けたたましいサイレン音と共に声が聞こえる。
『あの星は、人が暮らせる場所じゃない!!』
「……やっとかよ」
聞き慣れた声に乗せられているのは怒り、そして悲しみと恐怖だろう。
【劇場】で聞いたときよりも……いやもう十数年前の記憶だ、だいぶ薄れてしまっている。
「にしても反逆罪ってのに銃のレベルは麻痺かよ、ヌルいなオイ」
ホログラムを操作しつつ、俺は管制室の情報を盗み見ていた。
別に俺は、今絶賛反逆中の人物に肩入れする気もなく、混乱に乗じて機密情報にアクセスしていた。
目的の項目は唯一つ、とある生物……いやアレを生物と呼んでいいのか俺はわからない。
「あったあった」
すぐさまダウンロードを開始し、館内放送で流れるお涙頂戴のやり取りに苦笑しながら俺は、本来ならば輸送艇を破壊していたであろう爆弾を撫でながら鼻歌を歌う。
【原作知識】というのは楽なものだ。おかげで親友の恩人を爆死させずに済むのだから。
あの糞神官をぶん殴りたくもあるが、向こうの俺の動きに感づいている節もあるし消されないだけ温情はあるだろう。
ダウンロードは数分の内に終わり、俺は不正アクセスの痕跡を丁寧に消しておく。
「……Godzilla、ゴジラか」
監視カメラの粗い画像、それでもその巨体と圧力は直接見たことがない俺でも震え上がるほど怖い。
というかスペックデータを見るだけでも頭が痛いのと、こんなもんを生み出した【制作陣】にふざけんなと言いたい。
創作の世界ならどれだけ盛ってもいいッてわけじゃねえんだよ。
「終わったか?」
館内放送からが打ち切られ、オペレーターの声が響き渡る。
『非常事態を解除、先程の放送については中央委員会から追って報告されます。そして中断していたタウ星eへの移民計画は――――』
「移民、ねえ」
ちらりと窓の外から見える星を見る。
二十年以上の時間をかけてやってきた俺達の目的地、だはそこは地球と……いや当初予定されていたものとは大幅な差異がある入植不可能な惑星だった。
宇宙からも見える巨大な渦、そして雷光、ゲマトリア演算を使わなくても地表がどんな環境なのか想像に難くない。
未来予知まがいなことができようが、パワードスーツ作れる技術力があろうが、星全体をテラフォーミング出来るほど技術力はない。もっとも【とある技術】があればやりようはあっただろうが。
少なくともそんな星の移民計画を破棄せず、強行したのは二十年の船出が無駄だったという事実とどうしようもないという諦めが蔓延してるせいではある。
まぁ、しょうがないと思う。むしろあの地獄をくぐり抜けて、必至に館内環境を維持しようとする艦長を責める気にはなれない。
「……まぁ、俺も同罪だしな」
硬いベッドに横になりながら、俺は知らずに力がこもっていた拳から力を抜く。
爆弾を解除しようが、輸送艇にいる人達は死ぬ、それは避けられない。
俺がやったことはただ彼らの死を、人為的な爆死ではなく自然由来の事故による爆死に変えただけだ。
「ッ……」
涙が溢れそうになる自分の顔面をぶん殴り、歯を食いしばる。
覚悟を決めてたはずだ、俺が救うのはたった一人の男。
家族をゴジラに殺され、恩人を謀殺され、数多くの仲間を失い、親友すら殺し、最後は自らすら殺した哀れな復讐鬼を助ける。
「あぁ、そうだ……そのためだけに生きてきたんだ」
俺は―――――
「ハルオ・サカキを助ける」
***
アニゴジというものを知ってるだろうか? アニメゴジラ、CG映画の一種だった。
公開当時の俺は「ゴジラでアニメ? いやーないっす」とスルーしていた。
公開から数年、ひょんなことで見る機会を得た俺は視聴をして……ドハマった。
面白い、面白いぞこれ!! というのが一章を見た俺の感想、そして最終章を見て俺はふと口に出していた。
「あんまりじゃないか……」
ハルオ・サカキ、この物語の主人公にして最後までゴジラの憎しみを捨てることなく、それでも未来のために自分ととある人と共にゴジラに特攻して死んだ人物。
あんまりじゃないかと視聴後に思った。
確かにそうしなきゃいけないのはわかる、だが彼には家族がいた、友人がいた、守った世界があった。
なのに死んだ、ゴジラにその身を焼かれ微笑みながら死んでしまった。
理解は出来る、感動もした、だが納得できない。
そんな感情を持ったまま、俺は転生することになった。
どん詰まりの世界、アニメゴジラの世界にだ。
最初はなんの罰ゲームだオイと思った。
なんで? アニメ世界に転生できたなら最高やん、と思ったそこの君、代わってやるからちょっと転生してきて。
この世界のゴジラ、スペックがヤバすぎて笑えるのよ。
簡単に言うとぼくがかんがえたさいきょうのかいじゅう。
バリア張って、当たれば即死亡の熱戦、おまけに知能も結構あるとかいう悪夢、ちなみにいつもどおりの再生能力持ちだよやったね! 糞が。
転生したのはいつだったかはわからん、気づけば毛布に包まっていて、実母は自殺していたというハードモードだ。
俺が産まれたのは地球じゃない、じゃあどこかって? SFあるあるの宇宙移民船だ。
この世界の人類はゴジラのせいで地球を捨てて、別惑星への移住を決めている。
まぁ、移民惑星が移民できないとかいう笑えない状況なのは草も生えないが。
移民船生活は過酷の一言だった。
ライフライン超ギリギリ、食料残り少ない、トラブルなんて日常茶飯事、シールドもないから隕石にぶつかって船体損傷とかよくあるよくある。
……いやよくやろうと思ったよ、宇宙移民。
それぐらい切迫してたということだが、俺たち移民船時代の子どもたちはこれが当たり前だと受け入れていた。
受け入れざるを得ない状況だったのもあるが、諦めた大人の笑顔というのは子供ながらに心配するものなのだ。
ただ俺は転生者ということもあって、船内を探索するのが趣味だった。
空中投影型ホログラムなんか今でも弄っても飽きないし、未来技術と宇宙由来の技術がミックスされた館内はアスレチックのようだった。
当然、俺は問題児扱いだったが食うのには困らなかった。
大人たちは絶望はしていたが、それでも子供を見捨てることはなかった。
……地上での経験からだろう、俺のことをかわいがってくれる人は多かった。当然、あのタウ星eに向かう輸送船の中にもいた。
まぁ、船内を探索していたのはある人物を探すのも目的だった。
ハルオ・サカキ、物語の主人公であり俺が救いたいと願った人物だ。
そんな彼は簡単に見つかった。鋭い目つきで、一人ゴジラの映像を見ていた。
仲良くなるのは簡単だった。ゴジラを憎んでいるが、元来は優しい人間だ。年下の子供というのもあったんだろうが、ずいぶんと良くしてくれたし、天涯孤独の身だと知ったあとは保護者に頼み込んで一緒に住むことになった。
そのせいで余計に救いたくなったが。
「レイはゴジラが怖くないのか?」
ある日、ハルオ……まぁ、俺はハル兄と呼んでいる。
ハル兄がそんなことを聞いてきた。
「怖いよ」
「ならなんで、描くのはゴジラばっかなんだよ」
幼稚園を卒業するかしないかくらいの歳の頃だっただろうか。ちなみに幼稚園は移民船にはない。
あるのは言ってしまえば幼小中高一貫校のような教育機関があるだけ。
まぁ、そこでお絵かきの時間みたいなのがあって、俺は毎回ゴジラを描いていた。
先生からもいい顔はされない、先生も家族をサンフランシスコで亡くしてるからな。
「……忘れないため」
そう忘れないためだ。
ゴジラがどういう存在で、どうやって戦うのか、どんなことをしたのか忘れないため。
俺は頭の出来はよろしくはない、記憶力もいいわけじゃない、身体能力もそこまでだ。
ならやつと戦うにはどうしたらいいのか、忘れないように記憶に刻み込むしかない。
まぁ、それでも要所要所は忘れてるんだがな。
俺の言葉を聞いたハル兄はこう言った。
「そうか、お前もそうなんだな」
その時の笑みは、今まで見た中で最高の笑みだった。
そこから俺たちはさらに仲良くなった。若干一名ふくれっ面になっていたが、お前も助けるから安心しろ。
あんな結末にさせてたまるかよ。
○レイ(主人公)
移民船アラトラム号で産まれた十五歳。転生者としてアニメゴジラの世界に転生するが、前日談小説とほんへが絶望すぎて「主人公を救う」というある種の強迫観念に囚われている。
ほんへでハッキングをしていたが、実はメトフィエスのバックアップがあったから。本人のスペックは並、ぶっちゃけモブ程度しかなく戦闘に出たら間違いなくゴジラの熱戦か鳥の餌になるだろう。
レイと名付けたのは自分自身、名前の由来は零から。
アニゴジなんてクソだよ糞、と思ってた自分を許せなくて一章しか見てないのに書いたゾ。これからネットフリックスで全部見てくるからハイよろしくぅ!
見てないホモもノンケもアマゾンで見るか、ネットフリックスで見よう!(提案)俺もやったんだからさ(同調圧力)