Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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剛力!ジャングルの王者!2019

 

 

 

「―――ほう?」

 

 ―――洞窟の中、空の見えない岩の天井を仰ぐ。

 そこからでは当然、星など見えるはずもなく。

 しかし透かして空を見ているかのように、彼は微かに目を眇めた。

 

「……随分と面白いものを呼び寄せたようだ」

 

 宇宙(ソラ)の果てから来る何か。

 その正体は判然としないが、凄まじい力を有した存在には違いない。

 こんなものが降りてきた、というなら計画に少し修正も必要か。

 

 視線を下ろし、先程までより少し足早に歩みを再開する。

 彼の手の中にあるのは、ブランクのままのアナザーウォッチ。

 

 男―――スウォルツは、手の中でそれを転がしながら口の端を歪めた。

 

「では俺も急ぐとするか。アナザーゴーストの契約者の許へ……」

 

 そう言って彼は、目的地へと向かっていく。

 大した距離ではない。すぐに辿り着くだろう。

 彼が目論んだアナザーゴーストの許へ。

 

 

 

 

「本来、オーマジオウの歴史には存在しない仮面ライダーの力。

 その力を三つ集めることで、ゲイツリバイブは生誕する。

 オーマジオウを打ち倒す、真の救世主がね」

 

 爆炎を上げる森の一角。

 それを高台から見下ろしながら、白ウォズはその顔に笑みを浮かべた。

 彼が懐から取り出すのは、キカイのミライドウォッチ。

 

 一人目は仮面ライダーキカイ。

 第六特異点に出現した、正体不明の仮面ライダー。

 ジオウ本人の自覚もなく、ジオウと知己のような様子を見せた存在。

 これは恐らく、魔王の時空干渉能力が高まってきた証明だ。

 

 そして今、目前で繰り広げられる光景。

 宇宙からの使者である新たな仮面ライダー、ギンガ。

 それこそが次なる有り得なかった仮面ライダー……ミライダーだ。

 

 それを回収すれば、残り一つ。

 ゲイツリバイブの降臨に、また一歩近づくことになるのだ。

 

 

 

 

「今の爆発! あっちね!」

 

 ツクヨミを抱え、疾走する武蔵。

 彼女の後ろに続くのは、既に武装を済ませて立香を抱えるマシュ。

 

 隕石が落ちてきたと思ったら、その直後に大爆発。

 明らかにあそこが戦場で、何かとんでもない事が起こっている。

 すぐに向かうべく、全力の疾走を行う彼女たち。

 

 ―――だがそんな彼女たちの前に、人間サイズの何かが転がり出てきた。

 

「やっと抜けた!」

 

 即座に足を止める武蔵とマシュ。

 彼女たちの前に現れたのは、恐竜の頭から手と下半身を生やした怪物。

 

 彼こそが探し求められていた、逃げたデスガリアン。

 戦闘機から飛び降りた結果、頭から地面に激突。

 今の爆発の衝撃ですっぽ抜けるまで、ずっと地面に埋まっていた存在だった。

 

 その容貌から明らかに人とは別個の生命体。

 真っ当に考えて、マシュもすぐその正体に気づく。

 

「―――デスガリアンと思われる敵性を確認! 戦闘に入ります、マスター!」

 

 マシュが立香を手放し、盾を両手で構える。

 同時に、ツクヨミを手放した武蔵が抜刀した。

 

「あっちが本命、さっさと片付けるわ―――!」

 

 先程の爆発こそが明らかにこの戦いの中心。

 こっちも無視はできないが、長々とは構っていられない。

 

 刃を向けられたデスガリアン。

 顔がでかすぎて二頭身になっている怪物。

 ―――その名をガブリオ。

 

 彼は明らかに戦闘の意欲を示している目の前の存在。

 武蔵たちを敵と見定めて指差してくる。

 

「むむ! 俺様に向かってくるとは、貴様たちがジュウオウジャーか!」

 

「残念、外れ―――!」

 

 二刀を構えたままの疾走。

 閃く刃がガブリオに届き、彼の爬虫類のそれに似た皮膚を斬る。

 多少の剣撃を受けながらも首を……上半身を捻るガブリオ。

 

「じゃあ一体何者だ!?

 ええい、どっちにしろ俺のブラッドゲームを邪魔するな!」

 

 武蔵の追撃を前にし、ガブリオが大きく口を開く。

 体の半分が顔の彼の巨大な顎。

 全てを噛み砕かんとするそれが、凄まじい勢いで上下した。

 

「―――――!」

 

 追撃を取りやめ、撤退する武蔵。

 斬り込めば彼女の武装など簡単に噛み砕くだろう動作。

 それを行いながら、ガブリオの脚が全力の疾走を開始した。

 

「あぶなっ!?」

 

 周囲の木々を、岩を、土を。

 全て噛み砕いて呑み込んでいく悪食のガブリオ。

 食事を阻むことができない敵に対して、彼は木々を噛み砕きながら笑った。

 

「俺のブラッドゲームは下等生物を住処ごとぜーんぶ食べちゃうゲーム!

 お前たちもこの星諸共、いただきまーす!!」

 

 ガブリオが加速して、足の遅い人間二人を真っ先に狙う。

 あらゆる建造物を喰い散らかす彼の顎を力尽くで止める手段はなく―――

 だからこそ、立香は彼女に向かって叫んでいた。

 

「マシュ!」

 

「―――はい!」

 

 盾を構え、マシュの姿がマスターとガブリオの間に割り込む。

 両手で掴み、突き出される一枚のラウンドシールド。

 そんなもの纏めて喰らってやる、と。ガブリオが更に加速する。

 

「―――全ての災厄の前に立ち、全ての瑕を阻む我らが城!

 顕現せよ、“いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)”!!」

 

 白亜の城門が聳え立つ。

 マシュの掲げた円卓を中心に、その地は花のキャメロットへ変わっていく。

 あらゆる悪意を跳ね除ける、守護の祈りが結実したその聖門。

 

 突如目の前に現れた立派な門を見て、ガブリオは奇声をあげた。

 

「おお! 喰いでがありそうな立派な家! それもいっただっきまーす!」

 

 ガブリオの突進はマシュの護りを前に、怯むどころか加速する。

 そうして叩きつけられる牙、閉じられる顎。

 ガッチン、と。牙と城壁が打ち合う音が盛大に鳴り響き―――

 

 飛び掛かっていたガブリオが、よろりと後ろにふらついた。

 彼が確かめるように口に手をやると、顎は開き切ったまま。

 下顎がぶらりと下に垂れてしまっていた。

 

「あ、がが……顎が、外れ……」

 

「やぁあああ―――ッ!」

 

 キャメロットの聖なる門。

 そこに喰い付いたガブリオが、噛み砕けずに衝撃で顎を外していた。

 

 主力の攻撃手段を失った相手に、マシュが宝具を解除する。

 そのまま、バタバタと手を動かしてもがく相手に叩き付けられる盾。

 それに吹き飛ばされて、地面を転がるガブリオ。

 

 そこに―――

 

「南無―――天満大、自在天神」

 

 二刀を提げて、新免武蔵が目を瞑る。

 彼女の背後に浮かぶは、四本腕を持つ仁王。

 それは現か幻か。

 武蔵の背後に像を結び、それぞれの手に剣を執る。

 

「仁王倶利伽羅、衝天象―――!」

 

 仁王の腕が振るう倶利伽羅剣。

 それと同時に、ガブリオを襲い来る四色の剣気。

 四振りが描くその斬撃に、実像があるか否かは最早関係ない。

 その剣が生む気勢は間違いなくそこにある。

 

「ぬぉわぁあああ―――っ!?」

 

 更に転げるガブリオの前。

 武蔵の手が、いつの間にか一刀に持ち変えていた。

 瞑目したままに、眼に依らず斬るべきものを捉えてみせようとし―――

 

 しかし彼女は途中で目を見開き、その眼で斬るべきものを見定めた。

 

「剣轟抜刀―――! 伊舎那、大天象!」

 

 振り下ろされる一刀一閃。

 それは過たずガブリオを両断する。

 断末魔さえも残さずに、切り捨てられる恐竜を思わせる顔。

 

 彼の手足が動かなくなるのを見届けて、武蔵は剣を鞘へと納めた。

 

「……よし! ささっと行きましょう!」

 

「待って、こいつがでかくなる可能性も……」

 

「その時はその時!

 私たちがあっちを受け持って、大和たちに任せましょう!」

 

 そう言い切り、再び疾走のかたちに入る武蔵。

 確かにここで時間を無駄にするより、そちらの方がいいか、と。

 ツクヨミもまた同意して走り出す姿勢を見せる。

 

「行きましょう、マスター!」

 

「……うん!」

 

 四人が再び移動を再開する。

 未だに爆発の続く、森の中心へと向かって。

 

 

 

 

 ネクロムが再び再生する。

 入れ替えたボディの調子を確かめるように、彼は軽く拳を握った。

 

「……デスガリアンとは別物……?」

 

 歩みを開始するギンガの姿。それを見て、呟く言葉。

 アザルドは奴の攻撃に直撃し、完全に粉砕された。

 明らかに敵対者として見ていいだろう。

 もしかしたら人間世界に与する者、という可能性はあるが……

 

 ギンガが腕を横へと上げる。

 その平手が向けられた先は、立ち上がったばかりのジオウ。

 身構える彼に対して、光弾が放射された。

 

「ぐぅ……!?」

 

 ジオウがその攻撃を受け止め、しかしそのまま岩壁まで吹き飛ばされる。

 激突して砕いた瓦礫を吹き飛ばしながら、彼の姿が砂塵に沈んだ。

 

 その光景を見送りながら、ネクロムがパーカーの襟を直す。

 

「……人間どもの味方、というわけでもないようだ」

 

 彼は標的をギンガへと変更しようとし―――

 足元で蠢くものに気づき、その動きを止めた。

 

 ギンガの攻撃で砕け散り、散乱した青いキューブ。

 それがひとりでに動き出し、一ヵ所に集まり始めたのだ。

 数秒と待たず、それは全部集まって完全に元の姿を取り戻す。

 

 蘇るのは、当然のことながらアザルドの姿。

 その異名を不死身のアザルド。

 デスガリアンの中で最も強靭な体を持つ彼は、すぐに完全再生を果たしていた。

 

「ふん、中々やるじゃねえか。

 だが、俺にとっちゃこの程度かすり傷にもならねえよ!」

 

 復帰するや、すぐさま大刀を手にギンガへと走り出す。

 ただ両手を開き、その突進を待ち受けるギンガ。

 振るわれるアザルドナッターの一撃を、彼は片手のみで受け流す。

 

 掌を覆う惑星状特殊エネルギー、エナジープラネット。

 ギンガが太陽の光から生成したピュアパワーにより纏う超常の力。

 それには何人たりとも触れられず、向けた力を無理矢理に逸らされてしまう。

 

 アザルドの攻撃の連続は彼の守りを一度たりとも突破しない。

 全てを逸らされ、反撃とばかりに押し付けられる掌によって弾き返される。

 その攻防に盛大に舌打ちをかますアザルド。

 

 強引に背後に退かせたアザルドを前に。

 ギンガが胸の前で手を合わせ、そこに小規模な太陽を生み出す。

 

「忘却の破壊神よ。この星と共に、永遠の滅びを迎えるがいい」

 

「―――――」

 

 ネクロムがそのエネルギーの規模に瞠目した様子を見せる。

 あれが放たれれば、辺り一帯は焼け野原だろう。

 川に沈んだままの天空寺タケルの方を見て、しかしすぐに視線を逸らす。

 

 この一撃で恐らく、この周辺の生命は全て消えるだろう。

 ネクロムだけでなく、所持している眼魔眼魂ごとだ。

 そこまで消し飛ばされては、ネクロムの憑依復活も出来ない。

 

 眼魂は幾らでも壊されたところで問題ないが、メガウルオウダーは別だ。

 アデル指揮下の許、イーディス長官によって量産体制を進めているとは聞く。

 が、この場で無駄に破壊するわけにはいかない。

 

「チッ……!」

 

 故に彼は、印を切りガンマホールを生成。

 撤退することを選択した。

 

 恐らく天空寺タケルもこれに巻き込まれ、滅びることだろう。

 手間が省けるだけだ、と。

 アランは一瞬だけ青い空を見上げて、すぐに眼魔世界へと退却した。

 

「フン―――!」

 

 退くことを選んだネクロムとは対照的に、アザルドの選択は不動だった。

 目の前に生じる太陽、それを正面から受け止めてやるという態度。

 仮に砕かれようが、彼は不死身のアザルド。

 すぐに再生し、大技を放った直後を粉砕してやるという構え。

 

 ギンガはそんなアザルドに対し、軽く顎を上げる。

 そうして腕を突き出し――――

 

〈プリーズ! ウィザード!〉

 

 両の手足に絡みつく炎の鎖に、その動きを止められた。

 

「なに?」

 

 彼は超エネルギーを集約した熱量を支えている。

 鎖を薙ぎ払うために、エナジープラネットを生成するのは不可能。

 だがこの程度、ピュアパワー無しでも数秒あれば粉砕も可能―――

 

「タケル!!」

 

〈ストライク! タイムブレーク!!〉

 

 鎖を出現させる赤い魔法陣を制御しつつ、ジオウが地面を殴りつける。

 ギンガの足元に現れる、巨大な黄色い魔法陣。

 それは一気に地面を隆起させ、ギンガを覆い尽くす土壁を作っていき―――

 

「――――ヌッ!?」

 

 そこで初めて、何故かギンガの声に焦りが混じった。

 

「―――?」

 

〈カイガン! ロビン・フッド!〉

〈ハロー! アロー! 森で会おう!〉

 

 水流を切り裂き、上空まで浮かび上がるゴースト。

 彼はロビン・フッドの魂、緑色のパーカーを纏い憑依させていた。

 手にするのはアローモードのガンガンセイバー。

 

 その照準が向けられるのは、今まさに土壁に呑まれていくギンガの姿。

 

〈ダイカイガン! オメガストライク!!〉

 

「命、燃やすぜ!!」

 

 ―――咆哮とともに、放たれる一撃。

 それはせり上がってくる土壁の合間を縫い、ギンガに届く。

 彼が胸の前で抱えたままになっている、小さな太陽に。

 

「―――――!?」

 

 その瞬間、土壁が完全にギンガを覆い尽くした。

 土壁のドーム。更にその上からドーム、と。

 継続してギンガの体を覆い続ける、ウィザードアーマーの展開する魔法。

 

 そうした直後。

 何層も重なったドームを内側から消し飛ばす、小さな太陽のビッグバンが発生した。

 燃え広がろうとする炎を、土壁が強引に埋め立てていく。

 

 溢れ出す熱量に対し、それの対応にかかり切りになるジオウ。

 その姿を見て、身構えていたアザルドが首を揺らす。

 

「上手い事やるじゃねえか! じゃあこいつはどうだ!」

 

 振るわれるアザルドナッター。

 そこから放たれた衝撃波が、地面に手をついているジオウに向かって飛ぶ。

 

 割り込むのは、赤いパーカーを纏い直すゴースト。

 彼がそのパーカーを憑依させると同時、彼の体は炎のように燃え上がった。

 

〈俺がブースト! 奮い立つゴースト!〉

〈サングラスラッシャー!〉

 

 赤いゴーストが交差させて構えるのは、大剣ガンガンセイバー。

 そして新たに現した赤い片刃の剣、サングラスラッシャー。

 二振りの剣で防御に回り、衝撃波を受け止める。

 

 押し込まれながら、しかしその場で踏み止まるゴースト。

 

「さ、せ、るか……ッ!」

 

「ははっ! 耐えるじゃねえか! なら、もう一発――――!」

 

「野性解放――――ッ!!」

 

 その声に僅か、視線を向けるアザルド。

 追い詰めた四人のジュウオウジャーが、その場で復帰していた。

 今の声はジュウオウエレファント、タスクのもの。

 彼の脚は象のものとなり、膝から下が重厚になっていた。

 

 だがそれで、アザルドに何ができるわけでも―――

 

「セラ! レオ! アム!」

 

「ええ!」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

 思い切り足を振り上げるジュウオウエレファント。

 彼の声に三人が反応して、一人ずつ跳躍した。

 ―――そうして跳び上がった彼らを、エレファントの脚が()()()()()

 

「野性解放―――ッ!!」

 

「なにぃ……ッ!?」

 

 鮫の背ビレを得たシャークの回転。

 回転刃となった彼女は、エレファントに撃ち出された勢いのまま激突。

 アザルドの背中に当たり、削り落としながら彼の体を揺るがした。

 

 続くライオンとタイガー。

 その腕をそれぞれの獣の前脚に変えた彼らが、揺らいだアザルドに直撃。

 彼を薙ぎ倒すべく、両腕を叩き付ける。

 

「オォオオオオッ!!」

 

「ハァアアアアッ!!」

 

「チィッ……! 下等生物どもが、たのしませてくれるじゃねえか!!」

 

 背中から突き抜けてくる衝撃。

 それを思い切り前に踏み込むことで体を止め、力任せに振り払おうとする。

 彼が上半身を捻り、二匹の獣を叩き落とさんとし―――

 

 獅子と白虎はアザルドの裏拳に合わせて飛び退る。

 躱されたことで勢い余ってつんのめるアザルド。

 

「アァン――――!?」

 

「野生解放ッ!!」

 

 ―――その頭上から、赤い翼が舞い戻る。

 イーグライザーの刃がアザルドを一部砕き、彼に蹈鞴を踏ませた。

 

 間違いなく致命傷を与えた相手の帰還。

 その事実に、アザルドの声に困惑が入り混じる。

 

「テメェ、まだ生きてやがったか! 下等生物がどういうこった!?」

 

「―――ラリーさんが俺に力を分けてくれた……

 この惑星(ほし)で一緒に生きるための、命の力を―――!」

 

 イーグルが胸に手を当てて、微かに視線を後ろに向ける。

 そこには、地上に戻ってきたラリーの姿。

 王者の資格を介して彼の生命力を注がれた大和は、瀕死の重傷からさえ立ち直っていた。

 

 下等生物同士の命のやり取りなどどうでもいい、と。

 アザルドが改めてアザルドナッターを振り上げる。

 

「だったら死に直すんだな!

 何度蘇ろうが、テメェらの結末は変わらねえんだからよ!」

 

 その命を狩るための動きを目の前にして。

 イーグルはイーグライザーを放り、己の顔に手をかけた。

 彼は自分の顔を覆うマスク、その鷲の嘴の部分を掴むと思い切り引き上げる。

 

「本能、覚醒――――ッ!!」

 

 次の瞬間、アザルドがその剣ごと殴り抜かれていた。

 

 丸太の如く太い腕。握られた巨大な拳。

 それが剣を振るうアザルドの腕を容易に払い退け、そのまま顔面を強打。

 青いキューブの体を、地面へと叩き付ける。

 

「なっ、にぃ……!?」

 

 溢れんばかりの命の力を放ち、赤の巨躯が己の胸を掌で叩く。

 

 ―――ジュウオウイーグルは変わっていた。

 上半身を肥大化させて、全身に力を漲らせた野獣として。

 

「―――ジャングルの王者! ジュウオウゴリラ!!」

 

「くっ……!」

 

 アザルドが立ち上がりつつ、剣を振り上げた。

 迫りくるその剣を裏拳で力任せに払い飛ばすと、アザルドの手を離れて飛んでいく。

 無手になった相手に対し、ジュウオウゴリラが両腕で掴みかかる。

 対するアザルドも両手で応え、互いの手を組み合わせた。

 

 ロックアップの体勢で力比べに入る二人。

 その勝負は、じりじりとアザルドの方が押し込まれていく。

 

「馬鹿な……! 俺が下等生物に力負けだと……!?」

 

「これがッ……! ラリーさんのジューマンパワーだぁあああッ!!」

 

 組み合ったまま、ゴリラはアザルドの掌を極める。

 その状態で体を逸らして、アザルドの全身を引っこ抜く。

 手だけ合わせた状態でのスープレックス。

 

 アザルドの体が宙に浮き、そのまま脳天から大地へと叩き付けられた。

 

「みんな! 行くぞ!!」

 

「よっしゃあ!」

 

 四人が二つのキューブが繋がった武装、ジュウオウバスタ―を装備する。

 ガンモードのバスターの銃口に集うエネルギー。

 

 更に攻撃を凌いでいたゴーストが、ガンガンセイバーを放る。

 その空いた手に取り出すのは、リョウマの眼魂。

 彼はすぐさまドライバーの眼魂を入れ替え、トリガーを引く。

 

「リョウマ!」

 

〈カイガン! リョウマ!〉

〈目覚めよ日本! 夜明けぜよ!〉

 

 纏うのは龍を思わせる青いパーカーゴースト。

 リョウマゴーストを憑依させ、ゴーストがサングラスラッシャーを変形させる。

 銃としての能力を持つ、ブラスターモード。

 更にその名の通りサングラスを思わせる剣の鍔に、オレ眼魂と闘魂ブースト眼魂を嵌め込む。

 

〈メガマブシー! メガマブシー!〉

 

 一斉攻撃の準備が整っていく中で、立ち上がろうとするアザルド。

 その胴体を下から掬い上げるように、ゴリラのアッパーが襲う。

 盛大な破裂音とともに、空中に打ち上げられる青い体。

 

「ぬっ、ぐぁ……!」

 

 打ち上げたアザルドがそのまま落ちてくるのを見ながら、再び拳を強く握るゴリラ。

 彼の耳に、地面に手を着いたままのジオウの声が届く。

 

「大和先生、こっち!」

 

「―――わかった! ォオオオオオオッ!!」

 

 落ちてくるアザルドに合わせた、渾身の右ストレート。

 それによって、彼の体が砲弾の如く射出される。

 未だにジオウが抑え込んでいる、土壁に閉じ込められたビッグバンへ。

 

「いま!!」

 

 ジオウがアザルド土壁に激突する瞬間、そこだけ意図的に壁を崩す。

 逃げ場のない太陽の炎が、出口を見つけてそこから一斉に噴き出した。

 地上のプロミネンスに背中を襲われ、アザルドが赤熱しながら弾き返され―――

 

「はぁあああ――――ッ!!」

 

〈ジュウオウシュート!!〉

〈闘魂ダイカンガン! メガ! オメガフラッシュ!!〉

 

 正面から彼を押し込む五つの砲撃。

 それにより、弾き返されることもできずに二つのエネルギーに挟まれる。

 この場に存在する全ての力を注がれて、アザルドの姿が砕けていく。

 

「まさかこの俺が……! 下等生物にまで一度殺されるってのか……!

 ぐぉおおおおおお――――ッ!?!?」

 

 ジオウが魔力を動かし、土壁を再構成する。

 今度は上だけは開けてアザルドとギンガのいる位置だけを囲む。

 全ての爆発が、土壁という砲身を使って上へと逃がされるように。

 

 一瞬後、その砲身から盛大な爆炎が撃ち上がる。

 

 ―――崩れていく土の壁。

 魔力を使い果たし、消えていくウィザードアーマー。

 

 その壁の先の光景には、砕け散ったアザルド。

 そして、石化したギンガの姿があった。

 

 壁が消えると同時に周囲の石が崩れ落ちていき、ギンガがその姿を取り戻す。

 彼はそのまま胸を手で押さえ、よろめいた。

 自身が生み出した太陽の爆発を受けてのものか、彼は明らかな不調を見せる。

 

「―――今のうちに!」

 

 ジカンギレードを取り出すジオウ。

 ジュウオウジャーの四人とゴースト、そしてジオウ。

 六つの銃口が彼を狙い、一斉に放たれる。

 

 だがそれをギンガは二本の手。

 そこに出現させたエナジープラネットで完璧に防ぎながら、宙に浮く。

 彼の移動する先は、最初に彼が乗っていた青い星。

 

「―――まさか。この私が、一度退かねばならないとは」

 

 完全に撤退を選んだ行動。

 あの宇宙船らしきもの。それを壊してでも撤退を防ごうとして―――

 しかし、青いキューブが再生の動作を見せたことで、そちらに構う余裕がなくなった。

 

 アザルドは瞬く間に体の修復を完了し、元通りに。

 彼らがそちらに意識を割かざるを得なくなったせいで、ギンガは離脱を達成した。

 

 ギンガが乗り込むと同時。

 青い星は凄まじい勢いで飛行を開始して、空の彼方へと消えていく。

 

「…………!」

 

 アザルドもまた体を修復し、消えていくギンガの星を見上げる。

 そうしてから軽く首を回して、小さく笑った。

 

「やるじゃねえか、下等生物のくせに。面白くなってきたぜ。

 ここでお前たちが死ぬまで続けてもいいが……止めだ。

 テメェらはきっちり、ブラッドゲームで潰す」

 

「命を……ゲーム感覚で奪うことなんて、俺たちが許さない!!」

 

 楽しくなってきた、と陽気な様子さえ見せるアザルド。

 それに対し、大和は拳を握って言い返す。

 

「おーおー、勝手にしな。もし万が一、俺たちデスガリアンのプレイヤーが全部テメェらに倒されたら……その時は、チームリーダーである俺がお前たちと遊んでやるよ。今度は最期までな」

 

 逃がすべきではない。それは分かっている。

 だが彼の不死身のカラクリを破らない限り、こちらに勝ち目はない。

 最終的に勝利するためには、ここで彼が撤退するのを見送るしかないのだ。

 更に拳を強く握り、大和はマスクの下で歯を食い縛る。

 

「さって。手始めにまずガブリオの野郎を……」

 

「ガブリオは既に倒されました。奴らの仲間に」

 

 戦闘態勢を解いたアザルドの背後、突然現れたナリアが彼に声をかける。

 その言葉に、彼はあり得ない言葉を聞いた、と言うかのように声を荒げた。

 

「おい嘘だろ!? あの野郎、ゲームを始める前に死にやがったのか!?」

 

「はい。プレイヤーにすらなれなかったので、コンティニューは不許可。

 ジニス様の命です。アザルド、あなたも帰還しなさい」

 

 信じられねえ、と顔面を手で覆って空を仰ぐアザルド。

 彼の横に来たナリアが指を鳴らすと、彼女たちは光のコインになっていく。

 ほんの数秒で、彼らの姿は地球上から消えていた。

 

 ―――戦いは終わった。

 謎の敵は増え、相手の強大さを見せつけられ、厳しい道のりだと再確認させられるばかりで。

 それでも。この星に住むものたちの力を合わせれば、奇跡が起こせると。

 

「ありがとうございました、ラリーさん!」

 

 そう言って振り向く大和。

 ……だけど、そこには誰もいなくて。

 あれ、と。首を傾げながら周囲を見回す。

 

 戦い終えたみんな全員で見回すが、どこには彼はおらず―――

 

「―――あ、遅かった?」

 

 森を飛び出してくる武蔵とマシュ。

 彼女たちが着地して、そのまま彼らに歩み寄ってくる。

 ナリアの口振りからして、恐らく彼女たちがデスガリアンを倒してくれたのだろう。

 なら、彼女たちは彼女たちの仕事をしてくれたということだ。

 

「何とかなったから大丈夫。でもあれ、どうやったら倒せるのかなぁ」

 

 不死身のアザルド。そして宇宙から来たギンガ。

 せめてギンガだけでも倒せれば良かったのだが……

 先程の戦いでは、両者が戦っている不意をついたかたちだ。

 次に奴が来ることがあれば、こうも簡単には追い詰められないだろう。

 

「……あの爆発の規模からして、途轍もない戦いだったのですね。

 あ、そうです。大和さん……大和さん?

 えっと、ここに来るまででジューマンの方に会いまして……」

 

 明らかにジュウオウイーグルではない戦士の姿。

 それを見て、だが恐らくは大和なのだろうと。

 マシュは困惑しながらも続けた。

 

「それって、ゴリラの? ラリーさんがそっちに?」

 

 ここから何も言わずに離れた彼、その無事をとりあえず喜ぶ。

 ほっとした様子でマシュに問いかけた大和。

 彼の様子に少し不思議そうに、マシュは首を傾げながら答えた。

 

「え、あ、はい。命に別状はなさそうですが、とても衰弱している様子でしたので……

 今は先輩とツクヨミさんが見ていてくれていますが、大和さんに見てもらえたらと」

 

「衰弱……! ラリーさんが!? どこで!?」

 

 詰め寄ってくる赤いゴリラ。

 声を荒げる彼を前に、マシュは目を白黒させた。

 

 

 

 

「おかえり、アザルド。下等生物に随分としてやられたみたいじゃないか」

 

「へっ、あんなもんやられた内に入らねえよ。

 だがちったぁ楽しくなってきたぜ……この星は玩具にするには上出来だ」

 

 帰還したアザルドとナリア。

 そちらに顔を向けることもなく、声をかけたジニス。

 それに対する機嫌の良さそうな返答に、彼は手にしたグラスを僅かに揺らす。

 

「……今回の君の戦い、ブラッドゲームの範囲内としては扱わないが。

 見ていてなかなか楽しめたよ。お疲れ様」

 

「そうかい。そりゃ何よりだぜ、オーナー」

 

 腕をぶんぶんと振り回しながら、玉座の間を出ていくアザルド。

 恐らく次のブラッドゲームのプレイヤーを決めに行くのだろう。

 随分とこの星の下等生物が気に入ったようだ、と。

 ジニスはまたもグラスを小さく揺らす。

 

「……ふふ、アザルドはどうやら随分と乗り気なようだ。

 クバル、君も負けてられないんじゃないかな?」

 

「―――そのようですね。放っておいて、こちらの手番を飛ばされるのも癪です。

 次はきっちり、私のゲームをジニス様に楽しんでいただきましょう」

 

 クバルもまた頭を下げ、玉座の間を退出する。

 残ったのはナリアひとり。

 

 ―――その彼女に、彼は手にしていたグラスを差し出した。

 

「新しいものを」

 

「はい」

 

 ナリアがすぐさまグラスを受け取り、彼の命を果たすために退室する。

 ただ一人残されたジニスが頬杖をついて、モニターに映る地球を観ながら微笑んだ。

 

「―――さあ、アザルド。

 君はいつまで……私の遊び相手でいてくれるかな?」

 

 彼の視線が地球を脱した青い星の軌道を見る。

 どうやらあれは回復のために戦場を離れつつ、地球の軌道に乗ったようだ。

 そう遠くないうちに、再びあれは地球……そしてアザルドを狙うだろう。

 楽しげに青い星を眺めながら、ジニスは小さく笑い続けた。

 

 

 




 
次は眼魔世界だろうか。
 
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