Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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久しぶりにRXを見てたら霞のジョーにセイラさんって恋人がいたので初マンホールです。セーラさん!
でもその回がRXのシャドームーン初登場回なのでそれどころじゃないです。
 


本音と恐怖と施しの英雄1931

 

 

 

 両腕のブースターを噴射し、ロケットの如く空を翔けるジオウ。

 それを追撃するのは、炎の翼を噴射しロケットの如く翔けるカルナ。

 二基のロケットは空中で幾度も交差し、遂には正面から激突した。

 

「―――ねえ! 何でエジソンに何も言わないの?」

 

 槍とブースターをぶつけ合い、空中で鍔迫り合いをしながらそう問いかける。

 

「無論、トーマス・エジソンという男は世界を照らした英雄だからだ。

 どのような屈折した道を辿ろうと、最終的にはそこへ辿り着くと信じるだけだ」

 

 返答と同時にブースターを押し込む勢いで振り抜かれる槍。それがそのままフォーゼアーマーの胴体へと直撃する。

 盛大に飛び散る火花とともに吹き飛ばされるジオウ。彼は即座に各部のブースターを噴射して体勢を整え復帰し、しかし直後に来襲するカルナの一撃に更に吹き飛ばされた。

 

「オレは彼に助力を請われ、そしてそれに応じた。ならば、それを果たすまでだ。

 お前が彼女にそうしたように、その願いの是非はオレからはあえて問うまい。

 進むと選んだ道の正否は、エジソン本人こそが決めることなのだから」

 

 炎とともに更にカルナが襲撃する。

 吹き飛ばされた勢いのまま回転を始めたジオウは、その回転の勢いのままブースターモジュールから手を放す。回転の勢いのまま投げ放たれた一撃が噴射でさらに加速。カルナを目掛けて、一直線に飛んでいく。

 

 迫りくるブースターを槍の一閃が迎え撃つ。

 弾いた衝撃に前進が止まるカルナ。

 押し留められた彼が微かに目を細めた先には、その彼に向けられる銃口があった。

 ジオウの手に呼び出されたジカンギレード。

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

「―――そっか。なら……勝つのは俺たちじゃない?」

 

〈フォーゼ! スレスレシューティング!〉

 

 ジカンギレードの銃口、そして片方残したブースターモジュールを反転させた噴射ノズル。

 その両方から攻撃が撃ち放たれた。ブースターからは今まで吸収した炎が噴き出し、ギレードからは無数のミサイルが不規則な軌道を描きながらカルナに迫る。

 

 体を翻し、自身に向かって伸びてくる火炎を回避。

 更に周囲から囲い込むように飛来するミサイルを槍でもって切り捨てていく。

 両断されて宙を舞い、そのまま爆散していくミサイル群。

 

「―――――」

 

「エジソンが世界はどうでもいいと思ってアメリカだけ救おうとしてるならいいけどさ。

 世界は救いきれないから仕方なくアメリカだけを選んだなら―――選んだ自分が一番、自分の正しさを信じられないでしょ?」

 

 帰ってきたブースターモジュールを掴み取りながら、ジオウはそう告げる。

 

「そうかもしれんな。だが、お前はどうだ仮面の戦士。

 結論が変わらぬと知りながら、進む道の決定を彼女に委ねたのは―――果たして、彼女たちへの信頼を理由とするものか? その言葉は何より、お前がお前に向けたものだろう」

 

 そう言い返し、カルナが再び空を翔ける。

 言われたジオウの動きが微かに鈍り、その瞬間に炎の流星と化した槍が彼を激突した。

 空中で大きく揺らぎ、体勢を崩されるジオウ。

 すぐさま体勢を立て直した彼がブースターを武器にカルナに対し逆襲する。

 

「誰よりも自分を信じようとしながら、お前の心には自分への疑念が常に渦巻いている。

 お前は信頼や友との絆という綺麗事を蓋にして、その疑念を心中に閉じ込める。だがそれは本来、閉じ込めて抱えておくべき感情ではなく、少しずつ解きほぐしていくべきモノだ。

 お前の方こそ誰より自分で理解できているのだろう。自分は高みに立つことはできても、前に進めてはいないのだと」

 

 ブースターと槍が弾け合い、その勢いのままジオウはきりもみ回転を開始した。

 ドリルの如く突撃を開始したそのロケットに一撃見舞われ、弾き返されるカルナの体。

 炎の翼で体勢を立て直し、彼は即座に切り返す。

 

 即反転して突き出された槍がフォーゼアーマーに捉え、火花を散らす。

 

「そう、かな……! 確かに俺だけじゃ前には進めなかったかもしれないけどね!」

 

 衝撃で背後に反った体を振り戻し、同時に腕のブースターを振り抜く。

 引き戻した槍でそれを受け、カルナは僅かに後退した。

 少しだけ離れた距離。その状況で、ジオウは腕を前に突き出して宣言する。

 

「―――でも俺は、みんなと一緒に俺の夢を叶える。俺は、世界の全てを救える最高最善の王様になる!」

 

 彼の言葉に、どこか納得したかのようにカルナは目を細めた。

 

「―――なるほど。お前の疑念は恐怖からか。

 世界を変革するという夢への憧憬と、世界の命運を左右できる力への恐怖。強すぎるほどの力が求められる願いを持ちながら、その強すぎる力に対し怯えてさえいる。

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 日輪を背負い、槍を構え直したカルナは表情を変えずに彼の心を見抜く。

 ただ平坦に語る彼を前に、ジオウはブースターを握る拳を握り直した。

 

「オレが見た限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 オレの持っているお前たちに対する情報は多くはない。が、それでも幾つか耳に届いたお前たちの会話から、ある程度の推測はできる。お前はクー・フーリンをサーヴァントとしていて、その彼は黒いクー・フーリンに討ち取られたのだろう?」

 

 微かに体を震わせるソウゴを前にし、しかしカルナの口は止まらない。

 

「お前がまず怯えたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()ことだろう。

 自身の二面性にこそ怯えるお前に、それは何よりも衝撃だったろう。そしてまず真っ先に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それこそがお前の二面性の証明たりえるからだ」

 

 フォーゼアーマーが変形し、ロケット形態へと変形する。

 そのままブースターを吹かし、高速でカルナへと向かい突進した。

 日輪の炎を推力に、それを正面から受け止め拮抗するカルナ。

 

「そんな、ことは……ない!」

 

「嘘だな」

 

 たったの一言で両断される。ジオウの仮面の下、ソウゴの顔が苦渋に歪む。

 

 ―――ライダーの力を継承するたびに、自身の力が膨れ上がっていくのを感じる。

 その力は最高最善の魔王になるためのものだと確信している。そのつもりだ。

 けれども、もしいつかそれに呑まれてしまったら?

 最低最悪の魔王になるのかもしれない。自身の目で一度見た、あのツクヨミたちが生きていただろう時代を滅茶苦茶にしたオーマジオウのように。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その考えが消えない。けれど、それは―――

 

「お前がそう苦悩していること自体が、お前を信じる者への裏切り……か。

 その不安を口にして吐き出すことすら、信じてくれる者への裏切りと感じるのだろう。確かにお前に信頼を預けていた者が、お前からそう白状されれば失望する者もいるかもしれん」

 

 槍を捻り、ロケットを受け流す。

 そのまま流れるように槍を叩き付けられたフォーゼアーマーが機首を地上に向けて落ちていく。

 即座にその後ろから追い縋るカルナが、更に槍の一撃を突き出した。

 槍にやられた脚部のブースターから火を噴き、墜落していくジオウ。

 

「ぐ、ぅっ……!」

 

 手に火球が浮かべ、それを無数の炎弾と変えて撃ち放つカルナ。

 炎は落下中のジオウに追いつき、その全身に直撃していく。

 吸収しきれなくなった炎をブースターから噴き上げ、地面へと着弾。

 地面から炎の柱を立ち昇らせながら、ジオウは大地に伏した

 

「ぐ、あ……ッ!」

 

 地面に半身を埋めたジオウの体を包むフォーゼアーマーが消えていく。

 素体に戻ったジオウのすぐそばにカルナが着地する。

 

「だがそれが当たり前だ。

 己の在り方を他の誰かに期待されたところで、本人にとって何が変わるわけでもない。

 お前の思い描く未来の姿が何であれ、それを期待できるのはお前だけだ。

 だからこそ、お前のその感情は詰んでいる。分かっているはずだ」

 

 黄金の槍を軽く振るい、残火を散らす。

 地面から起き上がろうとするジオウを見据え、カルナは言葉を続ける。

 

「お前はいま、仲間の存在で恐怖を誤魔化しているだけだ。

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 お前の言う世界を救う王とは果たして、臣下を動かすだけで何かを成す王のことなのか?」

 

 そのまま歩み続けていたカルナがジオウの元まで辿り着く。

 ゆるりと引き絞られる黄金の槍。

 それが彼の胸を目掛け、放たれて―――

 

 炎の剣と、雷の剣が同時に彼を来襲した。

 槍で受け止めるもその勢いのままに大きく後ろに吹き飛ばされるカルナ。

 彼は地面を滑る体を押し留め、乱入してきたネロとモードレッドに視線を送る。

 

「ふむ」

 

 槍を構え直しながら、彼の視線は二人のセイバーに向かう。

 

「ソウゴ!」

 

 体を起こそうとしているジオウに寄り添い、ツクヨミが彼を起こそうとする。

 アーマーから土を落としながらゆっくりと起き上がるジオウ。

 震えているその肩を見て、ツクヨミは顔を渋くした。

 

「あなたの言う最高最善の魔王っていうのは、所長さんからの期待を裏切るような王様なの!?

 本当に、あなたが私たちの知っているオーマジオウにならないっていうのなら……! そんな考えは跳ね除けて、守るべきものを守れる王様になってみせなさい!!」

 

 ツクヨミの発破を聞き、微かにカルナが眉を上げる。

 しかしすぐさまその表情を元に戻し、ネロとモードレッドとの対峙に意識を戻した。

 そんな彼の目の前でジオウが立ち上がる。

 そして、彼の手の中には新たなライドウォッチが握られていた。

 

〈ダブル!〉

 

 フォーゼからダブルにライドウォッチを変更する。

 そのウォッチを装填したドライバーを回転待機状態にし、彼は叫ぶ。

 

「俺は……! 未来をあんな世界には絶対させない……! 俺たちは世界を救う―――!

 俺が王様になりたいのは……世界の全部を良くしたいからなんだから!!」

 

〈アーマータイム! ダブル!〉

 

 ジクウドライバーの回転と同時、二機のメモリドロイドが出現。

 それがアーマーへと変形し、ジオウの上半身へと装着される。

 インジケーションアイが“ダブル”と変わり、ジオウはダブルアーマーへと換装した。

 

「俺は、オーマジオウになるなんて罪は絶対に犯さない……!

 ライダーの力は、誰かを助けるためのものなんだ……! カルナ……ごめん、タイマンっていうのは無しにしたい。俺はひとりじゃあんたに勝てない、みんなの力を……借りたい!」

 

 風の鎧を渦巻かせながら、ジオウはカルナを見つめる。

 問われた彼は何のことはないというように、その問いに対して答えを返した。

 

「元より、オレひとりでお前の相手をしていたのはこちらの都合だ。

 お前がお前の仲間の力を借りることに何を謝る必要がある」

 

「……ありがとう。ツクヨミ、ネロ、モードレッド……力を貸して!」

 

 体の調子を確かめるように左腕を持ち上げ、軽く捻った。

 そうしながら声をかけた二人の戦士の声が返ってくる。

 

「うむ、任せておけ。まったく、そなたは色々抱え込みすぎではないか?

 もう少し気楽に生きればよいものを」

 

「はっ、アーサー王を超えるなんて息巻いておいて情けないこった。

 ま、ロンドンでの借りを返す意味で今回ばっかりは手伝ってやるよ―――!」

 

 雷とともにクラレントが奔る。

 それをカルナが受けると同時、炎の剣が横へと回り込み彼を襲撃した。

 モードレッドの押し込みを堪えていた体から力を抜き、素直に吹き飛ばされることでネロの剣閃から距離を取る。

 

 その瞬間、カルナを目掛けて赤い光弾が放たれていた。

 そちらに一瞬だけ目をやり、光弾に向け軽く指を向ける。迎撃のために形成される炎の弾丸。それが放たれ、ツクヨミからの銃撃を全て撃ち落とす。

 

「はぁああああ―――ッ!」

 

 炎と赤い光が相殺しあう中を、風を伴いジオウが走る。

 放たれる太陽の熱を風で逸らし、彼は黒い光を帯びた拳を叩きこんだ。

 防ぎ切れず、その胸に渾身の一撃を受けるカルナ。

 だがそれは黄金の鎧による守りを突破するには足りず、彼の表情を変えるには至らない。

 

 そのまま飛び立とうとするカルナ―――

 

「いざ開け、“招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)”―――!」

 

 が、その場に天井を設けられて微かに眉を顰めた。

 薔薇の皇帝の有する黄金劇場が、その戦場を塗り替えていく。

 

 そして豪華絢爛な景観を背負いながら薔薇を散らす皇帝の隣で、雷が立ち上る。

 展開するクラレントから解放される血色の光。

 鮮烈なまでに輝く真紅と、邪悪なまでに暗い深紅が混じり合って弾け飛ぶ。

 

「この場所ごと行くぞ―――!」

 

「致し方なし! 余は許す!」

 

 愛剣“原初の火(アエストゥス エストゥス)”を床に突き立てながら、ネロはその光の解放を許可する。

 それに僅かに口の端を吊り上げたモードレッドが、雷を伴う血の刃を形成しながら邪剣と化した王剣を振り被った。全力を乗せた一歩を踏み切ると同時、彼女の咆哮が轟く。

 

「“我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)”―――――!!」

 

 瞬間、その場に溢れる血色の極光。

 そのまま劇場ごとぶち抜かんと迸るそれを前に、カルナは槍を構え直すと同時―――

 投擲の姿勢へと移行していた。

 

 日輪の炎を纏い、黄金の槍は圧倒的な熱量の塊と化していく。

 

「王剣か。それほどの剣との撃ち合いとなれば、こちらも相応をもって対抗せねばな。

 我が身を呪え、“梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)”――――!!」

 

 カルナの宝具が解き放たれる。目の前に迫る雷と赤光の奔流の中に。

 その瞬間に、それは地上の太陽と化していた。

 クラレントが放ち続ける暴虐を逆に呑み込み、投げ放たれた炎の槍は一直線にモードレッドを目掛け逆流してくる。

 

「ッ……!!」

 

「っ、これほどか……ッ!」

 

 ここがネロの絶対皇帝権内である以上、弱体化はしているはずだ。

 だというのにカルナの一撃は容易なまでに、クラレントの一撃を凌駕した。

 迫りくる太陽を押し留めるために死力を振り絞るモードレッド。

 徐々に押しやられる勝負の中で、彼女は強く歯を食い縛る。

 

 槍を手放したままに着地するカルナを目掛け、ジオウが殺到する。

 風とともに迫る彼に視線を向けると同時、日輪を思わせる形状の鎧の一部が動作しカルナの前に展開した。その鎧に叩きつけられたジオウの拳は、彼まで届かない。

 

「っ……!」

 

「武具など前座。真の英雄は眼で殺す―――!」

 

 鎧で受け止めたジオウを前に、カルナが白い髪を掻き上げるように手を持ち上げた。

 その体勢のまま彼は鎧を動かすことでジオウの拳を弾き、同時に眼を見開く。

 溢れる熱量が収束し、光線と化して目前に立つジオウを打ち砕かんと迸る。

 

 ドッ、と空気が爆ぜ、風を灼き払う熱線が殺到した。

 カルナの眼から放たれる光線は直撃。ダブルアーマーを焼却せんとその熱量を昇華する。

 

 その一撃を前に、即座にジオウはアーマーの色を変えていた。

 緑は黄に染まり、黒は鉄に変わり、その光線を鉄と化した鎧でもって受け止める。

 今にも溶断されるのでは、というほどに一瞬のうちに赤熱する鋼鉄の鎧。

 

 それを―――

 

〈マキシマム! タイムブレーク!!〉

 

 限界を引き延ばすために行われるドライバー操作。

 ダブルウォッチがエネルギーを発散し、アーマーのパワーを限界まで発揮させる。

 ジオウは体を捻りながらショルダーアーマーを分離。

 その反動で攻撃から弾き飛ばされ、カルナの放つ“梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)”の内側へと体を捻じ込むように突進してみせた。

 

 同時にジオウから離れた鉄のメモリドロイドは光線を浴びせられた勢いのまま吹き飛び―――しかしそれを、幻影の魔力を帯びた黄色のメモリドロイドが腕を伸ばし、掴み取っていた。

 ぐいん、と思い切り光線の軌道から引っ張り出される鉄のメモリドロイド。

 

 それが、引っ張り出された勢いのままに思い切りカルナに投げつけられた。

 飛来するのは灼熱する鋼鉄の鎧。自分を目掛けて飛んでくるメモリドロイドを黄金の鎧で打ち払いながら、目から放つ光線を撃ち切ると同時―――再びジオウへと視線を向ける。

 

 ―――カルナの宝具に焼き尽くされた黄金劇場が崩れ落ちていく。

 クラレントを容易に押し切る太陽の槍はその距離を詰め切り、そのままモードレッドを滅ぼさんと炎を上げる。

 その一撃が彼女に届く、ほんの寸前に。

 

「“童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)”―――――!!」

 

 劇場が完全に崩壊する直前、真紅の刃が太陽の槍に横から突き立てられた。

 お世辞にも拮抗しているとは言えぬまでも、しかしクラレントの光がその一撃を押し留めているのであれば。横合いから衝撃を叩きこみ、逸らす程度はしてみせるという判断。

 

 横から全力で叩かれ、その一撃によって微かに軌道の逸れた槍が、モードレッドを狙う軌道を逸れて突き進む。そうして、背後の大地に激突した。

 その着弾の結果、黄金劇場を消し飛ばしなお留まらぬ爆炎がアメリカ大陸を震撼させる。

 

 クラレントで削ってなお余りある爆炎の乱舞。

 その発生を理解し、大きく舌打ちするモードレッド。

 

「チィッ……!」

 

 槍を逸らした直後から即座にモードレッドは動いていた。

 その爆発はツクヨミが巻き込まれる範囲の大爆発だと理解していたから。

 オーバーロードして白煙を上げるクラレントを手に、彼女は兜を被り直しつつ即座に彼女の前に飛び出して―――

 

「“疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)”―――!!」

 

「“我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)”―――!!」

 

 爆炎の拡大、その前に二つの守護の光が立ちはだかったことで守られた。

 下手をすればホワイトハウスごと呑み込むのでは、というほどに爆炎は広がっていく。

 それを防ぎ、炎を逸らしてみせるのは、光の盾と神の御業の再現。

 

「二人とも、どうしてこっちに……!?」

 

 守られたツクヨミがその二人の登場に疑問の声を上げる。

 

「所長が伝えるべき言葉は伝えてきました……!

 なのでこれからは、それがわたしたちの意思だと示すための決戦です……!」

 

 盾を振り抜き、寄せくる熱量を振り払いながらマシュがそう口にする。

 

 ―――同時。

 ジオウに視線を戻したカルナの背後で、二頭の白馬が嘶いていた。

 戦車に乗ったブーディカによる突進。

 彼女の手の中で剣が光を帯び、その光を収束して弾丸と成す。

 

「―――ソウゴ!」

 

 声を上げるのは戦車に同乗する立香。

 ジオウを見据えながら微かに目の端を上げたカルナが、軽く腕を振るう。

 彼の頭上に光の槍が出撃し、その矛先はブーディカの戦車へと向く。

 

「っ、“約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディカ)”!!」

 

 小さく舌打ちしたブーディカが振るう剣。

 その刀身から無数の光弾が放たれ、同じく無数の光の槍と衝突して炸裂した。

 

 右肩だけにアーマーを装着したジオウがジカンギレードを取り出し、更にウォッチを出す。

 取り出すのはドライブウォッチ。それを装填し、思い切り振り被る。

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

 戦車とジオウに挟まれたカルナが視線を巡らせ、背負った日輪の火力を増す。

 横に伸ばした手。そこを目掛け、投げ放っていた黄金の槍が飛んで戻ってくる。

 たとえ挟み撃ちが成立したところで、それを正面から凌駕する。

 それだけのことができると、確信がある。

 

「―――それでも俺は! 力と未来を捨てる道じゃなくて、力と一緒に未来を変える道を選んだんだ! 今の俺に未来を変えられる確信はないけれど、だからこそ!!」

 

 ドライブウォッチを装填したギレードを、ジオウが思い切り振り抜いた。

 カルナの表情が僅かに驚愕を浮かべ、その瞬間。

 彼が引き戻そうとしていた槍と、ジオウが投げ放った剣が激突して弾け合う。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 青いメモリドロイドは腕を器用に使い、掴んだギレードをジュウモードに変形する。

 

「――――ッ!」

 

 カルナもまた即座に弾き返された槍に手を伸ばそうとし―――

 その槍を、ホワイトハウスから放たれた一筋の矢が更に大きく弾き飛ばした。

 そちらに視線を向けずとも、その下手人が誰かなど理解できるに決まっている。

 この期に及んでこの一手。森の狩人を称賛しつつ、カルナは小さく笑った。

 

 もはや戦車がこちらに来るまでに届かない、と目を細めながら彼は周囲に光の槍を形成する。

 

「ブーディカ!!」

 

〈ドライブ! スレスレシューティング!〉

 

 ソウゴが吼えると同時、青のメモリドロイドがトリガーを引く。

 ギレードのマズルから放たれるのは、エネルギーで形成された真紅のマシン。

 少しだけ困ったような表情をした彼女はしかし、すぐさま手綱を強く握りしめて叫んだ。

 

「“約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)”―――――!!!」

 

 戦車と真紅のマシンが重なって、ひとつとなってカルナを目掛けて疾走する。

 解き放たれるカルナの射出する光の槍はしかし、その真紅の車体に弾かれ通らない。

 カルナは黄金の鎧を稼働させ、前方に突き出した。

 

 ―――鎧と戦車が激突する。その一撃に、ついに彼は表情を大きく変えた。

 ガリガリと地面を削りながら押し込まれていくカルナの姿。

 

「―――俺は、俺の未来を信じる!!!」

 

 右肩のみのアーマーが緑に染まり、その腕に風の刃を作り出す。

 その風纏う手刀を振り上げて、ジオウは押し込まれてくるカルナに向け突撃した。

 

 トライドロンに包まれた戦車を受けながら、背後から迫りくる暴風へ意識を向ける。

 その体勢でありながら背後に炎を迸らせ、迎撃せんと火力を上げるカルナ。

 だがジオウはその炎の渦の中に踏み込むまではいかず、その腕を思い切り下からすくい上げるように振り上げた。

 

 風が暴れる。ジオウの腕から凄まじい勢いで奔った竜巻はカルナの炎を一瞬剥がし、その体を大きく空へと吹き飛ばしていた。

 直接叩き込むつもりと判断していた彼が、僅かに困惑し―――理解する。

 

 空へと吹き飛ばされた彼の眼下で、戦車が急ブレーキをかけ、ジオウの左肩にアーマーが合体し、そして―――叛逆の騎士が破滅の王剣を振り上げていた。

 

「“我が麗しの(クラレント)―――――!!」

 

 先の死力で尽くした力をマスターからの令呪で強引に埋め、そして彼女は顔を晒して燦然と輝く王剣の刃を血色に染めて極光を解き放つ。

 

父への叛逆(ブラッドアーサー)”―――――!!!」

 

 振り下ろされる。天を衝くほどに迸る血色の光が成す刃。

 黄金の鎧により守られたカルナに、その一撃が確実に直撃する。

 その瞬間に解き放つ炎と変じる魔力の放出。

 アメリカの空で太陽の如き炎と王剣の極光が衝突して、天空を覆うほどの爆炎を咲かせた。

 

 

 

 

「な……」

 

 その光景をホワイトハウスの中で見上げ、エジソンは息を呑んだ。

 彼がこの陣容を維持するために発電している魔力。それによってカルナはほぼ万全。

 けして、魔力不足で力が発揮できないような状態にはならないはずだ。

 だというのに彼らは、カルナと渡り合っている。

 

 一対多だから、と言ってしまえばそうだろう。

 だがエジソンの試算からすれば、それですら不可能という判断があった。

 

「いや、いや! 確かに彼らはカルナ君と戦えている……!

 だがそこまでだ! カルナ君でさえ届かない、正真正銘の怪物が相手だぞ!? 誰にも気付かせず地球の歴史を焼却し、これだけのことを既に達成した者たちが相手だ!

 ここで勝てたとして、次の特異点は勝てるのか!? その勝利を保障できるのか!?」

 

 ホワイトライオンの声が轟く。

 その声を向けられながら、オルガマリーは小さく息を吐いた。

 そしてそのままエジソンと視線を合わせ、断言する。

 

「―――出来ます」

 

「―――――」

 

「……わたしたちは人理継続保障機関カルデア。

 100年後の未来まで、人類が文明を灯していることを保障することこそが使命。

 だからこそ……わたしは言います。わたしのカルデアは、わたしたちの生きていた時代から100年先まで、人類を存続させるものなのだと……!」

 

 言い切った彼女を前に、エジソンは頭痛を抑えるように頭を抱える。

 そのままふらふらとよろめき、近くの椅子にどかりと座った。

 そんな彼の様子に対し、エレナがちらりと視線を向ける。

 

「どうするの、エジソン。

 全員カルナの方に行ってしまったことだし、彼女を人質にでもしてみる?」

 

 オルガマリーを人質にカルデアはアメリカに従え、などと。

 そう言われたオルガマリーがぎょっと体を竦めた。

 くすくすと小さく笑いながら、エレナはその冗談をすぐに撤回する。

 

「冗談よ。そんなことしようとしたら、怖いアーチャーに頭を撃ち抜かれてしまいそう」

 

「……そのようなことをする気はない。そのような方法では意味もない。

 だが、根拠のない自信に未来を賭けることこそを恐れて……!」

 

「なぜ根拠が必要だと思うのですか?」

 

 問いかけられ、エジソンが言葉を詰まらせる。

 

「未来に根拠がないのはいつの時代に生きた人間だって同じだったはずです。

 2015年で行き詰まる、と告げられた人間たちにはその壁を壊す挑戦の機会すら与えられない、と?」

 

「いや、それは……」

 

「―――あなたたちにとっては遠い未来の世界でも……

 わたしたちにとっては生きている今の、明日を守る戦いなのです」

 

 大きな手でライオンの顔を覆い、彼は肩を震わせる。

 彼の精神状態を表すかのように肩部のランプがちかちかと明滅した。

 

「―――ブラヴァツキー、()()は間違っているのか?」

 

「間違っているか間違っていないか。そんなもの、最初から正しい答えがあるものじゃないと分かっていたでしょう? 正しいといえば正しいし、間違っているといえば間違ってる。

 ただの合理性の問題だもの。全てを救えないなら一部、アメリカだけでも。あたしたちの行動はそれだけだった。だから結局のところ……トーマス・アルバ・エジソン。今を生き、明日のために戦う彼女たちの言葉を受けて、あなたが何を思うかだけなのよ。あたしもカルナも、あなたが選ぶ道に従うと言っているでしょう? それはどうあれ、あなたがどの道を選ぶにしろ、そこに人間を救うためという真摯な意志があると知っているから。

 ……別に責任を押し付けたいつもりじゃない。あなたの選択に罪があるというのなら、あなたの判断に従うあたしたちにも同じだけの罪がある。だから、あなたはあなたの思うように、正しいと思える答えを選べばいい。エジソン、今までずっとあなたはそうしてきた。だからあなたは、世界を照らした英雄……()()()と呼ばれたのでしょう?」

 

 エレナに視線を向けるエジソン。

 彼女の言葉は、大統王に対してではなく発明王に対してのもの。

 それがどういう意味なのか分からない彼ではなく……

 大きな手が、白いたてがみをぐしゃぐしゃとかき乱した。

 

「ぬぅ……ぐぉおおおお……ッ!」

 

 そうして苦悩する彼の前で―――地上に真実、太陽が出現した。

 

 

 

 

 炎熱の壁を突き抜けたクラレントの一撃に直撃し、なおカルナは空にいた。

 光そのものである黄金の鎧には損傷すら見られない。

 だがそれでも徹ったダメージはあるのか、彼は僅かに表情を渋くしている。

 

「直撃であれか……! 正真正銘の怪物、いや神話の英雄であるな!」

 

 剣を構え直しながら、ネロが上空のカルナを見上げる。

 全力で王剣を解放していたモードレッドが盛大に舌打ちした。

 

「こっちの宝具受けといて平気な面しやがって……!」

 

 憎悪極まる視線をモードレッドから受けながら、カルナは状況を確認する。

 

 相手の守りはジャンヌ・ダルクとシールダー。

 その守護の堅牢さに疑いはなく、宝具以外での突破は難しいと言わざるを得ない。

 攻め寄せるネロとモードレッドの剣の鋭さもまた脅威だ。

 正面から撃ち合いで負けることもなく、彼の鎧は相手の最大火力すら防ぐ。

 とはいえ、ブーディカとアタランテのかく乱とともに振るわれる彼女たちの剣。それは自身の首を絶対に落とせない、などという自惚れを抱くつもりはない。

 そしてその弓の援護こそが、彼が一度投げ放った槍を拾いあげることすら阻む障害。

 

 地力で負けているつもりはないが、同時に彼らの戦いはカルナという英雄を攻略していると言える。アメリカの魔力発電規模にも限界はあるのだ、カルナが長々と戦い続ければいつかは盛大に崩壊する。

 カルデアの破綻が先か、アメリカの破産が先か、それはどう転ぶか分からない。だが、もしそこまで……行きつくところまで行ってしまえば、それはケルトと戦う前に国が破産して首が回らなくなっている、という結末で終わることになるだろう。

 

 ならばこれ以上は長引かせるべきではない。

 これからどうなるにしろ、早急なる決着をつける。

 アーマーを纏いなおしたジオウに向け、彼は視線を送った。

 

「現状でオレたちの勝機は限りなく薄くなったと言える。

 お前たちの気迫は、オレの攻めを凌駕するのかもしれん。だがオレもここで負けるわけにはいかない。エジソンが陣営としての勝敗をオレの双肩に懸けた以上、オレに敗北は許されない。

 ―――故に、オレは全身全霊をもってお前たちに必勝のための一撃を捧げよう」

 

 瞬間、カルナ自身が炎に包まれて炎上した。

 いや、正確には彼自身ではなく彼が纏う黄金の鎧が炎上している。

 

「なっ……!?」

 

 咄嗟にブーディカが戦車の手綱を引き、白馬を走らせた。

 後ろに掴まっていた立香をマシュへと投げ込みつつ走る戦車。

 守護の力を持つ二頭の白馬が、宝具解放の前兆でしかないだろう熱波を受け止めた。

 空が燃え、大地が融け、あらゆる全てが焼け落ちていく。

 

「これ、は」

 

「―――これぞ、世界を灼き尽くす神々の王の慈悲と知れ」

 

 体を覆う鎧が焼失し、その代わりに彼の手に出現する雷の槍。

 同時に彼の背後に、炎の眼が見開かれた。

 その手が雷の槍を握ると同時に、周囲に迸るプロミネンス。

 

 熱波の氾濫。炎の津波を前に、緑の風がその壁となりそれを逸らした。

 

「……勝手に未来に失望して、世界を壊すそれが慈悲だって言うのなら!

 俺は何度だって王様としてその慈悲の前に立つ! たとえそれが世界を壊すだけのものであっても、仮面ライダーの……俺たちの力は負けない!!」

 

 渦巻く風を纏いながら、太陽に臨むジオウ。

 その周囲の風が徐々に強くなっていく。

 光を放つダブルアーマーの姿を見据えながら、カルナは微かに眉を上げた。

 

 

 

 

「ん、な……! その宝具まで解放するなど、どういうつもりだカルナ君!?

 あれではカルデアは全滅は避けられない……!」

 

 そう叫び、砕けた窓に飛びつくエジソン。

 太陽の輝きに軽く目を伏せながら、エレナは背後のオルガマリーを振り返る。

 彼女は襟に手を当て、通信機を今まさに起動していた。

 

「……常磐。聞こえる?」

 

『……うん』

 

「おお、通信機! ああ、とりあえずは休戦だ。まずは双方、頭を冷やすべき状況だ。

 熱狂は理性を削り、正常な判断を阻害する。とにかくもう一度会談のテーブルに……」

 

 思い切り振り返ったエジソンの声を無視し、オルガマリーは続ける。

 

「―――あなたは、どうしたい?」

 

『……うん。俺は―――――』

 

 窓から見える太陽の中心に、一際強い日輪が現れる。

 その日輪を背負うカルナの左肩から赤い翼がゆっくりと開いていく。

 

 大きく息を吸い込んだソウゴの声が、彼女の耳に届く。

 

『……最高最善の王様になりたい―――!』

 

「なら、勝ちなさい―――!」

 

 返答は即座に。そんな答えは分かり切っていた、とばかりに。

 一瞬たりとも迷うことなく、カルデアの司令官は彼の戦いの背中を押した。

 

「んなァッ!?」

 

 間の抜けたエジソンの声。

 その直後、太陽の姿が大きく歪んだ。

 

 

 

 

「インドラよ、刮目しろ。絶滅とは是、この一刺―――――!」

 

 カルナが雷光の槍を手にした腕を振るう。

 穂先を向けられるのは、地上に立つジオウに他ならない。

 そこに立ち並ぶ全てのサーヴァントが宝具の最大出力を発揮するため、身構える。

 

「灼き尽くせ、“日輪よ(ヴァサヴィ)―――――!!」

 

 雷光の槍が臨界に達し、絶対破壊の一撃を解放せんと突き出される―――寸前。

 カルナが何かに気付いたかのように、その身の動きを止めた。

 インドラの槍が力の解放しどころを失い、刀身から稲妻を迸らせる。

 

 そうして彼が、小さく一言。

 

「―――オレたちの負けか」

 

「ストォ――――――――――――ップ!!!」

 

 雷光が奔ると思われた戦場に雷音が轟いた。

 遠く離れたホワイトハウスからでも届く、凄まじい轟音の雄叫び。

 それは、カルナたちの敗戦を示していた。

 

 

 




 
こんなことをしている間にもボドボドで死にかけてるラーマくんがいるんだなって。
だが私は謝らない。
 
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