六等分の花嫁   作:先導

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ちょっと遅れてしまいましたが、なんとか完成しました。今回はとっておき・・・なんですがやっぱりいざ投稿するとなるとちゃんと面白くできたかって不安がありますね。読んで楽しんでもらえるのなら幸いなんですけどね・・・こればかりはなんとも・・・

次回は一旦原作に戻ります。そして、次話には六つ子ちゃんが水着姿になります。六海ちゃんがどんな水着を着るか、想像してみてください。

余談ではありすが・・・この六等分の花嫁と今ハマってるアプリゲーム、ウマ娘のクロスオーバーネタが思いついたのですが、見たいって人います?設定としては今作品の未来の話で東京に住むようになった四葉ちゃんがトレーナーになっており、ウマ娘を育て、結成したチームでトゥインクルシリーズを目指すといったありきたりなものですが、どうですかね?やるかどうかは未定ですが。

ちなみに、載せるって決めた場合は別作品にする予定で、風太郎の嫁はまだ本編で発表してないのでその設定もどうなるかは秘密です。
そして、担当の1人はライスちゃんと決まっております。ちなみに私はまだライスちゃんを出迎えておりません。ウマ娘の中で推しなのに悲しい(泣)

長々と本編と関係ない話をして申し訳ございません。本編をお楽しみください。


勝負後の告白

「・・・と、いうわけで・・・これが今現在起こってる六海の状態です・・・」

 

昨日の出来事から次の日、今日は家庭教師の日でお部屋に集まった風太郎君とお姉ちゃんたちに、六海の口からこれまでの経緯を全部話したよ。

 

「六海がまさかスランプになるなんて・・・」

 

「今までこんなことあったっけ?」

 

「今回が初めての例だったはずよ」

 

「描きたいものを描けないというのは、辛いですよね・・・その気持ち、よくわかります」

 

「お前は描くことより食い気の方だろ」

 

「失礼ですね!!」

 

「六海も辛いのに、気づかなくってごめんね」

 

みんな六海がスランプになったことにたいして、とっても心配してくれてるのがわかるよ。その気持ちに六海の気持ちはちょっと楽になってきたよ。

 

「こほん・・・とりあえず状況を整理するぞ。まずこいつはバイト仲間の挑発にまんまと乗り、漫画雑誌にあった変なもんに自分の作品を応募しようとした。ここまでは理解したな?」

 

「変なもんって・・・」

 

「全然変じゃないよー」

 

風太郎君の言い方がちょっとムカつく。しかも本人は気にせず話を続けちゃうしさ。

 

「だがその変なもんの締め切り日は最悪なことに判定試験当日、ただでさえ勉強もしなければならんという時に原因不明のスランプだ。試験日までに何としてもスランプを克服したいというのが六海の気持ちだ。正直、頭が痛くなる話だ」

 

うぅ・・・お手数をおかけします・・・。

 

「・・・私たちに、できるのかな?そんなすごいことを・・・」

 

「できるかなと言われましても・・・」

 

「正直な話、やっぱり難しいんじゃないかな?有名な画家さんだって、自分のスランプを克服するのに、半年や1年くらいはかかるし。何とかしたいとは思ってるんだけど・・・」

 

「そもそも期限が2、3週間っていうのが厳しいわ」

 

「・・・やっぱりだめ・・・かな・・・?」

 

お姉ちゃんたちのかなり難しい顔を見て、やっぱり協力するのは無理なんじゃないかって思えてきた。六海だって他のお姉ちゃんが六海と同じ立場だったら、六海だって渋い顔をするもん。

 

「できるよ!」

 

六海が半分諦めかけた時、四葉ちゃんが何の根拠もないことを堂々と断言した。

 

「これまでの試験だって、上杉さんやみんながいたから乗り越えられたんだよ!障害物が1つ増えただけ!私たち7人が力を合わせれば、スランプっていう障害物も、試験も、乗り越えられるよ!」

 

「四葉ちゃん・・・」

 

四葉ちゃんの言ってることは何の確証もないし、絶対にそうなるとは限らないと思う。でもそれでも四葉ちゃんの言葉に、六海は心強く感じるし、何よりも、六海を思ってくれてるのが嬉しかった。

 

「うん・・・そうだよね・・・やってみる」

 

「本当に難しいことですが・・・粘れるだけ粘ってみましょう」

 

「んー、じゃあお姉ちゃんも一肌脱いじゃおっかなー」

 

「みんな・・・」

 

四葉ちゃんの言葉にお姉ちゃんたちも次々とやる気を出してくれてる。みんな、六海のために・・・。

 

「はぁ・・・全く・・・無茶ぶりにもほどがあるでしょ・・・でも・・・やってやろうじゃない」

 

「みんな・・・ありがとう・・・」

 

六海のためにここまで協力してくれるお姉ちゃんたちに六海は思わず泣きそうになったけど、ここはぐっと堪えたよ。この涙は・・・試験を乗り越えて、賞を取った時に残しておくんだ。

 

「六海、あんた今日からアタシの手伝いをしなさい。アタシが料理してる姿を見たら、少しは克服のきっかけになるかもだし」

 

「あ!じゃあ来週草野球チームの試合見に来てよ!私、助っ人として参加できないか掛け合ってみるから!」

 

「六海、後で私の部屋に来てね。スランプ克服のために、いろんな逸話を用意しておくから」

 

「私も、下田さんに塾の見学ができないか確認をとってみますね」

 

「おっとみんな行動早いねー。それなら・・・六海、今度撮影の見学してみない?社長から許可はとっておくからさ」

 

「お、おいお前ら勝手に・・・」

 

「うん、もちろんオッケーだよ!1秒でもスランプを克服できるように!」

 

みんな次々とスランプ克服のためのネタを一杯提供してくれた。それだけでも十分にありがたいよ。

 

「はぁ・・・言っておくが俺のやることはいつも通り勉強を教えてやる以外は何もできん。俺には期待するんじゃねぇぞ」

 

「それだけでも十分だよ。頼りにしてるからね、せーんせ♪」

 

それに風太郎君は期待するなと言っているけど、それは無理な話だよ。漫画の知識はなくても、風太郎君が六海の勉強を見てくれるんだもん。きっと試験ではいい結果を残せるはずだよ。

 

「・・・ふん、やる気があるのは大いに結構だ。ならば俺もその期待に応えるとしよう。そのためのものも用意してある」

 

風太郎君は若干不敵な笑みを浮かべてかばんから何かを取り出した。出てきたのは・・・以前見たことがある大量のプリントの山だった。

 

「あ、あのー、フータロー君先生や?これは何ですか?」

 

「これは俺がまとめ上げた判定試験で出てくる想定問題集だ。六海がサボった分の問題集もちゃんと用意してある。去年の問題集より多いが、勉強できなかった分の遅れはこれで取り戻せるぞ」

 

「嘘でしょ・・・これ、六海1人分だけ・・・?」

 

「勉強する時間が減るんだからこれくらい当然だ」

 

「「「「うわー・・・」」」」

 

こ、こんなの絶望しかないよ・・・。去年の問題集より多くて、さらに六海1人だけこれをやらなきゃいけないという拷問に六海はひどく顔を青ざめてるのが自分でもわかるよ・・・。

 

「や、やっぱり協力しなくていい!!六海1人で何とかするから!!」

 

「コラ!逃げるな!!これもスランプ克服の一環だと思え!!」

 

結局六海は大量の問題集を受け取ってしまい、これをやらざるを得なくなってしまいました。とほほ・・・やっぱ風太郎君に話すんじゃなかった・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

「はぁ・・・もう~・・・なんだよこの量・・・」

 

アパートでの勉強が終わった後、六海は今日もアルバイトに行ってるんだけど、時間が1秒でも欲しいからお仕事が始まる前に勉強してるよ。もちろん先生の許可はもらってるよ。それににしてもこの量は本当にないよ~・・・ただでさえ去年のやつだって多かったのに・・・。

 

「いやぁ、勉強してるってのは感心するねー。土屋君も見習えばいいのにね」

 

「・・・・・・」

 

先生は六海のことを感心してるような声をあげてる。土屋君は・・・相変わらずの姿勢だ。その姿に六海はむっとなる。

 

「さて、と。僕は一服してこようかな。中野さん、勉強頑張ってね」

 

先生は火がついてない煙草を口に加えてお外に出ていった。残ったのは六海と土屋さんだけ。そうだ・・・負けてなんかいられない!夢を逃げ道に使ってる彼にも、自分自身のスランプにも!その考えるだけで気落ちしてた気分に火がついて、大量の問題用紙と向き合って、勉強を再開するよ。

 

「お、今日はここで勉強してんのか嬢ちゃん」

 

「すごいなー。感心しちゃうよー」

 

「あ、こんばんは」

 

勉強を進めていると、高木さんと一ノ瀬さんが遅れてやってきた。

 

「・・・て、うおっ⁉なんだこのプリントの山は⁉」

 

「これ全部問題集⁉うわぁ・・・これ50くらいあんじゃない?」

 

六海がやってる問題集が多いことに2人はドン引きしちゃってる・・・そうだよ、これが普通の反応だよ・・・風太郎君にも見せてやりたいよこのドン引き具合を。

 

「こ、これ全部やるつもりだったのか・・・?」

 

「まぁ・・・毎日コツコツやってたら、多分いけると思いますので・・・」

 

「ちゃ、チャレンジャーだね・・・」

 

大変なのは十分に理解してるつもりだよ。でも去年と同じ要領でやったら多分・・・いける・・・よね・・・?

 

「!中野さん、問18問目の計算問題、間違ってるよ」

 

「えっ⁉・・・あ、本当だ・・・」

 

一ノ瀬さんの指摘されて、そこの問題を見て、計算し直してみると本当に間違ってたのに気づいた。

 

「すげーな。今のわかるのか?」

 

「まぁ私、それなりにいい学校に通ってましたからね。本気で漫画家、目指したかったんで」

 

「!本気で、ですか?」

 

「うん。そりゃ土屋君のやり方もありっちゃあありだけどね、やっぱ独学にも限界があるし、何より・・・漫画家の世界ってのを、もっと知りたかったからね」

 

一ノ瀬さんの言ったこと、わかる気がする。六海も本気で漫画家になりたいから・・・六海はまだまだ未熟だから・・・もっとたくさんのことを学びたい。そのためなら、どんな道だって進む。このアシスタントだって、専門学校に行くのだって・・・そのための道のりなんだ。

 

「・・・よし!乗り掛かった舟だ!わからない箇所があったら教えてあげるよ!」

 

「!い、いいんですか⁉」

 

「もちろん!一緒にやった方が、課題早く終わるって」

 

「・・・!じゃ、じゃあ、前のプリントで飛ばした問題があるんですけど・・・」

 

一ノ瀬さんの提案はすごくありがたかったからお言葉に甘えることにしたよ。それに、五月ちゃんだってその・・・下田さん?っていうMIHO先生のお姉さんのお手伝いをしながら学業向上に励んでるし、誰かに教わるなとは言われてないからね。なんだかちょっと希望が湧いてきちゃったよ!

 

「・・・よし!乗り掛かった船だ!俺も協力するぜ!」

 

「高木さんも・・・ありがとうございます!」

 

ここまで親身になって協力してくれるなんて、六海はなんて恵まれてるんだろう・・・。本当に、幸運を感じるよ。

 

「あ、後で一花ちゃんのサインもらえると嬉しいな。私、ファンなの」

 

「あ、俺も頼む。嫁と息子がファンなんだよ」

 

「・・・・・・」

 

・・・まぁ・・・下心も出てるみたいだけど・・・。この勉強会は、先生が戻ってくるまで続いたよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

勉強も大事だけど、六海にとってスランプ克服はもっと大事だよ。だから1分1秒の時間も無駄にはしたくはないよ。だから勉強の時間以外はスランプ克服に向けていろいろやってるよ。例えば、一花ちゃんの撮影の見学をしたり、二乃ちゃんと一緒にお料理を手伝ったり、三玖ちゃんの知ってる戦国武将の逸話を聞いたり、四葉ちゃんが助っ人として参加してるスポーツの試合を見学したり、五月ちゃんが手伝ってる塾の見学をしたり、真鍋さん所の孤児院で子供たちと遊んだりと、とにかくいろんなことに手を付けた。ネタさえ手に入れれば少しはスランプ克服に近づけると思って。

 

・・・でも、どれだけネタを手に入れても、六海のやらないことをやっても、出来上がる作品は全く変わらないし、スランプも克服できてない。何の面白味もない。感動できない。表現が下手すぎる。描けば描くほど、駄作ばっかり出来上がっちゃう。これだけやっても何も変わらないことに六海は激しく絶望したこともあった。もう、今までみたいに描くことはできないのかって。

 

それでも、絶対に諦めたくない。漫画でだって、勝負は最後の瞬間まではわからないって。だから六海は、ギリギリまで粘る。諦めたら、絶対後悔すると思うから。そんな気持ちを抱きながら試験日と締め切り日まで後4日という今日の放課後、六海はスランプ克服のために、今日はいつも通りの絵を中庭で描いてるよ。やっても変わらないかもしれないけど、少しでもやることはやっておかないと・・・。

 

パシッ

 

「たく・・・何やってんだ・・・勉強の時間はとっくに過ぎてるぞ」

 

「あ・・・風太郎君」

 

絵に夢中になってると、風太郎君が今日のプリントで六海の頭をはたいてきた。風太郎君が見せてきているスマホを見てみると、今日の勉強会の開始の時間が過ぎていた。

 

「あはは・・・熱中しすぎちゃった・・・」

 

「たく・・・なんだこの大量の絵の山は?いくら何でもやりすぎだぞ」

 

「50枚近く問題集を作る風太郎君には言われたくないよー」

 

まったく・・・何そのやれやれみたいな顔。言葉のブーメランとか、同じ穴の狢って言葉を知らないの?いや、知ってるだろうと思うけどね。

 

「・・・なあ、やはり期日までスランプ克服は無理がある。確かにお前は今まで普段やらないことまでやって頑張っているのはわかる。だがもう後4日だぞ。どうにもならん状況だ。それでもまだ続けるというのか?」

 

「・・・もちろん、続けるよ。最後の瞬間まで諦めない」

 

「はぁ・・・お前らはなんでそうも頑固なんだよ・・・」

 

それは風太郎君にも言えることだよ。もう赤点回避は無理だろうって時でも風太郎君は意思を曲げずに六海たちに勉強を教えてきた。それと同じだよ。

 

「大体何でそこまで漫画に拘るのかが全くわからん。お前の絵はうまいんだから別に漫画家でなくても食っていけるだろう」

 

そういえば風太郎君は六海が漫画家を目指す理由を知らないんだったね。でもそれ今さらすぎない?遅すぎっていうか・・・。

 

「・・・漫画を描くことは六海の人生の中で唯一見つけたやりたいことだからだよ」

 

「唯一?」

 

「実をいうとね・・・六海、中3の終わりまではそんなに絵が得意ってわけじゃなかったの」

 

「え?そうなのか?」

 

「そんな状態での六海はね、自分のやりたいことを探すので必死だったんだ。その過程でいけないことまでやっちゃった。自分は間違ってないって言い聞かせて」

 

いけないことっていうのは六海にとっての黒歴史・・・凶鳥だった頃にやってた喧嘩のことだよ。当然これは風太郎君に言うつもりはないけど。

 

「でも六海のやってたことが間違いだって気づいて、じゃあ何をすればよかったんだーって、ずーっと悩んでた時に見つけたのが、いつも読んでる漫画雑誌の最新刊の漫画だよ。その話がね、とにかく面白くって、胸がね、ぽかぽかしちゃっててね・・・気づいたら六海、泣いちゃってたくらいに感動したの」

 

MIHO先生が描いたあの漫画は今でも忘れられないし、今もずっと読んでる。それだけ心に残ったお話だったんだ。

 

「それで気づいちゃったんだ。六海のやりたいことはこれだー!って!六海はあの人を超えるようなすごい漫画を描きたいんだって!そう思ったらいてもたってもいられなくなってね、六海、先生に絵を教えてもらいに行ったの。やっと見つけた六海のやりたいこと・・・六海の、夢だから」

 

「それがお前の漫画家になりたいという原点か・・・」

 

「うん。だからね・・・乗せられた形にはなっちゃったけど・・・コンテストに応募しようって決めた時、こう思ったんだ。六海が望み続けたものなんだ・・・。このチャンス、絶対に逃さないよ!って」

 

勝負云々のことを忘れたわけじゃないけど、あのコンテストは六海の夢を叶えてくれる道のりの近道なんだ。絶対に、このチャンスを逃したくなんかなかった。・・・そう、思っているはずなんだけどなぁ・・・

 

「・・・と、思ってはいるものの・・・現実はご覧のありまさで・・・とほほ・・・」

 

「・・・それでも、意見を変えるつもりはないと?」

 

「・・・もちろん」

 

「・・・そうか」

 

若干暗い気持ちになった時、風太郎君からの質問に六海は迷いなく答えた。答えを聞いた風太郎君はもう何も言わないと言わんばかりの顔になってる。六海のわがままに付き合ってくれて、風太郎君には本当に感謝しかないよ。・・・あ、そうだ♪

 

「そうだ!風太郎君、六海の似顔絵を描いてみてよ!六海も風太郎君を描くからさ!」

 

「はあ?」

 

六海の名案に風太郎君は心底嫌そうな顔つきになってる。そんな顔されるとひどく傷つくんだけど・・・。

 

「なんで俺が?てか勉強時間すぎてるってさっき・・・」

 

「ね!お願い!風太郎君の絵がどんなのになるのか見てみたいの!描いてくれたら勉強に戻るから!スランプ克服になるかもしれないし、お願いだよ!」

 

「ぐっ・・・しかし、他の姉妹たちが待って・・・」

 

六海のお願いに風太郎君はかなり渋ってるなぁ・・・。ちょっと挑発してみようかな。

 

「風太郎君、六海のスランプ克服に協力してくれるんだよね?それともあれは嘘だったの?」

 

「お、お前なぁ・・・!」

 

「もしかしてだけど・・・自分の下手くそな絵を誰かに見られるのが怖い、とか?」

 

「あ?俺を舐めるんじゃねぇぞ。紙とペンをよこせ。その気になればエベレストだって描ける。行ったことないがな」

 

軽い挑発のつもりだったんだけど、思いのほかあっさりと絵を描く気になってくれた。・・・風太郎君って、案外チョロい?

 

「じゃあ、はい、紙とペン。下敷きも貸してあげるよ」

 

「ふっ、六海よ、俺の絵を見て腰を抜かすなよ?」

 

風太郎君のその自信はどこから湧いてくるんだろう?心底羨ましいよ。その自信があったら漫画を誰かに見てもらうのに役立ちそうだし。と、風太郎君が描き始めたんなら、六海も風太郎君を描いちゃおうっと。まずは風太郎君が絵に収まるように調整をして・・・角度も調節して・・・うん、ここがいいな。よし・・・。

 

(・・・何やってんだ俺は・・・安っぽい挑発に乗せられて・・・)

 

風太郎君を見てみると、六海の挑発に今さら乗ったことを気にしだしたみたい。でも・・・絵を描いている風太郎君なんて・・・なんかレアな光景だな。それに・・・

 

「ふふふ・・・」

 

「?どうした?」

 

「ねぇ、風太郎君はここ、覚えてないかな?」

 

「何が?」

 

「ここ、六海が風太郎君の絵を初めて描いた場所だよ」

 

そう、ここは六海が初めて風太郎君を描いた中庭なんだよ。あの時のことはハッキリと覚えてる。あれからもうすぐで1年になるのかぁ・・・時が経つのは早いなぁ。

 

「ああ、そういえば・・・。ここでお前が絵を描くことが趣味って初めて知ったんだったな」

 

「あの時はあまり気乗りしなかったんだけど、らいはちゃんのためだったしね」

 

「俺を敵対しまくってたお前が、今やこんなことになるとは・・・」

 

「人生何があるのかわからないもんだね~」

 

最初あれだけ嫌っていた風太郎君とこうして絵を描いてるどころか・・・風太郎君のことが、こんなに大好きになっちゃったなんて、今でも想像がつかなかったよ。そう考えると、あの時のことも、いい思い出だなぁってしみじみに思っちゃうよ。と、そう考えている間にも、こっちは総仕上げに入ろっと。

 

「後はここをこうすればっと・・・よーし、完成ーー!」

 

「何っ⁉もうできたのか⁉」

 

「当然!じゃーん、これが完成品でーす!」

 

六海が早めに絵が出来上がって驚いている風太郎君にたった今完成した風太郎君の絵をしっかりと見せた。六海の絵に風太郎君は手を止めて、感心してる。

 

「俺だ・・・やっぱりお前の絵はうまいな・・・」

 

「えへへ、ありがと♪」

 

六海は絵を褒められて、胸のあたりがぽかぽかする・・・。やっぱり六海は誰かに絵を褒められるの、好きだな。それが風太郎君ともなれば、もう何倍も・・・。・・・そういえば、誰かに絵を褒められるの、久しぶりかもしれない・・・。

 

「はい、今度は風太郎君の番だよ。見せて見せてー」

 

「ちょ、ちょっと待て!まだ完成してない!覗き込もうとするな!」

 

「えー!遅いよー!早く―!」

 

「みんながお前みたいに早く描けると思うな!」

 

文句を言いながら風太郎君が六海の絵を出来上がるのを今か今かと待つことにしたよ。どんな絵に仕上がるんだろう・・・なんかちょっと楽しみ♪文句と期待を入り混じりながら待つことだいたい30分くらい・・・

 

「・・・思ってたのと違うな・・・」

 

「あ、できた?見せて見せて!」

 

「あ!おいこら!取るな!見るんじゃない!」

 

「嫌です、拝見しまーす。えーと、風太郎君の絵の出来栄えは・・・んなっ!!?」

 

六海が風太郎君の絵を見て、その出来栄えにたまげてしまった。六海は別に風太郎君の絵がうまいとは思ってはいない。その思いは予想通りなんだけど・・・なんというか・・・その・・・言葉では言い表すことができないくらいの下手くそぶりだったよ。もう原型がとどめられてないし、下手をすれば四葉ちゃんより下手くそかも。

 

「う、うわあ!!めっちゃ恥ずかしい!!」

 

「下手くそぉ!!!六海はこんな顔なんかじゃないよぉ!!!」

 

「仕方ないだろ!絵なんて美術以外では描かねぇんだよ!だいたいお前が描けって・・・」

 

「うぅ~~・・・」ウルウル・・・

 

「て、悪かったから泣くのはやめてくれ・・・」

 

下手だとは思ってたけど、まさかここまで超ド下手くそだったなんて思わなかったよ・・・こんなことなら絵を描けなんて言わなければよかったよ・・・。

 

「大体何なのこの顔?どうしたらこんな顔になるわけ?ちゃんと六海を見て描いたの?」

 

「見て描いたっての・・・」

 

「嘘だ!どんな下手くそでもちゃんと見てたらこんな顔にならないよ!」

 

「だから見たって・・・つーかこんなとこで描いてたら手元が狂うんだ。しょうがないだろ」

 

「六海、よく机なしで描くけど、そんな風になったことないよ。だから風太郎君は六海をちゃんと見てなかった!」

 

「・・・ああ言えばこう言う・・・どうすればいいんだよ・・・」

 

風太郎君の絵が下手くそでもいいんだけど・・・せめて顔だけはどうにかしてほしいよ。

 

「だから・・・六海のこと、ちゃんと見て描いてよ・・・」

 

「⁉あ、あの・・・六海・・・?顔が・・・」

 

「ほら・・・よく見えるでしょ?六海の顔が」

 

「ち・・・近・・・」

 

やり直ししてほしいと思って六海は今度はよく顔が見えるように風太郎君の頬に手を伸ばしながら、ぐんぐんと顔を近づけ・・・

 

「あーーーーーー!!!!ちょっと!!何やってんのよ!!」

 

「「!!?」」

 

び、ビックリしたぁ・・・今の声・・・二乃ちゃん?あんな大きな声を出して何を・・・

 

「!!!!」

 

二乃ちゃんの声で六海と風太郎君との顔の距離がものすごく近いことに気付いた。それこそ、そのままいったら・・・き、き、キスを・・・///

 

「ち、近いよ!!!」

 

バチンッ!!

 

「ブハッ!!?お、お前から近づいたんだろうが・・・」

 

恥ずかしかったから思わず風太郎君にビンタしちゃった。ごめん、風太郎君!そうしてる間にも二乃ちゃんはこっちに近づいてきた。いや、二乃ちゃんだけじゃない・・・他のお姉ちゃんも全員来ちゃってる。

 

「いつまで経ってもあんたたちが来ないから様子を見に来てみれば・・・」

 

「あわわわわ・・・」

 

「ふ、不純です!!」

 

「い、いやー・・・ちょっとこれはさすがにいただけない、かなー・・・」

 

「・・・2人で何やってたの・・・?」

 

みんな顔を赤らめたり、六海たちを見る目が怖かったりといろいろな反応を示してる。あれは何というか・・・無意識なのに・・・。

 

「べ、別にやましいことはしてないよ!ただ風太郎君に絵の指摘をしてただけ!ほら見てよ!この下手くそな絵を!」

 

「あ!こら!お前勝手に見せんな!」

 

無実の証明のために六海はさっき風太郎君が描いた下手くそな絵をみんなに見せたよ。そしたらみんな、予想通りのドン引きな顔をしてるよ。

 

「うっわ⁉なにこれ⁉これ本当にフータロー君が描いたの⁉」

 

「うわ~・・・」

 

「ひどすぎる・・・」

 

「上杉君、割に合わないものはやるべきではないと思います」

 

「ああ・・・くっそ・・・恥ずかしい・・・」

 

「だ、大丈夫ですよ上杉さん!よく見てみると意外とチャーム・・・です・・・よ・・・?」

 

「無理にフォローするな・・・悲しくなる・・・」

 

予想通りの反応に風太郎君はもうゆでだこ状態だよ。

 

「そうでしょ?だから絵の指摘を・・・」

 

「それならなんであんな顔を近づけるの?普通に教えたらいいはず」

 

「そ、それは・・・」

 

三玖ちゃんのごもっともな指摘に六海は何も言い返せなかったよ。本当、どうして六海はあんな大胆なことを・・・///

 

「・・・ねぇフー君、アタシが絵を教えてあげましょうか?その子よりも断然教えるのうまいわよ?」

 

「んな!!?」

 

「「「「二乃⁉」」」」

 

みんなに詰め寄られていると、その間に二乃ちゃんが変なことを言いだした。ちょっと・・・本当に何言っちゃってるの⁉

 

「いや・・・もう描かないから別に・・・」

 

「ダメだよ!どうせ何かしらのアピールとかするつもりなんでしょ!だいたい二乃ちゃんも絵そんなにうまくないでしょ!」

 

「あからさまに自分は絵得意ですってアピールするのをやめなさい」

 

二乃ちゃんにを放っておいたら風太郎君に絶対何か仕掛けるに決まってる!そんなことになったら風太郎君との距離がまた遠くなっちゃう!それだけは避けないと!

 

「・・・フータロー。六海ほどじゃないけど私も、絵はそれなりにいい方。よかったら教えてあげる」

 

「三玖さん⁉」

 

「あ!こら三玖!!」

 

「抜け駆け禁止ーー!!」

 

「先に抜け駆けしたのは六海の方」

 

六海たち3人は風太郎君をめぐって必死の口論を始めた。今日という今日はちゃんときつめに言っておかないと・・・!

 

「ど、どうして毎回こうなるのですか・・・」

 

「あ、あははは・・・」

 

「それで、フータロー君、本当に何やってたの?」

 

「それがな・・・」

 

かくかくしかじか・・・

 

「ふーん・・・それで六海に付き合ってあげてるんだ」

 

「本当に六海らしいね。絵に真剣すぎるっていうか・・・」

 

「確かに、ここ最近の六海はスランプ克服に勉強を両立させようと頑張っていますが・・・」

 

「うん・・・ちょっと無理してないかな・・・心配だよ・・・」

 

「あいつにも言ったんだが、聞く耳持たなくてな・・・だからといって、あいつの頑張りを否定はしたくない」

 

「・・・あ、ねぇ、こういうのはどうかな?」

 

長女説明中・・・

 

「おお!それ、いいかも!」

 

「うん。これなら六海にもプラスになるし、いい気分転換になるでしょ?」

 

「いや、あの・・・今日は勉強をする予定では・・・」

 

「もうここまで来たらそれどころではないと思いますよ」

 

「ぐっ・・・またこうなるのかよ・・・」

 

「じゃあ、決まりだね。・・・はーい、3人ともそこまで」

 

長い口論を続けていると、一花ちゃんからストップがかかった。

 

「このままじゃ埒が明かないからこうしよう。ここにいる姉妹全員で絵を描きながら教えてあげればいいんじゃないかな?それならみんな公平だし、抜け駆けもないでしょ?」

 

うむむ・・・それは確かに・・・

 

「まぁ・・・そういうことなら・・・」

 

「うん、それでいい」

 

「・・・仕方ないわね」

 

六海たちは一応一花ちゃんの提案に納得する。いや、まぁいろいろ思うところはあるけど、それなら二乃ちゃんや三玖ちゃんもちょっとは大人しくなるでしょ。

 

「よーし、とりあえず好きなものを描いてみよう!」

 

「ちょ、ちょっと!まだ紙もらってないわよ!」

 

「フータロー、見ててね」

 

「う、うまく描けるでしょうか・・・」

 

「大丈夫大丈夫。いざとなったら六海が教えてくれるよ」

 

「「スパルタレッスンはもう嫌だ(です)!!」」

 

「ひどくない⁉スパルタじゃないのに!」

 

「お、お前ら・・・はぁ・・・今日はもう本当に勉強は無理か・・・」

 

そうして六海たちはみんな集まって好きな絵を描くことになったよ。これで静かになると思ってたけど、みんな好きなものが被ってたから競い合いとかで全然静かにはならなかったよ・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

みんな描き終えて見せあいっこを終えた頃にはもうすっかり下校時間になっちゃって今日は風太郎君と姉妹全員で一緒に下校しているよ。

 

「んー、今日は楽しかったねー」

 

「みんなの絵、とってもうまくてびっくりしたよ!」

 

「たまにはみんなで絵を描いてみるというのもいいものですね」

 

「・・・思ってた展開と違うわ・・・」

 

「まだ言ってる・・・」

 

絵を描いている間、みんなとっても騒がしかったけど、それでも楽しめたみたいで笑顔になっているよ。風太郎君は全然そんなことないけど・・・。

 

「たく・・・今日の分のプリント作っとくから、ちゃんとやっておけよ」

 

「「「「え~・・・」」」」

 

「当然だろ。特に一花、お前はここ最近のサボりが目立つ。成績が落ちて卒業できなくなったらどうする」

 

「あ、あー・・・あはは・・・一応仕事なんだけどなぁ・・・」

 

風太郎君に痛いところを突かれて一花ちゃんは苦笑いを浮かべている。六海がその様子をニコニコ見守ってるよ。

 

「ねぇねぇ六海、今日は楽しかった?」

 

「うん、もちろん!だって、みんな絵を描くなんてこと、結構久しぶりだったから」

 

「それならよかった。ちょっと追いつめられてる感じがしたから、心配だった」

 

「というかあんた、抱え込みすぎよ」

 

六海ってそんなに顔に出やすいかな?それとも行動でバレバレ?どっちにしても、みんなに気を遣わせすぎちゃったかな・・・反省・・・。

 

「六海、あまり1人で抱え込まないでくださいね。もちろん、期限が迫って焦る気持ちはわかりますが・・・だからこそ、私たちに相談してください」

 

「そうそう、私たち、姉妹揃ってわかちあってこそ・・・でしょ?」

 

「!・・・わかち・・・あって・・・」

 

わかちあって・・・その言葉に六海は衝撃を受けた。・・・そっか・・・何が足りなくて・・・何がダメだったのか・・・何となくそれが・・・わかったような気がした・・・

 

「?六海?」

 

「・・・六海、閃いちゃった!先に帰ってるねー!」

 

「あ、お、おい!!」

 

この閃きを忘れてしまわないように六海はすぐにアパートに向かって走り出す。

 

「たく・・・あいつときたら・・・」

 

「ふふ、何か、掴んだみたいだね」

 

♡♡♡♡♡♡

 

アパートに帰ってきて六海はすぐに漫画を描く準備をして、閃いたことを頼りに作品を描き始める。

 

六海は絵を・・・漫画を描くことが大好きだ。それは今も、この先もずっと変わらないよ。でもこの楽しさは・・・1人締めしてちゃいけない・・・1人で楽しんでしまったらそれは、自己満足になってしまう。それじゃあ感動も、面白さも感じられなくて当たり前だよ。それなのに六海は、勝負に拘ったり、土屋さんにむきになって・・・大事なことを忘れたよ・・・。本当に、恥ずかしい。

 

六海は・・・自分の考えた楽しい物語をみんなと一緒に共有したい。当然、1人1人、面白いっていう基準は違うと思う。でも・・・それでもいい。誰かに作品の存在を知って、少しずつ、また少しずつと作品の魅力に気づいてもらえること・・・それも、楽しいを共有するってことだと、六海は思うから。そう思うだけで・・・六海はがんばれる!それに六海には・・・頼もしいお姉ちゃんたちが、ついている!恐れるものなんて、何もない!それで、翌日の、すっかり夜になった頃合いに・・・

 

「できた・・・六海の・・・納得がいく作品が・・・」

 

何回も何回も試行錯誤を続けて、1日分の時間を費やしてようやく・・・ようやく1本の納得のいく作品が出来上がった。内容自体も結構充実してると思う。でも、これは自分だけで決めちゃいけない。まずは・・・お姉ちゃんたちにこの作品の面白さを、伝えなきゃ。

 

「みんなー!出来上がったよー!絶対面白いから、読んで―!」

 

六海はすぐに出来上がった作品を読んでもらおうとお姉ちゃんたちを呼びにいったよ。お姉ちゃんたちの反応は個人差はあったけど、掴みは手ごたえがあったよ。後は・・・編集者さんたちから見て、どう思うか・・・それは、結果でしかわからない。

 

♡♡♡♡♡♡

 

出来上がった作品は何とか締め切りギリギリで応募ができた。一安心するもつかの間、次の日に入試判定試験がやってきたから休む暇もなかったよ。いろんな問題に苦戦はしたけど、あの大量の問題集をやり遂げた成果が実ったのか、そこそこ解くことができたよ。出来の方はまぁまぁって感じだったな。結果は夏休みが明けてからの2学期に届くみたい。

 

・・・さて、と。試験が終わって1週間後、今日は優秀賞の発表日・・・スランプを克服できたかどうかは・・・今回の結果にかかってるといっても過言じゃないよ。六海たちはアパートに集まってその結果が載ってる週刊誌に注目してるよ。ちなみに一花ちゃんはお仕事だよ。最近お仕事行くの多くなったような・・・。で、風太郎君はアルバイトがあるからって言って来なかったよ。二乃ちゃんだってアルバイトだけど、少しだけ時間もらってるんだから、来てくれてもいいのにね。

 

「つ、ついにこの時が来たのね・・・」

 

「ど、どうしよう・・・私、今すごくドキドキしちゃってるよ~・・・」

 

「あああぁ・・・緊張しますぅ~・・・食事も喉に通りそうにありません・・・」

 

「それでも食べるんだ・・・」

 

お姉ちゃんたちはまるで自分のことのように、すごく緊張していて誰もが今週号をなかなか取れないでいるよ。一応最優秀賞は金、銀、銅の3つの賞があるから、可能性はあるんだけど・・・やっぱり緊張するものは緊張するよね。でも・・・ああぁぁ・・・1番緊張してるのは六海だよ~・・・。

 

「あ、あう・・・あうあうあ~・・・」

 

「む、むむむ、六海、落ち着いて・・・だ、だだ、だいじょ・・・ダイジョウビだよ・・・」

 

「よ、四葉も・・・お、お、落ちつ・・・つ・・・」

 

「全員落ち着きなさいよ、だらしないわね」

 

「そういう二乃も緊張してる」

 

「うるさいわね!ていうか、それはあんたもでしょ三玖!」

 

このもどかしい時間はいつまで続くのか・・・もう結構長い時間が経ってるような気がするんだけど・・・。ううぅ・・・ううぅぅ~・・・いつまでもこうしてはいられないし・・・。

 

「よ・・・よし・・・覚悟を決めた・・・まずは金賞から開けてみるよ・・・」

 

「ま、待ってください!まだ心の準備が・・・」

 

「いい加減腹をくくって」

 

「神様~・・・どうか・・・どうか・・・」

 

「・・・・・・」そわそわ

 

ようやく決意を決めて、今週号を取り出して、最優秀金賞が載ってるページを開いてみる。金賞に選ばれ、載ってあるのは六海の作品でも、土屋君の作品でもなく、別の人の作品だった。

 

「うわー!六海の作品じゃないー!」

 

「うぅ・・・もう見てられません!」

 

「だ、大丈夫だよ・・・まだ・・・まだ銀賞と銅賞が残ってるから・・・」

 

「「・・・・・・」」そわそわ・・・

 

1番じゃなかったのはそりゃ残念だけど・・・まだ可能性は残ってる・・・今は・・・今はそれにかけたい・・・。緊張で手が震えた・・・けど思い切って銀賞が載ってるページを開いてみる。だけど・・・このページでも全く知らない人の作品が載ってあったよ。

 

「あーー!!また載ってないーー!!」

 

「ど、どうしましょう!もう残り1つですよ!」

 

「やば・・・余計に緊張感が・・・」

 

「あ・・・あ、あ、あ、あ・・・」

 

「六海、しっかり・・・」

 

やばい・・・最後の1つだと思うと、余計に緊張感が・・・手の震えもものすごいし・・・も、もうこれ以上ページめくれないよ~・・・どうしよう・・・。お、落ち着け―・・・落ち着くんだよ六海・・・こういう時こそ・・・スマホのホーム画面のナナカちゃんに力をもらおう・・・そう思ってスマホのスリープ状態から解除すると、メールが2件届いていたのを見つけた。中を開いてみると、差出人の1件目は一花ちゃんから。もう1件は風太郎君からだったよ。みんなが緊張してる間にメールを確認してみる。まずは一花ちゃん・・・

 

『結果の方はどうかな?まだ読めてないから気になっちゃって・・・でも六海ならきっと大丈夫だよね』

 

一花ちゃんだってオーディションで役を取れるか取れないかの緊張感を何度も味わってるかもしれない。これはそれと同じなんだね・・・。それでも六海のことを信じてくれてるから、とても嬉しかったよ。次に風太郎君の方は・・・

 

『自分の可能性を信じろ』

 

これまた何ともシンプルで・・・強くもなんともなく、ただそれだけが書かれてるだけだったよ。でも・・・なんでだろう・・・風太郎君からもらった言葉だと考えると・・・心強く感じるし・・・不思議と、さっきまでの緊張感が和らいできたよ。ありがとう、一花ちゃん・・・ありがとう・・・風太郎君。

 

「すぅー・・・はぁー・・・よし!開けるよ!」

 

「泣いても笑っても・・・」

 

「次が最後・・・」

 

「神様~・・・」

 

「ううぅぅ~・・・」

 

勇気を振り絞って六海は目を閉じながら最後の銅賞のページを恐る恐ると開けた。そして・・・開いた銅賞に選ばれた作品が・・・そこに載っていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『七等分の流れ星

応募者:中野六海』

 

・・・あった・・・この作品は紛れもなく・・・六海の描いた作品・・・。

 

「・・・・・・や・・・やった・・・」

 

絶対に載せてやると息巻いていたけど・・・未だに理解が追い付いてないから実感が湧いてこない。

 

「やったーーーーーーー!!!」

 

「やりましたね、六海!本当に載りましたよ!」

 

「もう・・・本当にひやひやさせるんじゃないわよ!」

 

「やったね、六海。おめでとう」

 

みんなが六海にお祝いの言葉を投げかけてきて、ようやく理解が追い付いてきた。

 

「・・・やったんだ・・・本当に・・・」

 

週刊誌に作品を載せることができた・・・その事実とお姉ちゃんたちが自分のことのように喜んでいる姿を見ると、嬉しくなってきて、涙が溢れだしそうになったよ。

 

「今日はお祝いだね!六海銅賞獲得記念!」

 

「みんなこれからバイトだから時間に余裕がない」

 

「えー!!じゃ、じゃあ・・・明日!明日はどう?」

 

「いいですね。明日は終業式なので、ちょうどいいです」

 

「一花やフー君にも連絡しておかなきゃ・・・」

 

六海1人だったらきっと銅賞すらとることができなかったかもしれない。だから・・・無理強いに付き合ってくれたみんなには、感謝しかないよ。

 

「みんな・・・本当に・・・ありがとう!」

 

六海は心からの感謝を、みんなに包み隠さずに伝えたよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

結果を見た後六海は今日もアルバイトに来たわけだけど、今日はいつもと光景が少しだけ違ってたよ。

 

「中野さん!結果見たよ!銅賞獲得、おめでとう!」

 

「すげぇな嬢ちゃん!大したもんだ!」

 

いつもは六海より遅く来るはずの一ノ瀬さんと高木さんが来ていて、仕事メンバー全員が集まってたよ。

 

「中野さん、入賞おめでとう。スランプだって聞かされたときは、内心はらはらしたけど・・・短期間で克服、及び勉強の両立。それで銅賞とはいえ、賞を獲得とはすごいね。誇らしく思うよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

先生は六海のことを褒めた後、土屋君に視線を向けた。

 

「土屋君・・・残念だったね。おしくも賞を逃したけど、まぁ、次は必ず取れるよ。僕が保証する」

 

「・・・・・・」

 

今回の結果なんだけど、実は3位以下の順位も載ってあったんだけど、土屋君の順位は六海のすぐ下の4位だったよ。これには相当に悔しい思いをしてるに違いないんだけど・・・土屋君は結構無表情だから感情がわからないよ。

 

「・・・中野さん」

 

六海が声をかけようと思ったら、土屋君本人から声をかけてきた。

 

「・・・ぶっちゃけ俺、あんたのこと舐めてましたわ。どうせ大したことないだろうって。それにスランプまでなってたみたいで余計に。おまけに勉強の両立で賞なんて取れるはずないって思ってましたわ」

 

まぁ、そうだと思うよ。六海だって同じ立場だったらそう思うもん。

 

「・・・けど、それは覆されたっす。今日載った中野さんの漫画、すげぇ面白かったし、あんたはマジで勉強を両立させて、しかもスランプを短期間で克服して・・・俺にはできなかったことを成し遂げた。正直すげぇっすよあんた。尊敬しますよ、心から」

 

「土屋君・・・」

 

「土屋・・・」

 

「・・・今更許してもらおうとは思ってませんが・・・先日の非礼はお詫びします。何も知らねぇくせに、嫌いとか、いろいろ生意気言って、すいませんでした!!」

 

土屋君は自分の思いを六海に伝えて、頭を深く下げて謝罪の言葉を口にした。そんな土屋君に、六海は言いたいことがあるよ。

 

「・・・六海はそんな尊敬されるような人物じゃないよ。六海が賞を取れたのは・・・ううん、ここまでこれたのは、みんなのおかげだよ」

 

六海は自分の思いを土屋君に包み隠さず伝えるよ。

 

「六海は全然頭よくないし、言われたことは何でも気にするし、つい意地を張っちゃうんだ。だから、そんな六海が1人で挑んだら、絶対賞を取れなかったし、スランプも克服できないままだと思うんだ」

 

でもね・・・と、六海はさらに続けるよ。

 

「いろんな人と出会えたから、六海は今の六海があるんだ。みんなが力を貸してくれたから六海は夢に一歩近づけたんだ。そして・・・その中には土屋君、君もいるんだよ」

 

「俺も・・・?」

 

「土屋君がいたからこそ、六海は今回の企画に参加できたし、君という競い合うライバルができたんだよ」

 

ただの勢い任せ、結果論って言われたらそれでおしまいなのかもしれないけど・・・企画に参加できたのも、追い越されたくない、負けたくないって気持ちが出てきたのも、全部彼のおかげだと思ってるよ。

 

「六海はこれまでの関係も、生まれてきた関係も、大切にしたいと思ってるよ。これで全部終わりなんて、六海は嫌だな。だから・・・土屋君には六海と同じ大学に入って、これからも競い合ってほしい・・・なんていうのは、傲慢・・・かな?」

 

六海の気持ちを最後まで伝えたら、土屋君は黙り込み自分の席に戻っていっちゃった。

 

「・・・尊敬発言撤回っす。俺、やっぱあんたのような賢いメガネとは気が合わないっすわ」

 

「んなっ!!?」

 

さっきまでのしおらしい態度はどこへ行ったのさ!!?すぐ嫌味発言をしてきたんだけどこの人!!

 

「・・・大学行ってからが勝負っす」

 

「!」

 

「えっ⁉」

 

「土屋・・・お前・・・」

 

「・・・ただ負けっぱなしなのは癪ってだけっすよ。夢のためにも、勝つためにも、使える手段は何でも使うつもりっす」

 

土屋君は顔を六海に向けた。顔自体は無表情だったけど、心なしか、その無表情が微笑んでるように見えたよ。

 

「・・・次は負けねーっす」

 

「・・・!こっちだって次も勝つから!」

 

この瞬間、六海は土屋君に初めて、自分を認めてもらえたような・・・そんな気がしたよ。

 

「どうなることかと思ったが・・・」

 

「土屋君も大学行く気になってよかったよかった♪」

 

「うん。これにて一件落着、かな」

 

この後の仕事場はいつも以上に賑やかになったような・・・そんな感じがしたよ。後仕事の後、先生からお祝いとしてファミレスでご飯を奢ってもらっちゃった。頼んだハンバーグとクリームケーキ、あれはおいしかったなぁ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

次の日の学校の終業式、朝の時も放課後の時もすっごく大変だったよ。というのも・・・

 

「六海ちゃん!昨日の週刊誌見たよ!」

 

「漫画が載るなんてすごいじゃん!おめでとう!」

 

「まさかうちのクラスに大スターが誕生するなんて思わなかったぜ!」

 

「ね、どうやったらあんなおもしろい作品ができるの?ぜひ教えて!」

 

「え、えぇーっと・・・そのぅ・・・ご、ごめんなさい!」

 

『あっ!逃げた!』

 

昨日クラスのみんなが週刊誌に載った六海の作品を読んだみたいで、偉業を成し遂げたってことでみんなからべた褒めされてたんだ。そんなわけでみんなから質問責めにあい、みんなから逃げたってわけだよ。何とか二乃ちゃんに変装をして、みんなを誤魔化せたけど・・・はぁ・・・疲れた・・・。この疲れを癒すために屋上で休憩してるよ。

 

「とんでもない浮かれ具合だったな」

 

「あ、風太郎君」

 

六海が疲れを癒してた時に屋上の扉から風太郎君が入ってきた。

 

「姉妹たちがお前を探してたぞ。祝賀会の主役はどこだってな」

 

あ、そういえば昨日そんな話してたっけ・・・すっかり忘れてたよ。

 

「あはは、それでわざわざ探しに来てくれたんだ。ごめんね、スマホの充電忘れちゃって・・・」

 

「たく、ちゃんと充電はしろよな」

 

「風太郎君、それブーメランだよー」

 

かなりの頻度でスマホの充電を忘れる風太郎君には言われたくなかった一言だなー、本当に。

 

「!なんだ・・・それ持ってきたのか」

 

そこで風太郎君は六海が休憩の際に読んでた六海の作品が載った週刊誌に気付いた。

 

「うん。だってまだ全部読み切れてなくて、気になっちゃって・・・」

 

「学校にそんなもん持ってきちゃいけないものなんだが・・・」

 

「終業式なんだから大目に見てよ~・・・」

 

全く・・・相変わらずの真面目さんなんだから・・・。

 

「・・・まぁいい。ちょっと読ませてもらうぞ」

 

・・・え?風太郎君が自分から漫画本を?

 

「・・・ど、どうしたの風太郎君?熱でもあるの?早めに帰って休んだ方が・・・」

 

「俺は正常だ。ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「・・・まぁ・・・その・・・なんだ。お前の頑張りがどれだけのもんかってのが・・・気になっただけだ」

 

風太郎君はらしくないことをしたせいか少し恥ずかしそうに頬を赤らめてる。もう・・・本当に素直じゃないんだから・・・。

 

「・・・うん。いいよ。ぜひとも読んでほしいな」

 

「ああ」

 

風太郎君は金賞や銀賞のページを無視して六海の作品が載ってるページを探して、六海の作品を静かに読み始めた。・・・そういえば・・・六海の作品・・・風太郎君がちゃんと読んでるところ見るの、これが初めてかも・・・。前に不慮の事故で六海の作品を見られた時は、内容ちゃんと理解してなかったみたいだし。風太郎君がどんなことを言うのかそわそわして待ってると、風太郎君が六海の作品を読み終えたよ。

 

「ど・・・どうだった・・・?」

 

「・・・俺は漫画なんて買う金がないから買ったことない・・・というか全く興味がないから読まなかったから・・・お前の望むような感想を伝えられないが、これだけは言えるな」

 

ごくり・・・

 

「お前の血が滲む様な努力・・・それが伝わった作品だった。入賞できたのも当然だと思う」

 

「・・・!」

 

「応募しておいてよかったな。そして、入賞おめでとう」

 

「・・・うん・・・うん・・・!六海・・・慣れないことや、無茶なこと・・・いっぱい・・・いっぱいやったよ・・・いっぱい頑張ったよ・・・」

 

「ああ。知ってるぞ。よく頑張ったな」

 

風太郎君が褒めてくれたこと、そして労いの言葉をかけてくれただけで・・・今まで我慢してたうれし涙が溢れてきた。

 

「六海は・・・夢を叶えるために・・・ただがむしゃらに1人で絵を描いてた・・・。お姉ちゃん以外の誰にも褒められることもなく・・・。でも・・・それだけじゃダメなんだって君が教えてくれた・・・本当に、ありがとう・・・」

 

「・・・俺はただ勉強を教えただけだ。むしろ俺のほうがお前たちからいろんなことを教わった。礼を言わなければいけないのはこっちの方だ」

 

「・・・風太郎君は優しいね」

 

六海たちこそ大したことをしてないのに、そんな風に言ってくれる・・・やっぱり風太郎君は優しいよ。

 

「俺は別に優しくはない」

 

「ううん、優しいよ。普段は愛想がなくて、意地悪ってだけで・・・ここぞって時に寄り添ってくれる、思いやりのある人。そんな君だからこそ・・・六海・・・ううん、私は、君の隣に、並びたいんだ」

 

「わ・・・私・・・?」

 

六海・・・ううん、私は自分の気持ちを包み隠さず、風太郎君に伝えた。風太郎君・・・君には・・・私のことを、知ってほしい・・・私が、あなたに抱いているこの気持ちを・・・ちゃんと認識してほしい。

 

「風太郎君。私は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたのことが好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

私の放った言葉に、風太郎君は私が何を言ってるのかわからないのか、唖然としてるよ。・・・言った・・・言っちゃった・・・私の顔は自分でも赤くなってるのがよくわかるよ。

 

「・・・え?あ、あの・・・今なんて・・・?」

 

「す、好きって言ったの!!1回で聞き取ってよ!!」

 

「え・・・え・・・な、な・・・」

 

「というか、やっぱり気づいてなかったんだ。三玖ちゃんのは気づいてたのに・・・あんなにアプローチかけたのに、ひどいよ」

 

「ま・・・マジで・・・?」

 

今頃私の気持ちを知った風太郎君はひどく焦ってるよ。なんか、とっても新鮮だな。

 

「でも、それも許してあげる。だって・・・これで私のことも、意識せざるを得ないよね?」

 

「いや・・・あの・・・」

 

「返事の方は言わなくてもいいよ。それは・・・最後の楽しみにとっておくから、さ♪」

 

気持ちを伝え終えた私の気持ちは、とっても清々しくなった。

 

「・・・はい!超真面目モードおしまい!そんなわけだからさ・・・」

 

私・・・ううん、六海は超真面目モードから普段モードに切り替えて、彼ににっこりと微笑むよ。

 

「改めて・・・これからも六海のこと、よろしくね・・・"フーちゃん"♪」

 

「・・・っ!!」

 

ちゃっかりと彼をフーちゃん呼びした六海の世界は・・・まるで曇り空から快晴へと・・・そんな風に変わったと改めて実感できたよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『彼女は見た!』

 

ドサッ・・・

 

六海が風太郎に告白したこの瞬間を・・・2人に気付かれず、目撃した人物がいた。

 

「・・・・・・っ!」

 

その人物は、六海を探しに来ていた5番目の姉、五月だった。五月は告白の一部始終を目撃してしまい、動揺してかばんを落としてしまった。この時の五月の顔は、赤く染まっていたのであった。

 

49「勝負後の告白」

 

つづく




六つ子豆知識

中野六海(3年生)

イメージCV:BanG Dream!の戸山香澄

好きな食べ物:ショートケーキ
嫌いな食べ物:ゴーヤ
好きな動物:猫
よく見るテレビ:お笑い番組
好きな飲み物:牛乳
日課:絵描き
好きな映画:アニメーション系
お気に入りスポット:図書室
よく読む本:魔法少女マジカルナナカ
水着の仕入れ:ネットオークション
朝食は何派?:麺派

中野家六つ子の姉妹の六女の末っ子。性格は以前と全く変わらないが、極稀に大真面目モードというものが存在しており、その時の一人称は六海ではなく、昔の私となっている。今年で始めたアルバイトである漫画アシスタントの仲間たちとは現在良好な関係を築いている。
坂本との一件で風太郎に恋をしてからというもの、さりげなく自分をアピールをしていたが、気づいてもらえず、中々もどかしい感情を湧いていた。しかし、週刊誌の最優秀銅賞を獲得した翌日の終業式の日、自分の思いをありったけに風太郎にぶつけ、自身の恋心に気づかせた際にはとても晴れ晴れとした気持ちになった。その際に、風太郎のことをフーちゃんと呼ぶようになった。後さりげなく妄想対象に風太郎が追加してあるのは姉妹には内緒だ。
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