「・・・ん・・・んん・・・」
私が目を覚ますといつも見慣れた私の部屋が視界に映り込んできました。今時間は・・・7時30分を回っていました。昨日泣き疲れて眠ってしまったようですね・・・。
「・・・あれ?」
私はふと自分がいる場所に違和感を覚えます。昨日私が眠ったのは六海の膝の上だったはず・・・それがなぜベッドで眠っていたのでしょう?そんな疑問を抱きながらベッドから起き上がり、私の机を見てみますと、置手紙がありました。この字からして六海が書いたものですね。なになに・・・。
『おはよう、五月ちゃん。ぐっすりとよく眠ってたね。今日は六海が朝ごはん作るから楽しみに待っててね』
なるほど・・・私をベッドまで運んだのは六海でしたか。私の心配をしてくれて・・・あの子には少し申し訳ないことをしましたね。しかし・・・やっぱり心の中の靄は一向に晴れません。いざ上杉君に顔を合わせると、なかなか自分から話を切り出せないのですから・・・。
くぅぅ~・・・
・・・こんな時にまでお腹は正直ですね。今は考えても埒があきません。とりあえず今着ているパジャマから私服に着替えます。今日は日曜日ですので学校をお休みです。着替えを終えてから部屋を出てリビングへ向かうと、すでに朝食をとっている六海と二乃、一花がいました。
「あ、五月ちゃんおはよー!牛乳飲む?」
「おはようございます。ありがたくいただきますね」
「おはよう」
「おはよ、五月ちゃん。見てよこの朝食!六海が作ったんだって!」
食卓には今日の朝食がきれいに並べてありました。おいしそう・・・これを・・・六海が・・・?
「あははー、まぁ全部二乃ちゃんの手を借りてなんだけどねー」
「当たり前よ。あんな危なっかしい手つき、とても見てられなかったわ。下手したら三玖以上の不格好な料理が出来上がるかもしれなかったんだから」
「いやー、1人でもいけると思ったんだけど・・・料理って難しいね」
六海は照れながら頭をかいています。六海はこれまで1度も料理を作ろうとした経験はありません。あったとすれば調理実習の時だけ、それ以外では手を付けようともしませんでした。慣れない料理を挑戦したのは全部私のためだということは置手紙でわかっていますから本当にうれしい限りです。それにしても・・・
「一花が休日のこんな時間に起きてるなんて、珍しいですね」
「六海たち6人の中じゃ1番遅いからなおさらびっくりだよね。本当、どうしたの?」
「いやー、それがね、昨日三玖は私の部屋で寝ることになったでしょ?それが朝になったらいつの間にかベッドからいなくなってたから慌てちゃって・・・」
「三玖を探しに行ったっきり、四葉も帰ってこなかったわね」
なるほど・・・今この場に三玖と四葉がいないのはそういうことだったのですね。まぁ、あまり遠くには行ってないとは思いますけど・・・。
「彼は?」
「さあ・・・まだ寝てるんじゃないの?男の子って起きるの遅いねー」
私が言っている彼とは言うまでもなく、昨日私たちの家に泊まった上杉君のことです。
「あいつ本当に泊まったのね。まぁ、それも後少しの辛抱だわ」
「・・・・・・」
「二乃も勉強参加すればいいのにー。案外楽しいよ?」
「お断りー。五月、あんたは絆されるじゃないわよ?」
絆されるなんて・・・そんな人を悪者みたいに・・・。それに・・・今の私と彼は、それとは程遠い立ち位置にいます。
「まだ意地張ってるのー?素直になればいいのにねー」
六海、あなたはそう簡単にいいますけどね・・・私と彼とはまず相性が悪いんですよ。
「・・・どうも彼とは馬が合いません。この間も諍いを起こしてしまいました。些細なことでむきになってしまう自分がいます。私は、一花や三玖、六海のようにはなれません」
そもそもそんなことができるのならこんな事態にはならなかったはずです。今は一花たちのような気持ちの切り替えができるのが羨ましい限りです。
「・・・にゃは♪なれるよ、五月ちゃんだって!」
「え?今、何と・・・?」
「協力してあげるって言ったでしょ?大丈夫、六海に任せてー♪」
六海は楽し気に笑いながら私の髪を触ってきました。え、本当に何をする気なのですか⁉
「六海、何してるの?」
「ほら、ここをこうしてここの髪を持ってきて・・・じゃーん!三玖ちゃんの出来上がりー!」
六海が私の髪をいじり終える頃には確かに私の髪は三玖と近いものになりました・・・けどこれ、おふざけしてますよね?
「おお、そっくりそっくりー!」
「でしょー?」
「・・・私は真剣に言ってるんですが?」
「にゃはは、ごめんごめん、六つ子ジョーク六つ子ジョーク♪」
ジョークじゃありませんよ全く・・・真剣に悩んでいるのに私の髪で遊ぶなんてどうかしてます。
「・・・六海!」
二乃もこの行為に癪に障ったようですね。
「・・・髪の分け目が逆!」
て、そっちですか!別に髪の分け目なんて今どうでもいいじゃないですか!私は真剣に悩んで・・・
「あ、後五月、もっと寝ぼけた目をして!」
「この毛が邪魔だなー」
「もういっそちょん切っちゃう?このアホ毛」
「わ、私の髪で遊ばないでください!!」
六海の他に二乃や一花も参加して私の髪をいじり始めました!いったい何がしたいんですかこの3人は⁉というか六海、私の髪を切ろうとしないでください!そうこうしていくうちにパジャマまで着替えさせられて私の姿は髪の長さを除けば三玖とそっくりになっていました。
「そうだ、ちょうど三玖もいないし、これでフータロー君騙せるか試してみようよ」
「おー!それおもしろそう!やろうやろう!」
「え?マジで?だったら服も変えなきゃ!」
3人とも私をよそに勝手に話を進められています⁉
「あ、あの・・・」
「大丈夫。あいつにアタシたちの区別なんてできるわけないでしょ?」
そういう問題ではないと思うんですけど・・・。
「ほーら、細かいこと気にしないでいったいったー!」
「ええ⁉ちょ、ちょっと・・・」
「大丈夫。お姉ちゃんがしっかり見守ってあげるからね♪」
一花と六海に無理やり背中を押されていき、今上杉君が眠っているであろう三玖の部屋の前にと連れていかれました。あ、朝食はもうすでに全部いただきました。おいしかったです。
「じゃ、がんばってねー♪」
「五月ちゃん、ファイト、おー、だよ!」
部屋の前まで連れだした一花と六海は特に悪びれた様子もなくリビングへ戻っていきました。もう・・・本当に・・・。・・・この部屋の中に上杉君がいるんですよね?今は三玖となっておりますが、今更彼に何というべきなのでしょう?この間のことを謝る?それとも、別の話題で話をごまかす?私はいったいどうすれあいいのでしょう・・・?
ガチャッ
「⁉み、三玖⁉あ、いや・・・」
私がいろいろ考えているうちに上杉君が出てきました。ま、まだ心の準備ができていないというのに!い、いえ・・・今の私は三玖なんですから、慌てる必要はありませんね。でも・・・何とお話すればいいのかわからないです。
「・・・ど、どうした、五月?」
「!・・・・・・わかるんですね・・・」
髪型を三玖に似せているというのに、まさか上杉君に見破られるとは思ってはいませんでした。
「「・・・・・・」」
お、お互いに気まずいです・・・何と話をすればいいのでしょう?謝る・・・なんてことは絶対に無理です・・・。・・・この間お父さんが言っていた私たち6人の中で1人でも赤点を取れば解雇について、上杉君はどう受け止めているのでしょう?少しだけ・・・
「あの・・・今度の中間・・・」
ゴソ・・・
「⁉」
「え?」
え?話をしようと思ったら、部屋の奥で何か音が聞こえたような・・・?
「よ・・・用がないならもういいかな?」
「え?ちょっと・・・」
「ほら!着替えるから!」
「え?ええ?」
バタンッ!!
「えええええ!!?」
上杉君は何か慌てた様子で私を部屋から離され、勢いよくドアを閉められました。な、何なんですかいったい!人がせっかく話をしようと思ったのに!
「・・・もう結構です!!」
私は上杉君の態度に怒ってそのまま部屋へと戻っていきます。・・・やってしまいまた。部屋越しでも話はできたはずですのに・・・自分の感情が上回って碌に会話もできませんでした。
「あーあ、やっぱり怒らせちゃった」
「もー、ダメじゃーん、風太郎くーん」
「フータロー君、大丈夫?」
「あ、ああ・・・」
ドア越しから上杉君と一花たちの会話が聞こえてきました。
「そういえば三玖どこ行ったか知らない?」
「え?あ・・・ああ!えーっと・・・と、図書館かな!」
「図書館!いいね!六海、図書室や図書館が1番お気に入りなんだよねー」
「そうだ!それならさ、私たちも気分を変えて図書館で勉強しよっか!」
「そ、そうするか!」
「じゃあ四葉ちゃんに連絡入れるねー」
今日は図書館で勉強会、ですか・・・。普段なら私もあそこで1人で勉強するのですが・・・状況が状況ですからね・・・行くことはかないません。いつまでも意地を張り続けている自分に嫌気がさしてきます・・・。
♡♡♡♡♡♡
上杉君と一花たちが図書館へ向かっているのを確認し、二乃は自分の部屋に戻っていきましたが、私はリビングでただ1人自習を執り行いたいと思い部屋に戻って着替えてから教材を取りに行ってます。少しでも試験内容を頭に入れませんと、赤点は回避できません。足を引っ張るのは御免ですから。
でも・・・これで本当に良かったのでしょうか・・・?もしかしたら、上杉君から勉強を教えてもらっているのならば、状況は少しは変われたのでしょうか・・・?
『後で後悔したってお前にだけは絶っっ対に教えねぇ!!!』
あ、なんだか思い出しただけで腹が立ってきました。もう知りませんよ、上杉君なんて・・・
『また明日がんばろう?六海もできる限り協力するからさ』
昨日の六海を思い出したらやっぱり深く考えさせられてしまいます。今じゃ何が正しくて何が間違っているかなんてわからなくなってしまいました。私が思考の迷宮から抜け出せないまま教材を持ってリビングへ向くと、一花の部屋からいなくなっていたはずの三玖がいました。
「み、三玖⁉」
「!五月・・・」
「上杉君が図書館に行っていたって言ってましたけど・・・」
「え・・・?あ、ああ・・・えっと、その・・・う、うん。図書館に行ってたんだけど、その・・・筆箱を忘れちゃって・・・」
「そうでしたか・・・」
何やら若干三玖が挙動不審になっているのが気になりましたが・・・やっぱり図書館に行っていたんですね。
「そ、それで、フータローも一花たちも図書館に?」
「ええ、確かに図書館に行くって言ってましたよ。入れ違いになったようですね」
「そ、そうみたい、だね。早く筆箱取りに戻らなきゃ」
「あ、あの、三玖、ちょっと聞きたいことが・・・」
「⁉な、何・・・?」
筆箱を取りに行こうとすると三玖を呼び止めた時、一瞬ビクッとなったのは気のせいでしょうか?
「もし・・・もしもですよ?私たちの中で1人、成績不良で進級できなかった場合・・・三玖は・・・どうするのですか?」
こんなことを聞くなんてらしくない気がします。それでも・・・ここは何としてでもはっきりしておきたいです。
「な・・・何だそっちか・・・よかった・・・」
「え?」
「な、何でもない」
何やら気になることを言っていたような気がしますが・・・。
「・・・でも、それは五月も同じ答えなんじゃないの?」
「え?」
「・・・私も留年して2年生をやり直す」
「!!」
「と言っても、みんなその可能性が高い。特に四葉」
やはり・・・三玖も同じ答えなんですね・・・。実を言うと、私も同じような答えを考えていました。やはり考えていることは一緒なんですね。でもやっぱり・・・6人みんなで進級はしたいです。
「でも、フータローがいたらきっと、そんな心配はない」
三玖は上杉君をよほど信頼しているようですね。それは四葉も一花も、六海も同じことでしょうか・・・。
「ね、ねぇ、もういい?」
「!あ、は、はい。変なこと聞いてすみません」
質問を答え終えた三玖はそそくさと自分の部屋へと向かっていき、かばんを持って部屋から出てそのまま慌てて図書館へと向かっていきました。三玖や一花たちも頑張ってるんです。私も頑張らなければ・・・。さて、自習に戻らなくては。えっと、次のここの答えは・・・なんでしたっけ・・・。
「・・・ふわぁ・・・」
と、いけませんいけません。ここで眠るわけにはいきませんね。でも・・・リビングの窓から放ってる日差しが気持ちよくて・・・て、ダメですってば!寝ちゃダメです・・・絶対に寝ちゃダメです!絶対に・・・ね・・・ちゃ・・・
♡♡♡♡♡♡
「・・・い。おい、起きろ」
「ん・・・んん・・・」
誰かに揺さぶられる感覚がして、私は意識を取り戻しました。結局うたた寝してしまったようです。まだ若干眠気が残っているのが何よりの証拠です。
「あ・・・ああ・・・すみま・・・せん・・・」
私を揺さぶって起こしてくれた相手は、図書館に行ったはずの上杉君でした。なぜ彼がここに・・・?思いがけないことに私は戸惑いでいっぱいになっております。
「あ・・・あの・・・」
「やっと見つけたぞ・・・三玖!」
え⁉いったい何を言っているんですか上杉君は⁉私は三玖じゃなくて・・・て、そう言えば三玖からヘッドフォンを借りてつけたままでした。このヘッドフォンを見て三玖だと勘違いしているのですね。
「勉強サボって俺から逃げてただろ!許さねぇぞ!」
「ええっと・・・」
「ほら!ペン持て!」
「あの・・・」
「教科書広げろ!」
「私は・・・」
「罰としてスパルタ授業だ!!お前には絶対、赤点を回避してもらうぞ!!」
私が言葉を話すごとに彼は言葉をかぶせてきます。なんでこんな時に限って話を聞かないんですか⁉
「だから私は三玖じゃ・・・」
「そういや、五月の姿が見えねぇなー。今も部屋で勉強頑張ってんだろうなー。間違ってもうたた寝なんてことはないだろうなー」
!上杉君のこの反応・・・それに、私がうたた寝をしていたことを見ないふりをしている・・・?そういうことですか・・・彼は私が五月だということは初めからわかっています。正面から話すことができないからこんな嘘を・・・。
「・・・どうした?三玖」
私は・・・こんな時、どんな風にふるまえばいいのでしょう・・・?
『素直になればいいのにねー』
ふと六海から今朝にそんなことを言われたのを思い出しました。私は・・・みんなと違って、素直に頷くことなんて、できません。だから私は・・・
「・・・・・・な・・・何でもありま・・・何でも・・・ないよ・・・///」
上杉君の嘘に乗っかることにします。うぅ・・・三玖のふりをするなんて・・・自分でやってて恥ずかしいし、緊張します・・・。
「・・・じゃあ始めよう。今はどこやってんだ?」
「せ、生物・・・だよ・・・」
「そのまま続けるか。わからなかったところはあるか?」
「えぇっと・・・」
「あ、そうだ・・・。・・・一昨日は・・・悪かった」
!上杉君・・・。これが彼の本音・・・。今回の件、彼も彼なりに思い悩み、この決断を下したのですね・・・。
「・・・何のこと?」
「そ、そうだな!ははは・・・三玖に何言ってんだか・・・」
今の彼は私を中野五月ではなく、中野三玖としてみています。自分自身では謝ることができません・・・ですが、三玖としてなら?三玖としてなら・・・。
「・・・私こそ・・・ごめんね」
「!・・・み、三玖こそ、何言ってるんだ?」
「そ、そうだね!ははは・・・」
ああ・・・こんな嘘の中で謝罪の言葉をかけることになるなんて微塵も思っていませんでした・・・。けど、嘘の中でもちゃんと素直に謝ることができました。
「ええっと・・・ここがわからないんだけど・・・」
「なんだ。ここまで進んでいるのか。そこは・・・」
私が1番苦戦している問題を上杉君はこれでもかとわかりやすく、丁寧に教えてくれました。今まで教えてもらった人物の中で、1番わかりやすかった気がします。
「・・・1人でよく頑張ったな」
素直になるって、本当に難しいことです。しかし不思議なことに、嘘の中でなら、本音が自分でも驚くぐらいに打ち明けられます。噓つきは泥棒の始まりとも言いますけど・・・たまに嘘をつくというのも悪いものではないのかもしれません。その証拠に、私と上杉君の関係に、修復の兆しが見え始めているのですから。私はその事実に、思わず頬を緩んでいます。
♡♡♡♡♡♡
日曜日から四日が過ぎ、明日がいよいよ中間試験本番です。そういうこともあって今私たちの家のリビングでは二乃以外の姉妹たちが全員集まり、上杉君と共に勉強を執り行っています。というのも今日の学校の出来事です・・・。
『はぁ⁉今日も泊まり込みで勉強するの⁉この間したばっかりよ⁉』
『明日が試験なんだ。効率度外視で一夜漬けだ』
『五月、あんたも何か言いなさい!!』
『・・・今日ぐらい、いいんじゃないですか』
『『『『『『え?』』』』』
あの時私が言った言葉にみんな驚いていましたね。明日が中間試験なんです。それくらいの覚悟がなければ、赤点回避は免れませんし、不思議ではないと思いますがね。でも、私がこういうことができたのは、先日の上杉君の噓つき行為のおかげかもしれません。
「よし!二乃は相変わらず来ていないが、中間試験はいよいよ明日だ!徹底的に対策をして、悔いのないようにするぞ!」
「「「おー!!」」」
上杉君の言葉にやる気を出したみんなは勉強を開始していきます。
「私はここで自習するだけですので、勘違いしないでくださいね」
「あ、ああ・・・」
当の私はというと相変わらず本音を言うことなく、みんなとは離れたテーブルで自習を始めます。すると六海が自分の教材を持って私のところまでやってきました。
「今日は五月ちゃんと勉強する!ね、いいよね、五月ちゃん?」
「え、ええ、構いませんよ」
「あ、でもでも、わからないところがあったら教えてね、風太郎君」
「あ、ああ。それはもちろんだ」
「じゃさっそくわからないところがありまーす!」
「早いな・・・どこがわからないんだ?」
六海は私の隣の席に座り込み、上杉君にわからないところを教えてもらってます。すると今度は私に声をかけてきました。
「五月ちゃん五月ちゃん、ここの問題ちゃんと解けた?」
「え?い、いえ・・・」
「えっと、ここはね・・・」
上杉君に教えてもらった個所を六海は私に教え始めます。なるほど、素直になることができない私に上杉君から習ったことを六海が教えてくれているのですね。でも・・・なんか間違ってるような気がするのですけど・・・。
「というわけなの!わかった?」
「わかった?じゃねぇよ!さっき教えたことと全然違うじゃねぇか!」
あ、やっぱり間違っていたのですね。
「あ、あれー?おっかしいなー」
「おかしいのはお前の頭だ。たく・・・もう1回教えてやるから、次は間違えるなよ」
なんだかまだまだ前途多難な気がしますが・・・一夜漬けならおそらくは少なくとも30点ぎりぎり、赤点は回避できるでしょう。ただ1つの問題を除けば。
今回勉強の参加意思がない二乃・・・大丈夫なんでしょうか?赤点回避、できますよね・・・?・・・い、いえ。心配しても仕方ないですね。ちゃんとやってることを祈りましょう。今は全力で勉強して明日に備える・・・それだけです。
♡♡♡♡♡♡
「ん・・・んん・・・ふわぁ・・・」
いつの間にか眠っていた私が目を覚ますと、リビングの窓は朝日の心地いい光が差し込んできました。もう朝になったのですね。そしてすぐに私の視界に映ったのは上杉君でした。
「・・・ああ、上杉君、おはようございます。早いですね」
「ああ。・・・!!?・・・なぁ、五月、確認だが、うちの学校は8時半登校だったよな?」
「?そうですね・・・それから、15分後に試験開始です」
でもなぜそんなことを聞くのでしょう?
「・・・あの時計、壊れてたりしない?」
青ざめた様子の上杉君が指をさしたのは・・・すでに8時5分を指した時計・・・ハチジゴフン?
「・・・ひぃあああああああああ!!??」
「ひあっ⁉何⁉」
時刻を見て大絶叫を上げた私の声に六海、みんなが起きてきました。六海が時計を確認し、そしてスマホを確認すると、みるみると顔を青ざめていきます。
「だ、大寝坊だあああああああああ!!!」
私たちはいつも学校の準備をする際の時間を合わせているので起きるのは大体7時くらいです。でも現実はその1時間5分後、大寝坊です!
「なんでみんな起きれなかったんだろ~?」
「後25分・・・結構やばいかも・・・」
「朝食どうしましょう?」
「アタシのメイク道具知らない?」
「あー、眠いよぅ・・・」
「二乃ちゃんそれどころじゃないよ!後一花ちゃんまた寝ようとしないで!」
寝坊で全員大慌てです!上杉君と姉妹全員揃って寝坊なんてシャレになりませんよ!朝食はどうなるのですか⁉
「て!六海たち全員パジャマだった!」
「わー!そうだったー!」
「制服持ってきて!」
「わ、私は部屋で着替える・・・」
「メイク道具はー?」
「朝食どうしましょう?」
「お前ら急いでくれ!!朝食取る時間なんてねぇ!!」
そ、そんな殺生な⁉と、言いたいところですが遅刻で試験を受けられなかったらどうしましょう!それだけは何としてでも避けなければ!とにかく制服に着替えて急いで学校へと向かわなければ!
♡♡♡♡♡♡
私たちはとにかく遅刻しないように走りながら学校へと向かっています。ちょ、朝食抜きでこんな走らされるなんて・・・きついですよ・・・!
「みんな遅いよー!!上杉さーん!先行っちゃいますよー!」
私たちの中で特にずば抜けた体力を持つ四葉はせっせと先へと向かっていました。一方の私たちは四葉からだんだんと離されていきます。その中でも上杉君、三玖、六海がもうすでに疲れ切っている様子です。
「はぁ・・・はぁ・・・お、お前ら・・・車で通学してたんじゃなかったのか・・・?」
「はぁ・・・はぁ・・・江端さんは・・・お父さんの秘書だから・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・だから・・・うちには滅多に・・・はぁ・・・来ることがないの・・・」
「お父さんたちがうちにいてくれたらいいのにねー」
「そ・・・そうだな・・・」
今はいない人のことを考えても仕方ないでしょう!このまま走り切れば、きっと間に合います!
「はぁ、はぁ・・・やっぱスッピン見せたくないなぁ。ここでメイクしてもいい?」
「他の5人がバンバン見せてるだろ⁉そういうのは登校してからにしろ!!」
二乃がメイクで立ち止まろうとした時、上杉君の一声でなんとか走ってくれました。あれ?そういえば三玖は・・・おばあさんの荷物を持って交通移動まで付き添っていました。
「うーん、えらい!けど今じゃない!」
何とか移動を終えた後、三玖は急いで私たちの下に合流しました。・・・あれ?今度は一花がいません!
「zzz」
「寝るなーー!!」
お店の近くで眠っていました。上杉君の一声で起きたようです。
「四葉いねーし!!どこまで行ったんだ⁉」
そう言えばさっきから四葉の姿が一向に見当たりませんね。先に行ったのでしょうか?
「ねぇねぇ、六海帰ってもいい?」
「お前にいたっては論外だ!!何でだよ⁉」
六海の堂々とした帰宅宣言に上杉君は驚愕交じりの怒りを示しています。
「だって最近学校の入り口に生徒指導の先生がいるんだもんーー!!六海、こんなことで怒られたくないよー!!」
「ああ、確かに。結構怖そうな先生だから遅刻したらテストどころじゃないかも」
た、確かに生徒指導の先生が立っていましたね。遅刻したら何と言われるか・・・。
「ぐっ・・・!だ、大丈夫だ!このまま走れば絶対に間に合う!ほらがんばれ!」
上杉君の応援で六海は何とか走ってくれるようになりました。というか・・・私ももう限界です・・・。
「もうダメです・・・」
「諦めんな!」
「いいえ・・・限界です・・・」
「五月!」
「はぁ・・・はぁ・・・お腹がすいて力が出ません・・・」
くううぅぅ~・・・
ああ、またお腹が鳴ってしまいました・・・。朝食を抜いてしまったことが響いています・・・。
「くっ・・・!仕方ねぇ!ここのコンビニで適当におにぎりでも買え!」
上杉君は私を連れて近くにあったコンビニに入っていきました。たどり着いた先にはいろんな種類のおにぎりが・・・!
「ど、どれも・・・おいしそう・・・!」
「悩んでる余裕なんてないからな!」
わ、わかっていますよそれくらい!でもこれくらい選ばせてくれたっていいじゃないですか!・・・あ、そうです。
「あなたはどれにしますか?」
「!いや、俺は・・・」
「これくらい奢りますよ。何とは言いませんが、ご迷惑をおかけしたので・・・」
あの噓つき行為がなければ関係はこじれたままだったんです。迷惑をかけたのは事実ですから、お詫びでも入れないと気がすみません。
「・・・どれにしよう?」
「悩ましいですね」
「あんたたち急いでたんじゃなかったの⁉」
わ、わかってますってば!わかってますけど、いろんなおにぎり食べたいじゃないですか!と、とにかく私は鮭のおにぎり、上杉君は梅のおにぎりを選んで会計を済ませます。食べながらでも走れば間に合います。とにかく急いで・・・
「何そのガキンチョ?」
急ごうと思ってたら一花、三玖、六海が何やら泣いている子供に寄り添っている姿が。
「迷子みたい・・・」
「ママとはぐれちゃったのかなー?」
「泣かないでー。お姉ちゃんたちが側にいてあげるからー」
どうやらお母さんとはぐれてしまったようで心細い思いをしているようですね。
「急いでるんだ。他の人に任せていくぞ」
「自分だっておにぎり買ってるじゃん!」
「道に迷ってる。かわいそう・・・」
「血も涙もない!風太郎君の鬼!鬼畜!おたんこなす!」
「誰が鬼だ!誰が鬼畜だ!おたんこなすはお前にだけは言われたくないわ!」
心にもないことを言っていた風太郎君ですが一花たちの正論、六海の罵倒で多少は待ってくれるようです。
「僕~、お姉さんたちにお話し聞かせて?」
「・・・I wanna meet my mommy・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
え、英語で話してる・・・てことはこの子外国人なんですか⁉ど、どうしましょう・・・。
「「「「・・・は、ハロー・・・」」」」
「自分が路頭に迷うかって時に何やってんだ・・・」
「あんたもね」
まさかここに来て外国人の子供と会い、しゃべっている言語を解読しなければならない日が来るなんて思いませんでした!とにかくこの子の次々としゃべる言語を解読していくのですが・・・何をしゃべっているのか全く分かりません!
「ほ、ほら、大丈夫だから、ね!」
「えーん!なんて言ってるか、わかんないよー!」
「六海、落ち着いて。とにかく1つずつ単語を思い出していこう」
「そ、そうですね。それが1番の最善かもしれません」
私たちはこの子が何と伝えようとしているのか解読しないと・・・と言っても、その単語自体も覚えてるのか怪しんですが、思い出すしかありません!
「おい、その子は俺が・・・」
「Where is the hospital?」
「!今・・・ホスピタルって言わなかった?」
「え?」
ホスピタルと言えば・・・病院のことですよね?
「いやっ・・・気のせいかも・・・」
「気のせいじゃないよ!きっとお母さんは病院にいるんだよ!そうに違いないよ!」
「確か中央病院なら近くにありますけど・・・」
「ん~・・・じゃあ・・・コホンッ」
この子が何を伝えようとしているのか少しは理解した私たちの言葉を一花が代表して英語で答えますね。
「did you go to the hospital with your mother?」
一花の英語の問いに外国人の言葉はコクリと頷きました。と、言うことは・・・
「「「「通じた!」」」」
やりました!言葉が通じました!やはりこの子のお母さんは病院にいるのですね!私たちはここまでたどり着いたことの喜びでお互い抱き合いました。と、こうしてはいられません。中央病院かわかりませんが、早くこの子をお母さんの下へ送り届けなくては!
♡♡♡♡♡♡
私たちの考えは当たっていたようで子供のお母さんは中央病院にいました。私たちは子供をお母さんの下へ届けさせました。その時の子供の顔は笑顔でなんだか安心感と達成感で満ち溢れています。
「無事お母さんの元に送り届けられてよかったねー」
「うんうんよかったね。ところで君たち、何か忘れてないかね?」
上杉君の問いに私たちは一瞬だけ首を傾げました。・・・あ、そういえば・・・中間試験の時間・・・。
「タイムオーバーだ。試験もじき始まる」
上杉君が見せたスマホの時刻は8時33分、登校時刻はとっくに過ぎていました。
「ど、どうしましょう・・・!」
「でも学校はすぐそこだよ?」
「でも~・・・生徒指導の先生が~・・・」ウルウル
「そうなんだよねー。あの先生、今回のこと許してくれるかなー?」
問題はやはりそこなんですよね。いくら学校にたどり着いても生徒指導の先生が通してくれるかどうかなんですよね。困り果てました・・・。
「・・・そうだ!四葉だ!」
私たちが困り果てていますと上杉君が何やら閃いたようです。でもなぜそこで四葉が?
「五月、四葉に電話してくれ。繋がれば俺が話す」
「え?え、ええ・・・」
私は上杉君に従って四葉に電話をかけました。・・・あ、繋がりました。
「四葉ですか?今上杉君に替わります」
四葉に繋がったことを確認した後、上杉君に電話を替わります。
「四葉か?もう学校についてるのか?・・・いやいい。そのまま学校にいてくれ」
「ちょっと!どうするつもりなの?」
「大丈夫、俺に言い案がある。名付けて・・・ドッペルゲンガー作戦だ!」
ど、ドッペルゲンガー作戦⁉それって一体どういうことなのでしょう・・・?
「四葉が学校にいるのは確認した。一度登校した生徒なら生徒指導も厳しく言えないだろう」
!!う、上杉君・・・それってまさか・・・。
「お前たち全員・・・四葉のドッペルゲンガーになれ」
や、やっぱりですか!!そう言うと思いましたよ!やりたくないといっても、今の現状を切り抜けるにはこれしかない・・・ですか・・・。これは試験のため・・・試験のために・・・。
♡♡♡♡♡♡
学校の前までたどり着いた私たちはとりあえず物陰に隠れ、四葉がよくつけているリボンを頭につけて(六海はメガネを外した状態)近くの物陰に隠れます。入り口には・・・やっぱり生徒指導の先生がいます。うぅ・・・怖いです・・・。六海も心なしかがたがたいってますし・・・。
「じゃあ・・・行ってくる」
まずトップバッターを務めるのは私たちの中で1番変装が得意な三玖です。さて・・・どうでるのでしょうか・・・。
「おはよーございまーす!」
「お前!遅刻だぞ!」
「おおっと、先生、この顔とこのリボンに見覚えありませんか?」
「?・・・確かに少し前に見たような・・・」
「先生の手伝いでまた外に出たんです」
「そ、そうか。始業チャイムはもう鳴ってる。試験までに着席するんだぞ」
「はーい」
う、うまくいきました⁉三玖は何食わぬ顔で四葉になりすまし、学校の中へと入っていきましたよ⁉
「よーし、次は六海の番だ!早くメガネかけたいし、ちゃちゃっと行くね」
三玖の姿を見た六海はやる気に溢れた顔で学校に向かっていきました。でも胸にかけたメガネでばれるんじゃ・・・。
「おっはよーございまーす!!」
「お、おはよう・・・」
これもうまくいきました⁉どれだけ有効なんですかこのドッペルゲンガー作戦⁉
「おっはよーございまーす!」
「おっはよーございまーす」
その後に続いた一花、二乃もうまくいきましたよ⁉2人にいたってはほとんど何もいじっていませんのに⁉さ、最後は私ですか・・・先生を騙すなんて行為、したくないんですが・・・ええい、ままよ!
「お・・・おっはよーございます!」
「お・・・おはよう・・・。
(あの生徒・・・何周も何してるんだ・・・?)」
わ、私もうまくいきました・・・心臓がバクバクいっている私にみんなが出迎えてくれました。そ、そんなことより・・・!
「先生を騙すなんて・・・私はなんて無礼を・・・!」
「あんた真面目すぎ」
「あ!よかったー!みんなはいれたんだー!」
「本物だ」
私が後悔の念を抱いていると本物の四葉が出てきました。
「ほら、気持ち切り替えないと足元すくわれるよ。ここからが本番だから」
「いよいよだね!頑張らなくちゃ!」
そ、そうですよね。ここで気持ちを切り替えなければ・・・平常心・・・平常心・・・。
「あれ?上杉さんは?」
あー、上杉君・・・上杉君は・・・。
「オッハヨーゴザイマース」
「・・・・・・」
私たちと同じやり方をやってます⁉頭にリボンつければOKって思ってません⁉目が死んでますし、いくら何でもそれは無茶ですよ!
「遅刻した上にふざけてんのか?」
「デスヨネ」
「生徒指導室に来い!!」
ああ、やっぱりですか・・・。どこまでも無茶なことを・・・。
「フータロー・・・」
「早くいけ!!俺がいなくても大丈夫だ!!努力した自分の力を信じろ!!」
「1人で何言ってんだ!!」
上杉君は私たちにエールを送りながら生徒指導の先生に連れていかれました。上杉君の言葉にみんなやる気が上がりました。
「うん・・・!」
「いい点とって、フータロー君を驚かせちゃお!」
「ほら、二乃も!」
「な、なんでアタシまで・・・」
「努力はきっと裏切らない!六海たちならやれるよ!」
「死力を尽くしましょう!」
私たちは円になってお互いの親指小指を繋ぎ合わせ、互いに気合を入れ、中間試験に挑みます。
「「「「「がんばるぞー!!おーー!!」」」」」
「お、おー・・・」
♡♡♡♡♡♡
『中間試験開始!』
歴史 三玖視点
(難しい問題ばっか・・・でも、歴史ならわかる・・・。フータローよりいい点とったら、どんな顔するかな?)
国語 四葉視点
(う~ん・・・はっ!思い出した!5択の問題は4番目の確率が高いっと・・・)
英語 二乃視点
(討論・・・討論・・・わかんないや、次・・・)
『でばてと覚えるんだ!』
(・・・勝手に教えてくるんじゃないわよ・・・)
地理 六海視点
(う~ん、この問題なんだっけ・・・?思いつく答えにしよ。・・・やっぱりもうちょっとだけ考えてみよ)
数学 一花視点
(終わった~。こんなもんかな?おやすみ~・・・。・・・式の見直しくらいしてもいいかな?)
理科 五月視点
(あなたをやめさせたりしません!・・・らいはちゃんのためです!念のため・・・!)
風太郎視点
(みんな・・・頼むぞ!)
♡♡♡♡♡♡
中間試験終了から数日後、今回のテストが全て返却された後、私たち六つ子は上杉君に図書室に呼び出されました。用件はわかっています。テストの点数の発表です。けど・・・
「・・・よう。集まってもらって、悪いな」
「どうしたの?改まっちゃって」
「水臭いよー」
「中間試験の報告。間違った場所、また教えてね」
「ああ。とにかくまずは、答案用紙を見せてくれ」
結論から言いましょう。私は・・・1教科だけ赤点を回避できました。ですがそれだけです。残りは全て赤点でした・・・。これがお父さんにしれれば・・・上杉君は・・・解雇・・・。
「はーい、私は・・・」
「見せたくありません!テストの点数なんて他人に教えるものではありません!個人情報です!断固拒否します!」
「五月ちゃん、どうしたの、急にー?」
これが悪あがきだということくらいわかっています・・・それでも・・・それでも・・・。
「・・・ありがとうな。だが覚悟はしてる。教えてくれ」
上杉君・・・あなたはずるいです。そんな風に言われたら、教えざるを得ないじゃないですか・・・。
♡♡♡♡♡♡
『中間試験結果発表!』
四葉の点数
国語30点
数学8点
理科16点
歴史24点
地理15点
英語18点
総合点111点
「じゃーん!国語は山勘が当たって30点でした!こんな点数初めてです!」
三玖の点数
国語27点
数学29点
理科28点
歴史68点
地理25点
英語11点
総合点186点
「歴史は68点。その他はギリギリ赤点。悔しい」
六海の点数
国語20点
数学15点
理科12点
歴史19点
地理59点
英語26点
総合点151点
「六海は59点の地理だけだった!こんな点数、夢みたいでうれしいよ!」
一花の点数
国語18点
数学40点
理科26点
歴史13点
地理14点
英語29点
総合点140点
「私は40点の数学だけ。今の実力じゃこんなもんかな?」
二乃の点数
国語13点
数学21点
理科28点
歴史12点
地理17点
英語45点
総合点136点
「国数理歴地が赤点よ。言っておくけど、手は抜いてないからね」
五月の点数
国語25点
数学23点
理科56点
歴史20点
地理19点
英語25点
総合点168点
「・・・残念ですが、合格ラインを超えたのは、理科の56点でした」
♡♡♡♡♡♡
「・・・たく・・・短期間とはいえあれだけ勉強したのに30点も取ってくれないとは・・・。改めてお前らの頭の悪さを実感知って落ち込むぞ・・・」
「「「わーーっ♪」」」
「うるさいわね」
うぅ・・・面目ございません・・・。
「・・・まぁ、合格した科目が全員違うなんて、アタシ達らしいけどね」
「そうかも!」
「それに、これまでの6人で100点と比べたら・・・」
「ああ。確実に成長してる」
みんなが自分たちの成長を実感すると、上杉君は真剣みな顔を向けます。
「三玖。今回の難易度で68点はたいしたもんだ。偏りはあるがな。今後は姉妹に教えられる箇所は、自身を持って教えてやってくれ」
「・・・え?」
おそらくこれは上杉君の家庭教師としての最後の言葉なのでしょう・・・。
「四葉。イージーミスが目立つぞ、もったいない。焦らず慎重にな」
「了解です!」
「六海。書けば当たるという着眼点はいいが適当すぎだ。もう少しじっくり考えてみろ」
「思考力アップということだね!」
「一花。お前は1つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めんなよ」
「はーい」
「二乃。結局最後まで言うことを聞かなかったな。俺が来ないからって油断すんなよ」
「ふん」
最後は私ですか・・・でも・・・本当に・・・
「フータロー・・・もう来ないって、どういうこと・・・?」
「・・・・・・」
三玖の疑問は最もです。事情を知ってる私でも納得できません。
「私・・・」
「三玖。今は聞きましょう」
納得はいきませんが・・・今は彼の言葉が聞きたいです。
「五月・・・お前は本当に・・・バカ不器用だな!」
「なあぁ⁉」
さ、最後の最後でそれですかぁ⁉
「1問に時間かけすぎて、最後まで解けてねぇじゃねぇか!」
う・・・それは・・・自覚してます・・・。
「・・・反省点ではあります」
「自分で理解してるならいい。次からは気をつけろよ?」
それはわかっています。でも、上杉君には家庭教師としての次は・・・
プルルルルッ
そう考えていた時、私のスマホに電話がかかってきました。相手は当然、お父さんです。
「父です」
私は上杉君にスマホを渡し、上杉君は父に電話を入れます。
「はい。上杉です」
≪ああ、五月君と一緒にいたのか。ここに聞いていこうと思ったが、君の口から聞こうか≫
「はい」
≪嘘はわかるからね≫
「つきませんよ。ただ・・・次からこいつらには、もっといい家庭教師をつけてやってください」
≪ということは・・・試験の結果は・・・≫
上杉君が私たちの結果を口にしようとした時、二乃が上杉君からスマホを取り上げ電話を替わりました。二乃・・・?いったい何を・・・
「え?」
「パパ、二乃だけど1つ聞いていい?なんでこんな条件出したの?」
≪僕にも娘を預ける親としての責任がある。彼が君たちに相応しいのか図らせてもらっただけだよ≫
「アタシ達ためってわけね。ありがとう、パパ。でも・・・ふさわしいかどうかなんて、数字だけじゃわからないわ」
≪それが1番の判断基準だ≫
「・・・あっそ。じゃあ教えてあげる」
二乃は私たち5人に視線を向け、驚くべきことを口にしました。
「アタシ達6人で6科目の赤点を回避したわ!」
え⁉私たちが6科目の赤点を回避・・・⁉
「なっ⁉」
≪本当かい?≫
「嘘じゃないわ」
≪・・・二乃君が言うのなら、間違いはないんだろうね。これからも上杉君と励むといい≫
話が終わったようで二乃は通話を切りました。
「二乃、今のは・・・⁉」
「私は英語、一花は数学、三玖は歴史、四葉は国語、五月は理科、六海は地理。6人で6科目クリア。嘘はついてないわ」
て、そういうことですか・・・。焦っちゃいましたよ・・・。
「そんなのありかよ・・・」
「・・・結果的にパパを騙すことになった。多分二度と通用しない。・・・次は実現させなさい」
二乃・・・。二乃も少しだけ、ほんの少しだけですが、上杉君を認めてくれたみたいですね。
「・・・やってやるよ」
二乃からチャンスを与えられた上杉君はやる気を見せています。
「ちょっとー、今の何の話?」
「私、いつの間に6科目合格してたんですか⁉なんでー⁉」
「赤点回避の意味、気づいてないの四葉ちゃんだけだと思うよ・・・」
事情を何も知らないみんなは疑問形を抱いてます。四葉は違う意味で戸惑っていますが・・・。
「三玖、安心してください。彼とはもう少し長い付き合いになりそうです」
二乃の機転のおかげで解雇にならずに済み、三玖はほっとしています。かくいう、私も、ほんのちょっとだけ、ほっとしてます。
「はいはーい!じゃあこのまま復習しちゃいましょー!」
「え!普通に嫌だけど・・・」
「二乃ちゃーん、逃げないのー」
「・・・そうだな。試験が返却された後の勉強が1番大切だ。だが、直後じゃなくてもいいな」
え?今からやる気を出していたのに、どうしたんですか?
「・・・ご褒美、だっけか?パフェ、とか言ってただろ?」
・・・・・・ふえ?上杉君が自分からご褒美・・・パフェ・・・?
「「「「「「・・・ぷっ!あははははは!!」」」」」」
「なぜ笑う!!」
「だって・・・勉強魔人の風太郎君が・・・パフェって・・・あははは、お腹痛い!」
「超絶似合わないわ!あははは!」
まさか上杉君がそんなこと言うなんて思いもしませんでした。あー、笑ったぁ・・・。
「じゃあ私は・・・特盛で!」
「え・・・そんなのあるの・・・?」
常識を知らなさすぎるんですよ、上杉君は。
「駅前のファミレスでいいよね」
「よし!6人で6科目だから・・・1人前だけだな!」
「うわー・・・せこー・・・」
上杉君の解雇問題もなくなり、ひとまずは安心ですね。明日からまた・・・変わらない日常に心地いいひと風が吹くのですね。
「そういえば上杉さんは何点だったんですかー?」
「あ!やめろ!見るな!」
「え⁉ぜ、全部100点!!?」
「あーー!!めっちゃ恥ずかしい!!」
「また意地悪風太郎君が出たー」
「その流れ、気に入ってるのですか?」
その流れだけは変わっていてほしいとこの時強く思ってしまいました。
09「噓つき嘘たろう」
つづく
六つ子豆知識
『六つ子の得意科目は?』
一花「私は数学!」
二乃「英語よ」
三玖「歴史」
四葉「国語!」
五月「理科です」
六海「地理ー!六海たち6人揃えば・・・」
六つ子「赤点回避シスターズ!!」
風太郎「おい、何現実から目を逸らして・・・」
六つ子「赤点回避シスターズ!!」
六つ子豆知識、今話分終わり
次回、四葉視点