Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

121 / 245
 
キミはこの力、どう使う?
 


第六特異点:神星融合侵略 キャメロット1273
変身!ソラからオレンジ!?2013


 

 

 

「私は円卓の騎士、べディヴィエール!

 善なる者として、悪である貴方を討つ者だ!」

 

 星の楔、地上を縫い留める最果ての塔の中。

 その玉座に君臨する王。彼が君臨させ続けてしまった王。

 己の罪であるその痛ましい姿と対峙しながら、騎士は右腕に秘められた光を解放する。

 

「“剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)”――――!!」

 

 伸ばした腕の先、星の光を束ねた刀身が顕れる。

 それは彼自身の魂さえも灼き尽くす力の奔流。

 

 反動だけで体の端から土塊となって崩れ始めるべディヴィエール。

 彼の瞳に浮かぶ熱はそれでも止まらず、正面に聳える女神を見据えた。

 

「ただの人間が……それほどの……?

 貴卿は……何者だ……? なぜ……そこまで……?」

 

 女神はただ、何故浮かんでくるかも知れぬ苦渋を顔に浮かべて彼を見る。

 

 最期の最後。

 彼がやり残した、やり残してしまった最後の使命。

 それを遂に果たすため、辿り着いたこの瞬間。

 その胸の中にいつか見た尊き王の笑顔を思い起こし、彼もまた笑みを浮かべた。

 

「それは―――」

 

 ―――そうして。

 彼が今この時まで生き永らえてきた理由。

 遂に訪れた瞬間を砕くように、世界の全てに変化が顕れた。

 

「―――!?」

 

 女神が頭上を見上げる。

 最果ての塔―――聖槍の中が、どうやってか別物に染め上げられていく。

 夢幻の空間が一点の染みから、銀色の何かに置き換わっていくように。

 

 彼女に対し向かおうとしたべディヴィエールもまた、その異常事態に足を止めた。

 

『なっ……何だこの反応!? その空間だけじゃない! 特異点全体が……!』

 

「――――来る!!」

 

 ロマニの声を聞いたジオウが天井を見上げる。

 彼の叫びを聞いた者たちの視線が、揃ってその場に引き付けられた。

 染まっていく銀色の中から染み出すのは、ひとつの影。

 

 それは銀色のボディに蒼い光を湛えた人型だった。

 最果ての玉座の間。染み出したそれは舞い降りて、ガチャリと金属の足音を立てる。

 銀色の兜のような頭部の中で、一際輝く蒼い瞳。

 

「―――太陽系第三惑星、地球の状態を確認。異常な磁場に惑星全体が覆われている。

 ……個の存在により運営される惑星の不完全さを再確認。

 やはりすべての生命体は、大いなる存在である完全なシステム。

 我らメガヘクスの元に統一されるべきである」

 

「メガへクス……!? 何でお前までここに……!」

 

 白銀の鎧、仮面ライダー鎧武がその存在に驚愕する。

 己の名を呼ぶ声に対し、そちらへと視線を送るメガヘクス。

 その瞬間―――

 

 ガチリ、と。その場における全ての時間が静止した。

 鎧武も、ジオウも、べディヴィエールも、女神も、メガヘクスも。

 例外なく全てが停止した中、唯一動く人間の姿が歩み出す。

 

 今この場に突然に現れた、紫の装束に身を包んだ男。

 

「スウォ、ルツ……!」

 

 絞り出すジオウの声。

 しかしソウゴの声を無視して、視線も逸らさず歩き続けるスウォルツ。

 彼は手の中でブランクウォッチを転がしながら、メガヘクスに向けて歩いていく。

 停止した時間の中、乱入者の元に辿り着いた彼がウォッチをメガヘクスに添える。

 

 ―――力が目覚める、何も描かれていなかったアナザーウォッチ。

 

 アナザーウォッチが色付いていくことに口の端を吊り上げるスウォルツ。

 彼は停止したメガヘクスを眺めながら、アナザーウォッチを起動する。

 

〈鎧武…!〉

 

「方法は違えど、同じくヘルヘイムの侵略を退けた者……

 お前こそ、今この瞬間から仮面ライダー鎧武だ」

 

 彼の腕が、そのままウォッチをメガヘクスの胴体にある蒼い球体に差し込んだ。

 胴体部から植物が蔓延り、銀色のボディを覆っていく。

 だがメガヘクスは完全には呑み込まれず、力を纏いながら己の姿も維持し続ける。

 

〈鎧武…!〉

 

 メガヘクスの一部が変異していく。

 白銀と蒼と、そして腐食したようなオレンジ色を纏う姿へと。

 武者然とした姿に変貌しながらも、しかしメガヘクスとしての姿を一部残す何か。

 

 アナザー鎧武であり、メガヘクスである。

 それはヘルヘイムの踏破者。侵略を凌駕し、世界を変革した者。

 

 鎧武であり鎧武でないものであるその姿を降臨させると同時。

 口を歪めて笑みを浮かべ、スウォルツは姿を消した。

 

 動き出す時間。

 ―――その直後に起きたのは、本来の鎧武が膝を落とすことだった。

 

「ぐっ、う、ぐ……ッ!? まずい、俺も……!」

 

「神様!!」

 

 白銀の鎧が砕け、オレンジの鎧が砕け、濃紺のスーツだけに変わる鎧武。

 そのスーツも徐々に崩れ落ち、彼は人としての姿に戻っていく。

 

 ―――鎧武の歴史はメガヘクスが継承した。

 彼の手元にそれは残らず、維持できずに消えていく。

 

 自身にウォッチを投入した人間の消失を見て、僅かに視線を巡らせるメガヘクス。

 だが途中でそれを止め、彼は母星が待機する空の彼方を見上げた。

 

「不完全な生命体の蔓延る星、地球。

 これより我らメガヘクスの手で、完全なる調和を開始する。

 ―――これからは、この星も我らの一部(ステージ)だ」

 

 宣言する地球の調和。それが文字通りの調和ではなく、融合による侵略であるというのは今この場を見れば分かることだった。

 

 螺旋が渦を巻く。集束する魔力は神域のそれ。

 担い手の意思により星の楔が引き抜かれ、敵を蹂躙するために解き放たれる。

 その銘は聖槍ロンゴミニアド。

 女神の権能が一瞬のうちにメガヘクスに向け放たれ―――

 

 彼女とアナザー鎧武の間に、百を超えるメガヘクスが同時に出現した。

 

「――――!?」

 

 聖槍の光は全てを蹂躙する。メガヘクスでさえも。

 

 だがそれでも届かない。

 百体のメガヘクスの喪失は、母星メガヘクスにとって消耗ではない。

 星の女神の権能は、星そのものを滅ぼすには至らない。

 

 瞬時に百体のメガヘクスを蹂躙した一撃を見て、微かにアナザー鎧武が首を傾げる。

 

「……敵性体の威力を上方修正。

 その上での再計算の結果、我らメガヘクスに対しての脅威度は軽微。

 ただしメガヘクス端末単独による打倒は難しいと判断。

 端末の増産をメガヘクス本星に要請―――訂正。

 仮面ライダー鎧武の力、というものの実践を提案」

 

 脅威度を観点から計算し、彼の視線は女神に向かう。

 通信を母星に行いつつ歩み出した彼の足が、一度止まる。

 自身に取り込まれた力を彼はその身で検証し、引き出して―――

 そこで盛大な思考のノイズを得た。

 

「仮面ライダー鎧武……オーバーロード、葛葉紘汰の存在は看過できず。

 だが力を失い人間になった存在にメガヘクスが意識を向ける理由はない。

 調和、否。我らの調和の中に葛葉紘汰が含まれることは認められない。

 メガヘクスによる地球との調和を一時停止。

 ―――葛葉紘汰の処分は、メガヘクスにとって最大の優先事項である。

 理由は不明、なんだこのノイズは、不明、不明」

 

 数秒の葛藤―――否、再計算。

 ぐるり、と。再計算を終えたアナザー鎧武の顔が、女神から変身が解けた鎧武に向かう。

 脅威を認められる女神を差し置いてでも、力を失い地面に倒れる彼を処理する。

 それがメガヘクスという存在が出した結論だった。

 

 メガヘクスが紘汰に腕を向け、その先端に光を集約していく。

 

「―――オーバーロード、葛葉紘汰の記憶を再生。

 敵対者を検索。なお、候補より駆紋戒斗は除外する」

 

 そう口にしつつ、メガヘクスが光を放つ。

 彼の天敵を確実に抹殺するために放たれる一撃。

 

 殺到する光弾。その前にジオウの姿が割り込み、攻撃を受け止めた。

 

「ぐ、ぁ……ッ!?」

 

 ヘルヘイムを凌駕した者たちの力が重なる、強烈な一撃。

 光弾を受け止めたギレードは弾き飛ばされ、ジオウの姿も宙を舞う。

 すぐさまカバーに入ろうとしたマシュがしかし。

 膝を落としたべディヴィエールを見て、その足を止めた。

 

「べディヴィエールさん……!」

 

「―――――ぁ」

 

 踏み込めない。

 この状況で、彼女に剣を届けるべきかすら分からない。

 その浮かんだ迷いのうちに、彼は立っていられるほどの体力すら失った。

 

 彼に対して駆け寄る立香を、べディヴィエールは片手を挙げて止める。

 

「……いけない。今の私に近寄れば、貴方も星の光に灼かれます……!」

 

「そんな、でも……!」

 

 そちらには意識すら向けないメガヘクス。

 彼が驚異として認識したのは女神だけで、そして固執するのは葛葉紘汰だけだった。

 

 メガヘクスの前方に光が奔り、人型を形成していく。

 母星への連絡により、その場で増産される新たな戦力。

 数秒で構築を完了する、新たな存在。

 

 現れたのは、白衣を着て機械マスクを装着した男性。

 その姿を見上げながら、倒れ伏した紘汰は彼の名を口にした。

 

「戦極、凌馬……!」

 

「やあ。久しぶりだね、葛葉紘汰くん。

 元気にしてたかい? どうやら、今は元気ではないらしいけど」

 

 名を呼ばれて、茶化しながらせせら笑う男。

 彼は状況に見合わぬ声で笑いながら、懐に手を入れた。

 きつく歯を食い縛りながら彼を見上げる紘汰の前で、彼が取り出してみせるのはロックシード。

 

 取り出されたのは、レモンが造形されたクリアブルーの錠前。

 

「メガヘクスの大いなる意思に、私も従うとしよう」

 

〈レモンエナジー!〉

 

 錠前を開くと同時に鳴る起動音。

 彼はメガヘクスによる生産の時点で装着されていた腰部の変身ベルト―――ゲネシスドライバーに、開いたロックシードを装填する。

 

〈ロックオン!〉

 

「変身!」

 

〈ソーダ! レモンエナジーアームズ!〉

 

 装填したロックシードを潰し、その力を搾り取るように。

 ゲネシスドライバーは異界の果実から力を引き出した。

 水色のスーツが戦極凌馬の体を覆い、頭上に巨大なレモンが形成される。

 落ちてくるレモンは彼の頭部を包み込み、鎧とマントへと変形した。

 

〈ファイトパワー! ファイトパワー!

 ファイファイファイファイファファファファファイッ!〉

 

 戦極凌馬、仮面(アーマード)ライダーとしての名をデューク。

 彼の手の中に現れるは創生弓ソニックアロー。

 戦極自身の手により開発されたその弓を引き絞る、デュークの腕。

 

「さようなら、葛葉紘汰」

 

 大した感慨もなさそうに、彼は弓を引いていた手を放す。

 収束するエネルギーはレモン色の矢を作り、紘汰に向かって放たれた。

 放たれた光の矢は戻ることはない。

 その光は生身でしかない彼に向け一直線に飛び―――

 

「神様!!」

 

 追い縋ろうとしたジオウの前―――

 しかしその一撃は紘汰に当たることはなく、直前で炸裂した。

 

「え?」

 

 ジオウが困惑して足を止める。

 神様の前に割り込み、その矢を背中で受け止めた者がいたから。

 

「うん……?」

 

 デュークが不思議そうにその光景を眺める。

 ソニックアローの直撃をその背で受けたというにも関わらず、割り込んだ人間らしきものはまだ生きて活動していたから。

 

「お前……」

 

 鎧武だった彼は、驚愕しながら自身を庇った者を見上げる。

 その彼が、自身のよく知る顔だったから。

 

 思わず彼の口から出てくる、よく見知った相手の名前。

 

「ジロー……!?」

 

「ジロー? 俺はそんな名前じゃない」

 

 紘汰が口にした名前を、彼は即座に否定する。

 ソニックアローを受け止めた結果、服に穴が開き僅かによろめくだけ。

 そんな強靭な体を持つ彼は立ち上がり、デュークに向かって振り向いた。

 

 その顔を見てデュークもまた、見知った顔に驚愕する。

 彼が口にする名前は、紘汰が呼んだ名を持つ存在が持つ、もうひとつの名前。

 

「―――キカイダー……!」

 

「―――そうだ。俺は……」

 

 彼がベルトに引っ提げていた、金色のスパナとマイナスドライバーを取り出す。

 そのままの勢いで放り投げられるスパナ、スパナーダー。

 もう片方の手には、マイナスドライバーのスクリューダー。

 腰に出現するのは、ジクウドライバーによく似た黒いユニット。

 落下してくるスパナーダーを掴み直した彼は、それを顔の横に構える。

 

「変身!」

 

 スクリューダーと組み合わせられる、スパナーダー。

 スパナーダーとスクリューダー、二つの合体パーツが腰のユニットに装着される。

 その瞬間、黒いユニット―――キカイドライバーは完全に動作を開始する。

 

 黄金の装甲に包まれていく彼の体。

 装甲の継ぎ目はボルトで止められ締め付けられる。

 その内部から減圧するように、各部から噴き出してくる白煙。

 そうして黄金の戦士は、赤い目を輝かせながら誕生した。

 

〈デカイ! ハカイ! ゴーカイ! 仮面ライダーキカイ!〉

 

「俺は機械……仮面ライダー、キカイだー!」

 

 

 

 

 がっちゃーん、と食堂の椅子が倒れてソウゴが転がる。

 驚いた様子でそれを見ている皆の前で、頭を振りながら彼は体を起こす。

 

「うー、変な夢見た……」

 

「大丈夫、ソウゴ?」

 

 隣の椅子にいた立香が立ち上がり、彼を引っ張り起こした。

 立香の背中にくっついていた清姫が倒れた椅子を戻し、再び彼女の背中にくっつこうとする。

 それをインターセプトしつつ、ソウゴが座っていた場所に昼食を置くジャンヌ。

 

「ソウゴくんは今日まで大変でしたからね」

 

 苦笑しつつ、今日までのことを考える。

 ようやく今日、一週間のアナザーオーズとの戦いが完結した。

 そこから帰ってきた彼が、こうして眠ってしまうのも仕方ない。

 

 カルデアから観測している特異点も落ち着き始め、そろそろ資源のサルベージも始まる頃だ。

 彼もようやっと次の戦いに向けての準備期間に入れたというわけだ。

 

「はは、毎日毎日クー・フーリンの奴と戦いに行ってたんだろう?

 そりゃ疲れるってもんさ!」

 

 補充されたアルコールを再び浪費しながら楽しげな声を上げるドレイク。

 幾ら彼女が酒飲みとはいえ、アメリカではかなりの量が確保できた。

 今度は早々になくなるという事はないだろう。恐らくは。

 立香が椅子に座り直し、昼食を再開しながらソウゴを見る。

 

「そんな転がるほど変な夢見たんだ」

 

「んー……変、っていうか……新しい仮面ライダーが出てきた。

 レモンを被ってる奴と、機械の奴」

 

 思い起こしながら先程見た夢のライダーを口にする。

 微かに肩を揺らしたジャンヌが、表情を引き締めてみせた。

 夢という形での発現は、それこそ彼女のよく知るウィザードの力で見たパターンだ。

 

「―――清姫さん」

 

「とりあえずわたくしをウォズという方への専用対抗策かなにかだと思うのやめません?」

 

 言いながらも一応視線を走らせる清姫。

 嘘発見器としていつでも仕事のできる体勢だ。

 ソウゴに何か用があればどこからでも現れるのが黒ウォズ。

 備えはしておくに越したことはない。

 

「へー……果汁で機械が錆びちゃいそう。

 あ、前もフルーツの話してなかったっけ?」

 

「うん。前に見たフルーツの人もいた……

 俺なんで夢の中であの人の事、神様なんて呼んでたんだろ?」

 

 でも神様っぽかったといえば、確かに神様っぽかったかもしれない。

 前に会った時も神様感はあった。夢の始まりで彼は銀色の鎧とフルーツの描かれた胴を纏い、前に会った時とは別の姿をしていたが……

 

「恐らく君の言う相手は仮面ライダー鎧武、葛葉紘汰だ」

 

「お、出てきたね」

 

 考えていた通りにどこからともなく出てくる黒ウォズ。

 彼はソウゴの対面の椅子に座り、テーブルの上に本を置いた。

 茶化すような物言いのドレイクに顔を渋くしつつ、彼はソウゴを見る。

 

「君たちがツクヨミくんと会った監獄塔だったか……

 立香くんを助けに行ったとき、出会った相手がいるんだろう?」

 

 言われて、ソウゴはコダマスイカウォッチを取り出した。

 机の上に転がすとそれは手足を出して、立ち上がる。

 

「これくれた人でしょ?」

 

「そう、コダマスイカウォッチ。それを持っているのは葛葉紘汰に違いない。

 まあ彼は一度門矢士とともにロンドンにも来ていたからね。

 いずれ干渉するだろうとは思っていたし、さほど気にしてはいなかったが」

 

「あ、その……これをどうぞ」

 

 ブーディカの手伝いでジャンヌと一緒に働いていたマシュが、黒ウォズの前にオレンジジュースを置く。ソウゴの前にも同じものが置かれたのを見るに、ソウゴと同じものをということだろう。それを見た彼は軽く肩を竦め、ストローでコップの中の氷を動かしながら話を続けようとする。

 

「ロンドン? なんで?」

 

「さて。スウォルツを追ってきたんじゃないかい?

 あるいは他の目的があったかもしれないが、私には分からないことだ。私に言えるのは、どちらにせよ彼らはアナザーダブルが作られる前に特異点を離れ、別の時代に飛んだということだけ。

 鎧武は恐らくその時に、君の事情を門矢士から聞き及んでいるだろう。わざわざあちらから干渉してきたのはそれが理由だろうね」

 

 黒ウォズが喋るたびに清姫の様子を窺うジャンヌ。

 彼女に特段の反応はなく、ただじいと黒ウォズを見つめている。

 それが嘘ではないと考えるべきだろうか。

 

「それで。ソウゴは何でその人のこと、神様って呼んでたらしいの?」

 

 立香からの問いに対して、どう説明したものかと黒ウォズが眉を顰めた。

 

「……我が魔王が誰をどう呼ぶか、その答えを私に求められても困るが……

 一言で言うには難しいが、恐らくは彼がいま地球の存在ではないからではないかな。

 黄金の果実と呼ばれる超常の力を得た彼は、地球外の別の惑星をテラフォーミングして移住し、地球とはまったく別の環境で生命の管理者という立場になっている」

 

「神様じゃん!」

 

 思ったよりも神様っぽい所業が出てきて、ソウゴは箸を振り回した。

 行儀が悪い、と彼の腕を押さえ込む立香。

 

「異星の生命の管理者……ですか。それは……」

 

「ははは、宇宙の外と来たかい。

 アタシの時も星の外に飛び出してたが、仮面ライダーってのは何でもありだね!」

 

 困惑しているマシュの隣で、笑いながら酒を呷るドレイク。

 

「それで? 今度はその神様の力を貰いに行くってわけかい?」

 

「……そうなるね。だからこそ、我が魔王がその夢を見たのだろう」

 

 カラカラと硝子のコップの中で音を立てる氷。

 彼はコップを持ち上げ、喋った後の喉を濡らすようにジュースをストローから吸い上げる。

 そこまで聞いたソウゴが頬杖をついて、夢の内容を思い返した。

 

「……うーん。でも俺が見た夢の中では、メガヘクスって奴がアナザー鎧武になったせいで、神様の力は消えちゃってたかな。その後、キカイ……」

 

「――――メガヘクス? どういうことだい、我が魔王。

 何故その名前がそこで出てくる」

 

「何故って、だからそいつが出てきてスウォルツがアナザー鎧武に……」

 

 がたり、と。椅子を大きく鳴らして立ち上がる黒ウォズ。

 彼の表情はだいぶ余裕をなくしているように見えた。

 

「……あの時の言葉はこれを指し示していた……?

 いや、まさか……! すまないね、我が魔王。緊急の用事が出来てしまった」

 

 いつかの王の言葉を思い起こし、彼はここに原因があるかと眉を顰める。

 メガヘクスから今のソウゴを利用している者という話には繋がるまい。

 だが何かをしている人間がいなければ、メガヘクスの出現などという事態は起き得ない。

 

「スウォルツ……いや、違うか。

 恐らく、その時代にメガヘクスが実在すること自体はおかしくはない……だとすれば13世紀の当時の宇宙で、メガヘクスを地球まで導くことができれば……?」

 

「黒ウォズってさ、最近来るたびに緊急の用事が出来て帰ってない?」

 

「常に私の想定を上回る事態を起こす君のせいなんだがね……!」

 

 一気にオレンジジュースを飲み干した彼が、足早に食堂から退室していく。

 それを見送った後、ソウゴは立香と顔を合わせて昼食に戻ったのであった。

 そうしてから、ソウゴは思い出したかのように呟く。

 

「そういえば、メガヘクスっていうの。

 宇宙人……宇宙ロボっぽいのに最初から日本語話してたような?

 うーん、俺の夢だからかな」

 

 

 

 

 白い光に包まれた空間。

 その中でゆったりと歩く白ウォズ。

 彼は未来ノートを手にしながら、軽く腕を振るってみせた。

 

 そこに浮かぶ、黄金の王―――オーマジオウの姿。

 

「私の知るところによると―――

 普通の高校生、常磐ソウゴには魔王にして時の王者。オーマジオウとなる未来が待っていた。

 彼は仮面ライダーの力を集め、最強の力を手にした魔王となる」

 

 彼がそう言うと、オーマジオウの周囲の空間が白から黒に染まっていく。

 ただ、幾つかの白い染みを残して。

 

「だが2019年、オーマの日。

 未来より来れり戦士の元に、その時代には存在しないはずの三つのウォッチが集う時―――

 悪なる魔王を打ち倒し、新たな時代を切り拓く救世主が現れる」

 

 白い染みから三つ、人影が浮かび上がった。

 恐らくは仮面ライダーの姿だろう。

 そのうちのひとつは、黄金の装甲を纏った機械の戦士のもの。

 

 三つの影が繋ぐトライアングルの中心。

 その中にオレンジカラーの鎧を纏ったライダーの姿が微かに浮かび上がった。

 

「―――その名もゲイツリバイブ。

 これこそが魔王オーマジオウを打ち倒し、世界を救う真の救世主の御名である!」

 

 黒い空間が、ゲイツリバイブと呼ばれた影を中心に再び白く塗り替えられていく。

 消えていくオーマジオウ。

 ゲイツリバイブとキカイ、そして二つの影だけが残った白い空間。

 その中で白ウォズは小さく微笑み、再び手を振るう。

 

 次の瞬間には、その空間から彼の姿も含めて全てが消えていた。

 

 

 




 
善か? 悪か? この「機械(ココロ)」が壊れても、君を守る――

なんだただの夢か…
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。