「え?バスケ部の臨時メンバー?」
アタシ、中野二乃はスマホでバスケ部の知り合いから連絡を取っているわ。内容は5人しかいない部員の1人が骨折で出られないから臨時メンバーを探してくれないかっていうことだけど。
「んー・・・まぁ、一応は心当たりはあるし、相談はしてみるけど・・・」
とはいっても、その心当たりのある人っていえば、四葉だけなんだけどね。まだ転校して1週間しかたってないし、友人関係もそれなりに限られてきてるのよねー。
「ん。わかった。そっちは任せて。じゃあね」
連絡を終えてスマホを切る。
「・・・はぁ・・・」
その直後にアタシは少しため息が出る。なんでかって?これから四葉にこのことを相談するのが気が引けるから?それはない。あの子は頼まれたら断れない性格なのはよく知ってるし。じゃあなんでかって?
・・・・決まってるじゃない。先週突然アタシ達の家庭教師とかになった
・・・そして今日がその家庭教師の日で
・・・このまま部屋にいたって埒が明かないわね。とりあえず様子を見てみましょう。アタシは部屋を出てすぐにリビングを確認する。・・・いた。やっぱりいたわ。初日の日に睡眠薬を盛ってやったってのに、全然懲りた様子がないわね。そしてリビングには他の姉妹5人が揃っている状態ね。
「あ。なーに?また懲りずに来たの?先週みたいに途中で寝ちゃわなきゃいいけど♪」
とりあえずアタシは
「二乃・・・あれはてめぇが薬を・・・!」
「は、ははは。ど、どうだい?二乃も一緒に勉強を・・・」
「死んでもお断りよ」
誰がこんな奴から勉強を教わるもんですか。
「き、今日は俺らだけでやるかー」
「はーい!準備万端です!」
あいつアタシのことを構わず、このまま勉強会をする気ね。早いとこ
「そうだ四葉。バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるんだけど、あんた運動できるし今から行ってあげたら?」
「いっ⁉」
「今から⁉でも・・・」
むぅ・・・なんか渋ってるわね。まぁ、それならそれでいいけど。どうせ一芝居打てばコロッといけるもの。
「なんでも5人しかいない部員の1人が骨折しちゃったみたいでこのままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきただろうになー。あー、かわいそうに・・・」
「そんなのやるわけないだろ」
ふん、あんたはアタシ達のことを何も知らなすぎるわ。四葉はこういった誰かが困った状況になればそっちを優先するのよ。
「上杉さん!すみません!困ってる人をほっといてはおけません!!」
ほら、アタシの狙い通り♪四葉はすぐに準備を済ませて部屋を出ていった。
「嘘だろ・・・」
「あの子断れない性格だから」
こういう時、単純な子は助かるわ♪さて次は・・・一花ね。
「一花も2時からバイトって言ってなかったっけ?」
「・・・あー!忘れてたー!・・・てなわけだから、ごめんね、フータロー君」
「何ぃ⁉」
よし・・・一花もリビングから出すことに成功したわ。それにしても一花がバイトねぇ・・・。いったい何のバイトをしてるのかしら?アタシ達姉妹は一花がどんなバイトをしてるのか全く知らない。聞いても簡単な仕事といってごまかしてるから詳しいことは聞けないのよね。ま、一花のことだし、心配ないでしょ。次は、六海ね。
「六海、今日も約束あるって言ってなかったけ?早いとこ行った方がいいんじゃない?」
「そうだね!早いに越したことはないし、この人からも解放できるしね!」
「ぬ・・・ぬぐぐ・・・!」
六海は本当に馬鹿正直ね。もしかしたらアタシ以上に
「五月、こんなうるさいとこより図書館とかに行った方がいいよ」
「それもそうですね。わざわざここで自習する必要なんてありませんし」
「・・・・・・」
ふふん、ざっとこんなものね。これで残ったのは三玖だけね。どうにかして三玖を追い出したらここにはアタシ以外誰もいなくなる。そうしたらこいつも今日は帰らざるを得ない。我ながら完璧ね♪
「・・・ヨーシ、オマエラアツマレー。ジュギョウヲハジメルゾー」
「フータロー、現実を見て。もうみんないない」
現実逃避をし始めている
「あれー?三玖まだいたの?あんたが間違えて飲んだアタシのジュース買ってきなさいよ」
ま、実際には嘘だけど、三玖を追い出すには十分なネタよ。さあ、乗ってきなさい。
「それならもう買った」
「えっ⁉」
う、うそでしょ?アタシの考えを読まれてる?い、一応買ってきたものを確認・・・。
「てっ、なにこれ⁉抹茶ソーダ⁉すげーまずそう!!」
アタシがよく飲んでるジュースと全く違うし、何よりも何なの⁉このいかにも味は気になるけど飲みたくなくなるような飲み物は⁉
「そんなことより授業始めよう」
「ああ・・・仕方ない。気持ちを切り替えていこう」
てゆーか、は?ちょっと待って・・・
「あんたらいつの間にそんなに仲良くなったわけ?」
前までの三玖だったら絶対にこいつから逃げてたはずなのにどうして今更・・・なんかむかつくからからかってやろう。
「え?え?こういう冴えない顔の男が好みだったの?」
「こいつ今ひどいこと言った。六海の不細工発言よりかはマシだが・・・」
うるさいわね。あんたの気持ちなんか知らないわよ。ていうか不細工って・・・六海、そんなことまで言ったのね・・・。
「二乃はメンクイだから」
「お前も地味にひどいな・・・」
三玖の発言にアタシは今結構むかっとなったわ。
「はあ?メンクイが悪いんですか?イケメンに越したことはないでしょ?」
どうせ付き合うなら誰だってイケメンの方がいいに決まってるじゃない。こんな冴えない男じゃなくて。異論なんか認めないわ。
「なーるほど。外見を気にしないからそんなダサい服で出かけられるんだー」
「この尖った爪がオシャレなの?」
今度はアタシの付け爪にいちゃもんつけてきたわね。
「あんたにはわかんないかなー?」
「わかりたくもない」
毎回思うんだけど、なんで三玖と話すとこうなっちゃうのよ。何かあるたんびに口げんかに発展してしまう。アタシはこんなこと望んでるわけじゃないのに・・・。
「おい、お前ら、姉妹なんだから仲良くしろよ。外見とか中身とか、今はどうだっていいことだろ?」
「・・・それもそうだね。二乃、もう邪魔してこないで」
・・・何なのよいったい。人を悪者扱いみたいに・・・面白くない。本当にむかつく。・・・あ、そうだ。
「・・・そういえば君、お昼は食べてきた?」
「ん?そういえば・・・」
ぐうううぅぅぅ・・・
「・・・腹減ったな」
よし、これはチャンスだわ。合法的にあいつを追い返す方法を思いついたわ。追い返すのが無理でも、時間稼ぎくらいにはちょうどいいでしょ。
「じゃあ三玖の言うとおり、中身で勝負しようじゃない。どちらがより家庭的か、料理対決よ!アタシが勝ったら今日は勉強なし!!」
正直、
「そ・・・そんなの・・・やるわけないよな・・・?」
「フータロー、すぐに終わらせるから座って待ってて」
「お前が座ってろ!!」
ふふ、思ってた通り、三玖はこの手の話題に乗ってきたわね。この子料理に関してはなぜかものすごい関心があるみたいでそれを覚えててよかったわ。
もうこれは勝ったも同然、ていうかわかりきってるような勝負ね。アタシは六つ子の料理当番なのよ?料理でアタシが負けるはずなんかないわ。まして三玖は以前料理当番制の時に見せた料理はめちゃくちゃ不格好なのをよく覚えてるわ。力の差は歴然、完勝で終わらせてやるわ。
♡♡♡♡♡♡
調理開始から結構時間がたってアタシたちの料理が完成して、それをお披露目する。
「じゃーん!旬の野菜と生ハムのダッチベイビー!」
うん、我ながら上手にできてるわ。味だって申し分なし!対する三玖の料理は・・・
「お・・・オムライス・・・」
アタシの料理とは全く正反対で不格好、焦げている個所が目立ってていかにもおいしくなさそうな見た目だわ。これはもう勝ちは確定ね♪
「・・・や、やっぱりいい。自分で食べるからフータローは別に・・・」
「なんで~?せっかく作ったんだから食べてもらいなよ~」
ここまで来たんですもの。逃がすつもりなんて毛頭ないわよ。こんなことしてる間に
「・・・うん。どっちも普通にうまいな」
「・・・・・・は?」
今、こいつはなんて?アタシの料理はともかく、三玖の料理もうまいって言った?
「本当だ。どっちも普通にうまいぞ」
そ、そんなアホな・・・
「そ、そんなわけ・・・!!でたらめなことを・・・!!」
アタシが動揺しているのとは裏腹に、三玖は自分の料理をほめられてうれしそうな顔をしてる。
・・・何なのよその顔は・・・。いったい何だっていうのよ・・・。アタシの気持ちがむしゃくしゃしていると・・・。
「ただいま~」
約束とやらに行っていたはずの六海が帰ってきた。それと同時にアタシの気持ちは少し落ち着いた。
「六海、おかえり」
「・・・六海、今日は少し早かったじゃない」
「それがねー、本来約束は家庭教師の授業が終わってからなんだよねー。だから早めに呼び出したら、約束は果たせたんだけど、授業さぼっちゃダメだって怒られちゃったー」
六海はえへへと微笑んでいると
「・・・何してたの?」
「二乃が今日は勉強するかしないかでりょ・・・料理対決・・・することになったの・・・」
三玖は自分が作ったオムライスを六海に見られて少し赤面してる。
「で、その判定を俺がすることになった。どっちも普通にうまかったぞ」
「え・・・二乃ちゃんのはともかく・・・このぐちゃぐちゃの卵の乗ったごはんが・・・?」
「それ・・・オムライス・・・」
六海は三玖の作ったオムライスを見て血の気の引いた顔になっている。そりゃそうよ。アタシだって信じられないもの。
「・・・そうだ。六海、こいつじゃ頼りにならないから、あんたが判定してよ」
「え・・・それ・・・
そりゃそうよ。このままじゃアタシの料理は三玖と同レベルってことになる。そんな結果じゃアタシは納得できない。
「なんだ。俺は正直なことを言ったのに、納得いかないのか?」
「当たり前よ!あんな判定納得いくわけないでしょ!」
「う~ん・・・まぁ、いいよ。お腹もすいてたし。じゃあ・・・これからもらうね」
六海はスプーンを手にもってアタシのダッチベイビーを口に運んだ。口に入れた瞬間六海は幸せそうな顔をした。
「ん~~♪おいひぃ~~♪」
「俺の分・・・」
「こんなおいしいの、あなたにはもったいないよ。六海がぜーんぶ食べるもん」
六海はあまりにもおいしいのかダッチベイビーをばくばくと食べ進めてあっという間に完食する。そ、そうよね。普通はこの反応よね。で、問題は三玖のあれ・・・
「・・・ほ、本当にこれも食べなきゃダメ・・・?」
六海は見た目が悪いオムライスを見て気が引ける顔になってる。
「む、六海は食べなくていい・・・。残りは、私とフータローが・・・」
「六海、一口でいいから食べなさい。じゃないとアタシの気が済まないわ」
「う、うん・・・じゃあ食べるよ?」
六海は恐る恐るとスプーンで三玖のオムライスをすくう。なんか若干手が震えてるわね・・・少し罪悪感が芽生えるわ。
「い・・・いただきます!」
六海は意を決してオムライスを口に入れる。さあ、どう・・・?六海は長いこと沈黙してる・・・あ、すっと立ち上がってリビングの隅に移動してるわ。
「・・・うえぇー・・・」
六海は気持ち悪そうな声を上げながらへなへなと座り込んだ。こういう時の六海は確か苦手なものを食べた時だから・・・見た目通り味はよくなかったのね。
「・・・しゅん・・・」
六海の反応を見て三玖は少し悲しそうな顔をしてる。
「ごめん・・・ちょっとトイレ・・・」
「なんだ。いらないのか?だったら俺が全部もらうぞ。・・・うん、普通にうまい」
六海がふらふらとトイレに行ってる間に
「それただの貧乏舌なだけじゃん!!」
間違いない。こいつは貧乏舌の持ち主でどんな料理を口にしても平気でうまいって言うわ。だとしたらこいつの言葉に納得だわ。
「あーもう本当に馬鹿らしい!やってらんないわ!!」
バカバカしくなってきたアタシはリビングから出ようとすると
「お、おい待て、二乃」
「これだけは言ってやるわ。アタシは、あんたを絶っっっ対に認めないから!!」
アタシは
♡♡♡♡♡♡
リビングを出た後、アタシは気持ちを落ち着かせるためにお風呂に入る準備を始める。洗濯場から普通のタオルとバスタオルを用意して、お風呂場がある洗面所まで向かう。洗面所にはトイレに行ってた六海が歯を磨いている。
「あら六海、歯を磨いてたのね。体調はもういいの?」
「うん。これからお昼寝タイムだから~。お昼寝すれば体調万全かも~」
六海は週に2回は必ず昼寝をするんだけど、その際には歯磨きは欠かせないんだと。ちなみに、六海がいつも使ってる昼寝スポットはリビングよ。
「じゃあ六海、歯磨き終わったからお昼寝するね~」
「ちょっと待ちなさい」
六海がうがいを終えて出ようとするとアタシはすぐに止める。どうしても気になることがあるから。
「ん~?何~?」
「いいから」
「んー・・・あー・・・」
アタシの言うとおりに六海は口を大きく開けた。アタシはその中を見る。あー、やっぱり・・・
「ほら、テキトーに磨いてるから残りかすが残ってるじゃない」
「えー?」
「たく、いつもいつも・・・ほら、磨きなおしてあげるから歯ブラシ貸して」
「えー、1人でも磨けるからいいよー。毎日磨いてもらわなくてもー」
「磨けてないから言ってるんじゃない。ほらいいから早く」
「んー・・・」
アタシはもどっかしくて六海から歯ブラシを奪い取って六海の歯を磨いてあげる。まったく、身体だけは大きくなっても、中身はまだ子供なんだから。
「ほら、中心的に磨くべきとこはここ!ちゃんと覚えなさいって言ってるでしょ?」
「ふぁ・・・ふぁーい」
「・・・こんなもんでいいか。ほら、うがい!」
六海の歯を徹底的に磨いて、すぐうがいを始める六海。
「はい、歯磨き終了。ちゃんと1人でもきれいに磨けるようになっときなさいよ?」
「はーい」
歯磨きを終えた六海は軽い返事をして洗面所から出る。本当にわかってるのかしら?まぁいいわ。さて、アタシはさっさとお風呂でも・・・
「二乃ちゃん!いつもありがとう!大好き!」
急に六海が洗面所に戻ってアタシにそんなことを言って今度こそリビングに向かっていった。ありがとう、か。姉妹から言われるのは照れるけど、悪い気はしないわね。そう思いながらアタシは服を脱いでお風呂の湯舟へと浸かっていく。
♡♡♡♡♡♡
ふぅ、さっぱりした。お風呂から上がったアタシは身体をバスタオルで拭いてからきちんと身体に巻く。えーと、ドライヤーはどこにしまったっけ。
「あ、二乃。お風呂入ってたんだ」
アタシがドライヤーを探してると、誰かの声が聞こえた。この声の質からして・・・三玖ね。やっぱコンタクト外すと視界がぼやけて見えないわ。
「お風呂入るけど、いい?」
「あ、ちょっと待って。その前にドライヤー取ってもらえない?」
「わかった」
三玖は洗面所にあるドライヤーを手にもってアタシにドライヤーを渡してくれた。
「はい」
「ありがと」
そんな近いとこにあったのね。ていうか最後に使ってそこ置いたの誰よ。とりあえずコンタクトとリボンつけたいし、リビングで髪を乾かそうかしら。アタシはリビングに向かってドライヤーのコンセントを突き刺して使えるようにしてドライヤーの常温で髪を乾かしていく。
・・・ん?なんだか物音が聞こえる。誰?今三玖はお風呂に入ったとこだし、
「六海?起きたの?」
そう、六海しかいない。というか、リビングで昼寝をするって言ってたし間違いないわ。
「今日は早めに起きたのね。お風呂は今・・・三玖が使ってるわ。起きたついでで悪いんだけど、いつもの棚にコンタクトが入ってるから、取ってくんない?」
視界がぼやけてよく見えないけど、六海は何も言わずに棚まで向かっていってる。なんか動きがぎこちないわね。
「何その動き?もしかしてまだ気分が悪い?昼のあれはちょっとかっと勢いで・・・無理に食べさせようとしたのは、悪かったと思ってるわ」
六海はなんか棚のあたりでしどろもどろしてるわね。ああ、もう何やってんのよ。
「何してんの?そこじゃないわよ。本当にどんくさいわね。場所変えてないわよ?」
もどかっしくてアタシはいつもの棚に近づいてコンタクトをとろうとする。ここに仕舞ってるはず・・・あれ?ないわね。もっと奥かしら。コンタクトを探してると突然六海はアタシをどかしてアタシから離れていく。
「きゃっ!ちょっと!何怒ってんのよ?」
リビングに来てから六海、なんか変よ?・・・そもそもの話、昼間のいざこざがあったのだって、今六海が変になってるのだって全部・・・
「
パパに命令されてるからって土足でうちに上がり込んで・・・勝手に好き放題して・・・本当にむかつく。
「アタシたち6人の家に、あいつの入る余地なんてないんだから」
あいつがうちに来ることなんてなければ、こんなことにならなかったのに・・・。
「決めた!あいつは今後一切出入り禁止!!」
アタシが子供っぽく両手を振り回してると、空いている棚に手をぶつけてしまった。
「い・・・つぁ・・・」
痛たた・・・棚開けっ放しだったぁ・・・
「あぶねぇ!!」
・・・え?
バサササァ!!
今本が棚から落ちてきた音が聞こえてきたけど、そんなことはどうでもいい。近くで見てようやく気付いた。今アタシを押し倒してきたのは六海じゃなくて・・・アタシたちの家庭教師だった。
な、なんでまだこいつがここに⁉というか・・・今はアタシは・・・バスタオル1枚巻いてる姿・・・
「ふ・・・不法侵入ーーー!!!」
こいつついに己の欲情に従ってアタシを襲いに・・・なんてことなの⁉
「ち、違う!俺は(忘れ物を)取りにきただけだ!」
「と、撮るぅ⁉撮るって何をよ⁉」
こいつ襲うだけじゃ飽き足らず、アタシの裸を撮りに・・・!
カシャッ!
「「・・・あ」」
カメラのした音の方向を見てみると、そこには昼寝から起きて、メガネをかけなおしてる六海の姿がある。スマホをこっちに向けて。
「・・・サイッテー」
今の六海はまるでゴミを見るかのような表情を
「ち・・・違う!!これは誤解だ!」
「じゃあこの写真はいったい何?襲ったようにしか見えないけど?」
「そ・・・それは・・・とにかく誤解だ!」
「ていうか、早く離れなさいよ!!」
ゲシィ!
チーンッ
「はう⁉」
アタシは勢いよくこいつに向かって男の急所?的なものに蹴りを放った。こいつは大事そうなところを抑えながら苦しそうにうずくまってる。
「・・・何?この状況?」
この騒動に駆け付けてきた三玖が不思議そうに首をかしげる。
「み・・・三玖・・・!」
「上杉君・・・あなたまさか・・・二乃を・・・」
「い、五月・・・!」
三玖の隣にはいつの間に帰ってきた五月は六海と同じようにゴミを見るかのような表情で
「ふんふん、これは・・・事件のにおいがするね」
「い、一花まで・・・!」
バイトから帰ってきた一花はこの状況を見て面白いものを見つけたかのような表情をしている。
「これはもう、あれを開くしかないねぇ」
「あ・・・あれって・・・なんだ・・・?」
六つ子事情を何も知らないこいつは苦し気になりながら、そう尋ねてきた。そして、一花は高らかに宣言した。
「六つ子裁判!!開廷ーーー!!!」
♡♡♡♡♡♡
六つ子裁判
それはアタシ達六つ子の間に何かしらの問題が発生した時に起こる裁判で議論を行って判決を下す。今回の議論は当然、
「裁判長、見てください。六海の撮ったこの証拠写真を。被告は家庭教師という立場にありながらピチピチの女子高生を目の前に欲望を爆発させてしまった・・・この写真は上杉被告で間違いありませんね?」
「・・・え、冤罪だ・・・」
何が冤罪なのよ。アタシの裸を見て、襲っておいて・・・。
ーちなみに、私はバスケ部のお手伝いのため欠席でーす。イェーイ。ーby四葉
「裁判長」
「はい、原告の二乃君」
「この男は一度マンションから出たと見せかけてアタシのお風呂上りを待ってました。悪質極まりない犯行に我々はこいつの今後の出入り禁止を要求します」
それだけのことをしたのですもの。アタシの要求は通るはず。
「お、おい!それはいくら何でも横暴だ!」
「大変けしからんですなぁ~」
「一花!俺はただ単語帳を忘れて・・・」
「つーん」
裁判長と呼ばれなかったから一花は拗ねてる。
「・・・さ、裁判長・・・」
「よろしい♪」
裁判長と呼ばれて笑顔になる一花。そんなに楽しいもんなのかしらねぇ?そんなことをしてる間に三玖を申し立てた。
「異議あり。フータローは悪人顔をしてるけど、これは無罪」
「悪人顔は否定してくれ・・・」
「私がインターホンで通した。録音もある。これは不運な事故」
「三玖・・・!」
三玖・・・!何でよ・・・なんでそいつをかばうのよ・・・!
「あんたまだそいつの味方でいる気?こいつはハッキリ撮りに来たって言ったの!盗撮よ!」
「忘れ物を取りに来た、でしょ?」
くっ・・・そういう解釈で来る気ね・・・ならいいわ。それならそれで。
「裁判長。三玖は被告への個人的感情で庇ってまーす」
「!!?ち・・・ちが・・・///」
「三玖・・・信じてくれると信じてたぜ・・・」
「・・・それ以上私に近づかないで」
「あれぇーー!!?」
アタシの言葉に頬を赤くする三玖は
「え~?その態度は警戒してるってことかな~?」
「してない。二乃の気のせい」
「言っとくけどアタシは裸を見られたんだからね!」
「見られて減るようなものじゃない」
「はあ?あんたはそうでもアタシは違うの!」
「みんな同じような身体じゃん」
アタシと三玖はいつものようにけんかに発展してしまう。
「ね、ねぇねぇ、けんかはよくないよ?ほら、スマイルすま・・・」
「六海は黙ってて」
「てかあんたもその写真消しなさいよ」
六海が止めてきたけど今はそれどころじゃない。
「い・・・五月ちゃーん!!裁判長ー!!うえーーん!!」
「わわわ!六海、泣かないでください!」
「よしよーし、六海はよく頑張ったねー」
六海は泣き出して五月と一花に飛びついてきた。しまった・・・泣かせるつもりはなかったのに・・・。
「うーん、三玖の言うとおりだったとしてもこんな体勢になるかなー?」
い、一花!アタシに救いの手を・・・!
「一花!やっぱあんたは話がわかるわ!そう!こいつは突然アタシに覆いかぶさってきたのよ!」
「・・・フータロー、それ本当?」
「そ・・・そうだが・・・それは・・・」
「やっぱ有罪。切腹」
「三玖さん!!?」
もう辺りはこいつに味方をする者なんていないわ。もう否定できる材料なんてどこにも・・・
「棚から落ちた本から二乃を守った?」
・・・・・・は?五月、今なんて?
「よく見ればそうとも取れますが・・・違いますか?」
そ、そういえばあの時、本が落ちた音も聞こえたような・・・。
「そ・・・その通りだ!ありがとうな!五月!」
「・・・お礼を言われる筋合いはありません。あくまで可能性の1つを提示しただけです」
「・・・あ、本当だ。よく見たらあたりに本がいっぱい落ちてるー」
「確かに」
「やっぱりフータロー君にそんな度胸はないよねー」
な、なんで急に
「ちょ、ちょっと!何解決した感じだしてんの⁉適当なこと言わないでよ!!」
「二乃、しつこい」
「・・・っ!三玖、あんたねぇ・・・!」
何なのよいったい・・・!何で・・・!
「二乃ちゃん、気持ちはわかるけどそう怒らないで?ほら、笑顔笑顔♪」
「そうそう、笑って笑って。私たち、昔は仲良し6姉妹だったじゃん」
・・・っ!一花・・・
「昔はって・・・私は・・・」」
アタシは自分の気持ちに耐え切られず、家を飛び出していく。
♡♡♡♡♡♡
「・・・ぐすん・・・」
マンションで少し泣いて、アタシは少し気持ちが落ち着いてきた。アタシはあんなことしたいわけじゃなかったのに・・・何もかもがうまくいかない・・・。しかもマンションの扉を開ける鍵も忘れてきてしまう始末・・・。一応このマンションはオートロックがあってアタシたちの部屋に番号を入れれば、姉妹たちに繋がって中に入れるんだけど・・・あんなことがあった手前で、そんなことできるわけがない。
「・・・はぁ・・・」
アタシが落ち込んでいると、マンションの扉が開いて出てきたのは・・・事の発端である家庭教師が出てきた。
「あ・・・」
こいつが出てきたってことは、マンションの扉も開いたってことよね!せめて中に入る・・・前に扉は閉まって中に入れずじまい。
「ちっ・・・本当に使えないわね」
「えー・・・」
マジ使えない。アタシはさっきの場所に戻ってちょこんと座る。・・・こいつ、まだここにいたのね。こっち見てんのバレバレなのよ。
「何見てんのよ。あんたの顔なんてもう見たくないわよ」
そもそもこいつさえいなければこんなことにはならかったのに・・・。そうよ・・・こいつさえいなければ・・・。
・・・ん?あいつ、家に帰る道から引き返して、うちに戻ってきて・・・あたしの隣に座った?
「な・・・何してんの?」
「どうしても解けない問題があってな。解いて帰らないとすっきりしないんだ」
「あっそ」
こんな時にも勉強してがり勉アピール?マジ笑えない。
「勉強勉強って、バッカみたい」
「勉強がバカとは矛盾してるな。いや、バカだから勉強してるともいえるか」
「うるさい」
こんな時までうんちくとか本当うんざりよ。
「本当、みんなバカばっかりで嫌いよ」
「・・・百歩譲ってお前の言うとおりだとする。だがそれは、姉妹のこともそうか?それは嘘だろ?」
「・・・!!嘘じゃないわ!」
違う。そうじゃない。それはアタシの気持ちじゃない。
「あんたみたいな得体のしれない男を招き入れるなんてどうかしてるわ」
アタシは・・・あの子たちが誰よりも・・・
「・・・アタシ達の・・・」
「6人の家にあいつの入る余地なんてない。そうお前は言ったよな」
「!」
!!こいつ、なんで・・・て、そうか。あの時こいつはいたんだったわよね。
「俺が嫌いってだけじゃ説明がつかなんだよ。だがお前の言葉を聞いて、理解した」
「もういい黙って」
これ以上のことなんて聞きたくない。
「姉妹のことが嫌い?違うな。むしろ逆じゃないのか?お前は・・・誰よりも6人の姉妹が大好きなんじゃないか?」
「・・・!!」
「だから異分子である俺が気に入らない。追い出したくて追い出したくてたまらないんだ。そうだろ?」
・・・最悪。こいつなんかにアタシが1番思ってることを見抜かれるなんて。アタシが・・・六つ子の姉妹が大好きであることが。
「・・・何よ。悪い?」
「いや、気持ちはわかるぞ。俺にも・・・」
「そうよ!アタシ、悪くないわよね!バカみたい!なんでアタシが落ち込まなきゃいけないの?」
こいつなんか言い始めたみたいだけど、そんなの聞いてられない。やっぱりアタシの気持ちはこれっぽっちも変わらない。
「・・・やっぱ決めた!アタシは何が何でも絶対にあんたを認めない。アタシの思うがまま・・・あんたを否定してやるわ!たとえそれであの子たちに嫌われようとも!!」
アタシはやっぱりこいつを認めれない。あの子たちに嫌われたっていい。それであの子たちを守ることができるならアタシは・・・喜んで憎まれ役になってやるわ!
「・・・二乃。いつまでそこにいるの?早くおいで」
アタシが決意を抱いていると、三玖がアタシを迎えに来た。
「あ、フータローもいたんだ。ちょうどよかった。来週なんだけど・・・」
「三玖!帰るわよ!」
「え・・・でもまだ話が・・・」
「いいから!」
上杉・・・あんたの思い通りになんてさせないわ。どんなことをしたって、アタシが姉妹たちをあんたから守って見せる。だってアタシは、6姉妹が大好きなんだから。
04「問題は山積み」
つづく
六つ子豆知識
『中野家の家事担当は?そして当時の光景』
四葉「家事担当は二乃!」
二乃「でもこれからご飯は当番制ね」
四葉「はーい!水の分量はフィーリング!」
二乃「基礎がなってない!クビ!」
五月「ご飯は1人三合で!」
二乃「あんたの胃袋と一緒にするな!クビ!」
六海「毎食ケーキとかのデザート付きはいいよね?もちろん全部特盛で!」
二乃「栄養バランスが偏るわ!クビ!」
一花「ピザの出前を取りました!」
二乃「調理すらしてない!クビ!」
三玖「私は・・・」
二乃「論外!!クビィィ!!」
六つ子豆知識、今話分おわり
次回、風太郎視点