ・・・」」
私と上杉さんは結ばれはしない。だって私は・・・そんな資格なんて、微塵もないのだから。だから私は、上杉さんの味方であり続けるんだ。上杉さんが、誰と付き合おうとも・・・
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
風太郎SIDE
ふう・・・四葉の奴、気が早すぎだっての。自分の気持ちなんて、自分でもわからねぇってのにな。そもそも恋愛を否定し続けてた俺だぞ?応援するって言われてもな・・・。
じー・・・
・・・なんか・・・すごい視線を感じるな・・・。つーかこんな視線、ここ最近毎日感じてるものじゃねぇか。てことは俺の隣には・・・
「やあ、上杉君」
「お前毎回毎回なんなんだよ!!?」
やっぱいやがったよ、この突っかかり野郎。毎回毎回爽やか笑顔で俺に付きまとってきやがって・・・いったい俺に何の用なんだよ。
「大変そうだね・・・中野さんの家庭教師」
!!こいつ・・・何で俺があいつらの家庭教師をやってるって知ってるんだ?俺はこのこと、真鍋はおろか、誰にも言ってねぇぞ。
「お前・・・何でそれを知ってるんだ?」
「ふふ・・・どうだい?僕が代わってあげても、いいけど・・・ね?」
また変に笑いやがって・・・。
「質問に答えてねーぞ。何で知ってるんだ」
「簡単さ。中野さんのお父さんから聞いたからね。成績不良の六つ子の皆さんを赤点回避するべく、学年一の成績を持つ君に白羽の矢が立った・・・てね」
ちょっと待て。なんでこいつがあいつらの父親のことを知ってるんだ。つーか・・・
「なぜお前があの父親と面識があるんだ?あの人とは関係ないだろ?」
「大アリさ。僕の父がこの学校の理事長でね、お父様とはかねてより懇意させていただいているのさ」
このボンボンコミュニティーめ・・・。だがこいつが父親と面識がある理由はこれでわかった・・・。それでか・・・。
「それは置いといて・・・君は他でもバイトをしているみたいじゃないか。Revival、だったかな?君のアルバイト先」
「そこまでわかってんのかよ。こえぇな」
こいつどこまで俺のこと知ってんだよ?ここまでくると逆に感心してくるな。別の意味で。
「ケーキ屋のアルバイトに家庭教師・・・ここまで掛け持ちしてて、大変だろう?少しでも負担を減らしてあげるよ」
「だから家庭教師をやってやるってか?」
「その通りだよ」
そいつはまぁなんとも・・・。これは俺が望んでやってることだってのにな。
「・・・それができるのならぜひとも代わってやりたいがな、残念ながら俺を雇ってるのは父親じゃなくてあの六つ子たちだ。俺が決められることじゃねぇよ」
そうだ。俺自身が決められることじゃねぇ。冬の寒い中で、急にアパートに引っ越して来たり、冷たい川の中に入ってまで俺を引き留めたんだ。決めるのはあいつらだ。・・・いや、違うな・・・それだけじゃねぇな・・・。
「へぇ・・・確信しているんだね。中野さんが、君を手放さないことを」
「うっ・・・」
遠回しにお前では無理だって言ってやったが・・・どうしてそういう解釈になっちまうんだよ⁉
「そ、そういうわけではないが・・・」
「しかし君は、こんなことしてる場合じゃないだろう?もっとやるべきことがあるはずだ」
「?何のことだ?」
もっとやるべきこと?いったい何だそりゃ?見当もつかねぇな。言っている意味もよくわからねぇし・・・。
「・・・ふぅ、君は、ずいぶんとぬるま湯に浸かりきってしまったようだね」
「あ?」
「失望したよ。腑抜けきった君にもう用はないよ。お先に失礼」
そう言ってあいつはトイレから出ていっちまった。・・・いったい何だったんだ、あいつ?なぜにどうこう言われないといけないんだ?・・・まぁいい。それよりも今は家庭教師だ。ずいぶん久しぶりになっちまうが・・・あいつらにはまだいろいろと教えないといけないことが山積みだからな。
♡♡♡♡♡♡
トイレを済ませた後、俺はすぐに六つ子のアパートに行き、こいつらの勉強を見ている。勉強っつっても今は2年の時の復習ってことで確認テストをやらせてるが。まぁ、こいつらも結構成績が上がってるし、心配はしてないがな。ただ不満があるとすれば、今日は全員集合ってわけじゃないことだけだな。一花の奴・・・仕事とはいえサボりやがって・・・。
「ここで集まって勉強するの久しぶり」
「最近はみんなバイトだものね」
「一花は今日も仕事だけど、試写会私も行きたかったなー」
「六海たちは別にお呼ばれされてないからしょうがないよー。・・・ところで五月ちゃん、アルバイトは見つかったー?」
「ギクッ!」
あ、こいつら、手を休めていやがるな。てか五月まだバイト見つけてねーのかよ。
「え?五月まだ見つけてなかったの?アルバイト」
「も、もう少し時間をください・・・」
「一昨日からそんなこと言ってなかったー?」
「そうよ。昨日なんてバイトも探さないでアタシのバイト先に来るし・・・」
「ちょ、ちょっとした息抜きだから大丈夫だと思うよ!」
「お前ら、口より手を動かせ!月末の全国模試はもうすぐだぞ!」
「アタシは一通り埋めたわよ」
もう埋めたのかよ。たく・・・埋めたならすぐに言えって。
「はい、答え合わせよろしく、フー君♡」
ぬおっ、二乃の奴、なんかぐいぐい来たな・・・。昨日俺に向かって投げキッスしてきたり・・・覚悟しててとか言ってたし、やっぱ本気ってことか・・・
パシッ!
ぐいぐい迫る二乃に六海は問題用紙で二乃の頭をはたいた。た、助かった・・・。
「いた!ちょっと何すんのよ!」
「二乃ちゃん・・・何で風太郎君のことフー君って呼んでるの?」
「だいぶ気に入ってたし、使っちゃった♡わざわざありがとね♡」
「本来なら今頃六海がフー君って呼んでるのに・・・!ぐぐぐ・・・!泥棒猫め・・・!」
「てか邪魔よ、そこどきなさいよ」
「やだ!六海も終わったから採点してもらうもん!」
「は?アタシが先よ」
おいおい、二乃と六海の奴、また喧嘩を始めやがったな・・・。なんか最近こんな光景を見るようになったような気が・・・。仲が良かったり喧嘩したり・・・忙しい奴らだ。
「フータロー、私も終わった。採点よろしく」
「「抜け駆け禁止ーー!!」」
「抜け駆けしてない」
「「してるって!!」」
今度は三玖も加わって喧嘩しやがった・・・本当、どうなってやがるんだ?まぁ、前の大喧嘩よりは断然マシだが。
「お前ら、全員採点してやるからその辺にしとけ」
俺の一声で3人はすぐに喧嘩をやめた。単純だな。
「私も終わりましたー!」
「私も終わりました。上杉君、採点をお願いします」
「おう」
これで全員分か。思ってた以上に早めに終わったのは驚いたな。
「模擬試験結構難しかったねー」
「そうですね。しかしそれほど不安でもないというか・・・」
「あ!それ六海もそれ思った!前ほど苦戦しなかった!」
「うん。学年末試験を乗り越えたんだもん」
「一度超えた壁だもの。ここまで来たら余裕よ」
「こうなると、いよいよ卒業が見えてきましたね、上杉さん!」
・・・こいつらの言ってることも間違いではない。、こいつらの成績は前に比べてかなり高くなったし、3年になったからといっても試験の難易度なんてそう変わるものでもない。・・・と、いうことは・・・本当に見えてきたのか・・・?あの時、途方に暮れると思っていた、ゴールが・・・!
「よっしゃー!答え合わせするぞ!」
「「「「「はーい」」」」」
考えれば考えるほど、希望が見えてきたぞ!このままいけば、卒業なんて夢じゃないな!
♡♡♡♡♡♡
「・・・嘘だろ・・・全員、ほとんど赤点じゃねぇか・・・」
希望が見えてきたと思ったんだけどなー・・・。・・・結論から言おう。テストの結果は姉妹全員ほとんどが赤点ばっかりで合格なんて程遠いほどの点数だった。
「お前ら・・・マジでふざけんな・・・。あれか?あれなのか?学年が上がると脳がリセットされる仕組みなのか・・・?」
「なるほど!どおりで赤点を取るわけです!」
「ものの例えだ!!納得するんじゃねぇよこのデカリボン!!」
「ひぇー!!」
俺の例えに納得する四葉に俺はリボンを引っ張り上げる。たく、そんなのあるわけねぇのに・・・。とりあえずリボン直しとくか。
「ごめんなさーい・・・」
「できたと思ったのに・・・」
「言い訳になるかもだけど、ここ最近仕事ばっかであんま自習できてないのよね」
「ん?言われてみれば確かに・・・お前らと比べると五月の点はそれほど下がってないな」
「す、すすす・・・すみませんすみません!!」
確かに仕事とかの疲れもあるからな。その辺も考慮しなかった俺のミスだったか・・・。・・・とはいえ・・・
「無事卒業と言ってる側からこれかよ・・・俺の模試勉強もあるっていうのに・・・」
・・・まあいい。今からでも何とか巻き返せるだろう。両立してやるんだ・・・家庭教師も、俺の模試勉強も・・・。
「じゃあ間違えた個所を順番に確認していくぞ」
「「「「「!お願いします!!」」」」」
全く・・・いつまでたっても手を焼かせやがるぜ・・・。まぁ・・・こうしていられるのも、悪くはないけどな。
ピンポーン
「!はーい、今出ます」
ん?客か?まぁ、そっちの方は五月に任せて・・・先にこいつらの間違えた個所を1つずつ見直していくか。
「・・・えっ!!?」
・・・ん?五月の奴・・・どうし・・・
「勉強中のところ、失礼するよ」
なっ!!!???
「「お・・・お父さん⁉」」
「「パパ⁉」」
六つ子の部屋にいきなり入ってきたのはこいつらの父親だった。ど、どういうことだ・・・?
「ど・・・どうしたのよ急に・・・。というか、この家・・・」
「いやなに、もうすぐ全国模試と聞いてね。彼を紹介しに来たんだ」
彼?誰だ・・・?まさか・・・いや、考えすぎか?
「入りたまえ」
「お邪魔します」
六つ子の部屋に入ってきた男は・・・
「申し訳ない。突然押し掛ける形になっちゃって」
俺の想像していた通り、ここ最近俺に付きまとってくる変な奴じゃねぇか。本当に当たるとは・・・
「えっ・・・君って・・・」
「武田君・・・だよね・・・?」
「・・・どういうこと?」
「わ、私・・・何が何だか・・・」
「四葉、落ち着いてください」
こいつが何の用だ・・・と思った瞬間、俺はトイレでのこいつの会話を思い出した。家庭教師を代わるとかどうとか言ってたが・・・まさか・・・
「今日からこの武田祐輔君が君たちの新しい家庭教師だ」
「「「!!??」」」
「はあ!!?」
やっぱりそうか・・・。こいつらの父親がここに来て、さらにこいつまで来たとなると、何となく予想はしてた。この人と面識があって、突然家庭教師を代わろうかと言っていたからな。
「どういうことですか?ちゃんと説明してください」
驚いてる六つ子の中で1番落ち着いている五月が代表して聞いてきた。
「・・・上杉君。先の試験での君の功績は大きい。成績不良で手を焼いていた娘たちだったが、優秀な同級生に勉強を教わるということで一定の効果を生むと君は教えてくれた。感謝はしている」
「そ・・・それならフータローを代える必要なんてないはず・・・」
「そ、そうだよぅ・・・なんで急に・・・」
「・・・あ・・・」
「確かに代える必要はない。だがそれはあくまで彼が今も優秀であれば、の話だ」
「「「「え・・・」」」」
お父さんの説明に家庭教師交代をする理由がわかった。超正論をいうこの父親のことだ。間違いなく俺の成績と関係してるんだろう。
「残念ながら、上杉君は全教科の点数が落ち、順位も落ちてしまっている」
「え・・・ではあれは・・・」
「満点じゃなかったってこと・・・?」
「・・・そうよ。アタシが見たもの、間違いないわ」
俺のいたずらの最初の被害者である五月と六海の問いかけに二乃が肯定する。あれがまさか、今回のことに繋がるとはな。
「そして新たに学年1位の座についたのが彼だ。ならば家庭教師に相応しいのは彼だろう。違うかね?」
言いたいことはわかる。要するに点数を落ちた俺ではもう信用ができないってことだろ。まぁ、この人に自分から辞めると宣言した俺が言うのもなんだが。
「・・・ふっ・・・ふっふっふ・・・ふっふっふ・・・くくく・・・」
「「「「「「?」」」」」」
なんだこいつ?急に笑い出して・・・
「やったーー!!勝った!!勝ったぞー!!」
「「「「「「!!?」」」」」」
「イェス!!オーイェス!!イェス!!イェス!!イェス!!」
な、なんだこいつ?急に喜びだしたぞ?わけわかんない奴だとは思ったが、ここまで以上とは・・・いったいなんなんだ?
「上杉君!長きにわたる僕らのライバル関係も今日で終止符が打たれたのだよ!!」
は?俺が?こいつの?ライバル?
「ついに僕は君を超えた!!この家庭教師も僕がやってあげよう!!君を超えた、この僕がね!!」
「・・・・・」
「始まりは二年前・・・僕は学年トップを目指して・・・」
「その前にちょっといいか?」
こいつの事情とかは知らんが、とりあえずこれだけは聞かせてくれ。
「そもそもな話、お前誰だよ?」
「・・・・・・えっ!!?」
何驚いてんだこいつ。当たり前だろ、俺はお前のことなんて、何1つとして知らねぇんだよ。武田なんて名前もこの人から聞いて初めて知ったわ。
「いや・・・ほら・・・学年順位でずっと君に2位で迫ってた武田・・・」
学年順位?2位?・・・ああ、確か2位の奴は武田って名前だったか。なるほどな、通りで俺に突っかかてくるわけだ。
「あれだけ俺に突っかかて来たのはそういうわけか。ずっとわからなかったんだが、納得がいった」
「思い出したかい⁉」
「まぁ、今まで満点しかとってこなかったから、ぶっちゃけ俺以下・・・2位以下の奴なんて目も止めなかったわ」
「2位以下!!」
俺の一言で武田はかなりショックを受けてる。
「2位・・・以下・・・!!」
「うわぁ・・・」
「憐れだわ・・・」
二乃と六海が武田を憐れみな目で見つめて・・・いや、三玖も四葉も一緒か。
「・・・事情はよくわかりました」
話が脱線しかけたところを五月が戻してくれた。
「学年で1番優秀な生徒が家庭教師に相応しいというならそれでもかまいません。恐らく、それだけが理由なのではないでしょうが・・・」
他に理由?そんなのあ・・・ったわ・・・うん・・・去年に心当たりがありまくりだわ・・・。
「しかし、それなら私にも考えがあります!」
五月の考え?
「私が3年生で、1番の成績を取ります!!」
は?
「「「「えっ・・・」」」」
「ふむ・・・いいだろう」
「「「「ちょっと待って!!」」」」
お父さんが了承しかけたところを他の姉妹がストップをかけた。そりゃそうだ。五月が1番の成績?現在進行形で成績が落ちたくせに何言ってんだ。
「ちょっと五月ちゃん!!?何勝手に決めてんの!!?ただでさえ80点以上取れないのに無理に決まってるじゃん!!!」
「す・・・すみません・・・つい、かっとなって・・・」
「ついじゃないよぉーーー!!!」
「む、六海、落ち着いて落ち着いて・・・」
六海、取り乱すのはわかるが少し落ち着け。
「何言われてもお父さんには関係ない。フータローは私たちが雇ってるんだもん」
「そうよ!大体何なのいったい⁉ずっとアタシたちをほったらかしてたくせに、今更・・・」
「いい加減気づいてくれないか?」
三玖と二乃の言い分に武田の奴が割って入ってきた。
「上杉君が家庭教師を辞めるということは・・・それは他ならぬ上杉君のためだ。君たちは上杉君の意思を無視している」
「「「「「・・・っ」」」」」
「君たちのせいだ・・・君たちが上杉君を凡人にしてまった」
・・・俺が凡人、ねぇ・・・。
「そ・・・そんなことないもん!!言いがかりは・・・」
「君たち・・・彼にも彼の人生がある。いい加減わがままはやめて、そろそろ彼を解放してやったらどうだい?」
「「「「・・・っ!」」」」
「でも・・・」
お父さんの言い分で5人は黙りこくってしまう。全く・・・揃いも揃って、みんな好き放題言うよな・・・。
「その通り、だな」
「!上杉さん・・・」
ここまでお父さんの話には口を挟まなかったが・・・そろそろ俺も言わせてもらうぜ。
「お前が俺を過剰に評価してんのはよくわかった。お前が言ってることも、決して間違いではない。・・・だが、去年の夏・・・あるいは、この仕事を受けていなかったら・・・俺は凡人にすら、なれていなかっただろうよ」
前までの俺はただ勉強ができるだけの凡人以下の存在だ。そんな俺を凡人に変えさせてくれたのは、間違いなく、こいつら、六つ子のおかげだ。
「俺は教科書を最初から最後まで覚えただけで、全てを知った気になってただけだ。知らなかったんだ・・・世の中にはこんなにも、想像を絶する馬鹿共がいるってことを。そして俺が・・・そんな馬鹿の1人だったことも」
「フータロー・・・」
「こいつらが望む限り、俺はとことんまで付き合いますよ。解放してもらわなくても大いに結構」
「そこまでする義理はないだろう」
「義理はありませんね。・・・ですが・・・この仕事は、俺にしかできないという自負がある!!」
そうだ・・・この仕事は他の連中がこなすのは無理だ。俺にしかできない仕事だ。去年のクリスマス時からそう思っている。
「こいつらの成績を落とすことは二度としません。俺の成績が落ちてしまったことに関してはご心配をおかけしました。俺はなってみせます。そいつに勝って学年1位・・・そして・・・全国模試1位に!!!」
「「「「「え・・・」」」」」
ふっ・・・俺にしてはなかなか決まっ・・・
「う、上杉さん!!?」
「なんだよ!」
「全国は無茶です!」
「フータロー・・・もう少し現実的に・・・」
「あっ⁉学校内の1位だけじゃ今までと変わんねぇだろ!だったら全国でも・・・」
「無理無理無理!!ぜーーーったい無理だから!!」
「やってみないとわかんね・・・」
「いいから黙ってなさいって!!」
俺の発言に不服があるのか5人が意を唱えて来やがった。くっそなんだよ!せっかく決まってたのに台無しじゃねぇかよ!
そして・・・
「と、いうわけで話し合いの結果・・・」
「全国で8位以内!」
「これでどうですか!」
「おい!離せ!!」
「大きく出たね・・・」
5人はせっかくの俺の宣言を無下にするように全国8位で手を打ってきやがった。しかも、俺の腕を抑えながら。全国8位程度じゃそんな変わんねぇだろうが!!
「無理に決まっている。それも、6人を教えながらなんてね」
武田がなんか言ってるようだがそれどころじゃねぇ。こいつらには1つ物申・・・
「・・・わかったよ」
そうと思っていたら、お父さんの一声で思いとどまった。
「もしこの全国模試で武田君に勝ち、全国8位以内をクリアできたのなら・・・改めて、君が娘たちに相応しいと認めよう」
この一声より、始まったんだ。正真正銘、六つ子たちの家庭教師の座をかけた、真の戦いが。
SIDEOUT
♡♡♡♡♡♡
一花SIDE
朝の学校の登下校の道のり、今日は私はみんなを先に学校に行かせて、いつも通ってる私お気にのカフェでフータロー君を待ち伏せしている。と言っても別に約束してるわけじゃないよ?私がただ一方的に待ってるだけ。・・・あ、噂をすれば、フータロー君だ。
「・・・・・・」ぶつぶつぶつ・・・
うわー・・・朝からかなり・・・いやそれ以上に勉強に集中してるねー・・・。うーん・・・集中してるとこ申し訳ないけど、あれじゃ危ない人に見えちゃうからなー・・・。
「フータロー君、前見ないと危ないよ」
「・・・ん?」
「や、おっはー」
私の一声でフータロー君は私に視線を向けてくれた。
「なんだ六海か。今日は姉妹と一緒じゃねぇのか?」
むっ・・・まーた間違えてるし・・・。
「ブー。ふせいかーい。正解は一花お姉さんだよ。間違えないでよ」
「あ・・・す、すまん!いつものメガネをかけてたんでつい間違えた!!」
・・・あ、そういえばそうだった。私が六海に頼んで同じメガネを用意してもらったんだった。これは私にも否があるかなー?
「ふふ、いいよ、許したげる。お姉さんは心が広いんだぞー?」
「・・・にしても、一花、お前とは最近不自然なほどに登校時に会うな」
「えっ⁉あ、あー!わ、私はこれを買いに来ただけ!君に会えたのもただの偶然偶然!あははは!」
「・・・まぁいいが」
ふぅ・・・危ない危ない・・・。私がフータロー君を待ち伏せてたってのは何とか誤魔化せた・・・。
「あ、そだ。こっちはフータロー君の差し入れだよ」
「偶然会ったのに用意してくれてたのか・・・」
私がここで待っていたのはフータロー君にちょっとした貢物を渡そうと思ったんだ。これで少しは・・・
「だが用意して悪いが、俺はコーヒーが飲めないんだ。苦いし・・・」
「そ、そうなんだー・・・。じゃあ私が飲んじゃおー。おいしいのにもったいないなあー」
コーヒー飲めないって・・・貧乏舌のくせに・・・!変なところで味に敏感なんだから・・・
「遅刻する前に行くぞ」
「・・・・・」
あーあ、やっちゃったなぁ・・・、貢物作戦も失敗・・・。けど、かといって二乃みたいな直球勝負とか・・・絶対無理!だけど・・・このポジションだけは、絶対に譲りたくないんだ。
「あ、そういえばみんなから聞いたよ。お父さんとひと悶着あったみたいだね」
昨日の仕事から帰った後にみんなから一通り聞いたから昨日起こったことはある程度知ってる。
「まぁな。家庭教師を辞める辞めないも、これで何度目だ。やっと落ち着いてきたと思った矢先にこれだからな」
「しかも勝負する相手があの武田君なんでしょ?」
「!知ってるのか?」
「まぁね。2年の時同じクラスだったからね。あの時からザ・好青年って感じだったなぁ。・・・まぁ、あれはあれで大変そうだけど」
まぁ、私も武田君とはそこまで親しく話したわけでもないからそう感じるだけなのかもしれないけどね。
「・・・ふん、誰が相手だろうと、負けるつもりは毛頭ない。家庭教師のクビがかかってるわけだしな。これから月末の試験まで勉強漬けだ。今から覚悟しておけ」
「うへ~・・・私たちもかぁ~・・・」
「当然だろ」
まぁ、フータロー君らしいといえばフータロー君らしいけどさ。でも・・・誕生日のこと、言いそびれちゃったなぁ・・・。もうすぐなのなぁ・・・。
「まぁ、とはいえ、他の姉妹と違い、学年末試験の頃から働きながら勉強してきたお前のことだ。心配なんだしてないがな」
あ・・・フータロー君・・・ケーキ屋でのこと、覚えててくれたの・・・?
「むふふ、乙女の扱いがお上手になりましたねぇ。お姉さん感心・・・」
「つーか一花、お前なんで六海と同じメガネしてんだよ。おかげで間違えちまっただろうが」
「前言撤回・・・やっぱ鈍チンだよ」
少しは見直したのに・・・やっぱりフータロー君はフータロー君だよ・・・。
「どう?私も少しは知的に見えるでしょ?」
「六海に間違える上にバカが背伸びしてる感がある」
超絶失礼すぎる!!
「まぁ、でもこれ一応変装なんだけどね」
「変装・・・」
「ほら、昨日私が出た映画の完成試写会があって・・・」
「あー、そういえば四葉がそんなこと言ってたな」
「そうそう。あれ、そこそこテレビとかで取り上げられてるみたいでさ」
・・・まさか私の演じた黒歴史の映画がこうしてテレビに取りあげられてるなんて誰が想像できたんだろう。うぅ・・・思い出しただけで恥ずかしい・・・。
「お・・・覚えてる・・・?あの時の映画なんだけど・・・って・・・」
「・・・・・・」プルプル・・・
な、なんかフータロー君、笑いをこらえてるような表情をしてるんだけど・・・
「くくく・・・だから声をかけられないように変装してたのか・・・。これはたいした大女優様だぜ・・・ぷぷぷ・・・」
「も・・・もー!!恥ずかしいから言わないでってば!!」
もー・・・すぐこうやって人をからかおうとするんだから・・・フータロー君のバカ・・・。
「くくく・・・そういえばそうだったな。変装はお前ら六つ子の十八番だもんな」
「あ、それいいかも。私たち、こういう時のために常備してるんだったよ。六海なら後は鬘をつけるだけでいけるし、後は三玖や四葉ならすぐにいけるかなー。あ!二乃もでき・・・」
二乃にも変装できると言いかけた時、私はそこで口を動かすのをやめた。だって二乃は、フータロー君に・・・告白をしたから・・・。フータロー君もきっと・・・気にして・・・
「あ・・・あははは、そんなことしたらフータロー君が見分けつかないからやめよっか」
「ふん、見くびってもらっては困る。つい先日、あの三玖の変装を見破ったばかりだ。まぁ、正直まだ曖昧な感じだが・・・」
!三玖の変装を・・・見破ったって・・・。・・・それって・・・
「ん?あれお前の妹たちじゃないか?」
「え?」
フータロー君に言われて前を向き直るとそこには私の妹たちが見えてきた。
「やっと追いついたみたいだな。お前の笑える勘違いを教えてやろうぜ」
・・・ここで妹たちと合流したら、この2人きりの楽しい時間が終わっちゃう・・・。
「おいおい、五月の奴、またなんか食ってやがる。四葉の声はうるせぇし、六海は読み歩きしてるし」
・・・フータロー君、やめて・・・
「二乃がうちのバイトに入った時はさすがに驚いたが、三玖が向かいのパン屋で働きだした時は驚いたな」
もうやめて・・・
「なぜかライバル店の客向きが減ったとうちの店長が喜んでたが」
私の前で、他の子のことを話さないで・・・!
「フータロー君、待って」
「?なんだよ、一花」
私を・・・私だけを見てほしいの・・・!
「ねぇ、このままサボっちゃわない?」
私が出した提案にフータロー君は私に視線を向けてふっと笑って・・・
「・・・いや、ダメでしょ」
「( ゚Д゚)」
普通に否定された・・・。
「いいじゃん!少しだけ・・・少しだけだって!」
「模試があるって言ってるだろ!遊んでる場合か!」
「1限目は体育だし、いいじゃん!」
「それなら・・・って、そんなわけにいくか!!」
私とフータロー君の口論は遅刻寸前まで続いた。体育はフータロー君苦手なのに、真面目すぎだよ!
♡♡♡♡♡♡
キーンコーンカーンコーン
結局2人で一緒にサボることはできず、私たちが学校についたころには学校の予冷が鳴り始めた時間だった。
「お前が駄々こねるから遅刻寸前じゃねぇか!」
「フータロー君は真面目すぎ!少しはいいじゃん!」
「まだ言うか・・・。ただでさえお前は昨日の勉強会はサボってんだ。しっかりしてくれよ」
むむぅ・・・サボってるって・・・私は私で仕事してたんだけど!そもそも私抜きで話が進んでたのも少し気にしてたんだからね!はぁ・・・うまくいかないなぁ・・・。
「ふぅ・・・ギリギリセーフだな」
私たちの教室まで辿り着き、フータロー君が教室の扉を開け・・・
『わああああああああああ!!』
「!!?」
え?え?何々?みんな・・・私に向かって・・・歓声なんて・・・
「一花さん!朝のニュース見たよ!」
「女優ってマジ⁉すげー!!」
「びっくりした!!」
「同じクラスにこんなスターがいるなんて思わなかったよ!」
「ずっとこの話題で持ちきりでだよ!」
あ・・・そっか・・・テレビで取り上げられてたから、皆にも私が女優であるってすぐに伝わってるんだね・・・。
「ずいぶん人気ね、一花は。あんたたちも鼻が高いんじゃないの?」
(一花ちゃん、どこまで飲み物買いに行ってたの・・・?)
真鍋さんや姉妹たちはいつものようにふるまっている人が一応はいるみたいだけど・・・
「あの映画・・・そんなにでかい映画だったのか・・・」
「ま、まぁね・・・」
それでも私の方に興味が向いている子が多いな。ははは・・・こんなに賛辞を贈られると・・・むず痒いなぁ・・・。
「ま、どうでもいいが・・・花火大会のオーディション、受けておいてよかったな。これでお前も、立派な噓つきだ」
ドクンッ・・・
ああ・・・こんな単純でよかったのかな・・・。君が私のことを気にかけてくれて、あの時のことを覚えていてくれた・・・。たったそれだけで・・・クラスメイトのどんな賛辞よりも・・・胸に響いてしまうんだ・・・。
ああ・・・やっぱりこの気持ちは偽れない・・・私は・・・
フータロー君のことが好きなんだ・・・。
♡♡♡♡♡♡
今日はクラスのみんなから引っ張りだこ状態だなぁ、私。学校の休み時間中、ずぅーっと私に質問をしてくる。まぁ、賛辞をくれるのは嬉しいんだけど・・・正直疲れちゃったなぁ。この後勉強会もあるのになぁ。
「おーい、一花ー。私たち、先に図書室に行ってるね」
「あ、私も・・・」
「えー!もっと話聞きたいなー!」
「もうちょっといいでしょ?」
う・・・まだ続くの・・・?ハッキリ言って、今日のところはもう勘弁してほしいんだけどなー。多分このままじゃ放課後もあっというまに終わっちゃうよ・・・。
「えーっと・・・ごめん!」
「あ!一花ちゃん待って!」
このままじゃ埒が明かないと思って私はクラスのみんなから逃げていく。呼び止めていくみんなの姿が見えなくなったところに、私は鬘をかぶって・・・それから三玖と同じヘッドフォンをかぶって三玖の完成。普通の人たちなら私たちを見分けることはできないからね。現に・・・
「あれー?どこに行ったのかなー?」
ほら、私を一花と見分けられず、素通りしていった。いやー・・・ごめんねー・・・。続きはまた明日にしてあげるから、今は勘弁してねー。少し安堵してると、フータロー君が教室から出てきた。
「お前まだここにいたのか。早く図書室に行くぞ・・・三玖」
三玖?・・・もしかして、フータロー君はまだ、私たちのことを完全に見分けられてないのかな・・・。
「あ、ごめん。私は・・・」
「にしても、もう公開とか、はえぇよな」
「え?何が?」
「一花の映画の話だよ。お前が昨日教えてくれたんだろうが」
・・・そっか・・・。三玖から映画のこと、聞いたんだ・・・。あれから、いろいろあったもんね。きっと、私とだけじゃなく・・・みんなとも・・・。やっぱり私のことだけ・・・なんて、都合のいいことはいかないか・・・。
『一花もみんなも、お好きにどうぞ。負けないから』
三玖・・・本当にいいのかな・・・私も・・・好きにやっても・・・
『蹴落としてでも叶えたいって、思っちゃうわ。だって、アタシの方があいつのこと、大好きなんだもの』
二乃・・・私だって、二乃には負けないくらい、フータロー君が好きなんだよ・・・
『あの子たちの姉なら、あんたもやりたいことは、我慢せずにやりなさい』
恵理子ちゃん・・・いいんだよね・・・私も・・・我慢せず、やりたいことをやっても・・・。だって私・・・お姉ちゃんだものね。
「・・・フータロー」
私は・・・図書室に向かおうとするフータロー君を・・・呼び止めた。
「?なんだ、三玖」
「フータロー・・・教えてあげる・・・
「一花、フータローのこと、好きだよ」
「!!!???」
「すっごくお似合いだと思う」
「な・・・」
「私・・・全力で応援するよ」
「嘘・・・だろ・・・?」
「嘘じゃないよ」
もうこの気持ちは・・・抑えられそうにない。どんな手を使ってでも・・・フータロー君のハートを私がいただいちゃうよ。例えそれで・・・妹たちを傷つけるような結果になろうとも・・・ね。
38「変化球勝負」
つづく
おまけ
六海は漫画を何でも揃えている?
風太郎「六海、お前ってよく本を読んでるよな」
六海「本は本でも漫画だけどねー。ある程度揃えてるからお姉ちゃんから貸してくれーってよく言われるんだー」
三玖「六海、戦国黙示録最新刊読んだよね?貸してほしいんだけど」
六海「いいよー」
四葉「六海ー!マスターファンタジー読みたくなっちゃった!貸してー!」
六海「どうぞどうぞ」
二乃「六海、私とあなたの恋を貸してちょうだい」
風太郎「ん?それ確か漫画じゃなくて小説・・・」
六海「もちろん」
一花「六海ー、ファッション雑誌あったよね?貸してほしいなー」
風太郎「だから漫画じゃ・・・」
六海「オッケー」
五月「六海・・・その・・・グルメ本を貸してくれませんか・・・?」
風太郎「・・・・・・」
六海「持ってっちゃってー」
風太郎「・・・地図帳貸してくれないか・・・?」
六海「やだなー、風太郎君、六海、地図帳なんて持ってないよー?漫画じゃないんだからー」
風太郎「・・・もう・・・何も言うまい・・・」
六海は漫画を何でも揃えている? おわり
次回、風太郎視点
デート回(?)にて、2番目でデートをするのは誰がいい?
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一花
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二乃
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三玖
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六海