次回からのシナリオはデート回を数回、いったん原作に戻り、そして残りのデート回を一気にやり、その後は完全オリジナルシナリオ数話を載せるって考えています。デートの順番はアンケートの結果の上位からやるつもりです。
終業式から1週間ほどの時が経ち、私と四葉と六海は1枚の用紙とにらめっこをしていました。何故かというと、ここで1つの問題が発生したからです。
「暑~・・・ねぇ、海行きたいんだけど・・・」
「まだ言ってる・・・しつこい・・・」
「・・・ねぇ、海もいいんだけど・・・これ、どうしよう?」
「どうしようって・・・そりゃ新しい家を探すしかないじゃない」
今現在私たちが見ていた用紙というのは、このアパートの解約申入書です。実はこのアパート、諸事情で取り壊しが予定しているらしいので、賃貸借契約の解約することになったそうです。なので私たちはこの家から退去しなくてはいけなくなったのです。
「この家を退去しなくちゃいけないなんて・・・引っ越して半年でこれはツイてない・・・」
「ひとまず電話してくれてる一花を待とっか」
「お引越しの猶予も半年もあるから大丈夫だよね」
「いや・・・半年って・・・ちょうど受験シーズンなのですが・・・」
私の一言に二乃と六海は顔を引きつらせています。いや、だって・・・受験シーズンに入ってからでは遅いと思いますし・・・。
「そっかぁ・・・受験シーズンかぁ・・・はぁ・・・」
「考えたくもなかったわね・・・」
「早いかもしれないけど、夏休みの間に済ませちゃえるといいね」
「取り壊し・・・少し寂しいな・・・少しの間だったけど・・・この家にも思い出が詰まってるもんね」
三玖の気持ちには大きく同意できますね。少しの間でも、この家で姉妹と上杉君共に様々な困難を乗り越えてきた思い出は、今も、これからも忘れることはないでしょう。
「・・・あ、補修とかあるのかしら?」
「うわ、急に現実的になったよ・・・」
「あはは・・・」
「一花にこのことを伝えておきますね」
引っ越しの件を一花に伝えるため、私は一旦席を外し、外に出ようとします。
「フータローにもこのこと教えておかないと」
「夏休みに入ってから一度も会ってないね」
「家庭教師はお休みって言ってたけど・・・」
「早く会いたい」
「まぁ、長い夏休みだもの。チャンスはいくらでもあるわ」
・・・なんだか姉妹が気になる会話をしているのが聞こえますが・・・今は一花の方です。一花は・・・あ、下の方にいました。
「一・・・」
「ええ。私はもういなくなるので・・・これからは妹たち5人でということになります」
「!!」
え・・・一花が・・・いなくなる?これからは私たち5人?これは・・・い、いったい・・・どういうことなのでしょうか・・・?もしかしなくても・・・まさか・・・そんな・・・。私の頭の中では、1つのことで頭がよぎりました。いなくなるとはつまり・・・そういう・・・?
「!あれ?五月ちゃんどうしたの?」
「え⁉あ、いえ・・・あの・・・実はですね・・・」
話を聞いてしまった・・・何て言えるはずもなく、私は一花に引っ越しをしなくてはいけないことを伝えました。話を聞いた後は引っ越しの段取りをしようって言ってましたが・・・やっぱり・・・気のせい・・・なのでしょうか・・・?
♡♡♡♡♡♡
『一方その頃・・・』
その頃上杉家では・・・リビングで風太郎がらいはによって正座をさせられていた。・・・らいはに、あるものを見られたことによって。
「今朝お兄ちゃんのお布団の下からこんな本を見つけました」
「いや・・・」
「まさかお兄ちゃんがこっそりこんな本を読んでるなんて・・・」
「それは・・・」
「びっくりだよ!!」キラキラ
らいはの顔は怒っているのではなく、その逆でめちゃくちゃ嬉々としており、目が輝いていた。というのもらいはが見つけたのは、高校生のための恋愛ガイドだった。これまでの二乃の告白、修学旅行での三玖の告白、そしてつい先週の六海の告白によって、恋愛とは何なのか、自分の気持ちはどうなんだとわけがわからなくなり、その疑問を解消するために買ったのがそれである。しかし、やはり家族に・・・それも最愛の妹に見られたとなると、風太郎自身、気まずさでいっぱいになる。
「ち・・・違うんだらいは!無理やり友達に貸されただけで・・・たまたま・・・そう!たまたま布団の下に置いていただけだ!!」
「お兄ちゃんに友達なんていないでしょ」
「うぐっ・・・!」
らいはに痛いところを突かれて、言い訳ができなくなる風太郎。実際に風太郎が友達といえる人物といえば、六つ子の姉妹と、前田に坂本、武田くらいだから仕方ないが。
「夏休みに入ってからずっと引きこもってたから心配してたんだよ。さっそく五月さんたちに会いに行こうよ」
「は?なんでだよ、やめてくれ。夏休み中は宿題だけ出して家庭教師は休みにしたんだから、どうしてわざわざ俺から会いに行かなきゃならん」
六つ子たちに会いに行こうと提案するらいはだが、家庭教師を休みにした手前、自分から会いに行くのは風太郎自身気が引けている様子である。
「来週の日曜日とかどう?海行こうよ、海!五月さんたち誘ってさ」
「日曜は無理だ。ケーキ屋のバイトがあるからな」
「もう!」
六つ子たちに会おうとしない姿勢、既に予定を組んでしまっている風太郎にらいはは若干不満気だ。
「・・・でもそれなら二乃さんには会えるかもね!もしかしたら、みんなも遊びに来るかもしれないね!」
「!・・・・・」
プルルルル、プルルルル・・・
「あ、電話だ。はーい、上杉です」
六つ子たちの話をしていると、家の電話が鳴りだした。らいはが電話の応対をしていると、らいはが受話器を持ってきた。
「お兄ちゃん、アルバイト先の店長さんから電話だよ」
「店長が?」
ケーキ屋、Revivalの店長が電話をかけてきたということは、今後のバイトについての事だろうと思い、風太郎は受話器を受け取り、電話を変わった。
「電話変わりました。店長、どうしましたか?」
≪上杉君、すまん。店を少しだけ休みにしようと思う≫
「え・・・」
店を少し休むことになったと聞き、風太郎は唖然となった。理由は、どうやら店長はバイク事故にあってしまい、足を怪我してしまったようなのだ。店長不在では店が回らないということで、入院している間は店を休むことになったらしい。バイトが休みになったと聞いたらいはは来週の日曜日に六つ子たちと一緒に海に行こうと言い出した。らいはの強い要望から断ることができなかった風太郎は仕方なくこの日に予定を入れることになったのだった。
♡♡♡♡♡♡
『偶然のない夏休み』
それから数日が経ち、海に行く約束をした日、六つ子たちを海に誘おうとらいはと風太郎が六つ子たちのアパートまでやってきた。
ピンポーン
が、いくらピンポンを押しても六つ子たちは出てくる気配は一切なかった。
「あれー?お留守だー。せっかくお兄ちゃんのバイトもなくなったのになー・・・」
「じゃあもういいだろう・・・つーか本当に行くのかよ・・・」
海に行くことにたいしてらいははノリノリだったが、風太郎はやはり気が乗らない様子。
「・・・もう先に行ってるのかなー?」
「?何の話だ?」
「ううん、何でもない!さ、早く行こ、お兄ちゃん!」
若干気になるワードが聞こえたような気がしたが、今日はやけに強引ならいはに連れられ、アパートを後にした。そして、移動して時間が経ち、2人は海に到着した。
「海だーっ!!」
「・・・じゃあ俺は休んでるから、遊んでこいよ」
「ダメダメ、海に来たら海に入らなきゃ」
風太郎はパラソルの下で休もうとしたが、らいはによってそれは阻まれた。らいはがこんなに強引なのも無理はない。なぜなら、らいは知っていたのだ。五月との事前のやり取りで6人が今日海に来ることを。
(偶然を狙うってのもいいかもね♪)
偶然を装うとしている辺り、中学生になったらいははちょっぴりマセていた。
「!なんだ、お前らも来てたのか」
「!!」
六つ子たちが来たと思ってらいはは顔を振り向いた。
「おお、上杉じゃねーかコラ」
「よぉ、久しぶりやな、心の友よ」
「やぁ、夏楽しんでるかい?」
だが偶然出会ったのは待ち人の六つ子たちではなく、前田、坂本、武田の男3人衆であった。
「違う」
「「「!!?」」」ガビーン!!
初対面するらいはの心ない発言に男3人衆は少なからずショックを受ける。
「嘘だろ・・・お前ら3人で来たのか?」
「俺たちだけじゃねぇ。クラスの奴らも来てるぞ」
「おうよ。真鍋や松井たち女子もおるで」
どうやらこの男3人だけでなく、風太郎のクラスメイトもこの海に来ているようだ。
「君にもメールしてたはずだけど・・・見てなかったのかい?」
「そういやスマホはしばらく見てなかったな」
「おいおい、ちゃんと確認しぃや」
風太郎が男3人と話している間にらいはは辺りに六つ子たちがいないか見回すが、その姿はどこにも見当たらなかった。
(・・・あれー・・・?おかしいなぁ・・・何で会えないんだろう・・・?)
六つ子たちが海に現れないことに疑問を抱くらいは。この海の上にある車線路には、ものすごく見覚えのあるリムジンが通り過ぎていった。
♡♡♡♡♡♡
今日は姉妹全員で海に行く予定・・・だったのですが、引っ越しする日が今日と被ってしまい、いけなくなってしまいました。なので今私たちはアパートにある荷物を全てまとめて、江端さんのリムジンに乗って引っ越し先に向かっています。その道中で綺麗な海の景色が視界に入りました。
「わー、見て!海が見えるよ!」
「う~・・・海行きたかったよー・・・」
「仕方ないよ。今日引っ越す予定を組んじゃったんだもん。今度私たちで行こっか」
「フータローも海に行ってるのかな?」
「あの人は海に行くなんて柄ではないでしょう」
海の話でみんなが盛り上がっている間にも、リムジンは目的地に到着しました。その場所は、私たち全員、見憶えるのある場所です。
「まさか、またここに戻ってくるとはねぇ・・・」
そう、その場所とは以前私たちが住んでいたあの高級マンションでした。またこの場所に戻ってくるとは、誰もが思わなかったでしょう。私もそうです。
「言っとくけど、次の家が見つかるまでの繋ぎだから!勘違いしないでよ!」
「パパにフーちゃんを認めてもらえて、家庭教師に戻ってきたんだから別にいいでしょー?」
「二乃は強情だなぁ」
「うるさいわね!」
二乃の文句を聞きながら私たちは自分たちが住んでいた部屋まで向かいます。エレベーターで30階まで辿り着き、私たちの部屋までやってきます。中を見てみると、部屋は以前と全く変わっておらず、綺麗な状態のままでした。
「わっ!きれいなままだ」
「江端さんかな?ずっと掃除してくれてたのかも」
「お父さんは・・・やっぱりいないか」
「・・・・・・」
部屋がきれいなのは驚きましたが・・・それ以上に私は1つのことがずっと気がかりで仕方がありません。その気がかり作ってくれた原因が・・・一花です。
「あの・・・一花・・・」
「ん?どうしたの?」
「い、いえ・・・何でもありません・・・」
「そっかそっか」
一花にあの電話のことを聞こうとしましたが・・・やっぱり私にはできませんでした。あの電話で一花がいなくなると言っていたこと・・・それはやっぱり・・・この家を出る・・・と言う意味ですよね。一花は私たちの中で1番成熟していると感じてはいましたが・・・なんで急にそんなことを・・・。
・・・いいえ、一花だけではありません。修学旅行が終わってから、みんなどことなく変です。特に・・・先週の六海のあの告白・・・やっぱりあれは、そう言うことですよね・・・?先週までは名前で呼んでいたのに、今ではフーちゃんと呼んでいましたし・・・。
い、一度状況を整理してみましょう。上杉君の話だと、一花と二乃は上杉君のことが好きだと言っていました。一花は・・・どうなのかはわかりませんが・・・今回の家を出るというのはやはり上杉君と関係が・・・。二乃は見ていてわかるほどに上杉君に惚れています。以前のきつい言動や行動していた頃と見比べれば一目瞭然です。
三玖は温泉旅行の時に私に明かしてくれましたから知っていますし、修学旅行で告白もしました。四葉は6年前に上杉君に会っており、彼と再会してから四葉はずっと彼を見守ってきました。四葉が上杉君のことが好きなのは明らかです。そして私の唯一の妹六海も・・・彼のことが好きだったなんて・・・。彼への態度が徐々に変わっていっていましたが・・・まさか六海も彼のことが好きだったなんて、ずっと知りませんでした・・・。
一花が惚れ、二乃も惚れ・・・三玖に四葉、六海までもが上杉君に好意を・・・。なぜこんなことになってしまったのでしょう・・・。どれもこれも全部上杉君のせいです。今の現状、私はいったいどうすればよいのでしょうか⁉このままでは・・・とんでもない事態が起こるような気がしてなりません!
「フータローも久々に呼んであげよう」
「あら、いいわね」
「賛成賛成!」
「!!!」
三玖が今とんでもないことを言いだしましたよ⁉
「そ、それはいけません!!」
「「「え?」」」
私は必死になって電話しようと三玖を説得します。そうです・・・!いつもトラブルの中心に彼はいました・・・!今彼が姉妹に会ってしまえば、トラブルは避けられません!私にできることといえば、この平穏を保つこと!そのためにも・・・なんとしてでも説得しなければ・・・!
「彼も受験を控えて1人の時間が必要でしょう!ですからあまり迷惑にならないように・・・せめて!せめて夏休みの間だけは!!彼に会うのは避けましょう!!」
「何それ?そんなの嫌に決まってるじゃん。電話しよ」
「わあああああああああ!!!!」
「五月、うるさい」
「ちょっとは静かにしなさい!」
私の説得は空しく、六海は上杉君に電話をかけてしまいました。そして私は二乃と三玖に怒られてしまいました。ああ、もう・・・こんなことになったのも全部上杉君のせいです・・・。
「・・・ダメー、繋がんないや」
「充電切れ・・・とかじゃないみたいね」
「ほっ・・・」
上杉君が電話に出なかったので、ほっとしました・・・。ひとまず安心です・・・。
「フータロー・・・早く会いたいな・・・きっと今頃、1人で寂しくしてるよ・・・」
いや、あの・・・一応らいはちゃんもいるのでそんなことはないと思うのですが・・・。しかし・・・うぅ・・・どうして・・・どうしてこんなことに・・・。しかし今は・・・今は上杉君を姉妹に会わせるわけには・・・
♡♡♡♡♡♡
『物足りないもの』
一方その頃、海に来ていた風太郎はというと・・・
「学級長、右だー!」
「違うよ左だよー!」
「そうそこを左―!」
「だから右だってば!」
「どっちなんだよ!!」
クラスメイトのみんなと一緒に楽しくスイカ割りをやっていたのだった。
「この子、学級長の妹さんなんだって」
「かわいー」
「久しぶり、らいはちゃん。焼きそばあるけど食う?」
「食うー!」
らいはも真鍋を含めた女子たちと一緒に海を楽しんでいた。
「中野さんたち元気?」
「なぜ俺に聞く」
最初はあれだけ文句を言っていた風太郎だったが、なんだかんだ言って、クラスメイトと打ち解け合って、楽しく海を満喫している。そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気が付けばすっかり夜になっていた。
「あー・・・なんや、前田・・・大丈夫か?」
「上杉・・・まだいてぇぞ・・・」
「だからさっきから何度も謝ってるだろ・・・」
前田の額には棒で叩かれた跡ができていた。この跡はスイカ割りの際、前田はなぜか砂に埋められ、スイカと一緒に並べられていたのだが、風太郎が間違った指示を聞いてしまい、前田の頭を叩いてしまってできたものである。一応プラスチック製の棒なので怪我はないが。
※危ないので、絶対に真似しないでください。
「あんたまだうだうだ言ってんの?男なのにめそめそとだらしないわね」
「まぁまぁ。あの時は面白かったからいいじゃん。あれは楽しかったなー」
叩かれた跡をさすってる前田にほんの少しあきれる真鍋とその時のことを思い出して笑っている松井。
「上杉君も楽しそうでよかったよ」
「え・・・俺、楽しそうだったか?」
「うん。そう見えたけど・・・違った?」
「ただ自覚がないってだけでしょ」
「・・・・・・」
自分が楽しんでいたことの自覚がなかった風太郎はほんの少し驚いていた。思い返してみれば、風太郎自身も楽しかったとは思えてきている。なのだが・・・
「この後みんなで花火をするそうだが、上杉君、君はどうする?」
「いや、俺は帰ることにする。らいはも疲れて寝ちまったしな」
遊び疲れたらいはは風太郎の膝の上で確かに眠っている。よほど楽しかったのだろう。
「みんなによろしく伝えといてくれ」
風太郎がクラスメイト達に気遣っている姿勢に武田は少なからず驚いている。
「意外だね。上杉君がクラスに馴染もうとするなんて」
「そうか?元からこうだろ?」
「それはない」
「寝言は寝て言えや」
風太郎の発言にバッサリと否定をする前田と坂本。
「ま、去年・・・というか、中学の時と比べたらあんた、本当に変わったわよ。驚くくらいにね。何が・・・いえ・・・誰がそうしたのかは、言うまでもないわね」
「・・・・・・」
クラスメイトの気遣いなど今の今までなかった風太郎。それがこうしてクラスと馴染もうとしている姿には、中学の付き合いである真鍋も少なからず驚いている。そして、そんな風太郎を変えたのも、やはり・・・
「・・・数年ぶりに海に来て、お前らやクラスの連中と盛り上がれて楽しかった・・・それも事実だが、どこか足りないと感じてしまったんだ」
「バーカ、言わなくてもわかってるっての」
風太郎は真鍋たちに別れを告げ、らいはを背負って帰路を歩いていく。思い返すのは今日海で遊んだ思い出・・・だが、風太郎にとって1つだけ・・・足りてないものがある。
「あー・・・くそ・・・あいつらもいたら・・・もっと楽しいんだろうな・・・」
風太郎を変えた存在・・・六つ子たちが海にいなかったことに、風太郎自身本当に残念そうに一言呟いた。
♡♡♡♡♡♡
引っ越しを済ませた次の日、らいはちゃんから電話がかかってきました。どうやら昨日らいはちゃんと上杉君は海に行ってきたようなのです。な、何ともまぁ・・・。と、とにかく昨日海に来れなかったことをちゃんとらいはちゃんに伝えないと・・・
≪へー、お引越ししてたんだ。だから海にいなかったんだね≫
「ええ。まさからいはちゃんたちが来るとは思っておらず・・・お伝えしないままにしてしまい、すみません」
「らいはちゃん!!?私もお話したーい!」
「ちょ、ちょっと待っててくださいね・・・みんなに代わりますから・・・」
姉妹のみんながらいはちゃんと話したがっていましたので、スピーカー状態にして、みんなにもらいはちゃんと話せるようにしました。
「わー!らいはちゃーん!久しぶりー!」
「そういえば妹ちゃん、もう中学生だっけ。おめでとう」
≪わー、ありがとう!≫
「早いね」
みんな楽しそうにらいはちゃんとお話ししてますね。それにしても・・・間一髪・・・でした・・・。もし昨日海に行っていたら危うく上杉君と鉢合わせするところでした・・・。今の姉妹たちと上杉君が出会ってしまったら・・・どうなるか予想もできません・・・。できる限る会わせないようにしなければ・・・
「それでなんだけどね・・・お兄ちゃんにちょこっとだけ代わってもらえないかなー?」
≪え?代わってほしいの?うん、いいけど≫
それにしても・・・姉妹は今何の話を・・・
≪・・・あー、もしもし・・・俺だが≫
「!!??う、上杉君!!??」
耳を傾けてみますと、スマホの通話から聞こえてきたのは上杉君でした。な、なぜこのタイミングで代わるのですか!!?
「あんたなんでスマホ見ないのよ」
≪あー・・・すまん。家にスマホ置いてきちまってて・・・。そ、それよりも・・・お・・・お前らに・・・て、提案・・・が、あるんだが・・・≫
「「「「「提案?」」」」」
上杉君の方から・・・提案?なんでしょうか・・・すごく・・・すごく嫌な予感がするんですが・・・
≪えー・・・その・・・嫌なら・・・まぁ・・・断ってくれてもいいが・・・≫
い・・・いったい何を・・・
≪・・・明日・・・その・・・ぷ・・・プールでも・・・行くか≫
!!!???
「「「「「!!」」」」」パァッ(^▽^)/!
「あ・・・あなたから誘うんですか!!!???」
≪!!??うおぉ・・・耳がキーンて・・・≫
まさか彼の方から誘ってくるとは思わず、私は声を大きく上げてしまいました。
≪ま・・・まぁ・・・嫌なら断っても・・・≫
「「「行く!!!」」」
「はい!私も行きたいです!」
「え・・・いや・・・あ、あの・・・」
「んー、せっかくのお誘いだし、乗っちゃおっかなぁ」
みんな迷うことなく上杉君の提案に乗っちゃってしまってます・・・これはまずい・・・本当にまずいです・・・わ、私はどうすれば・・・
≪あー・・・それで、五月はどうする?≫
「え、えっと・・・い、行きます・・・」
と、とにかく姉妹たちを放っておけば確実に上杉君に会おうとするに違いありません!そうなれば今のこの平穏は崩れ去ってしまいます!それだけは・・・それだけは何としてでも阻止しなければ!見ていてください、お母さん・・・姉妹の秩序は、私が守ります!!
♡♡♡♡♡♡
電話の後はみんなでプールに行く準備を整えました。各各々、必要なものは荷物の中に入れ、水着は・・・さすがにさすがに前のものではきつくなってしまったので新しいものを買いました。こうして準備を全て終えて翌日、私たちはプールまでやってきました。・・・はぁ・・・来てしまいました・・・。
「ふぅー、今日も暑いねー」
「早くプールに入りたいねー」
「フータロー君、少し遅れてくるらしいし、先に入ってよっか」
私の不安をよそに、姉妹のみんなは楽しそうに話しています。・・・何もなければそれにこしたことはないんですが・・・。
「!三玖ちゃん、何見てるのー?」
「・・・・・・」じーっ
三玖が立ち止まってじっと見ているのは、この施設の注意書きでした。その注意書きの1部にはこんなことが書かれていました。
『入れ墨、タトゥーの方は入場をお断りさせていただいています。
(プリントシールもお断りさせていただいています)
退場していただいた場合も返金らは一切いたしません』
「・・・二乃、大丈夫?」
「なんでアタシなのよ。やってないわよ」
この中でやりそうだと思ったのか三玖が二乃に向かって入れ墨を入れてないか確認してきました。さすがにやってないでしょうに・・・。
「あはは、二乃はオシャレだからやってそうだよね」
「若気の至りで彼氏の名前を入れちゃったり」
「ありがち」
「あんたらアタシをどう思ってんのよ!」
「愛の暴走機関車じゃないの?」
「なんですって!」
・・・姉妹たちはここに来るまで、いたって普通の会話をしていますね・・・。
「・・・ま、相手との絆を刻み込むってのも、ロマンチックだけどね♡」
「やっぱり・・・」
「その調子でやるとか言わないでよー?」
「いや、さすがにやらないわよ。なんか痛そうだし」
「当たり前です!そんなことしたら不良の仲間入りですよ!」
「相変わらず五月ちゃんは真面目だなー」
・・・ふぅ・・・やはり上杉君がいなければ私たちは平和なんです・・・。どうか・・・どうか今日1日は、何事も起きませんように・・・。
♡♡♡♡♡♡
施設に入った後私たちはさっそく新しい水着に着替えて、入水前のシャワーを浴びてプールに入りました。私は念入りに準備運動をしてから入りましたが。脚とかつってしまったら大変ですからね。プールの水は程よい冷たさで気持ちよかったですが、何よりみんな楽しそうにしていて何よりです。・・・しかし、まだ安心はできません。まだ来ていない上杉君という不安要素はまだ残っています。この平穏を保つために何としてでも・・・何としてでも姉妹が彼と会うことは避けさせなければ・・・。
くうぅ~・・・
・・・お腹が空きました。どうやらもうお昼の時間のようです。腹が減っては戦はできぬといいますし、そろそろお昼ごはんにすることにします。私はこの施設にある焼きそば屋さんで人数分の焼きそばを注文します。それにしても・・・んん~、このソースの香り・・・食欲がそそります・・・早く食べたいです。
「ほいっ、焼きそば6人分お待ち!」
「ありがとうございます」
「・・・お前・・・ついにそこまでの域に達したか・・・」
「!!?」
今ものすごく聞き覚えのある声で私に声をかけてきたのは、会うことを避けなければいけない人物、上杉君でした。
「う、上杉君!来てたのですか!!?」
「ついさっきな。そんなことよりお前・・・」
「こ、これは違うんです!!これはみんなで食べる分で・・・」
「にしても1人1人前か・・・」
・・・ど・・・どうしましょう・・・彼がここに来るのはわかっていましたが・・・こんなところであっさりと・・・完全に油断してました・・・。
「・・・ところであいつらは・・・」
「う、上杉君!!この水着はどうですか?あなたが急に言うものですから慌てて買ってきたんです。前のものは少々収まりきらなかったので・・・」
と、とにかくここは別の話題で何とか誤魔化さなくては!!
「え?まぁ・・・いいと思うぞ・・・。・・・集まるなら別にプールじゃなくてもよかったんだが・・・」
「いえ、みんな喜んでましたよ。むしろ、今年はまだ夏らしいことをできてませんでしたから、ちょうどよかったです」
「そうか・・・そりゃよかった・・・。・・・それで、あいつらはどこ・・・」
「こ、この水着の花柄は今年の流行でして!!少し照れ臭いですが取り入れたりして・・・」
「・・・おい、いつまで立ち話をする気だ」
「ですよねー・・・」
や、やっぱり長く誤魔化せるほど上杉君は甘くありませんでした・・・。うぅ・・・どうしましょう・・・このままでは・・・やはり彼とみんなが会うことはもう避けられないのでしょうか・・・。せっかく・・・せっかく夏休みで元のように落ち着いてきたのに・・・。・・・いいえ!弱気になってる場合ではありません!今は私がしっかりしないと!そう息巻いていると、向こうの方で一花がいるのが見えました。ま、まずい!早く上杉君を遠ざけないと!
「う、上杉君!みんなはあっちです!」
「うおっ⁉」
一花の正反対の方向へ上杉君を無理やり誘導していますと、今度は四葉を発見しました!ああ・・・もう・・・なぜこんな時に・・・
「す、すみません!!やっぱり隠れてください!!」
「はあ?お前何言って・・・」
「もっと身をかがめてください!何でそんなに大きいんですか!!」
「無茶言うな!!」
今の私はもう必死で上杉君を茂みに隠させようとして、周りが見えていません。しかし周りを気にする余裕は私にはないわけで・・・
「あのー・・・」
「2人で何やってんの?」
「あ・・・」
「一花・・・四葉・・・」
・・・終わった・・・出会わせてはいけないというのに・・・出会ってしまいました・・・。
「あ・・・あははは・・・上杉君が到着したみたいです・・・」
ど・・・どうしましょう・・・このままでは・・・修学旅行の二の舞に・・・
「フータロー君久しぶりー。みんな会いたがってたよ」
「さあさ!立ってください!みんなで遊びましょー!」
「あ、ああ」
「・・・あれ?」
何でしょう・・・私の予想していた光景とは全然違う光景です。何というか・・・平和そのものです。
「上杉さん、ちょっと日焼けしました?」
「あー、一昨日海に行ってたからそのせいだろう」
「ししし、似合ってますよ!」
「そ、そうか」
「ほらほら同級生の女の子の水着はどう?これが目的だったんでしょー?」
「・・・やっぱプールはやめとくべきだった・・・」
「はは、冗談冗談。フータロー君は相変わらずだなぁ」
なんというか・・・あっさりしすぎているような・・・。四葉は過去のことは洗い流したように見えますし・・・一花も一花で家を出る一件は無関係だったということでしょうか・・・?・・・つまりは・・・私の勘違い?・・・なんだ・・・早とちりしていたみたいで恥ずかしいです。
「フータロー!」
「フー君!」
「フーちゃーん!」
ほんの少し安心したのもつかの間でした・・・
「「「会いたかった!!」」」
「ぐおっ⁉」
上杉君に気付いたのか二乃と三玖、六海がこちらにやってきて上杉君に抱き着いてきました。
「お、おう・・・二乃も三玖も六海も元気だったか?」
「うん!みんな元気だよ!」
「そうか・・・そりゃ何よりだ」
・・・・・・こ・・・これは・・・
「っていうか聞いて。コンタクトが流されちゃってよく見えないのよ。本当にフー君なのかしら?よく見せて。むしろアタシを見て」
「六海ね、メガネが流されないように工夫したんだー。ほら、このメガネストラップのおかげでこの通り落ちない!偉いでしょ?」
「プールに誘ってくれて嬉しかった。暑いけど、平気?日焼け止め持ってきた。使う?」
・・・二乃が水着を強調させるように見せびらかしたり、六海がメガネストラップを利用して意図的に自身の胸まで落としたり、三玖が日焼け止めを塗ってもらおうと迫ってきたりと・・・
「どう?似合ってる?」
「ほら、もっとよく見て」
「私にも、塗ってほしいな」
・・・こ、この3人は・・・本気だ!!!
「・・・・・・あー・・・その・・・」
上杉君は3人の積極的な行動に気まずそうに視線を逸らしているがわかりますが・・・。
「よーし!みんな揃ったね!ご飯食べたらさっそくあれやろう!!」
「え?あれって・・・」
「まさか・・・」
四葉が指をさした場所には、ここからでも高いとわかるウォータースライダーでした。
♡♡♡♡♡♡
ご飯を食べ終えた後は、有言実行と言わんばウォータースライダーまでやってきました。1番上の場所まで来てみたのですが・・・ううぅぅ・・・た、高いです・・・。
「わー・・・」
「い、意外と高いわね・・・」
「私・・・フータローにお願いしたんだけど・・・」
「ま、まぁ・・・そう言わずに・・・」
「一花ちゃん、日焼け止め塗り終わったよー」
「わー、ありがとー。六海にも塗ってあげるね」
ひ、ひとまずは三玖に日焼け止めを塗って少し誤魔化していますが・・・やはり意識してしまいます・・・。高さはもちろんですが・・・この・・・恋する姉妹の動向にも・・・。
「あ・・・あの・・・やっぱりやめませんか・・・?」
「大丈夫だってー。五月ちゃん、ジェットコースターでも楽しそうにしてたじゃん」
「はは、まぁ、怖くなったらお姉ちゃんが手握っててあげるから・・・ね?」
「や、約束ですよ!本当に、手を握っててくださいね!」
「・・・結構並んでるなぁ・・・」
「ねぇ、フー君」
はっ!一花たちと約束してる間にも二乃が上杉君に声をかけて・・・
「店長の話聞いた?今度お見舞いに行きましょうよ」
「そうだな。俺も行こうと思ってたところだ」
「春も呼んでおきましょう。あの子、アタシ達に会うのが老後の楽しみなのにって電話で嘆いてたし」
「俺たちと同じ年だろうが・・・」
・・・あ、あれ・・・?
「何の話かわからないけど、私も行く」
「六海も!」
「あんたたちには関係ないでしょ。バイトの話よ」
「あー!アルバイトを口実に逃げてる!」
「ずるい」
「うるさいわね」
・・・何というか・・・一花と四葉に会った時もそうでしたけど・・・
「え?お前ら、あのマンションに戻ったのか?」
「はい、上杉さん、遊びに来てくださいよ」
「またオートロックで入れなかったりして」
「え?そんなことがあったの?知らなかった・・・」
「エントランスで入れなかったのは俺だけじゃないけどな」
「ちょ、ちょっと!いつの話を・・・ていうか何言うつもり⁉」
・・・会話が思っていた以上に穏やかです。少なくとも、修学旅行の二の舞にはならないと断言できるほどに。・・・やはり私の早とちりだったのでしょうか。・・・そうですよね・・・私はいったい何を心配して・・・
「次の方、お待たせしました!こちらのボードは2人乗りです。これから先は2人一組でお並びください」
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」
え・・・ちょっと・・・2人1組って・・・そんなことを言いだしたら・・・
「・・・フーちゃん!六海と乗ろうよ!ね?ね?」
「え・・・いや・・・」
「フータロー。私と乗ろう。大丈夫、損はさせないから」
「損って・・・何が⁉」
「ちょ、ちょっと!アタシがフー君と乗るのよ!」
「さ、3人とも落ち着いて!」
「もー!みんな見てるからー!」
・・・やはり・・・こうなってしまうのですね!!もう何となく予想はついてましたよ!ああ、もう・・・せっかく穏やかな空気になっていましたのに!!どうしてこうなってしまうのですか!!
♡♡♡♡♡♡
言い争っていても埒が明かなかったので、公平にグー、チョキ、パーのじゃんけんで2組のペアを決めて、3組になった側はそこからグッパのじゃんけんでペアを作り、残った1人は最初に乗ったペアの誰か1人とペアを組むことで場が収まりました。納得がいったみんなはさっそくじゃんけんでペア決めを始めました。その結果・・・
「六海、いつもより楽しそうだね」
「うん!全員で一緒にこうして遊べるのが何よりも嬉しい!」
グーのペアが一花と六海・・・
「三玖、あんた変わったわね」
「うん。もう弱気になってらんないから。それに・・・告白してからはなんだか・・・景色が違って見えるんだ」
「・・・うむむ・・・このままじゃいけないわね・・・」
チョキのペアが二乃と三玖・・・それで残ったパーのグループが私と四葉と上杉君になったわけ・・・なんですが・・・
「一花と六海のところに行ってくるから、楽しんできてくださいね!」
「ああ!四葉、待ってください!」
グッパのじゃんけんであろうことか私と上杉君がペアになってしまいました・・・。早く乗りたかったであろう四葉急いで一花と六海のペアのところまで行ってしまいました・・・。やっぱり変わってって言う前に行ってしまいましたし・・・どうして・・・こんなことに・・・。
「・・・あー・・・どうする?やっぱりやめて四葉と乗るか?」
「や、やめるだなんて・・・なんてこと言うんですか!まるで私が意識してるみたいじゃないですか!」
「だって今も躊躇ってるし」
「こ、これは・・・この高さに躊躇してるだけです。ただ・・・それだけですが・・・一旦日焼け止め塗り終わるまで少々お待ちください」
「あっそ」
ひとまず私は平常心を保つために日焼け止めを塗っておきます。
「・・・それにしても理解できません。二乃も三玖も・・・六海まであなたと乗りたいと言い出すんですから・・・。本当に、どうかしてます・・・」
「・・・ああ、全くだな。3人とも、本当にどうかしてる」
上杉君の言葉で自分が失言してしまっている気が付きました。早く訂正しなければ・・・
「い、いえ、今のは言葉の綾でして・・・決して3人を否定しているというわけでは・・・」
「こんな俺なんかを選ぶなんてどうかしてるという意味だ」
「!」
上杉君が口にしていたのは、何もボードの件ではなく、恋愛関係の方を言っていたことを私は気が付きました。
「いつだったかお前に相談した時と何ら変わってない。それどころか問題が余計に増えちまって、それを先送りして思うがままこんな所に誘っちまった」
確かに普段の彼ならばプールなんて賑わう場所に誘うことなんてしませんが・・・
「・・・もっと本を読んで、早急に自分の気持ちを見つけ出さなければ・・・。じゃないと、俺を選んだあいつらに申し訳が立たん」
・・・上杉君は・・・姉妹たちの気持ちを真剣に受け取って・・・真剣に悩んでくれていたのですね・・・。夏休みの間、今日を除き、私たちに会おうとしなかったのは、ずっと答えを探していたんですね。真剣な彼の姿を見て、私は思わず笑みを浮かべました。
「・・・ふふっ」
「・・・なんだよ?」
「いえ。あなたが真面目に考えてくれてるようで安心しました。あなたは相変わらず頭でっかちですね」
「・・・お前にだけは言われたくないね」
私の一言に上杉君は素っ気なくそれだけを返しました。
「私も姉妹の気持ちを知ろうといろいろ調べたからわかるんです。結局この世は教科書だけではわからないことだらけでした。ですから、今日のようにあなたが思うがままに行動してみたらいいのではないでしょうか」
「俺の思うがまま・・・か・・・」
「あれこれ考えるより、やってみてわかることも、たくさんあると思いますよ」
「・・・そんなもんかね・・・」
「そんなものですよ」
私の言葉を聞いた上杉君は少し頭をかきました。今はまだわからなくても、上杉君、私はあなたが最善な答えを出してくれると、信じていますよ。
「次のお2人どうぞ」
あ、話している間に、私たちの番がやってきました。
「ではこちらに座っていただいて、後ろの人の足の間に前の人を挟む形で・・・」
・・・え?そういう体制で乗らなければいけないんですか・・・?この乗り方・・・もし私が前にいたら・・・ああ、想像もしたくありません!なら後ろの方にいたら・・・これ、彼の頭が私の胸に当たるのではないですか?そう考えたら・・・うわぁ・・・どっちも地獄です!!
「え、えっと・・・前・・・い、いえ!や、やっぱり後ろ!後ろでお願いします!」
「結局やるのかよ・・・」
「ですがもう少しお待ちください・・・心の準備と日焼け止めがまだ・・・」
「まだ言ってんのか・・・何回目だよそれ」
「ですが・・・ですが・・・」
「はぁ・・・手、握れば平気か?」
ドキンッ
上杉君・・・それは卑怯です・・・。思わずドキッとしてしまったではないですか・・・。
「ば・・・バカにしないでください!こんなのはへっちゃら・・・そう、余裕です!」
私は強がってボードの後ろ側に乗りました。・・・ハッキリ言ってしまえば、この高さから滑るのはやはり怖いです。
「そうかよ。じゃ、失礼するぞ」
上杉君はお構いなしにボードの前まで移動し、、私の足の間に座ってきました。
ドキッドキッドキッ・・・
ああ・・・なぜでしょうか・・・ただ彼が前に座るだけなのに・・・なぜこんなにも胸が高鳴ってしまうんです・・・?そう考えている間にも、彼の頭は私のお腹に乗っかって・・・
「・・・枕みてぇ」
「・・・・・・」
上杉君のこの一言によって、胸の高鳴りは一気に冷めました。そして、私は恥ずかしさで顔を赤くなっていきました。ボードが滑り台と流れる水に乗って早く滑っても、絶叫しなかったほどに。この男は本当に・・・人が気にしていることを・・・!こんな失礼極まりない人を好きになるなんて・・・やっぱり3人とも・・・どうかしてます!!!
♡♡♡♡♡♡
私たちが帰るころには、もうすっかり日が暮れていました。結構長いこと日にあたっていたこともあって、日焼け止めを塗っていない四葉と上杉君は日焼けをしていました。
「はー、楽しかったねー!」
「ねー。スライダーも楽しかったし、私たくさん泳いじゃったよー」
「お姉ちゃんはもう疲れちゃったよー。五月ちゃんに何度連れていかれたことか・・・」
「遊園地の時と同じね」
「うん、デジャヴ」
あ、あれれれ・・・私、そんなにはしゃいじゃってましたか?確かにあのスライダーは面白かったので、何度も一花をついてきてもらいましたが・・・。
「あれ?四葉ちゃん、水着の痕がついちゃってるよ?」
「え?わー!本当だ!」
「日焼け止めのクリームを塗らないからですよ」
「フータローも日焼けで真っ赤だよ」
「おお、そうだな」
「まぁでも、男の子はそれぐらいの方がちょうどいいかもね」
「!ねぇフー君、その右手の痕何?」
「ん?」
二乃に右手を指摘されて見てみますと、上杉君の右手の一部は日焼けしていませんでした。
「なんだこれ?」
「そこだけ日焼けしてないわね」
「何かつけてたの?」
「いや・・・何もつけてなかったはずだが・・・」
「本当?」
「なんでだろー?」
「うむむ・・・謎ですねー・・・」
・・・そういえば、ウォータースライダーで上杉君とペアになったあの時、私は日焼け止めを塗って手で上杉君の手を握っていたような・・・。・・・・・・はっ!!??ま・・・まさか・・・あの上杉君の右手の痕の正体って・・・!
「わ、私は何も知りません!!!!」
「「「「「え?」」」」」
「これ以上、火種を増やすのは御免です――――!!!!」
でも結局・・・みんなに問いただされて、原因を知った二乃たちに睨まれました・・・。四葉と一花は苦笑いでしたが・・・。もう・・・こうなったのは何もかも上杉君のせいですよ・・・。
50「秘密の痕」
つづく
おまけ
お姉ちゃんたちに質問してみた!パート2!
六海「ふぃ~・・・。さ、こんな暑い中、第2回のこのコーナー、言っちゃおっかな~・・・。第2回のテーマは・・・夏にちなんで夏休みに行きたい場所はどこか、だよ。夏でしかできないこと、夏じゃないと遊べないものがたくさんあるけど、みんなは夏はどこで遊びたいのかな?じゃ、さっそく聞いてみよっか。・・・ああ、暑いよ本当に・・・」
一花の答え
一花「そーだな~・・・温泉か銭湯には行きたいねー。仕事の後に入って、それから冷房の効いた部屋で寝るのが特に気持ちいいんだよねー。この夏だと特にそう思うよ」
二乃の答え
二乃「断然海よ!・・・と思ってたんだけど、プールも悪くなかったわね。それにしても・・・フー君から誘ってくれるなんて・・・♡・・・て、何よその顔は?」
三玖の答え
三玖「山。前にも言ったけど、夏にしかできないことはちゃんとある。山に行くことになったらしっかりと教えてあげるね」
四葉の答え
四葉「花火大会!やっぱりこれは私たちにとって大切な行事だし、何より去年の花火大会はいろいろあったけど楽しかった!また去年みたいに花火やりたいなー。もちろん、上杉さんとらいはちゃんと一緒に!」
五月の答え
五月「夏に行きたい場所、ですか?今年は受験シーズンもあるので、去年のように遊ぶ回数は少なくなるでしょうが・・・強いて言うなら、夏のスイーツフェスがあるお店でしょうか。今年は夏限定のスイーツが・・・て、何ですかその予想通りみたいな顔は?まるで私が大食いキャラみたい・・・え?事実でしょって?む、六海ーーーーー!!!!(怒)」
六海「うんうん、みんな行きたい場所がはっきりしてるねー。みんなの答え聞いてたら六海も行きたくなってきちゃった。ちなみにちなみに六海はねー、コミケに行きたいなー。今回はどんな作品と出会えるんだろう・・・楽しみになってきちゃった!早くコミケ当日にならないかなー♪
次はどんな質問にしようかなー。ちょっと楽しくなってきちゃった♪それでは、次の質問してみたをお楽しみにー♪」
お姉ちゃんたちに質問してみた!
夏休みに行きたい場所はどこ? おわり