今回は前回の前書き通り、アンケートの結果の上位の子からのデート回です。ぶっちゃけ今回はその子の趣味全開??だと思いますです。
「2人ともごめんねー。六海のお買い物に付き合ってもらっちゃって」
「大丈夫大丈夫!荷物持ちなら任せてよ!」
「私も、ちょうど欲しい本があったから、ちょうどよかった。だから気にしないで」
夏休みの真っ最中の中、六海は漫画を描くためのインクや用紙が切らしちゃったから、その2つがある本屋さんで三玖ちゃんと四葉ちゃんとでお買い物をしてるよ。必要なものはさっきあげたインクと用紙、それから新しいペン・・・もののついでに六海の欲しい漫画を買おうと思ってるよ。いやー、このお店は本当にいいところだねー。漫画家に必要な道具も揃えてるしさ。
「それよりも、本当にいいの?私たちの欲しいものまで買ってくれるって言ってたけど・・・」
「お金の方は大丈夫?」
「心配しないでいいよ。実は銅賞をとったおかげでお給料に大きいボーナスをもらっちゃったんだー。おかげさまでお金いっぱいだから!だからちょっと奮発しても問題ないんだよー♪」
前に六海が応募した漫画雑誌の最優秀賞決定戦。あれで銅賞をとったことでね、先生から労いの意味も込めてボーナスをもらったんだよ。入ってた額も結構あったからお財布の中はもうほくほく♪本当に、応募してよかったよ。おかげで夢にまた1歩近づいたし、アルバイト仲間ともより仲良くなって、お金ももらっちゃったし、そして何より・・・フーちゃんに告白することができた。もう言うことなしだよ。
「私はその奮発が心配。ちょっと調子に乗るとすぐ散財するし」
「失礼な!六海はそんな失敗はしないよ!」
「いや結構な頻度であるような・・・」
三玖ちゃんも四葉ちゃんも何を言っているのやら・・・六海はそんなに無駄遣い激しくないもん!そりゃこれまでもナナカちゃんグッズとか器材とか漫画とかでお金がなくなっちゃうけど・・・え?それは散在してるし無駄遣いも激しいって?う、うるさーい!六海が散在してないって言ったらしてないんだ!!
「と、とにかく!六海のことは気にしないで!ほら、スランプの時にはいろいろと協力してもらったからそのお礼ってことで!ね?ね?」
「逃げてる・・・」
「ははは・・・まぁ、そういうことなら・・・」
なんか三玖ちゃんからジト目で見られたけど・・・何とか納得してもらえた・・・。ちなみに、逃げてるわけじゃないよ?だってこれは無駄遣いじゃないからね。有無は言わせないよ?
「・・・じゃあ、気になってもの、ちょっと取ってくる」
「あ、私も行く!」
三玖ちゃんは自分が欲しいものが置いてある場所まで向かっていった。四葉ちゃんはそれについていってる。三玖ちゃん、何の本が欲しいのかなー。大体想像がつくけどね。
「・・・ん?何あれ?」
三玖ちゃんについていこうと思ったら、途中で何か設置してあるのに気が付いたよ。なんだろう・・・?あれ前に来た時はなかったはずなんだけど。なんだろうと思って六海は興味範囲で近づいてそれを見てみる。
「あ、これ・・・コイ・ツラのスタンプラリーか」
六海が見つけたのは六海が呼んでる恋愛漫画のコイ・ツラのスタンプラリーだったよ。ちなみにコイ・ツラの本当のタイトルは恋は辛いぜなんだけど、ファンの間で略でコイ・ツラって呼ぶことからこの名が定着したんだよね。決してこいつらって意味じゃないよ。
「そういえばコイ・ツラのイラスト展って明日からだっけ・・・だからか・・・」
実はコイ・ツラってアニメはやってないんだけど、ドラマ化されていて、視聴者も結構多いから意外と人気があるんだよね。その人気のおかげもあって、イラスト展を開くことができたんだって。まぁ面白いのは認めるけど、ナナカちゃんにはやっぱり敵わないんだけどね。・・・でもイラストはやっぱり六海よりも段違いでいいんだよね・・・。・・・漫画家の勉強のために行ってみようかな?うーん・・・いや、でも六海はそこまでファンってわけでもないし・・・なんか場違いな気が・・・。それにお金もかかるし・・・ここにまで行ったら先の余裕が・・・。
・・・それにしてもまだスタンプもない台を置くとは、何ともまぁ気が早いねー。それとも宣伝をしているのかな?まじまじとスタンプラリーの項目を見てみると、ちょっと気になる欄を見つけたよ。気になるところは内容っていうのは景品についてなんだけど・・・ここがとっても重要。気になる内容は・・・
『スタンプを全て集めると素敵な景品をプレゼント!カップル同士でなら、より豪華な景品になるかも!!?』
カップルなら景品の質が変わって来るらしいんだけど・・・重要なのは景品じゃなくてカップルってところ!とどのつまりだよ・・・豪華?な景品をもらうためには必ずしも男女のペアで回らなくちゃいけないってこと!どっちにしても景品はキーホルダーとかそんなありきたりのものなんだろうけど・・・カップル・・・カップルかぁ・・・。このカップルの単語で頭によぎるのはフーちゃんのこと。
・・・もし、もしもだよ?六海がフーちゃんを連れてスタンプラリーに参加とかしたら・・・周りからは六海とフーちゃんがカップルって・・・見られるのかな?しかも・・・2人っきりでどこかを回るって・・・それって・・・デートなんじゃないの?そう考えだしたら・・・思わず顔がにやけちゃうよ・・・えへへ・・・。それだったら・・・行ってみようかなぁ・・・なんて・・・ふふふ・・・。
「・・・そこで何ニヤニヤしてるの?」
「おひゃあ!!?」
ちょっと妄想に浸ってたらいつの間にか戻ってきた三玖ちゃんに声をかけられた。び、ビックリしたぁ~・・・。
「六海ー、お待たせー」
「さっき何見てたの?面白い本でも見つけた?」
「えっ!!?う、ううん!!何でもない!!なんでもないよ!!?」
四葉ちゃんも戻ってきた時に三玖ちゃんから質問された時、六海は慌てて後ろにあるスタンプラリーの台を2人には見えないように六海の身体で隠したよ。
「・・・今何隠したの?」
「ギクッ!な、何も隠してなんかないよ・・・?」
「え?何?どうしたの?」
や、やばい・・・四葉ちゃんはともかく、三玖ちゃんは六海を怪しがってる・・・。早く2人・・・というか三玖ちゃんをスタンプ台から遠ざけないと・・・。じゃないと三玖ちゃんは何を言い出すかわかったものじゃないもん。
「絶対何か隠して・・・」
「そ、それより欲しいもの取ってきたなら早く会計を済ませよ!コンビニでアイスも買ってあげるからさ!ほらほら!」
「アイス⁉わー、やったー!」
六海は無理やり三玖ちゃんを押してスタンプ台から離れさせるよ。危ない危ない・・・あれの存在を知られたら、たった今考えた予定が台無しになっちゃう・・・。三玖ちゃんは今も怪しがってるけど・・・店から出ちゃえば後は何とかなるよ。
「・・・怪しい・・・」
何とか会計を済ませた後は三玖ちゃんは何かと問い詰めてきたけど、六海はいくつか誤魔化したよ。これで何とかなった・・・はず・・・。それにしても・・・ふふ・・・なんか明日が楽しみになってきたなぁ。
♡♡♡♡♡♡
次の日、六海はみんなに遊びに行ってくるとだけ伝えて、ある場所に向かってるよ。それにしても・・・ふぅ・・・暑い・・・こんな日に食べるアイスはよりおいしいんだろうなぁ・・・。おっと、そう考えてる間にも目的地到着ー。
「ふぅー・・・よし!」
六海が着いた目的地はフーちゃんの家だよ。だって、スタンプラリーを利用すれば、合法的に2人っきりになれるチャンスなんだから、これを逃す手はないよ。それに、イラスト展は今日しかやらないからスタンプラリーも今日しかできないんだよ。逃しちゃったら次はいつ2人っきりになれるかわからないもん。だからこのことはお姉ちゃんたちには話してないよ。抜け駆けと言われたってこれだけは譲れないよ。・・・ちょっと緊張するけど・・・そろそろフーちゃんを呼ぼうか。
ピンポーンッ
「フーちゃーん。六海だけどー、出てきてー」
・・・ピンポンを押してフーちゃんを呼び出そうとしたけど、反応なし。おかしいな・・・フーちゃんが外に出る機会なんてないはずなんだけど・・・とりあえずもう1回・・・
ピンポーンッ
・・・ムカッ!また反応なし・・・いや、絶対にいるはず!もう1回!
ピンポーンッ
「風太郎君、ちょっと外に出てきてよー。聞こえないのー?」
あえて呼び方を前に戻してみたけど・・・返事なし・・・むうぅ~・・・!
ピンポンピンポンピンポンピンポン・・・
「フー君!フータロー君!フータロー!上杉君!うーえすーぎさーん!!・・・ちょっといい加減に出て来てよ!!」
ガチャッ!
「うるせえええええええ!!!聞こえてるからしつこく鳴らすな!!!」
何度もしつこくピンポンを鳴らしていると、誰が見てもわかるように怒った様子のフーちゃんが出てきたよ。ちなみにさりげなくお姉ちゃんたちの呼び方を拝借したけど、割と楽しかったのは秘密だよ。
「やっと出てきた!もう!いるんならもっと早く出て来てよ!」
「お前な、トイレ行ってたんだからすぐ出られるわけねぇだろ!何回もピンポンを押しやがって・・・近所迷惑ってのを考えろ!留守だったらどうするつもりだ⁉」
「フーちゃんに外に出る予定なんかないじゃん!」
「うぐっ・・・こ、こいつ・・・!」
六海に痛いところを突かれたフーちゃんはしかめた顔をしてるよ。ほら、やっぱり当たってるじゃん。その顔が今日予定ないって物語っているよ。
「はぁ・・・で?今日は何の用だよ?」
「・・・今日はらいはちゃんはいないんだね」
「らいはなら友達のところに遊びに行った。だからいないぞ」
だかららいはちゃんも出てこなかったんだ。そりゃそうだよね。だって遊びに行ってていないんだもん。でも今らいはちゃんがいないなら好都合だね。
「なんだよ。らいはに用があったのか?」
「ううん、今日用があるのはフーちゃんの方だよ」
「え?俺?」
六海の言葉でフーちゃんは何の用だと言わんばかりの顔をしたよ。そんなことはお構いなしに六海はにっこりと微笑んで本題に入るよ。
「せっかくの夏休みなんだしさ、今日遊びに行こうよ♪」
「断る」
「ちょっ!!?」
速攻で断られたよ!!?ちょっとは考える素振りくらいは見せてよ!!?
「な、なんでダメなの!!?今日は予定はないはずでしょ!!?」
「予定ならある。今日は1日勉強に集中すると決めてるんだ。遊ぶのはまた今度な」
出たよお決まりのパターン。それが嫌だからメールじゃなくてこうして直接会いに来て誘ってるっていうのに・・・。というかさ・・・
「それ実質暇ってことじゃん!まだ夏休みは長いんだからいいじゃん1日くらい!」
「1日は潰れるってのは明らかなんだな・・・」
「それに毎日部屋に引きこもってたらカビが生えてきちゃうよカビ!」
「お前ってたまに毒をはくよな・・・」
六海が何とか説得しようとしても、フーちゃんは未だに渋った顔。そんなに外に出るのが嫌なの?そりゃ六海もインドアなんだけど、毎日家に引きこもったりなんかしないのに。
「てかそんなに遊びたいなら別に今日でなくてもいいだろ。どうしてもっていうなら姉妹に遊んでもらえ」
わかってない・・・フーちゃんは全然わかってない。どうしても今日じゃないといけないし、お姉ちゃんと一緒に回っても意味なんかないよ。
「フーちゃんとじゃないと絶対ダメ!今日は特に!!」
「だからなんで俺と・・・」
「そんなの・・・フーちゃんが好きだからに決まってるじゃん!!」
「おま・・・なんでここに来てこっぱずかしいことを・・・」
六海の好きっていう発言にフーちゃんは前髪をいじってる。照れてる・・・かわいいところあるじゃん♪
「こほん!と、とにかくダメなものはダメだ!諦めて・・・」
「・・・六海、あの時ショックだったんだよ?お出かけのメール送ったのに、勉強ってだけで断られたの」
「うっ・・・それは・・・」
「・・・六海、知ってるよ?その日のフーちゃん、雑貨屋さんで五月ちゃんと一緒に来てたの」
「!!!???」
前に六海のお出かけのお誘いを断られて、二乃ちゃんと四葉ちゃんとでお出かけした日のことを話した途端、フーちゃんの顔色が青ざめていったよ。あの日、やっぱり五月ちゃんが怪しかったから冷蔵庫にあった五月ちゃんの苦手な梅干を食べさせようとしたんだ。そしたらすんなりと話してくれたよ。正直に話してくれたから五月ちゃんを許したけど、もし二乃ちゃんにバレたらどうなってたんだろうね?
「な、なんでそれを・・・」
「そんなことはどうでもいいよ。六海たちの誘いは断ったくせに・・・五月ちゃんだったらいいんだ・・・」
「い、いや、そのだな・・・」
「六海はまぁいいけど?これ、二乃ちゃんが知ったら怒るだろうなぁ・・・」
「ちょっ・・・おま・・・」
二乃ちゃんを引き合いに出したら焦りだしたよ。卑怯な手を使ってるのはちょっと心苦しいけど仕方ないんだ。六海だってフーちゃんと2人っきりで遊びたいもん。使えるものは使わなきゃ。それに暇なくせにいつまでも首を縦に振らないフーちゃんが悪いんだ。
「あーあー、なんかお姉ちゃんにポロッとしゃべっちゃいそうだなー」
「待て。それはダメだ」
「ダメって言われてもなー・・・」チラッチラッ・・・
「・・・はああああー・・・」
わざとらしく目を配らせているとフーちゃんは深いため息をして観念したかのように頭をかいた。
「・・・わかった、付き合ってやるよ。だからそのことを他の姉妹に話すんじゃないぞ。特に二乃には」
「えっ⁉本当に⁉わーい、やったー!」
「たくっ・・・汚ねぇ手を・・・」
「何のことかわかんなーい♪」
どうにかこうにかフーちゃんが六海に付き合ってくれると聞いて六海は大いに喜んだよ。やった、フーちゃんと2人っきりでお出かけ!とどのつまりデート!なんだかワクワクしてきちゃった!あ、ちなみになんだけどもし断られても五月ちゃんとのお出かけの件は話すことはないよ。六海はそこまで悪者じゃないもん。
「・・・俺の思うがまま・・・か・・・。・・・仕方ねぇ・・・付き合ってやるか」
「?今何か言った?」
「いや、何でもねぇ」
???何か気になるようなことを言ったような気がするんだけど・・・気のせいかな?
♡♡♡♡♡♡
フーちゃんの一通りの準備ができて、六海たちはスタンプラリーのスタート地点であるコイ・ツラのイラスト展に向かってるよ。ちなみに、まだフーちゃんにはこのことは伝えてないよ。だって、片方が行く場所をわかってない方がサプライズ感あるでしょ?まぁ、フーちゃんは全く驚かないだろうけど。
「~~~♪~~♪」
六海はフーちゃんの隣に歩いていると思うと、思わず鼻歌を歌っちゃってるよ。えへへ、今日だけはフーちゃんを独り占め~♪
「・・・なぁ、俺なんかと歩いててそんなに楽しいか?」
「フーちゃんだからこそいいんだよ。だってこれ、デートだよ?デート」
「・・・お前が急遽決めたことだけどな・・・」
もう、いつまでも後ろを見ない!まぁ、六海が言えたことじゃないんだけどね・・・。
「・・・それで、電車まで乗ったが、どこに向かってるんだ?」
「ちょっと待って。もうすぐで着くから」
地下鉄から電車から降りた後はスマホの地図アプリを頼りにしながら会場を目指してるよ。今徒歩で・・・4分くらいかな?それくらい歩いたからもうちょっと・・・かな?
「お、あったあった!きっとあれだよ!」
「・・・・・・」
目的地であるイラスト展の会場外ではファンなら誰でもわかるようにコイ・ツラのイラスト展のポスターがびっしりと貼ってあったよ。何度も言うけどコイ・ツラは恋愛漫画。それにはかなり疎いフーちゃんは目を点にしている。
「・・・俺、やっぱ帰ってもいいか?」
「ここまで来て何言ってるの?腹を括ろうよー」
帰ってもいいかって聞いておきながらすでに帰ろうとしてるフーちゃんの腕をぎっしりと掴んで逃がさないようにする。
「お前・・・これ見るためにわざわざ俺を連れてきたのか?」
「うん。六海の夢のために必要なことだと思うの」
「夢って・・・もう漫画家になったんじゃないのか?ほら、お前の漫画、もう載ったし」
「六海が狙うのはあくまでも連載!読み切りはそのための通過点だから!だからまだ夢は叶ってないの!」
「・・・めんどくさ」
六海の思いにフーちゃんは非常に面倒くさそうな顔をしてるよ。そんな反応をするのは予想できてたけどさ・・・ちょっとひどくない?
「まぁ、勉強のためって言ったら、嘘じゃないけど、建前になるかな」
「ん?」
「これ、昨日六海の行きつけのお店で見つけたものなんだけど・・・」
六海がここに来たかった本当の理由をカードを添えて教えてあげることにしたよ。
「ん・・・スタンプラリーのカード、か?」
「うん。このスタンプラリーにスタンプを全部押せば景品がもらえるっていうのはフーちゃんも知ってると思うんだけどね。重要なのはここ!」
六海はスタンプラリーの参加を決めたきっかけの個所を指をさす。
「カップル同士でなら、より豪華な景品がもらえるかもなんだって。つまり1人の時や、3人の時じゃなく、必ず男女のペアじゃないと豪華な景品がもらえないんだよ」
「カップルって・・・」
「六海はね、正直景品とかはどうだっていいの。ただ六海はフーちゃんと2人で一緒に回ったっていう証が欲しいんだよ。2人だけの・・・証が」
六海がここに行きたい理由を包み隠さず話したら、フーちゃんは呆れながらも納得の顔をしているよ。
「はあ・・・そう言うことか・・・。だから今日じゃないとダメって言ったのか・・・しかも2人だけで」
「うん。イラスト展は今日1日限定のイベント。これを逃したら、次はいつになるかわからない。もしかしたら・・・もう開かれないかもしれないし・・・」
「・・・・・・」
「これが六海のわがままなのはわかってるつもりだよ。だけどそれでも・・・フーちゃんと一緒にいたいよ・・・ダメ・・・?」
六海は不安を感じながらフーちゃんの顔色を窺う。フーちゃんはまたため息をついて、頭をかき始めた。
「・・・もうここまで来ちまったしな。何もせずに無駄な電車賃を使って帰るのも癪だし・・・せっかくだから楽しむか、スタンプラリー」
「!う、うん!!」
フーちゃんがスタンプラリーに少しだけでも乗り気になってくれて六海は嬉しさでいっぱいになった。でも・・・フーちゃんがこうして六海に付き合ってくれるなんて・・・前のフーちゃんじゃ考えられなかったな。
「よし、そうと決まればまずは入場券を買って入場時間を確認だ!その後は昼食、昼食後に会場に入場するぞ!」
「?すぐに入場しないの?」
「たいていのイベントごとにはな、客がたくさん集まるものだ。そうなると必ず待ち時間で時間を無駄にするんだ。今のうちに入場時間がわかった方が効率よくスムーズに行動ができるんだ」
そ、そんな細かいところまで・・・さすがはフーちゃん・・・ものすごく物知りだし、段取りも完璧だよ・・・。六海、そんなの今の今まで気にしたこと全然なかった・・・。今度ナナカちゃんのイベントがある時は必ずそうしよっと。
♡♡♡♡♡♡
ご飯を食べ終えた頃合いには、予定通りの時間帯になって会場に入れるようになった。スタッフの人に入場券を渡して、イラスト展会場の中に・・・と、その前に・・・。
「スタンプを押すのも忘れないようにしなくちゃね」
「こんな入り口の近くに・・・」
入り口の前にあったスタンプラリーのスタンプ押し場でスタンプカードにスタンプを押していくよ。もちろん、フーちゃんのカードにもね。だって2人分やっとかないと、カップル限定の景品はもらえないでしょ?
「これで残りのスタンプは4つ。残り2つはこの会場のどこかにあるから徹底的に楽しめるよ。なんだかワクワクしてくるね!」
「そうか?俺はもうこの瞬間から・・・いやずっと前から疲れてるんだがな」
「そんなこと言わずに、ほら、名いっぱい楽しもうよ!これも1つの青春だと思ってさ!」
「・・・原作を何1つ知らない俺がどうやって楽しめと・・・?」
少なくとも漫画好きの六海からすれば、結構楽しみなんだけど、フーちゃんはそうでもないみたい。まぁ、今の今まで勉強ばっかりに明け暮れて、こういうのには触れたことが全然ないから仕方ないけどさ。
「なら絵を見ながらこれから知っていけばいいよ。それなら作品に愛着がわくかもしれないよ?」
「・・・果たしてそんな都合よくいくだろうか・・・」
フーちゃんがブツブツ言いながらも、六海たちはコイ・ツラのイラストや、作品の詳細を鑑賞して回っていくよ。そすして鑑賞しながら進んでいくこと十数分くらい・・・
「あ、このイラスト、確か40話くらいに出てた最も印象が深かったシーンだ!すごいなぁ・・・」
進めば進むほど、コイ・ツラで特に印象が深かったシーンのイラストがたくさん出てきたよ。やっぱりすごいなぁ・・・プロはやっぱり格が違うよ・・・。いつか六海もこんなプロみたいな絵を描けるようになりたいなぁ・・・。・・・それで・・・肝心のフーちゃんは・・・。
「・・・ほぉ・・・これは・・・」
・・・内容を理解してるかどうかはともかく、なんだか感心したような顔つきでイラストをまじまじと鑑賞してる。あんな顔をしてくれてるってことは・・・ちょっとは楽しんでもらえてるってことなのかな。だとしたら・・・誘っておいてよかったな。
「・・・ふふ」
「・・・ん?どうした?」
「ううん。ただ、フーちゃんが思ったより楽しんでくれてよかったなぁって思っただけ」
「・・・・・・え?俺、楽しんでたか?」
「うん。少なくともそう見えたよ」
フーちゃん自身は自覚してるわけじゃないんだけどね。
「それで、この作品の魅力、少しは伝わったかな?」
「いや全然伝わらん。これだって絵がうまいって程度しか感じん」
「・・・・・・」
一気に冷めたこと言い出したよ!いや、フーちゃんが作品を知る気がないっていうのはわかってたよ!わかってたけどね!ていうかその発言ファンが聞いたら怒られる程度じゃすまないからね⁉聞こえてなかったからよかったけど!
「・・・まぁ、それでも楽しいって思えてんのは・・・お前のおかげ・・・なのかもしれんな」
「・・・!!」
フーちゃん・・・ここぞって時にそれは反則だよ・・・///。そんな風に言われちゃったら六海・・・胸がどきどきして・・・フーちゃんの顔を直視できなくなっちゃうよ、恥ずかしさで///。
「・・・だが、六つ子が揃ったら・・・もっと楽しくなるだろうな・・・」
「フーちゃん・・・」
顔を手で隠してる中、手を開いてほんのちょこっと顔を覗いてみたら、フーちゃんの笑みには少し物足りなさが含んであった。・・・うん・・・そうだね・・・。お姉ちゃんとフーちゃん・・・一緒に揃っていたのなら、もっと盛り上がったかもしれないね。六海にとって2人きりの時間もいいけど・・・お姉ちゃんとフーちゃん、全員でいられる時間は、同じくらいに大切だからなおさらそう感じるよ。
「じゃあさ、次の機会があったら皆で一緒に行こうよ。きっと楽しいよ!」
「・・・ああ。そうだな」
今度は全員で一緒にっていう話で華を咲かせながら六海たちはさらに先へと進んでいくよ。
「あ、2個目のスタンプがあったよー」
奥へ進んでいくと2個目のスタンプを見つけたよ。2個目のスタンプが見つかったってことは、イラスト展ももう中間地点まで来たってところかな?なんだかとっても早く辿り着いたなって感じるよ。まぁそれはいいや。とりあえず六海とフーちゃんは2個目のスタンプをカードに押した。
「これで残りは後3つ・・・ここのは後1つになったね」
「よし。じゃあ早く3つ目のスタンプを見つけて、次に行こうぜ」
「あ、フーちゃんちょっと待って!」
フーちゃんが先に進もうとした時、遠くの方で六海はあるものを見つけたよ。それは・・・
「見てみてー!名シーンを体験できる写真撮影、だって!おもしろそー!」
コイ・ツラの名シーンを自分たちが体験して写真撮影ができる場所だよ。簡単に言えば、コイ・ツラのキャラになりきって写真を撮ってもらう場所だよ。そっか、それでファンの中にコスプレしてる人がいたんだ。
「名シーンって・・・具体的に何をやるんだ?」
「えっと・・・この場面だと・・・壁ドンのシュチュエーションだね」
あのシーンは六海も何度も読み返してるからよーく覚えてるよ。あのシーンで胸をときめかない乙女はないと思うなー。
「ふーん」
・・・フーちゃん、自分で聞いておいてその反応はないと思うよ。というかさ・・・
「・・・もしかして、自分には関係ない―、とか思ってない?」
「実際その通りだろ」
・・・わかってない。フーちゃんは何にもわかってない。ここに、こういう撮影場があるなら、もうやることなんて1つしかないでしょ。
「何言ってるの?恋する乙女はね、壁ドンのシュチュエーションにときめくものなの!それに気を利かせないなんて男としてどうなの?」
「お前は何を言っているんだ?」
「いい機会だからここで練習しておこうよ。絶対今後の役に立つって」
「はあ?」
フーちゃんはわけわからないって顔をしてるよ。・・・やっぱり乙女心がわかってないよ・・・鈍ちん・・・。
「やる必要なんかないだろ・・・つか何の役に立つって言うんだよ?」
「女の子は好きな男の人にやってもらいたいことの1つや2つあるってこと!例え六海じゃなくても二乃ちゃんや三玖ちゃんだってこういうのを望んでるものなの!」
「・・・っ!そう言うことか・・・!お前練習とか建前を言って、本当は自分がやってもらいたいだけだろ⁉」
あ、思惑がバレちゃったよ。フーちゃん、こういうこと恥ずかしがってやらないから、何とか説得しようと思ったけど、この様子じゃ無理そう・・・。だったら・・・
「こうなったら力づくでもー!!」
「おわっ⁉ちょっ・・・まっ・・・やめろ!」
意気地なしのフーちゃんに壁ドンをやってもらおうと、六海は力づくで撮影場まで引っ張り出す。今はまだ六海たちだけしかいないけど、次の人が来て待たせるわけにはいかないし、やるなら今しかないんだよ。フーちゃんはフーちゃんでやりたくないのか必死に抵抗してるよ。
「いいじゃんちょっとくらい!!減るものでもないんだし!!」
「減るとか減らないとかの問題じゃないんだよ!」
「ちょっと写真撮って記念を残すだけじゃん!恥ずかしいことはないって!」
「それが嫌だって言ってるんだ!ちょっ・・・いい加減離せ!」
お互い力の取っ組み合いになってしまってるんだけど、六海もフーちゃんも力が全くと言ってないからどっこいどっこいになってしまっているよ。
ズルッ!
「わっ・・・ひゃあ⁉」
「うおあ⁉」
ズテーンッ!
い・・・たたた・・・まさか足をつまずいて転んじゃうなんて・・・。うぅ・・・ちょっとだけ背中強く打ったかも・・・背中痛いよ・・・。
「つつつ・・・おい、大丈夫か?」
「うぅ・・・背中痛いけど大丈夫だよ・・・!!?」
目の前にいるフーちゃんを見て、ようやく自分たちが今どんな状況か理解できたよ。今六海はフーちゃんに覆いかぶされかけている状態・・・これって・・・壁ドンならぬ床ドンってやつ!!?壁ドンとはかなり違うけど・・・こ、これはこれであり・・・かも・・・♡
「全く・・・変に暴れるから・・・とにかく今どけるわ」
フーちゃんがどけようとした時、六海はフーちゃんの手をつかみ取って、逃がさないようにさせた。
「・・・あ、あのー・・・六海さん・・・?手をどけてもらえませんかね?」
「・・・もう少し・・・」
「え?」
「もう少しだけ・・・このシュチュエーションを味合わせて・・・?」
偶然の産物とはいえ、こんな機会は滅多に訪れないだろうし・・・せめて・・・せめて後数分くらい・・・
「い、いやいやいや!この体制はまずいだろ!こんなの他の連中に見られでもしたら・・・」
「お、なんだなんだ?」
「なんかおもしろそうなことやってるの?」
「行ってみようぜー」
「え?何々ー?」
「・・・っ!!!」
ん・・・?なんかうるさくなってきたな・・・。まぁいいか。それよりも今は・・・
「と、とにかく!!もう十分だろ!!ほら!!とっととここの最後のスタンプ、見つけに行くぞ!!」
フーちゃんは六海の手を振り払って急いで六海から離れていって、そのまま先へ行っちゃった。・・・ちぇー・・・、今のシュチュエーション結構よかったのに・・・。・・・でも・・・今の、壁ドンより結構よかったかも・・・。貴重な体験をさせてもらっちゃった・・・。六海、今回の体験は一生忘れないよ。
「おい何してんだ!置いていくぞ!」
「ああ!待って待って!置いていかないでよー!」
六海は先先と行っちゃうフーちゃんを追いかけて、集まってきたコイ・ツラファンの人たちを避けながら先へと進んでいった。
♡♡♡♡♡♡
時間をかけていっぱいイラスト展を楽しんで、ようやく出口まで辿り着いたよ。出口にはこのイラスト展の中にある最後のスタンプがあったよ。
「ふぅー、イラスト以外にも楽しいものがあって面白かったね!」
「俺はやっと出口まで来てほっとしてるよ・・・」
「イラスト展は終わってもまだ終わりじゃないよ。スタンプはまだ2つ残ってるんだから」
「わかってるっての。残り2つを済ませてとっとと帰ろうぜ・・・」
「もう・・・またそんなことを言う・・・」
まあでも、それでも最後まで付き合ってくれるのはフーちゃんの優しいところだよね。ただ素直じゃないってだけで。
「てか土産とか買わなくてもよかったのか?」
「えっ⁉ああ、うん!いいんだよ!二乃ちゃんはともかくとして、みんなコイ・ツラにはちょっと疎いところがあるっていうか、なんというか・・・」
フーちゃんの質問に六海はしどろもどろになってるよ。疎いっていうより、ここでお土産とか買いに行ったりなんかしたらフーちゃんと2人で出かけてたってことがバレちゃうかもしれない。そうなったら二乃ちゃんに何されるか・・・!
「と、とにかくいいんだよ!何も買わない方が1番いい!お金にも優しいし!」
「・・・また無駄遣いしたか」
「し、失礼な!お金はまだいっぱいあるって!」
何を思ったのかフーちゃんは六海がお小遣いを使い切ったと思い込んでる・・・ていうかなんだよまたって⁉六海ってそんなにお金遣いが荒いって思われてるの⁉
「そ、それよりもフーちゃんこそいいの?らいはちゃんにお土産買ってあげなくて・・・」
「あー・・・別にいいさ。お前が描いた漫画の方が喜ぶからな」
「そう?」
「知っての通りうちには娯楽と言えるものがない。らいはだってやりたいことだってあるはずだし、買いたいものも、読みたい本とかもあったはずだからな。そんな中でらいはがお前が描いた漫画を読んで楽しそうにしているきっかけを作ってくれた。だからお前が描いた漫画をらいはに読ませてもらえるだけで十分だ。それにな・・・その・・・」
フーちゃんは口元を手で隠して若干照れたような表情をしたよ。
「前に読ませてもらったあれ・・・割と面白かった。また、読みたいって思えるくらいに・・・」
「ふ、フーちゃん・・・!」
まさか読み切りのあの漫画、ここまでフーちゃんも好評だったなんて・・・!驚くよりもうれしさで頭がいっぱいだよ。
「だから・・・その・・・だな・・・新作、できたらまた俺たちに読ませてくれるか?」
照れながらそんなことを聞いてきたフーちゃんの問いかけに、六海の答えは決まっていた。
「もちろん!2人は六海の作品の読者第一号だよ!」
当然のように笑顔を向けて、しっかりと答えたよ。六海の答えを聞いて、フーちゃんは少しだけ嬉しそうな顔をしてるよ。
「さて、スタンプも押したし、次に行くか。4個目のスタンプはどこだ?」
「えーっと、次はねー、電車に乗ってここに・・・」
六海たちはイラスト展から出て、電車に乗って4個目のスタンプがある場所まで向かっていくよ。
♡♡♡♡♡♡
4個目のスタンプがあるのはアニメグッズや漫画がいっぱいある専門のお店だったよ。フーちゃんはこのお店から出たいのかグッズには目移りせずに速足でスタンプ台を探してるよ。そのおかげもあってか4つ目のスタンプはすぐに見つかったよ。けどさ・・・
「もう!少しはいろいろ見させてよ!欲しいグッズを見逃しちゃったらどうするの⁉」
「いや、だって俺がここにいるのは場違いだろ。ここにあるもの、全部興味ないし」
「あのねフーちゃん、そういう発言は本当に控えて?ここに来てる人に睨まれるかもしれないし・・・」
フーちゃんにアニメや漫画に興味がないのくらいは知ってるつもりだけどさ・・・そんな堂々と言わないでほしいよ・・・六海まで飛び火が来ちゃう・・・。現にオタクのお兄さんに睨まれちゃったし・・・。
「何はともあれ、ここまでいろいろあったがやっと4つ目。次の5個目で終わりだ」
「あ・・・」
そっか・・・次のお店・・・六海がスタンプラリーの存在を知った本屋さんで終わっちゃうのか・・・。フーちゃんはそれで終わり・・・なのかもしれないけど・・・六海は・・・このまま終わらせるのは・・・なんか、物足りない・・・。
「早いところ5個目のスタンプ、押しに行こうぜ。割と近くだし・・・」
「待って!」
このお店から出て、最後のお店に向かおうとフーちゃんが歩こうとしたところに、六海がそれを止めたよ。
「もう、終わらせちゃうの・・・?このまま最後のスタンプを押したら、それで終わりなんて・・・寂しいよ・・・。せっかくの2人っきりのデートなのに・・・」
「お、おい・・・」
「もう少し・・・もう少しだけ・・・このままでいさせて・・・?」
六海はかなり不安を抱えながら、フーちゃんにもう少し2人っきりにしてほしいと訴えたよ。六海の訴えにフーちゃんは少し困ったような顔をしているよ。
「いや・・・んなこと言ったって・・・お前他にやりたいことはないだろ?」
「それは・・・うーんと・・・うーんと・・・」
フーちゃんの問いかけに六海は頭を悩ませて他にしたいことを一生懸命考えたよ。それでうんうんと捻っていると、ちょうどよさげなお店が見えた。
「!!あ、あれ!!六海、あそこに行きたい!!」
六海が見つけた指をさしたのは、カラオケボックスだったよ。これならもう少し2人っきりになれるし、なんかこう・・・デートぽくなるかも。
♡♡♡♡♡♡
「~~~~♪~~♪」
「・・・・・・」
フーちゃんに無理を言ってカラオケボックスまで来て、1時間ほど部屋をレンタルして、六海は自分の持ち歌を披露してるよ。お姉ちゃんたちとたまに程度には来るんだけど、やっぱり歌うのも楽しいな。
「ふぅ・・・ね、ね、どうだった?六海の歌声?きれいだった?」
「・・・なぜ俺はこんなことに付き合わされてるんだろうか・・・」
「質問に答えてない!!」
「あー、別にいいんじゃないか?」
「心がこもってない!!」
あまりにも関心なさすぎるでしょ⁉いや、ていうかフーちゃんはとにかく世間の遊びに疎すぎるよ!もうちょっとそっちにも関心持って!
「つーかお前、ここにはよく来るのかよ?」
「うん。て言っても、お姉ちゃんたちとたまにだけどね。その中でも特に一緒に行くのは二乃ちゃんだね。その時には二乃ちゃんの持ち歌を何度も歌ったっけ。ああ、それから、一花ちゃんとも一緒に行くけど、やっぱり綺麗だったよ、一花ちゃんの歌声は。女優にスカウトされるのも納得だよー」
「そうか」
話すたびに思い出すなー。お姉ちゃんたちと一緒にカラオケ行った時のこと。あの時も、すごく楽しかったなー。今度はお姉ちゃんたちと一緒に行きたいなー。
(全くこいつは本当に人を振り回すのが好きだな・・・。・・・まぁ、あんだけ楽しそうにしてるんだ。もう少し、付き合ってやるか)
・・・あ、なんかフーちゃん、少しだけ笑ってる。楽しんでくれてるのかな?あ、そうだ・・・。
「ねぇ、せっかくだからさ、フーちゃんも1曲、1曲歌ってみない?」
「は?」
フーちゃんが驚いてるけど、今は構わず機械を操作して、歌を探していくよ。
「ちょうどフーちゃんに合いそうな持ち歌を知ってるんだよね。今入れてあげるね」
「ちょっ、待て待て!なんで俺が・・・てか、俺は歌なんて・・・」
「いいじゃんちょっとくらい。カラオケに来たら1回歌う!これ常識!」
「なんだその嫌な常識・・・」
「はーい、曲入れたからねー。はいこれマイク♪」
「はっ⁉ちょ・・・おい!」
曲が流れ始めたところでフーちゃんにマイクを渡して、六海は少し離れたところでタンバリンをぱんぱんと叩いてリズムに乗る・・・て、歌詞流れても歌う気配なし・・・。その様子に六海は頬を膨らませていったん曲を止めるよ。
「ちょっと!何で歌わないの⁉」
「無理強いしすぎだ。俺は歌は苦手なんだよ」
「大丈夫!苦手でも歌えば意識代わるから!あ、なんだったら一緒に歌ってあげるよ!というか一緒に歌っちゃおうよ!」
「お前またそんなことを・・・!」
「はーい、曲入れちゃうよー」
「・・・はあ・・・」
六海はフーちゃんの苦手意識改革のためにさっきと同じ曲を入れたよ。しかも今回は六海とデュエット♡これならフーちゃんも歌うしかないでしょー。
「ほら曲が流れたよ!歌わなかったらなんかアイスでも奢ってもらうからねー♪」
「・・・ああ、たく!!こうなりゃヤケだ!!」
曲が流れたところで、フーちゃんは覚悟を決めて六海と一緒に歌ってくれたよ。一緒に歌ってみたけど・・・フーちゃんって・・・歌声かなり美声だった!
♡♡♡♡♡♡
1時間ほど歌い終えたところでカラオケボックスから出て、最後のスタンプがある本屋までやってきたよ。そう、昨日六海がスタンプラリーを見つけたあのお店だ。六海とフーちゃんはカラオケでのことを話しながらスタンプ台を探していくよ。
「はぁー、楽しかったねー♪あの後フーちゃん、結構ノリノリだったね。同じ曲ばっか歌っちゃって~」
「うっせぇ・・・ああ、声がガラガラだ・・・」
実は1曲目の歌が終わって、結果が六海より下の結果だったのが納得いかなかったみたいで六海より上の得点をとろうと1曲目の歌を今度は1人で歌ってたんだよね。フーちゃんって案外負けず嫌いなんだよね。そのおかげで美声を独占できて役得だけどね♪
「もうそんなことはいいから最後のスタンプ押しに行くぞ。場所は覚えてるんだろ」
「もちろん!さあさ、こっちだよこっち!」
六海は昨日見つけたスタンプのところまでフーちゃんを連れていくよ。えーっと、最後のスタンプは確かこの先に・・・あ、あったあった。ここで最後のスタンプを押して・・・やった!これで5つのスタンプ全部揃った!
「よーし!これで全部だー!フーちゃんも早く最後のスタンプ・・・」
フーちゃんに視線を向けてみると、フーちゃんは少し離れた場所で何かの本を見つめているよ。もしかして、何か買いたいものでも見つかったのかな?
「何か欲しい本でも見つかった?」
「うおっ⁉む、六海!」
むむ?フーちゃんのこの慌てっぷり・・・はっ!ま、まさか・・・
「もしかして・・・エッチな本⁉フーちゃん!エッチなことはダメだよ!」
「バッ・・・違うわ!これ・・・どうしようかって悩んでただけだ」
フーちゃんの手元にあった本の名前は・・・高校生のための恋愛ガイドブック?これを・・・フーちゃんが・・・?
「フーちゃん・・・あれからずっと考えていてくれたの・・・?」
「・・・正直に言えば、まだ答えは見つけられてない。恋愛は学業から最もかけ離れた愚かな行為。そう言いながら恋愛を知ろうともしなかった。だから、ツケが回ってきたのかもしれん。いざ自分の立場になって、こんなに悩まされることになるなんてな」
「・・・・・・」
「五月からは俺の思うがままに動いてみろって言われたんだが・・・いろいろ複雑で、未だにわからんままだ。こりゃまだ答えは出せそうにないな・・・」
フーちゃん・・・あれからずっと考えててくれてたんだ・・・。ここまで真剣に六海たち姉妹の気持ちに向き合おうと悩んでくれてるフーちゃんを見て、六海は思わず笑っちゃったよ。
「・・・ふふ」
「・・・何だよ」
「んーん。ただ、真剣に考えてくれてたようで嬉しかっただけ―」
ふふ、せっかく真剣に考えてくれてるんだし、少しだけ六海なりの助言をしてあげちゃおっかな。
「前にも言ったけど返事は今じゃなくてもいいよ。フーちゃんのここだってタイミングでいいからね。六海だって、あの告白が正解だったのかわからないし、今回のお出かけだって、もしかしたら間違ってるのかもしれない。ただ・・・」
「ただ?」
「ただ1つわかってるのは、みんなフーちゃんのことが、大好きなんだってこと」
「・・・っ」
「だからみんな、フーちゃんにアドバイスをくれたり、いろいろ積極的に自分をアピールするんだよ。だからさ・・・五月ちゃんの言うとおり、フーちゃんの思うように行動するといいよ。案外それが・・・気持ちの整理とかに繋がるかもしれないよ?」
「・・・ふん、五月といいお前といい、簡単に言いやがって・・・」
フーちゃんは六海の顔を逸らすようにして顔をそっぽを向いたよ。ふふ、照れちゃってまぁ・・・。その後フーちゃんは本を元の場所に戻して、スタンプ台に向かったよ。
「・・・買わなくてよかったの?」
「・・・気が変わった。なるべく、これには頼らないようにしようと・・・そう思っただけだ」
別に買ってもよかったのに・・・フーちゃんって変なところで真面目なんだから・・・。でも、それもフーちゃんのいいところ、だよね♪
「スタンプ押したぞ。これでいいんだよな?」
「あ、うん。後はここの店員さんにこれを見せれば、スタンプラリー終了だよ」
「なら早いとこ見せて、景品をもらおうぜ」
全部のスタンプを押し終わった六海たちはスタンプコンプリート記念の景品をもらいにレジのところまで向かっていくよ。
♡♡♡♡♡♡
レジでスタンプラリー達成の景品をもらった六海たちは帰り道を歩いていくよ。フーちゃんはスタンプラリーの景品をぶら下げながら見つめてるよ。
「しかし・・・まさかもらう景品が通常のものになっちまうとは・・・」
「ちょっと時間をかけすぎちゃったのかなー?失敗しちゃったね」
「お前がカラオケ行こうって言いだしたからだろうが」
「仕方ないでしょ?まさかカップル参加が多かったなんて知らなかったんだから」
スタンプコンプリートで貰った景品はカップル限定のものじゃなくて、誰にでももらえるキーホルダーだったよ。なんでもカップルの参加者があまりにも多くて豪華景品がなくなっちゃったんだって。きっと参加した人はドラマ勢の人が多いんだろうね。
「でも、割とこれでよかったんじゃない?フーちゃんのことだし、限定のものだと宝の持ち腐れになりそうだし」
「これでも宝の持ち腐れなんだが・・・。まぁ、らいはにでもプレゼントするか」
「ちょっと!そこはそれを大事にするっていうところでしょ⁉」
「はは、冗談だ」
もう・・・質の悪い冗談はやめてよね・・・。まぁ、なんだかんだ言っても、フーちゃんは物を大切にすると思うけどさぁ・・・それにしたってひやひやものだよ・・・。・・・あ、そろそろマンションが見えてきた。名残惜しいけど・・・今日はここでお別れかな。
「送ってくれてありがと。もうここまででいいよ。じゃあ・・・」
「六海」
バイバイって言おうとしたらフーちゃんが声をかけてきた。
「あー・・・その・・・何だ。今日のスタンプラリー・・・正直あの作品、わけわかんねぇんだけどよ・・・まぁ・・・楽しかった」
「・・・っ!」
「だから・・・あのだな・・・ま、またいつか・・・」
こっから先、フーちゃんの言おうとしたことがわかっちゃった。ただ照れてるせいで中々先に進まない。なら・・・
「・・・もちろん!今度は・・・みんなで一緒に遊びに行こうね!」
「!・・・ああ」
六海の言葉で、フーちゃんは笑顔になってくれた。今にして思えば、六海はフーちゃんのこの顔が見たくて、スタンプラリーに誘ったのかもしれないね。六海はフーちゃんとバイバイして、自分の家に戻っていったよ。
♡♡♡♡♡♡
「ただいまー」
マンションに辿り着いて、自分たちの部屋に戻ってリビングに行ってみると・・・
「やっと帰ってきたわね・・・」ゴゴゴ・・・
「遅い・・・」ゴゴゴ・・・
「ひぃ⁉」
鬼の形相のように立っている二乃ちゃんと三玖ちゃんが立ちふさがってる!!?と、遠くでは四葉ちゃんに五月ちゃん、一花ちゃんがいたよ。な、なんで二乃ちゃんと三玖ちゃんは怒ってるの⁉
「え、えーっと、2人とも・・・た、ただいまー・・・なんで怒ってるの・・・?」
「あんた、またアタシの見てないところで抜け駆けしたでしょ?」
「え?え?ぬ、抜け駆けって・・・?」
「白々しいのよ!フー君と2人っきりのデートに行ってたでしょ!!」
・・・も、もうバレちゃってる!!でも、なんで!!?
「・・・やっぱり昨日のあれ、怪しかったから確かめに行った。そして・・・案の定だった」
三玖ちゃんの手元にあったのは、今日のスタンプラリーの用紙だった。い、言い逃れができない・・・!!
「何か弁明があるなら聞くけど?」
「え、えーっと・・・その・・・だね・・・」
「・・・ちゃんと言っていたなら別に何も言わなかった。コイ・ツラ、興味なかったし」
「ううぅ・・・」
「でも・・・黙ってただけじゃなくて、フータローと2人きり・・・しかも1人で遊びに行くって嘘ついた・・・有罪、切腹」
天国から地獄に変わるとはよく言ったものだよ・・・!まさか・・・こんな展開が待っていたなんて・・・いや、薄々予想はしてたんだけども!
「あ、あのですね・・・二乃、三玖・・・六海には六海なりの考えが・・・」
五月ちゃん・・・六海に助け舟を・・・!
「五月は黙ってて」
「てかあんたには関係ないでしょ」
ところが玉砕!!?五月ちゃーーーーーーん!!!!
「い、一花ーーー!!」
「よしよし、怖かったねー」
五月ちゃんは一花ちゃんに泣きついてきた。六海も助けてもらおうと一花ちゃんに視線を向ける。
「い、一花ちゃん・・・」
「六海、ごめんね?とてもじゃないけど庇いきれないや」
そ、そんな・・・じゃ、じゃあ四葉ちゃん!四葉ちゃんならきっと・・・
「えっと・・・六海ごめん!なんか巻き込まれそうで助けにいけない!!」
ああ!!四葉ちゃんまで!!す、救いは・・・?どこかに救いはないの・・・?
「救いなんてあるわけない」
「ぴぇっ・・・」
「覚悟は・・・できてるわよね・・・?」
「ちょっ・・・ちょっと待って・・・」
アーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
・・・こうして六海は二乃ちゃんと三玖ちゃんの手によって、こちょこちょの刑にあうだけじゃなく、晩ご飯には六海だけ大量のゴーヤが出されるという拷問を受けたよ・・・。六海は・・・六海は汚されちゃったよぅ・・・。
51「スタンプラリーツアー」
つづく
おまけ
スタンプラリーの豪華景品の正体
六海「ふひぃ・・・ひどい目にあった・・・2人とも容赦なさすぎぃ・・・。
はぁ・・・気にしててもしょうがない。絵を描こうか。
・・・それにしても・・・スタンプラリーの豪華景品って結局なんだったんだろう?ホームページを見ればわかるかな?・・・ちょっと見てみよう」
ホームページ検索中・・・
六海「わぁ・・・これは・・・」
『●●先生イラストのコイ・ツラペアルックTシャツ』
六海「・・・これ、フーちゃんにとっては、恥ずかしさで死んじゃうものだね・・・。普通の景品でよかったぁ・・・」
一方の上杉家では・・・
風太郎「へっくし!」
らいは「お兄ちゃん、風邪?」
風太郎「・・・誰か俺の事なんか言ったような・・・」
スタンプラリーの豪華景品の正体 おわり
次回、三玖視点