Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
『それでオジマンディアス王と同盟を結んだ、と』
太陽王の支配下である砂漠から外に出た上で、ようやく回復した通信。
今までの情報を共有し終わったところで、ロマニは大きくを息を吐いた。
『聞くところによるとオジマンディアス王は本調子じゃなかったのかな?』
「―――そうね。
わたしたちと合流しない……できないのは、彼自身が回復していないから。
恐らく、そういう理由もあるのだと思うわ。
何が原因で彼ほどの存在がそれほど不調になったのかは分からないけど……」
大神柱と化す前に首がずれた、というのも恐らく不調の証明。
彼の状態は意図したものではないはずだ。その不調さえなければ、彼は多分アモン・ラーになどならず、自ら手に剣を執りソウゴを試したことだろう。
それだけ分かっているにも関わらず、詳細を把握していないオルガマリー。
そんな彼女の様子に、ロマニはふぅむと唸った。
『理由は訊かなかったのかい?』
「当たり前でしょ、絶対ロクなことにならないもの。
誓っていいわ。訊いても機嫌を悪くされるだけで、絶対に答えは教えてくれないわよ」
間違いなく面倒な反応をされる上に、結局原因は教えてくれないに違いない。
あの手合いが相手では、訊くまでもなく訊いたところで答えてくれないのが分かる。
それどころか面倒な勝負を吹っ掛けられるまである。
ただでさえあの戦闘でツクヨミが令呪をひとつ切らされたのだ。
これ以上あの規模のサーヴァントとの戦闘は避けたい。
『……まあ、オジマンディアス王ほどのファラオならそうかもしれないね』
「最近、王様にも見慣れてきたわ。
見てると何となくどういう方針の王様か分かってくるのよ。別に嬉しくないけど」
彼女は溜め息混じりにそんなことをこぼす。
それにどう返したものか、と苦笑いだけを浮かべるロマニ。
確かに短期間に王様を山のように見てきた。
しかも歴史に名を馳せた王ばかりだ。
『まあ……これからも別の王様を見る機会もあるだろうし、良かったんじゃないかい?』
「さあ? 王様なんて出てきたらさっさと同類に任せた方がいいし、わたしが分かっても大して役には立たないけどね。ただ、目下のところ会う予定の王様は……」
慰めるようなロマニの声に肩を竦め、オルガマリーは周囲に視線を巡らせる。
―――ただの荒野、というわけではない。
あるのは焼失して焼け落ちた黒々と染まった大地。
目の前に広がるのは、死の大地と呼ぶべき命を拒絶する地平線。
『……気温は48度、相対湿度0%。大気中の魔力密度0.3mg……
はっきり言って、人の生きる環境じゃない』
水にも、魔力にも、乾いて餓えた大地。
ロマニの計測を聞いていたオルガマリーが目を細める。
オルガマリー・アニムスフィアのボディはダ・ヴィンチちゃん謹製故に、この程度の環境は空調の効いたオフィスと変わらない。
純粋に過酷な環境程度だからこそ、それを想定されたカルデアの礼装を纏っているマスターたちも、普段よりは少し辛い程度で済むだろう。
だが本来この土地に住んでいた住民はどうだろう。あるいは動植物は。
こんな状況で生存できるのだろうか。
「……魔術王がこの特異点に降ろした聖杯の所有者はオジマンディアス王。
そして彼は完全に聖杯を制御し、特異点に古代エジプトを召喚していた。
つまりこの荒廃は……」
『聖杯とは別。いや、聖杯の存在すら必要なく、荒廃したということ……
熱量の上昇はきっと、完全に世界が炎上していた特異点Fと同じだ。
“まだ間に合う特異点”から、“焼け落ちた時代”への移行が始まっているということ』
乾いた大地の上で、何故か消えない火がちらついている。
この炎はきっと特異点Fのものと同質だ。
今はまだ小さいものばかりだが、この特異点の深度が進行すれば、いずれ冬木のような光景になるだろう―――そして、最終的に完全に焼却される。
「……特異点F、ね。あの特異点であった王様に、また会うことになるわけか……」
『……ただ、記録上ではロンドンでも邂逅してる。ソウゴくんやモードレッドたちだけ。
まあもう破棄してしまった記録だけど』
「聖剣ではなく、聖槍のアーサー王……オジマンディアス王もそれは把握していた。
聖地を奪った十字軍から更にその地を奪い取り、一夜で聖都を建立……
けれど教えてくれたのはそこまで。この地の現状を教えるというのは、協力するか否かとはまったく別の話、だそうだから」
オジマンディアスは世界を救う戦いへの協力を確約した。
だがそれはそれ、これはこれ。などと、彼は現状の説明を完全に拒否。
協力してやるからさっさと砂漠を出ていき世界を巡れ、とだけ言って眠りについた。
彼自身の回復のためなのだろう。
ニトクリスならば世間話のフリをして聞き出せそうな気もしたが……
残念ながら彼女自身も何となく自覚があるらしく、お口にチャックだった。
口を一文字に引き結び、情報漏洩を注意した彼女に訊けることなどない。
訊こうと思えば何となく訊けてしまいそうではあったが、そうするわけにもいかないだろう。
こちらに協力すると言ったオジマンディアスが自分で見てこい、と言ったのだ。
それは彼の協力を取り付けるに必要な条件でもある、と言っていい。
『実際に自分の足で回り、目で見てこい、と。
確かにそれが必要なことだというのは分かるけどね』
ロマニの苦い声。
確かに必要なことだとは分かるが、この焼却寸前の大地を見るに残った時間は長くない。
―――とはいえ、いつまでも愚痴っていても仕方ないだろう。
こうなった以上は、素直に状況から推測して行動していくべきだ。
「現状で確認されている勢力はエジプト、聖都、山の民。
オジマンディアスの反応から言って、彼が不調になった原因は聖都ではないと思われる……
つまり、それに関しての答えはひとつ」
『―――山の民、か。この時代、そして聖杯戦争……どちらにも縁が深い、“山の翁”が治めるアサシン教団を思わせるけれど』
「まあ、アサシンのサーヴァント程度があのファラオの神殿に何かできるか……という疑問は残るけれどね」
ハサン・サッバーハと言う名は、代々襲名される暗殺教団の頭領の名。
山の民を治める頭領、というのは恐らく彼らなのではないだろうか。
そうなればファラオに対して何らかの不調を与えたのも、彼らということになる。
可能かどうかは果てしなく疑問だが。
『うーん。それはまあ……場合によっては可能、なのかな?
19人の山の翁はそれぞれ己の暗殺手段を昇華した宝具を持つと聞く。
その中にオジマンディアス王にすら通じる何かが……あるのかも?』
「神殿において不死身のファラオに通じる暗殺手段、ねぇ……」
―――やはり、ファラオの不調の原因は円卓の騎士と当たったケースも考慮すべきか。
そんなことを考え始めたオルガマリーに、ロマニが手を打つ音が届く。
『ああ、可能性の話ならアナザーライダーの可能性もあるんじゃないかい?
新しい仮面ライダーの名前は鎧武、だったかな?』
「―――ウォズに言わせると、異星における生命の管理者だったかしら?
常磐の話だとその仮面ライダーは本人が残っているらしいけれど……」
星の外にまで話が広がった仮面ライダーの歴史。
溜め息混じりに肩を竦めて、彼女はその場から少し小高い丘を見上げた。
丁度彼女が視線を向けたタイミングで、そこから他のメンバーが駆け下りてくる。
「所長、所長! でかいミカンあった!」
「ミカン……?」
この不毛の地でミカン……に限らず、果物が生っているはずもないだろうに。
だが丘から降りてきた全員、ソウゴの言葉に頷いている。
「でかいミカンだったね、あれ」
「―――そう、ですね。ここからでは相当な距離があるはずですが……
それでもここから見えるほど、大きなミカンとしか言いようがないですね……」
感心するような物言いの立香。
それに凄い微妙な顔で同意するマシュ。
「多分、あれがあるのが聖地だった場所だね。
あそこへ向かうとするなら、あれ以上の目印はないんじゃないかな?」
ダビデがそう言う。
であれば、地理的にそのミカンが聖地―――聖都なのは間違いないだろう。
時代が違っても彼の土地勘は信じるに値する、と思われる。
「その……つまり聖都の話なのよね? なんでミカン?」
「見た方がいいわよ、あれ。口で説明するもんじゃないわ」
「―――もしあれが本当にアーサー王の城に生えてるもんなら流石に笑うぜ、あれ。
いや、笑えねえのか? 分かんなくなってきた」
ぱたぱたと手を振ってそう言うオルタ。
そんな彼女の後ろで、モードレッドが珍しく自信がなさそうに呟く。
モードレッドすらもそんな渋い顔をするくらいのものがあるのか。
最後に歩いてきたアレキサンダーとフィンも、説明しづらそうに表情を困らせた。
「絵面自体は愉快だけど、相当切羽詰まったものな気もするね。
要するにあれはカタチはフルーツであっても、強力な結界……聖都と外界を分断するための存在であるはずだ」
「―――で、あろうな。そうなれば問題は、あれが張られた理由だ。
あの結界の下手人がソウゴの同類となる存在なのは目に見えている」
フィンがそう言ってソウゴの方に視線を向ける。
それが仮面ライダーという属性のことを語っているのは言うまでもない。
「では
仮にアーサー王……獅子王がエジソンのように、この特異点の人間だけを保護して人理焼却から逃れるつもりだったとしよう。その場合、あれは人間を聖都に保護できなくしてしまう」
「周囲の状況を見るに基本的に聖都とエジプト以外、この時代の環境は劣悪だ。
山の民が生活しているらしい山の方だって、あまりよくはないだろう。
この現状だけで、生活が出来ずに土地を離れ難民となる人間は多いんじゃないかな?」
ダビデが周囲の渇いた大地、地獄絵図を見回してそう口にした。
ロマニはここは人間が生活する環境ではない、と断じた。
まったくその通りな話で、ならばここに取り残された人間たちはどうするか、だ。
大地と運命を供にしよう、という敬虔なものもいるだろう。
だがそれが全てではない筈だ。
生活できる環境を探し―――それこそ聖地であった聖都を目指すものもいる筈だ。
「だとすると……助けを求めて聖都に行った難民も聖都には入れない。
神様が保護の邪魔をしてることになっちゃう?」
首を傾げる立香。
この時代のものは命を長らえるために聖都を目指し……
しかしそこにあのミカンが立ち塞がる。
もし聖都が人を保護する場所であるならば、あのミカンは邪魔だ。
「流れてきた民を聖都に近づけさせない、これが目的の結界なのは間違いない。
何故なのか、そこはさて……聖都に保護させないためか、聖都から保護するためか」
そう言ってダビデが肩を竦めた。
「……聖都なんてもんが築かれている以上、分かり切ってるだろ。
全部この世界の人間ごと囲って守りたい、ってならそもそも聖都なんて築かねえよ。
そんで父―――アーサー王なら、切り捨てるものを放置なんてしない」
顎に手を添えて首を捻るダビデの後ろ。
モードレッドが顔に苦渋を浮かべ、小さく息を吐きながら口にした。
「彼の王なら、全部きっちり自分で処分する。
時間切れなんて理由で零れ落ちるのを待つ方じゃない」
「それはつまり……アーサー王は難民を処分している、ってこと?
だからそれを防ぐためにあの壁が……」
“聖都”を築いたのは確かな救いを齎すため。
同時に、救うのは世界ではなく選別して自分の庇護下に入れた者だけ。
それを示すためのものこそ聖都なのだと、モードレッドは言う。
そして、庇護しないと決めた者を野放しにするような存在ではないとも。
「っていうと、あのミカンは難民を守ってアーサー王を閉じ込める壁でいいわけ?
獅子王って奴はこの魔術王に対抗するのを諦めて、一部だけを助けて逃げようとしてる。
その上、残していく連中は念入りに殺していく……だから閉じ込められた?」
「……聖都内部の環境がどうなのか、それはあたしたちには分からない。
物資に限りがあるなら、救える者だけを救う。それが行動方針、というならそれは……」
ミカンの中にいる騎士王を思い浮かべて鼻を鳴らすオルタ。
彼女の言葉に難しい顔をしたブーディカが、視線を彷徨わせた。
「―――別にその行為の良し悪し関係なしに、その方針が気に食わないうちのマスターたちはカチコミかけるんでしょう? 私たちが全部救うから引っ込んでろ、って」
そんなブーディカの様子に肩を竦め、オルタがマスターたちを見回す。
彼女の物言いに目を細め、オルガマリーは眉間を指で押さえた。
「……もうちょっと言い方があると思うけど」
「ついさっきそう言って王様に喧嘩売った奴がいるじゃない」
ぴ、とオルタの白い指が指差す人など確認するまでもなく、ひとりしか候補がいない。
じぃと見つめる視線を集めるのは、当然のようにソウゴ。
彼は特に気にした素振りも見せずに、軽く微笑んだ。
「誤魔化すような言い方しても伝わらないかなって」
「いい方針だと思いますよ。嘘はいけません、正直が一番です」
ソウゴに同意してうんうんと頷く清姫。
それを横目で見たアレキサンダーが肩を竦め、正面に向き直る。
そうして彼が口にする疑問。
「……まあそれはそれとして、どうするんだいマスター。
次の目的地としては、山か聖都の二択だったわけだけど。
聖都が最終目的地なのはほぼ間違いない。その上で、次はどちらに行く?」
「俺は聖都を見に行くべきだと思う。何か神様もいるみたいだし」
『あっ、と……その件だが、仮面ライダーの干渉があるならスウォルツやアナザーライダーに注意した方がいいんじゃないかな?
例えばそのミカン? は、アナザー鎧武の仕業だったりするかもしれないだろう?』
ソウゴの夢、その内容を聞いた黒ウォズによって鎧武の存在は特定された。
彼の言う夢の内容では、メガヘクスという存在が目の前でアナザー鎧武になったという。
だがこれが予知夢だとして、どこまで考慮すればいいのかは分からない。既にこの時代でスウォルツがアナザー鎧武を作り出している可能性だって、けしてあり得ない話ではない。
それを聞いた立香が腕を組んで首を傾げた。
彼女の横にいたマシュも、それを真似するように一緒に首を傾げてみせる。
「でも、アナザー鎧武って出てくるの?」
「と、言いますと……?」
「だって本物の鎧武って人が多分いるんだよね? なら、出てこない場合もあるんじゃない?
前に会ったディケイドとディエンド。あの二人のアナザーライダーも出てきてないし」
むむむ、と唸りながら考え込むマシュ。
確かに第三特異点で顔を合わせた仮面ライダーディケイドとディエンド。
あの二人のアナザーライダーが出てくる様子はない。
オリジナルがいれば出てこない、という話であれば、アナザー鎧武も出てこないはずだ。
「そういえば夢の中でもアナザー鎧武が出たら神様が鎧武じゃなくなっちゃったような?」
「同じ種類の仮面ライダーとアナザーライダーは共存しない、ということでしょうか」
いつぞや見た夢を思い出しながら首を捻るソウゴ。
アナザーライダーが発生した途端、鎧武が消失したように見えたはず。
だとすれば、鎧武がいるならばアナザー鎧武はおらず、アナザー鎧武がいるならば鎧武はいない。
そう考えられるだろう。
鎧武に会うというソウゴの夢が予知夢の類だった場合、まだアナザー鎧武はいないはずだ。
『基本的に人理焼却によって人類の歴史は焼け落ちている、仮面ライダーもだ。
それを拾い上げられるのがソウゴくんであり……』
「それを利用しているのがスウォルツと思われる、と」
周囲を確認しながらそう口にするオルガマリー。
この話題になっても、ウォズが姿を見せることはない。
今回はウォズがいきなり生えてくるパターンではないようだ。
ツクヨミは彼女がウォズを気にしているのに気付き、同じように周囲に視線を巡らせる。
「ウォズが出てこない。なら、こっちの動きはあまり気にしてない、ってこと?
現状ならどう動いても大差ないってことかもしれないけど……」
ウォズがソウゴの行動を把握しているのは間違いない、はずだ。
だとすれば、忌避する行動は邪魔をしようとすると思われる。
だが動かない以上、向こうとしては何も思うところはないのだろうか。
今回、彼はソウゴの夢の話を聞いて明らかに動揺していた。
何か動きがあってもよさそうなものなのだが。
「ここから山に行くか聖都に行くかはかなり大きな違いだと思うけど……」
うーん、と立香が腕を組んで空を見上げる。
彼女に寄り添っている清姫が扇で口を覆いながら、軽く首を傾けた。
「―――聖都の方は入れないのではないですか? わたくしたちも、その結界のせいで。
でしたら、近づいても近づかなくても大きく変わらないでしょう」
「なるほど。山と聖都の二択、その上で聖都が侵入不可であれば実質一択だ」
獅子王の動きを封じる結界。
それがある限り聖都と外界が隔離されるのであれば、行っても入れない。
だとすればどちらにせよ、彼らの次の行先は山の民の元ということになる。
「じゃあ次は山に向かった方が話が早い、ってこと?」
「そうだね。でも僕はマスターに賛成、聖都行きに一票かな」
そう言ってソウゴを見るアレキサンダー。
うん? と。ブーディカは、聖都行きを提案した彼に首を傾げる。
「聖都から外に侵略できず、聖都に入れない状況。
これがその通りだったとすると、今は聖都周辺を安全に調査できるってことだからね。
山の民と聖都についての話をする時、あるいは最終的にオジマンディアス王と聖都に攻め込む時。見ておいた方がいい場所であることには変わりない」
「それは確かに……」
頷いて己のマスターの方を見るブーディカ。
視線を向けられた立香はそのままそれをオルガマリーにスルーパスした。
即座に軽く睨み返される。
「ただ、あまり油断はしない方がいいと思うね。
聖都軍が外に出れないというのは推測だし、何より―――」
ダビデがそう言いながら、ちらりとソウゴの方を見た。
他はともかく、鎧武のことに関して状況を動かすのは間違いなく彼だろうと。
「異教の神がマスターの接近に気付いて、状況が変わることが十分にありえる。
場合によっては、そこで決戦に発展する可能性すらある。
先に山の民に接触するのも十分にありだと思うよ?」
そんなことを言って。
ソウゴやアレキサンダーに反する意見を出し、ダビデはにこりと微笑んだ。
それを胡乱げに見たオルガマリーが気を取り直し、他のメンバーに視線をやる。
「……藤丸。あなたはどう思う?」
「え? ぇと、うーん……そう言われると難しいかも。
……でも山の民の方はニトクリスに聞いた情報しかないんだよね。
聖都に向かったら挟み撃ちされない、とは言い切れないのかも。
聖都の位置は分かり易いけど、山の民がどこにいるのかも分かってないし……」
聖都の情報も多いわけではないが、それ以上に少ないのが山の民の情報だ。
あるのはニトクリスが漏らした情報だけ、と言っても過言ではない。
だから現時点で、山の民と協力して聖都と戦うことができる―――そうと断じてしまうのは、ちょっと難しい。立香はそう考えた、ということを口にした。
そして聖都と山の民の両方を敵にする可能性。
それを考えるのであれば、動き方には注意する必要もあるだろう。
「だとすると、常に砂漠側を背後にしていなければいけませんが……」
マシュが背後を見ながらそう口にする。
一応共闘関係にあるオジマンディアス王のエジプト領。
こちらからいきなり山の民が現れる、などということはまずないだろう。
そして今のカルデア陣営が撤退する先は、ここくらいしかない。
基本的に聖都と山の民に挟まれないような場所を取る。
そのうえで極力、咄嗟に砂漠に向かえる位置取りを心掛ける必要があるだろう。
それを前提として、彼女が出す結論。
「……山の民を探しつつ、霊脈も探してタイムマジーンを確保する。聖都はその後。
うん、私はこうするべきだと思うかな?」
「―――マシュはどう?」
次に話を振られたマシュが、悩むように目を伏せた。
そんな彼女の肩の上でフォウが小さく体を揺らす。
「そう、ですね。はい、わたしもマスターの案に同意します。
どう動くにしても、全体的な機動力の底上げは必要になるかと」
「ツクヨミ」
「……私は聖都、だと思います。現地の様子見もあります。けど……」
どう言ったものか、と言葉を詰まらせるツクヨミ。
そんな彼女に、オルガマリーは続きを促した。
「けど?」
「……一番不味いのは、私たちが知らない間に聖都の状況が動くことだと思うんです。
その前にソウゴとこの時代にいるっていう仮面ライダーが接触できるなら……それは多少のリスクを負ってでも、やっておかなきゃいけないことなような……」
「なるほど、ね。ええ、分かったわ」
ツクヨミの答えを受け取り、オルガマリーも眉を顰める
彼女はそうして大きく深々と溜め息を落とし、頭を上げた。
「―――とりあえず、今後の方針を示します。
まず……わたしたちが次に向かうのは――――」
カルデアの面々が彼女の言葉を聞いて、始動する。
選ばれるのがどちらの方針であっても、やることは変わらない。
やり遂げる、ただそれだけなのだから。
ピクト人はエラス様が作った蛮族だったりしませんか。
安心せえ、ブリテンの王は俺が継いだる!