六等分の花嫁   作:先導

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私と姉妹

6年前・・・

 

「先生が言ってたんだけど、瓜を半分に切っても同じだから瓜二つって言うらしいよ」

 

「瓜って何?」

 

「わかんなーい」

 

「先生が食べ物だって言ってたよ」

 

「それならメロンだってそうじゃないの?」

 

「うん。メロンだって半分に切ったら同じだし」

 

「メロン二つは変だと思わない?」

 

「だねー」

 

学校帰りに今日先生に習ったことをみんなが話し合っている。主に瓜二つは親子や兄弟、姉妹なんかによく使われるんだって。同じ顔が2つだから瓜二つ・・・だとしたら、私たち六つ子はどうなるのだろう?だって私たちは顔も性格も何もかも一緒だから、これは瓜二つとは言わないんじゃないかな?というか、瓜を6つに切っても同じなのかな?

 

「うーん・・・」

 

「・・・あれ?四葉、どうしたの?」

 

「瓜は6つに切っても同じなのかな?」

 

「あはは、じゃあ私たちは瓜六つだね」

 

瓜6つか・・・なんかいいね、その言葉。それなら確かに6つとも同じになるわけだし、何より私たちにとっては響きがいい。

 

「おーい!そこの六つ子!」

 

私たちが目的地に向かって道を歩いてると、ちょっと太ったサッカーユニフォームを着たもじゃもじゃ頭の髭のおじさんが声をかけてきた。

 

「いいところに通りかかった!」

 

「あ、監督だ」

 

「ヘボ監督」

 

「おいおい、とんだご挨拶だな、お前たち」

 

このおじさんは小学生サッカーチームの監督をやっている人で、私たちは監督って呼んでる人だよ。チーム自体はそんなに強いわけじゃないから、だいたいヘボ監督って呼ぶことが多いよ。

 

「大人だってな、そんなこと言われたら傷つくんだぞ、三玖よ」

 

監督ってば、また間違えてるよ。今ヘボ監督って言ったのは三玖じゃないよ。

 

「ブー。違うよ」

 

「なっ!!まさかまた!!」

 

「私は六海だよ」

 

「三玖が私だよ、監督」

 

「ぬわああああああああ!!!お前たちの身わけ方が未だにつかねぇええええええ!!!!」

 

このやり取りももう何回目なんだろうね。でも仕方がないよ。長い付き合いでない限り、私たちを見分けようなんて、そもそも無理な話なんだよ。まぁ、それで不愉快になるなんてことは、今までで一度もないから気にしてなんかないけどね。

 

「・・・って、すまんな、何度も何度も・・・。お前らも間違えられるのはいい気分じゃないもんな」

 

「別に気にならないよね。ね、みんな」

 

「そうそう、気にならない気にならない」

 

「うん。そっくりは私たちにとって褒め言葉だから」

 

「一卵性に感謝だね」

 

「むしろそこがウリって奴?」

 

「瓜だけにって?それいいね」

 

「う、瓜・・・?そう・・・なのか?よくわからんが・・・」

 

うーん、私たちのこの感性は監督にはわからないかなぁ?・・・わからないか。だって、ヘボ監督だし。

 

「じゃあ、そろそろ行こっか。四葉、お財布忘れないでね」

 

「はーい」

 

「ちょちょ・・・待ってくれ!」

 

そろそろ運動場から出ようと思った時、監督に止められた。

 

「確かにお前たちはそっくりだ。それも、分身してるのではと思うくらいに。そんなお前たちだからこそ、頼みがある」

 

「えー・・・もしかしてまたー?」

 

監督のことだ。こういう時に頼むことと言ったら1つしかないよ。

 

「その通りだ。もうすぐ練習試合が始まるんだ。お前たち、6人とも助っ人で参戦してくれ!」

 

やっぱり・・・絶対言うと思ったもん。私たちが断ると土下座してまで頼み込んでくるから困るんだよね・・・。

 

「どうする?」

 

「どうするって・・・」

 

「時間はまだあるし・・・」

 

「まぁ、いいんじゃないかな?」

 

「おおお!ありがたい!!」

 

お母さんが帰ってくる時間までには間に合うし、ちょっとぐらいなら監督のわがままに付き合ってあげてもいいかな。みんなも同じ意見だし。練習試合ももうすぐだし、私たちはすぐに運動服に着替えることにする。もちろん、監督に見られないように離れて、だけど。

 

♡♡♡♡♡♡

 

私たちが着替え終えたと同時に、練習試合の時間になった。監督のチームの人と一緒に、相手チームに挨拶したところで、試合開始だよ。最初のボールは相手チームに渡った。けど、そんなことは私たちにとっては関係ない。

 

「ん?・・・え?ええええ!!??」

 

ボールをドリブルしてる相手の前に二乃と三玖がマークして、相手のボールを取ろうと一花と六海が相手の両隣まで迫ってきた。同じ顔の人間が目の前にいて・・・なおかつその同じ顔に人間が両隣に迫ってくるんだもん。戸惑わないわけがないよ。むしろ恐怖すら覚えるかもしれないね。

 

「それ!いただき!」

 

「あっ!」

 

相手のボールを一花が取って相手チームにボールを奪われないようにゴールまで運んでいく。私たちも一花をサポートするための位置へと向かっていく。

 

「五月!パス!」

 

相手にボールを奪われそうになった時、一花がボールを五月にパスした。目の前には二乃もいたけど、ボールをジャンプで躱して五月に渡った。

 

「六海!お願い!」

 

「ほっ、三玖、パス!」

 

またも奪われそうになったところを五月が六海にパスをして、すぐに後ろにいた三玖にボールを渡していった。

 

「四葉、決めて!」

 

「そーーっれ!」

 

ゴール手前まで来たところで三玖が私にボールをパスしてきて、私が一気にゴールにシュートを決める。ボールは見事ゴールして、監督のチームに1点取った。結構幸先のいいスタートを切ったと思うよ。私たちがチームのみんな、姉妹のみんなでハイタッチしてると、遠くでお絵描き爺さんが私たちのことを描いてるのを見つけた。私たちが手を振ると、お絵描き爺さんも手を振ってくれた。その後私たちは次の立ち位置に移動して、試合を再開させた。

 

♡♡♡♡♡♡

 

制限時間の笛が鳴って練習試合は終了した。勝負の結果は監督のチームの大勝利。勝因はやっぱり私たちにあるみたい。練習試合に勝った監督は嬉しそうに笑ってるよ。

 

「ははははは!今日もお前たちのおかげで大勝利だ!!六つ子の以心伝心が如き息の合ったコンビネーションは見事!相手のマークを混乱させるおまけつきだ!」

 

「もー、これで何回目?私たちそんなに運動得意じゃないんだけど・・・」

 

監督のこの解説ももう何回も聞いたし、運動も得意じゃないから正直言って、疲れたよ・・・。

 

「いやいや、そう謙遜するな!お前たちは本当にうまくなってきているぞ!特に四葉!お前が1番の成長株だ!」

 

「え?私?」

 

私が1番の成長株?私としてはそんな実感は湧いてこないんだけどなぁ・・・。

 

「本当かなー?」

 

「監督のことだから嘘かもしれないよ?」

 

「そうそう、六つ子だからそんなはずないって」

 

「ヘボ監督、適当なこと言わないでよー」

 

「いいや!俺の目に狂いはない!これでも人を見る目には自信がある!」

 

姉妹たちは私と同じ意見だったけど、監督は確信しているみたいな顔でそう断言してる。

 

「お前らも四葉をお手本にしてしっかり練習するんだぞ!」

 

「!お手本・・・かぁ・・・」

 

私が姉妹のみんなを引っ張って、姉妹を導くようなお手本、みたいな感じかな?なんかそれ・・・いい響きかも・・・嫌いじゃないな・・・。

 

「もう!私たちはサッカーに興味ないって言ってるじゃん!試合終わったなら早く行こ!お店閉まっちゃうよ!」

 

「なんだ?今日は買い物に行く予定だったのか?」

 

「うん。お母さんにプレゼントをあげるんだ」

 

「おお!あの美人のお母様か!」

 

私たちがお母さんの話を出すと、監督はわかりやすくいい反応をしている。お母さん、みんなに人気だからね。当然の反応だよ。

 

「病気が治ったお祝いなんだー」

 

「この日のために6人でお小遣い貯めたんだよねー」

 

「本当、誕生日の時は絵をあげて正解だったね」

 

「うんうん。おかげでお金、結構たまったもんねー」

 

「そ、それはよかった・・・」

 

お母さんの病気が治った知らせを聞いて、監督は安心したかのように笑ってる。私たちもお母さんの病気が治って嬉しいよ。

 

「俺も何か差し上げたいな・・・。そうだ君たち、確かお父さんはいなかったよね?お父さんはいらないかい?」

 

監督ってば、変なこと言っちゃってるよ・・・。

 

「あはは、ダメだよ」

 

「だってお母さん、最近よく男の人と会ってるから」

 

「!!!!」ガーン!!!

 

「若い人だったよね」

 

「病院の先生だっけ?」

 

「確か、お母さんの病気を見てくれてたよね」

 

お母さんは最近病院の先生と会ってて、よく話をしてたから・・・再婚するとしたら多分、その人となるんじゃないかな?だから監督とは不釣り合いなんだよね。

 

「くっそーーー!!!!やはり知性と経済力がいいというのかちくしょう!!!!こんなことならもっと勉強しておけばよかった!!!!」

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 

監督はわかりやすく落ち込んでるよ。知性とかっていう問題じゃないと思うけどね・・・。

 

「・・・じゃ、そういうことで・・・」

 

「とはいえ、今回は何にする~?」

 

「うーん・・・」

 

「どうせなら6人で買えそうなものがいいよね」

 

「それならお花!花束にしようよ!お花屋さんにしゅっぱーつ!」

 

「もー、一花は強引だなー」

 

プレゼントはどうするか悩んでると、一花の強引さでお母さんにプレゼントする者はお花に決まったよ。本当、一花ってばいっつもこうなんだからなー。

 

「じゃあ100本のバラとかどう?」

 

「バラには棘があったし、やめた方がいいんじゃない?」

 

「そういえば、母親にはカーネーションがいいって聞いたことがある!」

 

「カーネーションかー・・・いいかも!」

 

「それならあの無表情のお母さんも笑ってくれるかも。四葉、いくらあったっけ」

 

「えーっと・・・」

 

お花を買うためのお金はどれくらいあったかな・・・て、あれ・・・?・・・ない。私のお財布が・・・ポケットの中にない。

 

「お財布・・・どこやったっけ・・・?」

 

「「「「「え?」」」」」

 

も・・・もしかして・・・着替えてた際に落としちゃった・・・?ど、どうしよう・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

お財布を落としてしまった私はユニフォームに着替えて落としたであろう草むらでくまなくお財布を探している。みんなも捜してくれてるし、監督も捜してくれているから申し訳なく感じるよ。

 

「そっち見つかったー?」

 

「こっちはないみたいだよ」

 

「サッカーの前まであったならこの辺りだけど・・・」

 

「私、もっと奥捜してくる!」

 

「五月、そっち見つかったー?」

 

「・・・え?う、ううん、見つからないー」

 

でも、どこを探してもお財布は見つからなかった。・・・ど・・・どうしよう・・・私のせいだどうしよう・・・。せっかくみんなで溜めたお金なのに・・・!

 

「・・・あ」

 

必死にお財布を探していると、草むらの奥でひっそりと咲きほこっている綺麗なお花を見つけた。

 

「・・・きれいだな・・・」

 

まだお財布をあきらめたわけじゃないけど・・・万が一のために一輪のだけでも持って行こうかな・・・。

 

「ダメー、見つかんないー。そっちはー?」

 

「こっちも全然ー」

 

そ、それよりも今はお財布!早く見つけなきゃ・・・!

 

♡♡♡♡♡♡

 

草むらをくまなく探してみたけど、結局見つからなかった・・・。監督が言うには、たまたま通りかかった人がもう持って行ってしまったのかもしれないって言ってた。うぅ・・・もしそうなら・・・私のせいだ・・・。

 

「ごめんみんな・・・私のせいで・・・」

 

申し訳なくなって、私は姉妹のみんなに謝った。

 

「四葉のせいじゃないよね」

 

「誰が持っててもなくしてたんだよ、きっと」

 

「うん。だからもう気にしなくてもいいんだよ」

 

「誰かの失敗も、私たちで6等分だからね!」

 

「み・・・皆ぁ・・・ごめーん・・・」

 

みんなの思いやりが申し訳なく思うと同時に、嬉しくも思う。

 

「くっ・・・美しき姉妹愛・・・本当、最高だぜ・・・。よし!こうなったら俺が金を出してやる!それで花でも何でも買って来い!」

 

「そ、そんな・・・いくらヘボ監督でも悪いよ・・・」

 

監督はそんな私たちの姿に感動したのかお金を払ってくれるって言ってくれた。一緒に探してくれただけでもありがたいのに、悪いよ・・・あ、そうだ。あれがあったんだった。

 

「あ、それでね・・・代わりってわけじゃないんだけど・・・そこできれいなお花を見つけたんだ。これをお母さんにって・・・どうかな・・・?」

 

私がさっきそこで見つけてきたお花をみんなに見せてそう提案する。お花を見たみんなはお互いに顔を見合わせてる。・・・やっぱり、ダメ・・・かな・・・。

 

「・・・四葉・・・」

 

「あ・・・ごめん。やっぱり、こんなのじゃダメ・・・だよね・・・」

 

「・・・四葉、これを見て」

 

「!それ・・・」

 

二乃が・・・ううん、みんなが取り出したのは今私が持っているお花と全く同じものだった。

 

「私たちも見つけてたんだ、そのお花」

 

「せっかくだし、この6つのお花で花束を作ろうよ!」

 

「やっぱり私たちって、六つ子だねー」

 

「みんな・・・うん!そうしよう!」

 

みんなが私のお花と同じものを、そして、みんなが私と同じ意見を持っていたことで、私はとっても気持ちが軽くなったし、嬉しい気持ちにもなった。監督もそんな私たちを見てうんうんと首を縦に頷いて笑っている。こうしていると、本当に常々思えてくる。

 

ああ・・・私たち、一卵性の六つ子で本当によかったって。

 

♡♡♡♡♡♡

 

私たちはさっそく自分たちが住んでるアパートに戻って、花束を作ったよ。お母さん、喜んでくれるかな。

 

「そろそろ帰ってくるよ。みんな、準備はいい?」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

せっかくだからサプライズにしようっていう一花のアイデアに賛同した私たちは、お母さんを驚かせようと思って部屋の電気を消して、誰もいないような雰囲気を作ったよ。お母さん、きっと驚くぞー。

 

ガチャッ

 

「帰りました」

 

あ!帰って来た!でもこれはサプライズだから誰も返事はしないよ。

 

「・・・?帰りました。いないのですか?」

 

お母さんが部屋に入ったところで、私たちは部屋の電気をつけて・・・

 

「「「お母さん!!退院おめでとう!!」」」

 

「「「元気になってよかったね!!」」」

 

「!」

 

お母さんに感謝の言葉と一緒に私たち特製の花束を贈った。

 

「見てー、これみんなで集めたんだー」

 

「今日もお仕事お疲れ様」

 

「いつもありがとう!」

 

「・・・・・・」

 

私たちがお花の贈り物を送っても、お母さんはいつも通りの無表情。何も反応してくれない。

 

「・・・あれ?止まっちゃった」

 

「お母さーん?もしもーし?」

 

「やっぱり、これじゃあダメだったんじゃ・・・」

 

ぎゅっ・・・

 

「「「「「「あ・・・」」」」」」

 

お花の贈り物はダメと思った時、お母さんはしゃがみこんで私たちをぎゅっと抱きしめてきた。

 

「私にとってはあなたたち6人が健康に過ごしてくれるのが何よりかけがえのない幸せです」

 

「「「「「「お母さん・・・」」」」」」

 

「こちらこそ、ありがとう」

 

お母さんは私たちに向かって微笑んでくれた。こうしてぎゅっと抱きしめてくれているお母さんのぬくもりは、何よりも温かかった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから時が経って6月、今日は私たちの学校の修学旅行。お母さんは私たちの見送りのために来てくれているよ。私と二乃と三玖はもうすでに改札口を通り越して、残るは一花と五月と六海だけ。

 

「ううぅぅぅ~・・・」ぎゅ~・・・

 

だけど五月だけはお母さんからぎゅーって抱き着いて放そうとしていない。そんな五月に私はかわいいって思ったよ。けどそうも言ってられないのも事実だよ。

 

「五月!いつまでくっついてるの!」

 

「早くしないと修学旅行に置いてかれちゃうよ!」

 

「だって~・・・」

 

「もう・・・六海、引っ張ってあげて」

 

「ほら五月!早くお母さんから放れて!行くよ!」

 

お母さんに引っ付きっぱなしの五月を六海が引っ張って引きはがした。

 

「うぅ~・・・六海はお母さんと離れて寂しくないの?」

 

「お母さんと離れるのが嫌なのはみんな一緒!駄々をこねない!」

 

「だって・・・だってぇ~・・・」

 

「もう!あんまりしつこいと怒るよ!」

 

「うぅ~・・・怒られるのやだ~・・・」

 

五月ってば、怒りんぼうの六海に説教されてる・・・これじゃあどっちが姉でどっちが妹なのかわかんなくなっちゃうね。

 

「ん?あれって・・・」

 

そんな様子を改札口から見ていると、男の人がお母さんに近づいてきているのを見つけた。しかもあの人・・・お母さんを見てくれていた病院の先生だ。まだ改札口にいる3人も気づいたみたい。

 

「あ、あの人、またいるよ」

 

「ああ、お医者さんの」

 

「お母さん、あの人は・・・」

 

「そうですね・・・いずれ紹介しますが・・・あえて言うなら・・・私のファン・・・らしいです」

 

あの男の人の事を話しているお母さんのその顔は・・・今までに見たことがような笑みを浮かべていた。・・・無表情のお母さんでも、あんな顔、するんだ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『ハプニング発生!』

 

修学旅行先である京都に辿り着いた六つ子たちは6人で京都の街を見て回っている。そんな中で、六つ子たちはこんな会話をしている。

 

「お母さんのあんな顔、初めて見たね」

 

「うん。やっぱり彼氏なのかな」

 

「あれを見たら可能性大だね」

 

「お父さんかー、どんな人だろう?」

 

「気が早くない?」

 

零奈と話していた男が再婚相手と踏んでいる六つ子たちは零奈と話していた男がどんな相手なのかと気になっていた。

 

「!一花前!」

 

「え?」

 

ゴチンッ!

 

「「わっ!」」

 

余所見をして歩いていた一花は黒髪の少女とぶつかってしまう。年は見たところ、六つ子と同じくらいだろう。

 

「一花、大丈夫⁉」

 

「あてて・・・ぶつかってごめんなさい」

 

「いえ、こちらこそ不注意でした。すみません」

 

お互いに謝り終えたら、一花は六つ子たちの元へと、少女は同じ学校のグループであろう男女の元へと向かっていく。

 

「他の修学旅行の子かなー?」

 

「さすがに混んでるね」

 

「迷子になっちゃいそうだね」

 

「逸れないように手を繋ご」

 

六つ子たちは1人でも迷子にならないように手を繋ぎ始めた。

 

「はい、四葉も・・・て・・・あれ?四葉は・・・?」

 

「「「「え?」」」」

 

五月が四葉に手を繋ごうと思ったら、その四葉がいつの間にかいなくなっていた。言った傍から四葉が迷子になってしまうというハプニングが起きてしまった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

・・・えらいことになってしまった・・・。さっきまでみんなと一緒にいたんだけど・・・人混みに巻き込まれて、私だけみんなと離れちゃった・・・。つまり今は絶賛迷子中です。早くみんなのところに戻ろうと思っても、全然見覚えのないところにたどり着いちゃう・・・。みんな絶対私のことを心配しているよ・・・。早く見つけないと私だけ取り残されちゃうよ・・・。私たちは6人一緒じゃなきゃいけないのに・・・。

 

・・・・・・。でも・・・本当にそうなのかな・・・?みんなのところに戻った方が、いいんだよね・・・?でも・・・6人一緒でいなきゃって、誰かに決められたわけでもないし・・・。

 

・・・って!ダメダメ!こんなことを考えちゃ!早くみんなと合流しないと!そう思って悪いことを振り払おうと思った時、下の階段で大きいカメラを持った私と同年代くらいの金髪の男の子がいた。あの子・・・1人で旅行してるのかな?なんだか・・・いいなあ・・・自由な感じがして・・・。

 

「あーあ・・・あの男の子みたいに1人旅できる勇気があればなー・・・」

 

・・・と、いけない!またいけないことを口走ってた!早くみんなのところへ行かないと・・・。そう思ってこの場を離れようとした時、あの男の子が変なおばさんに絡まれてきた。こっからじゃ声は聞こえないけど・・・場の雰囲気からして、かなり揉めてるみたい・・・あ!近くにいた警察を呼んじゃった!ど、どうしよう・・・すごい現場を目撃しちゃった・・・。・・・早くみんなのところへ戻らないと・・・とは思うんだけど・・・なんでだろう・・・あの子の背中を見ていると・・・なんだか寂しさが伝わってくる。なんだか放ってはおけなくって、私は階段から降りて、あの男の近くまで向かった。

 

「その人は無実だよ」

 

揉め合ってた現場まで辿り着いて、私は警察の人たちにそう言った。

 

「私、見てたもん」

 

私の言葉に警察の人や変なおばさん、そして金髪の男の子は私の方に視線を向けた。

 

「・・・お前・・・誰だ?」

 

私は男の子の問いかけには答えず、彼に近づいてその手を取って、その場から逃げる。

 

「さ、早く行こうよ!」

 

「ちょ・・・おま・・・何すんだ・・・どこに行くんだよ!!おい!!」

 

「!!!??ちょっとぉ!!!逃げる気!!?」

 

「お、奥さん、落ち着いて・・・」

 

「こ、こら!待ちなさい君たち!」

 

おばさんと警察の人の声が聞こえてきたけどそんなの知らんぷりだよ。早くこの場から離れなくちゃね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「いい加減・・・その手を放せっての!!」

 

警察化の人から撒くことができた後、私が助けた男の子は私の手を振りほどいた。

 

「勝手なことしやがって・・・てかお前本当に誰だよ?」

 

「もー、せっかく助けてあげたのに、その言い方はないと思うなー」

 

「助けてくれなんて頼んでねぇよ」

 

男の子は私にお礼を言わずにどこかへと行こうとしている。近くにいるたび、彼から寂しさがだんだんと伝わってきている。なんだか・・・放っておけないな。それに・・・なんだか、彼に興味が湧いてきちゃった。

 

「どこに行くの?よかったら一緒に京都回ろうよ」

 

「嫌だね。こっちは連れを探してんだよ」

 

連れの人?もしかして、彼も修学旅行だったのかな。だったらなおさら一緒にいて探してあげた方がいいよね。

 

「じゃあ一緒に探そうよ!」

 

「は?」

 

「清水寺の天辺なら、見つかるかもしれないよ!ほら、行こ行こ!」

 

「ちょ・・・おま・・・ま、またか!」

 

私はまた男の子の手を取って、今度はすぐ近くにあった清水寺の中へと入って天辺へと登っていくよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

清水寺の天辺まで辿り着いた私たちはそこから見える京都の景色を眺めていた。絶賛迷子だからか、京都ってこんなに広いんだなぁって余計に実感しちゃうよ。

 

「わー・・・きれいだねー」

 

「あー、そーだな」

 

「あ!ほら見てみて!さっきまでいた京都駅まで見えるよ!すごーい!」

 

「うわ!マジかよ!すげー!」

 

私が絶景を眺めていると、男の子は持っていたカメラを取り出してこの風景を撮ろうとしてるのに気が付いた。

 

「えへへ、ピースピース♪」

 

「・・・・・・」

 

私がカメラのレンズに向かってピースしてると、男の子は持っていたカメラを急にしまいだした。

 

「え?撮らないの?撮ってほしいのにー」

 

「もういいだろ。ついてくるなよ」

 

「あー!待ってよー!」

 

男の子は1人になりたがってるのかそんな冷たいことを言いだしてどこかへと行こうとしている。彼を放っておけない気持ちになってる私はそんな彼についていく。それと同時に、お土産屋さんを見つけた。上にもあったんだ。あ、お守りも売ってる。

 

「わーっ!お守りだって!ねぇねぇ、買っていこうよ!」

 

「なんでついてくるんだよ!さっさとどっか行け!」

 

「人を探してるんでしょ?私もなんだー」

 

「1人でできる!他を当たってくれ!」

 

「他じゃダメだよ」

 

「は?」

 

彼を放っておくことができない私が言った言葉に男の子はきょとんした表情になってる。

 

「お互い1人で寂しい者同士、仲良くしようよ。私には・・・君が必要だもん!」

 

「・・・!」

 

1人でいる彼に対する同情心、好奇心があるから言ったわけじゃないよ。ただ・・・どうしてか知らないけど・・・私には彼が必要・・・心からそう思えてくるんだ。

 

「・・・・・・買うならさっさとしろよ。俺はいらないから」

 

「え?待っててくれるの?」

 

「どうせついてくるんだろ?だから何やったって無駄だっての」

 

「わー、ありがとー。どれにしよっかなー」

 

彼のお言葉に甘えて、私は売ってあるお守りをじっくり見てみる。んー・・・どんなお守りだったらみんな喜ぶかなぁ?どうせだったらとってもご利益がありそうなものがいいな・・・。私が悩んでいると、小さな巻物みたいなのを見つけた。

 

「巻物だー」

 

「ん?これ・・・学業のお守りって書いてあるな」

 

「学業かー」

 

私たち六つ子は勉強はからっきしでダメダメなんだよねー。もしこれのご利益があるのなら、みんなの成績もアップするかな?

 

『お前らも四葉をお手本にしてしっかり練習するんだぞ!』

 

そこまで考えると、先日監督が言った言葉を思い出した。・・・うん、そうだよね。誰かがお手本にならなきゃ、みんな成長しないよね。私が・・・みんなのお手本になるんだ。

 

「じゃあ、これにしよ!すみませーん!このお守り6つくださーい!」

 

「はいよ!」

 

「お前・・・6つとも全部学業守りって・・・そんなに買っても意味ねーだろ」

 

「うん?これはね・・・うーんとね・・・6倍頑張ろうってこと!私はみんなのお手本になるんだ!」

 

「・・・そうかよ」

 

みんな・・・喜んでくれるかな。・・・喜んでくれるよね。私たち、六つ子だからね。

 

「買ったならもう行くぞ。お互い連れを探さないと怒られちまう」

 

「あ、ねぇねぇ、本当に写真、撮って行かないの?」

 

「はあ?」

 

私の言った言葉に彼は何言ってるんだ?みたいな顔になってる。

 

「お前、何言ってんだ?」

 

「だってせっかく京都に来たんだよ?一緒に撮ろうよ!こうして君と出会えた記念としてさ!」

 

「・・・しょうがねぇなぁ・・・」

 

「やった!」

 

私のわがままに彼は頭をかきながら承諾してくれた。彼って結構優しい子だね。・・・あー、でも、いつまでも君呼ばわりじゃ気分悪いよね。

 

「そういえば、君の名前」

 

「え?」

 

「君の名前はなんて言うの?」

 

私の質問に彼はため息をこぼした。

 

「はぁ・・・。・・・風太郎。上杉風太郎。これで満足か?」

 

「風太郎君かー。いい名前だね!」

 

彼・・・上杉風太郎君の名前を私が純粋に褒めると、ちょっと照れたようなしぐさを見せてる。ふふ、かわいいなぁ。

 

「そ、そんなことはいいからほら!写真撮るぞ!そこ並べ!」

 

「はーい」

 

照れ隠しするかのように風太郎君はカメラを取り出して、撮影の準備を始める。準備を終えたら、一緒に並んで写真を撮った。迷子になっちゃって、どうしたもんかと悩んだけど・・・これはこれで、悪くないかも♪

 

♡♡♡♡♡♡

 

風太郎君と一緒に人を探しながら京都をいろいろ見て回っているうちに、もうすっかり夜になっちゃった・・・。時間が経つのはあっという間だなぁって感じちゃったよ。

 

「暗い・・・すっかり遅くなっちゃったね」

 

「げ・・・もう夜になってるじゃねーか・・・。お前が変に連れ回すからこんな時間に・・・」

 

「えー?風太郎君も結構ノリノリだったと思うよ?」

 

「それはだな・・・て、もういいや。言いあってても仕方ねーしな。お前、携帯持ってないよな?」

 

「うん・・・先生たち、探してくれるかもしれないね」

 

というより、探してるんだろうね。修学旅行の日に迷子になっちゃってるからね。幸い、今日が初日だったから不幸中の幸いだけどね。最終日に迷子になっちゃったらどうなってたことか・・・。

 

「とりあえずバスに乗るか。早く駅に行かねぇと」

 

「うん、そうだね」

 

えーっと、バスに乗るにはいくらほどかかったかなぁ・・・ちょっとお財布の中を確認してっと・・・あ・・・しまったなぁ・・・。

 

「どうした?」

 

「え、えーっと・・・お昼に買ったお守りで全財産使っちゃったかもしれない・・・」

 

「おま・・・バカか!!アホみたいに6個も買うからそうなんだろうが!!それくらい考えて買えよ!!」

 

「あはは・・・やってしまったなぁ・・・」

 

まぁ、やってしまったものはしょうがないしょうがない。こういう時こそ、プラス思考でいかなきゃね。

 

「たく・・・言っておくが俺の手持ちは300円しかないぞ。2人分は足りないし、貸す余裕なんてないからな」

 

「うん、わかってるよ」

 

バス代にまで風太郎君に迷惑をかけるわけにはいかないからね。そこはちゃんとわかってるよ。でも・・・あーあ、もうここで風太郎君とお別れかぁ・・・寂しくなっちゃうね。でも、仕方ないよね。

 

「じゃあ、気を付けて・・・」

 

ちゃりーん

 

・・・え!!?今、風太郎君何したの!!?バス代のお金を・・・お賽銭箱に・・・

 

「あ、やべ、落としちまった」

 

「え・・・あの・・・ちょっと・・・」

 

「・・・俺んち、貧乏でさ。毎回もらえる小遣いは5円か10円くらいなんだよ。こんな金じゃ駄菓子しか買えねぇから、ケチくせぇよな」

 

「そうじゃなくて・・・」

 

「・・・あ、よく考えたら今の金で電話すればよかった・・・。人の事言えねぇな・・・」

 

な、なんなの?この男の子・・・。今のって、絶対わざとお賽銭箱に入れたよね・・・。全財産なのに・・・普通そんなことしないのに・・・本当、おかしい男の子。

 

「・・・ま、いっか。待ってれば誰か見つけてくれるだろう」

 

いいのかなぁ・・・それで・・・。・・・それより、さっき風太郎君、貧乏って言った?お小遣いも思うようにもらえない日々・・・私たちの環境と同じだ・・・。

 

「・・・ねぇ、風太郎君。風太郎君は・・・お金がなくても、辛くないの?」

 

「?急になんだ?どう言う意味だ、それ?」

 

同じ貧乏という環境の中にいるからかな。私は自分たちの生活環境を風太郎君に話した。

 

「うちもそうなんだよね。家族のためにお母さんが1人で働いてくれるの」

 

「ふーん」

 

「私は、お金がなくても辛くはない。でも、私たちのために働いてくれるお母さんを見てると辛くなってくるの」

 

「うちも似たようなもんだ。そりゃ金持ちの家だったらいいに越したことはねぇが、生まれたのは貧乏の環境だ。これは覆らないし、しょうがねーだろ」

 

「そうだね。でも・・・たまに思うんだ。自分がいなきゃ、もっとお母さんは楽になれたんじゃないかって」

 

「!お前・・・」

 

そんな環境で生まれてしまったのは変えられないし、どうにもならないし。だからかな・・・たまにこんなことを思ってしまうのは。でも・・・だからこそ、今の環境を大きく変えることはできる道を、生まれてきた意味を探さなきゃいけないと思うの。

 

「だから決めたの。これからたくさん勉強して、うーんと賢くなって、とびっきり大きいお給料をもらえる会社に入ってお母さんを楽させてあげるの!そしたらきっと、私がいることに意味ができると思うんだ」

 

きっと大変な道のりになるだろうとは思う。けど、だからこそ、賢くならなきゃいけない。姉妹のお手本となるためにも・・・そして何より、お母さんのためにも。

 

「・・・すっげぇ。お前・・・大人だな」

 

「え?」

 

私が・・・大人・・・?

 

「俺、自分が子供だからって全部に諦めてた!今の環境とか、立場とか、何もかも全部、諦めてた!」

 

「ふ、風太郎君?」

 

「でも、自分が変わって自分で今の環境を変えればいい!!お前の言ってるのって、そういうことだよな!!」

 

「ま・・・まぁ・・・そういうことだね・・・はは・・・なんか照れちゃうね・・・」

 

男の子にこんな風に褒められたことって初めてだから・・・なんだか照れちゃうよ・・・ははは・・・。

 

「俺、妹がいるんだ」

 

「妹さん?」

 

「おう。まだ小学生に入りたての年の離れた妹が。俺もこれからめっちゃ勉強して、めっちゃ頭よくなって、めっちゃ金稼げるようになったら、妹に不自由のない暮らしをさせてやれるかもしれねぇ。もしかしたら・・・必要ある人間に、なれるかもしれねぇ!」

 

必要ある人間に・・・なれる・・・。風太郎君から出てきたその言葉、何よりも輝ていて・・・眩しくて・・・私の中に希望が生まれた。もしかしたら・・・私が頑張ったら、誰からも必要となる人間に、なれるかもしれない。

 

「一緒に頑張ろう!!2人で!!」

 

「お?」

 

風太郎君の言葉に感動した私は思わず風太郎君の手を握っていた。

 

「私はお母さんのために、風太郎君は妹さんのために・・・一生懸命勉強しよう!!それで・・・今の環境を変えるんだ!!」

 

「ああ!!」

 

「約束だよ!」

 

私と風太郎君は、1つの約束をして、お互いに笑いあった。何よりもかけがえのない・・・大切なものができた気分だよ。

 

「そういや、さっきの300円分の願い事がまだだったな。ご利益が消えないうちに、俺とお前で150円ずつで神様に頼んでおこうぜ。いつか、万札を入れられる大人になれるようにな」

 

「うん!」

 

私と風太郎君はさっき風太郎君が入れた300円分のお願いを事を2人で心の中でお祈りをした。ちらっと風太郎君がお祈りしてる姿を見つめたりもしたよ。ああ・・・なんだか私・・・今とっても幸せな気持ちになってるかも・・・。

 

「ねぇねぇ、なんてお願いしたの?」

 

「こういうのは言っちゃダメなんだぞ」

 

「えー、残念」

 

神様にお祈りした後、私と風太郎君はお互いに笑いあいながら話し合った。すると・・・

 

カッ!

 

「「わっ⁉」」

 

懐中電灯の光が私たちを照らし出した。

 

「な、なんだなんだ!!?」

 

「・・・あ・・・」

 

私たちを照らしてくれた人には、私はすごく見覚えがあった。というか、今日の改札口のところで見た。だってその人は・・・

 

「四葉君。こんな所で何をしているんだい?」

 

その人はお母さんの病気を治そうと頑張ってくれた・・・毎回お母さんに会いに来た病院の先生だったから。

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの後私は病院の先生の車に乗せてもらって、私たちが泊まる旅館まで送ってもらった。旅館の中でようやく合流できた姉妹たちは安心した表情を浮かべていた。もちろん、学校の先生には怒られたよ。そして、私と一緒にいた風太郎君は旅館で風太郎君の学校の先生が来るまで大広間で待つことになったんだ。まだもうちょっとだけいられることができるから、先生と合流する前に会う約束をしたんだ。その約束をしてから少し時間が経って、私は二乃と六海と一緒に廊下を歩いてる。

 

「え?あの人わざわざここまで捜しに来てくれたの?」

 

「うん。学校から連絡もらったお母さんが相談したみたい」

 

「そうなんだ。おかげで四葉とその男の子・・・上杉君が見つかってよかったよ。心配したんだから」

 

「ごめんね、二乃、六海」

 

あの時は本当に驚いちゃった。まさかあの人が京都までわざわざ来てくれるなんて想像すらしてなかったんだから。

 

「まだこの旅館にいるんでしょ?その風なんとか君・・・なんだかめんどくさいし、風君でいっか!」

 

「うん!学校の先生が迎えに来るまでにもう1度会いに行くんだ!2人も一緒にどう?」

 

「えー・・・私はいいよ・・・」

 

「せっかくだけど、私も遠慮しとくよ。お邪魔だと思うし」

 

「えー、すっごく面白いのになー」

 

「そんなに面白い子なの?」

 

「うん!すっごく!あのね、聞いて聞いて」

 

私は2人にここまで来るまでの経緯、そして風太郎君がどんな人なのかって言うのを話した。多分今の私、すっごく嬉々とした顔をしてると思う。

 

「それで、300円を入れて、何て言ったと思う?落としちまったって!」

 

「はは、何それ!面白ーい!」

 

「でしょー?」

 

「四葉・・・」

 

あっと、もうすぐで大広間についちゃうね。風太郎君、私たちを見たらどんな顔をするかな?きっと驚くだろうなぁ・・・。そう思いながら大広間へ行くと・・・見たくはない光景を見てしまった。

 

「え・・・」

 

「?四葉?」

 

「どうしたの?」

 

「・・・あれ・・・」

 

私が見てしまったものは・・・私と会う約束をした風太郎君。その風太郎君が・・・一花と楽しそうに話をしている姿だった。・・・どうして?なんで一花が?なんで風太郎君が一花と話しているの?その子は・・・私じゃないんだよ?どうして・・・?

 

「あれって・・・一花?」

 

「隣は・・・あれが例の上杉君なの?・・・四葉?」

 

この時、この瞬間から、六つ子である私たち・・・何もかもがそっくりということが・・・何よりも・・・嫌いになってしまった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

修学旅行が終わってから、あれから考えた。どうすれば相手に姉妹と間違われないようになるのかと。考えに考えて、私は結論に達した。六つ子という事実を変えられないのなら、自分を変えればいい。そこまでに至った私は、姉妹の誰よりも勉強して、努力した。そう甲斐あって、この前のテストでは、私が1番になった。この私が。私はもう・・・みんなと同じなんかじゃない。それでも・・・六つ子であると、誰かが他の姉妹と間違えられるのは避けられない。だからこそ私は、家族旅行の日・・・

 

「お母さん・・・本当に病気治ったのかな・・・」

 

「修学旅行から帰ってからずっと体調崩してるよね」

 

「心配だよね・・・」

 

「四葉、髪乾かした?ドライヤー貸して」

 

みんなには内緒で手に入れた、ウサギ耳みたいにぴょこんとしたリボンをつけるようになったんだ。これなら私が四葉だって特徴にもなるし、誰も間違えたりなんかしない。このリボンを見たみんなには当然ながら驚いてる。

 

「え!何そのリボン!」

 

「へへー、かわいいでしょ」

 

これで私は・・・姉妹とは別の場所に立った。もう、同じと言われ続ける私じゃない。同じはもう嫌だ。私が・・・1番なんだ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

おじいちゃんが経営する旅館から出て、帰宅するための船の上、姉妹のみんなは私から離れた場所で遊んでる。私も遊びには誘われたけど・・・私はそれを断った。だから私はただ1人、船から見える景色を眺めてる。

 

「四葉、そのリボン、似合っていますね」

 

私が海を眺めていると、お母さんが声をかけに来てくれた。

 

「ありがと・・・これならもう、みんなと間違えられないよね」

 

「さぁ、それはどうでしょう?」

 

「!」

 

「何を身につけているかなんて、たいした差ではありませんからね」

 

お母さんから放たれる言葉に、私は本気で焦った。私のこれまでのことを、否定されたかのような・・・そんな気分になるから。

 

「それだけじゃないよ!私、みんなより勉強して・・・この前のテストでも1番だったんだよ!」

 

「・・・・・・」

 

「勝ってるんだよ、私は・・・。私はもう、みんなと同じ場所にはいない・・・そっくりなんかじゃない」

 

そうだ・・・私は1番なんだ・・・みんなとは違う存在になったんだ・・・私は・・・間違ってなんかない・・・。

 

「お母さーん、見てみてー」

 

お母さんに声をかけてきた五月の頭には、星形の髪飾りが両サイドつけていた。

 

「あら、かわいいですね」

 

「えへへ―四葉を真似して私もつけてみたんだー」

 

リボンとは違うけれど・・・私は五月のその真似をし、追いかけようととするその行為が、気に食わなくて仕方なかった。

 

「ねぇねぇ、お母さんお母さん」

 

「あら六海、どうしましたか?」

 

「おじいちゃんからもらったおやつ、食べてもいい?」

 

「ええ、いいですよ。みんなに分けてあげてください」

 

「はーい。えへへ、やった」

 

こっちに近づいて来た六海はお母さんの許可を得た後、饅頭の箱を開けて1個を自分の口の中に運んだ。

 

「はい、五月の分」

 

「わー、ありがとー」

 

「もちろん、四葉の分も、はい」

 

「・・・・・・」

 

六海は饅頭を五月に、そして私にも渡してきた。五月は素直に受け取ったけど・・・私は、そういう気分になれなかった。これを受け取ったら、みんなと同じになるんじゃないかって思えて。

 

「・・・?四葉?」

 

「四葉、六海が困っていますよ」

 

「・・・・・・」

 

お母さんにそう言われて、私は仕方なくその饅頭を受け取った。饅頭を受け取った際、六海はにっこりと微笑んでる。

 

「おーい!みんなも饅頭食べなよー!おいしいよー!」

 

六海は饅頭を持って他の姉妹のところへと向かっていった。五月は残ってお母さんをぎゅっと抱きしめてる。

 

「・・・四葉」

 

「!」

 

「あなたの努力は素晴らしく、間違ってるものは何もありません。ですが、1番に拘らずとも、あなたたちは1人1人、特別です」

 

「・・・・・・」

 

「親として、あなたたちは6姉妹一緒にいてほしいと願っています。たとえ、どんなことがあったとしても・・・」

 

今の私には、お母さんの言っている意味が理解できなかった。ううん・・・したくないんだと思う。

 

「1番大切なのはどこにいるかなどではなく・・・6人で一緒にいること、です」

 

この言葉が、私にとって、最後の言葉になるだなんて、この時の私は、考えもしなかっただろうね・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

家族旅行から数日後・・・お母さんは・・・病気で・・・命を落として、亡くなってしまった。今夜は、お母さんのお通夜が私たちのアパートで、開かれた。

 

「「「「「うわあああぁぁぁん!!!」」」」」

 

私たちはこの日は泣いた。あんなに大好きだったお母さんが・・・突然私たちの前からいなくなってしまった。誰もが、悲しくないわけがないよ。

 

「お母さぁぁん!」

 

「うっ・・・うぅ・・・」

 

「やっぱり・・・体調よくなってなかったんじゃん・・・」

 

「もう・・・会うこともできないんだね・・・もういないから・・・」

 

「・・・いるよ」

 

私を含めた姉妹たちが悲しんでいると、ずっと壁の隅っこにいた五月が言葉を発した。

 

「いるんだよ・・・お母さんは・・・私たちの中に・・・。これからは私がお母さんに・・・お母さんになります・・・」

 

「五月・・・」

 

五月は私たちに顔を向けることなく、そんなことを言いだした。五月があんな風になるのも無理はない・・・私たち姉妹の中で、五月が1番お母さんのことが、大好きなのだから・・・。そんな五月を一花が心配そうに見ていた。

 

「私たち・・・これからどうなるんだろう・・・」

 

「おじいちゃんの家・・・なのかな・・・?」

 

「全員で行けると思う?」

 

「どういうこと?」

 

「おじいちゃんだって体調悪いのに・・・もしかしたら・・・バラバラに引き取られるかも・・・」

 

「で、でも・・・この街には・・・孤児院もあったはず・・・だよね・・・?」

 

「親戚の人がそれを許すと思う?」

 

「バラバラになるのは嫌だね・・・」

 

私たちはこれからどうなるんだろうと五月を除いた姉妹たちで話し合ってると・・・

 

「失礼するよ」

 

「「「「「!」」」」」

 

私たちの部屋に人が入ってきた。その人は、何度もお母さんに会いに来ていた病院の先生だった。

 

「こうやって君たちと話すのは初めてだね。何度か顔を合わせてるはず。四葉君とは修学旅行以来だね」

 

「あ・・・」

 

病院の先生はお母さんの写真をじっと見つめた後、私たちに視線を向けて、口を開いた。

 

「君たちは、全員揃って僕が責任を持って面倒を見よう」

 

この言葉がきっかけとなって、私たちは病院の先生に引き取られることとなった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

あの人に引き取られてから、私たちはアパートから高級マンションに引っ越し、生活環境が大きく一変した。でも・・・たとえ環境が変わっても、私は勉強を怠ることはしなかった。私が、姉妹の中で1番であると証明させるために。そんな心境を抱えながらも、私たちは、小学校を卒業して、中学校に入学して、中学生になった。今も、お母さんの言葉が頭によぎる。

 

『1番大切なのはどこにいるかなどではなく・・・6人で一緒にいること、です』

 

・・・お母さん・・・私たち、姉妹揃って中学生になったよ。でもね・・・お母さんの願いは、叶わないんだよ。だって・・・6人一緒にいるなんて、無理だもん。

 

私たちはもう・・・一緒ではいられない。

 

46「私と姉妹」

 

つづく




おまけ

六つ子ちゃんはキャラ付けを六等分できない

小学生四葉「もー!私が最初に頭にトレードマークをつけたのにー!」

小学生六海「まぁまぁ、四葉、落ち着いて落ち着いて」

小学生四葉「うぅ~・・・五月、いつの間にその星の髪飾りを買ったの?」

小学生六海「あ・・・えっと・・・これはね・・・」

小学生五月「えへへ、かわいいでしょ?これはね・・・船が出発する前に浜辺で見つけたんだよ」

小学生四葉「え・・・」

小学生六海「五月・・・ヒトデを見つけて取ろうとしたんだけど・・・取れないって言って泣いちゃって・・・あの感触は気持ち悪かったよ・・・」

小学生四葉「そ・・・そっか・・・頑張ったね、六海・・・」

小学生六海「うえぇ~ん・・・四葉ぁ~・・・」

小学生五月「????」

六つ子ちゃんはキャラ付けを六等分できない  おわり

デート回(?)にて、2番目でデートをするのは誰がいい?

  • 一花
  • 二乃
  • 三玖
  • 六海
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