六等分の花嫁   作:先導

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えーっと・・・他の作品のオリジナル章に悩んでいる間にも前回の投稿から半年以上もかかってしまっていたとは・・・。さらにはまたも新作を書いて遅らせることに・・・本当に申し訳ございません!映画を見ることがなかったら、さらに遅れていたかも・・・あ、映画はとっても面白かったです。おかげで創作意欲が大きく膨れ上がりました。

えらく長くなってしまいましたが、物語もそろそろ終盤・・・見せ場である学園祭の回も後数話で始まります。そこで今作品の花嫁がいよいよ・・・。といってもいつになるやら・・・。あと少しが長い・・・あ、もちろん最後の学園祭までにはオリジナル話は全部終わらせるつもりです。

長々と申し訳ございません。とにかく完結まで頑張っていきたいと思います!


分枝の時

二乃SIDE

 

「一花が家を出ていくって・・・」

 

「六海は何かの間違いだと思うんだけど・・・」

 

「うんうん、この前もプールで楽しそうだったし」

 

「勘違いならそれでいいんですけど・・・」

 

一花が家から出ていく。そんなことを五月の口から聞かされて、姉妹たちは混乱してるわね。まぁ、そりゃそうよね。確信がないとはいえ、そんなこと言われれば・・・

 

「おはよー・・・ふぁー・・・よく寝た。身体中カチカチだよ・・・」

 

噂をすればなんとやら、呑気な長女が起きてきたわね。

 

「お、おはようございます」

 

「ん?今みんなで何か話してた?」

 

「い、いえ!何でもありません!」

 

「そっかそっか」

 

五月は何とか誤魔化したけど・・・とてもじゃないけど一花が家を出るなんて風には見えないわね。

 

「・・・今は様子を見てみよう」

 

どうせこの場じゃ結論なんて出せないし、ひとまずは様子を見るってことで決めたわ。でも・・・ちゃんと本人には聞いておいた方がよさそうね。

 

「・・・あ、そういえば二乃ちゃん、今日って言ってなかったっけ?店長さんのお見舞い。フーちゃん待ってるんじゃない?」

 

「わかってるわよ」

 

まぁ・・・今は一花は置いておくわ。早く朝食作って病院に行かないと。・・・それに・・・ちょうど試してみたいことがあったのよね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

朝食を食べ終えてアタシは1人で店長が入院している病院に来たけど・・・さすがにフー君はもう店長の病室に行ったのかしら。そう思っていたら・・・フー君がまだ病院の外で待ってたわ。やっぱりフー君は優しいわね。・・・ちょっと緊張してきた。ちょっと深呼吸して・・・よし、行こう。

 

「お待たせ」

 

「遅ぇぞ二乃。ところでこの花なんだが・・・」

 

「は?ちょっと遅れてもいいじゃない。器の小さい男ね」

 

アタシはフー君に会うなり、いつもとは違う態度をとった。

 

「暑いなら中で待てばいいのに・・・ホント、頭が回らないわね。花束2つも持ってバカみたい。・・・え、ちょっと待って・・・汗臭いわ。最悪なんですけど・・・」

 

「・・・えーー・・・。急にどうした?」

 

「いつまでもボーっと突っ立ってないで店長の病室に行くわよ。春も待ってるかもしれないし」

 

「・・・・・・」

 

「急ぎなさい・・・上杉」

 

アタシはフー君に思いつく限りの罵倒を飛ばして、呼び方まで徹底して素っ気ない態度をとり続ける。そう、これがアタシの試してみたかったことよ。これで少しは・・・変わるものなのかしら・・・?何か不安になってきた・・・。

 

♡♡♡♡♡♡

 

病院の中に入ってアタシ達は店長の病室まで向かった。病室には骨折した箇所にギプスを巻いた店長がいたわ。店長の他にも先に春が来てたわね。でも・・・店長の足・・・うわぁー・・・本当に痛そう・・・。

 

「やっほ~、二乃ちゃん、フータロー君、久しぶり~」

 

「やぁ、2人とも、元気にしてたかい。僕はこの通り元気だ」

 

久しぶりに春と店長の顔を見たけど、2人とも元気そうでよかったわ。

 

「お怪我の具合はどうですか?」

 

「後は術後の経過を見るだけさ」

 

「本当に見てて痛そう・・・店長、かわいそうに・・・」

 

本当にね・・・。やっぱバイクの事故率って侮れないわ・・・。

 

「あ、私、果物持ってきたんです~。よかったらどうぞ~」

 

「あ、私もこれ、つまらないものですが・・・」

 

アタシと春は持ってきたお見舞いの品物を店長に渡した。

 

「2人ともありがとう。上杉君も、よく来てくれたね」

 

「・・・いつまでそこにいるつもり?その花は何のために持ってきたのかしら?」

 

「「・・・?」」

 

アタシは店長や春がいてもお構いなしにフー君に素っ気ない態度をとるわ。どうしてアタシが大好きなフー君にこんな態度をとるのか・・・。それはちょっと試してみてるだけよ。恋愛ガイドブックにはこう書いてあったわ。

 

『押してダメなら引いてみろ』

 

いつもと違う態度をとっていれば、きっと何かしらの反応を示してくれる・・・はず!アタシはガイドブックを信じてみるわ!

 

「・・・上杉君」

 

「はい。これ、花です」

 

「花だな。どうした?喧嘩か?」

 

「いえ、違います」

 

「とても違うとは見えないけど・・・」

 

「いや、大丈夫だ」

 

「隠さなくていいよ。私に相談してみて?」

 

「だから違うんだって」

 

なんか3人でこそこそと話してる・・・。・・・本当にこれって効果あるのかしら?もう少し・・・試してみようかしら・・・。

 

「あー、喉渇いたわ。上杉、あんた飲み物買ってきなさいよ」

 

「・・・一応、飲み物は買ってきてあるが・・・」

 

そう言ってフー君は事前に買ってきていた水を渡してきた。・・・これ、冷たいんだけど。

 

「はぁ?お水って言ったら常温に決まってるでしょ」

 

「・・・・・・」

 

「たく・・・こんな簡単なこともできないなんて・・・本当、役に立たないわね。この役立たず」

 

「(・・・ムカついてきた)

おい、お前いい加減に・・・」

 

「うわぁ、触んないでよ」

 

フー君がアタシに触れようとした時、アタシはそれを慌てて拒絶した。・・・やっば・・・これは・・・やらかしたかも・・・。

 

「・・・じ、自分で買ってくるわ!あんたは待ってなさい!」

 

アタシは慌ててこの場から逃げるように病室から出ていった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

『心当たりは?』

 

二乃が病室から出ていき、ただ呆然とする風太郎。そんな風太郎に春が問いかける。

 

「フータロー君。本当に心当たりがないの~?フータロー君が気づいてないだけで、二乃ちゃんに何かした・・・もしくは、何もしなかったんじゃないの?」

 

「うっ・・・」

 

春の言葉に風太郎は口ごもってしまう。考えてみれば確かに、ここ最近風太郎は二乃に構ってあげていない。二乃はそれで怒ったのではと考えてしまう風太郎。

 

「やはりそうか・・・。では、僕が断言しよう。彼女は怒っているぞ」

 

「・・・・・・」

 

店長にまでそう言われてしまって、何も言い返せない風太郎。

 

(二乃が俺に興味を引かせようとしてるなんて・・・俺はなんて思い上がりを!恥ずかしすぎる!!)

 

実は風太郎はここに来るまでに、頼らないと言っておきながら恋愛ガイドブックを読んでいたのだ。その中で押してダメなら引いてみろという記事があったのだが、風太郎は二乃がそれを実践していたと考えていたのだ。実際にその通りなのだが・・・それを勘違いしてしまったと思うようになった。

 

「よく耳を澄ましてごらん。聞こえるはずさ・・・彼女の心の声が」

 

♡♡♡♡♡♡

 

・・・やりすぎたーー!!

 

うぅ・・・フー君に触んないでって言っちゃった・・・。そんなのアタシの本心じゃないのにー!でも・・・きっとフー君に触られたら素に戻っちゃうわ・・・。そんなの意味ないわ・・・。でもどうしよう・・・今のでフー君に嫌われちゃったかしら・・・。というかそもそも、アタシに振り向かないフー君が悪いんだからね!何よ!他の姉妹とデレデレしちゃって・・・!

 

・・・それにしても、やっぱり演技だとしても辛いわ・・・。フー君を好きになる前でもあんなひどいこと言わなかったもの・・・。

 

『・・・ぶっちゃけ家庭教師なんていらないんだよね~』

 

『あんた・・・手の施しようがない変態だわ・・・』

 

『あんたなんて・・・来なければよかったのに!』

 

・・・・・・うん。言ってなかったわ。アタシがそんなこと言うはずないもの。

 

「はぁ・・・難しいわ・・・」

 

やっぱり恋愛って難しいわ・・・。なかなか思うような成果が出ない・・・。

 

「二乃君」

 

!この他人行事みたいな呼び方は・・・

 

「パパ・・・」

 

どうしてパパがここに・・・て、そっか。パパはこの病院の院長だったわね。すっかり忘れてたわ。

 

「ようやくうちに帰ってきてくれたみたいだね。先日、一花君から連絡をもらっているよ。考え直してくれたみたいで嬉しいよ」

 

パパはそうでしょうね。でもアタシは、パパの言い分にはあまり納得してない。確かにアタシたちはあのマンションに戻った。でも、それなら・・・

 

「それならなんでパパは帰ってこないの?」

 

「僕も毎日帰りたいところだが、あいにく忙しくてね、帰る余裕がない」

 

「・・・・・・」

 

「だが、あそこは元々君たち用に購入した部屋だ。僕のことは気にせず、好きに使ってもらって構わないよ」

 

違う。アタシは部屋がどうとかなんて聞いてない。

 

「そんな部屋なんて・・・」

 

「おっと、すまない。もう行かなくては」

 

ほら・・・いつだってそう。パパはそうやって話を逸らして・・・アタシの言い分を聞こうとしない。

 

「・・・明日も忙しいの?」

 

「ああ」

 

アタシの問いをそれだけ返事してパパはお仕事に行った。マンションなんてこの際問題じゃない。アタシは・・・アタシはただ・・・

 

「・・・あのー・・・まだ怒ってる?」

 

ドキンッ!!

 

「フー・・・ご、ゴホンゴホン!」

 

危ない危ない・・・フー君に声をかけられて思わず素に戻っちゃいそうになったわ・・・。押してダメなら引いてみろ・・・今日はこれで行くんだから・・・!

 

「・・・あー・・・何よ?上杉」

 

「今日はもう俺は帰ることにする。だがその前に・・・これ、渡しとくわ」

 

渡されてきたのは・・・花?確かにフー君は今日花束を2つ持ってきてたけど・・・これを・・・アタシに・・・?

 

「・・・な、何よ?まさか、お花でご機嫌でも取ろうというのかしら?」

 

「お前にじゃねぇよ。お前たちの母親にだ」

 

!フー君・・・ママの命日、覚えててくれたんだ・・・。

 

「明日、お前らの母親の命日だろ。俺も行こうかと考えたが・・・身内だけの方がいいだろ、こういうのは。俺も・・・いない方がいいだろ・・・」

 

そういうフー君の顔が、少し寂しそうな感じがした。アタシは・・・

 

「・・・じゃあな」

 

「・・・待って!」

 

寂しそうに帰ろうとするフー君をアタシは手を掴んで引き留めた。なんだか・・・今手を伸ばさないと、フー君まで、いなくなってしまいそうな気がして・・・。

 

「・・・フー君は・・・いなくならないで・・・」

 

「・・・え?」

 

「お母さんも・・・一花も・・・きっといつかみんなも、離れ離れになってしまう。それはわかってるつもり・・・。それでも・・・フー君はずっとそばにいてくれる・・・?」

 

大人になっていく以上、みんなそれぞれの道に向かって、離れていくのはわかってる。真偽はわからないけど、一花が家から出ていくように。それでも・・・やっぱりアタシは・・・せめてフー君には一緒にいてもらいたい・・・。

 

「・・・二乃・・・お前・・・・・・俺の事嫌いになったんじゃなかったのか?」

 

ちょっと!そこはさりげなく気にかける言葉を出すところでしょ!いや、アタシも悪いところはあるけど・・・もう台無しじゃない!!

 

「あーもう!!面倒くさいわね!!これじゃ全部台無しだわ!!」

 

「いやだって・・・店長と春が・・・」

 

あの2人の仕業か・・・。はぁ・・・もう種明かししちゃいましょうか・・・。作戦は失敗のようだし。

 

「・・・ほらあれよ!押してダメなら引いてみなよ!あんたには難しすぎたわね!」

 

「・・・はぁー・・・たく・・・なんだそりゃ・・・」

 

「悪かったわね」

 

「・・・・・・やはりそうだったか・・・ビビらせやがって・・・少し焦ったじゃねぇか・・・」

 

「え?」

 

フー君・・・今、なんて・・・?アタシの聞き間違いじゃなければ・・・

 

「・・・本当に、ビビってくれたの・・・?」

 

「・・・・・・///」

 

アタシの問いかけにフー君は何も答えなかったけど・・・照れたような顔をしてくれた。それってつまり・・・アタシのことを意識してくれてるってことよね。その答えに行きついたアタシが自分でも表情が緩んで笑みを浮かべてるのがわかる。

 

「・・・ふ、ふん!フー君ってば、チョロいわね!」

 

「いやもうわかるわ」

 

まったく・・・こんなことで嬉しくなるなんて・・・チョロいのはアタシの方だわ・・・。やっぱりアタシの方から追いかけるしかないじゃない。

 

(・・・二乃ちゃん・・・初々しい姿・・・ご馳走様です♡)

 

(上杉君・・・君は天然のタラシだ!)

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日のママの命日、アタシ達は姉妹揃ってママの墓参りにやってきた。ママの墓までやってきたアタシ達は墓の掃除とか線香をあげたりある程度のことを済ませて手を合わせる。

 

「・・・あれ?これが私たちが持ってきた花。それでこれが上杉さんの花。じゃあこの花は?」

 

四葉のいうとおり、アタシとフー君が用意した花以外にも別の花がお供えされていたわ。少なくともアタシは知らないし、誰が置いたのかも検討もつかない。

 

「さぁ?お父さんじゃない?」

 

「まさか」

 

忙しいとか言ってる人がわざわざママのために花を供えるなんて思えないわ。・・・今までアタシたちのことをほったらかしにしてたくせに・・・。

 

「パパに確認してみようか?」

 

「やめて」

 

六海が電話でパパに聞こうとしたけどアタシはそれを止めた。聞いたところで何にもならない。

 

「よし、一通り済ませたし、帰ろっか」

 

「・・・それより一花。あんたに聞いとかなくちゃいけないわ」

 

「ん?何?」

 

「家を出るって・・・本当?」

 

帰り支度を始めてる一花に、アタシは1番気になることを訪ねた。どうしても、これだけははっきりさせとかないといけないわ。

 

「ちょ・・・二乃!」

 

「それは・・・」

 

「いくら何でも急すぎだよ!」

 

「そうだよ!」

 

どのみちいつかは知ることになるんなら今聞いた方がいいじゃない。いちいち騒ぐことのほどでも・・・

 

「・・・え?何それ?」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「私、そんなこと一言も言ってないけど・・・え?誰から聞いたの?」

 

帰ってきた答えは予想を反するものだった。家を出ていくつもりはないって・・・ちょっと・・・

 

「・・・五月?」

 

「話が全然違うんだけど?」

 

「あ、あれぇ・・・?確かに一花がいなくなると聞いたんですが・・・」

 

「ほら、やっぱり家を出ていくなんて勘違いだったんだよ」

 

「うん。一安心」

 

「あー・・・そのことね。・・・みんなには言っておかないとね」

 

アタシ達の話に納得した様子で一花は口を開いた。

 

「私、二学期から学校行かないから」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「学校、辞めるんだ」

 

学校を辞める・・・それはつまり・・・自主退学。五月が言ってた一花がいなくなるって・・・こういうことだった?

 

「・・・あーあー、聞こえない聞こえない」

 

それ以上のことは聞きたくなかったアタシはわざとらしく聞こえないふりをした。

 

「え・・・一花ちゃん、なんで?」

 

「突然ごめんね。9月から長期のロケを受けることにしたの」

 

「あーあー」

 

「少し離れた撮影地で拘束時間も長いの。できるだけ家から通うつもりだけど・・・」

 

「聞こえないわ」

 

「正直、学校は厳しいから、諦めないと・・・」

 

「なんでよ!!!」

 

どうしても一花の出した答えが納得いかないアタシは声を荒げた。そんなの・・・はいそうですかって、納得できるわけないじゃない!

 

「あと半年じゃない・・・もうちょっとで卒業なのに・・・。アタシ達が同じ学校に通えるのは、これが最後なのよ?」

 

「二乃・・・」

 

「一花、他に選択肢はなかったの?」

 

「・・・ごめんね。私、お仕事に専念したいから」

 

「・・・!なんでそんな大事なことを勝手に1人で決めて・・・アタシたちに相談しなかったのよ!」

 

一花が決めたことを止めるつもりはないけれど・・・だったらせめて、アタシたちに相談してほしかったわよ。そうすれば他の選択肢もあったかもしらないし・・・アタシたちも、力になれたかもしれないのに・・・

 

「二乃・・・寂しいのはわかりますけど、家では一緒にいてくれます。一花が学校よりも大切なものを見つけたことに喜びましょうよ」

 

「・・・まさに優等生のセリフそのまんまね。それは、本当にあんた自身の言葉なのかしら?」

 

「!」

 

五月が真面目なのは誰もが知ってることだけど、それが本心かどうかは疑わしいところだわ。ただでさえ五月はお母さんの影響を抜け切れてないようだし。

 

「・・・すごいなぁ、一花は。私も一花と学校に通いたかったよ。一緒に卒業したかった。一花だけいないなんて、寂しいよ。でも、一花の夢だもんね。私、応援してるよ」

 

四葉らしい答えね。実際に無理をしてないか心配になってくるわ。結局話は切り上げられて、早く帰ることになった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

もうすぐで夏休みが終わるある日、アタシは今日はリビングでくつろいでいる。他の姉妹は今日は用事。五月ももう少ししたら塾の手伝いに行くんですって。

 

「あ!これこれ!これですよ!一花が出てるCMです!」

 

どうもテレビで一花が出てるCMが流れてるみたいね。それで五月ってば子供っぽくはしゃいじゃって・・・。

 

「ほら、見ててください!来ますよあのセリフ!」

 

『忘れられない夏にしてあげる♡』

 

「キャーー!!」

 

・・・うるっさ。本当にはしゃぎすぎよ。

 

「うるさいわね。一花なら毎日見てるからはしゃぐほどじゃないでしょ」

 

「それとこれとは話が違いますよ。テレビや映画で見る一花は本当に輝いて見えるんです。それに一花、すっごく楽しそうで、これが一花にとって、本当にやりたいことなんだと思います」

 

「・・・ふん、ほんとどこまでも優等生ね」

 

「あはは・・・」

 

ここまでの優等生っぷりを見てると、逆に羨ましくなってくるわ。

 

「それでも・・・一花を応援する気持ちは本当です。二乃だって、そうなのでしょう?」

 

「・・・・・・」

 

「わっ!もうこんな時間!私も一花に見習ってお仕事頑張ってきます!」

 

そう言って五月は塾の手伝いに行ってしまった。 ふん・・・何よ・・・知った風に言っちゃって・・・。・・・とかなんとか言いつつ、確かにアタシも、一花のこと、少しは調べてるんだけど。これじゃ、人のこと言えないわね。アタシだって・・・一花の夢を、応援・・・してるわけだしさ。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

三玖SIDE

 

ある日、私と六海は学校に来てアイスを食べてる。今はまだ夏休みなんだけど、学校に入っちゃダメっていう決まりはないから。ここに来た理由は、一花が自主退学の手続きを進めているらしいから、様子を見に。もう1つは、六海の気持ちをちょっと聞きたかったから。昨日何も言わなかったのは、私と六海だけだったから。

 

「・・・ねぇ。一花の退学、どう思ってる?」

 

「どうって・・・そう言われても・・・」

 

私の問いかけに六海は本当に困ったような顔をしてる。

 

「・・・一花ちゃんの夢だからね。応援したいって気持ちはあるよ。でも・・・だから学校を辞めるって言われても・・・。・・・正直、頭がごちゃごちゃしてわかんないよ・・・」

 

「・・・うん。そうだね。私も、わからない」

 

わからないからこそ聞きたい。一花の気持ちを・・・本当に学校に未練がないのか。それを確かめたい。一花のことは応援してるけど・・・今回ばかりは、返答次第では素直に応援できそうにない。

 

「あ、一花ちゃん出てきたよ」

 

六海に言われて正門を見てみると、一花が出てきた。もう手続き終わらせたのかな。

 

「あ、一花ちゃん!夏休みなのに学校来てたんだ!」

 

「すげー!本物の一花さんだ!」

 

「俺、初めて見たよ!」

 

あれって確か・・・テニス部の子だったっけ。女子のあの子は確か2年の時、一花のクラスメイトだったような気がする。

 

「こら!失礼でしょ!」

 

「「す、すみません!!」」

 

「あはは、気にしてないよ」

 

・・・やっぱり一花はすごいな。同じ同級生にも、後輩にも人気がある。さすが若手女優。

 

「みんなは部活?」

 

「うん。もう3年だけどね。私は大会が残ってるから」

 

「そうなんだ」

 

「これが最後の大会だからさ・・・悔いなく終わらせたいんだ」

 

・・・悔いなく・・・か・・・。

 

「・・・そっか。偉いね」

 

「い、いやぁ・・・一花ちゃんに比べたら私なんて屁みたいなものですよ。この前CM出てたよね。お母さんと2人でびっくりしちゃって・・・。こんな有名人と同じ学校に通えてるなんて、誇らしいよ」

 

テニス部の子たちは一花に挨拶をしてから自分たちの練習に戻っていった。

 

「・・・有名人だって」

 

「!」

 

「おかしいね」

 

テニス部の子たちが行ったところで私たちは塀から降りる。・・・高くて降りられなくなって一花と六海に手伝ってもらったけど。

 

「一花ちゃん、先生には話せた?」

 

「うん。応援してくれるって」

 

「そっか・・・」

 

「・・・もうこれで、後戻りはできない。私にはこの道しかない・・・そう実感して、覚悟が決まった気がするよ」

 

「そうかなぁ?一花ちゃんなら勉強も学校もきちんと両立できるイメージが六海にはあるんだけど・・・。実際に去年、期末試験で三玖ちゃんに勝ってたし」

 

・・・一言余計だけど、私もそれは思う。一花なら両方こなせるはずなのにね。

 

「それはたまたまだよ。そりゃー、私だってそう思ってた時期はあったよ。あったんだけどねー、仕事と学業の両立ができるほど、現実は甘くなかったよ。厳しい世の中だよねー」

 

「・・・本当にそう?」

 

なんだか一花がはぐらかしてように聞こえてきたから、私は一花に問い詰めてみる。

 

「お仕事が忙しくなったのはみんな知ってる。この先大きな仕事があるのもわかった。でも、学校を辞めなきゃいけないほどなの?」

 

「・・・・・・」

 

・・・まさかとは思うけど・・・一花・・・。

 

「・・・私と一緒にいることが、まだ辛い?」

 

前々から一花は私に気を遣ってるから、修学旅行のことで、まだ引きずっているのなら・・・

 

「・・・・・違うよ・・・辛いのは三玖といることじゃない」

 

「じゃあなんで・・・」

 

「・・・また元に戻れると思ったんだけど・・・フータロー君と一緒にいると・・・自分が自分を許せなくなる」

 

「一花ちゃん・・・」

 

「・・・私だって・・・みんなと一緒に卒業したいよ・・・」

 

それが・・・一花の本音・・・。やっぱり、一花も私たちと同じ気持ちだったんだ・・・。でも一花は・・・自分のやったことのけじめの方を選んだ。多分・・・苦渋の選択だったんだと思う。

 

「・・・だったらもう1度先生と話してきなよ!学校まで辞めることないじゃん!今の一花ちゃんのやってることは・・・」

 

「何も言わないで」

 

六海は一花に学校を残るように説得しようとしたけど、一花に止められる。

 

「ごめん・・・六海の言いたいことはわかるよ。自分でも、これが逃げだってことくらいわかってる。でも私は・・・みんなが思うほど器用じゃないから」

 

「一花・・・」

 

「一花ちゃん・・・」

 

一花の表情には哀愁を漂わせる顔をしている。

 

「・・・なんてね♪」

 

でもすぐに何ともないような笑顔を創り出した。でも・・・私でも、これが作り笑いなんだというのがわかる。

 

「ありがとね、三玖、六海。そろそろ帰ろっか」

 

「「・・・・・・」」

 

一花の答えを聞いて、私は・・・素直に背中を見送ることができない・・・。でも、これが一花の夢であり、進みたい道だっていうのもわかってるし、応援はしたい。・・・私たちじゃ・・・一花を止められない・・・。それができるとしたら・・・フータローだけ・・・。

 

「お。偶然~」

 

これから帰ろうとした時、待ってたかのようにフータローがそこにいた。偶然って・・・そうは思えないほどに汗だくなんだけど・・・。

 

「フータロー君・・・なんでここに・・・」

 

「・・・お前らの父親から聞いたぞ。学校を辞めるんだってな」

 

ああ、そっか・・・。学校を辞めるんだったら、勉強を教える必要がなくなるわけだから・・・。それならフータローに知らせが届いてもおかしくない。

 

「・・・それでだな、一花。たった今先生から聞いてきたぞ。休学について」

 

「!」

 

・・・休学?

 

「出席日数と一定の学力を示せれば、また復学し、卒業できるそうだ。一花、退学までの猶予はある。この手段を選べ。6人で卒業したいという気持ちが、少しでもあるのなら」

 

フータロー・・・まさか・・・一花の退学を止めるために・・・わざわざ・・・?

 

「・・・意外だなぁ。君は後押ししてくれるって思ってたのに。一定の学力を示すって言っても、これからずっと撮影と稽古だよ。ただでさえおバカなんだから、授業も出ないでそれは無理だよ」

 

「そうだな。普通ならそれが妥当だ。しかし・・・俺がいれば別の話だ。またお前が俺を個人的に雇うんだ。お前の都合のいい時間に合わせてオレが1対1で教えてやる。お前の学力は落とさない」

 

!フータローと1対1の勉強・・・それなら確かに遅れを取り戻すことができる・・・。というより・・・最善の手がそれしか方法がない。ただ・・・一花がどう返答するか・・・だよね・・・。

 

「・・・フータロー君は優しいなぁ」

 

「!!か、勘違いするな・・・。これはただのビジネスだ。お前がいなくなることで、生徒1人分の給料がもらえなくなった。だから・・・それを補わないといけないだろ」

 

フータローらしいことを言ってるけど、気遣ってるのがバレバレ。それよりも一花は・・・

 

「・・・ごめんね。女優1本で行くって決めたんだよ。そのビジネスには乗れないよ」

 

一花はフータローの差し伸べた策を蹴って、帰って行っちゃった。やっぱり・・・なんとなくそんな気はしてた。それにしてもフータロー・・・カッコつけすぎ・・・。

 

「・・・ふっ・・・やれやれ・・・」

 

「カッコつけたのに失敗したね」

 

「カッコつけてない」

 

「フーちゃんカッコ悪い」

 

「地味に傷つくからやめろ」

 

一花の説得にカッコつけて失敗したフータローはその後何かぶつぶつ呟いてる。

 

「・・・と、なると・・・一花の分の給料はもらえないままか・・・」

 

「フーちゃん・・・?」

 

「困ったな・・・店長もまだリハビリ中だしなぁ・・・このままじゃ金が足りねぇぞ・・・」

 

!フータロー・・・もしかして、一花の給料分のお仕事を探してるの?・・・これって案外チャンスかも・・・。

 

「・・・そ、それなら・・・バイト募集中のお店、知ってるよ」

 

「・・・!!?み、三玖ちゃん・・・まさか・・・」

 

六海は感づいたみたいだけど、全然気にならない。その後、お金を何としてでも補いたいフータローは私が紹介したお店のバイトの面接を受けることになり、合格となった。・・・やった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

翌日、フータローはさっそく私が紹介したバイト先で仕事をしてる。私が紹介したバイト先は・・・

 

「こ・・・こうか・・・?」

 

「うん。もっと力を入れて記事を伸ばす」

 

私のバイト先のパン屋。今私はパンの作り方をフータローに教えてるところ。よかった、まだバイト募集をやってて。フータローの役に立てた。それに、バイトでも一緒にいられて、嬉しい。

 

「・・・一花が退学を選んだ理由・・・お前は知ってるか?」

 

フータローがここぞとばかりに一花の退学について聞いてきた。やっぱり気にかけてるんだ。

 

「それは・・・ごめん、それは言えない。ただ・・・心から願ってる言葉じゃない・・・と、思う」

 

「・・・そうか」

 

「・・・フータローこそ・・・なんで一花を引き留めようとするの?」

 

「・・・・・・・・・これ、本人には言うなよ」

 

長い沈黙の後、フータローは一花に退学してほしくない理由を話してくれた。正直・・・そこまで思っててくれてたなんて思わなかった。それだけ・・・フータローも変わったってことかな・・・。そういうことなら、私は・・・フータローに協力してあげたいけど・・・打開策が思いつかない・・・。

 

「三玖ちゃん、今日も妹さんが来てるわよ」

 

「・・・また?」

 

「また?またってなんだ?」

 

ここ最近でこの時間帯に来る姉妹なんて1人しかいない。ひとまずレジ打ちの説明も兼ねて、フータローを連れてレジに向かうことにする。

 

「・・・あ、本当にここでバイトしてるんだ・・・」

 

お店にやってきてたのは頬を膨らんで拗ねてる六海だった。やっぱり・・・。月の中間あたりは特に忙しいらしく、遅くなるからよくうちで間食のパンを買いに来る。

 

「なんだお前かよ・・・てか、なんでそんな不機嫌そうなんだよ・・・」

 

「べっつにぃー?ただいい御身分ですねって思っただけぇー」

 

「いい御身分って・・・」

 

ぷんすかしてる六海はお店のトレーを持って、どのパンを買うか悩んでる。

 

「・・・今日も遅くなりそう?」

 

「うん。締め切りギリギリなんだ。だからみんなピリピリしてて・・・」

 

「そんなに忙しいのか?」

 

「余裕がある時はそうでもないんだけど・・・まぁそうだね。特に先生は実写映画を目指してるみたいで、何かと頑張ってるみたいなんだ」

 

六海の仕事現場も大変そう・・・今度差し入れ持って行ってあげようかな・・・。

 

「・・・それだ!!!」

 

「へあっ!!?」

 

突然大きな声を上げたフータローは六海の両肩を掴んだ。え・・・急にどうしたの?

 

「そうかその手があったか!!六海最高!!」

 

「え?え?何事・・・?」

 

「フータロー・・・突然どうしたの?」

 

「いいことを思いついた。あいつ女優一本で行くって言ってたな。ならば、お望みどおりにしてやるぜ!」

 

フータローは何か妙案を閃いたらしい。その証拠に今顔が生き生きとしてる。こういう時のフータローは、本当に頼りになる。だから・・・一花のこと、託してもいいよね。私たちも、協力するから。

 

SIDEOUT

 

♡♡♡♡♡♡

 

一花SIDE

 

みんなには話すことを話したし、退学の手続きも済ませておいた。これで夏休みが終われば、それで終わり、私は女優に専念できるってわけだ。これでいいよね。後やるべきことは・・・四葉に話をすること。四葉にはちゃんと謝っておかないと・・・そして何より・・・四葉自身のために。そういうわけだから私は夕方ごろに四葉を公園に呼び出して、話をするところだよ。

 

「このブランコ、ギコギコいってるけど、大丈夫?」

 

「ヒィー、ブランコなんて数年ぶりに乗ったから怖いよー」

 

「嘘っ。余裕そうな顔してるもん」

 

「あはは、バレた?」

 

ついでに、ブランコに乗って遊んだりしてるよ。こういう遊び心は大切にしないと、ね♪

 

「でも本当に久しぶりだよね。いつぶりだったっけ?」

 

「最後に乗ったのは小学校の頃、かな?校庭にあったよね」

 

「あー、あったあった!」

 

久しぶりに乗るブランコは楽しいけど、そろそろ本題に入らないとね。

 

「・・・ねぇ、四葉は覚えてるかな」

 

「え?何を?ブランコのこと?」

 

「ううん、フータロー君のこと。ほら、小学校の修学旅行の時、男の子に会ったって言ってたじゃん?」

 

「!!」

 

フータロー君の話をしたら、四葉は驚いたような顔になった。もしかして・・・とは思ったけど、やっぱり覚えてたんだね。

 

「・・・一花、あの頃を覚えてたんだね」

 

「やっぱり覚えてたんだ、フータロー君のこと」

 

「あはは・・・見た目がすごく変わってたからびっくりしたよ」

 

「はは、だよね。私も驚いた」

 

初めて気づいた時は本当に驚いたよ。あの頃から今の姿なわけだからね。全然印象が違ったし。

 

「・・・四葉には謝んなきゃいけないね。ごめん」

 

「一花?」

 

「小学校の頃、四葉に成り代わるようにフータロー君に会っちゃってさ・・・。本当はあそこにいるのは、四葉だったのに・・・」

 

もしかしたら・・・私が手を引いていたら、また違った結果になったのかもしれなかったのにね。

 

「そんな・・・それはもう昔のことだよ」

 

「それだけじゃない。今回の修学旅行の組決めでも、無理言っちゃって。あの時の私は、恵理子ちゃんがどういう気持ちで私を慰めてくれてたのか、わかってなかった。これじゃあ、お姉さん失格だよ、私」

 

やりたいようにやるっていう本当の解を、あの時の私は理解できなかった・・・ううん、多分、そこまで理解したくなかったのかもしれない。はは、恵理子ちゃんの方がよっぽどお姉さんをしてるよ・・・。

 

「明日恵理子ちゃんにも謝っとかなくちゃね。これから、会う機会は少なくなってくると思うから・・・せめて早いうちに、ね」

 

「・・・・・・一花、本当に学校、辞めちゃうの?」

 

「うん。本気だよ」

 

正直、学校を辞めるのは、ちょっと辛いけど・・・自分で決めたことだし・・・何より、これ以上迷惑をかけるくらいなら・・・これが最善だよね。

 

「私を1人にしないでくれたのは一花たちじゃん!なのに・・・。一花が学校を辞めるなら、私もや・・・」

 

「それはよしなよ。そんなことしても、誰も喜ばないよ」

 

私が言えた道理じゃないんだけどさ・・・他の姉妹は私とは違うわけだからさ。みんなには学校を辞めてほしくない。それに・・・四葉はまだ、自分のやりたいことを見つけれてないわけだし。

 

「で、でも・・・」

 

「・・・四葉。四葉は四葉の本当にやりたいことを見つけな」

 

「・・・私の・・・やりたいこと・・・」

 

そんなに時間が経ってないはずなのに、もう暗くなってきた。今の時間帯なら、まだ夕方ぐらいで、もっと明るかったのに。

 

「・・・こんな時間なのに、もう暗くなってきたね。夏ももう、終わりだね」

 

夏休みが明けたら・・・私はもう学校にはいられない。ならせめて、あと少しの時間は、楽しまなくちゃね。

 

♡♡♡♡♡♡

 

夏休みがもうすぐで終わるある日・・・私の所属しているプロダクション。なんか私にお客さんが来てるっていうから、社長と一緒に応接室に向かった。そこで待っていたのは、思いがけない人物だった。

 

「どうもお久しぶり。菊は元気?」

 

「フータロー君・・・。三玖に六海まで・・・」

 

待ってた人物というのはフータロー君、三玖、六海の3人だった。まさかこんなところまでやってくるなんて・・・。

 

「ふふふ、嬉しいよ上杉君。ようやくプロダクションに入る決意を固めてくれたんだね」

 

「いやそういう話ではなく・・・わかってるでしょ。一花のことだ。一花の退学を、どう考えなおしてくれないだろうか」

 

やっぱり・・・そんなことだろうと思ったよ。フータロー君も諦めが悪いなぁ・・・。

 

「残念ながら、それは無理な相談だ。彼女は君たちの想像をはるかに上回る大きな存在となっている。今まで通り学校に通いながらというのはとても不可能だろう。そして何より、これは彼女が決めたことだ。僕は彼女の意思を尊重する」

 

ごめんね、フータロー君・・・誰になんと言われても、私はもう・・・

 

「そうか。わかった。なら諦める」

 

・・・え?

 

「え?そんなあっさり・・・」

 

社長も予想外の反応なのか驚いてるよ。そりゃそうだよ。

 

「それじゃあ次は・・・ビジネスの話だ」

 

ビジネスって・・・先日の家庭教師の?

 

「それなら前に・・・」

 

「俺は・・・自主映画を撮ることにした」

 

??????じ、自主映画?

 

「出演は家庭教師と生徒の2人のみ。撮影は週2回。3時間カメラの前でぶっ続けで勉強を教えるという素晴らしい脚本もある」

 

「ストーリーの方はむつ・・・私が書きました。本気なので、ぜひ目を通してください」

 

六海は鞄からその・・・自主映画?のストーリーシナリオの書類を取り出し・・・て!量が半端なく多い!!?こんなものいつの間に・・・

 

「こ、こんなにびっしり・・・」

 

「監督兼、家庭教師役はもちろん俺。そして・・・生徒役にお宅の中野一花さんをお借りしたい」

 

「お金ならあります」

 

「お願いします!!」

 

「・・・き、君たち・・・まさか・・・」

 

「・・・!」

 

もしかして・・・遠回しに私に休学をするようにしてる・・・?私が学校を卒業できるようにするために・・・?しかも自分でお金を払ってまで・・・?私のために・・・?

 

「フータロー君・・・どうしてそこまでして・・・」

 

「・・・・・・一花、俺はなぁ・・・イラついてんだよ。一度俺が家庭教師を辞めた時、引き戻したのはお前らだろ。それなのに勝手に1人だけ降りようとしやがって・・・。そんな勝手が簡単に通るとでも思ったのか?甘く見るなよ」

 

「・・・それは・・・」

 

「6人そろって笑顔で卒業!それができなきゃ、俺が納得いかねぇんだよ!!」

 

確かにあの時は私たちはフータロー君を引き留めようとした。それと同じことが私に返ってくるなんて思いもよらなかったよ。

 

「こらこらー、そうじゃないでしょー?」

 

「!!!」

 

「あのね、そうじゃないの。フーちゃんは・・・むぐっ⁉」

 

「む、六海!言うな!言うんじゃない!!」

 

フータロー君に呆れた様子の六海が何かしゃべろうとした時、フータロー君は口を塞いでそれを阻止する。

 

「フータローは一花に感謝してるんだって」

 

「三玖さん!!?」

 

え?フータロー君が・・・私に感謝?

 

「あの時フータローを雇い直せたのは一花が仕事をしてくれたおかげ。その恩返しがしたいんだって」

 

「ちょっ・・・三玖!それは言うなって言ったのに・・・!」

 

フータロー君・・・。

 

「・・・フータロー君。私、卒業できるかな。このままお仕事に専念ってのも悪くないと思ってるんだ。あとたった半年、君に迷惑をかけるくらいならって・・・。それでも引き留めるの?」

 

「・・・・・・」

 

「そんなに勉強してまで学校に行く理由って、なんだろ?」

 

少なくとも私には理由が思いつかないよ。学校でいいことばかり起こるわけじゃないんだしさ。実際に、問題が起こったわけだから・・・。

 

「・・・そりゃ・・・あれだ。青春を・・・エンジョイ・・・。お前も、言ってただろ」

 

「あ・・・」

 

「・・・この前な、クラスの奴らと海に行ってきたんだ。俺が今まで不要だと切り捨ててきたものだ。柄になくはしゃいで、すげー楽しかった。だが、きっとそんな楽しいことは今しかない。今しかできないことをお前たちをしたいと思った。当然、その中にお前も含まれてる」

 

今しか・・・できない青春を・・・。私も・・・。

 

「・・・とはいえ、ここから先は全てお前次第だ。生半可な覚悟ではできないだろう。お前の言うとおり、仕事一本で行くのもいいだろう。だがもし・・・もしまだ学校に未練があるというのなら・・・どうかこの金で雇われてくれ」

 

・・・本当にフータロー君はずるいなぁ・・・。そんなこと言われちゃったら・・・私は・・・

 

「・・・ちょっと失礼」

 

話をずっと聞いていた社長はフータロー君から封筒を受け取って中に入ってあったお金を確認してる。

 

「!こ、この金額は・・・!・・・全然お金足りないけど・・・」

 

「えっ!!?うそでしょ!!?それ、六海のボーナス全額入ってるんだよ!!?」

 

「俺と三玖の給料だって入れたぞ!!?それでも多めなのに、まだ足りないと!!?」

 

「うちの看板女優を見くびらないでくれ」

 

あれ?もしかしてこれ・・・かなり手詰まりな状況?なんか3人で話し合ってるし・・・。

 

「ちょ・・・どうすんのこれ!!?予定に全然入ってないんだけど!!?」

 

「大ピンチ・・・」

 

「うむむ・・・こうなったら・・・一花!!」

 

「!!」

 

「・・・金貸してくれ・・・」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

ウソでしょ?ここまでかっこよく決めたのに、最後にそれ?しかも雇おうとしてる人にお金を借りようとするって・・・

 

「・・・ぷっ・・・あははは!カッコ悪!」

 

フータロー君のあまりのカッコ悪さに私は思わず笑っちゃったよ。

 

「途中まではよかったのに、締まらないなー、もう」

 

「本当だよー。雇おうとしてる人にお金借りる?借りないでしょ普通」

 

「・・・・・・」

 

「・・・ぐうの音もでねぇ・・・」

 

あー、本当に笑ったぁ・・・なんだか今まで深く考えてきたのがバカバカしくなってきたよ。

 

「ふー・・・うん。じゃあ、足りない分は出世払いで、ね♪」

 

「「「!」」」

 

うん。私、もう深く考えるのはやめにするよ。フータロー君がここまでやってくれたんだから、今度は私がそれに応えないとね。

 

「ちょ・・・一花君、勝手に・・・」

 

「いいじゃん社長、お仕事には迷惑かけないからさ」

 

勝手に決めちゃったけど、なんだかんだいいながら、社長は私の意思を尊重してくれるんだよね。そこが社長のいいところだよ。

 

「じゃあこれで・・・契約成立だな」

 

こうして私は、フータロー君のビジネスに了承して、契約が成立した。学校に退学の取り消しと、休学申請をしておかないといけないし・・・やれやれ、これから忙しくなりそうだよ。

 

♡♡♡♡♡♡

 

9月に突入し、夏休みが終わり、今日からみんなは学校の始業式、私は長期ロケ期間に突入する。今私はロケ現場へ向かっていて、妹たちは駅まで見送ってくれてるよ。

 

「えー・・・やりたくない・・・」

 

「一度やってくれたじゃないですか」

 

どうやら三玖は私が出演したCMを再現できるようになったみたいなんだよね。私、まだ見たことないから見てみたいよ。

 

「私も見たいなー」

 

「ほら三玖!見てもらいなよ!」

 

「お願い!1回でいいから!」

 

「・・・じゃあ・・・一度だけ・・・忘れられない夏にしてあげる♡」

 

「わー!そっくり!」

 

本当にうまく再現できていて驚いたよ。これなら初見の人が見ても一花と間違えられるのも無理ないなぁ。

 

「私の出席日数が足りなくなったら、代役をお願いね♡」

 

「絶対無理!!」

 

「えー、つれないなぁ・・・」

 

うーん、まぁ、三玖は結構恥ずかしがってるし、これくらいで勘弁してあげようかな。・・・と、そろそろ改札口までつくね。

 

「じゃあ、私こっちだから」

 

「ええ。頑張ってください」

 

「帰ったらお話聞かせてね!」

 

「いってらっしゃい!」

 

私は妹たちに見送られながら、改札口を通って・・・

 

「・・・一花!」

 

「!」

 

「・・・体調・・・気を付けて・・・!」

 

二乃はほんの少しだけ涙を流して、私にエールを送ってくれた。

 

「・・・うん。行ってきます」

 

私は、妹たちの応援を受けて、改めて改札口を通って、電車に乗って長期ロケ現場へと向かっていくのであった。

 

♡♡♡♡♡♡

 

こうして・・・一花は休学となった。

 

少しずつ、六つ子の今の生活が変わってきている。

 

六つ子が一緒にいられるのもあと少し・・・

 

卒業は・・・もうすぐそこまで迫ってきている。

 

♡♡♡♡♡♡

 

仕事が終わってからの夜、宣言通りにフータロー君がやってきて自主映画製作という名の週2回の番協会が始まったわけだけど・・・

 

「だーっ!だから違うって!おい!寝ようとするんじゃねぇ!このままじゃ授業に追いつけなくなっちまうぞ!」

 

「ひぃ~・・・もう勘弁してよぉ~・・・日中のロケでくたくたなんだよ~・・・」

 

「甘えたこと言うんじゃねぇ!」

 

正直ロケの疲れでほとんど頭が回んないよぉ~。仕事終わりにすぐに勉強ってきつすぎるよぉ~・・・。

 

「まったく・・・このままじゃあいつらと卒業なんて夢物語になるぞ」

 

あ、卒業と言えば・・・

 

「私、卒業したいのは妹たちだけじゃないけどね」

 

「!!?え?え?それって・・・」

 

あはっ、動揺してる動揺してる。

 

「隣の席のユミちゃんにテニス部の・・・」

 

「!だ、だよな!

(あ、あっぶねー!)」

 

ふふ、もちろん、フータロー君も含まれてるんだけど・・・それは・・・ナーイショ♡

 

53「分枝の時」

 

つづく




おまけ

ストーリーシナリオについて、そしてその後・・・

一花「そういえば六海、あのシナリオってかなり分厚かったよね?あれいつから作ったの?」

六海「ちょっと前にだよ。口先だけじゃないっていう証明のために三日三晩徹夜で作ったんだよ。おかげで寝不足だよ・・・ふわぁ・・・」

一花「あはは・・・ご迷惑をおかけしました・・・」

六海「迷惑料として一花ちゃんには9月まで六海の抱き枕になってもらいます。拒否権はありません」

一花「ふふ、はいはい、六海は甘えん坊だねー」

そして、翌日の朝・・・

六海「・・・なんか朝起きたらパジャマ全部脱がされたんだけど・・・脱ぎ癖って他人まで巻き込むの・・・?」

一花「ふわぁ・・・おはよー・・・」

あの後六海は一花を抱き枕にするのはやめるようになった。

ストーリーシナリオについて、そしてその後・・・  おわり
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