Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
「美味しいー!」
公園の中に屋台で店を出すたこ焼き屋『フーミン』。
そこで商売をしているのは、タケルたちが幼少の頃から世話になっている老婆。
フミ婆こと、福嶋フミである。
彼女のたこ焼き屋の前にテーブルと椅子を並べ、一同は深海カノンの快気祝いをしていた。
焼けども焼けどもどんどんと食べ、すぐに無くなっていくたこ焼きの山。
そんな若い衆を見て、フミ婆は笑顔で追加のたこ焼きを積み上げていく。
「流石、若いだけあっていい食べっぷりだねぇ」
「婆さんのたこ焼きが美味いんだって! なあ!」
次々と食べながら、一際大声を出すレオ。
そんな様子を見てアカリがさも当然のように頷いた。
「当然、フミ婆のたこ焼きは世界一なんだから!」
「……確かに。世界一かどうかは分からないが、これはとても美味しい」
たこ焼きを検めながらゆっくりと口の中に放り込み堪能するタスク。
御成は彼らの前で、フミ婆が焼き上げたたこ焼きをテーブルに運び続ける。
そうしながら、彼は他の面々へと声を張り上げた。
「カノン殿の快気祝い!
それに加えてカルデアの皆様と、ジューマンの方々。
皆様との親睦を深めるために、此度の食事は大天空寺で持ちますので……!
どうぞ皆さん、フミ婆殿のたこ焼きを存分に味わってください!」
「いや、そんな! 俺たちの分は俺がちゃんと払いますんで……!」
そんな御成を手伝うため、大和が立ち上がって配膳に参加する。
彼らがそうしているのを見たフミ婆がからからと笑う。
「今日は久しぶりにカノンちゃんとマコトくんに会えたからねぇ!
流石に全部とは言えないけど、一人一皿分! 今日はフミ婆が奢ってやろうじゃないか!」
「いや! いやいやいや! そんな、悪いですって!
この人数ですから!」
豪快なことを言いだしたフミ婆に、大和が待ったをかける。
主賓のカノンに、タケル、御成、アカリ、シブヤ、ナリタの大天空寺組。
立香、ソウゴ、マシュ、ツクヨミのカルデア組。
そして大和、セラ、レオ、タスク、アムのジューマン+1。
更に追加で武蔵という大所帯なのだ。
一人一皿とはいえ、奢ってもらうようなことはできない。
そんな大和の尻を叩き、フミ婆が押し返す。
「いいんだよ! 昨日の今日でお客さんが全然いないからねえ。
元気に食べに来てくれるお客さん。
それが十年来のお得意様ってなら、そんくらいするってもんさ!
その代わり、これからも時々食べに来ておくれよ?」
たこ焼きを回しながら、そう語る彼女。
デスガリアンの破壊は拡大こそしなかったが、昨日の今日だ。
流石に今日の街は普段に比べれば大分静けさが目立つ。
それでも言い募ろうとする大和に、背中からレオが飛び掛かる。
「いいじゃねえか大和! 婆さんもこう言ってくれてるんだからよ!」
「そうそう。ここは御馳走になろ?」
「よくない、全然よくないって……」
同調するアムと合わせて、そのまま二人に引きずられていく大和の姿。
それを笑いながら見送って、フミ婆はカノンに声をかける。
「マコトくんもえらいイケメンになってたけど、カッコいい男の子とカワイイ女の子の知り合いがいっぱいいるねえ」
「うん。昨日は大天空寺で皆で色々お話したんだけど……」
今が楽しくて仕方ない、と。
そんな顔でつい最近取り戻した体で得た経験を語るカノン。
彼女のそんな言葉を聞きながらフミ婆は、たこ焼きを焼く手を緩めることなく頬を緩めた。
その一連の流れを見ながら、ツクヨミとマシュが顔を見合わせる。
「やっぱり私たちもこの時代で使えるお金、確保したいわよね……」
「そう、ですね……」
この場に来る前に寄ってきた店での戦利品。
無数の服が入った袋に囲まれながら、マシュは特に深刻な声を漏らした。
彼女が今着ている服も、アカリたちに買ってもらったものだ。
この服も、食事も、全てを大天空寺の皆に賄ってもらっていることになる。
長期戦になるのならば、それこそ金銭を稼ぐ手段が欲しい。
だがマシュとツクヨミ。それに恐らく立香とソウゴ。
誰もこの世界で働く方法がない。
身分証もそうだが、何より年齢が問題だ。
何とか身分を必要としない職業を発見したとしてだ。
中、高校生程度の年齢の彼らでは、補導される可能性がとても高い。
補導されたら身分が証明できないので、やはり問題が大きくなる。
「どうしたものかしらね……」
「なんかこう、魔術師的な闇の仕事とか?
マシュ、所長がどんな闇の仕事してたとか知ってる?」
「いえ、たぶん所長は当主になってからカルデアのことに掛かり切りだったかと……」
たこ焼きを頬張りながらの立香の問い。
だがその人物の仕事は、恐らく一切参考にならないだろうと彼女は返す。
「この時代もこの時代で大変なのねぇ。
でもその分食事は美味しいし、私的にはいい思いが出来て万々歳だけど。
たこ焼きをパクつきながら、のんびりとそう呟く武蔵。
そんな彼女の視線が向かうのは、ぼんやりとたこ焼きを食べているソウゴ。
「ねね、ソウゴはどうしたの? たこ焼き、口に合わない感じ?
私がソウゴの分も食べていい感じ?」
「うーん。俺の分は俺が食うけど……なんか、変な感じ。
なんだろ、この感覚……うーん、これと同じ感じが最近あったようが気がするんだけど」
そう言いながらソウゴは空を仰ぐ。
薄い光帯、その果てに坐するサジタリアーク。
この感覚はそれらが原因なのだろうか。
いや、何か違う気がするのだ。
もっと―――何か、自分と直接的に関係しそうなもの。
それとの邂逅が迫っている、ような。
「では、作戦の第一目標が変わる―――と?」
「兄上からはそう通達があった。
眼魂の収集を継続しつつ、デスガリアンとかいう連中の排除を優先せよ、とな」
黒髪に金色のメッシュが入った青年。
彼は軍服を着こなし、直立する男に背を向けながらそう口にする。
言われた男の方が、ふむ、と唸って眉を顰めた。
「―――だがジャベル。貴様には別の指令を与える、私が」
「……アデル様ではなく、アラン様の? と、言いますと」
アラン様、と呼ばれた青年。
彼が手の中で眼魂を転がしながら、ジャベルと呼んだ男に視線もくれずに正面を睨む。
「……デスガリアンとやらには、私がネクロムで対応する。
そのために兄上が正式に私に受領させたものだ。
だがジャベル。お前たちという戦力の運用について、兄上からは何も言われていない」
ジャベルの背後には更に二体。
右腕そのものが巨大な刀となっている、陣羽織を纏った怪人。
宇宙服を思わせるヘルメットとアーマーを装着した怪人。
本来、彼らには人間の魂の収集を行わせるつもりだった。
が、その時点とは状況が変わった。
魂の収集も継続して行う必要はあるが、最優先が別の事柄になったのだから。
「なるほど。つまり私たちは……」
「天空寺タケルを狙え。奴を消し、奴が持っている英雄の眼魂を全て奪い取れ」
ジャベルはその内容を聞き、深々と彼に頭を下げた。
一度消滅したかに見えた天空寺タケル。
彼が復活するとともに手にした、新しい力。
それと真っ先に戦闘を行った彼は、正面から打ち破られた。
その雪辱を果たす機会を、アランは彼に与えてくれるという。
方針を変えたアデルの命に従うだけでは、中々得られない機会だろう。
「必ずや。今度こそ天空寺タケルから眼魂を奪い取ってみせましょう」
「……任せたぞ」
ジャベルと二体の眼魔が礼を取り、踵を返して歩いていく。
途中で彼らを包み込む黒い竜巻。
それに呑み込まれた三つの人影が、その姿を消し去った。
彼らを見送ってから、アランもまた歩き出した。
ゆっくりと、ゆっくりとした歩み。
「―――スペクターは変わってしまった、天空寺タケルと関わったことで」
「俺は変わったんじゃない。取り戻したんだ、俺という人間を」
その背後から向けられる、聞き馴染んだ声。
ゆったりとした動きで振り返るアランの前には、間違いなくマコトの姿がある。
彼の言葉に対し、アランは失笑した。
「取り戻した? 失った、の間違いだろう。
スペクター。どうして君は完璧な世界を拒絶してまで、人間の中に戻ろうとする。
不完全で、不合理で、何ら価値のない人間の中に」
「元から俺たちは、失いたくて失っていたわけじゃない。
奪われていただけだ―――お前たち眼魔の世界に。
これ以上、俺は俺の大切なものを、お前たちには奪わせない……!」
マコトの腰にドライバーが出現する。
彼がスペクター眼魂を握り締め、その起動スイッチに手をかけた。
それを見て目を細めるアラン。彼が懐に手を入れる。
そこから取り出すのは、ブレスレットらしきユニット。
初見のマコトが、その存在に微かに眉を上げた。
「ならば改めて教えてあげよう、スペクター」
アランがブレスレットを左手首に装着する。
自動でベルトが巻かれ、その装置は起動した。
それを確認しながら彼は、ブラックとクリアグリーンの眼魂を持ち出していた。
「眼魂……?」
アランの指が手にした眼魂のゴーストリベレイターを押し込む。
起動する彼の眼魂―――ネクロムゴースト眼魂。
〈スタンバイ!〉
そのまま流れるように、彼はブレスレット―――
メガウルオウダーのアイコンスローンへと眼魂をセット。
スローンを回転させるように、垂直に跳ね上げた。
〈イエッサー!〉
スローンの横に備え付けられたスイッチ、デストローディングスターター。
それが押し込まれたその瞬間に、眼魂から解き放たれるパーカー。
ブラックとライトグリーンに光る、ネクロムパーカーゴーストの姿。
〈ローディング〉
舞い上がるネクロムのパーカー。
彼は自在に宙を舞いながら、マコトに向け突撃してくる。
「―――――!」
マコトの手がスペクター眼魂を落とす。
それがゴーストドライバーに滑り込むと同時、彼は腕を跳ね上げた。
〈アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!〉
放たれるスペクターパーカーゴースト。
青と緑の残光を曳く二つのパーカーが空中で衝突。
それらは幾度も空中で交錯する。
そんな激突の光景を前に。
アランはメガウルオウダーの上部ユニット、リキッドロッパーへと手を伸ばす。
「変身」
リキッドロッパーの起動。
それにより、特殊反応液ウルオーデューがネクロム眼魂へと滴下される。
眼魂、そしてメガウルオウダーに染み渡るウルオーデュー。
それによってアランの体が、白いトランジェントへと換装されていく。
〈テンガン! ネクロム! メガウルオウド!〉
そして舞い戻るネクロムパーカー。
纏うと同時に、クリアグリーンのゴーグル状のモノアイと一本角が装着。
―――仮面ライダーネクロムへの変身を完了した。
「変身!」
〈カイガン! スペクター!〉
〈レディゴー! 覚悟! ド・キ・ド・キ! ゴースト!〉
マコトもまた体をトランジェントに変換。
スペクターパーカーを身に纏い、仮面ライダースペクターになる。
「我らの完全なる世界に逆らう意味などないのだと」
ネクロムと対峙し、フードを払ってから拳を握り締めるスペクター。
青い戦士を正面に見据えながら、白の戦士もまた頭を覆うフードを外す。
彼はパーカーを掴んで襟を正し、ゆっくりと歩みを開始した。
「そういえばタケルは食べてなかったけどいいの?」
「いや、俺ゴーストだからさ。食べられないんだ」
たこ焼きパーティーの帰り道。
河川敷を眺めつつ土手を歩きながら、食べていなかった彼にソウゴは声をかける。
だが彼は食べないのではなく、食べられないのだという。
サーヴァントは食べられるのに、タケルは食べられないらしい。
「そうなんだ?」
もしかすると、ダ・ヴィンチちゃんならどうにかできるかもしれないが……
現状ではどうしようもないことには変わらない。
うーん、と腕を組んで悩むソウゴ。
そんな彼に気にしないでいい、と苦笑してみせるタケル。
そうして会話している二人の前。
四人のジューマンたちが一斉に足を止めた。
反応して同じように足を止めた大和が、彼らを振り返る。
「? みんな?」
「デスガリアン……じゃないのか?」
彼らが持つ動物の尾。
それが何かを感じているように、ピンと張っていた。
感じている気配の正体を探っても、妙に判然としない何か。
デスガリアンが発する生物を狩るための殺気とは、何かが違う感覚。
「――――上!」
気配でなく、風を切る音。
聴力に優れたセラが何らかの異常を察して、声を張り上げた。
直後。武蔵が突き出した鞘を被ったままの刀が、タケルの背中を殴り飛ばす。
「う、わっ――――!?」
その瞬間、直前までタケルが立っていた場所を刃が掠めていく。
上空から一気に飛び込んできた存在による、すれ違いざまの斬撃。
―――それを見舞った陣羽織の怪物が、彼らから離れた場所に着地した。
「ほう。我が秘剣・燕返しを躱したか……」
右腕の肘から先が刃になっている存在。
刀眼魔が振り向きながら、地面に倒れたタケルを見る。
その怪物と相対し、タケルが表情を強張らせた。
「俺を殺した眼魔……!」
「タケル、大丈夫!?」
倒れた彼にかけよるアカリ。
同時に御成がすぐさま懐に手を突っ込んだ。
すぐさま彼らを庇うように、ジュウオウジャーの面々が前に出る。
「こいつが眼魔って奴か!」
「デスガリアンとは別の、異世界から現れた敵……!」
彼らの言葉を聞いて、きょとんとする御成。
すぐに彼は振り向いて、上下左右に視線を巡らせて―――
不思議そうに、大和たちへと問いかけた。
「あの、皆さまには眼魔が見えるのですかな……?」
「なに言ってんだ、当たり前だろ! そこにいるじゃねえか!」
レオががなりつつ正面を指差す。
だが見えない。少なくとも御成には。
彼が視線で背後のシブヤとナリタに確認すると、二人揃って首を横に振った。
次に見るのはアカリだが、彼女も首を横に振る。
彼の手が懐からクモランタンを取り出して、特殊な光を放ってもらう。
そうしてようやく見えるようになった眼魔は、確かにレオの言う通りの場所にいた。
そんな状況に一瞬悩み、別に困らないからいいやと御成は思考を放棄する。
「とにかく! 眼魔ですので、皆さまどうかよろしくお願いします!」
「じゃあ、俺はあっちの奴とやればいいのかな?」
言いながら、ソウゴがジクウドライバーを取り出した。
そのまま腰につける前のドライバーに、ジオウウォッチを装填する。
彼が見ている先には、反対側から彼らを挟むように現れたもう一体の眼魔がいる。
宇宙服を模したかのようなデザインの怪人、プラネット眼魔が。
「眼魔が二体!」
「もう一人いるわね」
かちりと鍔を鳴らし、武蔵が河川敷の方へと視線を向けた。
そちらにいるのは、怪人とは違う黒い軍服の男。
彼は気付かれたと知るや、すぐに笑みを浮かべながらタケルへと声をかけてくる。
「天空寺タケル! 貴様の持つ英雄の眼魂……全て渡してもらうぞ」
「お前は……あの時の」
「あの時は貴様に無様な敗北を喫したが……その雪辱を果たさせてもらおう!」
軍服の男―――ジャベルが取り出した眼魂を起動する。
青と銀、ゴーストのトランジェントにも似た何かへと変貌していくジャベル。
怪人、眼魔スペリオルへと変わった彼が、声を張り上げた。
「天空寺タケル! 貴様の相手は私だ!」
「―――俺があいつを何とかする。こっちはお願い!」
〈アーイ!〉
タケルがゴーストドライバーを現出しながら、土手を滑り降りていった。
そのまま駆け出し、オレパーカーゴーストとともにジャベルへと突っ込んでいく。
「変身!」
〈カイガン! オレ!〉
走りながらのトランジェントへの換装。
そしてオレパーカーを纏い、そのフードを取り払い。
仮面ライダーゴーストは、眼魔スペリオルと交錯した。
戦端を開く眼下での戦い、それにちらりと視線を送り―――
ソウゴは腰に、ドライバーを押し当てた。
「―――マスター、緊急武装します!」
貰ったばかりで申し訳ない、と思いながらも。
マシュが戦場の中で、武装するために力を発揮しようとした。
そうなれば鎧のせいで服は駄目になってしまうが―――
「いいよ、マシュとツクヨミは念のためにみんなについてて。
多分、俺たちだけで十分だしさ」
「……うん。マシュはいつでも武装できるような状態で待機してて。
もしもの時はマシュが守れるように、私たちは集まるよ」
立香の腕がカノンを引き寄せ、マシュの背後に押しやる。
その指令に一応の納得をしたのか、気を張ったままマシュが身構えた。
御成やシブヤやナリタを背中で押しながら、ツクヨミが念のためにファイズフォンXを抜く。
「そうそう! せっかくのオシャレだもん。
ここは私たちに任せておいて!」
ドライバーのロックを解除し、構えながらのソウゴの言葉。
それに同調するアムが、その手の中に王者の資格を取り出した。
倣うように、他の面々もまた王者の資格を手に持つ。
「みんな……行くぞ!」
大和の号令。
それに従い、五人が同時に王者の資格―――ジュウオウチェンジャーを開く。
人の世で言えば、携帯電話を思わせる造形。
まず押すのは本能覚醒のキー。
そしてそれぞれが、己のジューマンパワーを発揮するための数字を押す。
そうして、変身のための準備を開始した。
〈イーグル!〉
〈シャーク!〉
〈ライオン!〉
〈エレファント!〉
〈タイガー!〉
ジュウオウチェンジャーがジューマンの力を叫ぶ。
待機状態のチェンジャーを閉じ、キューブ上部を回転させる。
五体の獣が描かれた面をキューブ状で完成させることで、彼らはその本能を解き放つ。
「本能覚醒!!」
〈アーァアァアーッ!!〉
五人揃ってジュウオウチェンジャーを前に掲げる。
途端にそれぞれの体を囲う光のキューブ。
そうなった直後、彼らは王者の資格を思い切り天へと突き上げた。
―――解放される本能。
それが人とジューマンの混じった五人の姿を、地球を守る戦士に変えていく。
「変身!」
彼らが五色の戦士に変わっていく横で、同時に。
ソウゴがジオウの鎧を纏い、時の王者へと変わっていく。
その頭部に“ライダー”の文字が嵌り、変身を完了。
仮面ライダーに変わった彼の横で、まずは赤い鷲が羽搏いた。
赤いスーツに、胸には怒れる鷲の顔。
鷲の嘴を思わせるマスクを被った戦士が、羽搏きと共に吼える。
「大空の王者! ジュウオウイーグル!」
その腕を牙に見立て、荒ぶる波飛沫を噛み砕く。
青いスーツの胸に大口を開いた鮫が描かれた戦士が、海鳴りの如く吼える。
「荒海の王者! ジュウオウシャーク!」
砂塵が吹き荒れる。黄色いスーツに描かれるのは獅子。
雷鳴の如き咆哮を轟かせ、たてがみを持つマスクの戦士は吼えた。
「サバンナの王者! ジュウオウライオン!」
吹き荒ぶ凩。その人と変わらぬ大きさの体が、ただ一歩の足踏みで大地を揺らす。
緑のスーツの戦士は、腕を象の鼻の如く振り上げながら吼えた。
「森林の王者! ジュウオウエレファント!」
荒々しく吹雪く冷気の中、白いスーツの戦士が躍った。
白虎の姿を隠す雪景色。それを己が爪で切り裂き、吼える。
「雪原の王者! ジュウオウタイガー!」
赤い戦士、ジュウオウイーグル。
彼の手の中に、鳥獣剣イーグライザーが現れた。
イーグライザーの刃が節ごとに分割し、そのまま鞭のように唸りを上げる。
蛇腹剣の唸る様はまさしく、猛獣使いのそれのように。
ジュウオウジャーを統率するレッド。
彼が、己らの名前を謳い上げ―――
「動物戦た……!」
「そして祝え!!」
いきなり彼らの前に現れた、黒ウォズに気勢を削がれた。
彼は『逢魔降臨暦』を手にし、彼らと眼魔の間に割り込んでいる。
突然の存在に、眼魔さえも面食らっているようだった。
「え、っと……」
「誰だ……?」
「全ライダーの力を受け継ぎ――――
時空を超え! 過去と未来をしろしめし! 全ての王者を超える、時の王者!
その名も仮面ライダージオウ! まさに降臨の瞬間である……」
満足そうにそう語り、ジオウに対し頭を垂れる黒ウォズ。
肝心のジオウはここでもやるんだ、と感心するように彼を眺めているだけ。
そんな彼の首にかかっているストールを思い切り掴むツクヨミ。
彼女はすぐさま犬のリードのようにそれを引っ張り、彼を退場させる。
「やれやれ、変な引っ張り方はしないでくれるかな……伸びてしまうだろう?」
「最初から伸びるでしょ! あんたはこっち来なさい! ごめんなさい、続けて!」
ツクヨミが黒ウォズを強制退場させるのを見送るジュウオウジャー。
それを待ってから、どうしたものかと。
とりあえず、気を取り直して大和がイーグライザーを振り上げた。
鞭の如く撓り、大地を削って火花を散らす刃。
「―――動物戦隊!」
イーグルが、シャークが、ライオンが、エレファントが、タイガーが。
自分たちという一つの動物の群れを指し示す名を叫ぶ。
その名こそが―――
「ジュウオウジャー!!」
その群れを見て、黒ウォズの方を見て。
よく分からない連中だと思いながらも刀眼魔が声を上げた。
「貴様たちがジュウオウジャーか。
我らの目的は天空寺タケルのみ、貴様たちに用はない。
死にたくなければ、そこで黙って見ているがいい!」
イーグライザーの刃を引き戻し、直剣へ戻す。
腕の刃を構え直す刀眼魔。
それを睨むようにジュウオウイーグルの掌が、己のマスクを撫で上げる。
異世界からの来訪者、眼魔。
どのような目的があるか、詳細は分からない。
だがそれでも、ひとつ分かっていることがある。
「この
―――この世界は、彼らの好き放題にしていい場所じゃない。
その怒りと、この星に住まう一つの生き物としての誇り。
それをただの一言に込めて、ジュウオウイーグルは吼えた。
「ふん、小癪ぅ―――!?」
相対する刀眼魔が、火花を噴き上げ蹈鞴を踏む。
当たり前のように、会話をしていた彼らに割り込む双剣。
幾度か剣撃を受けた眼魔が陣羽織を光らせ、空に舞った。
空に舞う彼が真っ先にしたことは、自分を斬り付けた女を睨むこと。
「なんと卑怯な! いま話をしていただろう!?」
「えー、尋常な立ち合いでもないし……隙を見せた方が問題じゃない?」
怒られても困った顔。
女武蔵はその叱責を気にもせず、改めて刃を構え直す。
そんな彼女の背中を見ながら、シャークとライオンが微妙そうに首を傾げた。
「確かに今のはちょっと……」
「どうせなら正面からぶっ飛ばしてえよな?」
「……え!? 私、鮫と獅子に狩りの方法を注意された!?」
狩りってそういうものでは、と。
武蔵が愕然としながら振り返ると、エレファントが腕を組んだ。
「別に僕たちは野生の動物というわけではないんだが。
自然界ではそういうものだと理解はしているが……」
「ちょっと卑怯だったよねえ、今のは」
当然のようにタイガーもそちらに加勢する。
そんな四面楚歌に出会い、がくりと肩を落とす武蔵。
―――その背中を見て、上空の刀眼魔が陣羽織を翻した。
「今度はこちらの番だ! 隙あり、秘剣・燕返し!」
上空から高速で迫りくる一閃。
それは武蔵を切り捨てるために、燕の如く風を潜り―――
「イーグライザー!」
横合いから、燕の狩りに割り込む鷲の嘴が撃墜した。
振るわれる直剣、イーグライザー。
イーグルの放つ剣撃が、刀眼魔の腕を撃ち落とす。
「ぬおっ……!?」
弾き返され、地面に転がる陣羽織。
眼魔を迎撃して着地したイーグルが、刃を返して構え直す。
そんな彼の後ろで、武蔵が振り返って自分も構え直した。
「よーし、これでお相子ね。あなたはもう私を卑怯とは言えなくなったわ。
ではこれから、いざ! いざ! 尋常に勝負!」
「そうかな……?」
ぼんやりとした大和の声を無視して、武蔵が駆ける。
如何ともし難い感覚に襲われつつ、しかし刀眼魔が先んじて飛び立った。
「おっと」
「ええい、卑怯者どもめ!
だが我が秘剣・燕返しは破れぬものと知れ!」
燕の如く空を舞い、その中で振るわれる剣。
重点的に武蔵を狙い続ける強襲の連続。
速いし、鋭い。そもそも飛んでいるというのが、まず前提としてとても面倒。
だが、武蔵を狙い続けてる限り軌道はまだ分かり易い。
縦横無尽に無差別に狙われるより、こっちの方がかなり楽だ。
彼女がまず翼を切り裂けば、後はどうとでも―――
「野性解放―――!」
「お」
だがその前に、大空の王者が空に羽搏いた。
大鷲の野性が解き放たれ、彼に空を翔ける力を現出させる。
腕に現れるのは赤い翼。
―――燕の狩りを、鷲の翼が覆す。
「ぬっ……!?」
「はぁああああッ―――!!」
鷲が空で燕に追いつき、その嘴―――イーグライザーを奔らせる。
その蛇腹剣は鞭の如く撓り、伸びる刀身は十数メートルに及ぶ。
刀眼魔の剣を捌きながら彼の陣羽織を切り刻む鷲の嘴。
「なんと……!」
翼である陣羽織を刻まれて、刀眼魔が落下する。
地に落ちた燕の前に現れるのは、残る四頭の狩人に他ならない。
「野性解放―――!」
野生動物の性を取り戻す。
それらを前にした眼魔は何とか剣を構え直して、
「―――――!」
右腕の肘から先が飛ぶ。
後から聞こえてくる、抜刀の鍔鳴り。
それが新免武蔵の刃であったことに疑いはなく。
燕の翼、そして剣。
両方を失った眼魔の前に、獣の行進が見舞われた。
鮫の背ビレを生やし、回転することで刃となるシャーク。
獅子の爪を突き立てて、力任せに捻じ伏せるライオン。
象の脚を踏みならし、衝撃で大地を揺らすエレファント。
白虎の爪を研ぎ澄ませ、鋭く引き裂くタイガー。
それらの野性が、全て刀眼魔に叩き付けられた。
「ぬ、ぉおおおおお!?」
眼魔のボディが爆発し、それを形成していた眼魔眼魂も砕け散る。
その撃破を見届けて、空舞うイーグルが着陸した。
「ハァッ―――!!」
プラネット眼魔が太陽系の惑星を模したエネルギー弾を生成した。
それが無数の星となり、ジオウへ目掛けて迫りくる。
着弾と共に、爆炎の中へと呑み込まれるジオウ。
―――その炎の上に形成されていく、巨大な顔。
「むっ!?」
いきなり現れたその顔に、プラネット眼魔は困惑を示す。
顔がそのまま炎の中へと落下していき、周囲の炎を吹き飛ばした。
中から姿を見せるのは、巨大な顔を頭に乗せたジオウの姿。
〈アーマータイム! ソイヤッ!〉
巨大な顔が展開して鎧と変わっていく。
肩から垂れる鞘から大橙丸Zを二振り引き抜くジオウ。
彼の顔にあった“ライダー”の文字が“ガイム”へと変わる。
〈鎧武!〉
「あんたが惑星なら、こっちはフルーツでオンパレードだ!」
「何をわけのわからんことを!」
プラネット眼魔が再び惑星のエネルギー弾を生成。
八つの惑星を十字に並べ、彼は弾丸として撃ち放った。
〈フィニッシュタイム! 鎧武!〉
〈スカッシュ! タイムブレーク!!〉
ジオウの腕がジクウドライバーを回す。
同時に彼の周囲、空中に無数の巨大フルーツが出現した。
オレンジ、パイン、イチゴ、バナナ、レモン、チェリー、ピーチ。
更にそれらとは明らかに大きさの違う、巨大なスイカ。
「でかい!?」
「行っけぇえええ――――ッ!!」
ジオウの号令に従い、フルーツたちが惑星に突っ込んでいく。
衝突し、激突し、追突し、そして巨大スイカの侵攻に諸共巻き込まれ―――
惑星の弾丸は、フルーツの群れに呑み込まれて圧し潰された。
そして、フルーツもまた全部割れる。
噴き出した果汁が雨となり、近くにいたプラネット眼魔を包んでいく。
球体で固定されるフルーツジュースの檻。
そこから逃れようともがくが、体は一切動かない。
七色の果汁に閉じ込められた彼は、完全に動きを封じられていた。
「なんという……!」
「セイハァアアア――――ッ!!」
そこに振るわれる二刀の刃。
大橙丸Zがその球体フルーツジュースを果実のように切り分ける。
中にいたプラネット眼魔も諸共に。
「ぐぉおおおおお――――ッ!?」
果汁と共に、プラネット眼魔のボディと眼魂が爆散する。
降りしきる果汁の雨の中。
大橙丸Zを肩に乗せたジオウは、軽く腕を回してみせた。
〈カイガン! ベンケイ!〉
〈アニキ! ムキムキ! 仁王立ち!〉
御成の手元から跳んできたクモランタン。
それがガンガンセイバーと合体し、ハンマーモードとなる。
鉄槌と化した武器を振り上げる、白いパーカーを羽織ったゴースト。
ベンケイ魂を憑依させた彼が、ジャベルに向かって殺到した。
眼魔スペリオルのボディを打ち据える、鉄槌の一撃。
火花を散らしてよろめくスペリオル。
彼はそうなりながらも、楽しげに声を震わせた。
「いい一撃だ……! だが私が味わいたいのは、この力ではない!」
スペリオルが復帰するや、その拳でゴーストを襲う。
ハンマーを振り切れない距離まで詰め寄り、拳を見舞うジャベル。
ゴーストが即座にハンマーを手放し、掌底で彼を打ち払おうとして―――
その手首を掴まれて、薙ぎ倒される。
「こいつ……!」
「あの時の力だ! あの時の力を出してみろ、天空寺タケル!」
地面に転がったゴーストを踏みつけるスペリオル。
踏みにじられながら、タケルはその足を掴み取り放り投げる。
されるがままに投げ捨てられたジャベル。
彼が着地しながら、ゴーストへと視線を向ける。
立ち上がるゴーストの手の中には、赤と黒の眼魂が握られていた。
それを見て、ジャベルが喜色の唸り声を上げる。
赤と黒の眼魂は起動すると同時に、眼魂自体が炎に燃えた。
ドライバーの中に燃える眼魂を投入し、カバーを閉じる。
〈一発闘魂!〉
解き放たれる炎に燃えるかのような真紅のパーカー。
赤いパーカーゴーストがスペリオルへと突撃し、彼を更に吹き飛ばす。
その間にタケルは、ゴーストドライバーのトリガーを引いていた。
〈闘魂カイガン! ブースト!〉
舞い戻る闘魂ブーストパーカーゴースト。
ベンケイが離脱しトランジェントに戻ったゴースト。
その上から覆い被さる、赤いパーカー。
〈俺がブースト! 奮い立つゴースト!〉
〈ゴー! ファイ! ゴー! ファイ! ゴー! ファイ!〉
そのパーカーを纏った瞬間、トランジェントもまた炎上した。
黒だったタケルのトランジェントが、燃える炎の如く真っ赤に染まる。
赤の体に赤のパーカーを纏い、ゴーストが頭部を覆うフードを外す。
敵が見せたその姿を前にして、ジャベルが歓喜に身を震わせる。
「そうだ! それと戦いたかった!」
叫ぶジャベル。
スペリオルが四肢に力を漲らせ、拳を握って走り出す。
一直線の疾走から放たれる拳撃。大気を唸らせ、穿つ一撃。
―――それを。ゴーストは、掌ひとつで受け止める。
「ぬぅ……ッ!」
そのまま腕を捻り上げると、ジャベルが体勢を崩してよろめいた。
ふらつく眼魔スペリオル。その胸に、ゴーストが拳を叩き込む。
燃える拳が連続して炸裂し、青いボディが揺らぐ。
「はぁああああッ!」
「ぬぉおおおおッ!」
更に力を込めた闘魂の一撃。
それに対し、スペリオルも同じように拳で応じる。
互いの拳が激突して、数秒の拮抗。
だがその後に吹き飛ばされたのは、眼魔スペリオルだけだった。
炎上しながら、河川敷で転げるジャベル。
「この戦いの感覚……! これこそだ!」
すぐさま立ち上がった彼はゴーストに向き直り―――
彼の背後から、他の戦士たちが集っているのを目にした。
刀眼魔に、プラネット眼魔。
彼らはジャベルがタケルと交戦している間に、既に眼魂を破壊されたようだ。
思ったよりも早い戦力の退場に、彼は軽く鼻を鳴らす。
「お前たちの負けだ!」
「フン……どうかな」
ジャベルが空を見上げる。
それにつられて空を見上げれば、空には瞳の形をした紋様が浮かび上がっていた。
「あれは……!」
「グンダリ!!」
ジャベルの声に応え、その紋様から巨大な怪物が姿を現す。
複数の赤い目を持つ、全身を甲殻に覆われた蛇の怪物。
彼が叫んだ言葉がそれの名だというのなら。
―――怪物の名はグンダリ。
現れた三体のグンダリが空を舞い、目的地を探し首を振る。
それらが顔を向けた先にあるのは住宅地だ。
まさしく、といった行為に対してセラが声を張り上げた。
「人質のつもり!?」
「勘違いするな。貴様らに動くな、などと言うつもりはない。だが」
ジャベルが腕を軽く払う。
その動きに合わせて、グンダリは街へと飛び出していく。
「私の戦いの邪魔はさせん」
「みんな!」
ジュウオウイーグルが王者の資格を取り出した。
倣うように取り出すジュウオウジャーたちの手が、王者の資格を取り出す。
開いたジュウオウチェンジャーで押し込むキーは、召喚。
召喚キーを押し、それぞれ自身に対応する数字を押す。
そうしてからチェンジャーを閉じて、キューブを回して絵柄を完成させる。
―――キューブアニマル召喚の紋章を。
〈ジュウオウキューブ!〉
数字が描かれた五つの巨大キューブが出現する。
赤には1、青には2、黄色に3、緑に4、白に5。
それぞれ対応する戦士たちが、ジュウオウキューブの中に飛び込んでいく。
鷲、鮫、獅子、象、白虎。
キューブ状から獣の形へと変形していく巨大マシン。
それがグンダリを追い、街へと向かって飛翔、あるいは疾走する。
『こっちは私たちに任せて!』
『逆にそっちは任せたぜ!』
『キューブイーグル、GO!』
〈キューブイーグル!〉
先行するキューブイーグル。
グンダリに先んじて前に出たその赤い翼が、彼らの侵攻を妨げる。
追い抜かれたことで、躊躇するように速度を緩めるそれらの巨体。
『キューブライオン、GO!』
〈キューブライオン!〉
『キューブタイガー、GO!』
〈キューブタイガー!〉
その後ろから、獅子と白虎が二匹の蛇に飛び掛かった。
爪を立て、グンダリの甲殻を引き裂きながら地面に叩き落とす獣が二体。
落ちたグンダリに対し、後続の鮫と象が突撃してくる。
『キューブシャーク、GO!』
〈キューブシャーク!〉
『キューブエレファント、GO!』
〈キューブエレファント!〉
鮫と象に激突された二体が重なり、絡まりながら地面を転げる。
捕まっていない一匹は正面からでは敵わぬと見てか。
一気に高度を上げて距離を離しながら、その口の中に炎を蓄えだした。
熱線で一斉に薙ぎ払う、という姿勢を見せるグンダリにしかし。
『させるか!』
―――鷲の翼が追撃する。すれ違いさまに腹を裂く赤い翼。
吐く間もなく、蓄えた火炎が口の中で爆発。
そのグンダリもまた、他の二体のように地面へと落ちていく。
三体目が先の二体と同じ位置を目掛け落ち、盛大に土の柱を立てた。
絡まり合って唸りを上げる三頭のグンダリ。
そこを見ながら叫ぶタスクの声が、大和へと届く。
『大和! 今の内だ!』
『よし、行くぞ!』
キューブイーグルの中で、彼らは王者の資格を持ち出す。
その途端に空中に浮かび上がる、三つの光の正方形。
並んだそれに飛び込んでいくのは、イーグル、エレファント、タイガー。
先を越されたセラとレオが声を上げた。
『あー!?』
『先着三名滑り込みー!』
『動物合体!』
光の正方形を潜った三体。
それに乗る三人が動物合体のために、ジュウオウチェンジャーの始動キーを押し込んだ。
続けて押していくのは、1、4、5。彼らのキューブアニマルが持つナンバー。
押すや否やチェンジャーを閉じて、キューブを回転させて機神が描かれた面を作る。
〈イーグル! エレファント! タイガー!〉
〈アーァアァアーッ!!〉
三体がアニマル形態からキューブ形態へ。
回転しながら縦に重なっていく三つのキューブ。
その順番は―――
〈4! 5! 1!〉
上からイーグル、タイガー、エレファント。
重なった三つのキューブの上から、それを貫く剣―――キングソードが降ってくる。
それに貫かれながら、イーグルが上半身に。タイガーが腰に。エレファントが足に。
合体を終えた機神が立ち上がり、その威容を見せつけた。
『完成! ジュウオウキング!』
〈ジュウオウキング!〉
流れるように飛び立つ巨神。
上空へと舞い上がったジュウオウキングの中で、三人が王者の資格を揃える。
回転させて作る面は本能覚醒。
『一気に終わらせる!』
ジュウオウキングの周囲に浮かび上がる、三つの光のキューブ。
1、4、5。それぞれの光のキューブが、巨神に先んじて地面のグンダリへと飛んでいく。
それが直撃した蛇たちはそこに拘束され、完全に動きを封じられた。
『ジュウオウメガトンキック!! ハァ―――ッ!』
迫りくる超重の巨体。
それから逃げる術は、既に奪われているグンダリ。
彼らの頭上から降り注ぐ一撃が、そこに固定された三体を粉砕した。
「ふん、ジャベルめ……まあいい。
ガンマホールの試験だと思えば安いものか」
彼方で起こった爆発と、そこに佇む巨神。
それを見上げながら、ネクロムはそう呟く。
そんな彼の隙をつくように、スペクターがガンガンハンドを振るう。
〈ダイカイガン!〉
〈オメガスパーク!〉
銃となったガンガンハンドを手に、スペクターがネクロムに狙いをつける。
紫のパーカー、ノブナガ魂を憑依させた彼。
その周囲に、エネルギーで形勢された無数のガンガンハンドが出現していく。
全ての銃口はネクロムただ一人を狙い―――
「ハァ――――ッ!!」
放たれた。
数え切れない弾丸は全て、ネクロムの白いボディへと直撃する。
一撃一撃が必殺。その上で、途切れることなくネクロムを撃つ弾幕。
どれだけ防御力があろうと、それに耐え切れるはずもなく―――しかし。
「なにっ……!?」
「無駄だよ、スペクター。今の君では私には勝てない。
天空寺タケル……人間などという不完全なものに執着している今の君ではね」
まるで水を撃つかの如く、手応え無しで擦り抜ける攻撃。
その状態でネクロムがスペクターに迫る。
瞬時に距離を詰め、彼の腕からガンガンハンドを奪い取って放り捨てるアラン。
「くっ……!」
「これが我らの……?」
距離を取ろうとするスペクター。
それを追撃しようとしたネクロムが、不思議そうに足を止める。
―――ネクロムのボディ、白のトランジェントの色が褪せていく。
彼の姿は、すぐに全身が灰色に染まってしまった。
「……なるほど、これが限界か。仕方ない」
そのままボロボロと崩れ落ちていくネクロムの体。
彼はその状態で印を結び、虚空に眼の紋様。
小規模なガンマホールを形成する。
すぐに腕のメガウルオウダーを外すと、彼はそれを躊躇なく中へと投げ込んだ。
ネクロムの崩壊は止まらない。
アランはそのままスペクターに視線を向け、小さく笑う。
「―――今回はここまでだ。
よく考えておくといい、スペクター。君たち兄妹の身の振り方を。
マコト……君は眼魔から逃げる事などできないのだから」
全身が黒ずんだネクロムが完全に崩れた。
その中から出てきた一つの眼魔眼魂が、限界を迎えたように弾けて割れる。
―――ひとり、その場に残されたスペクター。
ダン、と。彼が地面に叩き付けた拳で地面が罅割れる。
「俺は……! だが、けじめはつけさせてもらうぞ……アラン!」
「オォオオオオッ!!」
「ヌゥウウウンッ!!」
互いの拳が互いの胸に。
炸裂する威力でお互いの足が蹈鞴を踏み、しかし。
先に体勢を立て直して再び拳を振り抜いたのはゴーストだった。
燃える炎の拳が、眼魔スペリオルの顔面に突き刺さる。
思い切り仰け反ったジャベルが頭から地面に叩き付けられ、盛大に転がった。
「なんであんたたちは人間を襲う! なんで英雄の眼魂を狙う!」
叫ぶタケルの声。
それに対し、ギシギシと全身を軋ませながらスぺリオルは立ち上がった。
「全ては我らが眼魔世界のため―――
だが、私にとっての目的はただひとつ! 貴様らとの戦いだ!」
「戦いが、目的……?」
「この戦闘で覚える昂揚と、戦場に渦巻く憎悪!
それだけが私に生の実感を与えてくれる……! さあ、続けるぞ天空寺タケル!!」
再び走り出す眼魔スペリオル。
彼の振り上げる拳を見ながら、タケルは強く拳を握り締めた。
静観する彼の顔面に、ジャベルの拳が突き刺さる。
「どうした! こんなものではないはずだ!
もっとだ! もっと! 私と戦え――――!?」
自分の頬に突き刺さる拳。
その手首を、赤い腕が握り潰さんばかりに捕まえる。
振り払おうともう片方の手を振り上げるスペリオル。
そちらの手首もまた、ゴーストの腕が捕まえた。
「ぬぅ……!」
「そんなことのために戦うお前たちに、英雄の眼魂を揃えさせちゃいけない……! そうでなくても、自分の目的のために街を襲わせようとするお前なんかに! 俺は負けられない!」
ゴーストがその状態で頭突きを見舞う。
スペリオルの顔面を切り裂く額から伸びる角、ウィスプホーン。
顔面に縦に裂かれた彼が、顔を押さえながらよろめいた。
その胴体に蹴りを叩き込み、距離を開かせて。
タケルはドライバーのトリガーを一気に引き絞った。
〈闘魂ダイカイガン!〉
両手で印を結び、赤い瞳の紋様を現出させる闘魂ブースト。
その瞳を形成するエネルギーを右足に集中させ、ゴーストが舞った。
〈ブースト! オメガドライブ!!〉
「はぁああああ―――――ッ!!」
「小癪な……っ!」
炎の矢となって蹴撃するゴースト。
それに対応しようと、両腕を眼前で交差させて守りに入るスペリオル。
衝突からの拮抗は一瞬。
そのまま炎の一撃は、眼魔スペリオルの体とジャベルの眼魂を粉砕した。
「ヌァアアア――――ッ!?!?」
炎の中、完全に消滅していくジャベルの姿。
だが既に同じように一度、彼は撃破したことがある。
先程顔を見せた刀眼魔も同じだ。
恐らく、これで終わりではないのだろう。
眼魔がどのような連中かは分からない。
それでも、一筋縄でいかない相手だというのはよく分かっているのだから。
グンダリ(全長17.4m)「ファッ!?」
ジュウオウキング(全長45.5m)「行くぞ!」
かわいそう(小並感)
ぐんだりーがんばえー
ヤンホモ感あったころのアラン様。
ここまでがプロローグ的な感じで、次回からはなるべくさくさく行きたい感じです。
次でさくさくゴリラまで行って、ネクロム対アザルドとか始めたいですね。
どっちも死なねえ泥仕合だな?