六等分の花嫁   作:先導

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今回の話で長く続いたアンケートを終了させていただきます。アンケートの結果はアカウントがない人のために発表します。見事1番に輝いたのは六海ちゃんです。

ハラハラと楽しみながら経過を見ていましたが、まさか後々から追い上げて、あれほどの差になるとはとは思いませんでしたよw

そういうわけですので、だいたい本編で夏休みの時期に1位から順番にそれぞれのシナリオを書かせていただきます。長引いたアンケートにご協力いただき、ありがとうございました!

あ、後、次回はまだ夏休みには入りませんよ。次回はとっておき・・・いえ、もしかしたらとっておきは2話構成になるかも?何せもしも長ければ2話構成にしようと思っている話だからです。どうなるかは作者の私もわかりませんし、そして、とっておきといえば・・・?


私とある男子

中学生になっても、私のやることは何も変わらない。お母さんがいなくなったとしても・・・いや、いなくなったからこそ、私が姉妹の1番のお手本にならないといけない。そのためにも、毎日勉強して、うんと賢くならないと。それに、風太郎君との約束もあるしね。そんなある日のこと、私の姉妹の1人がある変化が起きた。

 

「えっ!!?一花!!?」

 

「そ、その髪、どうしたの!!?」

 

そう、姉妹の長女である一花の髪がきれいさっぱりに短くなって、きれいに整った短髪になっていたんだ。みんな驚いてるようだけど、私はこれくらいでは驚かない。

 

「ああ、この髪?部活の時邪魔だから切ったんだー」

 

「わー、似合ってますね!」

 

「なんか新鮮」

 

「いつもよりきれいになってるよ、一花」

 

「わぁ、みんなありがとー」

 

「・・・・・・」

 

姉妹はみんな短髪になった一花にべた褒めしているけど、二乃だけはなんだか複雑そうにしている。

 

「私も髪、切ろうかな・・・。二乃はどうする?」

 

「・・・ま、まぁ・・・前髪くらいなら・・・」

 

「六海、私たちも切っちゃいますか?」

 

「嫌だよ。なんで自慢の髪を切らないといけないの?意味わかんない」

 

「で、ですよねー・・・」

 

もう、みんなすっかり髪の話題に入っちゃってるよ。今はそんなことより、やるべきことがあるはずなのに。

 

「ほらほら、おしゃべりはそれくらいにして・・・勉強タイムだよ!ほら、もうすぐ追試でしょ?勉強するよ!」

 

「四葉だってそうでしょ?」

 

私たちは姉妹揃って前のテストがダメな結果だったから追試を言い渡されたんだ。これ以上ダメな成果を残すわけにはいかない。だからこそ、今はこれまで以上の勉強が必要なんだ。

 

「そういえばさ、あの噂知ってる?」

 

「「「「噂?」」」」

 

「うちの学校、赤点には特に厳しいらしくて、追々試まで不合格になっちゃったら一発で退学になるって話だよ」

 

「退学って・・・」

 

「あ、あくまでも噂でしょ?」

 

「そういえば・・・先輩の人が追々試で不合格になって退学したって噂が・・・」

 

「や、やめてくださいよ・・・本当になってしまいそうで怖いです・・・」

 

そう、黒薔薇女子学院は特にそこら辺が厳しくて2回にわたる追試で不合格してしまったら問答無用で退学になってしまうんだ。今回のテストは赤点・・・追試、さらに次の追々試で赤点になってしまったら私たちは・・・。だからこそ、私たちには勉強が必要なんだ。

 

「そうならないためにも勉強するんだよ。ほら、準備して!」

 

「もうダメ・・・私、今回の英語のせいで退学になっちゃうかも・・・」

 

「三玖、弱気にならないで」

 

三玖がものすごく弱きになっている。三玖、英語の点数は私たちより絶望的だったからなぁ・・・。でも、姉妹を導くのも私の使命!しっかりとお手本になってあげないと!

 

「私が教えてあげる!このノートにわかりやすく書いてあるから、お手本にしてみて!」

 

「四葉・・・ありがとう」

 

「お手本って・・・」

 

「監督に言われたことがよほど嬉しかったんだろうね」

 

「そういえば、その頃からだっけ?四葉がお手本になろうとしているのって」

 

「言われてみれば確かに・・・あの時くらいから四葉、変わったよね」

 

他の姉妹が何か言っているようだけど気にする余裕なんてない。私が1番しっかりしないと。私が・・・1番なのだから。

 

♡♡♡♡♡♡

 

追試をなんとか乗り越えてからかなりの日にちが経って、私は次の試験に向けて私はもう勉強するよ。前までやっていたゲームも封印!これで集中して勉強に臨める。それにしても、みんなって本当に緩いよね。みんな友達と過ごしたりしてるし、六海なんかリビングで漫画なんて読んでるし。やれやれ、みんな子供なんだから。

 

「六海、その漫画何?」

 

すると、帰って来た三玖が六海の読んでいた漫画に興味を示してる。

 

「戦国黙示録。姫路さんに勧められたから単行本の1巻が発売されたのを買ってみたんだ」

 

「それって、面白い?」

 

「割と結構面白いよ。読み終わったら三玖も読んでみる?」

 

「そうなんだ。じゃあ、読み終わったら教えて。読んでみる」

 

「うん、わかった」

 

もう、2人とも試験が近いっていうのに。しょうがないなぁ。もしみんなの点数が悪くても、私がみんなの勉強をみてやればいいんだし、それで解決するんだ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

さらに日にちが経って、試験を乗り越え、今日がその返却日。私の元に試験の答案用紙が返って来た。今回の歴史点数は・・・33点。前のテストより順調に点数が上がってきてる。元が悪いせいでまだまだ点数は悪いけど・・・これからもっと頑張ればいいんだ。今日は図書室で勉強しよう。そこでなら少しは集中できそうだし。

 

「六海、借りた漫画すごいよ」

 

ん?あれは・・・六海と三玖?三玖は答案用紙を持ってなんか上機嫌だけど・・・どうしたんだろう?

 

「ああ、戦国黙示録?あれがどうしたの?」

 

「あれのおかげでね、私、歴史のテストで初めてこんな点数を取れちゃった」

 

「おお!だいぶ読み込んでるじゃん!点数46点って!」

 

・・・え?三玖の点数が・・・46点?私より・・・上・・・?勉強なんてしてなかったのに?

 

「お、四葉!三玖ってばすごいよ!46点だってさ!」

 

「えへへ・・・」

 

「・・・そ、そっか・・・よかったね・・・」

 

私に気付いた2人は呑気な顔で話しかけてるけど、今の私の反応は多分・・・ずっと家に戻ってこない無表情とお父さんと同じだと思う。

 

♡♡♡♡♡♡

 

テスト返却日からまた時が経って、私は相も変わらず勉強をしている。でも、あれからは自分の時間を結構削って勉強に集中している。三玖のあの46点・・・あれほどいい点数が取れたなら、もっと頑張れば私だっていい点数・・・いや、それ以上の点数が取ることができるはずだ。もっと・・・もっと頑張らないと・・・たくさん勉強して・・・うんと賢くなって・・・とびきりお給料のもらえるいい会社に入って・・・

 

「・・・風太郎君も、今頃勉強してるのかなぁ・・・」

 

ふと頭によぎったのは京都の修学旅行で出会った風太郎君との約束。あれから風太郎君、がんばってるんだろうか・・・。もう1度、君に会いたいなぁ・・・。うん、彼に負けないように、がんばらないと!いい点数を取って、風太郎君を驚かせてやるんだ!

 

ヴゥー、ヴゥー・・・

 

気合を入れなおしていると、私のスマホから電話が来た。着信者は・・・二乃?どうしたんだろうか。とにかく出てみるか。

 

「もしもし二乃、どうし・・・」

 

≪四葉!!今すぐ病院に来て!!≫

 

二乃の声からして何か慌てているような様子がうかがえる。いったいどうし・・・

 

≪六海が・・・六海が大怪我をして病院に運ばれたって・・・≫

 

「・・・え・・・?」

 

事の事態は、私の思っていた以上にシビアだったみたいだった。事情を知った私はすぐに通話を切って急いで病院に駆け付けに行った。

 

♡♡♡♡♡♡

 

お父さんが医院長を務めている病院に急いで来た私は受付の人に聞いて六海がいるであろう病室に駆け付けた。病室に入るとすでに他の姉妹全員が揃っていて、お父さんもいる。ベッドにはたくさんの絆創膏やガーゼ、包帯が巻かれている六海が静かに眠っていた。

 

「六海・・・」

 

「なんてひどい怪我・・・」

 

誰が見てもわかる重症の怪我を見て、姉妹たちはみんな六海の心配をしている。私だってそう・・・大怪我をして心配しないのは、家族としてどうかと思うし。

 

「命に別状はないが、しばらくは目を覚まさないだろう」

 

「そんな・・・いつ目が覚めるの・・・?」

 

「それは僕にもわからない。だが、早く目を覚ましてくれることを願っているよ」

 

六海を治療してくれたお父さんはこんな状況下でも顔色1つ変えていなくて、すごく無表情だった。

 

「入院手続きは僕がしておこう。君たちは遅くなる前に早く帰りなさい」

 

お父さんは私たちにそう告げてから病室から退室していった。

 

「六海・・・なんとかわいそうに・・・」

 

「どうしてこんなことに・・・」

 

お父さんが退室してからも姉妹たちの空気は暗かった。

 

「そういえば・・・六海と同じクラスの姫路さんも同じ現場にいたらしいよ」

 

「なんでその子はここにいないの?」

 

「もしかしたら・・・六海と何かあったのかも」

 

「私、ちょっとあの子に問い詰めてくる!」

 

「待ってください!今どこにいるかわかりませんよ⁉」

 

私たちが六海と姫路さんと何かあったのではという話をしていると・・・

 

「う・・・ううぅぅ・・・」

 

「「「「「!!」」」」」

 

六海が苦しそうなうめき声をあげている。顔もかなりうなされている。

 

「六海、どうしたの⁉」

 

「すごく・・・うなされてる・・・」

 

「六海、しっかりして!」

 

悪夢でも見ているからなのかわからないけど、こんなにひどい怪我に辛そうにうなされてる姿は、もう見ていられなかった。

 

「一花・・・二乃・・・三玖・・・四葉・・・五月・・・行かないで・・・私を・・・1人にしないで・・・私は・・・6人一緒じゃなきゃ・・・何も・・・」

 

「・・・っ」

 

悪夢で放った言葉だとはいえ、六海の放った言葉に私は六海の手を握るのを躊躇った。六海も・・・お母さんと似たようなことを・・・

 

「六海・・・安心してください。あなたを置いてどこにも行きませんから」

 

五月が優しく六海の手を握って六海を落ち着かせようと試みてる。五月の言葉に姉妹たちは首を縦に頷いているけど・・・私は、とても首を縦に頷くことはできなかった。五月の言葉が効いたのか、六海の表情は少し和らいで、すぅすぅと寝息を立てている。六海が落ち着いた様子に姉妹たちはほっと一安心するけど・・・それとは別に私は・・・複雑な心境を抱いてる。どうして6人一緒でいなくちゃいけないのかがわからないし、私はみんなと同じにはならないから。私は、みんなとは別の場所に立っている。だから私はもう・・・みんなと一緒には、いられないよ。

 

その日から翌日、六海と仲が良かった姫路さんは有無を言わさずに黒薔薇から転校していき、さらに時が経ち・・・六海が凶鳥というあだ名で呼ばれ、姉妹以外のみんなから、忌み嫌われるようになった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから1年の時が経ち、今年は特に苛立ちが隠せない年だ。六海が悪い噂ばかり流すような行動ばかりするから、私にまで飛び火が来ないかと気になったりして、内心穏やかじゃない。何がしたいのかもわからないし。ただ・・・1人でいようとするその姿が、羨ましかったりもする。これもイライラの原因。もう1つ六海が喧嘩を吹っ掛けた不良が怒ってやってきてあの日はもう滅茶苦茶だった。

 

もう上げれば上げるほどイライラの原因がいっぱい出てくる。・・・そして何より、私が1番イライラするのは・・・今年に入ってから私の成績が落ち続けていることだ。この前なんか1つの科目で23点と最悪の点数となっているんだ。何とか追々試は免れてはいるけど・・・成績は一向に伸びる気配がない。これじゃあ・・・勉強している意味がない。いや・・・それ以前に何のために勉強をしているのかと考える始末だ。

 

そんな成績不良で悩んでいたある日、私たちがリビングに集まっていた時・・・

 

「ただいま」

 

「「「「・・・えっ!!?」」」」

 

「む、六海・・・そ、その姿・・・」

 

たった今帰ってきた六海の姿を見て、驚いた。まず変わったところは・・・頭につけていた黒のカチューシャは外していて・・・目がいいはずなのにメガネをかけていて・・・そして何より・・・あんなに自慢していた長い髪がバッサリ散髪されていて、短髪になっていた。

 

「私、一花みたいに思い切って散髪してみたよ。視力は全然いい方だから、メガネのレンズはただの玩具だけど・・・どう、かな?私のイメチェン」

 

今までとは全く違ったイメチェンに六海は照れ臭そうに頬をかきながら私たちに感想を聞いて来た。

 

「わあ、すごくかわいいですね!ですよね、みんな!」

 

「・・・ま、まぁ・・・いいと思うよ」

 

「うんうん、かなり見違えたよー」

 

「まるで別人みたい」

 

「はは、ありがとう。照れるな・・・」

 

今までのイメージがすごく変わった六海にみんなべた褒め状態だ。二乃だけはなんか複雑そうな顔はしていたけど。

 

「・・・でも、どうして急にイメチェンなんて・・・髪だって切るの頑なに嫌がってたのに・・・」

 

私の疑問に六海は若干困ったように苦笑しながら答えた。

 

「まぁ・・・自分を変えるならまず形からって思ってさ・・・ほら、私、みんなに迷惑ばっかかけちゃったし・・・」

 

「迷惑だなんてそんな・・・」

 

「みんなが気にしてなくても、私は気にする。あのままじゃ本当に・・・私たちの関係が・・・6人一緒の関係が崩れちゃうんじゃないかって思ってさ・・・」

 

・・・また・・・6人一緒・・・。

 

「私・・・自分を変えたいんだ。もう二度と、私が間違った方向に進まないように。このイメチェンは、その意思表明みたいなものなんだ」

 

六海には六海なりの覚悟があって自分を変えようとしているのだろうとは思う。でも・・・私には、その気持ちがわからない・・・。みんなと一緒にっていう考えが・・・自分から離れていたのに、今更・・・

 

「よく言った!それでこそ私の自慢の妹だよー」

 

「わっ・・・一花⁉急に抱き着かないでって!」

 

「私は何でもがんばろうとする六海を応援するよ」

 

「一花・・・みんな・・・ありがとう。私、自分を変えれるように頑張るよ」

 

六海に抱き着いた一花は六海の考えを肯定している。他の姉妹も、その意見を肯定するように首を縦に頷いてる。わからない・・・どうしてそこまで・・・?お母さんも、六海も、他の姉妹も・・・6人でいることが何でそこまで大事なの?どうしてそこまでこだわらないといけないの?わからない・・・わからないよ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

そして、さらに時が経って・・・私たちは・・・ついに高校1年生になった。

 

「私たち・・・本当に高校生になったのでしょうか・・・?」

 

「周りの顔ぶれが変わらないから実感ないね。その代わり、私たちは大きく変わったけど・・・」

 

「えー?そうかなー?六海はそんなことないけど・・・」

 

「いやいや、六海は十分すぎるくらいに変わったよ?」

 

「そうよ!呼び方だとか一人称とか変わりすぎでしょ!」

 

みんな・・・前と印象がすごく変わっているんだ。見た目もそうだけど・・・性格面でも大きく。そして・・・私自身も。

 

「陸上部インターハイ出場したんだよね?そんなに強かったっけ?」

 

「全ては中野さんの加入のおかげですわ」

 

「へー!今度はぜひソフト部の助っ人も入ってくださいよ」

 

「あはは、いいですよ!私に任せてください!」

 

あれから私は・・・勉強をすることをやめて、スポーツを全面的に打ち込むようになった。私には勉強は向いていないけど、スポーツの才能は前々からあったらしい。小学校の時、監督が言っていたのは、まさにスポーツの才能を示していたんだ。それに気づいた私は中学生の時に体力を底上げさせて、自分の能力を限界にまで伸ばした。そのおかげで・・・ほら、私はみんなに必要とされている。もう私は、みんなとは違う存在!みんなと一緒じゃない!私は・・・特別になったんだ!

 

「四葉、すごい人気ですね」

 

「あの子、多重入部してるのよね?何個入部するつもりよ」

 

「助っ人の申し出、全部受けてるらしいよ」

 

「四葉ちゃん、大丈夫かなぁ?追試も不合格になったんでしょ?」

 

「・・・四葉」

 

部活のみんなと話してると、三玖が私に声をかけてきた。

 

「最近ずっと練習ばっかりやってるけど、大丈夫?勉強・・・できてる?」

 

大方、私の成績のことを心配してのことだろうけど・・・大きなお世話。勉強なんかやらなくたって・・・私はスポーツで大きな存在になったんだ。勉強なんかしなくたって、うまくやっていけるんだ。

 

「わからない問題があるなら・・・私が教えてあげようか?四葉が・・・教えてくれたみたいに・・・」

 

「私はもうみんなとは違う。一緒にしないで」

 

姉妹のみんなと一緒なんだと思われたくない私は、三玖の申し出を一蹴した。もういい加減煩わしいんだよ・・・みんな一緒の姉妹には。私はもう・・・姉妹と同じにはならない。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日の朝、学校の朝礼のために生徒全員は体育館に集まってきている。内容は学院長の長い話だろうけど、私にとってのメインはその次の表彰式。部活の大会で最も優秀な成績を収めた部員に表彰状が渡される。全部の運動部に入ってる私は当然、全部の表彰をもらっている。今回の表彰は陸上部だ。

 

≪陸上部の皆さん、壇上にお上がりください≫

 

学院長のどうでもいい話が終わって、いよいよ表彰式。私たちが壇上に上がったのと同時に、学院の全員からの大歓声が広がっている。この中には、姉妹も交ざっているんだろうな。

 

≪インターハイ出場、おめでとうございます!≫

 

お母さん・・・ちゃんと見てる?私・・・みんなに褒められてるよ。いろんな人に必要とされてるんだ。姉妹の誰でもない・・・私だからこそ、できたことなんだよ。

 

私が姉妹で1番なんだ!特別なんだ!!

 

♡♡♡♡♡♡

 

高校2年生となり、今年の1学期の期末試験の追々試が終わった数日後、私1人だけが職員室に呼ばれた。いったい何の用だろう?それに・・・周りの生徒も、なぜか私を哀れむような視線を送ってたけど・・・。考えている間にも、職員室に辿り着いて、私は担任の先生に何の用か尋ねた。

 

「追々試不合格。中野四葉さん・・・あなたを、落第とします」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

先生の放った言葉に、私は固まった。私が・・・落第?特別な・・・私を・・・?

 

「そんな・・・嘘・・・ですよね?」

 

「こんなことで嘘など言いません」

 

「だって!!あんなに部活で結果を出してきたのに!!この前だってバスケ部で全国出場したのに・・・」

 

「関係ありません。再三警告をしたはずなのに多重入部をやめようとしませんでした。勉学を疎かにした結果がこれです」

 

そんな・・・試験で落ちただけなのに・・・どうして私がこんな・・・。

 

「荷物をまとめなさい」

 

私は・・・部活動をこれでもかってくらいに頑張ってきた。なのにこんな・・・こんなことって・・・あまりにひどい仕打ちだ・・・。

 

「中野さん・・・本当に残念ですわ・・・」

 

部活動のみんなは落第にたいして何も言わず、私を止めようとする者は誰1人としていなかった。

 

「まさかあなた、部活動だけで満足なされていたの?」

 

それどころか逆にあきれ果てた顔をして、私を哀れむような視線を送ってきた。・・・どうして?私のおかげで大会で優勝できたはずなのに・・・どうして誰も・・・私を必要としないの・・・?

 

♡♡♡♡♡♡

 

落第という受け入れられない現実に打ちのめされかけていた私は黒薔薇の理事長に呼ばれて理事長室まで向かった。理事長室に入ってみたら、そこには理事長と、お父さんがいた。

 

「四葉君、この結果を受け、内々で話を付けさせていただいた」

 

かなり気落ちしてたから落第のことはお父さんには話していない。なら理事長から話を聞いてここに来たのか・・・。でも話を付けたって・・・いったい何を・・・?

 

「中野四葉君、特例として転校するという形で済ませることができそうだ」

 

「転校・・・」

 

「うむ、私の知り合いが理事を務める男女共学の学校だ。夏休み明けから君はそこに通うことになる」

 

「私・・・だけ・・・」

 

姉妹のみんなは・・・この学校に残って・・・私だけが・・・違う学校に・・・。そうなったら私は・・・本当に・・・ただ・・・1人に・・・。

 

「引っ越しの必要がないのが、せめてもの幸いだ。家では姉妹一緒になれる。心配しなくてもいい」

 

あまりにショックな知らせに私は・・・それ以上の言葉は頭に入らなかった。私は・・・特別なはずなのに・・・。私は・・・私がいる意味を作ろうとして、必死にやってきた。なのに・・・私、なんで1人なの?1人になったら私はどうすればいいの?どうやったら特別になれるの?わからない・・・わからないよ・・・。

 

「待ってください」

 

私が固まっていると、理事長室に入ってくる人物が5名。その人物は・・・私の、姉妹たちだった。

 

「四葉が転校するなら、私たちも付いていきます」

 

「!!!」

 

みんな・・・なんて・・・?私に・・・付いて・・・?どうして・・・?それは、みんなも転校することになるのに・・・。

 

「な、何を言っているんだ!君たちは試験を通過したはず」

 

「ええ・・・合格できたわ・・・カンニングしたおかげでね」

 

「!!!???」

 

二乃が得意げに取り出したのは・・・今回の期末試験のカンニングペーパーだった。いや・・・取り出したのは二乃だけじゃなかった。

 

「そ、それは本当かね!!?」

 

「あー、私もでーす」

 

「私も・・・」

 

「すみません・・・私もしました」

 

「六海は常に常習犯でーす」

 

もしかして・・・みんな・・・私のために・・・?

 

「みんな・・・なんで・・・なんで・・・私のために・・・」

 

このままカンニングしたことを黙っていたら、この学校に残れたはずなのに・・・それなのに・・・なんで・・・どうして私のために・・・。

 

「四葉、あんたがどう考えているのか知らないけどね、アタシは、あんただけいなくなるなんて絶対嫌よ!」

 

二乃・・・

 

「どこに行くにしても、みんな一緒だよ」

 

「それがお母さんの教えですから」

 

一花・・・五月・・・

 

「間違えちゃったのは六海も同じだよ。一緒に、一からやり直そうよ」

 

六海・・・

 

「四葉・・・どんなことでも、私たちは、みんなで6等分だから。どんな困難でも、6人でなら、乗り越えられるよ」

 

三玖・・・みんな・・・私のために・・・。私は・・・なんてバカなんだろう・・・。特別になろうと、意地を張ってみんなに頼ろうとせずに・・・。今なら六海の・・・ううん、みんなの気持ちが痛いほどにわかる。ああ・・・そうか・・・お母さんが言っていた6人一緒って言うのは・・・こういうことだったんだね・・・。

 

もう・・・誰が1番なんて考えるのはやめよう・・・。私は・・・姉妹のために生きるんだ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

夏休みが明けて、私たちは旭学園に転校した。髪も自分を変えようと思って散髪もした。六海があれだけ変わることができたんだから、私もできるはずって安直な考えなんだけどね。でも、私は1人じゃないし、きっとできると信じてるよ。

 

「五月の話だと、ここの食堂の味はレベルが高いって」

 

「へー、期待しちゃっていいのかな」

 

転校してから翌日、私たちは姉妹揃って学食でご飯を食べることになった。後は六海と五月が来るのも待つだけだよ。

 

「ここの学校、試験とかもなんか緩そうだし、そんなに必死に勉強しなくてもよさそうね。転校して正解だったわ」

 

二乃は私の方を見て微笑みながらそう言ってくれた。私のせいで転校になったのに・・・それでもついてきてくれて、私は嬉しくも感じるし、逆に申し訳なさもあるよ。そう思っていると、六海も来て、遅れて五月も到着でこれで姉妹が揃った。みんなといただきますしようとした時・・・

 

「友達と食べてるだと!!?」

 

黒髪の男子生徒が私たちを見て驚いて叫んでいる。姉妹の中の誰かと仲良くなったのかな?姉妹の雰囲気を見てみると、誰もそんなことなさそうだけど・・・。・・・でもあの男の子・・・どこかで見たような・・・?

 

「あれ?これ・・・」

 

一花があの男の子と話から戻ってきた時、私は何かを見つけた。これは・・・あの男の子の答案用紙?・・・100点満点だ。すごいと感心していると・・・その答案用紙の名前を欄を見て、私は目を見開いた。名前には・・・上杉風太郎・・・5年前に出会ったあの男の子の名前が書かれていた。

 

「今の人、今困ってるかな?」

 

「ほっとけばいいですよ、あんな人」

 

「でもでも!困ってる人は放っておけないし・・・届けてくるね!」

 

五月の反対を押し切って私はさっきの彼に答案用紙を返しに行った。これがないと困るのは本当だと思うけど・・・それ以上に、確かめたかった。あの男の子が本当に、5年前のあの男の子だったのかを。多分食堂から出てないと思うけど・・・あ、いた。さっきの男の子だ。1人で何か悩んでる様子だけど・・・。私は彼の席に向かって、彼の顔をじっくりと見つめる。

 

「じー・・・」

 

「・・・・・・」

 

顔をじっくりと見てみると、その顔は見間違えるはずもない。正真正銘、彼は風太郎君だ。すごい!転校先がまさか風太郎君と同じ学校だったなんて!5年前と雰囲気も見た目もまるで違うけど、嬉しいなー。何か悩んでてまだこっちには気づいてない。ちょっと驚かせちゃおうかな。

 

「風太・・・!」

 

風太郎君に声をかけようと思ったけど、彼の手元にある別の教科の答案用紙を見て、思いとどまった。その点数は・・・また100点。その他の教科も、100点・・・。それに・・・ご飯中にも勉強・・・もしかして・・・あれからもずっと頑張り続けていたの?もしそうなら・・・風太郎君はすごいよ・・・。それに比べて私は・・・約束を守るどころか忘れてしまって、変に暴走して・・・。こんなこと・・・恥ずかしくて言えないよ・・・。

 

「・・・上杉・・・さん。上杉さん。上杉さーん」

 

自分のことをバレたくなくて、私は風太郎君を・・・苗字の方で上杉さんと呼んだ。

 

「・・・ん?」

 

ドキッ

 

風太郎君が私に視線を向けてきた時、私は内心、ドキッとした。それでも私は、初対面のように振舞う。

 

「あはは!やっとこっち見た!」

 

「・・・おわぁ!!?だだ、誰だ!!?なぜ俺の名前を知っているんだ?」

 

私に気付いた風太郎君はかなり驚いている。私のことは・・・覚えている様子はなかった。・・・そうだよね・・・私のことなんか・・・覚えてるはずないよね。でもね・・・私は知っているよ。君のことを・・・ずっと前から。君のことを忘れるなんてことは、今まで1度もなかったよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日、学校から私たちのマンションに帰ってみたら、そこには風太郎君がいた。話を聞いた限りだと、お父さんが話していた家庭教師の件、その先生が風太郎君だというんだ。まさか風太郎君が私たちの家庭教師になるなんて思わなかった。運命の巡りあわせとはわからないものだね。でも・・・他の姉妹たちは全員勉強に乗り気にならなくて・・・中には風太郎君を嫌って家庭教師の授業を受けようとしなかった。誰も風太郎君の味方でいる人がいなかった。・・・それなら、せめて・・・

 

「・・・て!!どうして誰もいないんだああああああああ!!??」

 

「はいはーい!!私はいますよー!」

 

せめて私だけは、風太郎君の味方であり続けよう。いつかきっと、姉妹のみんなが風太郎君のいいところに気付いてもらえるように。そりゃ私も勉強は苦手だけど・・・風太郎君が家庭教師なら、私は大歓迎だよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

風太郎君が家庭教師になってから一週間くらい経った。姉妹のみんなは相も変わらず風太郎君の授業には参加しようとしない。なので、今は授業を受けているのは私だけ。受けている科目は英語だよ。

 

「だから何度言えばわかるんだ四葉・・・ライスはLじゃなくてR!お前シラミ食うのか!!?」

 

「あわわわ!」

 

まぁ、ただいま絶賛お説教中ですが・・・あはは・・・。

 

「・・・四葉、お前なんで怒られてんのにニコニコ笑ってんだ?」

 

「えへへ・・・家庭教師の日でもないのに上杉さんが宿題を見てくれるのが嬉しくってつい・・・」

 

それに・・・このまま勉強を頑張れたら、風太郎君に私のことを言ってもいいかなって思えてくるんだ。そのためにももっと頑張らないと!

 

「物分かりがいいな。おかげで助かってる。残りの5人も物分かりがいいともっと助かるんだが・・・」

 

「一応声はかけたんですけどね・・・あ、でも。残り5人じゃなくて残り4人です」

 

「え?」

 

「ね?三玖」

 

授業を参加したがらない姉妹のうち、唯一授業に参加すると言っていた三玖がこの図書室に入ってきた。風太郎君と三玖は何か話しているみたいだけど・・・その時の三玖の顔は、いつもの笑顔とはどこか違っていた。その顔を見て、私の四葉センサーがピコーンッて来た。そういえば前に三玖に好きな人がって話はしたけどまさか・・・三玖・・・

 

(み、三玖・・・もしかして・・・この前隠してた三玖の好きな人って、上杉さんじゃ・・・)

 

「・・・ないない」

 

三玖は否定はしていたけど・・・なんだろう・・・どこか腑に落ちないっていうかなんというか・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

花火大会の日、姉妹で行く予定だったイベントに風太郎君と今日初めて会った風太郎君の妹のらいはちゃんと一緒に行くことになった。その際、まだ終わってなかった課題をやらされたけど・・・。花火大会で話し合っている風太郎と三玖・・・図書室でのこと、気にしないようにしようとしたけど・・・やっぱりどことなく雰囲気がよくなっているような気がする。気になったから一花に聞いてみることにした。

 

「三玖はないって言ってたけど・・・一花さん、どう思います?」

 

「んー、好きで間違いないでしょうね」

 

「やっぱり!!」

 

やっぱりあの時の四葉センサーは正常だった!まさかとは思っていたけど・・・当たってよかったのか悪いのか複雑な気分だよ!

 

「もー、どうしてこうなっちゃったんだろー?」

 

「はは、だよね」

 

・・・そういえば、一花も6年前、風太郎君に会ってたよね・・・。私だと勘違いされてたみたいだけど・・・。

 

「一花はどうなの?」

 

「おっと私に振るかー。そーだなー・・・フータロー君はいい奴だけど、なんか子供っぽくて私はそんなにって感じかな」

 

反応からして・・・一花も忘れてるよね・・・。そうだよね・・・それならそれでいいんだ、ははは・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

それから後のこと、一花のフータロー君の態度がどんどんと好意的なものに変化していっているのに私は気づいた。それこそ、本当は覚えているんじゃないかって疑うほどのものである。ううん、変わったのは一花だけじゃないか。三玖はもちろんのこと、六海も、五月も・・・そして姉妹で1番風太郎君を嫌っていた二乃でさえも変化している。なんだか寂しい気はするけど、みんなが風太郎君の素敵なところに気が付いてくれたようでよかったよ。

 

そして、林間学校を終えて、風邪で病院に入院している風太郎君のお見舞いの後、予防注射を受けようと思って、1人だけ遅れてきた五月を探している。連絡ではもう来てるって話だけど・・・もしかして、風太郎君の病室に来ているのかな。そう思って風太郎君の病室に行ってみると・・・

 

「教えてください・・・あなたが勉強する理由を」

 

「!!!」

 

風太郎君の病室から五月の声が聞こえてきて、勉強をする理由を風太郎君に問いかけていた。風太郎君は全部とはいかなかったものの、その理由を話した。その内容は・・・私と出会うまでの過程だった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

その次の日、風太郎君は私たち全員をポニーテールにしろって言われて、そこから私たちの顔を見分けること兼、テストで0点を取った犯人探しをしていた。いや、それ自体はいい・・・まさか風太郎君が私のことを覚えていたなんて思わなかった。どうしよう・・・風太郎君はまだ私に気づいてないようだし・・・私も・・・言うべきなのかな・・・。

 

・・・でも・・・私だけ特別扱いなんて、よくないよ。黒薔薇から転校を言い渡されたあの日から、私は、特別になるのは、やめたからなおさらだ。

 

「この中で昔俺と会ったことあるよって人ー?」

 

「「!」」

 

「「「?」」」

 

埒が明かないと思ったのか風太郎君はド直球に聞いて来た。二乃、三玖、六海は何のことかわからず首を傾げていた。姉妹の中で一花だけが私のことをちらって視線を向けている。

 

・・・やっぱりだめ。今の私は、姉妹のおかげでここにいる。それをこんなことで崩しちゃいけないんだ・・・。

 

だから・・・あの思い出も、この気持ちも・・・全部、消してしまおう。

 

♡♡♡♡♡♡

 

二乃と五月が家出をした翌日の日曜日、五月から自分の荷物を持ってきてほしいとスマホを通じて頼まれた。場所を指定してくれたおかげで難なく見つけることができたけど・・・まさか風太郎君と一緒にいたとは思わなかった。思わず茂みの音を出しちゃったよ。驚いた後、少し話してから風太郎君は自分の家に戻っていった。その後で五月が茂みの音が気になって私のところまでやってきた。私を見た瞬間、五月は少し安心したような表情をしている。

 

「あの茂みの音は四葉だったのですね・・・ちょっと焦っちゃいましたよ・・・」

 

「頼まれた通り、学校の用意持ってきたよ。家出するならちゃんと用意してからにしなよ」

 

「す、すみません・・・」

 

五月がかばんを受け取ろうとしたところで私はそれを手を引っ込めて躱す。五月には、頼みたいことがあったから。

 

「?四葉?」

 

「今が大変なところ申し訳ないんだけど・・・かばんの代わりに五月にお願いがあるんだ」

 

「お願い・・・ですか?」

 

「これを着て、上杉さんに会ってきてほしいんだ」

 

私は五月のかばんに教材と一緒にいれた白い服を取り出して、それを五月に渡す。

 

「ど、どういうことでしょうか?それにその服は?」

 

「最近知ったんだけど私、嘘をつくのが下手くそみたいで・・・それで私のことがバレちゃったら意味ないんだよ・・・」

 

「???話が全く飲み込めません。つまりはどういう・・・?」

 

話が理解できないなら任せることはできないか・・・。なら・・・五月だけでも話しておこうか。五月は一部だけど、風太郎君の話、聞いたから何も問題はないよ。全部の事情を話すと五月は気が付いていたのかやっぱりと言った感じの顔になった。

 

「やはり上杉君の話に出てきた彼女とはあなただったんですね。何となく、心当たりはありました」

 

「それで・・・どうかな?上杉さんと会ってくれる?」

 

「それですが、私は嘘や変装は苦手ですので、四葉のご期待に添えられるかどうか微妙なところなのですが・・・」

 

「大丈夫だよ。誰かの真似をしなくたって・・・昔の五月のままでいいから」

 

これなら誰かの真似でなくても姉妹の誰かってことに気付くことはないし、私の中の思い出も、気持ちも・・・五月が消してくれるはずなんだ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

数日くらい経って、五月は私に言われた通りの服着て、風太郎君に会って来た。私は陸上部の練習ついでにその様子を陰ながら見守っていた。思った通り、風太郎君は見事に勘違いしてくれたおかげで、私のことは気づかれてない。五月は風太郎君を逃げられないようにするためにボートに乗り込ませた。何を話していたかはここからではよく聞こえなかった。

 

・・・風太郎君は・・・すごく楽しそうな顔で笑っていた。・・・本当なら・・・あそこにいるべきなのは・・・五月じゃなくて、私・・・。・・・でも・・・今更私が出てきても、この気持ちが、思い出が邪魔するんだ。だから・・・苦しいし、悲しいけど・・・これでいいんだよ・・・これで・・・。

 

その後は、何を話したのかは全く分からなかったけど・・・風太郎君はショックを受けて、ボートから落ちてずぶ濡れに・・・気持ちも・・・落ち込んでいるように見えた。なんだか悪いことをしたような気持ちになったけど・・・他の姉妹のためなら・・・こうでもしなきゃいけない。これで・・・私の中の思い出も・・・なくなったはず・・・。

 

風太郎君・・・ううん・・・上杉さん・・・ごめんなさい。私だけが特別になるなんて、あっちゃいけないことなんだ。上杉さんが、誰を好きになったとしても・・・応援できるように。私も・・・心を鬼にします。

 

これが・・・私こと中野四葉が、ここまで辿ってきた道のり。そして私の道の・・・終着点なのです。

 

♡♡♡♡♡♡

 

修学旅行が終わって日にちが経ち、季節はもう夏まっしぐら!そのために・・・外は熱いですし、この教室の中にも夏の熱がこもっています・・・。あつーい・・・。

 

「あっつー・・・」

 

「夏だねー。もうすぐで夏休みだねー」

 

「その前に大学の入試判定試験が残っていますけどね・・・」

 

「それ言わないでよ・・・」

 

姉妹たちもこの熱さにちょっとまいり気味です。みんな熱さで汗もかいていますし。あ、ちなみに一花はお仕事でいないですよ。

 

「それよりも夏ならではの楽しいことを考えようよー」

 

「そうね・・・夏といえばやっぱり、海よね」

 

「ううん、山がいい」

 

あ、二乃と三玖の意見がまた食い違ってる。

 

「は?信じられない。山なんていつの時期だっていいじゃない」

 

「夏にしかできないことがある。それに騒がしいところは苦手」

 

「もー、わかってないなー。夏といえばコミケだよー。今年は冷房の効いた場所でやるし、夏ならではの作品が盛りだくさんだから楽しめるよ」

 

「人が混む。熱くなるし、絶対無理」

 

「それを楽しいって言ってるのはあんただけよ」

 

ははは、六海との意見も食い違っているね・・・。

 

「何を言っているのですか?私たちは3年生なのですから夏休みは受験シーズンしかないでしょう?」

 

「うっ・・・考えたくもないわ・・・」

 

「五月、空気読めてない」

 

「もー、なんでそういう話を折るようなこと言うかなー。ブーブー」

 

「なぜブーイングを受けなければいけないのですか⁉」

 

ははは、姉妹のみんな、楽しそうに話してるな。あ、そうだ・・・受験シーズンといえばみんな大学に行くのかな?

 

「そういえばみんなは大学どこに行くの?」

 

「まだ決めてないわね」

 

「私も決めてませんが・・・教師の資格が取れそうな大学を選ぶつもりです」

 

「六海は大学じゃなくて専門学校に行くよ。六海の知らない絵の技術、もっと学びたいから」

 

みんなどこの学校に行くとかは決めてないけど、だいたいは将来に繋がりそうな学校に行くっていうのは決めてるみたいです。両方とも決まってないのは私くらいですよ・・・ははは。

 

「・・・私は、大学には行かない」

 

「「「「え?」」」」

 

え?今、三玖はなんて?大学、行かないの?何で?

 

「今、大学に行かないって言った?」

 

「三玖、あんた本気で言ってるの?」

 

「どうして急に・・・」

 

「そうだよ、前の試験でも三玖が1番の成績なのに・・・」

 

「・・・笑わないで聞いてほしいんだけど・・・私・・・お料理の専門学校に行きたいんだ・・・」

 

私たちの疑問に三玖は少し照れ臭そうな顔をして答えました。

 

「お料理の専門学校・・・」

 

「えと、三玖ちゃん、それって本気?」

 

「うん、本気」

 

「はー、正気を疑う発言ねー・・・」

 

三玖の決意は固いようでみんな笑いはしませんけど、結構驚いている様子でした。私も驚きです!

 

「それはまた・・・このことを知って上杉さんは何ていうでしょうか・・・あ、噂をすれば・・・」

 

ちょうど窓から上杉さんを発見しました。三玖の進路について聞いてみましょう。

 

「おーーい!!上杉さーーん!!」

 

「!四葉!!そんな遠くから大声で呼ぶな!!」

 

あはは・・・聞くどころか逆に怒られちゃった・・・。それに忙しそうだったし、また後で聞いてみようかな。

 

「・・・四葉・・・本当に、このままでいいのですか?」

 

窓の外から上杉さんを見ていると、五月が声をかけてきました。私と上杉さんの関係を知ってる五月は、きっと私のことを心配してるんだと思います。その気持ちは素直に嬉しいです。でも・・・私には、資格がないんです。ですから・・・このままでいいんです。それに・・・

 

「・・・これまで上杉さんと向き合ってきたのは三玖たちだもん。今更、私が出る幕は、これっぽっちもないよ」

 

「いいえ!そんなことありません!やはりちゃんと打ち明けるべきなんです!だって、四葉だってずっと・・・ずっと彼のそばで見続けてきたじゃないですか!誰だって・・・自分の幸せを願う権利はあるはずです!」

 

ううん・・・私の幸せは・・・姉妹の幸せ・・・私だけが特別なんて、あっちゃいけないんだ。だから・・・もう十分なんだよ。

 

「五月、もうそれ以上言わないで」

 

「・・・っ」

 

「辛い役目を押し付けちゃって、ごめんね」

 

「四葉・・・」

 

「私は、大丈夫だから」

 

五月との話を無理やりにでも終わらせて、私は三玖たちの元へと戻っていきます。

 

♡♡♡♡♡♡

 

今日の予定を全て終わらせて、私はただ1人、お気に入りスポットの公園のブランコを漕いで、風を感じながらよく見る光景を眺めていました。・・・消したはずの思い出に・・・浸りながら・・・。

 

「・・・上杉さん・・・

 

・・・風太郎君・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きだったよ・・・ずっと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の呟きに答える人がいない中、私は、消えることがない思い出・・・消えることができない気持ちに揺れ動きながら、ただ1人寂しく、ブランコを漕ぐのでした。

 

47「私とある男子」

 

つづく




おまけ

四女ちゃんは実は姉妹と繋がっている。

自分が特別になろうと運動部の部活を頑張っている四葉。そんな運動部の大会がある日・・・

二乃「四葉、今日大会でしょ?お弁当作ったから持って行きなさい」

四葉「え、いいよ。向こうで適当に買ってくるし・・・」

二乃「いいから持って行く!はい!お弁当!」

一花「四葉、水筒にお茶入れといたよ。大会、がんばってね」

四葉「一花まで・・・」

五月「四葉、よければ私のタオルを使ってください。勝てると信じてます!」

六海「四葉、友達に頼んでハチマキ作ってもらったよ。これがあれば勝てるから使ってよ」

三玖「四葉、必勝祈願のお守り勝ってきた。持って行って」

四葉「そ、そんなにいっぺんに渡されてもー!!」

どこか姉妹を避けようとしている四葉だが、姉妹たちは何も言わずとも四葉に近づき、今回のような大会の日には必ずといっていいほど関わろうとする。避けていたとしても、案外絆は切れず、必ず繋がっているものなのだ。それを気づくことができるのは、先の未来である。

四女ちゃんは実は姉妹と繋がっている。  おわり

次回、六海視点

デート回(?)にて、2番目でデートをするのは誰がいい?

  • 一花
  • 二乃
  • 三玖
  • 六海
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