Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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特異点F:炎上汚染都市 冬木2004
レイシフト2015


 

 

 

 そこは過去か、未来か。

 

 照明一つない暗闇の中、一人の青年が手にした本の頁をめくる。

 その本の表紙に記された文字は、【逢魔降臨暦】

 彼はまるでその紙面を内容を何度も確認するように、何度も視線を往復させている。

 

 ―――どうにも。

 その姿は、とても困惑しているように見えた。

 

「……この本によれば、2018年9月。普通の高校生、常磐ソウゴ。

 彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる未来が待っていた」

 

 誰へと向けた言葉なのか、一人しかいないその場所であえて語り出す青年。

 その目は彼の傍に置かれた巨大な時計に向けられている。

 

「だが2015年7月。彼は魔王としての一歩を踏み出す前に、想定外の事態に巻き込まれてしまう。

 これは果たして魔王の思し召しか、或いは何者かの陰謀か……」

 

 そこまで語った彼は目を閉じ、口を閉じ、手にしていた本もぱたりと閉じる。

 畳んだ本を脇に抱え、彼はそのままゆったりと暗闇の中へと歩み出し―――

 

 やがて、その姿はどこにも見えなくなった。

 

 

 

 

 

「おじさん、ただいまー」

 

 時計屋、クジゴジ堂。

 営業中の店舗であり自宅でもある建物の扉を開き、常磐ソウゴが帰宅を告げる。

 

 ソウゴがおじさんと呼ぶ大叔父、常磐順一郎。

 彼は店に入ってすぐのカウンターで、いつものように古いラジオをいじっていた。

 

「あ、おかえりソウゴ君」

 

 細かい作業をしていたのだろう、ラジオをきつく見つめていた順一郎。

 そんな彼はラジオから顔を上げて、眼鏡の位置を直しながらソウゴに対して向き直った。

 

「今日はラジオの修理なんだ」

「うん。うち、時計屋なんだけどねぇ」

 

 そう言いながらも順一郎の手つきは慣れたものだ。

 ソウゴもまた、時計屋だと言いつつ別のものを修理している大叔父の姿を見る事に慣れている。

 

 帰宅の挨拶を済ませた順一郎が再びラジオに視線を向けた。

 なら自分も鞄を置きに部屋へ行こうと、靴を脱いで家に上がろうとしたところ。

 順一郎が今まさに思い出したかのように、あっと大きな声をあげた。

 

「そうだソウゴ君。夏休み、何か予定ある?」

 

 何気ない風を装った問いかけ。

 といっても、順一郎も答えは大体分かっているだろう。

 

 毎年大した用事もないソウゴは、毎日昼頃まで寝て過ごしている。

 そんな事実を当然の事ながら、彼は知っている筈だ。

 

「夏休み? んー、別に何も」

「だったらこれ、どうかなって思って」

 

 きょとんとしていた彼の前で、順一郎が一枚のチラシを机の下から引っ張り出した。

 ソウゴは不思議そうにしながらもそれを受け取って、上から下まで文面を眺めてみる。

 

「カル、デア?」

「うん。何かね?ちょっと前にうちに時計の修理依頼がきてさ。久しぶりに!

 その時、そのお客さんがもしよかったらソウゴ君にどうぞって置いていったんだけど」

 

 そのチラシにはちょうど学生が夏休みに入ったころから始まる、カルデアなる場所で行われるボーイスカウト的行事がある、と書かれていた。

 

「ふーん……」

「ソウゴ君の将来にも役立つ体験が出来るかもしれないしさ。

 それにほら、こういう行事だと友達もたくさん出来たりするかもしれないし……どう?」

「でもこれ、王様……って感じじゃないかな」

 

 うーんと首を傾げるソウゴ。

 

 ―――彼には幼少期から王様になるという夢があった。

 その夢のためにこの活動が有益になるか、というと疑問。そこに彼は首を傾げている。

 いつも通り、というべきその言葉を聞いて順一郎はがくりと肩を落とした。

 

「……そうだよね。王様だもんね」

「うん。でも……何かちょっとだけ気になる気がする」

 

 理由があるわけではなく、直感的なものだと言いたげに。

 だが順一郎は珍しくそういった行事に興味を示したソウゴに対し、酷く顔を綻ばせた。

 ソウゴがそんな風に興味を示すものは稀で、彼はそれを喜んでくれている。

 

「そう!?じゃあ、せっかくだし応募だけでもしてみよう!

 ほら、こういう経験も王様になる上できっと役に立つからさ! 多分!」

「うーん……まあ、うん」

 

 おじさんが喜んでいるのに水を差す気にもならず、曖昧に頷く。

 どっちでもいい、というのが本音であったから否定する気にもならず。

 

 こうしちゃいられない、とラジオを放り出してすぐさま応募に取り掛かる順一郎。

 ソウゴはチラシを何となく睨んだまま、未知の感覚に首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 自分の興味が何に向けられているかも分からないまま、踏み込む事になる謎の世界。

 なんと集合場所と言われた場所に向かってみれば、

 

『秘匿性の高い施設だから』

 

 と。ほとんど簀巻きにされて、連行されるように連れてこられたのだ。現在位置は分からないが、移動時間から考えるに恐らく、もはや秘境と言える土地なのではなかろうか?

 

 そんなわけで、常磐ソウゴは夏休みにカルデアという場所に辿り着いていた。

 黒服に促されるままに踏み込んだ館内。

 目に入るのは妙に広くも整備の行き届いた様子の、綺麗な施設内部。

 

 どうすればいいんだろうと周囲を見回していると、施設の奥から一人の男性が歩いてくる。

 夏だというのに、季節外れなモスグリーンのロングコートを着た人だった。

 施設の中は空調が効いているから大丈夫だろうが、外に出たら暑そうだ。

 

「おや。君は……ああ、そうか。今日から配属された新人さんだね?」

 

 彼はすぐに目の前にいるソウゴに気付き、微笑んだ。

 人の好い笑みを浮かべた紳士は、ソウゴがここに戸惑っている事を悟ってだろう。

 こちらの問題を解決すべく、歩み寄ってきてくれた。

 

「あ、うん。多分……あんたは?」

「私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。君の名前は?」

「常磐ソウゴだけど……」

 

 答えると彼は小さく頷き、顎に手を添える。

 思い返すような所作をとってから、僅かに芝居がかった物言い。

 そんなやり方で分かり易いように、ソウゴの身分らしい立ち位置を語った。

 

「ふむ、常磐ソウゴくんか。ああ、その名前は確かに覚えがある。招集された48人の適正者、最終便で来た二人のうちの一人というワケだね。

 ようこそカルデアへ、歓迎するよ。キミは一般公募のようだが、訓練期間はどれくらいだい? 一年? 半年? それとも最短の三ヶ月?」

 

 彼の口から出てくる出てくる、ソウゴにはさっぱりの情報たち。

 当然のように、ソウゴは自分がここでやるべき事が正直よく分かってなかった。

 何か、訓練が必要な専門的な事もあるのだろうか。

 

 その事について、素直に本当の事を告げておく。

 

「うーん。訓練とかはしてないけど」

「おや。それは……そうか、数合わせのために緊急で採用した一般枠があったな。君はそのひとりだったのか。申し訳ない、配慮に欠けた質問だった。

 けれど一般枠だからって悲観しないでほしい。今回のミッションには君たち全員が必要なんだ」

 

 別に気にしていないのだが、今のは実は配慮が必要な案件だったらしい。

 もしかしたらこの施設で他の人に話しかける時、ソウゴの方こそそれを気にかけた発言を心掛けないといけないかもしれない。

 そういうの苦手だな、と彼は難しい表情を浮かべる。

 

 そこでふと何かに気づいたように、レフは頭を揺らした。

 

「―――おっと。つい話し込んでしまったね。

 すまないが、人を探していてね。私から声をかけておいて申し訳ないが……」

「いや、大丈夫。ちなみに俺、これからどうすればいい?」

「じきに中央管制室で所長の説明会がはじまる。

 この通路を真っすぐいけば辿り着くから、そこで他の参加者と一緒に待っているといい」

 

 そう言って大通りらしき通路を指差すレフ。

 つまりこの一番大きい道を通り、寄り道しなければ大丈夫なのだろう。

 それならば迷う必要もなさそうでありがたい。

 

「そっか。ありがとう」

「いや。これからは同僚としてよろしく、常磐ソウゴくん」

 

 シルクハットのツバを掴み、微笑みながら軽く礼をするレフ。

 そのまま流れるように、彼は分岐した別の通路に入っていった。

 

「よく分かんないけど、言われた通りにこの先に行って待ってればいいのかな」

 

 言われた通りに通路の先を目指す。

 大規模な施設の割りに、途中で人とすれ違う事もない。広いわりには人は少ないのだろうか、と首を傾げながら歩いていると、その答えになる光景に辿り着いた。

 部屋の中央にでかい地球儀のようなものがある広い部屋。

 

 そこでは既に大量の人が整列していた。

 

 その広間の中心だけでも40人超の人間が整列している。

 周りで動いている人間たちも含めればもっとだ。

 ここで何かがあるから他の人間たちを見なかった、という事なのだろう。

 

 レフが言ったのは、あの40人くらいの中に混じって並んでいろという事だったのだろうか。

 どこに入ればいいんだろ、と首を傾げていると近くのスタッフが声をかけてくれた。

 

「君、名前は?」

「常磐ソウゴだけど……」

「常磐ソウゴ……20番だね。あの列に並んで」

 

 そう言って示される行先。

 その列の中に入り込みながら今言われた言葉をなんとなしに呟く。

 

「20番か……」

 

 ―――視界がブレる。立ちっぱなしで意識だけが吹き飛ばされるように。

 

 自分が20人目、という数字が頭の中で渦を巻く。

 まだ、17人目のはずなのに。まだ、次代の王の時代は訪れないはずなのに。

 砂嵐がかかった視界のなかで、何かの光景が視界の端を擦過していく。

 

 2000、2001、2002、2003、2004、2005、2006、2007、2008、20

 09、2010、2011、2012、2013、2014、2015、2016、2017、2018

 ―――2068

 

 足りない。まだ、2015年だ。

 力が目覚めるには早すぎる。いや、とっくに足りている。

 何故ならば――――『()()()()()()()()()()()()()

 

 ブレた視界を金色の何かが横切った。

 

 赤茶けた大地の上に立つ金色の王者。

 彼が手を翳すと周囲に破壊が巻き起こり、彼に立ち向かう人間たちが滅び去る。

 

 ――――()()()()()()()

 

 彼の顔が、彼を見ているソウゴを向く。

 その手が振るわれると同時に、ソウゴの視界が爆炎に包まれた。

 

 そしてそれと全く同時に。

 ソウゴの五感の全てが爆発と炎によって塗り潰される。

 

 

 

 

 

「……ぅん、あれ」

「やぁ、目覚めたかい?我が魔王」

 

 ふらつく頭を押さえながら、体を起こす。

 目の前にはまたもや、こんな時期だというのにロングコートを着た一人の青年がいた。

 彼は首に巻いたストールをぱたぱたと叩き、火の粉を飛ばしている。

 

「あんたは……?」

 

「―――私の名はウォズ。

 時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者、オーマジオウの家臣。

 つまりは、君の忠実なるしもべだ」

 

 彼はそう言いながらゆるりと手を差し伸べてくれた。

 きょとんとしつつもその手を取り、引き起こしてもらい立ち上がる。

 

 立ち上がって見てみれば、周囲は爆発による破壊痕と爆炎の残り火。

 

「……あんたが助けてくれた、って事? 他の、みんなは?」

「さあ? 私は君のしもべだ。彼らを私が助ける道理はないさ。

 恐らくはこの施設の人間がどうにかするだろう」

 

 どうでもよいとばかりに肩を竦めるウォズ。

 助けてもらった身とはいえ、その物言いに一つ言ってやろうとして―――

 背後から、別人の声が飛んできた。

 

「生存者!? この状況で―――!」

 

 声に対し振り向くと、そこには白衣の男性がいた。

 その後ろにはもう一人、赤毛の少女の姿がある。

 

「いや、とにかく無事で良かった。ここはもうじき隔壁が下りる。

 すぐに第2ゲートから外へ避難して、救助を待ってくれ!」

 

 そう指示して彼は、自分は指示した方向とはまるで別の方へ行こうとした。

 咄嗟にその彼の背中に対して疑問を声を投げる。

 

「えっと、あんたはどうするの?」

「……ボクは地下の発電室に向かう。カルデアの火を止めるわけにはいかないからね。

 キミたちは急いで外へ向かってくれ、もう時間は無いからね!」

 

 念を押すようにそう言って、もう彼は止まらずに走りだした。

 この場所の地理は分からないが、言葉通りに地下へ向かうのだろう。

 カルデアの火、というのが何かは分からないが……

 それだけ、大事なものなのだろうか。

 

 その後ろ姿を見送って、少女の方へと視線をやる。

 彼女も戸惑っているが、この状況で自分に出来る事はないと理解しているのだろう。

 顔を見合わせて、この場から―――

 

「ねえ、ウォズだったっけ?」

「その通り。合っているよ、我が魔王」

 

 急げと言われたが、やっぱり確認しておかないといけない。

 そう感じてウォズに向かい合う。

 

「あんたなら、今の人の助けになれるの?」

「―――我が魔王。今の君ではこの程度の状況すら安全とは言えない。

 私を遠ざける事は望ましくないね。

 もし私を彼の助けにしたいと言うなら、まずは自分の安全を確保したまえ」

 

 ウォズの語る自分の心配に、偽りは感じない。

 ならせめて自分たちはすぐに避難して、彼に任せた方がいい。

 多分、彼は何とかできる力を持っている。そんな気がする。

 

『システム レイシフト最終段階に移行します。

 座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木―――

 ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。

 アンサモンプログラム セット。

 マスターは最終調整に入って下さい』

 

 突然管制室に響き渡るアナウンス。

 何かが、明らかな異常事態でも停止せず、このまま決行されようとしている。

 詳細なんて分からない。

 

 ただ、まずいという確信が心に湧き上がってくる感覚。

 

「……様子がおかしいよ。急いで戻ろう?」

 

 ウォズと話していたソウゴに少女が声をかける。

 彼女にも白衣の彼への心配はあったが、現状ではそれしかなかった。

 少女の言葉にソウゴが頷く。

 

 そのやり取りに肩を竦めたウォズが、先導するように一番前を歩き出した。

 しかし三人が出口に向けた足を動かし出して、すぐのこと。

 

 ―――今まで瓦礫で隠れていた光景が、二人の足を止めさせた。

 

「…………、あ」

 

 そこには一人の少女が横たわっていた。

 

 彼女の上には大きな瓦礫が横倒しになっている。

 真っ赤な光景。それは当然、炎の赤色だけではない。

 

 一目で察するに足る、致命傷に至った惨事。

 

「彼女の傷は既に致命傷のようだ、我々が足を止めて出来る事はないよ」

 

 その事実に対してウォズは足を止める気もなく。

 そしてソウゴにもそうすべきだと促してくる。

 ソウゴの隣にいた少女は、ウォズを小さく睨むと倒れている少女に駆け寄った。

 

「……しっかり、いま助ける……っ!」

「―――…………いい、んです。

 そちらの方の言う通り、もう、助かりません、から。

 それより、はやく、逃げないと」

 

 少女の小さな訴え。

 既に助からない命は、あなた達だけでも生きてほしい、と。

 本当に心から願っているようだった。

 

「ウォズ―――」

 

 どうするべきか、どうできるか。

 選択肢なんてそもそも無い、背中を焼く残り火から逃げるしかない。そんな状況。

 そんな中で、ソウゴが逡巡するような態度をみせる。

 

 そうしている内に。

 このカルデア管制室に突然、太陽かと見紛う何かが発生した。

 

「おや?」

 

 ウォズが不思議そうにそちらを見上げる。

 それは管制室中央にある地球儀らしき何かが、赤く染まっていく光景

 

『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。

 シバによる近未来観測データを書き換えます。

 近未来百年までの地球において人類の痕跡は 発見 できません。

 人類の生存は 確認 できません。人類の未来は 保障 できません』

 

 不安を煽るようなアナウンスが響く。

 太陽のような何かを眺めながらそれを聞いたウォズは、ただ小さく笑いを漏らす。

 

 瀕死の少女もまたその光景を見上げ、小さな声で呟く。

 

「カルデアスが……真っ赤に、なっちゃいました……

 いえ、そんな、コト、より―――」

 

 彼女が体を動かそうとするのを、付き添う赤毛の少女が押し留める。

 そんな彼女たちの背後で、唯一だったろう出口が閉鎖されていく。

 

『中央隔壁 封鎖します。館内洗浄開始まで あと 180秒です』

 

 続いて響く、タイムアップの報せ。

 

「……隔壁、閉まっちゃい、ました。……もう、外に、は」

 

 申し訳なさそうな小さな声。

 彼女の傍に寄り添う少女は、彼女の手をとって小さく微笑んだ。

 

「……うん、そうだね。一緒だね」

 

 二人の少女は手を取り合っている。

 いや。力無く垂れた少女の手を、赤毛の少女が優しく握りしめている。

 

 それを見て、自然と言葉が出てくる

 

「……ねえ、ウォズ。ここからどうにかできる方法、知らない?」

「―――我が魔王の望みとあれば仕方ない。

 私と君、それにそちらの少女の三人をここから脱出させるくらいなら何とか」

「そうじゃなくて」

 

 ウォズの言葉を遮って、彼の目をまっすぐに見据える。

 彼が自分の臣下だというのなら、そんなことは分かりきっているはずだ。

 自分は。この光景を看過するような王様になりたかったわけではないのだから。

 

「ウォズの言う王様になった俺って、この状況であの女の子を助ける事も出来ない王様?

 だったらそれって、俺のなりたかった王様なんかじゃなくない?」

「―――――なるほど」

 

 ソウゴの言葉を聞いて、ウォズが大仰に頷いた。

 

『コフィン内マスターのバイタル 基準値に 達していません。

 レイシフト 定員に 達していません。

 該当マスターを検索中・・・・発見しました。

 適応番号47 常磐ソウゴ 適応番号48 藤丸立香 をマスターとして 再設定 します』

 

 自分の名前がアナウンスに乗った。咄嗟に周囲を見回す。

 何かが始まる。本来有り得なかった始まりが。今、ここから。

 そんな気がする、という感覚が全身を奮わせる。

 

「なら、仕方ない。未だ2015年ではあるが、我が魔王が力を望むと言うのであれば―――

 望みさえすれば、常に最大最高の力と歴史は君と共にあるのだから」

 

 ウォズが脇に抱えていた本を手にして、大きく腕を横に広げる。

 彼はまるでこの光景を祝福するように、ソウゴに向けて微笑んでみせた。

 

『アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始 します。

 レイシフト開始まで あと3 2 1―――全工程 完了。

 ファーストオーダー 実証を 開始 します』

 

 そうして、その場の全てが光に包まれる。

 この場に居合わせた全員がそれに呑まれ、そしてこの場から姿を消した。

 

 

 


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