「私は・・・みんなと一緒に花火を見られない」
9月30日の東町の花火大会の日に代役オーディションを行われることになったからここを離れたかったんだけど・・・その前に社長の存在をフータロー君に知られちゃったからね。ちゃんと黙ってもらうようにに念には念を入れておかないとね。
「・・・なんで・・・なんだ・・・?」
うーん・・・なんて説明したらいいんだろう・・・。・・・うん、幸いにも私が女優であるということを知らないわけだし、オーディションの件は伏せておいて、仕事が入ったって説明。これでいこう。
「急なお仕事頼まれちゃって・・・これから仕事場に向かわなくちゃいけなくなったの。だから、花火は見に行けない」
「・・・・・・」
フータロー君自身思うところがあるのか、神妙な顔つきになってるな。少し和ませてあげるか。
「それに、ほら、同じ顔が6人もいるんだし、1人ぐらいいなくても・・・」
「それは無理があるな。六つ子なんだし」
ですよねー。
「そういうわけだから、ごめんね?人、待たせてるから」
とりあえずはくぎは指しておいたから、このまま社長と合流しなくちゃ。
「お、おい!ちょっと待てって!ちゃんと説明しろよ!あいつらが・・・どんだけこの花火大会を楽しみにしてると思ってんだ!」
うん・・・それは私も知ってる。私自身もそうなんだから。だから・・・フータロー君がそこまでやってくれることは素直にうれしいよ?でも・・・わからない。
「なんで?」
「え?」
「なんでお節介、焼いてくれるの?」
「・・・!」
「私たちの家庭教師だから?」
そこだけがわからない。なんでただの家庭教師が私たちのことを思って、こんなお節介を焼いてくれるのか。家庭教師の立場がなかったら、私たち、赤の他人なのにさ。
「・・・確かに・・・」
「どうして?」
「確かに!客観的から見て、なんで余計な面倒見てんのって感じだよな⁉なんで今まで気が付かなかったんだ俺⁉」
あら、ようやく気が付いたんだ。ちょっと遅いって感じはするけど、まあいいや。
「うん。じゃあ、まぁ、そういうことだから」
変に考えこんでいるフータロー君を置いてこの場を去ろうと思った時・・・
「あ!やば!」
私を探している社長を見つけちゃった。や、オーディションに行くんだから別に苦ってわけじゃないんだけど・・・今はちょっとまずい状況だ。
「どうしよう!仕事仲間がこっちに・・・」
「はぁ?」
「事情を話さず黙って抜けてきたから・・・怒られちゃう・・・」
「知らねぇよ」
怒られるのが嫌というわけじゃない。私が一方的に去っていったそれは当たり前だしね。ただ・・・抜け出した原因がフータロー君にあるということがばれると、いろいろと面倒なことになる。それは何としても避けたい。
「んん?あれ・・・あのおっさん・・・今日お前といた・・・」
「大変!こっちに来る!」
社長がこっちに近づいてくる!奥に逃げようとしても、間に合わないし・・・そうだ!
「ちょっとそのままで・・・」
「お・・・おい⁉」
私はフータロー君に近づいて、社長に顔が見られないようにフータロー君でカバーするように抱きしめた。やば・・・この状況・・・恥ずかしくなってきた・・・///でも表は見られない・・・社長に見つかるリスクが大きい・・・!
「・・・おい、あのおっさん、近くに座りやがったぞ。ばれてはいないが・・・」
「そ、そう?よかった・・・」
ばれなかったのはいいけど、近くにいるのかー。しばらく出られないね。
「・・・お、おい・・・いつまでこうしてればいいんだ・・・」
「ごめん・・・もう少し・・・」
うーん、それにしてもこの体勢、考えれば考えるほど・・・
「私たち傍から見たら、恋人に見えるのかな?」
「まぁ・・・欧米じゃあるまいし、この状態は恋人に限られるだろうな」
やっぱりそう見えちゃうかー。
「あはは・・・本当は友達なのに、悪いことしてるみたい」
「・・・俺らって、友達なのか?」
「えっ?」
え、私は家庭教師関係なく、普通に友達同士だと思ってるけど・・・
「あはは・・・えっと、ハグだけで友達を超えちゃうのはさすがに早いかなー?」
「そ・・・そうじゃなくて!俺はただの雇われ教師だ!それさえなければ、お前たちと接することもなかっただろ?そんな関係を友達というには違和感が・・・」
うっわ・・・なんていうか・・・
「何それ、めんどくさっ!」
「えっ?」
「私は友達だと思ってたのに、やっぱりフータロー君は違ったんだ。傷つくな~」
「いや、俺は・・・」
私も私でめんどくさいことを考えてることもあるけど、さすがにフータロー君のような考えは持ち合わせてないから非常にめんどくさいなー。
「もしもし・・・」
そんなことを考えてると路地裏の入り口近くに座ってる社長が電話してる声が聞こえてきた。相手はたぶんオーディションの関係者だろうな。
「申し訳ございません!少し、トラブルがあって・・・撮影の際は大丈夫ですので・・・」
「・・・撮影?」
き、聞かれちゃった。でも・・・フータロー君はまだ本当のことに気付いてないはず・・・
「お前の仕事って・・・」
「実はあの人、カメラマンなの。私はそこで働かせてもらってる」
嘘は言ってない。カメラを扱っているのは事実だしね。
「カメラ・・・アシスタント・・・」
まぁ、実際は違うけど・・・似たようなものかな?こういう時、何て言えばいいのかな・・・?・・・ああ、そうだ。前に六海が言ってたことがあったな・・・。
『ねぇ、なんで六海は絵を描くの?』
『楽しいから!』
『楽しい?』
『うん・・・この風景を美しく、いい絵が描けるように試行錯誤する・・・その頭の回転が何よりも楽しくって・・・』
私も女優の仕事をやって、今なら六海の気持ちが、すごく理解できる。
「・・・うん。いい画が取れるように、試行錯誤する・・・今はそれが何より楽しいんだ」
ははは・・・私今、六海と同じこと言ってる。案外似た者同士なのかな、私と六海は。
「そんなことしてて大丈夫なのかよ?お前たちは勉強に集中しなきゃ、進学すら怪しいんだぞ?」
まぁ、フータロー君の言いたいことはわかってるつもりだよ。私はやりたいことをやってるからいいんだけどさ・・・フータロー君は?
「フータロー君は、何のために勉強してるの?」
何かやりたいことでもあるのかな?でもそれは、勉強と関係があるのかな?
「・・・それは・・・」
フータロー君が口を開いた時・・・
「一花ちゃん!」
「!しま・・・っ!」
や、やば・・・社長に見つかった⁉
「見つけた!」
そう言って社長は・・・私たちがいる路地裏とは別の方向へ・・・て、え?
「こんなところで何やってるの⁉」
「えっ・・・おじさん、誰・・・?」
「言い訳は後で聞くから!早く来て!」
「えっ・・・ちょっと待って・・・え・・・?」
社長が引っ張り出してきた子は・・・え⁉
「六海⁉」
「何っ⁉」
「もしかして、私と間違えて・・・⁉」
あの顔は見間違いようがない・・・確かに六海だ!そういえば・・・社長に私たちが六つ子だっていうの忘れてたかも・・・。しかも六海は今メガネを外してるから普通の人からは見わけがつけられないんじゃあ・・・!
「待って・・・その子は・・・違うんです・・・」
「!三玖!」
「ふ、フータロー・・・一花・・・」
社長と六海の次に出てきたのは・・・少し痛そうな顔をしながら走ってきた三玖だった。なんか若干髪型を変えてるけど、今はそれどころじゃない!
「いったい何があった?なんであいつがあのおっさんに・・・」
「わかんない・・・私が目を離したすきに、あのおじさんが来て・・・」
「私と間違えて連れていったと・・・?」
「うん・・・」
なんてことだ・・・メガネを外して参加っていう提案が裏目に出ちゃうとは・・・。
「とにかくあいつらを追うぞ!三玖、お前は足怪我してんだから無理すんな」
「そういうわけにはいかない・・・私は・・・六海のお姉ちゃんだから・・・。そう思えば・・・こんな痛みなんて・・・」
三玖・・・そんなにたくましく・・・
「言っても聞かねぇか・・・仕方ねぇ。見失う前にさっさと追いかけるぞ!」
「うん」
「う、うん!」
三玖の足の方も心配だけど、今は六海!きっと今のあの子は心細い思いをしてるはず・・・。私たちはすぐに社長を追いかけて人ごみの中を走っていく。
「いた、あそこだ!今なら追いつける!」
とにかく私は社長に気付いてもらうように電話を入れてるけど・・・電波が悪いせいか繋がらない・・・!
「電話は?」
「ダメ。繋がらない」
「お前、なんで仕事抜け出してきたんだよ?」
フータロー君は三玖に聞こえないようにそう尋ねてきた。そんなの決まってる。フータロー君に仕事の秘密にくぎをさすこと、妹たちに会場を離れることを伝えるためだ。でも・・・
「・・・言いたくない!どうやらフータロー君とは友達じゃないらしいし!」
「そうは言ったが・・・」
これでも傷ついてるんだよ?乙女の心を傷つけた罰だよ。
「あ・・・あの・・・おじさん・・・六海は・・・一花ちゃんじゃなくて・・・」
て、こんなことしてる間にも六海が連れていかれちゃう!早く何とかしないと・・・。そう思った時・・・少し立ち止まってたフータロー君が急に走り出して・・・社長から六海の手を引いてこっちに引き戻した。
「ふ、風太郎君・・・!」
「き、君はさっきの・・・!なんだ君は!君はこの子のなんなんだ⁉」
「・・・俺は・・・」
!フータロー君が・・・私をどう思ってるか・・・
「俺は・・・こいつの・・・こいつらの・・・
パートナーだ。返してもらいたい」
!!パートナー・・・それが・・・フータロー君が導き出した答え・・・。
「何をわけのわからないことを・・・!」
「よく見てくれ!こいつは一花じゃない!」
「あ、あの・・・」
「その顔は見間違いようがない!さあ早く・・・
うちの大切な若手女優から手を放しなさい!!」
しゃ、社長・・・どうしてこのタイミングでそれを言うんですかぁ・・・。
「「「「・・・えっ⁉」」」」
ほらぁ・・・フータロー君も三玖も六海も驚いてるじゃないですか・・・って、社長も驚いてる・・・。
「えええ⁉一花ちゃんが3人⁉」
「・・・若手女優って・・・カメラで撮る仕事って・・・そっち!!?」
ば、バレた・・・フータロー君だけじゃなくて・・・よりにもよって三玖と六海に・・・!
「ど、どどど、ど、どういうことこれ⁉」
「え、ええっと・・・一花は・・・私たちの長女で・・・あなたが連れだしたのが・・・末っ子で・・・私が・・・三女です・・・」
「つ・・・つまり・・・六つ子の姉妹なんです・・・私たち・・・」
今でも驚きを隠しきれてない社長に戸惑いながらも説明する三玖。私がそれを補助をつける。
「い、一花が・・・」
「「一花ちゃんが・・・」」
「「若手女優って・・・」」
「六つ子って・・・」
「「「マジ⁉」」」
案外フータロー君と六海と社長って意気があったりする?
「・・・そ、そうだ!こうしてる場合じゃない!行こう、一花ちゃん」
本当の目的を思い出した社長は私の手をつかんで花火大会会場から離れようとする。
「お、おい待てって!」
「止めないでくれ。人違いをしてしまったのは、本当にすまなかったね。でも一花ちゃんはこれから、大事なオーディションがあるんだ!」
「そんな・・・」
社長の言い分に納得がいかない六海は異を唱える。
「そんなの関係ないもん!こっちの花火の約束の方が最優先だもん!」
「・・・確か、六海ちゃんっていったかな?君の言いたいことはわかるよ。でもこれは、一花ちゃんの意志なんだ。尊重してくれるね?」
「・・・そんなの知らないもん・・・そんな急な話・・・ないもん・・・聞いて・・・うぐ・・・ないもん・・・ひっく・・・」ウルウル・・・
「六海・・・」
今にも泣き出しそうな表情に三玖が優しく抱きしめる。ダメだな・・・私・・・大切な妹を泣かせちゃうなんて・・・長女失格だよ・・・。
「おい、一花!お前はそれでいいのかよ!妹まで泣かせておいて!」
よくないに決まってる。私だってみんなと一緒に花火を見たかったよ。でも・・・これは私が選んだ道なんだ。後戻りはできない。だから・・・
「みんなによろしくね」
私は自分の本心を隠す。みんなに悟られないように、作り笑いを浮かべて。
「一花ちゃん急ごう。会場は近い。車でなら間に合う」
私はみんなをこの場において、社長と一緒に花火大会会場を後にした。ごめんね・・・みんな・・・本当にごめん・・・必ず謝りにいくから・・・。
♡♡♡♡♡♡
会場に出た後、私は道路沿いの道のりで車を取りに向かっている社長を1人待ってる。もう進むしかない・・・戻ることは許されないんだ。
「一花!」
「!フータロー君・・・」
ついてきたんだ・・・もう来ないと思ってたからびっくりしちゃったよ。
「髭のおっさんは?」
「車取りに行ってるとこ」
「・・・本当に戻るつもりはないんだな」
うん。これが私の選んだ道だから。そして・・・私はもう1度君に聞かないといけないことがある。こんなところまで追いかけてきてさ・・・
「フータロー君、もう1度聞くね。なんでただの家庭教師の君が、そこまでお節介焼いてくれるの?」
「俺とお前たちが、協力関係にあるパートナーだからだ。ただ家庭教師だからというわけじゃない」
パートナー・・・そう、パートナーか。それなら私でも納得がいく。なら、協力関係にあるなら・・・ちょっとくらい、話しても問題ないか。私はちゃんと説明するためにパッドを操作して台本のページをフータロー君に見せる。
「台本・・・?」
「半年前、社長にスカウトされて・・・それからちょくちょく名前のない役をやらせてもらってた。結構大きな代役オーディションがあるって教えてもらったのがついさっき。これが成功したら、いよいよ本格デビューってとこ」
「それがお前のやりたいことか・・・」
そういうことになるね。あ、そうだ。いいこと思いついちゃった♪
「せっかくだから、練習相手になってよ。相手役がフータロー君ね♪」
私の出した提案にフータロー君は嫌そうにしながら照れてる。
「い、嫌だよ・・・なんで俺が・・・」
「協力関係でしょ?」
「・・・棒読みしかできないからな」
「やったー♪全然オッケー♪」
よしよし、これなら少しはオーディションの合格率が上がるかも♪言ってみるもんだね。
「じゃあ・・・いくぞ」
「・・・うん。お願い」
私がこれから受けるオーディションの映画は、よくある学園もの。出すお題はそのクライマックスの感動シーン・・・仕事と同じ要領で・・・。
「そ、卒業おめでとう」
「先生・・・今までありがとう。あの教室で先生に出会って・・・初めて私は・・・」
「・・・っ」
「先生・・・あなたが先生でよかった。あなたの生徒でよかった」
・・・ふぅ・・・こんなものかな?・・・て、あれ?なんだかフータロー君、感激してる?
「あれ?もしかして・・・私の演技力にジーンと来ちゃった?」
「あなたが先生でよかったなんて・・・お前の口から聞けるとは!」
「そっちか!」
なんだかショック受けちゃうなー。私の演技で感動しないなんてー。私が少しふくれっ面になっていると、社長の車が到着した。
「あ、社長の車だ。じゃあ、行くね。とりあえず役、勝ち取ってくるよ♪」
私はフータロー君にそう言って、そのまま社長の車に乗ろうとした時・・・
「おい、待て」
突然フータロー君に止められて・・・
パンッ!
え・・・?ふ、フータロー君が・・・私の頬を触って・・・
ふに・・・
「ほぇ・・・?」
今度は私の頬を軽くつねってきた・・・え、本当に何?
「その作り笑いをやめろ」
・・・・・・えっ?
「あ・・・あははは・・・え?」
「お前はいつだってそうだ。学校で四葉の授業の提案を断った時も・・・路地裏にいた時も・・・そのまま行こうとした時も・・・大事なところで笑って本心を隠す・・・正直、ムカッとくるぜ」
そ、そんな細かいところまで見抜くなんて・・・
「お前たちをパートナーって言ったよな?なぜ本心を隠す?」
「えーっと、何のことやら・・・」
「なら、俺が六海の件で悩んでいた時に話したこと・・・そしてあの時の笑顔・・・あれは作り笑いか?違うだろ」
「そ、それは・・・」
あの件は違う・・・本当にフータロー君と六海が仲良くなってほしいから・・・
「・・・あくまで本心で話さないなら、こっちの本心を一方的に話すぜ」
フータロー君の・・・本心?
「俺の家には借金がある」
「!」
「その借金を返すために家庭教師をやってる。だが、お前たち6人には手を焼かされっぱなしだ。俺は確かにお前たちの家に3回も行った。だが勉強したのはその3回目の1回だけ、しかも集まったのは3人だけという体たらく。おかげで結局、90000円という給与を中途半端な結果でもらっちまった。せめてもらった分の義理は果たしたい・・・これくらいじゃ足りないくらいだが・・・これが俺の本心だ。以上」
フータロー君・・・そこまでのことを考えて・・・
「お前はどうなんだ?余裕あるふりして・・・なんであの時、震えてたんだよ?」
「・・・っ!」
「俺の本心は話した。今度はお前の本心を話せ」
私の・・・本心・・・
「・・・この仕事を始めて・・・やっと、長女として胸を張れると思ったの。一人前になるまでは、あの子たちには言わないって決めてたから・・・急にオーディションの話が来たこと、言えなくて・・・花火の約束あるのに、黙ってきちゃった。でも結果として・・・六海を泣かせちゃった・・・これでオーディション落ちたら・・・みんなにあわす顔がないよ・・・」
私は・・・六海のあの泣き顔が忘れられない・・・ずっと後悔してる・・・私、最悪だよ・・・。
「・・・もう花火大会終わっちゃうね・・・」
せっかく楽しみにしてたのに・・・こんな結果になっちゃうなんてね・・・。
「それにしても、君が私の細かな違いに気が付くなんて思わなかったよ。お姉さん、びっくりだ」
「俺が、そんな敏感な男に見えるか?」
「自覚はあるんだ」
それはそれでお姉さん驚きだ。
「・・・お前の些細な違いなんて気づくはずもない。ただ・・・あいつらとは違う笑顔だと思っただけだ」
「!」
それで、私の作り笑いを見抜くなんて・・・これまたびっくりだ。
「まいったなぁ・・・フータロー君1人騙せないなんて・・・自信なくなってきたよ」
「演技の才能ないんじゃね?」
「わお!ド直球だね!」
そんなド直球でそんなこと言うとは思わなかったよ。
「言っておくが、その方が俺にとっては好都合だ!寄り道せずに勉強に専念してくれるからな!」
むっ!今フータロー君聞き捨てならないこと言った!
「寄り道なんかじゃない!これが私の目指してる道だよ!」
誰が何と言おうとも、私はこの道を進む。たとえ妹たちに反対されても。これだけは絶対に曲げたくない!
プップー!
「一花ちゃん何やってんの!早く乗って!」
「は、はーい!」
社長を待たせすぎちゃったかな。早くいかなくちゃ・・・
「・・・まぁ、あいつらに謝る時くらい、付き合ってやるよ。パートナーだからな」
「!」
フータロー君・・・ありがとう・・・。少し、気持ちが楽になったよ。私、この役を絶対に勝ち取って見せる。私はすぐに車に乗り、オーディション会場へと急いでいく。
♡♡♡♡♡♡
オーディション会場にたどり着いた私は急いで更衣室に向かってレッスン着を着用して、オーディションのやっている部屋へと急いで駆け付ける。お願い・・・間に合って・・・!
「遅れてすみません!!中野一花です!」
私が部屋に入った瞬間、面接の担当者さんはどうするべきか話し合っている。その際に私も怒られてしまった。何でもさっき最後の子の演技が終わったところでオーディションが終わりかけてたらしく、そこで私が駆け付けてきたから当初の予定と狂ってしまったらしい。でも、事前に遅れることを伝えたこと、社長の機転と私のやる気に免じて特別にオーディション参加を認めてくれた。よかった・・・何とかなった・・・。
「じゃあ、準備はよろしいですか?」
「よろしくお願いします」
私の方はいつでも準備万端。後は自分を信じるだけ・・・。撮影の際は緊張はするけど・・・今は不思議と緊張はしなかった。今、自信に満ち溢れてる。
「卒業おめでとう」
先生・・・今までありがとう。あの教室で先生に出会って・・・初めて私は・・・」
私、今うまく笑えてるかな・・・?こんな時・・・みんなならどうやって笑うんだろう・・・?
四葉なら・・・三玖なら・・・六海なら・・・五月なら・・・二乃なら・・・
みんな、どんな風に笑うのかというのが・・・頭に浮かび上がる。そして・・・私たちの先生となっているフータロー君なら・・・。そう考えると私は・・・
「先生・・・あなたが先生でよかった・・・あなたの生徒でよかった!」
今、思いっきり笑えてるような気がする。
♡♡♡♡♡♡
『第14回秋の花火大会は終了しました。ご来場いただき誠にありがとうございました』
無事オーディションが終わったと同時に、花火大会が終わっちゃった。社長と一緒に会場を出るとそこにはフータロー君がいた。待っててくれてたんだ・・・て、え?
「・・・完全に目を開けたまま寝てる・・・怖・・・」
目を開けたまま寝るって・・・ある意味すごいけどね・・・
「・・・は!え?何?寝てないけど?目を閉じてただけだけど?」
「どこから指摘したらいいのか・・・」
ていうか、自分じゃ気付いてないんだね・・・。
「オーディションは終わったのか?」
「うん。おかげさまで」
「で、結果はどうだったんだ?」
「うーん、どうだろうね・・・」
今回のオーディションの結果は後日連絡で発表されるからわからない。こればっかりはあっちが決めることだしね。
「どうも何も最高の演技だった。私は問題なく受かったとみているね」
「そ、そうか・・・」
うーん、まぁ、あれは演技というより、自然体を出したって感じだけどね。
「いやぁ・・・一花ちゃんの前でこういってはなんだけど、一花ちゃんがあんな表情を出せるなんて思わなかったよ」
社長がそうまでいうとは・・・結構自信がわいてきたよ。
「それを最大限まで引き出したのは、おそらく君だ」
「そう、なのか・・・?」
うん、それは間違いない。フータロー君のおかげだよ。
「私も、個人的に君に興味が湧いてきたよ♪」ちゅっ・・・♡
「えっ・・・」ぞわぁ・・・
ありゃりゃ・・・フータロー君、社長に目をつけられたね。こりゃ大変だ。
「と・・・とにかく用事が終わったなら一花を借りていくぞ!」
「へ?」
「ま、待ちたまえ!どこへ行くんだね⁉」
フータロー君は社長の制止を気に留めず私を連れだしてどこかへ向かっていく。
♡♡♡♡♡♡
「フータロー君、どこへ向かってるの?」
どこへ向かっているのかわからない私はフータロー君に尋ねてみた。
「近くの公園だ。あいつらが待ってる」
あいつらって・・・言うまでもなく妹たち・・・だよね・・・。
「・・・みんな怒ってるよね・・・花火大会見られなかったこと・・・」
花火大会は終わってしまった・・・結局みんなで揃うことはなかった・・・。いくらオーディションが受かっても、きっとみんなは・・・
「そうだな。だが・・・花火を諦めるにはまだ早いんじゃないか?」
「え・・・?」
私が公園を見てみるとそこには・・・花火セットを使って花火を楽しんでいる妹たちの姿があった。
「あ!一花に上杉さん!おかえりなさーい!」
四葉が私たちに気付いたと同時にみんなが私たちに顔を見合わせる。
「打ち上げ花火と比べれば、ずいぶん見劣りするがな」
「上杉さん準備万端です!我慢できずに先におっ始めちゃいましたー!」
みんな・・・花火大会が終わっても・・・私を待っててくれて・・・。
「一花ちゃーん!!」
「わっ!」
六海は私を見るなりうれしそうな顔しながら抱きしめてきた。
「一花ちゃん、一花ちゃん、一花ちゃんだー!わーい、わーい!」
「六海・・・苦しいよ・・・」
六海は私を抱きしめながらうれし気にぴょんぴょん飛び跳ねてる。
「風太郎君、ありがとう!一花ちゃんを連れてきてくれて!」
「礼には及ばん。四葉も、お前が花火を買ってたおかげだ。助かったよ。それに・・・らいはの面倒も」
らいはちゃんは遊び疲れたのは近くのベンチでぐっすりと眠ってる。
「あ、いえ。どちらかというと、私が面倒みられてたような・・・にしし・・・」
「君、五月を置いてどっか行っちゃったらしいじゃない。この子、半べそだったわよ?」
あ・・・ああー、私がフータロー君を路地裏に連れていった時のことか・・・なんか罪悪感が・・・。
「え!二乃ちゃん、それ本当⁉」
「に、二乃!そのことは内緒だって・・・」
「わ、悪い・・・」
「あんたに一言言わなきゃ気が済まないわ!」
そう言って二乃はフータロー君にづかづかと近づいていって・・・
「お!つ!か!れ!」
「・・・紛らわしい・・・」
一応は労いの言葉ってことでいいのかな?て、そんなことより・・・
「五月・・・」
「さ、一花も花火しましょうよ。三玖、そこにある花火、取ってください」
「うん・・・」
三玖は五月に言われて近くにある花火を取ってかなり遠くから手渡していく。
「はい・・・」
「遠くありません?」
「はい、四葉ちゃんの花火」
「ありがとう!」
「みんな集まったし、本格的に始めましょっか」
みんなそれぞれ花火を持ち始めて、花火を再開しようとする。でもその前に・・・みんなに謝らないと・・・。
「みんな・・・ごめん!私の勝手で、こんなことになっちゃって・・・本当にごめんね・・・」
私はみんなに頭を下げて誠心誠意に謝る。
「そんなに謝らなくても・・・」
「まぁ・・・一花も反省してるんだし・・・」
「全くよ!何で連絡入れなかったのよ?今回の原因の一端はあんたにあるわ」
返す言葉もないよ・・・二乃に怒られて当然だよ・・・。
「・・・後、目的地を伝え忘れたアタシも悪い」
え・・・二乃・・・?
「私は、自分の方向音痴に嫌気がさしました」
五月ちゃん・・・
「私も・・・六海から目を離したばっかりに・・・ごめん・・・」
三玖・・・
「六海も・・・わがまま言って・・・ごめんなさい・・・」
六海・・・
「よくわかりませんが・・・私も悪かったということで・・・屋台ばっかり見てしまったので・・・」
四葉・・・みんな・・・
「はい、あんたの分」
私はみんなのぬくもりを感じ取りながら、二乃から渡された花火を受け取る。
「ねぇねぇ、ママがよく言ってたこと、覚えてる?」
「忘れるわけないじゃないですか。誰かの失敗は6人で乗り越えること。誰かの幸せは6人で分かち合うこと」
「喜びも」
「悲しみも」
「怒りも」
「慈しみも」
「六海たちで・・・」
「全員で六等分ですから!」
私たちは気持ちを分かち合いながら一斉に花火に火をつける。その時についた花火の火花は、本当にきれいだった。私たちは今の時間を忘れて、めいいっぱい花火を楽しんだ。今日あった散々な出来事を、今は忘れて、今という瞬間を精いっぱいに。
「本日のメイン、打ち上げ花火やるよー!」
「待ってましたー!」
六海が取り出したのは私たちでもできる小さな打ち上げ花火だった。そして六海は私にライターを渡してきた。
「1、の合図で一花ちゃん、点火よろしくー!」
「ふふ、はいはい」
私は六海からライターを受け取る。
「カウントダウンいくよー!6!」
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」
1の合図で私は打ち上げ花火に火をつける。そして・・・
「「「「「「0!」」」」」」
パーンッ
0の瞬間で花火は打ちあがり、小さな火花が夜空を舞う。今年の花火は、今までの中で1番しょぼくて、1番小さく・・・1番楽しくて・・・1番思い出に残る美しさだった。
「残り6本」
「じゃあ、好きなのを選びましょう」
「「「「「「せーの!」」」」」」
みんな各々で好きな花火を手に取っていく。
「あ、やったー!」
「ふふ」
「これです!」
「へへ、ねずみ花火ー!」
みんな好きな花火が取れていく中、私が手に取った花火は三玖と被ってる。
「あ・・・」
「あ、珍しいね、同じの選ぶなんて」
今日はみんなに迷惑をかけちゃったし・・・三玖の好きなものを尊重したいし、私は残った花火をやるか。
「私はこっちでいいよ。それは譲れないんでしょ?」
「!」
私の心情を知ってか三玖は少し目を見開かせた後、線香花火に火をつける。
「三玖ー!線香花火より、こっちの派手な方が面白いよー!」
「私はこれでいい」
「三玖ちゃんって線香花火好きだったんだー」
「うん・・・好き・・・」
ふふ、あっちはあっちで楽しそうだな。さて、と。じゃあ私はそろそろお礼を言いに行きますか。今回の貢献者である、フータロー君に。
「まだお礼言ってなかったね。応援してもらった分、君に協力しなきゃ。パートナーだもんね。私は一筋縄じゃいかないから、覚悟しててよね♪」
・・・て、さっきからフータロー君無反応だな・・・いったいどうした・・・て・・・
「・・・zzz・・・」
ま、また目を開いて寝てる・・・。もう・・・しょうがないなぁ・・・。
「・・・頑張ったね。ありがとう」
私はベンチに座って眠っているフータロー君の瞼を閉じさせて、膝枕をさせてあげる。
「今日は・・・おやすみ」
07「全員で六等分」
つづく
六つ子豆知識
『六つ子で1番モテるのは?』
三玖「6人の中で1番モテるのは一花」
六海「六海、前に男子生徒に告白されてると見たー!」
四葉「クールビューティーな感じがいいのかなー?」
一花「そんなことないよ!四葉だってモテると思うよー?私が思うに四葉のモテ度は姉妹の中で五本の指に入ると思うね!」
四葉「やったーーー!!」
六つ子豆知識、今話分終わり
次回、五月視点