六等分の花嫁   作:先導

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皆様のおかげでお気に入り数が念願の200を越えました。感謝の気持ちでいっぱいです。

・・・だというのに、3ヶ月も投稿を遅らせてしまい、大変申し訳ございませんでした!いざ書こうとしても、書いてる途中でどうにもしっくりこなくて・・・。悩みに悩みまくりました。

気分転換にと思ってこのすばの小説にも手を付けたのも遅れてしまった原因の1つです。こっちも書いているといろいろ乗ってきちゃいまして・・・。これからも六等分の花嫁とこの微笑ましい双子に幸運を、を書くつもりですが、大変申し訳なく思っております・・・。

それから、もう1つ謝罪を。本来ならば次もデート(?)回のつもりなのですが、残りはちょっと先延ばしにしようと思っています。楽しみに待ってくださっている方のためにも、これ以上また1カ月以上も待たせるわけにもいかないと判断したためです。残りは本編が一段落し、プランを固く練ってから書こうと思います。しかしもし、もしまた1カ月以上かかりそうな場合、その時は活動報告欄に遅れることを書こうと思います。・・・遅いですよね、本当にすみません。

さて、今回は五月ちゃんとのデート(?)回なのですが、果たしてこれはデートと呼べるのでしょうか?もしかしたらそうでもないのかも・・・。いや、そもそもそう呼ぶものではないのかも・・・。読者様の判断でお願いいたします・・・。

長くなりましたが、この度は3ヶ月以上も遅れてしまい、大変申し訳ございません。こんな私の作品でも、読んでいただけると嬉しいです・・・。


ある日の休日

時は巻き戻り、全国模試から1週間後・・・

 

「・・・で?今日は何の用で来たんだ?」

 

「いきなり扉を閉めておいてそれとは・・・」

 

本日は上杉君に用があってこうして上杉君のお宅までお邪魔してもらっ・・・ているんですが・・・相変わらず上杉君は失礼だと思います!どうしてかですか?どうもこうもありませんよ!この男は扉を開けて私を見た瞬間・・・

 

♡♡♡♡♡♡

 

ピンポーン

 

ガチャッ

 

「はい、どちら様で・・・」

 

「こんにちは、うえす・・・」

 

バタンッ!!

 

「ちょ・・・また・・・!何で閉めるんですか!!開けてくださいよ!!」

 

「あー・・・五月か・・・すまん、つい条件反射で・・・」

 

「去年もそんなこと言いませんでしたか?」

 

♡♡♡♡♡♡

 

というように扉を閉めてきたんですよ!人の顔を見て扉を閉めようとするなんて、失礼だと思いませんか?思いますよね?それを去年もやられたんですよ?まったく・・・この人は本当に・・・仕方のない人です。

 

「・・・今日はらいはちゃんはいないんですね」

 

「らいはなら同学年の友達と遊びに行ったぞ」

 

「そうですか・・・」

 

少し顔も合わせておこうと思ったのですが・・・いないのなら仕方ありませんね。少し、寂しい気がしますが・・・。と、いけませんいけません・・・本題に入らないと・・・。

 

「本日は上杉君にお渡ししたいものがあってやってきました」

 

「俺に?」

 

私は懐から1枚の封筒を取り出して、それを上杉君に差し出します。

 

「これは、上杉君への、家庭教師のお給料です」

 

「え?」

 

この封筒の中身がお給料だと聞いて上杉君は目を見開きました。まぁ、私たちの今の生活から見れば、驚くのも無理はないでしょう。

 

「みんなで話し合って決めたんです。全国模試から一段落したら渡そうって。まだ結果は出ておりませんが・・・私たちに勉強を教えながら、ご自分の勉強も頑張っている上杉君に、せめてもの労いをと思いまして・・・」

 

「それでわざわざ住所を知ってるお前が・・・」

 

そういうことになりますね。ただ私の予想では住所を知っている六海が行くものだと思っていましたが・・・今日は六海は二乃と四葉と一緒に買い物に出かけると言っていたので、代理として私が来たというわけです。

 

「だがいいのか?そっちも家賃のやりくりで大変だろ?」

 

「はい。ですので、今回お渡しした給与は1ヶ月分が限界なのです。これまでの分は・・・すみませんが・・・」

 

「・・・たく、出世払いでいいって言ったのに・・・本当に予測不可能だ・・・」

 

上杉君は呆れたようにして頭をかいています。ふふ、こういうところでは本当に律儀ですね。

 

「・・・・・・」

 

あれ?上杉君、頭をかいた後じっとお給与を見つめてどうしたんでしょう?嬉しい・・・という感じの顔ではなさそうですが・・・

 

「?あの・・・上杉君?どうしました?もしかして・・・何かお気に召さなかったでしょうか?」う

 

「・・・なぁ、五月・・・」

 

な、なんでしょう・・・今度は私に視線を・・・

 

「お前、なんか欲しいものでもあるか?」

 

「え?欲しいもの・・・ですか?」

 

「せっかくの給料だ。なんか買ってやるよ」

 

・・・・・・・・・え?今・・・何といいましたか?お金にうるさい上杉君が・・・私に・・・何かを・・・プレゼント?

 

「・・・上杉君。どうしましたか?勉強のしすぎで頭がおかしくなったのですか?今日は横になられた方が・・・」

 

「おい、何気に失礼だな、お前」

 

いや、しかしですね・・・上杉君が自らそんな事を言うなんて・・・天地がひっくり返すほどですよ。

 

「しかし・・・どちらにしてもそれは申し訳ないですよ。せっかくのお給料のなのに、私たちのことで・・・」

 

「いいんだよ、別に。俺の金をどう使おうと俺の勝手だろ」

 

「でも・・・」

 

「・・・それに・・・まぁ、なんだ。お前らは学期末試験でもそうだが、全国模試でも頑張ってきたからな。まだ結果は出ちゃいねぇが・・・その・・・前払いの、ご褒美・・・てやつだ」

 

ま、まさか上杉君がそんな事を言い出すなんて・・・今日は驚きの連続ですよ。・・・そうですよね。なんだかんだ言いながらも、少しずつ変わって・・・

 

「あ、言っておくが2万が制限だからな。それ以上は譲らねぇ。残りは借金返済に回すんだからな」

 

前言撤回です。やっぱり上杉君は上杉君でした。・・・まぁ、彼らしいといえばらしいですが。

 

「でも、そんな事を言われたってそんなすぐには思いつきませんよ。急な話ですし」

 

「なら先にお前の姉妹からでもいい。なんか聞いてないないのか?なんだっていいんだぞ?何でも言ってくれ」

 

「そう言われましても・・・」

 

そんな急かされたって、思いつかないものは思いつきませんよ。それに、姉妹の欲しいものなんて、何も聞いてませんし・・・。とはいえ、それで上杉君が引き下がるとは思えませんし・・・。

 

「じゃあ、こうしましょう。とりあえず雑貨店で何か良さそうなものがあれば、それをプレゼントする、という事で。どうですか?」

 

「・・・まぁ、今はそれでいいか・・・。お前もなんか欲しいものがあれば言えよ?」

 

「決まりですね」

 

一応は納得した上杉君は私と共に雑貨店に向かうために上杉家を後にするのでした。それにしても私の欲しいもの、ですか・・・。果たして見つかるでしょうか・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

その後、私と上杉君は私たちと姉妹のご褒美の品を探すために雑貨店へと向かっています。・・・私と上杉君の距離は結構遠いですけど。

 

「・・・おい、五月・・・」

 

「話しかけないでください!後、もう少し距離を離れてください!恋人だと思われたくありません!!」

 

「・・・・・・。

(相変わらず面倒くせぇ奴)」

 

いえ・・・上杉君のことはもちろん信用はしていますよ?してはいるんですが・・・やはりそういう系の噂はやっぱりたちたくありません。先日、どうやら四葉の方でも上杉君と付き合ってるという噂がたってたみたいですし・・・。

 

「・・・はあ。まぁいい。しかし女が喜びそうな雑貨っていったいどんなのだ?全く検討もつかんぞ」

 

「そんなに難しく考える必要はないと思いますよ。贈り物というのは、いかに相手の気持ちがこもっているかが重要なのですから」

 

「気持ちがこもっているにも関わらず、いらないと言われて突き返される場合を考えたことはあるか?」

 

「それはさすがに贈ったものが原因だと思いますけど・・・」

 

そういえばらいはちゃんの話を思い出しましたが、勤労感謝の日に単語帳を渡されたようですが、恐らく上杉君が言ってるのはそれだと思います。せっかくのプレゼントが単語帳はあんまりだと私も思います。

 

「とにかく、女の贈り物に関しては今はお前が頼りなんだ。本当に頼むぞ。あの時のようなことは二度とごめんだからな・・・」

 

「よっぽど気にしていたんですね・・・」

 

上杉君の声質から、贈り物を拒絶された事がよっぽど堪えているのか少しだけ悲しそうでした。しかしそう思うなら単語帳を贈るのはやめた方がいいと思いますよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

贈り物を決めるためにとりあえず雑貨店まで来たわけですが・・・何分小物と言っても様々な種類があるわけですから、やっぱりこれだっていうものは、姉妹の分もそうですけど、私もなかなか見つかりません。

 

「どうだ?なんかこれだっていうものは見つかったか?」

 

「いえ、これと言って特に・・・」

 

「・・・そのセンスの欠片もないそのヘアアクセを着けてるお前に聞くのは失敗だったか・・・」

 

「し、失礼ですね!!」

 

この男はどうしてこうも失礼なことばかり言うのでしょうか?そこら辺のところをもう少し考えてほしいものです。

 

「はぁ・・・もうそこらのケーキとかでよくないか?なんか面倒くさくなってきた」

 

「どうして私を見ながら言うんですか?」

 

もしかして私は食べ物をくれるなら何でもいいとか考えてないですよね?いくら私でも食べ物に釣られるなんてことはありませんからね?・・・嘘じゃありませんよ?

 

「それに自分が言ったことなのですから、そんな投げやりにならないでください。私も頑張ってアイディアを出しますので」

 

「むむむ・・・それもそうだな・・・」

 

一応自分が言ったことという事なので、しぶしぶではありますが、納得してくれたようですね。

 

「しかし、このままじゃ日がくれる・・・何かアイディアは・・・」

 

「あれ~?フータロー君?」

 

「あ、春さん」

 

上杉君が少し悩みこんでいると、偶然春さんと遭遇しました。よく見れば春さんに隠れていますが、孤児院の子供もいますね。

 

「バイト以外で会うなんて、偶然だねぇ~。ほら、お兄ちゃんとお姉ちゃんに、こんにちはは?」

 

「・・・にちわ・・・///」

 

「はい、こんにちは。春さんはお散歩ですか?」

 

「ううん~、今日はお買い物~。この子がおもちゃが欲しいって言ってて・・・」

 

「そっちも似たようなものか」

 

確かに似たような状況かもしれませんね。上杉君は姉妹のために、春さんはこの子のために・・・て・・・春さんがこちらをニヤニヤしてる表情で見てるのですが・・・

 

「いや~、それにしてもフータロー君もすみにおけないね~。二乃ちゃんともいう人がいながら他の子とデートだなんて~♪」

 

「んなっ!!?」

 

で、でででで、デートだなんてそんな・・・とんでもない!!ひどい勘違いです!!私と上杉君とはそんな関係は断じてありえません!!

 

「何バカ言ってんだ。ただの買い物の付き添いだ。それ以外あるわけねぇだろ」

 

上杉君!ナイスフォローです!

 

「ふ~ん・・・まぁ~、そういうことにしてあげよっかなぁ~♪そっちの方が面白そうだし♪」

 

「面白くありません!!!」

 

未だに春さんは私たちを見てにやにやと笑っています。私が上杉君とだなんて・・・百歩譲ってもありえませんから!!絶対です!!でも・・・なんでしょう、このモヤモヤっとした感じは?

 

「なぁ春、ちょっと参考に聞きたい事があるんだが・・・」

 

「ん~?何かな~?」

 

「お前だったら贈り物を贈られた時、何だったら喜ぶ?」

 

私だけでは贈り物を決めきれないと判断したのか、上杉君は春さんにも意見を聞いてきました。確かに他の人からの意見も参考になりますからね。

 

「・・・フータロー君」

 

「なんだ?」

 

「デート中に他の女の子にそれ聞くのはどうかと思うよ?」

 

「「だからデートじゃねぇ(ありません)!!」」

 

まだ言うんですかこの人は!!?というか、今の状況を楽しんでませんか!!?

 

「でも贈り物か~。なんだろうな~?ケーキ・・・は、アルバイトでもらえるからあんまり嬉しくないか~。う~ん・・・」

 

春さんは意外にも真剣に考えており、うんうんと首を捻っています。

 

「ん・・・ん・・・」

 

すると、春さんと一緒にいた子どもがくいくいと上杉君の服を引っ張ってきました。

 

「なんだ?俺になんか用か?」

 

「春姉ちゃん・・・お花渡されると・・・喜ぶ・・・よ・・・?」

 

「花?」

 

「お花、ですか?」

 

子どもはこくこくと頷き、同意を示しています。

 

「あ~・・・お花か~。うん、お花は大好きだよ~。香りもいい匂いで~・・・それでいて、見た目もきれいなんだよね~。女性に贈り物として渡されたら、大抵の女性は喜ぶかも~」

 

なるほど・・・お花、ですか。確かに、贈り物として渡されれば、人にもよりますが、喜ぶ人は多いですね。お母さんも、その中の1人でもありましたし。

 

「なるほど・・・確かに花ってのも悪くないかもな・・・。参考になったよ、ありがとうな」

 

なでなで

 

「・・・///」

 

上杉君は子どもにお礼を言いながら頭を撫でています。子どもは撫でられてすぐに春さんの後ろに隠れてしまいましたが、その後にその子はひょっこりと出てきて、上杉君に向かってにっこりと微笑んでいます。私はその様子に少し唖然としていました。

 

「あらあら、ごめんね~。この子、ちょっと人見知りで・・・」

 

「まぁ、そう言う奴もいるだろ。気にすんなよ」

 

「・・・春姉ちゃん・・・もう・・・行こうよ・・・」

 

「あ、ごめんね~、話し込んじゃって~。じゃあ、私たちはもう行くね~。それじゃあ、お2人に見つからないように、節度を持って楽しんでね~♪」

 

春さんは子供を連れて笑いながら手を振って私たちと別れました。節度を持ってって・・・春さん、絶対私たちの状況を楽しんでるでしょう。

 

「・・・兄ちゃん、姉ちゃん・・・その・・・バイバイ」

 

「また会いましょうね」

 

「今度はなんか土産でも持ってそっちに行くからな」

 

春さんと一緒にいた子どもは私と上杉君に向かって手を振って別れを言いながら春さんの元へと戻っていきました。

 

「なんだか・・・意外です。私、孤児院にお世話になっていた時にもあの子を見かけたんですけど、ちっとも目を合わせてくれなかったので・・・」

 

「そういや二乃との喧嘩の時に1日だけ世話になったんだったな」

 

あの子、以前孤児院にお世話になった時、何度か私のことをちらちらと見ていたのですが、話しかけることはおろか、目を合わせようともしなかったんです。だから、初対面でありながら、上杉君に話しかけていたというのが。初対面なのに失礼な発言をしたあの上杉君にです。

 

「・・・俺はなぜか小学生くらいのガキに妙に好かれてな・・・。前にらいはが同学年の友達の時もそうだ。おかげであの時はなかなか勉強がはかどらなかった」

 

「本当に意外すぎです・・・」

 

「全く、本当に俺のどこがいいのか全く分からん。俺は勉強しか取り柄のない男だというのに・・・」

 

上杉君は少し困ったような表情をしながら前髪をいじっています。・・・そういえば、六海が真鍋さんから聞いた話だと中学生の時、孤児院の子どもの1人が初対面であるはずの上杉君を信頼してお弁当を預けてたと言っていましたね。・・・もしかしたら、孤児院の子どもたちは本能的に察しているのかもしれません。本人では決して口にはしない、上杉君なりの優しさを。

 

「まぁ、それはいいとしてだ。それにしても花・・・花か。小物とはまたずいぶんとかけ離れたな・・・」

 

「いいではないですか。言ったとは思いますが、贈り物で1番大事なのは気持ちですよ、気持ち。きちんと心がこもった贈り物なら、お花でも姉妹たちは喜ぶと思います」

 

「そうは言うが・・・あいつらって、どんな花が好みなんだよ?お前らのことだから、どうせ花の好みさえもバラバラなんだろ?」

 

「うっ・・・それは・・・そうですが・・・」

 

上杉君に痛いところを突かれてしまいました・・・。昔はみんな同じ花を好んではいましたが、上杉君の言うとおり、私たちは今ではそのお花の好みさえもバラバラなんです。

 

「はぁ・・・花にだって種類があるんだぞ?小物より余計に難易度が上がってないか?」

 

「だ、大丈夫ですよ。幸いにも、姉妹の好みのお花は私がよく知っていますので」

 

「お前、自分の分のことを忘れてるだろ。ご褒美を与えるのは、あいつらだけじゃなくて、お前も含まれてるんだぞ」

 

「え?・・・あ・・・」

 

「お前、忘れてたな」

 

「・・・はい・・・」

 

はい、忘れてました。春さんの話と、姉妹の贈り物のことですっかり忘れてしまいました・・・。というか、最初に上杉君が私に何か欲しいものがないかって尋ねていたじゃないですか。しかも、未だに私の欲しいものは全く浮かび上がってこない始末・・・。

 

「すみません・・・まだ何も浮かばなくて・・・」

 

「はぁ・・・もうこうなったら本当に面倒だが、1人1人が好みそうなものを渡すしかないか?でもそれで拒まれたらすげぇ傷つくし・・・」

 

「まだ言いますかそれ」

 

プレゼント拒まれたことをどれだけ気にしているんですかこの男は⁉

 

「はぁ・・・とりあえず春の言ったことを参考に・・・」

 

「ねぇねぇ、これなんてどうかなー?」

 

「!!??」

 

上杉君がひとまずの方針を決めますと、何やら聞き覚えがありまくりの声が聞こえてきました。

 

「それ、子供っぽすぎない?絶対こっちの方がフー君にあってるわよ」

 

「えー、それより絶対こっちのほうがいいってー」

 

「私はどっちもあってると思うんだけどなー・・・」

 

それも聞き覚えのある声は1人だけでなく、3人ほどいました。

 

「ま、まさか・・・来ているのか・・・?」

 

ちょっと気になって声のした方を見てみると、案の定、彼女たちはいました。

 

「あ、それならこれはどう?風太郎君のかばんに合うと思うなー」

 

「あ、そのキーホルダーいいね!」

 

「うーん・・・まぁ、さっきのよりはずっといい方なんじゃない?」

 

この会話をしていた人物というのは、今日買い物に出かけていた二乃、四葉、そして六海の3人でした。3人とも、このお店で買い物をしていたんですね。しかし、これはちょっと都合がよいのではないのでしょうか。

 

「ちょうどいいところに二乃たちがいましたね。このまま悩んでも埒が明かないので、二乃たちも付いていった方が早いですよ」

 

私がそう提案したところ、上杉君は冷や汗をかいた状態でそれを拒みました。

 

「い・・・いや・・・それはダメだ・・・」

 

「なぜです?私よりも二乃たちに聞いた方がずっといいと思いますが・・・」

 

「四葉の場合もお前と似たような感じになるからダメだ。そして・・・あの2人がいるとなればもっとダメだ」

 

「だからなぜです?」

 

「・・・実は・・・」

 

上杉君は先日、何があったのかを語り始めました。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『先日の出来事』

 

全国模試が終わってからその後日、風太郎は今日も変わらずに休日は自分の勉強をしたり、六つ子にための問題集を作ったりして過ごしている。

 

ヴゥー、ヴゥー・・・

 

そうしていると、風太郎のスマホに着信が届いた。

 

「ん?誰からだ?」

 

風太郎は気になってスマホを確認してみると、風太郎宛にメールが二件届いていた。発信者は二乃と六海だった。風太郎はすぐにそのメール内容を確認する。

 

『フー君、明日暇でしょう?アタシに付き合ってよ。いいとこに連れてってあげる』

 

『風太郎君、明日六海と遊びに行こうよ♪お昼ご飯も奢ってあげるから♪』

 

このメールの内容から、二乃と六海は遠回しにデートのお誘いをしているのだ。それに気付いてるかどうかは知らないが、風太郎はすぐにメールの返信をする。内容は・・・

 

『勉強で忙しいから断る』

 

まさかのお断りのメールであった。風太郎は迷わずに送信する。

 

「全国模試を乗り越えたからって、油断してはならないからな。あいつらのためにも、今のうちに覚えられるところは覚えて、次の試験に備えないとな」

 

メールの返信を終えた風太郎はすぐに視線をノートに移し、勉強をする。そして当然ながら翌日学校で、この件で二乃と六海から怒られたのは言うまでもない。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「・・・というわけで・・・て、なんだよ五月、その顔は・・・」

 

「上杉君・・・それはさすがにドン引きです・・・」

 

お誘いを断るにしても、もっとましな断り方はなかったのですか?よりにもよって勉強するからダメって・・・。もしかして、前に二乃と六海が怒っていたのは、この件だったのでしょうか?

 

「でも、それがなぜ3人と合流してはいけない理由になるのですか?」

 

「わからないのか?俺があいつらに誘われておきながら今現在、お前と一緒に行動している。その現場を二乃と六海たちに見られでもしてみろ・・・」

 

♡♡♡♡♡♡

 

『フー君・・・すごい偶然ね。でも、五月と一緒だなんて・・・』(威圧)

 

『・・・六海たちの誘いは断ったくせに・・・』(威圧)

 

♡♡♡♡♡♡

 

「てなるに決まっているだろ・・・」

 

「それは考えすぎなのでは?」

 

さすがに二乃と六海がそこまで深く根に持つことは・・・あれ?不思議なことに、ない、とは言い切れまないような気がしてきました。それに今日はお給料を渡したらそのまま帰る予定でしたから・・・今上杉君と一緒に外に出かけてるのを見られたら、面倒ごとになるような・・・?

 

「・・・はぁ・・・仕方ありませんね・・・。貸し1つですよ?」

 

「お、おい五月!どうするつもりだ?」

 

「私が何とかあの3人の注意を逸らします。その間に上杉君は隙を見てお店から出てください。私も、後で合流しますので」

 

「お、おい余計なことは・・・」

 

面倒事を避けるために私は1人だけで二乃たちの注意を引くために3人の元まで近づきます。

 

「あれ?おーい、五月ー」

 

「え?五月?」

 

「あれぇ?五月ちゃん?」

 

「あ・・・」

 

私のこの行為には当然、姉妹たちから真っ先に見つかります。上杉君はうまく身を隠すことは出来たでしょうか?

 

「こ・・・こんなところで偶然ですね」

 

「いや・・・こんなとこで何してんの?風太郎君にお給料を渡すんじゃなかったの?」

 

「い、いやぁ・・・それなんですが、早めに終わりまして・・・せっかくですからちょっと寄って返ろうかなぁ、と・・・」

 

「あ!そうなんだ!」

 

「・・・ふーん、そう」

 

「・・・へぇー、そうなんだ」

 

「そ、そうなんですよ、はい!」

 

四葉は簡単に納得してくれましたが、二乃と六海はこっちを疑いの目で見ています・・・。こ、これ・・・自分でやっておいてなんですが、大丈夫なんでしょうか・・・。

 

「まぁでも、ちょうどよかったよ。五月ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」

 

「な、なんでしょうか⁉」

 

き、聞きたいことって何でしょうか?まさか、もうバレて・・・

 

「このキーホルダーとこのペンケース・・・風太郎君ならどっちが喜ぶと思う?」

 

六海が取り出したのは、いかにも六海が好みそうなキーホルダーやペンケースがありました。これのどちらが上杉君が好みかって?・・・まあ、キーホルダーの方がだいぶマシだとは思いますが・・・。

 

「き、キーホルダー、ですかね?」

 

「やっぱり、五月もそう思うわよね?」

 

「私はペンケースも十分いいとから両方でもいいと思うけど・・・」

 

「ダメよ、そんなセンスのないペンケース、フー君に合うはずがないわ」

 

「そんなことないって。前に六海のプレゼント、風太郎君もらってくれたし」

 

「何ですって!その時のこと詳しく聞かせなさいこの・・・」

 

「六海は泥棒猫じゃありませんー」

 

「ちょ、ちょっと2人とも、喧嘩はやめようよ、ね?」

 

質問している最中で六海と二乃が急に言い合いを始めましたね。なんだか最近この光景を見ることが多くなったような・・・て、それは今はいいです。もうそろそろ離れた方がよさそうですね。上杉君の姿も見えなくなりましたし。

 

「そ、それでは、私はそろそろ帰らせて・・・」

 

「あ、待って五月。よかったら私たちとお買い物しない?きっと楽しいよ!」

 

「ええ!!?」

 

こ、困りました・・・この時の対処法ってどうすればよいのでしょうか・・・?まさか買い物に誘われてくるなんて・・・。別に困るようなことでもないのですが・・・理由が理由なので、どう断れば・・・。

 

「五月?」

 

「え、ええっと・・・そのですね・・・」

 

「「・・・怪しい」」

 

「えっ!!?な、何がですか!!?」

 

私が言い淀んでいますと、二乃と六海がこちらをジト目で見つめています。

 

「だって五月ちゃん、明らかに挙動不審な態度なんだもん。怪しむなって言うのが無理だよ」

 

「五月、私たちに内緒でなんか隠してないでしょうね?」

 

な、なんと鋭いんでしょうか・・・!

 

「な、何も隠していませんよ⁉️決して!何も!!」

 

「じゃあさ、なんでそんなに慌ててるの?何もないなら堂々とすればいいのに」

 

「そ、それは・・・」

 

「やっぱり怪しい・・・。五月、さっさと白状した方が身のためよ」

 

ああ・・・私が何かを言えば言うほど、2人の疑いの目がだんだんと強くなっていきます・・・。私はいったいどうすればよいのでしょうか・・・。誰でもいいので助けてください・・・。

 

「そんなとこで何揉めてんのよ?」

 

「「「え?」」」

 

「あ!真鍋さん!お疲れ様です!」

 

私の絶体絶命といえるほどのピンチを救ってくれたのは、真鍋さんでした。なんだか今日は孤児院の人とよく合うようですがどうでもいいです!何でもいいので助けてください!

 

「何よ?これは何の揉め事よ?」

 

「あ、あのぅ・・・それはですね・・・」

 

「それが私にもよくわかりません!」

 

「はぁ・・・まぁ、だいたい検討が付くわ。どうせ上杉絡みでしょ?」

 

「え?上杉さん?」

 

「風太郎君は別に関係ないよ」

 

「そうよ。ちょっと問いただしてるだけよ」

 

すいません、だいたい上杉君が絡んでいるのは・・・大当たりです・・・。

 

「そう。・・・ああ、そういえば上杉といえば、あっちの方で上杉が1人でいるのを見たわよ?」

 

「「「「え?」」」」

 

あっちの方角って、出口とは反対側のルートですね。真鍋さんを見てみると、私に任せろと言わんばかりのアイコンタクトを私に送っています。もしかして・・・私を助けに・・・?

 

「何でもここに用があるんだと。珍しいこともあるもんね」

 

「へ、へぇ・・・そう・・・」

 

「ふーん・・・そうなんだ・・・」

 

「会いたいって思うなら会って来れば?今行けばもしかしたら、会えるかもよ?」

 

いったい何を言ってるんですか真鍋さんは。そんなことでこの3人をどかすことなんてできるわけ・・・。

 

「あ・・・あー、そういえば、あっちの方に欲しいものがあったっけー。あっちでも見ていこうかしらね。あんたたちはここで待っててもいいわよ」

 

「二乃?」

 

えぇ!!?今ので二乃がこの場から去っていこうとしてます!!?真鍋さん、いったいどんな手品を!!?

 

「わ!六海も行く!抜け駆けなんて許さないよ!!」

 

こ、今度は六海までもがあっち側へと行ってしまいました・・・。

 

「六海まで・・・」

 

「あー、四葉、私ソフトボールの用具を買いに来たんだけど、ちょっとだけ付き合ってくんないかしら?あんたの見立てが必要なのよ」

 

「え、でも2人が・・・」

 

「すぐに済むから・・・人助けだと思ってお願い!」

 

「・・・わかりました!どんと私に頼ってください!」

 

真鍋さんの買い物の付き添いのお誘いに四葉はちょっと渋ったような顔になりましたが、人助けというワードに弱い四葉は快く承諾してくれました。

 

「ごめん五月!また後で!」

 

スポーツ用具売り場へと直行していく四葉についていくように歩く真鍋さんは私の耳元でこうつぶやきました。

 

(これ、貸しにしておくわよ)

 

もしかして・・・私の今の状況をわかったうえで助けてくれたのでしょうか?でもどうして・・・?いえ、ひとまずはどうにかなったと考えるべきですかね。上杉君はお店から脱出できたでしょうか?

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの騒動を終えて、何とかお店から出ることができました・・・。あんな展開、もう二度と遭遇したくないものです・・・。

 

「思ったより早く来れたな。真鍋の奴、うまく誘導してくれたか」

 

お店を出ると、上杉君がコンビニの袋を抱えて待ってくれて・・・いえ、今何と言いましたか?真鍋さんが、誘導?

 

「上杉君、なぜ真鍋さんのことを・・・?」

 

「さすがに放っておくわけにもいかんかったから観念しようと思ったら、偶然真鍋と会ってな。事情を説明したら渋々だが協力してくれた」

 

「ああ・・・貸し1つとはそういうことだったのですね・・・」

 

「こりゃ明日、あいつにたかられるだろうな・・・。いや、あいつはそこまで高いものは要求しないし安心・・・いや、でもなぁ・・・」

 

上杉君は真鍋さんの見返りについてブツブツ言いながら頭を抱えています。真鍋さんはそこまで欲深い人ではないと・・・いや、意外に上杉君と似たところがありますから強く否定できませんね・・・。

 

「・・・まぁ、今はそんなこと考えても仕方ない。ほれ、肉まんだ。食うだろ?さっきの詫びだ」

 

「本当に悪いと思ってるなら、もう二度と変な断り方はしないでください!・・・もらえるものはもらいますが!」

 

私は申し訳なさそうにしている上杉君の持っている袋を受け取り、文句を言いながらも中にある肉まんを取り出して食べます。やはり、コンビニの肉まんはおいしいですね。

 

「お店は出たはいいですけど・・・どうします?」

 

「まだしばらく二乃たちがいるかもしれんからな・・・仕方ない。春のアドバイス通り、花屋の方へ行ってみるか」

 

「ここからだと・・・この道が1番近いですね」

 

とりあえず春さんのアドバイスに従って、私たちはスマホの案内を頼りながらお花屋さんへと続く道のりを歩いていきます。そして、歩いていくこと数分後、目的のお花屋さんが見えてきました。

 

「あ、見えてきましたね」

 

「はぁ・・・さっさと花を選んで・・・!!?」

 

「上杉君?」

 

「五月!こっちに来い!」

 

「え?」

 

お花屋さんにたどり着いたと思ったら、上杉君に連れられて近くの曲がり角に連れてこられました。こ、今度は何だというのですか⁉

 

「いやー、ごめんねー、私の買い物に付き合ってもらっちゃって・・・」

 

「別にいい。今日は暇してたし・・・」

 

うわぁ・・・またもや聞き覚えのある声が聞こえてきました。なんかこの時点で嫌な予感がしてきました・・・。

 

「上杉君・・・またですか・・・?」

 

「い、いや・・・あいつらからは何も・・・」

 

そんなことを言いながら曲がり角からこっそりとお花屋さんを覗いてみますと、やっぱり私の身内がそこにいました。

 

「んー・・・どのお花にしようかなー・・・」

 

「何でもいいと思うけど・・・」

 

お花屋さんの前にいたのは私の姉妹の一花と三玖でした。

 

「何もないのでしたら別に合流しても問題ないのではないですか?」

 

「お前、気づいてないのか?もしここであいつらと会ったら、もしかしたら二乃たちの耳に入るかもしれんだろう。そうなると、俺がお前といたことがバレるかもしれんのだぞ」

 

「あ・・・」

 

「本当に気づいてなかったのか?」

 

た、確かに私たちが一花たちと一緒にいれば遅かれ早かれ二乃たちの耳に入るのは確実ですね。もしそのことがバレて二乃たちにまたあのような追及をされたら・・・。このような事態を招いた上杉君が少し憎らしく思えてきましたよ・・・。

 

「もうこうなったら誰にも会わないようにした方がよさそうだな・・・。とにかく、今はこの場を離れよう」

 

「は、はい」

 

私たちは一花と三玖に見つからないようにしながらこっそりとその場を去り、お花屋さんを後にしました。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それからは大変でした。一花たちから離れたと思ったらまたも、二乃たちと出くわしそうになってしまうわ、また離れてもまた一花と出くわしそうになるわ、人助けをしている四葉を見かけるわで走り回って散々です。

 

「はぁ・・・はぁ・・・もう、大丈夫・・・ですよね・・・?」

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・全く・・・前にもこんなことがあったな・・・」

 

体力が低い上杉君は私以上に疲労しきったように見えてきましたよ・・・。本当に男の子か疑わしくなってきます。

 

「はぁ・・・それで・・・ここはどこだ・・・?」

 

「えーっと・・・ここは・・・」

 

息を整えながら前を見てみますと、目の前には去年に行ったことのあるゲームセンターがありました。

 

「ここは・・・ゲーセンか・・・。どこまで走ったんだか・・・」

 

「・・・上杉君、覚えていますか?ここでらいはちゃんと一緒に遊んだ日のことを」

 

「急になんだ。・・・忘れるわけがない。受け取らないと言った給料で、お前とらいはと一緒に来て、柄にもなくはしゃいだものだ」

 

「ふふ、あの時が懐かしいですね」

 

あの時のことをひしひしと思いだして、心の奥底から懐かしさがこみ上げてきました。

 

「せっかくなので、また行きませんか?」

 

「はあ?急に何言ってんだ?」

 

私がふと口にした言葉に上杉君は訝し気な表情を見せました。

 

「ほんの少しの息抜きですよ」

 

「いや、さらに疲れるような気がするんだが・・・てか、買い物・・・」

 

「下手に動いたらまた見つかるかもしれませんよ?それに、上杉君がゲームセンターにいるなんて、誰も想像がつかないからちょうどよいのではないですか?」

 

「むむむ・・・確かに・・・身を隠すにはいいか・・・。まぁ・・・ちょっとだけなら・・・いい・・・のか?」

 

上杉君はとりあえずは納得してくれたようですね。贈り物を買うのが目的だったのですので、目的から脱線していますが・・・実は内心、また行ってみたいと思っていたのでちょっぴりわくわくしてます。

 

♡♡♡♡♡♡

 

その後私と上杉君はこのゲームセンターのいくつかのゲームで遊んでいきました。らいはちゃんがいないですが、あの時と似ている場面がありました。例えば・・・

 

「・・・やはりおかしい・・・今の衝撃で落ちないのは物理的に反しているぞ!後1回・・・」

 

「上杉君、もう次に行きましょう!人が見てますよ!」

 

今みたいに射的ゲームで以前と同じことで上杉君がいちゃもんをつけているところです。こうなってくると・・・

 

「五月!まだ弾が残っている!あれを狙え!そしてこの不正を今度こそ暴くんだ!」

 

「やはり私に振るんですね・・・」

 

予感的中です。上杉君は私に弾が残っているおもちゃの銃を渡してきて、遠くにある的を撃つように指示してきました。こんなの不正でも何でもないんですが・・・弾が残ってると後味が悪いのでやりますが・・・

 

「そうは言いますが、あんな小さなものを狙うなんて・・・」

 

「何度も言うが、照星に合わせて飛距離を計算してだな・・・」

 

!!!銃を構えている私に・・・上杉君が近づいて・・・!!

 

「ひゃあ!!?」

 

パァン!

 

「またかよ!全然成長してねぇな!!」

 

「何の前触れもなく顔を近づけるからです!!」

 

全く・・・これも以前と全く同じ展開・・・。まず一声をかけてからですね・・・。

 

「くぅ・・・このままでは終われん!もう1度やって、この不正を・・・」

 

「もういいですから行きますよ!そろそろ本題に戻りませんと・・・」

 

これ以上いちゃもんをつけて大勢の人に見られる前に上杉君を連れてこの場を離れようとした時、1台のクレーンゲームが視界に映りました。

 

「?五月?どうした?」

 

「あ・・・いえ、ちょっと、懐かしいものを見つけまして・・・」

 

「懐かしい?それって、あのぬいぐるみのことか?」

 

懐かしさを感じ取っていたものは、クレーンゲームの中にある小さなぬいぐるみです。ご丁寧に、目玉といった感じで6個ありました。

 

「私たちが幼稚園に入りたての際にお母さんからプレゼントしてもらったものと同じでして、もらった際はみんな喜んでいたのをよく覚えています」

 

「ほう・・・」

 

「ただ・・・みんなに自慢しようと持っていったら、クラスのいじめっ子もそれを欲しがっていまして・・・それをめぐって喧嘩になりまして・・・その際にぬいぐるみが全部どこかになくしてしまいまして・・・」

 

ほんのちょっぴりですけど、その当時のことは覚えています。本当、あれはいったいどこにいったのでしょうね・・・。

 

「もちろん、必死になって探しましたけど、どこにもなくて・・・」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ・・・昔のことですし、今はそこまで気にしてませんよ。ただ、そういう思い出があったってだけで、別に今とは関係・・・」

 

「じゃあ贈り物、これにするか」

 

「え?」

 

これを、贈り物に?

 

「それで、いいんですか?」

 

「大切なものだったんだろ?代わりってわけじゃない。だが、せめて同じものが手元にあった方が、少しは安心するだろ」

 

「・・・ですが・・・」

 

「まぁ見てろ。すぐに取ってやるよ」

 

上杉君は有無を言わずに6個のぬいぐるみを取ろうとクレーンゲームに挑戦します。そこまで気にしなくともよいと思うのですが・・・。

 

・・・それから、挑戦してから十数分後・・・

 

「・・・なぜだ。なぜ落とせない・・・確率的にもあれで落とせないのはおかしい!!」

 

「もういいですから!行きますよ!」

 

未だに1つも手に入れる事ができず、さっきみたいに文句を言っています。本当に恥ずかしいからやめてほしいです・・・。ああ・・・もう、本当に・・・。

 

「なー、兄ちゃん変わってくれよー」

 

「ええい、邪魔をするな・・・て、おい五月!離せ!こんな不正を許して・・・」

 

「そんな証明はしなくていいですから!みんな見てるじゃないですか!!」

 

ゲームセンターに来ている人たちの視線から外すべく、未だに興奮している上杉君を無理やり引っ張ってこの場を後にします。もう・・・本当に恥ずかしい・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

気がつけばもうすっかり夕方になっていました。時が経つのは早いですね。今私たちはひとまずは一息つけるため、公園のベンチに座っています。

 

「・・・すまなかった。取り乱した」

 

「はぁ・・・もういいですよ」

 

「・・・すまん」

 

上杉君も落ち着きを取り戻したようです。上杉君は意外にもああいったものには熱くなりがちなようですね。

 

「あー、もうすっかり日が暮れたか・・・。結局何も贈り物を買うことができなかったか・・・」

 

「もういいですよ。私は気にしてませんから」

 

「だが・・・」

 

「そうやって、私たち姉妹を気にかけてくれてるだけでも、十分です」

 

「・・・別に気にはかけていないがな・・・」

 

上杉君は素っ気なさそうに私から顔を背けました。素直ではないですね。

 

「あれ?五月お姉ちゃん?」

 

「!あれ?あなたは、千尋ちゃん?」

 

「お前・・・らいはの友達の・・・」

 

私と上杉君が話していると、孤児院の子供たちの1人であり、二乃との喧嘩騒動の際に知り合った女の子、千尋ちゃんがやってきて、声をかけてきました。

 

「お久しぶりですね、千尋ちゃん」

 

「五月お姉ちゃん、久しぶり!あたちのこと覚えてたんだ!それから、らいはちゃんのお兄さん、こんにちは!」

 

「あれ?上杉君、千尋ちゃんと会いましたか?」

 

「らいは関連で面識があるだけだ」

 

そういえば千尋ちゃんはらいはちゃんの友達でしたね。らいはちゃん本人が言っていましたし、上杉君も面識があっても不思議ではないですね。

 

「こんなところで何してたのー?」

 

「いや、ただ買い物に来ていただけだ。結局なんも買えなかったが」

 

「千尋ちゃんは何してたんですか?」

 

「あたち?あたちはねー・・・」

 

「・・・ん?待て、お前が持ってるそのぬいぐるみ・・・」

 

「え?ぬいぐるみ?」

 

千尋ちゃんの方を見てみますと、千尋ちゃんの鞄には上杉君がクレーンゲームで何度やっても取れなかったぬいぐるみがありました。それも、それぞれ6つもありました。

 

「ああ、これ?実はゲーセンのクレーンゲームでこれが取れちゃってねー。でもあたち、これとは別のものが欲しかったから、数も多いし、これをどうしようかと悩んでたんだよ」

 

千尋ちゃんの顔は本当に困ったような表情をしています。

 

「友達に譲る、とかはどうでしょう?」

 

「あたちもそう思ったんだけど、これ人気らしいからなんか取り合いになりそうだし、孤児院持って帰っても同じことが起きそうだし・・・」

 

確かに・・・私たちも昔同じことが起きましたし、孤児院の子どもたちも大人数ですから絶対数が足りませんし・・・。でも、千尋ちゃんの問題は解決したいですし・・・。

 

「・・・ならそのぬいぐるみ、俺に譲ってくれ。6つ全部だ」

 

私が悩んでいる間に、上杉君がそんなことを言いました。

 

「え?」

 

「なっ!上杉君、まだぬいぐるみを諦めてなかったのですか⁉」

 

「ここでぬいぐるみをもらえば、消費しきった金の元が戻せるんだ。なら、それを利用しない手はないだろ?」

 

またそんなことを言って・・・。そんなことで千尋ちゃんが納得するわけ・・・

 

「・・・いいよ。ぬいぐるみをあげても」

 

ほら、千尋ちゃんだって了承し・・・て、え?

 

「ち、千尋ちゃん?本当にいいんですか?」

 

「あたち、このぬいぐるみ別に欲しいわけじゃないし、喧嘩にならないなら、それでいいかなーって・・・」

 

本当にそれでいいのでしょうか?何か裏があるような・・・。

 

「なら遠慮なくもら・・・」

 

ひょい・・・

 

上杉君がぬいぐるみをもらおうと手を伸ばそうとした時、千尋ちゃんはかばんを上杉君から遠ざけました・・・て、あれ?

 

「・・・何してんだ?言ってることとやってることが全然違うぞ」

 

「・・・恵理子姉ちゃんは言ってたよ。この世でただで物をもらったり、あげたりするのはフェアじゃない、等価交換はきちんとすべきだって」

 

「あいつ・・・!」

 

「だからね、等価交換しよ?そしたらこのぬいぐるみは全部あげる」

 

何かあるとは思ってはいましたが・・・やっぱり、千尋ちゃんなりの思惑があるようです。しかし、真鍋さん、あなたは子供に何を教えてるんですか?いや、正しいとは思いますが・・・。

 

「はぁ・・・で、いくらほど欲しいんだ?」

 

「お金で解決って・・・生々しいですよ」

 

というか上杉君、子供相手にお金の交渉をしようとしないでください!

 

「お金はいらないよー。お小遣いには困ってないし」

 

「じゃあ何がいいんだよ?」

 

「んー・・・じゃあお兄さん、あたちと五月お姉ちゃんの写真を撮って!そしたらぬいぐるみはあげる!」

 

「わ、私ですか⁉」

 

千尋ちゃんはわざとらしい考えた仕草をした後に、自分のスマホを取り出し、写真を撮るように言いました。でもなぜ私をご指名するのですか⁉

 

「・・・たったそれだけでいいのか?」

 

「しかし、なぜ?」

 

「前にらいはちゃんからお兄さんと五月姉ちゃんのプリクラ写真を見せてもらったの」

 

「「あ、あれをか(ですか)・・・」」

 

以前ゲームセンターのプリクラで撮ったあの写真のことですか・・・。一応、その写真は今も持ってますが・・・。

 

「それ見てたら、なんだか五月お姉ちゃんがらいはちゃんといつも一緒にいるように思えて、ずるいなーって思ったんだー」

 

「・・・つまり?」

 

「あたち、五月お姉ちゃんと一緒にいる写真が欲しい!だから写真撮って!」

 

私ご指名ですか・・・私、カメラなどに向かって笑顔を向けるのは少々苦手なのですが・・・。

 

「五月、ご指名だぞ。行ってこい」

 

「そんな他人事みたいなことを・・・」

 

「・・・ダメ?」

 

キューーン!

 

こ、これは・・・らいはちゃんとは負け劣らずの涙目の上目遣い・・・。千尋ちゃんはずるいですよ・・・。そんな顔をされたら、断れないじゃないですか。可愛すぎます!

 

「か、構いませんよ。一緒に撮りましょうか」

 

「やったーー!!ありがとう、五月お姉ちゃん!!」

 

千尋ちゃんは満面な笑顔で私に抱き着いてきました。まさか千尋ちゃんがこれでこんなに喜んでもらえるとは思いませんでしたよ。

 

「こいつ、やたらと五月を気に入ってるな。俺や他の姉妹はそうでもないのに」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

私を慕ってくれているのは嬉しい限りですが・・・正直、千尋ちゃんがなぜ私をこんなに慕ってくれるのか理由がわからないのですが・・・。

 

「じゃあ・・・俺はお前らの写真を撮ればいいのか?」

 

「うん!お兄さん、ベストショットをお願いね!」

 

「わかったからスマホ貸してくれ。写真が撮れない」

 

「わかった!行こ、五月お姉ちゃん!」

 

「わ、千尋ちゃん!」

 

千尋ちゃんは上杉君にスマホを貸した後に私を連れて上杉君から距離を取ります。うまく写真に映り込むために。

 

「えへへ・・・五月お姉ちゃんと一緒だなんて、あたち、嬉しいな」

 

千尋ちゃんはにっこりとした笑顔で千尋のスマホに顔を向けます。

 

「おい五月、表情が固いぞ。もっと柔らかくしろ」

 

「自分は写らないからって・・・!」

 

しかも今の上杉君の顔はにたにたしたような・・・すごい腹が立ちますよ!

 

「はい、チーズ」

 

カシャッ!

 

上杉君の合図で写真が撮れたようです。

 

「あはははは!五月お姉ちゃん何これー!変な顔ー!」

 

「ぷ・・・相変わらずなんて顔をしてるんだこいつ・・・!」

 

写真を見た千尋ちゃんは笑っています。・・・千尋ちゃんはともかく、上杉君に笑われる筋合いはこっちにはありません・・・!

 

「・・・よければ上杉君もどうですか?私たちだけで写るのはフェアじゃないでしょう?」

 

「はあ!!?」

 

私の出した提案に上杉君は驚いてますが知りません。私も上杉君の変顔を撮って思いっきり笑ってやりますよ!

 

「なぜ驚くのです?当然でしょう?あなた1人だけ逃れようとしたってそうはいきませんよ」

 

「い、いや、この子が撮って欲しいのはお前だけ・・・」

 

「あたちはお兄さんも撮ってあげてもいいよ?」

 

「ほら、こう言ってますし、せっかくなので・・・」

 

「そんなせっかくはいらん!くそ!離せ!」

 

上杉君は難を逃れようと必死に抵抗しています。逃がしてなるものですか!どうせ恥をかくなら上杉君も巻き込んで・・・。

 

「あ、じゃあ3人で撮ろうっか。それならお兄さんも安心!あたち、頭いいー♪」

 

「「え?」」

 

な、なぜこんなことに?私の思っていた展開と違うんですけど・・・。千尋ちゃんはるんるんした様子でスマホをシャッターモードに設定しています。

 

「い、五月、お前・・・!」

 

「上杉君はまだいい方ですよ!私なんて2回目ですよ⁉」

 

「お前が余計なことを言うからだろ!」

 

「もとはといえば上杉君が・・・」

 

「準備できたよー」

 

私たちが言い合いをしている間に準備を終えた千尋ちゃんがとたとたとこちらに来て、私と上杉君の間に入ります。

 

「えへ、あたちと五月お姉ちゃんとお兄さんは、仲良し♪」

 

「・・・や、やっぱり俺は・・・」

 

「逃がしませんよ?」

 

上杉君が逃げようとしましたが、絶対に逃がしません。私が腕を掴んで逃げようとしたのを阻止します。

 

「はーい、スマホに向けて笑ってー!1+1はー?」

 

「「に、にぃ・・・」」

 

カシャッ!

 

予想だにしなかった2回目の写真が撮れました。が、ただ写真を撮るだけなのに、もう疲れました・・・。上杉君もちょっとお疲れの様子です。

 

「あはは!これもおもしろーい!ほら、五月お姉ちゃんたちも見て!」

 

千尋ちゃんは今さっき撮った2枚目の写真を私たちに見せてきました。その写真には笑顔の千尋ちゃんと、引きつった笑みを浮かべている私と上杉君が写っていました。

 

「お、お前やっぱりひどい顔だな!」

 

「あなただって、負けていませんよ?」

 

この写真を見て私も上杉君も若干引きつった顔をしているのがわかります。

 

「五月お姉ちゃん、お兄さん、あたちのお願いを聞いてくれて、ありがとうね。はい、これ、約束のぬいぐるみ6つ」

 

千尋ちゃんはそんな私たちに満面な笑みを浮かべながら6つのぬいぐるみが入った袋を上杉君に渡してきました。

 

「今日はあたちのわがままに付き合ってくれてありがとう!ほんの少しの間だけど、五月お姉ちゃんと会えて嬉しかったよ!今日のこの写真はあたちの宝物にするね!」

 

「むぅ・・・」

 

「ふふ」

 

まぁでも、千尋ちゃんがこんなに喜んでくれているのなら、まぁ、いいかなって思えてきました。

 

「あっと、そろそろ子供たちの面倒を見なくちゃ!恵理子姉ちゃんみたいにしっかりしないといけないから!じゃ、また会おうねー!」

 

千尋ちゃんは思い出したように手をポンと叩き、私たちに手を振って帰り道を走っていきます。

 

「なんか今日は、いろいろあったな・・・。だがようやく落ち着いた・・・すまんな、俺が言いだしたことに、振り回せてしまって」

 

「はぁ・・・もういいですよ。なんだかんだ言いましても、私も楽しめましたし」

 

まぁただし、あの修羅場はもう関わりたいとは思いませんけど。

 

「ほらよ、お前への贈り物だ」

 

上杉君は6つのぬいぐるみが入った袋を私に渡してきました。

 

「残りのぬいぐるみは俺からだと言って渡しておいてくれ」

 

「・・・いいえ、これは上杉君が姉妹に直接渡してください」

 

「え?」

 

私はそう言いながら赤いぬいぐるみを1つだけ取り、残りのぬいぐるみは上杉君に返却しました。

 

「私が渡すより、上杉君が渡された方が、姉妹も喜ぶと思いますよ」

 

「・・・理解不能だ」

 

「それだけあなたを信頼しているということですよ」

 

「・・・そうかよ」

 

私の言葉に上杉君はそっぽを向けました。無論、私もあなたを信頼していますよ。

 

「しかし、なぜ今日はこれのために・・・」

 

「・・・これまでお前らのバカさ加減には振り回されてきたが、逆にそれによって俺は何度も救われてきた。それなのに俺はまだお前らに何も返せてねぇ。だから・・・その・・・なんだ・・・。ご褒美兼、世話になった、礼だ」

 

う、上杉君・・・

 

「またとんでもなくこっぱずかしいことを・・・」

 

「う、うるせぇ・・・」

 

上杉君は恥ずかしそうにそう言い放ちました。しかし、まぁ・・・その思いは嬉しく思うところではありますね。

 

「では、これはありがたく受け取っておきますね」

 

「・・・受け取ったならさっさと帰るぞ。残りのこれは・・・面倒だから明日にするか・・・いや、らいはになんて言われるか・・・」

 

ぬいぐるみを1つ受け取った後は上杉君は帰ろうとする際に何かぶつぶつ言いだしました。

 

「上杉君」

 

「なんだよ?」

 

「今日のことは、姉妹には内緒ですよ?」

 

私は上杉君を呼び止めて、人差し指を口に添えて、内緒の意味を込めてそう言いました。今回のことは、私と上杉君の秘密、ですからね。

 

その後、帰った後は今回の件で二乃たちに疑いの目を向けられましたが、一部は伏せておいて上杉君からの贈り物がもらえるということを伝えて、しぶしぶ納得はしてくれました。そして、後日に上杉君がぬいぐるみを姉妹に渡すと、喜んでもらえたようでした。

 

40  「ある日の休日」

 

つづく




次回、風太郎、四葉視点

おまけ

孤児院の子供の名簿

千尋

外見は真鍋をまねたポニーテール。幼さが残り切っている。

イメージCV:艦隊これくしょんの吹雪

孤児院に住んでいる子供たちの1人。現在では中学1年生。真鍋を真似してか、本人はしっかり者と言ってはいるが、まだ全然幼さが残っており、一人称が今でもあたちになっている。
らいはの友達で風太郎とは一応顔見知り。
孤児院の立場では真鍋達高校生組の次に立場が上。・・・多分。
1年前の五月と二乃の姉妹喧嘩の最中で偶然五月と出会い、励ましてもらって以来、彼女は五月を慕っている。他の姉妹は見分けられないが、なぜか五月だけは見分けられている。

デート回(?)にて、2番目でデートをするのは誰がいい?

  • 一花
  • 二乃
  • 三玖
  • 六海
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