「さて、もうすぐで大学入試判定試験が迫ってきている。この試験の結果次第でお前らの行く大学に受かる可能性が上がってくる。そのためにもしっかり勉強して試験に備えるぞ!」
「はい!よろしくお願いします、上杉さん!」
日に日に外がだんだんと熱くなっていっている夏の季節。そんな季節に大学入試判定試験がもうすぐ迫ってきていて、六海たちは今日は冷房が効いた図書館で判定試験に備えて勉強しているよ。ちなみに一花ちゃんは今日はお仕事でいないよ。しかも今日は撮影が長引くらしいから今日はかなり遅くなるかもだってさ。
「あーあ、一花ちゃんが羨ましいなぁー」
「一花の場合、もうすでに進路が決まっているものね」
「というより、もうお仕事してる」
「お前ら口より手を動かせ。動きが止まってるぞ」
「あはは、すいません、上杉さん」
「・・・・・」
一花ちゃんのことで話し込んでたら風太郎君に怒られちゃった。でもまだ3週間も余裕があるんだし、ちょっとくらいの会話くらい許容してもいいじゃん。
「五月、またフー君に熱い視線を向けてるわね」
「む、向けていませんが?それよりも勉強に集中しましょう!」
「はいはい」
???今明らかに風太郎君に視線を向けてたような気がしたんだけどなー。それに・・・たまに四葉ちゃんの様子を気にしてるのも気になるなぁ。
「フータロー、わからない問題があるんだけど・・・」
「どこだ?」
「ここ」
「どれどれ・・・ああ、その問題か。これはな・・・」
「・・・ふふ・・・」
三玖ちゃんはわからない問題を風太郎君に教えてもらっているね。・・・それにしても・・・三玖ちゃんと風太郎君の距離が近いなぁ・・・三玖ちゃんの顔も、なんか生き生きしてる感じがする。
「・・・じぃーーーーーー・・・」
「六海?どうしたの?わからない問題あった?」
「んーん、何でもないよー」
やっぱり修学旅行が終わってから、三玖ちゃんがなんか機嫌いいんだよね。理由はやっぱり、あの告白だよね。むむむ・・・あれさえなければ、今頃は六海がもっと進展してたかもしれないのに・・・。いや、別に一花ちゃんを責めるわけでもないからいいんだけどね。ただ・・・やっぱり六海との関係はまだ何1つ変わってないからちょっと焦ってくるんだよね・・・。
「むむ・・・このままじゃいけないような気がしてきたわ・・・。差がつけられないように何とかしないと・・・」ブツブツ・・・
二乃ちゃんもさっきからなんかブツブツ言っているし・・・二乃ちゃんの言うとおり、差がつけられないように早く手を打たないと・・・これ以上お姉ちゃんたちに後れを取るわけにはいかないからね。一歩でも距離を縮められるようなことと言えば、今のところやっぱり勉強しかない。でも・・・今日の課題はもうほとんど終わっちゃってる・・・後の問題も全部わかるものしかない・・・。そんなものをわからないっていったら風太郎君に怪しがられちゃう・・・。・・・よし、とりあえずもう解けた問題の1番わからなかった答えを消してっと・・・
「ありがとう、フータロー。わかりやすかった」
「お、おう・・・」
よし、仕掛けるなら今だ!
「ねぇ風太郎君、六海もわからない問題が・・・」
「上杉さん、ここの問題の数式の解き方はこうでしたっけ?」
「・・・だーかーらー・・・何べん教えれば理解するんだお前は!!!思いっきり間違えてるじゃねぇか!!!」
「ひぇー!ごめんなさい!リボンだけはお許しをー!」
六海が仕掛けようとしたら先に四葉ちゃんがわからない問題を聞きにきちゃったよ・・・。しかも数式間違えてるらしくて、いつものようにリボンを掴まれちゃってる。そ、それより・・・
「あ、あの・・・風太郎君・・・問題・・・」
「もう少し待て。このバカにもう1度数式を教えなければいかん。こんな時に限って一花がいねぇんだから・・・たく・・・」
「・・・むうぅ~~~~!」頬ぷくぅ~~
ううぅ~・・・作戦失敗・・・。もう、四葉ちゃんはなんてタイミングで・・・。本当にこの時に一花ちゃんがいないのが恨めしぃ・・・いたら2年生最後の試験の時みたいな態勢でいけたのに・・・。
「あ、六海。ここでしたら私は解けましたので、よければ教えてあげますよ」
「・・・いいよもう・・・もう解けてるし」
「えー⁉」
五月ちゃんが教えてくれるんじゃ意味がないんだよ・・・というか、もう解けてた問題だから何度も教えてもらわなくていいよ。同じことを何回も繰り返したら耳に胼胝ができちゃう・・・。はぁ・・・過ぎたことはしょうがないか・・・。じゃあ、次の作戦。六海の手元にある消しゴムを風太郎君の近くでぴーんと飛ばして、それを拾ってもらって近くまで来させる。その後は・・・まぁ、その時に考えよっかな。よし・・・じゃあ作戦実行。消しゴムをデコピンをするような要領で・・・これを風太郎君のところまで弾く。弾いた消しゴムをポーンと風太郎君のとこまで飛んで・・・
ビシッ!
「いて」
「あ・・・」
ふ、風太郎君の手に当たっちゃった・・・。ぜ、全然考えていたシナリオと違うんだけど・・・。本当はそのままストーンと地面に落ちるはずだったのに・・・。
「・・・おい、六海。これをやったのはお前か?課題もせずに何してんだ?」
「え?あ、いや・・・えーっと・・・こ、これはね・・・」
風太郎君⁉六海が遊んでるって捉えっちゃってるの⁉顔は笑っていても、目の奥が笑ってないよ⁉他のお姉ちゃんに助けようと求めて目を配らせてみても・・・苦笑いするか、呆れた顔をしてるだけで誰も助けてくれない!!は、薄情者~~~!!
「変なことやってる暇があるなら課題に集中しろ!!文房具で遊んでんじゃねえ!!」
「痛い痛い痛い痛い!!ご、ごめんなさい!!謝るから頭ぐりぐりしないで~~!!」
うううぅぅ・・・お仕置きとして頭ぐりぐりされた・・・ある意味では作戦は成功してるようなものだけど・・・こんなの六海の望んだ展開じゃないよ!そう言う意味ではもう作戦大失敗だよ!もう、もう、もう!!なんでそこでコントロールが乱れちゃうかなぁ~~~!!六海のバカ!バカ!!
「・・・ねぇ、ちょっと六海」
「ドキッ!な、何かな・・・二乃ちゃん?」
さ、さすがに感づかれちゃったかな・・・?二乃ちゃんがこっそりと六海に耳打ちしてきたよ・・・。
「さっきからフー君に変な行動ばっかりとってるけどあんた、今回はいったい何を企んでるのよ?」
「そのフー君呼びやめてよ。べ、別に?何も企んでないけど?」
自分でもわかりやすいくらいの苦し紛れの返答だよ・・・。これ、何か企んでますーみたいなのがバレバレ・・・。
「ふーん。ま、別にいいけど。見た感じうまくいってないのがまるわかりだし」
「うっ・・・」グサッ
「というかあんたって、未だに告白を1回もしてないから進展もないわよね?ふふ、負ける気がしないわ」
「うぅ・・・!」グサッ、グサッ
「てことで、あんたも何かしらの行動をとってみたら?じゃないと、アタシがフー君をいただいちゃうわよ?」
「ぐぬぬぬぬぬ・・・!」
く、悔しい!心に突き刺さることをよくもグサグサと!あー、そうだよ!まだ告白なんて1回もしてないよバカ!というか、それをどうにかしようと行動してる途中なの!ただ空回りしてるだけで・・・。
「・・・はぁ・・・」
やばい、考えれば考えるほど切なくなってきた・・・。もう・・・風太郎君のバカ・・・。六海の思いは、他のお姉ちゃんと同じなのに・・・なんでまだ気づいてくれないの・・・?三玖ちゃんことは、ちゃんと気づいてたのに・・・。
「課題、終わったから採点よろしく、フー君♡」
「に、二乃・・・」
二乃ちゃんは課題を解き終わって用紙を風太郎君のとこへ持って行った。他のお姉ちゃんには何かと進展があるのに、どうして六海には進展がないんだろう・・・?進展がないといえば・・・六海の風太郎君に対するこの呼び方・・・。初めて風太郎君のことを名前で呼んだ時とそのまんま・・・。何も変化がない・・・。でも、だからといって今変えるのはなんか変な気が・・・。はぁ・・・憂鬱だよ・・・。
♡♡♡♡♡♡
「・・・むぅ・・・全然うまくいかない・・・」
勉強会が終わった後、六海はアルバイトを休むことなく、現場に出勤してるよ。でも放課後の勉強会のことを思うと、仕事現場でも変に気落ちしちゃうよ・・・。
「どうした嬢ちゃん?変なものでも食べたか?」
「全然違いますよ。ただ、ちょっとうまくいかないなーって・・・」
「何がうまくいかないんだ?ほら、相談に乗ってやるから、どーんと言ってみろ」
「いや、あの・・・それは、そのぅ・・・」
六海が気落ちしてたところに高木さんから声をかけられた。悩みを聞いてくれるのはすごくうれしいんだけど・・・これ、50歳もいくおじさんに話すようなことでもない・・・というか、この人見るからに恋愛とかにはかなり疎そうなんだけど・・・。
「もう、高木さんは本当にデリカシーないんですから!」
「え?俺なんかしたっけ?」
「女の子には女の子にしか話せないがあるってことですよ!いいから、高木さんは席に戻ってください!しっしっ!」
「えー・・・なんだよ・・・女はわけわかんねぇ・・・」
一ノ瀬さんが高木さんを遠ざけちゃった。そしたら一ノ瀬さんは六海に向かって微笑んでみせた。
「私にはわかるよ、中野さん。ずばり、中野さんは今恋愛に悩んでるね?」
「ぶーーーー!!?」
「お、正解?いやー、やっぱり中野さんも若いねー。青春だねー」
一ノ瀬さんの確信をついたような発言に六海は飲んでたお茶を思わず吹き出しちゃった。
「な、ななな、何を仰るんですか!!?」
「隠さない隠さない♪人間恋するのは当たり前の事なんだから、どんどん恋愛しちゃいなさいな。特に中野さんはかわいいんだから、いい男なんて大勢寄ってくるし、選び放題よ?」
「そんなに好かれちゃっても困るんですけど・・・」
「まぁ、恋愛のことで何か困ったことがあるなら、高木さんじゃなくて私に聞きなよ?私、恋愛漫画描いてる恋愛マスターだから、人より恋愛知識は豊富よ?」
六海の悩みとはちょっとどころかかなり論点がずれてるような気がするんだけど・・・六海のことを気にかけてくれてるのがわかるよ。
「一ノ瀬さん・・・ありがとうございます」
「うんうん。そーれーで?中野さんが好きな人ってどんな人?」
「ふぁっ!!?」
超ドストレートに聞いてきたよ!一ノ瀬さんの顔もなんかにやにやしてるし、完全に楽しんでるよね!!?
「恥ずかしがる必要はないよ?女の子同士、恋バナでもしましょうよ。あ、ちなみに私、今も独身を貫いてるよ。悲しいことにね・・・」
「恋愛マスターとはいったい・・・」
「それはいいとして、で?誰なの気になる男の子って?誰にも言わないから、こっそりと私に教えてよー」
「い・・・いや・・・だから・・・あのですね・・・」
やっぱり一ノ瀬さんって相談を乗るってより六海の話で楽しみたいだけだよね!!?相談に乗る気ないよね!!?ちょっと・・・こういうのって1番困るんだけど・・・誰か助けて・・・。
「そういえば嬢ちゃんよ、お前さんはあれには応募するのかい?」
「わ、は、はい!!・・・え?何がですか?」
「・・・高木さん・・・いいところで・・・」
声をかけられて助かったから思わず返事しちゃったけど・・・応募する?応募するって・・・何に応募するの?
「あれ?もしかして、今週号のやつ、まだ読んでないのか?」
「あ・・・はい・・・ちょっと、受験勉強でバタバタしてて・・・まだ・・・」
「あー、中野さん、土屋君と同じ受験生だって言ってたね」
今週号っていえば・・・いつも読んでるあの週刊誌のことかな?今週号はまだ読んでないけど・・・何かあったっけ?あ、応募すれば何か貰えるあれかな?
「あー・・・実は・・・今週号のここの部分だけどな」
高木さんは週刊誌の今週号を取り出して、あるページ部分を六海に見せた。何々・・・?新人漫画家による、第1回読み切り号最優秀賞決定戦?・・・なにこれ?
「えっと、なんですかこれ?」
「今年から始まった漫画家を目指す奴らの・・・あー、簡単に言っちまえばコンテストみたいなもんだな」
「コンテスト・・・ですか」
「確か自分の描いた漫画を応募するってやつでしたよね?」
「ああ、そうだ。そんで、見事賞を取ることができた作品には・・・その漫画が週刊誌に載ることができるんだよ」
「!!!!その話、本当ですか!!??」
描いた作品が週刊誌に載せることができる点に六海は目をすごく輝かせているよ。
「ああ。まぁ、あくまでも賞を取ることができればだけどな」
す・・・すごい・・・!漫画家になりたい六海にとっては願ったり叶ったりのようなコンテストだよ!これは夢に一歩近づくまたとないチャンス!絶対にものにしたい!
「六海、そのコンテストに応募したいです!」
「お、そうか!やってみるか!応援するぞ!」
「え?でも大丈夫?中野さんの学校で入試判定試験があるって言ってたよね?これの締切日・・・ちょうどその入試判定試験当日なんだけど・・・」
「え・・・」
一ノ瀬さんの言葉に六海は唖然となった。気になって今週号のさっきのページの応募項目にある締切日を見てみたら・・・本当に入試判定試験がちょうどある日だったよ。
「あ、本当だな・・・」
「そ・・・そんなぁ~・・・」
「いや、まぁ・・・応募するのはいいんだけど・・・勉強とかもあるし・・・大丈夫なのかなぁって思ったんだけど・・・」
正直大丈夫じゃないです・・・。今でこそ成績はアップしてきてるけど・・・今ここで勉強の手を抜いちゃったら赤点は多分避けられないよ・・・。全国模試前の風太郎君の課題テストも赤点取っちゃったし・・・。でも・・・このコンテストにはどうしても・・・どぉーーーーしても応募したい!
「う、うぅーーーん・・・これには絶対に参加したい・・・けど・・・試験もあるし・・・でも・・・こっちの方に集中しちゃったら怒られちゃうし・・・」
「そ、そんなに悩むほどに成績悪いの?」
「まぁ・・・先生の話だと、来年もやるらしいから、勉強で悩んでるなら無理しなくてもいいんだぞ?」
「そ、そうだよ!中野さん、受験生じゃ大変だろうし、次の機会に回せばいいって!」
「そ、そうですよね。じゃあ・・・・それでいきま・・・」
「・・・やっぱその程度なんっすね、あんた」
来年もやると聞いて、安心した六海がコンテストを来年に応募しようって思った時・・・ここでずっと無口を貫いていた土屋さんが口を開いた。
「つ、土屋君⁉」
「珍しいな、お前が口開くなんて」
一ノ瀬さんと高木さんが驚いているところでわかるように、この土屋さんはとにかく無口で、必要最低限の言葉しかしゃべらないんだ。特に六海とは同い年だからか六海が何かを問いかけても指をさして教えるか、首を縦に頷いたり振ったりして・・・とにかくコミュニケーション能力が乏しい人なんだ。そんな無口な彼だけど、描き上げる漫画は本当に面白くて、全てを漫画に捧げてるといっても過言じゃないんだ。
「・・・中野さんって、いいましたっけ?」
「そう・・・ですけど・・・」
「・・・俺、嫌いですわ。絵がちょっとうまいってだけで、MIHOさんの伝手でコネ入社したあんたのことがめちゃくちゃ」
「んな・・・っ!!」
こ、この人・・・六海に向かってはじめて口を開いたと思ったら初っ端から嫌いって・・・失礼にもほどがある!!
「こ、こら土屋君!失礼でしょ⁉」
「そ、そうだぜ!それに嬢ちゃんは実力で推薦されてるから、これはコネとは言わんだろ!」
「・・・あんたにはわからんでしょうね。先生のとこで一緒に仕事するために、漫画家になるために一生懸命努力した人の気持ちなんて」
この土屋さんの言い分には六海はカチンときた!こればっかりは六海も黙ってるわけにはいかない!
「何それ⁉六海が何も努力してないって言いたいの⁉六海の事何にも知らないくせに、どうしてそんなこと言われないといけないの⁉自分だけは努力してます何て言い草はやめてよ!!」
「・・・だったらこれに応募できますよね?俺たちは漫画家を目指すんすからこれに参加するのは当たり前っすよ?それを勉強があるからって言い訳して・・・この業界舐めてんすか?」
「そっちだって受験生じゃん!!そっちこそ勉強もしないで漫画ばーっかり描いて!受験生だっていう自覚はあるの!!?」
「ちょ・・・ちょっと中野さん、落ち着いて・・・」
「土屋もいちいち煽ろうとするな!お前らしくもない!」
一ノ瀬さんと高木さんは止めに入ってるけど・・・六海と高木さんの言い合いはそれじゃあ止められないほどに悪化していってるよ。2人には申し訳ないけど、六海もこの人がどうにも気に入らない!
「勉強だの受験だのって・・・なんか意味あるんすか?」
「何が言いたいの?」
「漫画家や小説家が売れるってのは結構大変なんすよ。評価が悪いと人気も出ないし、最悪作品を打ち切れられることだってあるんすよ。そうならないためにも、常に腕を磨かないといけないんすよ。勉強してるなんて、大学に行かない俺には時間の無駄っす。俺はこの道一直線に向かってるんで。受験だのなんだのとくだらないことにうつつを抜かしてるあんたとはわけが違うんすよ」
カッチーーン!!!もうあったまにきた!そこまで言い張るなら、六海にだって考えがある!!
「そこまで言うならいいよ?これに応募して、六海の実力を見せてあげるよ!でも、それだけじゃないよ!」
「???」
「今回の判定試験に向けての勉強!!これを両立させたうえで入賞する!!それなら君も六海のこと、認めてくれるよね!!」
「はあ!!?」
「ちょ、ちょっと中野さん!!?」
六海の言い出したことに一ノ瀬さんと高木さんは驚いてるけど、六海はもう決めたの!!
「・・・何を言い出すのかと思えば・・・実力もないあんたに入賞なんて無理に決まってるでしょ。それも勉強を両立させたうえでなんて・・・」
「できる!!!六海は女優の中野一花ちゃんの妹なんだ!!六海にだって両立くらいできる!!」
「中野一花って・・・ええ!!?」
「嘘⁉マジで⁉」
「あれ?君たち、何の話をしてんの?何?喧嘩?」
2人は六海が一花ちゃんの妹であると知ってさらに驚いてる!先生もやっと来たけど、それどころじゃない!!
「・・・わかったっす。勉強を両立したうえで入賞できれば、俺もあんたを素直に認めるっすよ」
バチバチバチバチ!!
六海と土屋さんの間にはお互いに火花が散ってると思うよ。
「え?マジで?一花ちゃんって・・・あの・・・?」
「あのー、先生、あの2人止めなくていいんですかい?」
「何が起きたか知らないけど、対立しあうっていうのはね、お互いに足りないものを知る絶好の機会だと僕は思うんだ。張り合ってるんなら、互いに競い合えばいいよ」
「はあ・・・」
「でもちゃんと仕事はしてもらうけどね」
今日のお仕事が終わってからスタートするんだ・・・六海と土屋さんとの負けられない勝負が。
♡♡♡♡♡♡
・・・や・・・やっちゃったーーー!!!
アルバイトが終わって、家に戻った瞬間に冷静になったよ。みんなの相談もなしに勝手に応募するって決めちゃったよ!もう!どうしてあそこで冷静になれなかったんだろう!!六海のバカ!バカ!!もしも、六海が勝手にこれに応募するなんてことを風太郎君に知られたら・・・
『人間失格!!!!』
・・・て怒られちゃう!!ただでさえ進展してない上に怒られるなんて事態は六海嫌だよ!・・・でも・・・こっちとしても・・・土屋さんの考え方は、どうしても考えられない。前までの六海だったら、確かに勉強なんかって思ったことはあったけど・・・風太郎君と出会えて、その価値観は変わった。だからこそ、あの考えは許せなかったんだ。
「・・・うん、やっぱり、明日みんなに相談しよう。そうしよう」
そりゃ風太郎君に怒られるのは嫌だけど・・・応募するって決めたからには、中途半端にはしたくないからね。ちゃんと話したうえで認めてもらわないと。よし!そうと決めたからには頑張らないと!まずはネームを書いて、原作を描く準備を整えよう!さっそくノートを取り出して、考えた漫画のネームをすらすらと描く。
「あ、また六海が絵を描いてますね」
「六海ー、完成したら読ませてねー!」
「うん、わかったー」
五月ちゃんと四葉ちゃんが今の六海を見て微笑んでくれた。楽しみにしてくれた2人の期待以上のものを仕上げるのが1番のベスト!頑張るぞ!
それで、描くこと結構時間が経って、漫画のネームを完成した・・・けど・・・
「?????」
妙にしっくりこない。というか・・・心に響かないし、感動も伝わらない。絵自体は平気で描けるのに・・・話だけが全くまとまらない。前の作品でも六海の納得のいくシナリオなのに・・・どうして?
「六海ー、ご飯できたわよー」
「あ、はーい!」
考えてる間にご飯ができたから六海はリビングに向かってご飯を食べることにしたよ。考えるのは、その後でもいっか。
♡♡♡♡♡♡
・・・ダメだ・・・。
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ・・・全然ダメだ!!!!!
ご飯を食べたから頭が回るようになったと思ったから今度こそ納得できる作品ができると思って何度もネーム漫画を描いてみたけど・・・納得がいく作品ができない・・・。前まではそんなことなかった・・・。
「・・・!ま・・・まさか・・・」
どうしてかと考えていると、六海にとって最悪のケースが思い浮かんだ。信じたくはない・・・けど・・・何度も何度も・・・描いても描いても、結果は同じ・・・信じざるを得ないよ・・・。こんなことは・・・あってはならないよ!!こんなことは・・・漫画家として死んだのと同じだよ・・・。まさか・・・六海がこんなのになっちゃうなんて・・・せっかくのチャンスが転がり込んできたと思ったのに・・・。負けられない勝負だというのに・・・。六海は・・・どうしたらいいの・・・?わからない・・・わからないよぅ・・・。
♡♡♡♡♡♡
今六海に陥った事態の対処がわからないまま、次の日のお昼休みまで時間が経っちゃった・・・。いくら考えてもどうしてこうなったかの原因がわからない・・・。どうすればこの危機的状況を回避できるのかわからない・・・。
「ねえ・・・真鍋さん。相談があるんだけど・・・いい?」
このままじゃいけないと思って六海は今この状況で1番相談しやすい真鍋さんに相談をするよ。
「いいけど・・・何よ?急に改まって・・・」
「あのね・・・実は・・・」
六海は今の状況を真鍋さんに全部話したよ。真鍋さんは口を挟まずに真剣に聞いてくれてる。全部話した後、真鍋さんは面倒くさいと言わんばかりの顔で頭をかいてる。
「事情は分かったけど・・・私じゃ力にはなれないわよ?私、漫画の知識なんて素人だし。それに判定試験までに克服できる保証なんてどこにもないじゃない」
「難しいのはわかってる・・・わかってるんだけどぉ・・・そこをなんとか助けて!!お願い!!」
何とか助けてほしくて真鍋さんに手助けを懇願しているんだけど、真鍋さんは首をなかなか縦に頷いてくれない。
「私に頼むより他に適任がいるじゃない。あんたの姉妹とか上杉とかに・・・」
「それだけは絶対ダメ!!!!」
お姉ちゃんたちと風太郎君が出てきたところで六海は大きな声で否定する。六海の大きな声と否定には真鍋さんは驚いた顔をしてるよ。
「だって・・・みんなには何の相談もなく決めたうえに、見栄を張っておきながら自分のこの体たらく・・・恥ずかしくて、みんなには言えないよ・・・」
「だから黙った状態で克服を目指すって?それ、無茶ぶりにもほどがあるでしょ」
「だからこそ真鍋さんに頼んでるんだよー!ね、一生のお願い!!六海に協力してよ~~!」
「ああ、もう!鬱陶しい!引っ付こうとすんな!」
六海は必死になって真鍋さんに引っ付こうとしながら頼み込んだよ。けど真鍋さんは捕まる前にちょっと移動して六海を避けた。その反動で六海は転びかける。
「わ・・・わわわ!」
「とにかく!私
「あ、待って真鍋さ・・・うわっ⁉いて!」
教室から出ようとする真鍋さんを止めようとしても、六海の体制が崩れてそのまま転んじゃった。ううぅ・・・真鍋さんに断られた・・・。今の状況で頼れるのは真鍋さんしかいないのに・・・真鍋さんに断られたら・・・六海、本当にこれからどうしたらいいの・・・?
♡♡♡♡♡♡
『なぜ来ていない!!!』
六海が何かに思い悩んでから2日後の勉強会・・・
「・・・試験まで日に日に迫ってきている。そして今日は六海がバイトじゃないのは知ってる。なのに・・・当の本人はなぜ来ていない!!!」
六海がいない状況下に風太郎は思わずに叫んでいる。一花は仕事、三玖と四葉はバイトがあるのでカウントしないが、今日はシフトが入っていない六海が来てないとなれば叫びたくもなる。
「あいつマジでふざけんなよ・・・!この前も変なことやってたし・・・そんなに俺を困らせたいのか・・・!」
「六海に限ってそれはないと思いますが・・・」
風太郎の言葉に五月は冷静ながらにツッコミを入れる。
「でも・・・確かに最近様子がおかしいですね。何かあったんでしょうか?」
「・・・ちょっといじりすぎたかしら・・・」ボソッ
「なんか言ったか?」
「何でもないわよ」
六海の変化には五月や二乃も気づいているようで、少し心配している様子だ。おそらくは他の姉妹も気づいているとは思うが。
「たく・・・試験が近づいてるってのにまたこれか・・・。お前らは試験前に何かしらのトラブルを起こさんと気が済まんのか・・・」
「す、好きでそんなことしませんよ!!」
あきれ果てて頭を抱える風太郎の言葉に五月が反論する。とはいえ、喧嘩を起こしたり、転校どうこうの話、家庭教師解雇の話と、何かと問題はあったため、否定はしてないが。
「・・・誰かあいつからなんか聞いてないのか?」
「何も聞いてないわね。あの子、アタシたちの前だと普段通りの態度をとって何も話さないし」
「あ、でも・・・六海の様子が変わったのは・・・確か、3日前・・・アルバイトが終わった頃でした。帰ってきた時はむすっとしてましたし、その次の日は・・・なんというか、焦ったような顔をしていました」
「・・・てことはそのバイト先でなんかあったのか・・・」
「あの子のバイトって、確か漫画アシスタントだったわね」
「それを知ったところでどうすんだよ・・・あいつのバイト先の知り合いなんて誰1人としていないし、住所も知らんぞ」
六海のアルバイト先の知り合いは残念ながら六海以外誰もいないので、どうしたものかと悩んでいる風太郎。
ヴゥー、ヴゥー、ヴゥー・・・
するとそこへ風太郎のスマホに着信が鳴る。着信者を見てみると、そこには一花の名前が出ていた。
「一花からの電話だ。ちょっと席を外すぞ」
風太郎はそう言って図書室から退室し、すぐに電話に出る。
≪あ、フータロー君?ごめんね、急に電話をかけて≫
「悪いと思ってるなら勉強会に参加しろよ。サボりの回数を増やしやがって」
≪むっ・・・サボりって・・・一応こっちも仕事なんだけどー?しょうがないじゃん。最近忙しくってさー・・・そっちに行く時間が割れなくて・・・≫
「・・・それで?何の用だ?つまらん用事だったら切るぞ」
≪あっと、そうだったそうだった≫
少しだけ世間話をした後、風太郎が話を掘り出し、一花が本題に入る。
≪私今、六海のバイト先の仕事現場にいるんだけどね・・・≫
「は?なんでお前があいつのバイト先にいるんだよ?」
≪いやー、実は私、刑事ドラマで犯人に殺された被害者役をやることになってさー、その撮影のために来てるんだよねー。あ、心配しないで?ちゃんとマンションの大家さんと作者さんには許可はもらってるからー≫
「お前は本当によく死ぬな」
タマコちゃんといい、今回のドラマ撮影といい、よく死ぬ役をやっている一花に風太郎は直球にそう言い放った。
≪それで、話を戻すけどねフータロー君、今六海の様子が変なのは気づいてるよね?≫
「今ちょうど二乃と五月でその話をしてたところだが・・・」
≪私、ちょっと気になって作者さん事情を聞いてみたんだ。そしたら六海、なんかバイト仲間と揉めちゃったみたいで、週刊誌でやるコンテストみたいなのに自分の作品を応募して、賞を取って週刊誌に載せるって・・・」
「は?」
六海がコンテスト・・・もとい最優秀賞決定戦に自分の描いた漫画を応募するという事実を聞いて、風太郎は耳を疑った。
「なんだそれ?そんなの初耳だぞ」
≪うん。私も作者さんからそれ初めて聞いたんだよね。本人は何でもないって言ってたんだけどなぁ・・・≫
「あいつ、俺たちに黙って勝手にそんなことを・・・」
風太郎は六海の漫画家になりたいという夢は知っているつもりだし、参加するだけなら別に文句は言うつもりはない。ただでさえ判定試験で忙しいという時に限って自分たちに何の相談もしないことに頭を抱えっぱなしだが。
「・・・とりあえずあいつに問い詰めてみるわ」
≪うん。勉強会中なのにごめんね?来週には時間は空くから勉強会に参加するよ≫
「おう、了解だ」
≪・・・多分それが、私にとって最後の勉強会になると思うし≫
「ん?なんか言ったか?」
≪う、ううん!何でもない!なんでもないよ?≫
ぼそりと小さな声で何かを口走り、誤魔化す一花の言葉が聞き取れず、少し気になってくる風太郎。
「・・・あの、さ・・・修学旅行の時に最後に言った・・・」
≪あ、ごめん。そろそろ時間だから切るね。六海のこと頼んだよ≫
ブチッ!
「あ!おま・・・!切りやがった・・・。はあ・・・仕方ねぇ・・・」
修学旅行の最終日に一花が言った全部嘘の意味を風太郎は本人に聞こうとしたが、その前に切られてしまい、聞くことができなかった。仕方なく今度会った時に話そうと後回しにし、風太郎は六海の問題の解決を優先する。すぐに六海に電話をかける。少し待っていると、通話が繋がった。
「おい六海、今どこにいるんだ?変なもんに参加しようとしやがって。今そっちに行って説教を・・・」
≪・・・おかけになった電話番号は使われておりません。何度コールしても無駄なのでかけてこないでください≫
ブチッ!
「は?おいお前何言って・・・あ、てめ!もしもし!もしもーし!!・・・あいつも切りやがった!」
だが六海は不在通知の真似事をして一方的に通話を切った。一方的に通話を切られっぱなしで風太郎は若干苛立ちを覚える。
「くそ・・・なんなんだあいつ・・・俺の話は聞きたくないって言いたいのか・・・」
「あ、いた。ちょっと上杉」
話を碌に聞こうとしない六海に風太郎はさらにイライラが増してるところに真鍋が話しかけてきた。
「なんだよ・・・俺になんか用か?」
「六海のことでちょっと話があんだけど・・・」
六海の話題を出されて風太郎はあいつのこと知りたいのはこっちの方だと言わんばかりに頭をかいている。
「なんだよ?言っておくがあいつが変なもんに参加するってのはさっき一花から聞いたぞ」
「あらそう。じゃああの子が何に悩んでるのかってもう知ってるのかしら?」
「ん?なんだ?変なのに参加したことじゃないのか?」
「やっぱそれしか知らなかったのね。あの子が参加してしまった事事態で悩むわけないでしょう」
「む・・・それもそうか・・・」
「ふぅ・・・本当は黙っててって言われてたんだけどね・・・悔しいけど、やっぱりあんたらじゃないとさ・・・」
六海の悩みが出てきて、風太郎の顔つきが変わった。真鍋は呆れながらも六海が今何に悩んでいるのかを風太郎に包み隠さず話した。事情を全て知った風太郎は呆れたように頭をかく。
「あいつ・・・自分だけで何ができるって言うんだよ・・・1人で解決できる問題じゃねぇだろ・・・」
「何度かあの子にそう言ったんだけど、聞く耳持たなくてね・・・あの子意外に頑固だから・・・」
「たく・・・今すぐ説教してやる」
風太郎はもう1度六海に電話をかけ直そうとする。
プゥー、プゥー・・・ブチッ!
「あ!あいつ!通話にも出やがらねぇ!」
「もう通話拒否ボタンを押してもおかしくないレベルね」
だが六海は通話するどころか、一方的に通話拒否をしている。
「たく・・・あいつに直接会うしかねぇか・・・しかし・・・今どこに・・・」
「・・・!説教をするんなら、急いだほうがいいんじゃない?」
「ん?」
「あの子、今路頭に迷ってる最中だしさ」
六海がどこにいるのかと頭を抱えていると、真鍋が窓を見るように指をさしている。窓の外には、六海が立ち上がってかばんから筆記用具を落として慌ててる姿があった。
「あいつ・・・まさか逃げる気か!」
「フー君、行くのよね?」
「!二乃、五月。今の話、聞いてたのか?」
「す、すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが・・・」
風太郎が六海の姿を確認したのと同時に、真鍋の話を聞いていた二乃と五月が声をかけた。
「六海は意外に頑固なので、私たちが言っても聞かないかもしれません」
「でも、フー君なら楽勝よね。姉妹たちにはアタシ達の方で言っておくから、行ってきなさい」
「お前ら・・・」
「姉妹もああ言ってるんだし、早く行きな」
「・・・上杉君。六海のこと、よろしくお願いします」
「・・・すまん。恩に着る」
二乃と五月、真鍋から六海を託された風太郎は帰ろうとしている六海を追いかけに走ったのであった。
♡♡♡♡♡♡
あれから六海は今の状況をどうにか克服するために何冊か漫画をノートに描いてるんだけど・・・2日経っても一向に変わらなかったよ。はぁ・・・どうしてこうなっちゃったのかなぁ・・・?やっぱり締め切りまでに1人で克服するのは無茶かなぁ・・・?でも・・・風太郎君たちには相談できないし・・・どうしよう・・・。
≪お姉ちゃん電話だよ♪お姉ちゃん電話だよ♪≫
六海が悩んでたらスマホから着信が鳴った。確認してみたら、風太郎君の名前があった。あ、そっか。今日も勉強会だったっけ。ぼんやりしてたからすっかり忘れてた。とりあえず出よう。
≪おい六海、今どこにいるんだ?変なもんに参加しようとしやがって≫
!!!???え?え?なんで風太郎君は読み切り応募のこと知ってるの!!?詳しいことは知らない様子だったみたいだけど・・・あ!さては真鍋さんから聞いたな!もう!黙っててって言ったのに!真鍋さんのバカ!
≪今そっちに行って説教を・・・≫
「おかけになった電話番号は使われておりません。何度コールしても無駄なのでかけてこないでください」
説教されたくないのと申し訳さなで相談できない気持ちがいっぱいで六海は不在通知のものまねをしながら通話を切った。・・・やばい、どうしよう・・・このままじゃ風太郎君が六海を探しに来るかも・・・!そしたらきっといろいろ問われる・・・!は、早く片付けて学校から出ないと・・・!
≪お姉ちゃん電話だよ♪お姉ちゃん電話だよ♪≫
片付け終わったところでまた風太郎君からの着信が届いた。ダメ!絶対に相談できない!六海は今度は問答無用で着信を切った。やばいやばいやばい!風太郎君はまだ学校にいるから絶対に探しに来る!早く学校から出て安全を確保・・・
「あ、筆記用具!」
六海が立ったと同時にその反動で筆記用具を落としちゃった!しかも文房具まで出てきちゃったし!ああ、もう!急いでるって時に!これがないと何も描けないのに!六海は急いで落ちてしまった文房具を拾って筆記用具に入れなおして、それをもう1度かばんの中に入れる。ちゃんとチャックも閉めたし、これで落ちない!早くここから脱出しないと!六海は急いで学校の出口へと向かって走る。
「あ!いた!おい六海!」
「!!やば・・・!」
「あ、こら逃げんな!!」
うわっ!もうすぐで学校に出れるって時に風太郎君に見つかった!六海は立ち止まらずに、逃げるために走る。風太郎君は・・・やっぱり追いかけて来てるーーー!!!
「待てこの問題児末っ子が!!!」
「キャーー――!!変態!!こっちに来ないでよーーー!!」
「そうはいくか!!まず俺の話を聞け!!」
「どっか行け――――!!」
変な言い合いをしながら六海と風太郎君との追いかけっこは続いた。風太郎君は運動音痴だから六海との距離が縮まらないし、六海も運動音痴だから距離を突き放せなくて、無駄に体力だけが削られていっちゃう。
「ぜぇ・・・はぁ・・・も、もうダメ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・も、もう限界だ・・・」
お互いに体力の限界が来て、六海も風太郎君もいつの間にか来た公園の砂場で倒れこむ。ぜぇ・・・はぁ・・・も、もう・・・起き上がる気力も・・・残って・・・ない・・・。
ガシッ!
「キャーーーーー!!」
「はぁ・・・はぁ・・・ふ・・・ふふふ・・・捕まえたぞ・・・もう逃がさねぇ・・・」
気力では風太郎君が勝ったようで、風太郎君は突っ伏したままで移動して、六海の足をがっちりと掴んだ。
「お・・・お前・・・なぜ自分が・・・スランプになったってことを話さなかった・・・?」
「・・・・・・」
スランプ・・・それは何らかで自身の能力が落ちて、自分の才能を思い切って発揮できなくなってしまった現象のことで、いろんな場面でそれは現れるんだって。そして現在六海も・・・漫画のスランプが起きちゃったの・・・。だから非常に焦ってるんだよ・・・。
「・・・風太郎君は、六海が読み切り応募のことは、もう知ってるよね?」
「ああ・・・それは作者が言ってたって一花がな」
ああ、そっか・・・。今日は確か部屋を貸すことになったから休みって言ってたのは、一花ちゃんの撮影の云々だったんだ・・・。
「・・・言えるわけなかったんだよ・・・。みんなの相談もなく勝手に応募を決めて、両立させて賞を取るって堂々と言ったくせに、スランプに陥るなんて体たらく・・・しかも今さら前言撤回なんてできないから・・・恥ずかしいし、申し訳なかったんだよ・・・だからしゃべりたくなかったんだ・・・。それなのに・・・真鍋さんの・・・バカぁ・・・」
「・・・はぁ・・・お前なぁ・・・」
言わざるを得ない状況だから、仕方なく話したら、風太郎君は六海の足から手を放して、呆れながら立ち上がった。
「スランプの克服なんて、どれくらいかかるかわかんねぇもんを1人でどうにかできると思ってんのかよ。原因がわかってねぇどころか、締め切り日までに克服なんて・・・無茶どころか無理な話だぞ」
「・・・そんなの・・・わかってるよ・・・」
「だったら悪いことは言わん。今年の応募はやめとけ。お前の漫画家になろうって気持ちは知ってるつもりだがあまりにも無謀すぎる。それに何も今年で最後ってわけじゃねぇんだから、次の機会に回して試験を突破し、スランプ克服に向けた方がよっぽど・・・」
「それだけは絶対嫌!!!!」
風太郎君が六海のことを気遣っての提案だっていうのはわかってる。けど・・・それでも六海は絶対、これを曲げることなんかできないよ。
「・・・土屋君・・・アルバイト先の同級生が言ってたんだ・・・大学行かないから受験とか、勉強とかくだらないって。それで六海が傷つくのは我慢できるよ。でも・・・でもね・・・六海が土屋君の考えを認めちゃったら・・・これまで頑張ってきた受験生や・・・今まで勉強を頑張ってきた風太郎君の頑張りを、否定するような気がして・・・」
「・・・お前・・・」
「六海は、一生懸命頑張ってきた風太郎君やみんながバカにされるのが嫌なんだ・・・。だから・・・土屋君の考えを改めさせるには、これしか方法がないんだよ・・・」
「・・・・・・」
「だから・・・お願いだよ。真面目に勉強するから・・・六海のわがままを許してよ。六海のスランプ克服に集中させて。六海は・・・後悔なんかしたくないんだ」
六海は疲れた体を起こして、風太郎君に誠心誠意を込めて、深く頭を下げる。スランプを短期間で克服したって賞を取れるとは限らないのはわかってるつもりだけど・・・もう後悔しないようにするって、家族旅行の時に決めたんだから。
「・・・俺にたいして言った事でもないだろうが・・・たく・・・」
頭を下げているから、風太郎君が今どんな顔をしているのかわからない。見えるのは彼の足だけ。
「・・・とにかく、これ以上の勝手な行動は許さん。試験に支障をきたすだろうが」
「風太郎君!」
「・・・せめて相談くらいはしろ。真鍋とお前の姉妹が強力くらいはしてくれるだろうからな」
「え?」
一瞬六海のやることを否定されたかと思ったら、次の言葉に面を食らった。真鍋さんとお姉ちゃんたちが、協力してくれる?
「スランプ克服はいいが、あくまでも優先すべきは試験だってことを忘れんな。多少の時間くらいはくれてやる。その代わり、今まで以上にビシバシしごいてやるから今のうちに覚悟しておけ」
「・・・もしかして、六海のわがままを・・・許してくれるの?」
「・・・頑固者に何を言ったところで無駄なのはわかってるつもりだ。ならせめて万全なコンディションでいられるように手を加えるしかないだろ。・・・それに、な・・・」
言葉を紡いでいる風太郎君は照れ臭そうに前髪をいじってる。
「お前らが誰か1人でもなんかあったら・・・調子が狂うんだよ・・・」
「・・・っ!」
風太郎君・・・。ああ・・・そういうところだよ・・・。普段は素っ気なくても、最終的には六海たちのことを思って、お節介を焼いてくれる・・・。風太郎君自身は自覚はないだろうけど・・・六海は、そういう優しさに惹かれたから、君を好きになっちゃったんだ・・・。
「・・・でも、協力、してくれるかな?みんなには迷惑かけてばっかりだし・・・真鍋さんだって、断られちゃったのに・・・」
「・・・真鍋の奴は、私・・・
「・・・あ!」
「どういう意味かは、わかるだろ?」
・・・はは・・・なんだ・・・そういうことだったんだ・・・。やっぱり六海は・・・いつまでたってもバカだなぁ・・・。
「迷惑をかけるなんて、それこそ今さらだろうが。お前は余計なことなんか考えず、俺の勉強会に参加して、やりたいことをやればいいんだよ」
「・・・うん!」
不思議だな・・・風太郎君が六海の背中を押してくれてるんだろうと考えると、六海の頬が思わず緩んじゃうよ。
「スランプはそう簡単に克服できるものじゃないのはわかってる。六海だけじゃどうにもできないよ。だから・・・六海に、手を貸してくれる?」
「ああ・・・もとより、そのつもりだ」
ここから、六海にとっての本当の戦いが始まったんだと思う。土屋君との勝負・・・そして・・・六海の、スランプとの戦いが。
48「予期せぬ問題発生」
つづく
おまけ
長女ちゃんはお片づけができない
四葉「とりあえず一花のところ、きれいにしておいたよ」
五月「自分の布団のところだけに汚部屋になろうとは・・・ある意味才能ですね・・・」
一花「あはは・・・いやはやお恥ずかしい・・・毎度ながらごめんね?」
二乃「そう思うのなら片付けることを心掛けなさいよね。全く・・・全員で使う寝室なんだから・・・」
一花「善処しまーす・・・」
六海「あ、やった!狙ってたおウマちゃんを出迎えれたー!」
三玖「六海、何サボってスマホゲームやってるの」
綺麗になった寝室であったが、翌日になると・・・
二乃「なんでまた汚部屋の片鱗ができてるのよ!!?」
三玖「昨日あんなに片付けたのに・・・」
一花「むにゃ・・・zzz」
四葉「また片付けないといけないねー」
六海「むにゃ・・・あれ・・・?みんななんでお馬さんの耳と尻尾が生えてるの・・・?」
五月「六海、寝ぼけてないで顔を洗ってきてください。そんなもの生えてませんから」
一花のエリアがきちんと清潔になるのは、果たしていつになるのだろうか・・・それは、誰にもわからない。
長女ちゃんはお片づけができない おわり