キラッとプリ☆チャン -Duelist Memories- 作:パインの缶詰め
よろしくお願いします。
TVアニメ「キラッとプリ☆チャン」&「遊戯王VRAINS」と少しだけ似たちょっと違う二つの世界が混ざり合った世界観となります。
ミラクルキラッツやメルティックスター、Playmaker等原作のキャラクターが名前だけ登場する予定です。
数人の常連で賑わうカードゲームカフェ「cellar」
その店内に少女の悲痛な声が響く。
「プリ☆チャン始めてみたけどいいねがつかない!」
「まあねえ……デュエル配信なんてしてる人はごまんと居るし……よっぽど面白いプレイングとかじゃなきゃ見る人もいないよね」
アロハシャツを来た男が少女を慰めるように話しかける。
「そもそも! 今さらだけど絵面が地味なのよ! 私デュテルディスクも持ってないんだよ!? 大抵のデュエル配信はソリッドヴィジョンなのに私は机の上だよ!? そんなモン誰が見るのよ! 私だって見ないわよ!」
先ほどから嘆いているのは自称最強プリチャンデュエリストの少女、藤松クミ。
つい最近プリ☆チャン配信を始めたものの全くと言っていいほどいいねも視聴数も稼げていなかった。
「自分で言うのも悲しいけどめちゃくちゃデュエルが強いわけじゃないし……」
「いつも最強を自称してるクミちゃんがそんなこと言うなんてよっぽど凹んでるんだね」
「こんなんじゃライブも出来ないし女の子のデュエル友達なんて夢のまた夢だよぉ……」
「ハハハ……じゃあそんなクミちゃんにプレゼントだ。店長ー! そろそろ『アレ』渡しちゃってもいいんじゃない?」
「そうだねーじゃあ持ってくるよー」
「アレ……? そもそもプレゼント貰うような何かあったっけ……? 誕生日はまだ先だし……」
頭にはてなマークを浮かべるクミの前にプレゼント箱を持った店長があらわれる。
「はいクミちゃん、期末テスト学年1位だったんでしょ? そのご褒美とプリ☆チャン配信開始記念ってことでおじさん達からのプレゼントだよ」
「何これ? 開けちゃっていいの?」
「どうぞどうぞー」
ガサガサとラッピングを開けるクミ。
中身を見た瞬間、驚愕の表情へと変わる。
「ここここここれって……! デュっデュエルディスク……!? え!? ほんとにいいの!?」
箱の中で濃いピンク色をしたデュエルディスクが輝く。
「さっきも配信の絵面が地味だって言ってたしこれで少しでも配信の助けになるならね、さすがに最新型はお財布的に厳しいから一世代前のタイプだけど……」
「ううん! むしろこっちの方が嬉しい! だって色は違うけどPlaymaker様とお揃いだもん! ペアルック!」
「Playmakerって……LINK VRAINSを救ったっていうあの凄腕デュエリストの?」
「うん! もう最っ高にかっこいいの! ブルーエンジェルちゃんやGo鬼塚みたいなカリスマデュエリストからも勝利をかっさらっていく姿……ホントに素敵……! 私ももっと腕を上げたらIn to the VRAINSしてみたいなぁ……」
恋する乙女の様な表情で語り出すクミ。
「ハハハ……喜んでもらえたようで何よりだよ」
「店長! アロハさん! 本当にありがとう! この恩は絶対いつか返すね!」
「……」
そんなデュエルディスクにはしゃぐクミとその周りの和やかな雰囲気を遠目に見ている女が1人居た。
「……店長、お会計」
「はーい、今いきまーす。クミちゃん、ごゆっくり」
青い髪に落ち着いたメイク、さながら大人の女性といった雰囲気を醸し出すその女はまるでクミを中心とした今のカフェの空気から逃げるかのように席を立つ。
「アイスコーヒー600円ですー」
「……はい」
「1100円からー500円のお返しですーありがとうございましたー」
「……ごちそうさまでした」
会計を済ませた女は足早に店を出る。その場から一刻も早く立ち去ろうとしていたようにも見えたがなぜか少し名残惜しそうな表情をしていた。
「……ねぇ、今のお姉さんすんごい美人だったんだけど!」
「確かに美人だよね。よく平日のこれくらいの時間に見るよ」
「すっごい美人だし……なんかどっかで見たことある気がするんだけど……誰だっけ……?」
「この辺のデュエリストの間では有名じゃない? 美麗デュエルクイーン『桜空遊華』さん」
クミとアロハの会話を横で聞いていた金髪の青年が2人に話しかける。
「思い出した! 遊華さんだ! 私の学校の卒業生で確かミスコンも優勝したことがあるって!」
「しかもデュエルの腕前もかなりのものなんだってよ! 数ヶ月前からパッタリとデュエルしなくなったから引退したのかもしんないけど」
「よし! 次の動画のネタは決まりね! どうせ夏休みなんて暇なんだし! 毎日ここに来ればまた会えるでしょ!」
クミは何かを企むような笑顔を見せる。
「まさかデュエルでも挑む気か? 嬢ちゃんじゃ勝てないよ、そもそも受けてくれるかどうかさえ……」
「やってみなくちゃわかんないでしょ! 失礼なおじさんね!」
「おじ……!? 俺はまだ大学生だ! 失礼なのはどっちだ!」
「毎日来るのは大歓迎だけどー宿題とかは大丈夫なのー?」
店長が素朴な疑問を投げ掛ける。
「そんなもの夏休み始まって3日で片付けたわよ!」
「ハハハ……さすがだね」
アロハは呆れと称賛が混ざったような返事をする。
この日、デュエリストプリチャンアイドル藤松クミのサーガの1ページ目が刻まれようとしていた。
クミが遊華を待ち続けて3日目、ついにそのときがやってくる。
「いらっしゃ……」
「やっと会えたわ! 桜空遊華さん! 私とデュエルして!」
「……」
店長の声を遮り入店し、すぐに遊華を見つけたクミはまるで喧嘩をふっかけるかのようにデュエルを挑む。
「……話の前後が見えないのだけれど」
「あなたデュエル強いんでしょ! だから私とデュエルして!」
「店長、この子会話が通じないわよ」
「実はねー……」
店長はかくかくしかじかと遊華に状況を説明する。
あらかたの現状を把握した遊華は大きな溜め息をついた。
「……つまり、あなたの配信のいいねの為に私に出演しろって言うの? だったらお断りよ」
「あっ! いやそういうわけじゃなくて! 配信はおまけで! 強い人とデュエルしたいの! お願いしますっ!」
「私、いまデュエルディスク持ってないんだけど」
「あのっ! おっ、俺ので良ければ使ってください!」
先日クミにおじさんと呼ばれた金髪の青年が緊張しながら遊華にデュエルディスクを差し出す。
「……ッチ、余計な事を……」
「……え? 何か言いました……?」
「なんでもないわよ、ありがとう」
遊華は青年からデュエルディスクを受けとるとしぶしぶながら腕に装着する。
「……今からやるデュエルは配信しない、私が勝ったら二度と関わらないって約束するならしてあげる」
「わかった! それでいいよ! やろう!」
「ハァ……」
クミの即答に遊華はまたも大きな溜め息をつく。
「それじゃあ行くよー! せーのっ!」
「「デュエル!」」
かけ声と共に戦いの火蓋が切って落とされる。
「先攻はあげるわ」
「じゃあありがたくもらうわ! 私のターン!」
(この手札なら……よし!)
「私は手札から《暗黒界の取引》発動! 互いのプレイヤーは1枚ドローして手札を1枚捨てる! 私は《おジャマジック》を捨てるわ!」
「【おジャマ】ね……私は《マテリアルドラゴン》を捨てるわ」
「さらに《おジャマジック》の効果でデッキからおジャマ三兄弟を手札に!」
「バニラモンスターとはいえ手札増強……厄介ね」
「さらに私は手札から《融合》発動! おジャマ三兄弟で融合召喚! おいでませ! 《おジャマ・キング》!」
「攻撃力0の《おジャマ・キング》を攻撃表示ってことは……」
「お察しの通り! フィールド魔法《おジャマ・カントリー》発動! 攻守逆転! これでキングの攻撃力は3000! さらにあなたのモンスターゾーンを3つ封じさせてもらうわ!」
「EXモンスターゾーン付近が全滅か……まあリンクモンスターを使わなければいいだけね……」
ここで終わりかと思いきや不適な笑みを浮かべるクミ。
「まだよ!《おジャマンダラ》発動! おジャマ三兄弟、復活! カードを1枚伏せてターンエンド! さぁこのおジャマの大行進を阻止できるかしら!」
(伏せたカードはミラフォ! 万が一サンダーボルトとか撃たれても次のターンで立て直せる!)
「……私のターン、ドロー」
心底めんどくさそうにカードを引く遊華。
(このターンで終われそうね……とっとと済ませちゃいましょう)
「私は手札から《アロマージ-ジャスミン》を召喚」
「かわいい~! でも攻守逆転してても攻撃力は1900! キングには及ばないわ!」
「……フィールド魔法《アロマガーデン》発動、さらに効果を発動するわ」遊華 LP4000→4500
「そしてジャスミンの効果で1枚ドロー、さらにジャスミンの効果でアドバンス召喚! 《アロマージ-ベルガモット》!」
「そして2枚目の《アロマガーデン》発動、そしてベルガモットの攻撃力も上がるわ」遊華LP4500→5000
「攻撃力4400!?」
「バトル! ベルガモットで《おジャマ・イエロー》に攻撃! ダメージステップに《ツインツイスター》発動! 伏せカードとカントリーを破壊するわ!」
「あぁ! ミラフォが! おジャマたちの攻撃力も!」
「ミラフォか……ベルガモットには効かないから関係なかったわね……やりなさい!ベルガモット!」
「うわあああ!!!」 クミLP4000→0
「負けちゃった~!」
クミは完敗したとは思えないほどの清々しい笑顔を見せる。
「……これでいいでしょ、もう話しかけないでね」
立ち去ろうとする遊華へクミが問う。
「なんで! なんでそんなに強いのにデュエルやめちゃったの!」
「……負けたのにヘラヘラ笑ってるようなあなたには分からないわよ」
「ヘラヘラって……私はただ楽しくデュエルを……!」
「それが! 私にはもう理解できないのよ!」
「えっ…」
「……っ!」
つい声を荒げてしまったもののハッと我に帰り、遊華は店から走り去る。
「……」
「あ……俺のデュエルディスク……」
デュエルディスクを持ち去られた青年の声が店内の静寂を破る。
アロハが放心状態のクミへ声をかける。
「クミちゃん、今回は残念だったね……また別の……」
「……もう一度」
「え?」
「もう一度だけあの人とやりたい。関わるなって言われたけどもう一度だけ!」
「……でも」
「だって!あの人だって昔はデュエルを楽しんでたはずだもん!」
「……なんでそう思うんだい?」
「あの人はデュエルを楽しむ気持ちを『もう理解できない』って言ってた……だから昔はきっと楽しんでたはずなんだよ……それに!」
「それに?」
「デュエルが本当に嫌いになってしまったならあんなに大事そうにデッキを持ち歩いたりしない……! なによりこのお店を出るときにあんなに悲しそうな顔するはずないもん!」
「クミちゃん……」
「だからエゴでもいい! また来るまで待つ、もう一度だけ……本当にもう一度だけでいいからあの人とデュエルしてあの人の気持ちを知りたいんだ!」
少女の大きな決意が店の中に響いた。
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「なんなのよ……あの子……」
アテもなく店を飛び出した遊華は先程までデュエルしていた少女の事を考えていた。
「あ……デュエルディスク持ってきちゃった……今度返しに行かなきゃ……」
左腕に装着されたデュエルディスクを見つめる。
(私だって本当は……)
デュエルディスクに反射した自分が見つめ返してくる。
(でも……それはきっと許されない……あの子の笑顔の為にも、ね)
彼女の心の中には未だ暗雲が立ち込めていた。
To be continued