日曜日の休日・・・この日に学生のやるべきことといえばなんだと思う?
日頃の英気を養うためにどこかに出かける?バカめ。そんなことをするくらいならもっと有意義な時間を過ごす。
日曜日の休日に有意義な時間を過ごすといえば・・・家で1日中勉強付けに決まっているだろう。そう、この俺、上杉風太郎は今日という日曜日を待っていたのだ!日曜日は家庭教師という立ち場を忘れられ、あの六つ子たちの目を気にすることなく安心して勉強できるぜ!
・・・ん?この公式教科書には載ってないがあいつらに教えておいた方がいいな。・・・お、この問題、よくできてるじゃないか。これなら四葉でも理解できるかもしれん。それにこの問題も三玖も喜びそうだ・・・てっ!!
「何やってんだ俺はーー!!立派な家庭教師か!!」
いや実際に家庭教師のわけだが!くっ・・・おのれ六つ子の姉妹め!あいつらのせいで勉強がちっとも進まねぇ!あいつらがいなくても俺の邪魔をしようってのか!おのれ・・・
「どうしたの、お兄ちゃん?そんな大声出して」
「!あ、ああ、らいは。何でもないんだ」
「?ならいいんだけど・・・」
俺の大声で不思議そうに俺を見つめているのは俺の最愛の妹、上杉らいはだ。ああ、今日もらいははかわいいな。
「あ、そうだお兄ちゃん。私、これからお出かけするんだけど、何か欲しいものとかある?買ってきてあげる!」
「また約束とやらか?ほぼ毎日じゃないか。相手は誰なんだ?」
「んー・・・秘密!」
まただ。あの日、三玖の武将しりとりをやった次の日かららいはは毎日のように外に出る回数が増えていった。大方友達が増えて遊びに行ったんだろうとは思う。だが肝心の約束とやらは何もわからない。らいはが秘密といって教えてもくれない。らいはに友達が増えることは兄としてはうれしい限りだが、らいはの優しさが相手に付け込まれないかと逆に心配になってくることがある。
それに、もう1つ気になることがある。約束のある日にらいはが帰ってきたときには必ず大学ノートを持って返ってくる。そのノートが何なのかはこれもらいはが秘密にして教えてはくれない。何もかもが謎だらけだ。
「そうか。欲しいものは今はないな。俺のことは気にせず行ってこい」
「わかったー!じゃあ、行ってくるね、お兄ちゃん!」
らいはは俺に満面な笑顔を見せて外に出かけていった。ああ、この笑顔でお兄ちゃんもっと頑張れそうだ。さて、と。俺も勉強を再開するか。きっちりと予習しておかなくてはな。
だがらいはの約束が気になったり、勉強をやるがあの六つ子の姉妹にやらせる勉強法を思いついたりでほとんど自分の勉強がはかどらなかったのは言うまでもない。
♡♡♡♡♡♡
「どうしてこんな結果になる・・・」
日曜日から2日後の水曜日、俺は手元にある1つの用紙を見て非常に憂鬱な気分になる。原因は明白、あの六つ子の姉妹のバカさ加減だ。
先日、授業で地理の小テストが行われた。俺が今見ているのはその小テストの六つ子の結果だ。あいつらはとことんにまで俺のことが嫌いゆえに教えてはくれなかったが、四葉と三玖のおかげで全員分の結果を見ることができたが本当にひどいものだ。
テストの合格ラインは30点。地理の授業をよく覚えていれば誰でも簡単にそれくらいは取れるほどのものだ。ところが、例の如くあの六つ子の姉妹、30点を取るだけでいいのに誰1人として合格ラインを達していない。しかも驚くことにその結果が・・・
一花が16点、二乃12点、三玖が24点
四葉が2点、五月が18点、六海が28点
100点なんだよ。全員合わせてな。あの時俺が出した小テストと同じ点数結果とはいったいどういうことなのか説明してほしいものだ。・・・いや、これだけならいくつかマシだったのかもしれん。
実はこれだけではないのだ。合計100点の小テストは。他の全科目でも同じ点を取っているのだ。全教科までくると、ある意味才能かもしれん。しかし、今回の件で少しわかったこともある。あの六つ子は得意科目はバラバラで1つの教科に関しては赤点回避できる可能性を見いだせているのだ。例えば、三玖の場合だったら歴史、そして六海の場合はこの小テストの地理。だからあいつらがやる気を出してさえくれれば、1つくらいは赤点回避できるだろう。
だがそれがわかったところで所詮は1つ。卒業するには合格突破が全然足りていない。だからといって俺が何か言えば四葉と三玖以外は逃げ出してしまう始末・・・頭が痛くなる。
「くそ・・・どうしたものか・・・」
俺がこの先どうすればいいのか悩んでいるとふと中庭に誰かがいることに気付いた。わざわざ中庭に行くような変わりもんがよくいたものだ。と思っていたらその中庭にいる奴が誰なのかわかった。あの六つ子の姉妹の末っ子の六海だ。なんか書いてる様子だが・・・。声をかけてみるか。
「おい。何やってるんだ?」
「うわっほぃ⁉」
「うおっ⁉」
六海の奴、急に驚くから俺も驚いてしまったではないか。
「・・・な、なんだあなただったんだ・・・脅かせないで・・・て、
こいつ、声をかけたのが俺だと分かったとたんにまた驚きだしたぞ。しかも俺からだいぶ離れていったぞ。そんなに俺のことが嫌いなのかそうかそうか。ふと見てみると、こいつの周りにはこの学校のいたるところの風景を描いた紙が散らばっているではないか。
「絵を描いていたのか?」
「えっ⁉あー、う、うん!絵はとっても好きなんだー!あは、あははは!」
?こいつは俺を見ているとかなり挙動不審が目立つな。いつもなら無視するか攻撃的な発言をするかどっちかなのに。
「どうしたそんなにきょどってて。何か気になることでもあるか?」
「い、いやー?べ、別にー?」
「本当か?」
「本当だよ!ていうか、何六海となれなれしく話してるの?もうあっち行ってよ!」
くっ・・・こいつ・・・挙動不審の状況でも俺を拒む態勢は変わらん!
この六つ子の姉妹の末っ子、中野六海は俺が五月に言った太るぞ発言や、俺がこいつの好意を断ってからというもの、やたらと俺にたいして嫌悪感を出しまくっている。根に持ちすぎだろ。こいつが何やろうとそんな怖くはないのだが、その敵対心丸出しの表情や行為にはほとほと参っている。正直、姉妹の中でこいつが1番苦手だ。
「はぁ・・・邪魔ならもう行くが・・・前に出した宿題、週末までにはやっとけよ」
別にこいつ自身の絵なんて興味もないし、話を聞ける状況でもないなら、今日はもう放っておこう。そう思って立ち去ろうとした時・・・
「ま、ままま、待って!やっぱまだ行かないで!」
俺が去ろうとした時、突然慌てた様子で六海は俺の手を掴んで止めてきた。なんだよ、あっち行けって言ったのはお前だろ。そう言おうと思ったが、ここはこらえておこう。
「・・・なんだよ」
「え、えーと・・・」
何を言おうか悩んでる姿勢をしていると、今度はとても嫌さを隠しきれてない笑顔で俺を見てきた。おい、その顔はもう少し工夫しろ。
「ほ、本当はあなたの絵を描くなんて嫌だったんだけどー?六海、今日はすっごく気分がいいしー?特別に、絵を描いてあげてもいいよ?」
本題はそれか。どうやら何故か知らんが俺の絵を描きたいらしく、こいつなりに勇気を出して答えたのだろう。初めから素直に言えっての。だが俺は・・・そんなことに付き合ってやる義理はない!
「絵を描きたいなら他の連中に頼め。俺は勉強で忙しいんだ」
全く、絵心なんてくだらん。そんなことをしてる暇があるなら勉強しろ。ただでさえ赤点候補の1人なんだから。俺が断ってここから去ろうとした時、六海は俺の手をまた掴んで、ある写真を見せつけた。
「い、言うことを聞かないとこの写真、学校のみんなにバラすよ?社会的に抹殺されるよ?それでもいいの?」
こ、こいつ・・・!最終手段を使いやがった!今六海が見せてきたのは、この前の俺が二乃を覆いかぶさった写真だ。実際は落ちた本から二乃を守っただけだが、これを初見の奴が見たら、確実に誤解される・・・!そうなれば、家庭教師の話がなくなるかもしれん・・・!
「き・・・汚ねぇ・・・」
「ど、どうするの?受けるの?受けないの?どっち?」
よく見るとこいつの手、若干震えてるじゃねぇか。いくら俺が嫌いでもさすがに良心が痛んでるんだろう。無理してんじゃねぇよ・・・。とはいっても、断ったら多分送るだろうからそれは避けたい。仕方ない・・・。
「わかった、わかったからその写真は送るんじゃねぇぞ」
「ほっ・・・」
俺の了承を得ると六海はほっと胸をなでおろした。やっぱ無理してんじゃねぇか。
「で、俺は何をすればいい?」
「シンプルでいくから・・・そのままじーっとしてればいいよ」
要するに絵を描きやすくするために動くなって言ってるんだろう。それだけでいいとはな。
「本当はすごく嫌なんだけど・・・描くからには、本気だよ」
そう口にした瞬間の六海の表情は、いつもの能天気さはなく、今までに見たことがないくらいの真剣な表情がでている。あいつ、こんな顔ができたんだな・・・。
六海は俺の立ち位置を鉛筆で見定めている。数分が立ち、狙いを定まったたら一斉に描き始める。その姿勢はまるで、本物のプロの絵描きが見せる表情そのものなのかもしれん。こいつ・・・絵に関してはあんなに熱意を持っているのか。・・・その熱意を勉強に回せばいいのに。てかじっとしてると足がしびれてきたな。
「お、おい・・・」
「まだ動かないで!!後10分そのままの姿勢で!!後それから、できれば手は拳を握って!さっきからちょこちょこ動いてるのが目立つ!」
こ、細かい指示を出して来やがった・・・。こいつ、一変わりしすぎだろ。仕方ない・・・足がしびれるが、じっとしてるか。
じっとしてから10数分後・・・。
「できたぁー!」
ようやくできたのか六海はうれしそうな声を上げた。
「か、完成したのか?」
「うん。どこからどう見てもよく再現できてると思う。やっぱりどんなものでも絵を描くのは楽しいな♪」
やれやれ、やっと完成したか。これでようやく身動きが取れるぜ。
「ほら」
六海は俺に向かって俺の好きな飲み物、麦茶が入ったペットボトルを渡してきた。六海が俺に何かをくれるだと⁉
「脅しで不本意とはいえ、絵描きの手伝いをしてくれたわけだし・・・一応、そのお礼」
「あ、ああ」
ちょうど喉乾いてたし、ペットボトルのお茶を一口飲む。うん、うまい。薬を入れてる気配もないな。
「いつもこんなことをやってるのか?」
「うん。六海は絵を描くとは大好きだしね。そもそも絵というのはね、美学という名の、ロマンスなんだよ。額縁に秘められた作者の心情や思い・・・その集大成ともいえる美の塊が絵なんだよ。時代が進むにつれて、絵の歴史というのは様々な形に・・・」
め、めっちゃしゃべる・・・!絵の話になったとたん評論家みたいなことを言って、何が何だか、俺には理解できん。てか、あれ?六海の奴、俺が相手でも嫌な顔せずに話してるじゃないか。まぁ、ほぼ語りで俺の話なんてほとんど聞いちゃいないと思うが・・・。でもそうだよな。こいつだって人の子。こいつの興味をもっと引き上げ、俺がもっと優しく接してやれば、理解しあい、今のように楽しそうに話せるはずだ。よし・・・ならばとことんまで付き合ってやろうじゃねぇか。さあ、どんな話でもかかってこい。
♡♡♡♡♡♡
結局六海の語りは始めてから閉門の時間まで延々と続いた。正直、耳に胼胝ができるかと思ったぜ。まぁ、そんなわけで今はこいつと帰宅してるわけだ。案の定俺と六海の位置は結構離れてるが。
「・・・ねぇ」
「ん?」
俺が単語帳を使ってながら勉強をしていると、急に六海がしおらしい声で話しかけてきた。
「その・・・最初から最後まで六海の話を聞いてくれて・・・ありがとう・・・。ちょっとだけ・・・うれしかった・・・。六海の美学論聞いた人って・・・結構ドン引きする人いるから・・・」
「そうか。それは何よりだ」
そりゃ引いて当たり前だろ。正直、もうお前の美学の話なんて聞きたくないがな。多分今の俺の顔はげっそりしてるだろうし。
「それから・・・これまで変にいじわるして・・・ごめん。ちょっと、根に持ちすぎたよ」
「俺は気にしてはない」
「これからは・・・その・・・あなたへの考え方を、改めてみるよ・・・家庭教師だって・・・前向きに・・・検討してみる・・・」
「!!ほ、本当か⁉」
「あ、あくまで検討ってだけだよ。一応・・・前向きに・・・」
こ、これは何という幸運だ!こいつの美術美学の話は非常に長く、ゴールまでは険しい道だったが・・・前向きに検討というお墨付きをもらった!やはり真摯に向き合えばわかってもらえるものだな!まだ参加の意思はないようだが、この信頼度が今は重要だ!
「なぁ、よければでいいんだが・・・」
「やべー!母ちゃんに怒られる!」
どんっ!
「うおっ⁉」
俺が六海に話を振ろうとしたら悪ガキに牽かれてバランスが崩れる。
「えっ・・・⁉」
バランスが崩れ、倒れようとした時、六海も巻き込んでしまう。いてて・・・あ、あの悪ガキ・・・!なんつータイミングで・・・門限ぐらい守れよ!てゆーかちゃんと前見て歩け!
もにゅっ
・・・もにゅ?なんだ?自分でもわかるくらいのこの手に伝わる柔らかい感触は。俺は悪ガキに牽かれて倒れた。しかもその際には六海を巻き込んだ。・・・ま、まさか・・・この感触は・・・
「あ・・・ああ・・・!」
「!?!?!?!?」
俺の手に伝わっている感触は、女の特徴ともいえるもの、六海のかなり育っている果実だった。や、やばい・・・この不誠実・・・!幸いにも周りにはまだ人はいないが・・・かなりやばい!
「ち・・・違う!これは事故で・・・」
俺は危機感を覚えてとっさに六海から離れたが、当の六海は顔を赤くして、手を大きく掲げて・・・
バチーンッ!!
「バカーー!!やっぱりサイテー!!信じられない!!最悪!!ド変態!!」
・・・いてぇ・・・。やっちまった俺も悪いが、全面的に悪いのはクソガキだろ・・・。平手打ちをした六海は怒りながら俺を置いてせっせと帰っちまった。くっそ・・・せっかく信頼度が上がってきたのに、一気にそれをぶち壊されるとは・・・。おのれクソガキめ!
ふと下を見てみると、なにやらファイルみたいなものが落ちている。中身はさっきの騒動で少し出ているために、何のファイルかはすぐにわかった。これは六海が今まで描いた絵なのだろう。どうやらかばんは空いてたらしく、さっきの衝撃で落としてしまったんだろう。仕方ねぇ・・・明日あいつに返して・・・
バサッ
「ん?なんだ?このノート」
俺がファイルを持ち上げた時、ファイルの中に入ってたノートが落ちてきた。これもあいつが描いた絵があるのか?気になった俺はそのノートの中身を見た。中にあったのは案の定やっぱりこいつの描いた絵だ。・・・なかなかにうまいじゃないか。ただ・・・なんだ?ファイルに挟んであった絵とは全く違う雰囲気があるな。何というか・・・二次元っぽい?それにこの吹き出しに何か文字があるな。えっとなになに・・・
「え・・・何してんの・・・」
文字を読もうとした時、震えたような声が聞こえてきた。声をした方へ顔を向けるとそこには六海がいた。だが・・・何か様子が変だな。
「そ・・・そのノート・・・見たの・・・?」
え?このノート?ちょっと待て・・・六海の今の顔、なんだかこの世の終わりみたいな絶望したかのような顔をしているな。
「え?あ、ああ・・・でもこのノートがどうし・・・」
俺がノートについて尋ねようとした時、六海はひったくるかのように俺からノートを取り上げてきた。
「え・・・?」
六海はノートを取り上げるとファイルも取り上げて自分のかばんの中へと入れていき、何も言わずにそのまま走って去っていく。その時の六海の目元には・・・涙があふれていた。
・・・え、これ・・・俺やっちゃった系?
♡♡♡♡♡♡
翌日、俺の気分は今最悪の状態だ。嫌に昨日の六海の泣き顔が脳裏から離れない。まさかあのノートが見られちゃまずいノートだったとは思わなかった。いや、本当に見ちゃいけないノートかどうかはわからんが・・・あの時の六海の絶望的な顔や泣き顔をしだしたのは、俺があのノートを見たのを見た時だった。とにかく、ことの真意を知るにしても謝るにしても六海に会いに行かなくてはならない。
とはいっても、俺はあいつがどこのクラスにいるか知らない。やはり狙い目は食堂あたりか・・・。そう考えていると、奥の曲がり角から六海が出てきた。ちょうどいい。早いとこ謝って真意を聞き出そう。そう思った時・・・
「ちょっと待ちなさいよ」
「げっ・・・二乃!五月!」
何やらご立腹の様子の二乃と五月に遮られてしまう。ああ、そんなことしているうちに六海が遠くに・・・!
「な、なんだよ。何か用か?」
「何か用か、ですって?よくもまぁおめおめと」
「あんた、六海に何したのよ」
「はぁ?」
何をしたか、だと?言っている意味がよくわからんのだが・・・。
「とぼけないでよ!あんた昨日六海を泣かせたでしょ!」
「ちょ!待て!どういうことだ!」
「・・・詳しいことは知りませんが、昨日六海が家に帰ってきたとき、部屋に閉じこもって1人ですすり泣いてたんですよ。まるで・・・嫌なことでも思い出したかのように」
「で、みんなに聞いた話によれば、あんた六海と一緒に学校にいたらしいじゃない。それも、学校が閉門する時間まで」
あー・・・なるほど・・・それで六海を泣かせた1番の疑いがあると思われる人物が俺に上がったっというわけか・・・。うん、あの時にいたのは俺と六海しかいなかったから、疑われて当然だな。
「ここまで来たら、あんたを疑わない理由なんてないわよ」
「あなた、六海にいったい何をしたんですか?ことの場合によっては・・・」
残念だが泣き出した理由を知りたいのは俺自身なんだが!だが正直に言ったところでこいつらは納得しないだろう。何しろ未だに真実が曖昧過ぎるんだ。ひとまずここは・・・逃げさせてもらう!
「悪いが俺は何も知らん!!」
「あ!逃げました!」
「ちょ・・・こら!待ちなさいよ!」
待たん!俺だって何も知らないんだ!許せ!
♡♡♡♡♡♡
勘弁してくれ・・・。今までこんな気持ちをこれほど強く抱いただろうか。
というのも授業期間中、後ろの席にいる五月から四六時中ものすごい視線で睨まれるんだ。圧のかかった視線が気になりまくって、授業の内容がほとんど頭に入らなかった。これでテスト満点を取れなくなったらどうしてくれる!
結局ほとんど授業の内容が頭に入らないどころか、解決策すら見つけられないまま昼休みに入った。五月にまたいろいろと言われることを危惧した俺はとりあえず早々に教室を出て食堂に向かう。いったん気分を落ち着かせよう。今日も焼肉定食焼肉抜きを頼み、いつもの席でどうすればいいか考えねば・・・。
「うーえすーぎさーん!!一緒にご飯でも食べませんかー!!」
「うおっ⁉」
この元気すぎる声は・・・四葉か。
「よ、四葉、お前はいつも突然なんだよ」
「あはは!先週は英語の宿題見てくれて、ありがとうございました!」
「そうか。それはなによ・・・」
「その成果もあって!見てください上杉さん!英語の小テスト・・・0点から3点に上がりましたー!あはははは!」
ほう・・・あれだけ英語の宿題や勉強を見てやったというのにたった3点しか上がってないとは・・・どうやらスパルタ授業がお望みのようだな・・・!
「フータロー」
俺が静かな怒りを浮かべていると、今度は三玖が話しかけてきた。
「三玖か。どうした?」
「昨日、六海と何かあったの?すっごく泣いてたけど」
う・・・やっぱり三玖もご存じだったか。ということは必然的に考えて四葉も・・・。
「あ!そうでした!上杉さん!いくら六海が意地悪してきたからって、何も泣くまで仕返ししなくてもいいじゃないですか!」
「違うわ!!どうやったらそんな発想がでてくるんだ!!」
全く、一度こいつの脳内を見てみたいわ。
「正直、俺にもよくわからん。あいつの持ってたノートを俺が見たらそうなったんだ」
「ノート?」
「ああ。かなり秘密にしてたみたいだが・・・何か知らないか?」
「・・・そういえば・・・前部屋をのぞいた時、鍵のついた引き出しに六海がノートを入れてたのを見た。あれ多分、秘密のノートだと思う」
やっぱあれ見ちゃいけない奴だったのか・・・。
「それなら、六海に俺がノート見てしまったの謝ってたって伝えておいてくれよ」
「事情はよくわかりませんが、それはダメです。こういうのは、本人が謝らないと」
くっ、四葉。五月の時と同じことを言いやがって・・・。
「大丈夫。六海は素直な子だから、ちゃんと誠実に謝ったらフータローを許してくれるよ」
「誠実っていったってどうすれば・・・」
「それを考えるのも、フータローのお仕事でしょ」
三玖よ・・・俺を信頼してくれるのはうれしいんだが・・・
「そうは言ってもあいつ自身が逃げるんだ。どうしようもないだろ」
「大丈夫ですよー。六海は体力が全くありませんから!」
「うん。フータローでも追いつけると思う」
却下だ却下!何で話を聞くためにまた汗だくにならなければならんのだ。あんなのはあれ1回で十分だ!
♡♡♡♡♡♡
結局何の解決策も得られぬまま放課後を迎えてしまった。六海の奴も俺を見かけるたびに逃げ出してしまう始末。こんな調子であいつと和解できるだろうか・・・。そう思ってると、奥から六海が出てきた。六海が俺を確認すると、すぐに逃げようとする。
「ま、待てって・・・」
「ついてこないでよ!!」
俺が昨日のことを謝ろうと追いかけた時、怒鳴り返されてしまう。
「・・・六海のこと、幻滅したでしょ。当然だよね、あのノート見てしまったらさ。あなたも、他のみんなと同じだよ」
「いや、あのな・・・」
「まぁ、六海は元からあなたのこと別に何とも思ってないけどね。あなたに何思われようが、別に何ともないし?」
こいつが無理を言ってるのは明らかだ。その証拠に、組んでいる腕がかすかに震えてるじゃないか。
「六海、話を・・・」
「何度でも言ってあげるよ・・・六海はあなたが嫌い。大っ嫌い!!」
六海は空のペットボトルを投げつけて怒鳴った後、そのまま去っていった。いてぇ・・・空のペットボトルって結構痛いのな。
「あーらら、フラれちゃったね」
「!一花」
「やっほー、フータロー君。お悩みのようだね?」
一部始終を見ていた一花はくすくすと笑みを浮かべて近づいてきた。
「別に悩みってわけじゃ・・・」
「ふふん、お姉さんがフータロー君の悩み、当ててあげよっか。フータロー君が六海の何らかの秘密を知ってしまった。で、謝ろうにも六海がそれを拒む。そんなとこかなー?」
「・・・見てたのか?」
「んーん。ただあの様子を見てたら、何となくそうなんじゃないかなーって思っただけ」
反論でもしてやろうかと思ったが、全部当たってるから何も言えん。六つ子だから関係ないって思ってたが、さすがは長女だ。よく妹のことを見てるじゃないか。
「・・・実際の話、六海はフータロー君のこと、気になってると思うよー?逃げるのは素直になれないだけ」
「はぁ?あいつが俺のことを?」
「まぁ、最初は六海も何とも思ってないんだろうけどさ、気になり始めたきっかけはあるよ」
「きっかけ?」
「ほら、最初はフータロー君の授業から逃げてた三玖が、最近になって積極的になったこと」
ああ、確かに。汗だくになった甲斐があったというものだ。
「二乃も二乃で何かしらの変化はあるんだよ。本人は認めないけどね」
本当に変わってるかどうかはわからんがな・・・。
「六海もそれに気づいてるから、フータロー君にだんだんと興味を惹かれていってるんだよ。フータロー君の存在は、私たち六つ子の何かを変え始めてるんだよ」
そういうものかねぇ。
「ねぇ、どうしても六海に謝りたいんでしょ?」
「あ、ああ・・・」
でなきゃ気まずいし、今後の家庭教師に影響が出始める。
「だったら公園に行くよといいよ」
「え?」
「最近あの子、公園にいるところをよく見かけるんだ。もしもお姉さんの予想が外れてなければ、きっと六海は公園にいるはずだよ」
居場所を教えてくれるのはありがたいが・・・なぜ俺にそんなことを?
「これは一花お姉さんの個人的な意見なんだけどね・・・今回のことでフータロー君も六海も悩んで、苦しんでる。だから2人には元気なままでいてほしいから・・・何となく、ね」
「何となくって・・・それで手助けするか、普通」
だが・・・おかげで助かった。
「・・・行ってくる」
「しっかりお勤め果たすんだよ」
余計なお世話だと思ったが、場所を教えてくれた手前もある。ひとまずそこは触れず、そのまま俺は公園へと向かう。
♡♡♡♡♡♡
公園と言ってもこの町には公園がある場所が限られてくる。あそこ以外の公園だと、それなりに遠出になるから、必然的に考えれば、居場所は近くの公園・・・。そう思ってよく見る公園を覗いてみると・・・いた。六海が1人でブランコをこいでいる。近くに姉妹の姿はない。出るなら今しかない。
「六海」
「!あっ・・・」
六海は俺の姿を見た瞬間、すぐに顔を俯かせた。そしてすぐにブランコから降り、かばんを取り出そうとする。逃がしてたまるか!
「六海!!」
大声を上げた瞬間六海は一瞬ビクッとなるが気にしてられない。俺はこいつに頭を下げて謝罪する。
「昨日は悪かった!まさかあれが見られちゃいけないものと思わなくて・・・つい好奇心で見てしまった!だがこれだけは言わせてくれ!俺が見たのは最初のページの絵だけであって、中身そのものは見ていない!」
吹き出しの文字は気になったが、まぎれもない事実だ。
「だから幻滅と言われても、俺には何のことかわからない!お前が何にたいしてそう思っているのかさえ!」
「・・・本当に・・・内容、見てないの・・・?」
「・・・ああ。だが、ノートを見てお前を傷つけちまったのは事実だ。だから謝りたい。本当に・・・」
俺が必死になって六海に謝ろうとした時・・・
「あれ?お兄ちゃん?こんなところで何してるの?」
「ら、らいは⁉」
我が最愛の妹、らいはが買い物袋を抱えて公園にやってきたではないか。な、なぜらいはがここに・・・?
「ら、らいはちゃん⁉」
「あ!六海さん!」
「・・・ん?お前ら・・・知り合いだったのか?」
「「・・・はっ!」」
らいはが六海と知り合いなのも驚きだが、この2人は俺を見るとやっちゃったみたいな顔をしている。
・・・ん?ちょっと待てよ。確からいはは今日も約束があるから帰りが遅くなるといっていたな。で、俺も先日二乃が言った気になる単語を覚えている。約束があると。え・・・まさか・・・
「約束の相手って・・・お前?」
六海の反応を見る限り、間違いない。らいはの約束の相手とは、六海のことだったのだ。
♡♡♡♡♡♡
なるほどな、だいたい把握したぞ。六海は先日、三玖が六海に変装して驚かせたことに怒って俺たちを追いかけてたらしい。で、探しているうちにいつの間にか外に出て、疲れ切ったところに偶然らいはと出くわし、そこから約束するほどまでに仲良くなったと。こんな偶然があるものなのか?
「らいはちゃん!昨日はごめんね!約束を先延ばしにしちゃって!」
「大丈夫です。急な用事じゃ仕方ないですし・・・それに、今日はちゃんと来てくれましたから!」
「らいはちゃん・・・!」
うむ、やはりらいははかわいいな。六海や五月がメロメロになるのも無理はないな。
「そうだ・・・昨日渡すことができなかったあれ・・・はい!」
「わあ!お兄ちゃんだぁ!ありがとう、六海さん!大事にするね!」
なるほど・・・昨日のあれはらいはを喜ばせるためにか。健気な奴だ。
「それから、はい、今日の分!楽しんでもらえるといいな」
「わあ!いつもありがとう!」
六海は絵を渡した後に昨日俺に見られたノートをらいはに・・・て、おい。
「おい、あれ誰かに見られたくないものだろ?いいのか、らいはに渡して」
「・・・らいはちゃんは特別なの。だって・・・らいはちゃんだけだもん、六海のことバカにしないでくれたの・・・」
・・・ん?らいはが特別?六海をバカにしない?それに、俺やみんなが幻滅って言葉・・・。こいつもしかして・・・
「あ!そうだ六海さん、お兄ちゃん。もう仲直りした?」
「「!」」
う、らいはよ・・・そこに触れるか。実際に俺とこいつは仲がいいというわけでないしな・・・
「も、もちろん仲直りしたよ!今は仲良し!ね?」
「あ、ああ!もちろんさ!」
六海の奴、らいはに合わせてくれたのか。この気遣いは感謝しなければな・・・。
「そうなんだ!よかったー。この前早めに呼び出されたから、けんかでもしたと思っちゃったから心配したんだよ」
ああ、料理対決してた時に早めに六海が帰ってきたのはそういうことだったのか。
「そうだ!せっかく仲直りできたんですから・・・うちでご飯食べていきませんか?」
なん・・・だと・・・?先日五月に我が家の事情を知られた上に・・・今度はこいつにもそれを知れって言うのか・・・?
「え・・・でも・・・」
「ら、らいは!六海にもいろいろ事情が・・・!」
「・・・ダメ・・・ですか・・・?」ウルル・・・
ズキューン!
ああ・・・その泣き顔は反則だろ・・・。
♡♡♡♡♡♡
結局、らいはのあの泣き顔に逆らえず、六海は今日うちで飯を食うことになった。くそ、五月だけじゃなく、こいつまで家庭事情を知られることになるとは・・・。
我が上杉家は中野家と違い、非常に貧乏でその上借金まで抱えている。とてもお嬢様には見せられない光景だから黙っときたかったんだが・・・。
「がはははは!!まさか五月ちゃんの妹ちゃんまでうちにくるとは!やるなぁ、風太郎!」
そう言って豪快に笑っているのは、我が家の大小柱であり、俺とらいはの父である上杉勇也だ。
「お?この牛乳、消費期限が一週間前じゃねぇか。危うく飲めなくなるとこだったぜ」
じゅううううう・・・
親父・・・はしたないから音出しながら飲むのやめてくれ・・・ほら、六海の奴、ドン引きしてるじゃねぇか・・・。
「下準備は済ませてあるから、後はルーを入れて煮込むだけだらもうちょっと待ってねー。いやー、お兄ちゃんと六海さんが仲直りして安心したー。これで、家庭教師にも身が入るねー」
「「!!」」
実際のところは全然うまくいってないが・・・今らいはにそれを言うのはまずい!
「もちろんうまくやってるよ!いやー、お兄さんの教えはわかりやすいなー!」
「あ、ああ!またわからないところがあれば言えよ!丁寧に教えてやるからな!」
「ははは、お兄ちゃんと六海さん、仲良しだね!」
らいはを騙すのは心苦しいが・・・こういう時だけ六海の気遣いには助かる。
「はーい、お待たせー!上杉家特性のカレーライスです!」
「わあ!おいしそう!ありがとうね、らいはちゃん!」
「ふん、お嬢様に庶民の味がわかるかね」
「こら」
俺が六海に嫌味を言ったららいはがお盆で頭をたたいてきた。地味に痛いからやめてほしいんだが・・・。それをよそに六海はカレーを本当にうまそうに食べているな。
♡♡♡♡♡♡
カレーを食い終わったところで六海はそろそろ家に帰ろうとする。ちゃんと親父たちにお礼を言ったうえでな。
「今日はごちそう様でしたー!」
「おう。風太郎、通りまで送って行ってやんな」
「えー・・・」
俺は心底嫌そうな声を出した。この後勉強に専念したいんだが・・・まぁいい。こいつには聞かなくてはいけないこともあるしな。
「六海さん!」
「ん?どうしたの、らいはちゃん?」
「知っての通りお兄ちゃんはクズで自己中な最低人間だけど・・・」
ええ・・・らいは・・・五月の時も思ったが、お兄ちゃんのことそんな風に思ってたのか・・・深く傷つく。
「いいところもいっぱいあるんだよ!」
ら、らいは・・・!
「だからね・・・今度はうちにも遊びに来てくれる?」
らいはの頼みに六海はにっこりと微笑んでいる。
「もちろん!その時は、飛びっきり面白いの用意しておくからね!」
「本当⁉」
「うん♪指切りしようか♪」
「うん!」
「「ゆーびきーりげんまん、ウソついたらハリセンボンのーます!」」
らいはと六海の様子を見ていたら、仲のいい友達というより、姉妹のようにみえるのは気のせいだろうか?
♡♡♡♡♡♡
とりあえず俺はらいはとの指切りを終えた六海はバスの駐輪場まで送って行っている。
「・・・事情は一応察したよ。どうしてそんなに六海たちに拘るのか。らいはちゃんや勇也さんには同情するけど、あなたにはしないよ」
「そうかよ。気にしちゃいねぇがな」
明らかにえこひいきしているようにも見えるが、今はそれはどうでもいい。
「・・・なぁ。もしかしてだが・・・お前の絵、誰かに拒絶されたのか?」
ビクッ!
「・・・まぁね。でも絵じゃなくて漫画って言ってほしいな」
やはりそうか・・・。でなきゃあの時の絶望した顔やらいはを特別扱いするのはおかしいと思ったんだ。てかあれ漫画だったのか。教科書や参考書ばかり読んでるから全く気が付かなかったぜ。
「素人の俺が見てもお前の絵はかなり再現度が高かったぞ。なぜ拒絶されるんだ」
俺の問いに六海は片腕をぎゅっと握りしめる。沈黙の末、六海は不安げな顔をしながらかばんをあさって、らいはに渡したやつとは別のノートを俺に渡してきた。
「これ見ればすぐにわかるよ」
このノートを見れば?何があるってんだ。ノートを開いてみると、そこにはやっぱり絵が描かれてる。吹き出しもあるってことは漫画だろう。でも何だ?この登場人物・・・いちゃついてるように見えるが・・・て、待て。よく見たらこの2人のキャラ・・・二乃と三玖じゃないか?
「覚悟を決めて言うけど・・・六海はね・・・禁断の愛をテーマにした漫画を描くのが大好きなの!!」
・・・は?こいつ、何言ってんだ?禁断の愛?
「お嬢様や貧乏人の恋物語・・・BLもの・・・百合展開・・・そういうのを想像しただけで・・・フヒヒ・・・」
な、なんかこいつの、かなり嬉々としながらくねくねしだしたぞ・・・!・・・ああ、そういうこと。わかっちゃった。
「そして何よりのごちそうなのは・・・兄妹、姉妹同士の禁断の、恋!身内だからいけない壁が存在する・・・でもこの恋が抑えられない・・・ああ!自分のものにしたい!その展開が・・・もう・・・」
そりゃ幻滅されて当然だ。なぜならこいつは・・・そっち系のむっつり型妄想オタク女子だ。
「・・・と、そう言うわけで、六海の趣味を知った人はみんな幻滅するんだよ」
途端に冷静になりやがった。なるほど、本人もそれを自覚してるから誰にもノートを見られたくないわけだな。
「ならなぜ鍵のついた引き出しに入れない。姉にも秘密なんだろ?」
「だって・・・考えた奴を今すぐに描きたいじゃん。抑えるなんて無理だよ・・・」
何という馬鹿正直な奴・・・。
「ひょんなことでらいはちゃんに見られて、嫌われるってすぐに思ったよ。でもらいはちゃんは・・・"漫画は漫画、六海さんは六海さんだ"って言って、六海を拒絶しなかったんだ。初めてなんだよ・・・あんなこと言われたのも、受け入れてくれたのも」
らいは・・・やはりいい子だ・・・!
「それからというもの、六海は書いた漫画をいっぱい見せていった。さすがにハードルが高い奴じゃなくて、前者の方をね」
そりゃそうだ。そんなハードル高すぎなのを見せやがったら俺が許さん。
「とにかくそういうわけだから・・・真実を知って嫌気がしたでしょ?だから六海のことは諦めて・・・」
「それはできん」
確かにこいつの趣味にはかなり引いた・・・切り捨てるのは簡単。だが、それでも家庭教師として、それは許されん。
「俺の使命はお前たち全員の卒業だ。1人でも欠けたら意味がない。だから俺はお前たちを見捨てたりはしない!」
だから真摯に向き合っていくしかないのだ。たとえこいつが、隠れオタク女子でも!
「多分お金のためだろうけどさ・・・やっぱり兄妹だね。拒絶しなかったの、これで2人目だよ」
「ひ、引いたことには変わらんがな!」
「でも・・・卒業したって、その先のことは?」
その先、だと?
「六海はね、漫画家になるのが夢なんだよ。でもその内容が・・・いけない恋物語だよ?通るはずない。絵描きだって夢に繋がるって・・・そう思ってるだけ。夢物語で終わるんだ・・・」
その先のことを心配してるのか。なおさら心配ないんじゃないか?
「・・・素人の俺から見ても、お前の絵は完璧だ。内容の方はらいはの方がよく詳しい。毎日お前に漫画をもらうくらいに、だ」
「・・・?」
「お前には他の姉妹にはない才能を持ってるんだ。いつか、世間にも認められるさ」
「・・・!!」
これが俺の抱いている気持ち全てだ。素人に言ったって、響かんだろうがな。
「・・・本当にムカつく。わかったような気になっちゃってさ・・・。本当に・・・勉強できるけどバカなんだから」
バカはお前たちにだけは言われたくはないが・・・少しこいつ・・・笑ってるのか?
♡♡♡♡♡♡
2日後の土曜日、今日は家庭教師の日なので、あいつらのマンションに向かった。三玖に扉を開けてもらって、30階のこいつらの部屋にたどり着くと、集まっているのは・・・やっぱ三玖と四葉だけか・・・。
「上杉さーん!待ってましたよー!今日もよろしくお願いします!」
「今日は歴史教えてね、フータロー」
まぁいい。やる気があるだけましか。始めようと思った時・・・
「ねぇ」
途端に声をかけられた。声をかけたのは・・・六海だった。
「あれから六海なりに考えたよ。六海、やっぱりあなたのこと受け入れられない」
「ええ~・・・」
「でも・・・卒業はしたいし、将来に役立つことを学べるかもしれないしね。だからこれからは・・・あなたを利用することにしたよ」
俺を・・・利用だと・・・?どういう・・・
「これからのご指導ご鞭撻、よろしくしてもいいよね?ね、風太郎君?」
!こいつ・・・初めて俺のことを名前で・・・それにこれは・・・俺の授業を受ける・・・てことか・・・?
「・・・おう。存分に利用してくれ」
なら俺はこいつの期待に応えなければならん義務がある。なんだ・・・不安だと思っていたことが少し和らいできたじゃないか。そうだ、少しずつでいい。卒業期間はまだまだ先なんだ。焦らずにやっていけば道は繋がる!
05「お宅訪問」
つづく
六つ子豆知識
『六つ子の唯一の芸術家』
五月「私たちの芸術家といえば六海で決まりですね!」
六海「絵のことならなんでもお任せ!なんでもすらすらと描けちゃうよ~?」
三玖「じゃあ・・・家族風景を描いてみて」
六海「家族風景!やっぱりそれはいいよねー。和気あいあいとした雰囲気!のほほんとした日常!そしてそこから始まる・・・バミューダトライアングル!」
三玖「え?む、六海?」
六海「いけないとわかっていても、この感情を抑えられない気持ち・・・駆け巡る愛の苦しみ!さらにそこに手を差し伸べるのが愛すべき姉!そして・・・フヒヒ・・・」
五月「む、六海が拗らせちゃいけないものを拗らせちゃいましたー!!?」
六つ子豆知識、今話分終わり
次回、一花視点