それは遥か昔、レイオニクスに取り込まれてウルトラマンベリアルになる前のベリアルがまだアーリースタイルだった頃の話。
ベリアルには一人の友がいた。
その友はベリアル、ウルトラの父であるケンと同期である戦士であった。
しかし、彼はあまりにも心が優しすぎた為、戦士としては不十分であった。
そんな戦士として不適合な彼を他の若い連中は嘲笑う。
無論、曲がりなりにもウルトラ戦士を目指す者にそんな者はいない。
だが、光の国の一住人からすれば、どうでも良い事である。
それは同期であるベリアルもまた同じであった。
ベリアルは寧ろ、そんな戦いも知らぬ若い連中が同期である彼を笑うのが我慢ならなかった。
それは仲間を思うと言うよりは自身のプライドを傷付けられての事である。
だが、素行の悪さのせいで成果の上がらないベリアルもまた仲間から少なからず、疎まれていた。
故に二人は同じ厄介者として一緒にいる事の方が多かった。
そして、思想も考え方も違う二人はいつしか、友となった。
「なんで、お前は戦う事を拒んでいるんだ?」
ある日、ベリアルがこんな質問をすると彼は答えた。
「誰も傷付けたくないからさ。
正義の為とは言え、力でねじ伏せたら、いずれは戦いから逃れられなくなるだろうからね?」
「戦士としては甘い考えだな。
俺から言わせて貰えば、力こそ正義だ。
お前は戦士として悔しくないのか?
他の奴らに蔑まれて?」
「戦士だからって、皆が皆、戦う必要はないだろう?」
「それならなんで非戦闘員としての働く場所を選ばなかったんだ?」
「青の戦士には破壊ではなく、友愛を以て、怪獣達を鎮めたり、他の星人を友にする者がいると言う噂だ。
なら、赤の戦士が同じ事をしても良い筈だ」
彼はベリアルにそう言うと真っ直ぐに彼を見据えた。
「蔑みたい奴は蔑めば良いさ。笑いたい奴は笑わせれば良い。
俺は誰かの為に戦うより、誰かの為に涙する方が向いている」
「下らないな。涙を流したからって世界が救える訳ないだろう。
力があるのに使わないのは腰抜けのする事だ」
「それでも良いさ。俺達が戦う怪獣や星人にだって様々な理由があるんだ。
まずはお互いを知る事からするべきだよ」
その言葉にベリアルは笑った。
この男はつくづく甘い奴だと。
だが、力こそが正義だと言う考えを定着化させると共にベリアルは彼に興味を持つ様になる。
ーーそれから数万年後、エンペラー星人によるウルトラ大戦争が起こる。
ベリアル達はエンペラー星人と戦う事になった。
そんな中でエンペラー星人にただ、一人、説得を試みるものがいた。
勿論、ベリアルの知る彼である。
「エンペラー星人!戦いを止め、まずは話そう!俺は君に敵対しない!」
彼は故郷である光の国が襲撃されて尚、エンペラー星人に説得を試みた。
仲間が悪逆非道なエンペラー星人に説得は無駄だと諭すが、彼は聞き入れなかった。
その結果、エンペラー星人により疎まれた彼もまた重傷の身となる。
「此処までされて敵対もしないとは、貴様はとんだ腰抜けだ」
重傷を負う彼にエンペラー星人はそう言うと他のウルトラ戦士達へと牙を向ける。
命を奪われなかったのは彼の説得にエンペラー星人の心が動かされたからか、それとも、ただの戯れかまでは定かではない。
ベリアルには到底、理解出来ない事であった。
それよりも、エンペラー星人の圧倒的な力の方がベリアルには魅力的に映った。
激戦の末、戦いの最中に覚醒したウルトラの父であるケンがエンペラー星人に一騎討ちを仕掛け、エンペラー星人は深手を負って撤退し、残された尖兵も他のウルトラ戦士により倒される。
その後、復興の中にある光の国でベリアルは唯一、説得を試み続けて重傷を負った彼の元を訪れた。
「具合はどうだ?」
「ご覧の通りさ。エンペラー星人は強かったからね」
そんな風に笑う彼にベリアルは告げる。
「これで解ったろう?
力こそが全てだ。エンペラー星人よりもケンが力で勝っていたからこそ、今回の戦いに勝てたんだ」
「そうだろうか?
俺がこうして生きていられるのはエンペラー星人が俺の説得で心を動かされたからも知れないよ?」
「馬鹿な事を言うな。お前はただ、運が良かっただけだ。次はないだろう」
ベリアルがそう言っている間に改めて、ウルトラの父であるケンがやって来る。
「やあ」
「やあ、ケンーーいや、今はウルトラの父か。出世おめでとう」
「ありがとう。だが、私からは君に言わなくてはいけない事がある」
ウルトラの父は言い辛そうな面持ちで彼に告げた。
「君は故郷である光の国が破滅するかも知れない状況でありながら、戦う事を放棄した。
これは戦士として恥ずべき行為だと囁く者もいる。
よって、君から赤の戦士である事を剥奪する」
そう言うとウルトラの父は彼の肩に手を置く。
「私としても残念だが、青の一族以上に君は優し過ぎる。君は戦士としては相応しくない」
「俺はどうなるんだい?」
「辺境の銀河へと追放される」
「ーーっ!?待て、ケン!!」
流石のベリアルもウルトラの父の言葉に動揺する。
「確かにこいつは戦士としては不合格だろう!
それは認める!しかし、何故、追放なんだ!?」
「故郷を見捨てて、エンペラー星人に従おうとしたから……表向きはそう言う事になっている」
「……なん、だと!」
「だが、本当は彼には戦士として荷が重過ぎた事を見抜けなかった同期である私の責任だと思っている。
このまま戦う事を拒み、怪獣や星人のされるがままになっては光の国に彼の居場所がなくなるのも時間の問題だろう。
そればかりか、命の危険すらある。
だからこそ、争いのない辺境の銀河に彼を追放する。
これが彼にとって最良の選択だろう」
「馬鹿な!こいつは確かに戦いを放棄したが、エンペラー星人に戦うのを止めるように説得し続けていただけだろう!?それの何が駄目なんだ!?
それに争いがない銀河だと!そんなものがある訳がない!」
「その銀河は生まれたてだ。生命がそこそこ進化した程度に過ぎず、田舎に近い」
「テメエ!結局はテメエの独断か、ケン!」
ベリアルが憤慨する中、彼はウルトラの父を真っ直ぐ見詰める。
「追放の件はお受けします」
「おい!」
「前から思っていたんだ。力で正義を謳うウルトラ戦士が本当に正しいのか……。
全てを受け入れ、相手を許す事こそが戦士なんじゃないかと……」
「まだ、そんな事を言っているのか!
さっきも言ったろ!力こそが正義だ!
こいつをーー力で出世したケンを見ても、まだそんな事を言うのか!」
「その意見に賛同する訳ではないが、力があるにも関わらず、戦いを拒むだけでは守れないものもある。
全ての宇宙が手と手を取り合うと言う君の理想は素晴らしいが、所詮は絵空事に過ぎないんだよ」
相反する二人の意見にそれでも彼は自身の優しさーー甘さを貫き通した。
結果として彼は遥か彼方の別の銀河に飛ばされ、ベリアルは強い者が意見するその在り方に更に固執する事となる。
こうして、ベリアルはプラズマスパークを奪う算段をし始めるのであった。