「ねぇねぇみんな。お昼ごはんの後、お昼の予定とかってある?」
姉妹全員で昼食をとっている中、六海がそんなことを尋ねてきた。私、中野一花としてはご飯を食べ終えたらお昼寝したいんだけど、こういう時の六海は何かある。
「んー・・・私は、ないかな?」
「アタシもないわね」
「右に同じく」
「私も今日暇でーす!」
私たちはみんな揃って暇だけど、何やら五月ちゃんは少し申し訳なさそうな顔をしてる。
「すみません。私はお父さんの頼まれごとで出かける用事があって・・・」
「用事?」
「ええ。上杉君にこれまでの家庭教師のお給与を渡すようにと・・・」
「あ、そっか。五月ちゃんは風太郎君の家知ってるんだったね」
「「風太郎君⁉」」
六海とフータロー君の事情を知らない二乃と五月ちゃんはめちゃくちゃ驚いてる。そっか・・・六海、フータロー君と仲直りできたんだ。しかもあれほどフータロー君の名前を呼ばなかったのにね。私も事情は知らないけど、仲直りできたというのだけは伝わってくる。
「ちょっと待ちなさい六海・・・あんたいつからあいつを名前で・・・?」
「いつって・・・昨日からだけど」
「なぜです⁉」
「か、勘違いしないでね⁉六海はまだ風太郎君を認めてないから!」
「とか何とか言ってー、ご指導ご鞭撻よろしくって言ってたくせにー」
「言ってないよ!」
「嘘はよくない。確かに言った」
妹たちが六海のフータロー君の名前呼びで話が脱線しかけてるなー。話を戻さなきゃ。
「こほん・・・それで、五月ちゃん。給与ってどれくらいなの?」
自分で話を戻しておいてなんだけど、結構がめついなー。
「え、えっと・・・1日5000円を6人分、計3回で合計90000円だそうです」
「へー、結構な額だね!」
「そんだけもらえるようなことしてないじゃないの」
「そうかな。私はしてると思うなー」
少なくとも、三玖の授業参加や六海の多大なる変化、それでも多いけど、給与をもらうには十分だと思うけどなー。
「そういうわけで今日のお昼は予定が埋まってますが・・・それがどうかしましたか?」
五月ちゃんの問いに六海は本題に入った。
「うん。あのね・・・今日は9月30日の日曜日、東町での花火大会じゃん?」
「あ、なるほど」
「あ!そういうことか!」
「うん。その準備として買い物に行こって思ったんだけど・・・」
なるほど、花火大会か。うん、六海が張り切るわけだ。
私たち六つ子にとって花火はお母さんとの思い出が詰まった大切な行事だ。お母さんは花火が好きで幼い頃みんな揃ってよく花火を見たっけ。お母さんが亡くなってからも、六つ子全員で揃って花火を見上げる。それは毎年の恒例行事で、今年もやることになる行事なんだ。
「そういうことはもっと早く言いなさい!早く支度するわよ!」
おっと、二乃が急に張り切りだしたねー。て、まぁそれもそうか。だって姉妹の中で花火を1番楽しみにしているのは二乃だしね。
「他のみんなはどうかなー?」
「もちろん行くー!お財布取ってこなくちゃ!」
「新しい浴衣新調したいし、いいよ」
「まぁ、それなら付き合おっかなー」
「それなら私は上杉君にお給与を渡したら、すぐに合流します。それでいいですか、六海?」
「うん!全然オッケー!終わったら連絡入れてねー♪」
六海の提案は満場一致で行くことに決定。今年の花火大会も盛り上がるんだろうなー。
♡♡♡♡♡♡
と、いうわけで!私たちは今ショッピングモールで買い物にやってきましたー!今回買うものと言えばお祭りに着ていく浴衣、浴衣の帯、それから今日着ていく下着だね。今私たちは今日着ていく浴衣の柄を選んでる。女の子同士が買い物する姿ってドキドキしない?
「うーん、どの柄がいいか迷っちゃうねー」
「とりあえずサイズが合えば何でもいい」
「絶対そう言うと思ったわ。あー、ヤダヤダ。これだからオシャレ下級者は」
「誰が見るわけでもないし、二乃は意識高すぎ」
「はあ?そんなダサい恰好で来てるあんたに言われたくないわよ!」
「もー、また二乃ちゃんと三玖ちゃんけんかしてるー。ダメだよー、せっかくの楽しいお買い物なんだからー」
こんな時でもけんかをしている二乃と三玖を仲裁している六海。
「でも、誰も見ないってことはないんじゃないかな?ね、一花?」
「そうだねー。少なくても、この人には私の浴衣を絶対に見てほしいって人、心当たりあるんじゃない?」
「い、いないよ・・・」
「本当にそうかなー?」
「本当だって・・・」
「にしし、照れてる照れてる♪」
「照れてない」
私と四葉で少しだけ三玖をからかってみたけど、ほんのり顔色が赤いからいるってことなんだろうね。ま、相手は大体想像つくけどねー。彼が祭りに来るかどうかは別の話だけどね。
「あ、五月ちゃんからだ。・・・あらぁ・・・」
六海は今さっき届いたであろう五月ちゃんからのメールを見てそんな声を上げている。え、なになに?
「五月、なんだって?」
「なんか五月ちゃんねー、風太郎君関係の野暮用で来れなくなったってー」
「フータロー?」
「はあ?なんで急にあいつの名前が出てきて、五月が来れないのよ?」
「んー、これ言っちゃっていいのかなぁ・・・?」
六海は五月ちゃんが来れなくなった理由を言っていいものかどうか悩んでる。そこまで悩まれると、気になってくるなー。
「言っちゃって大丈夫だよ!私、口は堅いから!」
「四葉ちゃんだと逆に心配・・・」
「ひどい!」
あー、それは確かに。四葉って、ウソつくのが下手だもんね。
「私たちがフォローすればフータロー君にばれることないんじゃない?」
「んー・・・じゃあ、もし風太郎君に詰め寄られてもこれ六海が言ったってこと、内緒ね?」
六海は念のためにそう言って同意を求めてくる。私たちは首を縦に頷く。
「実は風太郎君に妹がいてねー、名前はらいはちゃんっていうの」
「妹?」
「え!上杉さん、妹さんがいたの⁉」
「そういえば・・・あいつそんなこと言ってたっけ・・・」
フータロー君に妹ちゃんがいることにみんなはそれぞれの反応を示している。少なくとも私も驚いている。フータロー君に妹かぁ・・・。
「へー、フータロー君に妹ねぇ」
「そうなの!もー本当にかわいくてかわいくて・・・風太郎君とは大違いだよ!六海の妹にしちゃいたいくらい!」
「六海、もしかしてそのらいはちゃんって子と会ったの?」
「何を隠そう、六海の約束相手というのがね、らいはちゃんなの!だからほぼ毎日会ってるのー!」
「いいなーいいなー!私も会ってみたいよー!」
六海は頬を赤くしながらうっとりとしている。よほどかわいらしいんだろうなぁ。なんかちょっと五月ちゃんと六海が羨ましいよ。
「・・・それでね、そのらいはちゃんのお願いということもあって、五月ちゃんがそれを叶えてるってわけなの」
「ふーん、そういうわけね。で、肝心の花火大会には来られるの?」
「そこは大丈夫だよ。ちゃんと行くって書いてあるし」
「そ。ならいいわ」
五月ちゃんが花火大会には行くことを聞いた二乃はほっとしている。もー、二乃は心配性だなぁ。
「でも五月の浴衣どうしよっか?」
「六海、五月ちゃんの好み知ってるから六海に任せてー!」
「サイズはどうすんのよ?」
「私たちの誰かが試着してサイズを測ればいいんじゃない?ほら、私たち、みんな揃って同じ身体だし?」
「これで問題解決」
話がまとまったところでみんな各々浴衣選びを再開する。さて、私もどれにするか決めないとね。
「六海はどんな浴衣にするの?」
「んー・・・六海はねー、ナナカちゃんをモチーフにした浴衣が・・・」
「それは勘弁してほしいかなー」
「えー!ナナカちゃんかわいいのになんでー⁉」
いや、だって、ねぇ・・・?いい歳した女の子が魔法少女物のコスプレを祭りに着ていくのは・・・さすがに、ねぇ?痛い子のお連れだと思われたくないし・・・。
「ん、とりあえずこれにする。試着してみるから、二乃、帯を結ぶの手伝って」
「はあ?あんたまだ帯結べないの?・・・たく、しょうがないわねー」
最初に浴衣を決めた三玖が二乃と一緒に試着室へと入っていった。と、それと同時に試着室からいがみ合いの声が聞こえてきた。
「いった!三玖!今足踏んだでしょ!」
「踏んでない。二乃の気のせい」
「そんなわけないでしょ!痛みがジンジンきてるのよ!」
「ははは、どこに行ってもああなるんだね・・・」
試着室から聞こえてくるいがみ合いに四葉は苦笑いを浮かべる。
「試着室の大喧嘩・・・そこから始まる・・・ゴクリ・・・」
おっと、六海は自分の欲望を必死になって抑え込んでるねー。本当に六海はわかりやすいなー。
実を言うと、私は六海がそっち系の隠れオタク女子だということは知ってる。他の妹たちは知らない、私だけが知ってる事実。
ある日私が珍しく寝付けなくてお腹がすいた時に好物である塩辛を探そうとしてた時に六海の部屋から何かぶつぶつ聞こえてきたから興味本位で覗いてみたんだ。その時に知ったんだよね。最初は驚いたよ。だって六海が私たちを使ってあーんなことや、こーんなことを妄想しながら絵を描いてたんだもの。でも、六海がそっち系でも私たちが六海を嫌いになる理由なんてないよ。だって大切な妹だもの。
「六海-、なんかにやにやしてるけど、どうしたの?」
「えっ⁉はい⁉何⁉に、にやにやなんかしてないけど⁉」
「わー、すっごくわかりやすーい。何かいいことでもあったの?」
「べ、別に⁉」
四葉の問いかけに必死になって隠す六海。ちょっとからかってやろうかなぁ。
「いいんだよー?自分の欲望に正直になってもー。素直になっちゃいなよー」
「はい⁉欲望って何⁉何のこと⁉六海わかんなーい!」
「わかってるくせに~」
「な、何のことやら」
六海は必死になって隠してる。みんなにばれても六海を嫌いになることなんてないから私たちの前でくらい堂々とすればいいのにー。でも六海の必死な努力を水の泡にするの気の毒だし、これくらいにしとこうかな。
「そ、そんなことより一花ちゃん!この後の下着選別、お願いね!」
「はいはい、いつものね♪」
この後私たちは浴衣選びを再開し、その後に下着を選んだりして充実した買い物を満喫していく。
♡♡♡♡♡♡
必要なものを買い物を済ませた後、せっかくだから今日買った浴衣を着て家への道のりを歩いていく。私は青、黄色、橙色の3色がメインの浴衣、二乃はウサギの刺繡がある浴衣、三玖は水色に染まった浴衣、四葉は黄緑色で花柄がある浴衣、六海は白黒が結構目立つ浴衣をチョイスした。六海が選んだ五月ちゃんへの浴衣は赤をベースにした浴衣にしたらしい。
「いやー!楽しいショッピングだったねー!」
「これで疲れるんじゃないわよ?この後が本番なんだから」
「早く五月と合流しよう」
「そうだね!じゃあ五月ちゃんに連絡入れるよ」
六海はスマホを取り出して五月ちゃんに連絡を入れようとする。うーん・・・
「?どうしたの、一花ちゃん」
「なーにか、パンチが足りないなぁ。なんだろうなー?」
いや、六海は普通に浴衣は似合ってるよ?似合ってるんだけど・・・何かが足りないんだよねー。
「メガネが余計なんじゃない?」
「それだ!」
そっか!ずーっと引っかかってたんだよねー。浴衣は似合うのに、どうしてか何か足りないんだろうって。そっかそっか、メガネが邪魔してるんだ!三玖ナイス!
「メガネが余計なんてひどいよー。六海のアイデンティティなのにー」
「あ、アイデンティティなんだ、それ」
「でもあんたの場合、浴衣にメガネは邪魔なのよね」
「そうだ!せっかくなんだし!今日はメガネ外して参加してみてよ!」
お、四葉ナイスアイディア!四葉のアイディアに六海は心底嫌そうな顔をしてる。
「え!やだよそんなの!六海はメガネ気に入ってるのに!それにみんなだって知ってるでしょ⁉六海はメガネがないと視力が悪いの!」
「そんなのコンタクトすれば解決」
「私も素顔の六海見たいしねー。悪く思わないでねー。二乃、予備のコンタクトってある?」
「ええ。あるわよ。はい」
「な、何するつもり・・・?」
二乃からコンタクトを受け取った私は不安そうな六海に近づいていく。そんな六海を四葉がメガネをはずしてから暴れないようにしっかりと抑える。
「ほらほら六海!私たちは六海をかわいくしたいだけ!これくらい我慢しなきゃ!」
「あ!六海のメガネ!」
「ちょーっと、失礼するよー?」
「にゃーー!!やめてーーー!!」
私が六海にコンタクトをつけようとすると六海は暴れだす。でも身動きが封じられてるからびくりともしない。両目にコンタクトをつけてっと・・・はいできあがり!
「「「「おおお・・・」」」」
私たちは今の六海の姿を見て感心した声を上げる。今の六海は普段見せることがない素顔がはっきりとしている。やっぱり私たちの顔と瓜二つだなぁ。
「ううぅ・・・ひどいよひどいよ・・・コンタクトは苦手なのに・・・」
「いいじゃない。今のあんた、輝いてるわよ~?」
「一種の感動を覚えた。ぐすん・・・」
「ごめんね、六海。でも今の六海、すっごくかわいいよ!」
「こんなにきれいになって・・・お姉ちゃんはうれしいよ」
「ちっともうれしくない!!」
せっかく浴衣が似合う美少女になったっていうのに、六海はかなりご立腹だ。似合うのになぁ~。
「うぅ・・・レンズも緩いし・・・若干見えにくい~・・・」
「悪かったわね、緩くて」
「六海ってどれだけ視力悪いんだろう・・・?」
「と・に・か・く、今日はそのままでいなさい。わがまま言うならメガネは返さないわよ」
「うぅ~・・・二乃ちゃんの鬼ぃ~・・・」
涙目するほどなんだからよっぽどメガネがいいんだね。
「さて、六海問題は解決したし、そろそろ五月ちゃんを・・・と、おやおやぁ~?」
そろそろ五月ちゃんを呼び出そうと思ったけど、その必要もなくなったかな?それに、なんだかおもしろい光景も広がってるなぁ~。
「どうしたの?」
「いやはや、お熱い展開がだなーって思ってね。ほら」
「はぁ?いったい何が・・・て、はあああ!!?」
今私の視界に映っているのは、確かに五月ちゃんだ。で、さらにそこにフータロー君もいる。
「み、みんな⁉」
「お、お前ら⁉」
「あ!上杉さん!」
「なんでそいつと一緒にいるのよ、五月!」
「もしかして・・・デート中?ごめんね?」
「違います!!」
いやはや、まさかフータロー君も一緒だとは思わなかったよ。てことは五月ちゃんとフータロー君もいるってことは今私たちを指さしてるこの子は・・・
「わーい、らいはちゃんー!会えてうれしいよー!」
「!六海さんですか!ということは・・・」
「そ!六海のお姉ちゃんでーす!すごいでしょ、姉が5人だよ!5人!」
ああ、やっぱりこの子がフータロー君の妹ちゃんなんだ。なるほど、確かにかわいらしいね。
「ああ!あなたが噂に聞く上杉さんの妹ちゃんですか!か、かわいー!」
「でしょでしょ!」
四葉もらいはちゃんにメロメロだね~。
「そうだらいはちゃん!六海たち、これから花火大会に行くんだー!一緒にどう?」
「花火!行きたい!」
「行きましょう行きましょうらいはちゃん!きっと楽しいですよー!」
六海と四葉がらいはちゃんを花火大会に誘ってあげるとらいはちゃんはとてもキラキラした目をし始めた。でもフータロー君はそれに異を唱える。
「ちょっと待て!俺には勉強する予定もあるし、お前らも宿題が!」
うっ・・・宿題・・・それがあったねー。すっかり存在を忘れてた。私たち全員宿題をやってないからなー。
「お兄ちゃん・・・ダメ・・・?」ウルウル・・・
ズキューン!
「もちろんいいさ」
らいはちゃんのあの涙顔にさすがのフータロー君も拒否できないかー。ま、そうだよね。私たちもそうだもん。
「だが念のために聞くが、お前ら、宿題は終わらせたのか?」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
「沈黙はやってないとみなすぞ」
うっ・・・ばれてる・・・。
「はぁ・・・らいはの頼みだ。花火大会には行っていい」
お、やった♪
「ただし!!お前らは!!宿題を!!終わらせて!!からだ!!!」
悲報、宿題終わるまでお祭りに行けそうにないや。
♡♡♡♡♡♡
「もー!!花火大会始まっちゃうわよー!!何で私たち家で宿題やらされてんのよー!!」
二乃は文句たっぷりにそう叫んでいる。
「週末なのに宿題を終わらせてないからだ!!」
うぅ・・・せっかくの花火大会のお祭りだっていうのに、ここに来て宿題をやらされるなんてねー・・・お姉さん、頭がパンクしそうだよー。
「へあ・・・もうダメ・・・」
すでに頭をパンクしてる六海は顔を頭に突っ伏した。気持ちはわかるよ。
「宿題片付けるまで絶対祭りには行かせねー!!」
そ、それは困る!フータロー君の一声がきいた六海はすぐに復活して宿題を進める。もう正解率とか無視でいいよね。早く祭りいきたいし。
♡♡♡♡♡♡
「ふー!やっと終わったー!」
何とか花火大会が始まる前に全部の宿題を終わらせて私たちはらいはちゃんを連れて東町の花火大会までやってきましたー!いぇーい!
「みんなお疲れさまー」
「あれれ?花火って何時からだっけ?」
「19時から20時まで」
「じゃあまだ1時間あるし、屋台見に行こー!」
「あ!あそこにアメリカンドッグが売ってます!」
「あ!金魚すくいしませんか?」
「うん!やるー!」
私たちはこのお祭りの雰囲気をエンジョイしてる。うーん、祭りはやっぱりこうでなくっちゃ♪と、そんな祭りに相応しくない顔が1名・・・。
「はぁ・・・」
そう、らいはちゃんと一緒に来ているフータロー君だ。
「どうしたの、風太郎君。そんなお祭りに相応しくない顔して・・・楽しみが逃げるよー?」
そんなフータロー君にメガネを取られて素顔のままの六海がジュースを飲みながら声をかける。
「・・・・・・」
「え・・・何・・・?」
おっと、フータロー君。昼間は五月ちゃんと一緒にいたのに、今度は六海に・・・
「誰だ?」
ずこっ!見分けがつけられないだけかー。
「ええ⁉六海だよー!」
「なんだ六海か。ただでさえ同じ顔でややこしいんだ。メガネを外してくるんじゃない」
「六海だって好きでメガネを外してるわけじゃないもん!」
フータロー君の一言で六海は結構ご立腹だ。さらに二乃にメガネを預けられたままだからさらにイライラがたまってるんだろうなー。
「こら!上杉君、六海をいじめるんじゃありません!こんなにかわいいのに!」
浴衣を着て髪を結んでいる五月ちゃんはそう言って六海に抱き着いてきている。
「で、お前は誰だ?」
「ええ⁉私もですか⁉」
「いちいち髪型変えやがって。見分けられねーだろうが」
「五月です!どんなヘアスタイルにしようと、私の勝手でしょう!」
あーらら、六海だけじゃなくて、五月ちゃんまで怒らせるとはねー。
「あーあ。ダメだなー。女の子の変化があったり、髪型変えたりしたら、とりあえず褒めなきゃー」
私は女子への扱いが全くなってないフータロー君の隣に座る。
「ほら、浴衣は本当に下着を着ないのか、興味ない?」
「それは昔の話な。知ってる」
「本当にそうかなー?」
私はとりあえずフータロー君の反応を見るために少し浴衣をめくってぎりぎりって感じに一肌を見せる。
「!一花ちゃん!」
「一花!」
そんな私を見て六海と五月ちゃんが慌てる。
「なーんて冗談でーす!どう?少しはドキドキした?」
「・・・ウザ」
うわー、結構ドライな反応。ちょっとやりすぎたかなー?そう思ってると、私のスマホから着信の反応がある。この震えからして電話か。着信者は・・・芸能事務所関係だった。
実は私、中野一花はみんなには秘密にしていることがあります。それは私が、芸能事務所に所属している女優だということだ。半年前にスカウトされて、まぁ、今は名前のない役を何回かやらせてもらってる。電話が来たということは、お仕事の話かなー?
「あんたたち、こんなとこで何してんのよ?一花、行くよ?」
「ごめん、ちょっと電話」
私はみんなと少し離れて電話に出る。
「はい・・・。・・・え?今夜・・・ですか?」
え?今夜は花火大会・・・でも私情を持ち込むわけにもいかない。話は聞いておこう。
話を聞くには、結構大きな映画に出るはずのヒロイン役の女優さんが体調を崩したとかで映画の撮影に参加できなくなったんだと。それで急遽代役となる女優を探すためのオーディションが開かれるんだって。私が掴みたいと思っていた主役級の役・・・ぜひとも参加したい。
でも今日は姉妹と一緒に花火大会・・・どんな事情があっても外せない大切な行事・・・できれば花火大会の会場から離れたくない。
でも・・・もしこのチャンスを逃したら?このチャンスを棒にふって、二度とそんな話が来なくなってしまったら?この仕事を始めて、ようやく長女として胸を張れるようになったんだ。ここで評判が落ちたら、前のだらしない自分と逆戻り・・・それは、できない。
「・・・受けます。受けさせてください」
ごめんね、みんな・・・私は・・・みんなと一緒に花火は見られないよ。話がまとまって、社長が迎えに来る形で話は終わり、私はみんなの下に戻る。・・・なんて説明しよう・・・。
「お兄ちゃーん!見てみてー!四葉さんが取ってくれたの!」
私がどう戻ろうと思った時、四葉とらいはちゃんが戻ってきた。らいはちゃんの手には・・・うわ!大量の金魚!
「よ、四葉ちゃん・・・もう少し加減できなかったの・・・?」
「あはは、らいはちゃんを見てると、不思議とプレゼントしたくなっちゃって・・・」
「わかる!わかるよ四葉ちゃん!」
「あ!お兄ちゃんお兄ちゃん!これも買ってもらったんだー!」
そう言ってらいはちゃんは自分たちでもできる花火セットを見せてきた。
「それ今日1番いらないやつ!」
「だって待ちきれなかったんだもんー」
「いつやるんだよ・・・。四葉のお姉さんにちゃんとお礼言ったか?」
「あ!四葉さん、ありがとう!大好き!!」
らいはちゃんはお礼を言いながら四葉に抱き着いてきた。こ、これは・・・破壊力あるねぇ・・・。四葉が何でもプレゼントしたくなるわけだ。
「あーん♡らいはちゃんかわいすぎるよー♡お持ち帰りー♡」
「こら!お持ち帰りするな!俺の妹だぞ!」
「六海の言うとおり、らいはちゃんかわいすぎますー!私の妹にしたいですー!」
もうすでにらいはちゃんにメロメロな四葉と六海はらいはちゃんを頬ずりしている。
「・・・待ってくださいよ?私が上杉さんと結婚すれば、合法的に姉と妹に・・・」
「自分で何言ってるかわかってるー?」
四葉の発言に二乃は若干引いた様子だね。
「あんたも四葉に変な気起こさないでよ!」
「ねぇよ!」
フータロー君は二乃の気迫に押されて後ろに下がっていくと・・・三玖にぶつかって・・・おっとひじが三玖の胸に当たった⁉
「ああ!す、すまん!」
「い、いい・・・」
あはは・・・説明する雰囲気じゃないね。とりあえず合流しよっと。
「お待たせー!さ、行こー?」
「ん?どこか行くのか?」
「二乃がお店の屋上借り切ってるから」
「借り切るだと!!?ブルジョワか!!?」
あはは・・・そういう言い方もあるのかなー?とりあえず私たちが移動を始めると、二乃が止めてきた。
「ちょっと待ちなさい。せっかくお祭りに来たのに、あれも買わずにいくわけ?」
あれ・・・?
「「「「「・・・ああ!!」」」」」
ああ、あれかぁ!まだ買ってないね!
「そういえばあれ買ってない」
「もしかして、あれの話?」
「あれやってる屋台ありましたっけ?」
「お祭りだもん!絶対あれがあるよー!」
「早くあれ食べたいなー!」
「・・・なんだよ、あれって・・・?」
あ、そっか。フータロー君とらいはちゃんは知らないんだったね。じゃあ、教えてあげなきゃね。
「「「「「「せーの!」」」」」」
「かき氷!」
「りんご飴!」
「人形焼き」
「チョコバナナ!」
「焼きそば!」
「たこ焼き!」
あれ?全員バラバラだ。みんな一緒だと思ってたのに。まぁいいや。
「「「「「「全部買いに行こー!!」」」」」」
「お前らが本当に六つ子か、疑わしくなってきたぞ・・・」
こーら、思っててもそんなこと口にしない!
♡♡♡♡♡♡
あれからもうすぐで20時になろうとしているところだ。屋台でみんなのあれの屋台巡りで結構時間がたったんだね。
「らいは、あんまり離れると迷子になるぞ。ここ掴んどけ」
「はーい」
らいはちゃんはフータロー君の言葉に従って半そでの裾を掴みながら歩いていく。こうしてみると、やっぱり仲がいい兄妹なんだなー。それはそうと、さっきの人形焼きの屋台で五月ちゃん、まだ怒ってるねー。
「機嫌直しなよー」
「思い出しても納得がいきません!あの店主!一花にはおまけと言って私には何もなしだなんて!どういうつもりですか!同じ顔なのに!」
「そうだよ!六海だって今日メガネ外したのに・・・一花ちゃんばっかりずるーい!」
「そう言われてもねー・・・」
「・・・複雑な六つ子心」
三玖、それうまいこといってるつもり?
「らいはちゃーん!次は輪投げしよっか!」
「うん!やるー!」
「迷子になるなよー」
四葉はらいはちゃんを連れて輪投げの屋台へと向かっていった。
「あ!焼きそば焼きそば♪」
「あ、あっちにたこ焼きがあるー!行ってくるねー!」
「あんまりはぐれちゃダメだよー?」
私は五月ちゃんの付き添いで焼きそばの屋台に向かっていく。六海はその反対側のたこ焼きの屋台に向かっていった。
・・・どうしよう・・・もうすぐオーディションが始まっちゃう・・・。なんて言ってこの会場から離れよう・・・。私がそう悩んでいた時・・・
『大変長らくお待たせいたしました。まもなく花火大会が始まります』
花火大会開始のアナウンスが流れてきた。それを聞いた来客は花火を見ようと一斉に移動を始めた。
・・・あんまりやりたくない手段だけど、仕方ない。みんなには今回のオーディションがあることは伏せておいて、人ごみに紛れて移動しよう。そうすれば、みんなと離れられて、私は1人になることができる。本当はみんなに一言言っておいた方がよかったんだけ・・・そうも言ってられない状況になっちゃったしねー。
「よっと・・・すいません、ちょっと通りますよー」
私は人ごみに紛れながら奥へと進んでいって、ようやくあの込み具合の状況から脱出できた。ふぅ・・・きつかったぁ。私が安堵したと同時に・・・
パーンッ!バーンッ!ババーンッ!
夜空にきれいな花火が上がった。できることなら・・・姉妹みんなでこの花火を見たかったな・・・。みんな・・・こんなお姉ちゃんでごめんね・・・。そう思っていた時、スマホから電話の着信が出ている。着信者は・・・今回の芸能関係の人たちからだ。
「もしもし・・・はい。・・・少し、移動でトラブルが発生して・・・はい。そちらへ向かうのが遅れている状況でして・・・はい。撮影の際は大丈夫ですので・・・」
幸いまだオーディション開始時刻にはなってない。でも本当に急がねばならない時間帯であるのは確かなので、開始時刻になったらすぐオーディションを開始するみたい。なら早く社長と合流して、会場に向かわないと・・・
「一花!」
ふ、フータロー君⁉何で・・・て、理由はわかってる。みんなの誰かに頼まれて私を連れ戻しに来たんだろう。こんな時に限って・・・
「後でかけ直します」
私はいったんそう言って通話を切っておく。フータロー君に話を聞かれるのはまずいから・・・
「よかった・・・二乃が待ってる。早く店に戻るぞ」
そう言ってフータロー君は私の手をつかもうとした時、別の誰かが私の手と間違えてフータロー君の手をつかんできた。その相手は・・・
「君・・・誰?」
しゃ、社長ーー!!何でこんな最悪のタイミングでーー!!?
「あんたこそ誰だ!!?」
事情を何も知らないフータロー君は困惑の顔をしてる。
「一花ちゃんとどういう関係?」
フータロー君が・・・私をどう思ってるか・・・?それは・・・少し聞いてみたい気もするけど・・・。
「て、こんなこと聞いてる場合じゃなかった。さあ、行くよ、一花ちゃん!」
「え・・・あ、はい」
考えこんでるフータロー君をよそに社長は彼に構わず私を連れてこの場から離れる。
「知人ですけどーー!!?」
遠くからフータロー君のそんな声が聞こえてきた。
さ・・・最悪だ・・・よりにもよって姉妹とは無関係のフータロー君に社長の存在を知られてしまった!このままだともしかしたら私が女優の仕事をしてるって気づいて、みんなに言ってしまう可能性もあるかもしれない・・・!
「せっかくの花火大会だっていうのに、急な話で申し訳ないね、一花ちゃん」
「え・・・い、いえ・・・」
「でも一花ちゃんが受ける決心を持っていて僕はうれしいよ。これが成功すれば・・・本格的にデビューが決まるかもしれないよ!」
本格的のデビュー・・・それは私が求めているもので、目指すべき道。私の・・・やりたいこと。
でもそのためにも警戒すべきものができてしまった・・・そう、フータロー君だ。そんな口が軽い人ではないと思うから心配ないと思うけど・・・それでも心配はぬぐえない。それに、うまくいけば妹たちに私は花火は見られないことを伝えられるかもしれない。
「社長・・・もう少し時間をください!やるべきことができましたので!」
「え⁉ちょっと⁉一花ちゃん⁉」
自分が勝手なことをしてるのはわかってる。それでも・・・それでもちゃんとしておかないと私の気が済まない!私はすぐにフータロー君を探して花火大会会場に戻っていく。
花火大会終了まで、後40分
♡♡♡♡♡♡
『風太郎の六つ子捜索、六海発見!』
一花と意味不明な別れ方をした風太郎は困惑の中で三玖に見つけられた。その際に一花を捜索しようとしたが、三玖の足が痛めてしまってることに気付き、三玖を気遣って近場で三玖を休ませている。早いところ姉妹と合流したい風太郎にここであることに悩まされる。
あの社長が言っていた一花との関係・・・
先ほど話しかけてきた係員のよる質問、三玖とはどういった関係・・・
それらの問いにあまりの曖昧な答えで三玖は少し怒りつつも、悲し気な顔をしていた。それがどうにも風太郎には腑に落ちないのだ。
「あ・・・フータロー、あれ見て」
「ん?あれは・・・」
三玖が指をさした方向には六海が空を見上げながら絵を描いている姿だった。
「あいつこんな時まで・・・。ちょっと待ってろ。すぐに呼んでくる」
「うん・・・」
風太郎はここで三玖に待機を命じてすぐに六海の下へと向かう。
「六海」
「あ、風太郎君」
「お前こんな時に何やってんだ?絵なんて描いてる場合じゃないだろ」
「だって・・・今すぐに花火を描きたかったんだもん・・・」
風太郎は六海の持っているお絵描きノートを見てみる。そこには鮮明な花火の絵が描かれている。
「そんなもん後でいくらでも描けるだろ・・・。そんなことより、向こうで三玖が待ってる。いくぞ」
「三玖ちゃんが?うん、わかった」
三玖がいるとなれば六海は素直に顔を頷き、風太郎についていく。その際に風太郎はここで悩まされていることを六海に聞いてみる。
「なぁ・・・俺たちって、どういう関係?」
「え・・・何その質問・・・気持ち悪い・・・」
風太郎の質問に六海は本気で風太郎を引いていた。
「うーん・・・そうだなぁ・・・友達・・・というのは絶対違うと思うし・・・」
「おい」
友達関係までを否定され、風太郎は少しこめかみをひくひくさせる。
「あ・・・前に五月ちゃんが言ってた言葉が妙にしっくりくる。えーっと、なんだっけ・・・バーナー?それともパージー?」
「こんな時に忘れるなよ・・・」
六海がしっくりくる言葉を忘れて首をかしげてる様子に風太郎は呆れる。
「はぁ・・・もう少し自分で考えてみるわ」
「うん。六海もその方がいいと思うよ。答えはいつか出るんだしさー」
「それをお前に言われたらおしまいだ」
「それどういうこと⁉」
風太郎の何気ない言葉に六海は驚愕する。すると六海は遠くにある人物を見かける。
「あ、風太郎君、あれ・・・」
六海が発見した人物は五月だった。
「これで迷子なのは一花だけか・・・。六海、とりあえず五月連れていくからお前は・・・」
「わかってる。三玖ちゃんとこに行ってるね」
六海は三玖がいる近場へと向かい、風太郎は迷子状態になってる五月の下へと向かっていった。
♡♡♡♡♡♡
「フータロー君・・・いったいどこに・・・?」
私はフータロー君を探して祭り会場を回りに回った。その甲斐もあって、ようやくフータロー君を見つけた。近くには・・・五月ちゃんもいた。
「今はそれより一花です。どこに行ったのでしょう?」
あー、五月ちゃんも私を探してるんだー。五月ちゃんまでいると面倒だなぁ。とりあえず一声。
「よかった。五月ちゃんと合流できたんだね」
「!一・・・」
フータロー君が何かを言う前に私は人差し指で少し黙らせてフータロー君の手を引く。なるべく五月ちゃんから離れて。
「こっち来て」
「なっ・・・」
「花火見た?すごいよね?」
「おい!どこに行くんだ!6人で見るんだろ⁉」
「ははは、いいからいいから」
私はとりあえず笑ってフータロー君を誰もいない路地裏に連れていく。
「・・・それでね、さっきのことは秘密にしておいて」
私はフータロー君に向かって逆壁ドンをしてこう言う。
「私は・・・みんなと一緒に花火を見られない」
06「今日はお休み」
つづく
六つ子豆知識
『六つ子の合計バストサイズ』
上杉ロボ「今回ハ6人ノバストサイズノ合計ヲ発表シマス」
五月「なんですか、このロボは⁉」
三玖「こんなの測らなくてもわかる」
二乃「88×6で528センチでしょ?」
ブブーッ!
六海「えっ⁉違うの⁉」
上杉ロボ「529センチデス」
二、三、四、五、六「9・・・1センチ・・・」
一花「はい!この話やめやめ!」
六つ子豆知識、今話分終わり