Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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アトラスの記録2017

 

 

 

 バシュッ、と空気が抜ける音。

 砂と瓦礫に埋もれたコックピットのハッチを開き、周囲を探るように顔を出す。

 真っ先にモードレッドが飛び出し、その後に他のサーヴァントが続く。

 砂に埋もれた通路に下りるが、周囲は完全な闇。

 タイムマジーンも一時的に機能停止している今、周囲への灯りはなかった。

 

「どこだろ、ここ」

 

 最後に出たジオウ・ドライブアーマー。

 彼が肩から車輪を飛ばして展開するのはピットクルー。

 それらがタイムマジーンの修理にかかる。

 

 更に暗闇に沈んだこの場の灯りとするべく、バーニングソーラー。

 それが彼らが落ちた場所を照らし出し―――

 

 すぐそばに、インバネスコートを着た青年を見つけ出した。

 

「おや、灯りはあるようだね。こんにちは、諸君。

 そしてようこそ、神秘遥かなりしアトラス院へ」

 

 サーヴァントたちが臨戦態勢に入る。

 手には煙管と杖、インバネスの下からはアームに繋がったレンズ。

 おおよそ戦士には見えない奇怪な風体。

 まず間違いなく、サーヴァントであろう突然あらわれた存在。

 

 即座に彼らは最大級の警戒をもって相手に対峙した。

 

 そんな相手の様子を気にした風もなく。

 彼は呑気ささえ漂わせながら、自己紹介を続けた。

 

「私はシャーロック・ホームズ、世界最高の探偵にして唯一の顧問探偵。

 今はチャールズ・バベッジの依頼を受け、こうして真実を求めている者」

 

 彼は何ら衒いなく、自身が最高の存在であると語る。

 

 ―――シャーロック・ホームズ。

 世界的に最高クラスの知名度を誇る探偵小説、『シャーロック・ホームズ』。

 まさしくその主人公の名を己の名として明かし、彼は小さく微笑んだ。

 

「チャールズ・バベッジ……確か、ロンドンで会ったっていう?」

 

 ツクヨミが確認を取るようにソウゴを見る。

 ジオウは送られた視線をそのままアレキサンダーにパスした。

 この中で会っているのは彼だけだ。

 

「―――そうだね。アンデルセンの推論は正解だった、ということかな」

 

「ミスター・アンデルセンの場合、状況ではなく人を見て謎を明かすのだろうが……まあ、彼がしただろう推測は大体あっているのではないかな」

 

 アレキサンダーが口にするアンデルセンの推論。

 彼がしたその内容を聞きもせず、ホームズはそれを肯定した。

 そのままここに落ちてきたメンバーを見回して、眉根を寄せる。

 

「しかし、ふむ……流れによっては、『私がロンドンで助力したのだよ』などとアピールするつもりだったのだが、君たちは私が見せた陰に触れたメンバーではないようだ。

 では、私の自己紹介に信用性を得る効力はあまり期待できないかな?」

 

「まあ、さりげない助力が光っていたとは聞いているし、いいんじゃないかい?」

 

 肩を竦めるホームズに、同じようにしてみせるダビデ。

 ツクヨミは一応オルガマリーに通信をしようとするが、繋がらない。

 そもそもエジプト領はニトクリスの砂嵐の影響で通信が繋がらないのだ。

 カルデア側も通信不良が異常事態とは考えないだろう。

 

「とりあえずここで私たちを迎えたことに関して訊いてみればいい。

 信じるか信じないかなど、考えるのはその後からでも遅くはないさ」

 

 警戒態勢は崩さないまま、フィンがマスターにそうアドバイスする。

 ホームズはその言葉に少し困った様子を見せる。

 

「ここでキミたちの乗り物の修理を待ちつつ、立ち話ならそれでもいいが……

 私としては目的地があるのでね。目的地に向かって歩きながらの話でもいい、という程度には信用が欲しい。どうだろう?」

 

 そう言って、彼らに背を向けるホームズ。

 奥に向かって歩いていこうとしているのは明白だ。

 彼が敵であったならば何らの罠がある可能性もある。

 

 フィンは軽く片目を瞑ると、指示を仰ぐようにツクヨミを見た。

 決めるのはマスターである彼女たちだ。

 

「いいんじゃない? 着いてってみようよ」

 

「ソウゴ……」

 

 ジオウが動き出す。

 マジーンの修理をそのままピットクルーに一任し、着いて行く姿勢を示す。

 そうして彼に近づいたジオウは、ホームズに後ろから問いかけた。

 

「ホームズはそれが俺たちに必要なことだと思ってるんだよね?」

 

「さて。必要になるかどうかはキミたち次第、だとは思っているが。

 そうだね。世界を救いたいなら、知っておいて損はないだろう」

 

 彼が態度を示したことで、シャーロック・ホームズは歩き出す。

 そこに追従するジオウと、更に後についていく他の面々。

 

「まあ、そうだよね。仮にここでホームズが俺たちを罠に嵌めようとしたら、ホームズが敵だっていう新しい情報は得られるもんね」

 

「―――その考え方は悪くない。推理を展開するにしろ、得ている情報が多いに越したことはないからね。私が敵だと確信できたなら、私の誘導がかかっていたロンドンで得た情報は疑うべきだ、という見地を得られる。情報の出先の信用度、これは重要な情報だ。しかし、ふむ……?」

 

 ソウゴの物言いに感心したようにそう口にするホームズ。

 そうしてから何かを気にするように、歩いていた彼は首だけ捻りジオウを見る。

 

「なに?」

 

「……いや、止めておこう。確信を得られたわけではないのでね。

 混乱を招くような発言は控えておくとしよう」

 

「ふーん……」

 

 ぼかすホームズに、それを何も気にせずスルーするソウゴ。

 彼は気を取り直したかのように前を向き、再び言葉を並べだした。

 

「ではまず、キミたちが辿り着いたこの場所の事を語ろうか。先程言った通り、ここはアトラス院。それはエジプトにあるもう一つのアトラス山に根付いた、錬金術師たちの学院。

 ―――別名を“巨人の穴倉”。魔術協会三大部門の一つにして、蓄積と計測の怪物」

 

 仮面の下でさっぱり分からない、と。

 そんな顔をしながら着いていくソウゴ。

 それを知ってか知らずか、ホームズの口は止まる事を知らないように動き続ける。

 

「中世から主流になった現代錬金術。それとは異なる、魔術の祖・世界の理を解明せんとする錬金術師の集団。彼らは魔術師でありながら、魔術回路に乏しかったそうだ。足りないものは他所から持ってくる。彼らは当然の帰結として、足りない魔力を道具に頼ることで補った。魔術というより、科学の発展に近い方向性。魂さえも観測可能なエネルギーとして扱い、魔術回路を持つ人造生命。ホムンクルスなどさえも生み出した」

 

「……そもそも、オレたちは辿り着いたも何もねえっての。

 撃ち落とされてここに落ちてきたんだよ」

 

 長々とした語り、それを遮ったのはモードレッドだった。

 おっと、と。ホームズが失敗を反省するように声をあげる。

 ホムンクルス云々は少し余計な話だったろう。

 彼は一度咳払いすると、何事もなかったかのように続きを語り出す。

 

「……つまりキミたちは、第三者からここで情報を得るように誘導されているわけだ。

 ではなおさら、知っておいた方がいい。

 “自らが最強である必要はない。我々は最強であるものを創り出すのだ”

 それがアトラス院の錬金術師たちの格言だ。彼らはその信条の元、多くの兵器を生み出した。魔術世界でいう、七つの禁忌。彼らは世界を滅ぼせるほどの兵器を七つまで創り上げ、そこで自分たちの限界を認め、これを封印したという」

 

 世界を滅ぼせるほどの兵器。

 まさに今、世界は滅びているので驚くべきかそうではないのか。

 少し反応に困りつつ、ツクヨミがその言葉を反芻する。

 

「錬金術師が創った世界を滅ぼせる兵器……そういえば」

 

「……ああ。そういや何だか、前に見た奴は錬金術師がどうこう……って話をしてたっけな。あのマハトマ円盤女が」

 

 彼女の反応を見て、後ろについていたモードレッドが前の特異点の話を思い出す。

 エレナ・ブラヴァツキーの出した話題だ。

 仮面ライダーオーズの力は、800年前の錬金術師が作ったものだと。

 

 アナザーオーズが出現させた空中の城塞。

 あれも全てを欲望のままに喰らう、世界を滅ぼせる兵器、と呼べるのではないか。

 あらゆるものをメダルに変えて呑み込んでいく姿を思い出し、そう考える。

 

 ―――ホームズが微かに眉を顰める。彼は知らない話だ。

 彼女が生前に知ることができた情報、ということは、それがエレナ・ブラヴァツキーの語るマハトマ由来の知識でない限り、ホームズにもそれを知る事のできる環境があった、ということになるのだが……彼は、知らない。

 

「ふむ? ―――いや、とりあえず私の興味は置いておこう。

 アトラス院の院長には、代々アトラシアという称号が与えられる。ここに来る前に院長室の前にかかっているプレートを見てきた。記されていた名前は、ズェピア・エルトナム・アトラシア。彼がこうなる前の、最後の院長だったのだろうね。

 歴代の院長は必ず発狂し、その結果として先に語った禁忌(へいき)を創った。あるいは、歴代の院長たちは未来の観測に挑み、負けたが故に発狂してそんなものを創り出した―――とも。

 さて。計算の権化たちが何に負け、発狂してそんなものを創り並べたのか。それは情報が足りないが故に、私にも解き明かせない真実だが……つまり、アトラス院とはそういう場所だ」

 

「……つまりって?」

 

 急に話を纏めた彼にツクヨミが問い返す。

 その問いに対する返答は、実に簡潔だった。

 

「アトラス院とは錬金術師たちの巣窟にして、おぞましい兵器の廃棄場。

 私が語ったことを纏めると、そういうことさ」

 

 今まで長々と口上を並べていた説明を、自分で一言に纏めた。

 あまりにもあっさりとした語りに、ツクヨミは彼に胡乱げな視線を送る。

 

「じゃあ最初からそういえば良かったんじゃ……」

 

「ははは。さて、では続きを語るとしよう」

 

 彼女の言葉に笑い返し、すぐさま彼はまた違う話に持っていく。

 そんな態度に思わず、と言った風にツクヨミは叫ぶ。

 

「まだあるの!?」

 

「もちろん、あるとも。そもそも今までのは前提の確認だよ。キミたちにアトラス院の概要を理解してもらったところで、本題はここからだ。

 ―――ところでダビデ王。あなたがこの人理焼却という偉業について、どう思われているか。お聞きしても?」

 

「うん? まあ答えられることなら答えるけどね」

 

 気負いもなく、ホームズに返答するダビデ。

 その返答を得た彼は小さく頷き、続けて質問に入る。

 

「人理焼却―――全人類を対象にした、未曽有の殺人事件。

 この大事件の主犯は魔術王と目されているが、あなたはどう思われているでしょう」

 

「うーん、マスターたちにはいつか話した気もするけれど。やる時はやるよ、あいつは。

 マスターたちはロンドンであいつを見たそうだけど、残念ながら僕は直接見てないからね。

 絶対とは言えないけど……まあ、あれはソロモンなんじゃないかい?」

 

 ダビデの答えにブレるものはない。

 彼は本気でそう思って、そう発言している。

 そんな彼の様子を見て何かに納得したように、ホームズは一つ頷いた。

 

「……なるほど、あなたのスタンスはそういう。

 つまりおおよそ視えていなければ取れない態度とも思うが……

 いや、事実を知らない以上問い詰めても答えは出ないか」

 

 会話の中で彼は勝手に一人で納得する。

 次いで彼はダビデから視線を逸らし、改めて向ける先にはモードレッド。

 

「では、モードレッド卿は?

 私の考えた所、キミも魔術王の前に立ったに違いないと思っているのだが。

 何か彼に対する所感があれば、聞かせて欲しい」

 

「―――所感も何も。偉ぶったクソ野郎以外に何かあんのか?」

 

 舌打ちしながら言葉を返すモードレッド。

 その答えに少し目を細め、考え込むホームズ。

 彼の視線は続いてジオウの方へと向かっていた。

 

「では常磐ソウゴ。キミはどう思っただろうか。

 キミもまた魔術王の前に立って、対面したのではないかな?」

 

「うーん……」

 

「もちろん、王としての格の違いだろう? 我が魔王」

 

 ソウゴの悩む声を遮り、ここにはいない人物の声がする。

 迷宮のように入り組んだアトラス院の通路、その一本の中から届いた声。

 そんな彼の登場にも、もはや慣れたもの。

 ホームズだけが微かに目端を上げて、その人物の登場に視線を送る。

 

 特に険しい表情を浮かべたツクヨミが、彼を睨みつけた。

 

「黒ウォズ……あなた、ここにいるってことは白ウォズがこうするって知ってたんじゃないの?」

 

「残念ながら。君たちが奴に撃ち落とされたのを見て、私も慌てて追いかけてきたのさ」

 

 そう言ってストールを軽くはたく黒ウォズ。

 その度にそこからぱらぱらと砂が舞う。

 彼を一通り眺めたホームズが視線をジオウに戻し、再度問いかける。

 

「それで、彼が言う通りでいいのかな?」

 

「いや、別に……だって多分、あいつ王様じゃないでしょ」

 

 ソウゴはそう、黒ウォズの言葉を否定した。

 片手に本を抱えたままの彼が小さく肩を竦める。

 ホームズは片目を細め、ソウゴの返答に興味を示す。

 

「―――――ほう」

 

「俺とは違うやり方の王様なのかも、って思ってたけど。

 やっぱり色んな王様を見てきた感じ、なんか違って……

 どっちかと言うと―――あれ、神様のやり方なんじゃない?」

 

 ()()()()()()()()()

 今まではどのような王であれ、その視点を共有できた。共感できるかは別として。

 彼や彼女は王としてそういう在り方なのだ、と。そう納得できた。

 だが、ロンドンで見た魔術王ソロモンはまるで違う。

 そもそもあれは人に愛想を尽かす以前に、人の王として機能していない。

 

 彼が有していると感じる魔術王の視点の高さは―――

 多分、神様のようなものだ。

 

「……なるほど、面白い視点だ。人の王だったという前提から魔術王の精神性に疑問を投げかける、か。彼は人の王であり神ではない。神と人の架け橋であり、神に寄ってはいても視点は人のもの。人として人を憎悪し滅ぼす、というならおかしくはないが、神の視点から人を見放す、というのは道理に合わない。まあこの特異点の騎士王アーサーのように、外的要因がその精神性を神にした、という可能性は消えないだろうが」

 

 ホームズの視線が再びダビデを捉える。

 彼はそれに特別な反応を示すことなく、ただただ肩を竦めていた。

 

 引き合いに獅子王を出されたことで、モードレッドが舌打ちする。

 そんな彼女の様子を見て、ホームズが思考を切り上げた。

 

「―――そんな魔術王だが、彼は既に勝利している。人類史ごと人類種を抹殺するという、完全犯罪を成し遂げるというかたちでね。だからこそ、ロンドンでもキミたちの前に姿を現したのだろう。我らの反抗は彼にとって取るに足らないものだから。

 ……そうだね。例えば、何らかの調査依頼を受けた探偵がいたとしよう。彼は依頼された相手の調査を全て終え、裏取りも済ませた。残るは依頼人に結果を報告するだけ。そのための書類も書き上げた。あとは仕上げた報告書のインクが乾くのを待つ。それだけ。

 ―――彼にとっての人理焼却は、既にそういう段階だ。だが、本来存在しなかったはずの猶予が得られた。インクが乾くまでというほんの少しの時間の空白だけ、抵抗することを許された。

 その幸運こそがカルデア。人理の外に浮かぶ浮島と化したキミたちだ」

 

 歩み続けて、そろそろ彼が目的とする場所が見えてくる頃。

 一定の歩調を保ちながら、ホームズは軽く瞑目した。

 

「……問題は“次”。確かに既に終わっていることだから手を付けない。そういう話でもあるだろう。が、恐らくは彼にとっては続けて起こした事業こそが本命。だからこそ、人理焼却という大事業ですら、魔術王の中では意識を割くに値しない案件になっている。私はそう考えている。

 人理焼却さえもそう扱う彼が行う、“次の仕事”。これこそがもっとも恐ろしい事ではないのだろうか、とね。

 ―――さて。そろそろ本命に到着だ」

 

 目を開き、後ろを見る。

 考えているツクヨミとアレキサンダーとフィン。

 そろそろ長い話に飽きているソウゴ、苛立っているモードレッド。

 肩を竦めている黒ウォズに、()()()()()()()ダビデ。

 

 ―――さて。ダビデ王の反応……視たくない?

 いや、自分はそれを視るべきではない、という反応かな。

 

 得た情報に一度頷いて、本命のエリアに足を踏み入れる。

 

 洞窟のような地下通路を抜けた先。

 そこには、一面の青空が広がっていた。

 

「地下なのに空がある。どうなってるのかしら」

 

「ここ広くない?」

 

 街一つ入る広大な空間を見渡すソウゴ。

 通路もだが、よくこれだけのものが砂漠の下に入るものだ、と。

 そんな彼らを背に、目当ての場所に向かい歩き出すホームズ。

 

「ここがアトラスの錬金術師たちにとっての学術都市だからね。

 相応の設備は整っているさ。

 ―――そして、この都市の中心こそが目の前にあるあのオベリスク。

 アトラス院における最大の記録媒体、疑似霊子演算器トライヘルメスだ」

 

 彼が目的地としているのは、空に向かって伸びる青い柱。

 この広大な空間においてなお、もっとも目立つもの。

 

「どっかで聞いた名前のような……」

 

「ああ、カルデアにもあるだろうね。カルデアのものはトライヘルメスをオリジナルとした霊子演算器、トリスメギストス。キミたちが行うレイシフトなどに欠かせない装置だ。

 それだけの性能を持つのは構成する材質故。それこそが賢者の石と呼ばれるフォトニック結晶、今の地球上の科学では生成できないオーパーツだ」

 

「そっか……だからここ、どこかカルデアの管制室に似てたのね。

 あっちはここまで広くはないけれど」

 

 周囲の空間を見回しながら歩く。

 目指す先はホームズがトライヘルメスと呼称した柱。

 

「―――トライヘルメスには全ての事象が記録されている。

 アトラスの錬金術師ではない我々にその全てを知ることはできないが……

 単純な事実、結果だけなら見る事ができるはずだ。

 まあ、数学問題で公式を理解できないままに解答だけ見るようなものだね」

 

 公式をよくわからない数式、という認識のままに答えだけを見る。

 問いと答えだけを見て得られる情報で十分なわけはない。

 が、それでもそれに大きな情報としての価値があるのは確かだろう。

 

「……それって、フィンの宝具みたいな感じに?」

 

「うん? ああ、いや。私の“親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)”は残念ながら何でも答えを得られるわけではないよ。あくまで私の知識の上で出せる範囲の答えを、DHCフルパワーで導き出してしまうだけさ」

 

 マスターからの問いに笑ってそう返すフィン。

 

「フィン・マックールの叡智を与える鮭の逸話か。

 私としては与えられる叡智よりも、それほどに脳を活性化させる時、どれほどハイになるのか興味が……いや、失礼。少年少女の前でする話ではなかったね、忘れてくれていい」

 

 肩を竦めてホームズが辿り着いたトライヘルメスの端末に触れる。

 既にアクセス権を回収していた彼に呼応し、それが起動した。

 

「それで何を調べるの? 魔術王の正体?」

 

「そんな風に謎を解いてもつまらない……失敬。それが出来るなら楽なのだけどね。その情報はトライヘルメスも記録していない。恐らく魔術王が活動しているのが、今のカルデアやこの特異点と同じ。世界から隔離された時空の狭間であるが故に、トライヘルメスさえも実態を観測していないからだろう。なので、ここでは素直に謎を解くのに必要な情報を集めよう。例えば、あらゆる記録、記述から抹消されている事件。2004年の日本で起きた聖杯戦争のこと、などをね」

 

 言いながら彼はトライヘルメスを走らせる。

 霊子演算器に記録された、必要な情報を出力するために。

 

「2004年の聖杯戦争……って。冬木でランサーが参加してた?」

 

「そう。キミたちが真っ先にレイシフトした特異点。人理焼却によって特異点と化し、途中で別のものにすり替わった。しかし最初から“2004年に聖杯戦争があった”という事実は変わらない。

 確かに私が調べた限り、聖杯戦争開始時のデータは見つかった。聖杯を求めて冬木に集った七人の魔術師の名簿だ。その中にはキミたちの知る人物の名前もある。正確には、その人物の娘を、キミたちはよく知っているということだが」

 

「魔術師の親、ってことは……」

 

 そも、彼らがよく知る人間の魔術師など数え切れる。

 そしてその中でも彼らが最も懇意にしているのは―――

 

「オルガマリー・アニムスフィアの父にして、亡くなったカルデア前所長。

 時計塔のロードという立場でありながら、秘密裏に日本の地方都市まで出向き、その命を賭ける血生臭い魔術儀式に参加した人物。その名は―――」

 

 そこまで口にしてから、ふとホームズが視線をトライヘルメスに送った。

 

「おっと、丁度トライヘルメスからの答えも返ってきた。

 ……ふむ、無音のままただ回答を出すだけ、とはいまいちノリに欠ける。まあ、それはいいとして。では、改めて言い直そう。2004年に発生した聖杯戦争の参加者にして、その勝利者。そしてキミたちのよく知る名前。

 ―――即ち、マリスビリー・アニムスフィア。彼こそが競争相手である六人の魔術師を殺し、万能の願望器たる聖杯を手に入れた、とヘルメスは記録している」

 

 ホームズの言葉を吟味する。

 それが一体何を示すことなのかを考えて―――

 

「それで……それ、何か問題なの?」

 

「いや、今までのは前提条件。あくまで確認事項さ」

 

 さっきからそういう話ばかりだな、とジオウが仮面の下で辟易した。

 

「そういうの多くない?」

 

「ははは。

 ―――さて。マリスビリーが聖杯戦争の勝者だった、わけだが。ヘルメスはもう一つ、事実を記録している。彼には協力者がいた。その人間と共に聖杯戦争に参加していた、とね。

 その人物は聖杯戦争の翌年、特例としてカルデアのスタッフに招かれている。各分野における一流のスタッフを招集したカルデアにおいて、彼は何と22歳で医療機関のトップになった。異例の抜擢と言えるだろう。まあ、傍から見て何らかの裏取引があったのでは? と普通の人間なら誰でも思うだろうね。何せ、その医療機関トップに選ばれた人間は経歴が一切不明。当然のことながら、抜擢にたる大した功績もなかった」

 

 ホームズの語り。

 それがカルデアの中の誰かを指している、というのは自明。

 そしてそれが誰の事を言っているのかも。

 

「ロマニ? ふーん……じゃあそれも調べればいいんじゃないの?」

 

 名前は出さないが、ホームズが誰の話をしているかは明らかだ。

 ならば、目の前にあるのは霊子演算器トライヘルメス。

 それを使用すれば回答は得られるのではないか、とソウゴは言う。

 

「残念ながら、一個人の経歴レベルのデータとなるとね。アトラス院の者ならいざ知らず、私が操作することで読み解くには、余りにも小さい情報なのだよ。こうして彼がマリスビリーと何らかの関与がある、と分かったのも『2004年に冬木で行われた聖杯戦争』という大枠に紐付いた情報だったからこそ、こうも簡単に得られたものなんだ。

 ―――だからこそ常磐ソウゴ、キミに問いたい。2004年の冬木の地。キミがレイシフトした先で、彼は元参加者として聖杯戦争というものに、何らかの反応を示したかな? 現状、それなりに情報を出し渋っている私が言うのも何だが、キミたちの窮地に彼が情報を出し渋る理由はない。マリスビリーとの関係、聖杯戦争との関係、2004年の聖杯戦争における正しい経験。普通に考えれば、それがキミたちの助けになることは想像に難くない。自分の知る聖杯戦争と違っていたとしても、()()()()()()()()()()()()()という話でさえ大きな情報になると、彼は知っているはずだ」

 

「うーん……多分、何も言ってなかったと思うけど」

 

「……なるほど。ちなみにそういうこともあって、私は彼を信用していない。私が考えるに、ロマニ・アーキマンは何かを隠している。それもとびきり、真相に近い何かをね。

 キミたちとの接触をアトラス院に選んだのも、カルデアとの通信が途絶する場所だからだ。もちろん、トライヘルメスのこともあったけれどね。なのでキミたちがここから帰還した後も、カルデアには私の情報は秘匿しておいて欲しい」

 

 そう言いながら再びトライヘルメスの端末に触れるホームズ。

 そんな彼の後ろで、ツクヨミが表情を硬くした。

 

「ロマニさんが……? ソウゴはどう思う」

 

「どう思うっていうか。俺はロマニを信じてるし……

 もし何か俺たちに隠し事しててもそれならそれで、その時じゃない?

 それこそロマニより黒ウォズとかの方がもっと怪しいことしてるし」

 

 ね? と黒ウォズに向かって振り返るジオウ。

 彼は自分が怪しいと断言されながらも、惚けるように瞑目した。

 

「私は常に君のために動いてるのだがね……酷いんじゃないかい、我が魔王?」

 

「もちろん黒ウォズも信じてるよ。何かあったら、その時はその時だし。

 あ、実は黒ウォズもロマニの隠し事知ってたりして?」

 

「さて。それはどうかな……」

 

 そんなやり取りを背に、ヘルメスからの回答を閲覧するホームズ。

 膨大なデータからの索引はそれだけで骨が折れる。

 が、このケースにおいてそれほど時間はかからなかった。

 

 ―――さて。これは一体どういうことか。

 

 このアトラス院、トライヘルメスは2015年から漂流してきたもの。言うまでもなく、これは2015年まで実在した存在。だからこそ記録されている2016年以降の情報は、実測値ではなく予測値でなければならない。それも人理焼却を切っ掛けに2017年以降は焼け落ちているはずだが……

 

 ―――だというのに何故。

 2()0()1()7()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 当然、2015年から2017年を予測することは出来ても、実測することなどできない。

 だというのに、トライヘルメスの中には間違いなくその事実が残っている。

 

 索引が簡単なのも当たり前だ。このトライヘルメスの中において、予測としてではなく事実として記録されている2017年の情報。それはこの仮面ライダービルドの情報だけなのだから。

 

「……ふむ。謎が謎を呼ぶ、といったところかな」

 

「その謎をお前たちが知る必要はないんだよ」

 

 瞬間、今できる最大限の力で離脱を慣行する。

 突然横合いからホームズに向けて放たれた誰かの言葉。

 それが味方に類する相手からのものではないのは、推理するまでもなく明白だ。

 

 全力の退避、その行動だけで霊基が軋む。

 安定していないシャーロック・ホームズの霊基は戦闘に耐えられない。

 そんな彼に対して追撃が放たれる。

 

 声をかけてきた男ではない。その背後から踏み出した黄金の鎧騎士。

 彼を追うように放たれるのは黄金の三叉槍。

 見過ごせば必ず致命傷に至るだろう一撃を前に―――

 

「―――さて。獅子王の勢力ではなさそうだが?」

 

「ぬ――――」

 

 フィンの槍がその一撃を打ち払う。

 トライデントを引き戻し、低い声を漏らす黄金の騎士。

 その次の瞬間、槍の持ち主に対してモードレッドの剣が炸裂した。

 火花を散らしながら、一歩だけ後退る黄金の機兵。

 

「カッシーン……」

 

 体勢を立て直す黄金の機兵を見て、その名を呟く黒ウォズ。

 そんな彼の声に対し、一瞬だけ彼に意識を向けてみせる男。

 が、すぐに視線を外して他の連中を見回し始めた。

 

 一通り見回した男の視線が次に向かう先は、黄金の鎧とサーヴァントの戦闘。

 

 彼の服装はあまりにも普通だった。21世紀において、だ。

 現代において歩いていても、誰も不自然に思わないだろう。

 明らかに、この時代から外れたものの衣装。

 

 アレキサンダーの雷霆が彼に向け放たれる。

 それを防ぐため、フィンとモードレッドの攻撃に構わず兵士が動く。

 カッシーンと呼ばれたそれは、男に向け放たれた雷撃を槍で弾き飛ばしてみせた。

 

「ジョウゲン様―――我が魔王の求めた情報を手早く」

 

 視線を送られているカッシーンが男に上申する。

 直後に奔る水の槍が彼の槍を絡め捕り、赤雷の剣がその胴体を薙ぎ払った。

 弾き飛ばされた黄金の体が即座に体勢を立て直す。

 再び足止めに動き出す部下を見て、ジョウゲンと呼ばれた男が肩を竦める。

 

「我が魔王、だぁ……?」

 

 どこぞで聞いたような呼び方。黒ウォズに意識を向けようとしたモードレッドがしかし、カッシーンの反撃に舌打ちして集中する。

 

 その戦いから視線を逸らしたジョウゲン。

 彼は何も言わずにトライヘルメスの端末への接触を開始する。

 

「まさか、オーマジオウの……!」

 

 ツクヨミが一瞬黒ウォズを見て、すぐにファイズフォンXを抜いた。

 放たれる赤い弾丸。それに混じり、ダビデの投石も飛ぶ。

 彼の意識を絶つための一撃。

 その遠距離攻撃を追うように、ドライブアーマーが疾走を開始する。

 同時に腕から放つ、タイプスピードスピード。

 

 ジョウゲンに迫る多数の攻撃。

 カッシーンが動こうとするも、しかし他のサーヴァントが逃がさない。

 モードレッドとフィンを弾くその隙に、彼を撃つのはゼウスの雷霆。

 雷に怯んだその身をアレキサンダーの剣が叩き伏せる。

 

「まったく、やかましいな。それとも、流石は常磐ソウゴっていうべきかな……?」

 

「――――!?」

 

 ヘルメスから手を放す。

 彼の手にはいつの間にかライドウォッチが握られており―――

 そして、腰にはいつの間にかベルトが巻かれていた。

 ジクウドライバー。ソウゴの持つものと、全く同一のものが。

 

〈ザモナス!〉

 

 起動したウォッチが装填される。ジクウドライバーが回る。

 仮面ライダージオウと同じシーケンスを以て、ジョウゲンの姿が変わっていく。

 

〈ライダータイム!〉

 

「――――変身」

 

 細胞が活性化する。その熱量が周囲に発散する。

 爆発の如き熱波が彼に向かっていた攻撃を全て薙ぎ払う。

 左半身が返り血を浴びたかのように赤く染まる。右半身が毒のように紫に腐り落ちていく。

 右半身のみに羽ばたく、地獄の底から見上げた天使の翼のような、白く染まった烏の羽。

 

〈仮面ライダーザモナス!〉

 

「仮面、ライダー……!?」

 

 ドライブアーマーの疾走が彼まで届く。

 その瞬間、赤と紫の狂獣が活動を開始していた。

 

 地面を踏み切ると同時、烏の翼が羽ばたいた。

 空を舞う羽より軽やかに飛ぶ獣。

 そのザモナスの腕がジオウに組み付き、一瞬のうちに押し倒していた。

 

「ジオウ……今のお前に用はないんだよね……」

 

「ぐっ……! あんた、オーマジオウと関係が……!?」

 

「さぁね?」

 

 ザモナスがジオウを放し、立ち上がる。

 腕を上げ、フィンに吹き飛ばされてきたカッシーンを受け止め―――

 そのままトライヘルメスの方へカッシーンを投げつけた。

 端末の前に放り投げられ、転がる黄金の体。

 

「ぬぅ……!?」

 

「そっちは任せたよ……俺がこっちやるからさ?」

 

 白と赤の雷光が迸る。

 アレキサンダーとモードレッドによる二重の斬撃。

 それを彼は両腕の前腕部で受け止めてみせた。

 

「君たちは何者だい? ウォズの知り合い、みたいだけど―――!」

 

「お前たちには関係ないよ。でもまあ、俺を変身させたご褒美はあげようかな。

 何か好きなものでも買ってあげようか?

 あ、この世界の商人が売ってるのなんて、食べ物と水くらいだったかな……?」

 

 モードレッドの脚が振り上げられる。

 彼女のグリーブはザモナスの胴体に突き刺さり、彼を後ろに押し込んだ。

 クラレントの刃を翻し、赤雷を纏わせ、叛逆の騎士は吼え立てる。

 

「んなもん要らねえよ―――代わりにテメェの命でも置いていきな!!」

 

「はは。なんだ、俺の命が欲しいんだ。じゃあつまり……」

 

 魔力放出のブーストを以て、モードレッドが加速する。

 赤い稲妻そのものとなった彼女の殺到。

 それを前に、ザモナスは腕のホルダーからウォッチを外していた。

 

〈アマゾンアルファ!〉

 

 そのウォッチのスターターを押し込むと同時。

 左腕。赤い腕にピラニアのヒレを思わせる鋸の如き刃が出現した。

 雷光とともに振るわれる剣。

 荒々しいその一撃をそれ以上に荒々しく、ザモナスは腕の刃で絡め捕る。

 

「――――んだとっ……!?」

 

 剣ごと引きずり倒されるモードレッド。

 倒した彼女を踏みつける赤い脚。

 

「―――やっぱり、欲しいのは食べ物じゃん」

 

 紫の腕に毒が滴り翻った。

 その爪がモードレッドへと突き立てられる―――

 

〈サイクロン! ジョーカー!〉

 

 その寸前。ザモナスを左右から、二色のメモリドロイドが挟撃。

 灼熱に燃え上がるメモリドロイド。鉄鋼の如き硬さのメモリドロイド。

 二つ同時の激突により、彼がモードレッドの上から吹き飛ばされた。

 

「…………!」

 

「はぁあああ――――ッ!」

 

 雷鳴とともにアレキサンダーの追撃が奔る。

 直撃を受けたザモナスの体が、更に押し込まれて地面を転がった。

 

〈ダブル!〉

 

 ジオウがそのままメモリドロイドを装着。

 ダブルアーマーへと換装し、構え直すうちに彼の背後で水流が立ち昇る。

 神をも殺すフィン・マックールの槍。

 その名、即ち―――

 

 ザモナスが起き上がりながら、再びウォッチをホルダーから取り外す。

 右手でそれを持ち、まるで突き出すようにフィンに向け構え―――

 

「“無敗の(マク・ア)……!」

 

 フィンの宝具解放が迫る。ザモナスがウォッチのスターターに指をかける。

 その状況に、

 

「駄目だフィン!!」

 

 叫ぶ。それは致命的な事態だと、本能に従って叫んでいた。

 その切迫が伝わったのだろう、フィンが暴れる魔力と水流を必死に抑え込んだ。

 歯を食い縛りながら表情を歪め、自身の槍と戦う彼。

 

 起動させずじまいで手持無沙汰になった手。

 ウォッチを軽く指で叩きながら、ザモナスが鼻を鳴らした。

 

「ふーん……なるほど。流石は幼くても常磐ソウゴ……ってこと」

 

「ジョウゲン様」

 

 ヘルメスの許からカッシーンの声。それに反応してザモナスが羽ばたいた。

 彼は瞬時にそちらへ帰還して、カッシーンの仕事の成果を検める。

 そうして、仮面の下にある顔を明らかに歪ませた。

 

「……そういうことなら仕方ない。俺たち自身で確認するしかないかな……」

 

 やれやれ、と。

 何かを知ったのだろう彼は面倒そうに呟き―――

 ヘルメスの端末を適当に操作し始めた。

 

「なにを―――!?」

 

 ―――警告音を発し、トライヘルメスが強制終了する。

 それは元から人理焼却により管理するものがいなくなった超高度霊子演算器。

 そもそもメンテナンス無しで稼働し続けられるものではない。

 酷使され続けてとっくの昔に不安定だったマシンが、ついに無数のエラーを吐きだした。

 誰も手を付けられないその精密装置にとって、それは破壊と同義。

 

「ッ!」

 

 ジオウが疾駆した。

 状況は不明でも、彼らが何かを探っていたことは分かる。

 それがとても重要な情報だということも。

 彼らはこちらにその情報を流したくないと思っているだろうことも。

 

 風の導きを得て、ダブルアーマーが加速する。

 だがジオウの突撃を知る彼の右手には、更にもうひとつ。

 既にライドウォッチが握られていた。

 

〈アマゾンオメガ!〉

 

 ザモナスの指が緑のウォッチのスターターを押し込む。

 その瞬間、獣の全身が粟立った。

 ―――全身のアマゾン細胞の活性化。

 細胞の活性化は膨大な熱量を生み出し、それとともにカタチを変えていく。

 

 ―――次の瞬間。

 ザモナスの全身から数え切れない棘が、周辺一帯を串刺しにするべく突き出した。

 まるでハリネズミの如く、全身を針山に変える赤紫の獣。

 

「―――まずッ……!」

 

 範囲が広すぎる。上に、射程距離も長い。

 回避はできない。できるとしても、背後に通せばツクヨミたちが危険だ。

 左半身を鉄色に染める。完全防御の姿勢で、その針山を迎え撃つ。

 

 全身を打ち据えられ、ダブルアーマーが撃墜される。

 ジオウという壁だけでは当然止めきれず、サーヴァントは即座に迎撃にかかった。

 ジオウ一つ分の隙間に駆け込むツクヨミとホームズ。

 

 そんな修羅場を眺めながら、ザモナスが棘を体から切り離した。

 軽く息を吐き、彼はカッシーンに声をかける。

 

「ほら、さっさと帰るよ。

 ―――俺たちの王様……常磐ソウゴのところにさ」

 

「ハッ―――!」

 

 カッシーンが彼の言葉に跪く。

 続けて、ザモナスは右腕を大きく振り上げた。

 羽を撒き散らすマントの羽ばたき。

 烏の翼は大きく広がり、ザモナスとカッシーンの姿を一瞬のうちに消し去っていた。

 

 

 




 
ホームズが喋るだけの話に。
ホームズが調べた聖杯戦争の参加名簿に門矢士の名前があったら笑えるジオ~。
などとと思ったが断念。仕方ないね。

どんな幻霊もフータロスにかかれば実体化できるのでは?(ハードボイルド並みの名推理)
 

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