Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
「なあなあ、やっぱテレビお前んちに置こうぜ大和」
「それは別にいいけど……そればっかり見てるようにならないならさ」
王者の資格をでかでかと描き、『探しています』と書いたビラ。
その束の中からある程度纏めて、ひっついてくるレオに渡す。
同じだけのビラを持ったアムが、その束を見ながら溜め息を吐く。
「王者の資格も眼魂みたいに自分で動いてくれればいいのにねー」
「自分の意思で動けたら、今度は勝手にリンクキューブから出ていくかもしれないな」
肩を竦めて自分の分のビラを取るタスク。
同じく自分の分を取ったセラが、枚数を数えるように軽く束を叩く。
「リンクキューブに嵌ってるだけじゃ暇そうだしね」
「それは困るから無しかぁ」
そんな様子を眺めて目を細めながら、オルガマリーもビラを一掴み。
何だかんだ、余裕がありそうな連中である。
マシュが自分と立香、ツクヨミの分を取り、三等分してそれぞれ渡す。
どこ回ろうか、とこれからの予定を立て始める彼ら。
「……ねえ、一応訊きたいのだけど」
「? なんですか?」
「その、リンクキューブ? っていうのは何かしら」
オルガマリーがジューマンたちの事情として理解していること。
それは故郷に帰るために、王者の資格という物体を集めている集団ということだ。
そのリンクキューブ、という物体の話は恐らく初めて聞く。
「リンクキューブに王者の資格を嵌めると、この世界とジューランドが繋がんだよ。
言ってなかったっけか?」
「オルガマリーさんには言ってなかったかも?」
「……そうね。分かったわ、後でそれどこにあるか教えてくれる?」
王者の資格が嵌っていたというそのリンクキューブ。
それも後々ダ・ヴィンチちゃんに調べさせた方がいいだろう。
例えば王者の資格なしでもそれを起動する方法。
あるいは王者の資格というアイテムを新造する方法。
彼女ならば、そういった方向性での解決策が示せるかもしれない。
まあ結局のところ、この地球の危機は解決しなければ自分たちも帰れない。
元の時代とこの地球の関係性は、把握しきれているわけではない。
正直、時空規模の変化が自分たちの世界とどう繋がるかはさっぱり分からない。
だがおおよそ状況を把握できるダ・ヴィンチちゃんも、方針はこの世界の問題の解決だ。
つまりとりあえず現状として眼魔、デスガリアン、ギンガの打倒。
これを大目標として考えている、ということだ。
ある意味では分かり易い方針ではあるのだが―――
『場所さえ聞ければ、こっちでマップに場所をマーキングできると思うけど?』
「別にそこまで急がないわ。足りない情報なんて山ほどあるもの。
あと現代の街中で喋らないで。不審者だと思われるから」
『酷くないかな!?』
「フォッフ……」
声をかけてきたロマニを黙らせ、溜め息を吐く。
黙らされるロマニを見て、何となく呆れた様子を見せるフォウ。
まあ敵の規模自体は慣れが先行し始めている。
前回の戦いで爆砕され、宇宙に撒き散らされた惑星一個分の機械の塊。
あの流星群にも似た光景は、それはもう壮観だった。
あんな光景、一生に一度さえ見るとは思ってなかった。
彼女だって
だがあんな天体規模など馬鹿馬鹿しくて考えたこともない。
今回の敵は宇宙船らしいので、まだマシだろう。恐らくは。
それでも巨大化の能力があるらしいせいで、また嫌になってくるが。
まあ実際に戦う彼らの後ろで弱音を吐く気もない。
「じゃあわたしたちは―――」
とりあえず考えるのを止め、ビラ配りの場所の選定にかかろうとして。
―――突然の爆音。
続けて、何かが崩れる轟音が耳に届いた。
皆で驚いて、その音がしてくる方向を見る。
黒煙が立ち昇り、ビルが崩落し、悲鳴と怒号がここまで―――
「街を壊してる……! デスガリアン!?」
眼魔であるならば、直接的な破壊より人を狙うだろう。
こんな無差別の破壊を齎すのは、デスガリアンに違いない。
「おいおい、俺たちは何も感じてねえぞ!?」
レオが己の尾に手を伸ばす。
ジューマンは特有の殺気感知能力を有している。
ゲームと称し生物を虐殺するデスガリアン。その接近があれば感知できるのだ。
だが今、その察知能力は一切働いていなかった。
「言ってる場合じゃないわ! 行くわよ!」
「―――了解! マシュ・キリエライト、緊急武装します!」
セラに一喝され、全員が頷いて走り出す。
同時にマシュは服装と引き換えに武装形態へと移行し、先行するように駆け出した。
堅牢な盾を持つ彼女が前を走れば、迎撃があっても真っ先に防げるとの判断。
「俺たちも行こう!」
大和が真っ先に王者の資格、ジュウオウチェンジャーを出す。
走りながら同じようにそれを取り出すジューマンたち。
胸の高さで構えた王者の資格を回し、ジューマンパワーを引き出す一面を揃える。
「本能覚醒!」
〈アーァアァアーッ!!〉
一人の人間と四人のジューマンが、五色の戦士へ姿を変えた。
爆心地へと一気に飛び込んでいく戦士たち。
その前に広がるのは、破壊兵器が作り出した惨状。
焼け落ちた街の一角の中心で、まるで彼らを待っていたような。
そんな様子さえ見せる、一機のマシン。
横に広い胴体に、二本爪のアーム。
体に各所には砲身を備えたそれが、頭部らしき部分をこちらに向ける。
「なんだ……機械か!?」
「そっか、だから私たちには殺気が感じられなかったんだ!」
「―――とにかく、奴を止める!」
イーグルがその手の中に武装を顕す。
ジュウオウジャーたちは同じく、二つのキューブを連ねた武装を取り出した。
赤と青のキューブを連ね、剣と銃を使い分ける武器。動物銃剣ジュウオウバスター。
それを剣に変えた彼らが、一斉に敵へと躍りかかった。
「―――私たちは避難の誘導を……!? マシュ!」
その瞬間、マシンの全砲口が同時に輝きだした。
それを見て叫ぶ立香の指示に応え、盾を構えたマシュが前に出る。
地面へと盾を叩き付けながら、高めた魔力そこへと注ぐ。
「はい! ―――“
周囲一帯に吐き出される光線の雨。
それを真正面から、白亜の城壁が塞き止めた。
押し込まれそうになる体に力を籠め、踏み止まる。
やがてその砲火が収まるまでの数秒。
火線の集中を堪え切って、マシュは大きく盾を振り払った。
確かに敵の攻撃を防ぎ切り、消えていく城壁。
その直後に彼女の背後から五人が飛び出した。
〈ジュウオウスラッシュ!〉
「はぁああああ――――ッ!!」
煌めくジュウオウバスターの刃。
五人の同時攻撃は、巨大な獣の五指の如く。
敵として立ちはだかる者に対して、その鋭い爪を突き立てた。
五色の閃き、光の爪。
攻撃を撃ち終わった直後の破壊兵器を薙ぎ払う。
―――だがそれでも、そのマシンは二歩、三歩と僅かに下がるだけ。
「こいつ、とんでもなく硬ぇっ!」
直撃だというのに、あまりにも手応えがない。
その事実に声を荒げるレオ。
「だが隙がないわけじゃない! 確実に削っていけば!」
「マシュ、まだ防げる!?」
「大丈夫です、防御はわたしに任せてください! 皆さんはその隙に!」
セラからの問いに、そう言ってすぐさま前に出るマシュ。
広範囲攻撃の射角を広げられる前に、近距離まで攻めていく。
敵の砲塔はおおよそ正面を向いたものばかりだ。
距離を詰めておけば、射撃が拡散する前に全部受け止められる。
宝具を連続使用では魔力が保たない。
純粋な盾捌きで攻撃を防いでみせる、という姿勢を見せるマシュ。
彼女はつかず離れずの距離を維持するべく大地を駆けた。
「―――――」
その戦いを、ビルの上から一人の男が眺めていた。
どこかの民族衣装のような、現代の日本には似つかわしくない服。
頭にはバンダナを巻き、その上からゴーグルをつけた白髪の男。
そんな彼は、眼下で繰り広げられる戦いを確かに見つめる。
この距離ではまるで人影は豆粒のようだが。
それでも彼の目には、確かにその戦闘がよく見えていた。
あるいはそちらに集中しすぎたからか。
今まで一切気付けなかった背後の気配に、いきなり振り返る。
彼が振り向いた先にいるもの。
それは、緑色のスライムを全身に帯びた女性型の異形。
デスガリアンのオーナー、ジニスの側近―――ナリア。
彼女の背後には更にもう一人。
上半身まるごと牛の顔のような形状の怪人が共にいた。
それは左腕の赤いマントをバサリと大きく翻す。
「では、ナリア。僕は別の連中をサジタリアークに届けてくるよ。
待っていてくれ、愛しのナリア!」
「私は自力で帰還しますので、あなたはあなたでジニス様の命を果たしなさい」
「ああ、つれない……だがそんなところもまた愛おしい……」
マントを翻し、怪人の片方は消えていく。
あのマントに連動し、瞬間移動に似た能力を発揮しているのだと判断。
口振りからして、自分以外のものさえも運べるようだ。
その場に残されたナリアが、値踏みするように男を見つめる。
「デスガリアンか……」
「人間のように見えますが、人間ではありませんね。
確かにあなたから、人間のものではない力を検知しています」
彼女は何かの機械らしきものを持っていた。
その画面と男を見比べて、少し困惑しつつも目的の相手だと判断する。
まるでジューマンパワーを察知しているかのような発言。
それに対して、男は大きく眉を顰めた。
何故そんなことができるのかは分からない。
だがもし確実な捜索ができるなら、他のジューマンも探せることになる。
いや、先程のもう一人のデスガリアンが正にそうしているのだろう。
「―――喜びなさい、下等生物。
あなたにはジニス様の実験動物としての栄誉が与えられます」
自身に話しかけてくるナリアの様子を見て、男は微かに目を細めた。
つまりデスガリアンはジューマンの捕獲を試みている、ということだ。
その事に関する情報を得るために、陶酔した様子のナリアにあえて問いかける。
「……実験動物だと?
お前が手にしたそれで探したジューマンに、何かをするつもりなのか?
何故それはジューマンのことを探すことができる。
そのジニス様とかいう、デスガリアンのオーナーの力か?」
「なぜ私が下等生物の質問に答える必要が?
―――ですがいいでしょう。これこそジニス様がお創りになられた、この星で生まれた特別なパワーを捜索するための装置。つまりあなた方のような下等生物の力など、ジニス様にかかれば容易に解析できてしまうということなのです。
ふふ……あなた方がどれだけその力を身につけようと、ジニス様にとっては簡単に解明できる玩具程度の存在でしかありません。この星に住む下等生物がこれからやるべきことは、実験動物としてジニス様の好奇心を満たすこと。そして足掻きながらも無様に死に、ジニス様を楽しませる娯楽になること。それだけなのですから」
そこまで語った彼女が手の中にメダルを出す。
ナリアがそれをばら撒くと、地面に落ちて甲高い音を立てると同時。
メダルが一度アメーバのように溶けて、人型に変わった。
「行きなさい、メーバ。あれを捕えるのです」
「プルプルプルプル」
四本の触手を垂らす異形の顔。
その怪物は震えるような声を出しながら、両刃の剣を振り回した。
一気に十数体現れたそれを前に、男が腰を落とし身構える。
殺到するメーバたち。振るわれる剣撃の雨。
軽やかに舞い、それを躱しながら男は小さく舌打ちした。
「――――!?」
セラの圧倒的な聴覚がここから離れた場所での戦闘音を聞き取る。
剣か何か、金属が壁や床を何度も打ち据えているような音だ。
振り返ってみれば、音源は恐らく少し離れたビルの屋上辺りと思われた。
逃げ遅れた誰かがデスガリアンに襲われている可能性がある。
「あのビルの上! 誰かが襲われてる!」
反撃するような音は聞こえない。
必死に逃げ回っているのか、狙われている方はただ走って跳ぶ音だけだ。
「ビルの上……!」
立香が振り返り確認すれば、屋上までは見えもしない。
ここからではどうなってるかはさっぱり分からない。
ビルの中を駆け上がったり、エレベーター待ちしていては間に合わない。
この場からすぐに助けに行けるのは、一人しかいない
「大和さん、行って!」
周囲の人間の誘導を終えたツクヨミが発砲する。
赤い光はマシンに何度か直撃するが、相手は意に介さない。
その反応を見てから、彼女はファイズフォンXのモードを切り替えた。
〈エクシードチャージ!〉
直撃する追撃。
それを受け、そのマシンは赤い光に包まれ一度動きを止めた。
「こっちは俺たちに任せとけ! 野性解放!」
「だから大和くんは助けに行って! 野性解放!」
動きが一瞬止まる敵に対し、獅子と白虎が躍りかかる。
相手の主砲となっている両腕をそれぞれの爪で押さえにかかったのだ。
「―――分かった、こっちはお願い! 野性解放―――!」
ジュウオウイーグルが翼を広げ飛び立った。
数秒もあれば彼はビルの屋上へと辿り着くだろう。
何故かそれに強く反応を示したマシンは、その頭部をイーグルへと向ける。
その直後に、立香がタスクに思い切りコダマスイカを投げた。
「タスク、蹴って!」
〈コダマビックバン!〉
放り投げられたコダマスイカウォッチ。
それが途中で巨大な球体のエネルギーフィールドを発生させる。
巨大スイカとなったそのボールを、
「―――野性、解放!」
エレファントが解放した野性、象の脚が全力で蹴りつけた。
スイカを蹴飛ばすシュートは一直線に伸び、敵にそのまま激突する。
撒き散らされる果汁と果肉により、全身にスイカを浴びたマシン。
周囲の情報を得るためのカメラが、一時的に周囲の状況を把握できなくなった。
そのタイミングで真正面から、回転刃が激突しにくる。
「野性解放!」
自分を刃にしたシャークの突撃。
顔面に叩き付けられるその一撃に対し、軽微なダメージを感知。
ライオンとタイガーは離れたのか、両腕も自由に動かせる。
視界はまだ確保できないが、その思考は即座に次の行動を決定した。
両腕を上げ、全砲口を正面に向け、斉射する。
目的は正面にいることが確定しているジュウオウシャークを消し飛ばすこと。
砲口に迸るエネルギー。一秒後、前方の全てを消し飛ばす一撃を前に―――
「いま! マシュ、お願い!」
「はい!」
シャークが身を翻し、砲口の前から離脱する。
代わりに至近距離まで別の相手、盾持ちの存在が迫っていた。
止める間もなく、砲撃が解き放たれる。
―――同時に。
「“
あまり間を置かずの宝具解放。
軋む体をおして、限界まで魔力を振り絞る。
マシュが顕現させる城壁、砲口から零距離の間に立ち上がる無敵の壁。
そうなれば当然、放った瞬間に砲撃は城壁へと激突し―――
その破壊力が、壁の目の前にいるマシン自体を巻き込む爆発に。
自身の砲撃を跳ね返され、呑み込まれる兵器。
怯む程度で全ての攻撃を耐えていた相手が、遂に吹き飛ばされた。
「はぁあああッ!」
イーグライザーを手に斬り込む。
舞い降りながら振るわれる剣に、切り捨てられるメーバたち。
襲われていた男を背に庇いながら、イーグルはナリアに対峙した。
「大丈夫ですか!?」
大和の声に対して、庇われた男は何も言わず。
邪魔に入った彼に対して口を開いたのは、ナリアの方だった。
「ジュウオウイーグル……ギフトから逃れてきましたか」
ナリアが軽く手を返す。
その場に残っているメーバたちが、それに合わせるように動き出す。
「ギフト……? あのロボットのことか!」
「ええ、ジニス様からあなたたちへの
その戦闘力は一日で十の惑星から文明を滅ぼし尽くすほどのもの……あなたも仲間を置いて、そんなジューマンに構っていていいのですか?」
「―――ジューマン?」
彼女の言葉に大和が振り返る。
彼が庇っている男は、無言のまま僅かに視線を逸らした。
その姿は、どこからどう見ても人間にしか見えない。
だが確かに彼の着ている服はジューランドのそれによく似ていて、
「……まさか」
ジューマンは動物と同じ顔を持つ。姿は人間とはまるで違う。
だが彼らが人間と同一の姿を取る方法が、一つだけあった。
それに思い至り、呆然とするジュウオウイーグル。
「メーバ!」
「しまっ……!?」
そんな彼を、メーバたちが剣から放つ光線で狙った。
十のメーバが同時に放ち、殺到する光の渦。
遅れて反応した大和にそれを躱す術はなく―――
「大和!!」
―――その場で、赤い翼が翻った。
庇われた大和の目に映るのは、赤い大鷲の翼。
ジュウオウイーグルが持つ翼と瓜二つな。
突撃してきたその姿に突き飛ばされて、ビルの屋上の床で転がる。
メーバの攻撃で発生した爆炎を切り裂く赤い羽ばたき。
そのまま空へと舞い上がったその姿を、大和は見た。
赤い翼を持つ、鷲のジューマン。
大きく羽ばたき、空を舞う彼の姿を。
「あの時の、鳥男……!?」
幼少の頃、山で怪我をして遭難していた彼を救ったジューマン。
彼が今持っている王者の資格を渡した者。
「やはりジューマンでしたか……?」
ナリアがその姿を見上げて、その後にイーグルへ視線を向ける。
赤い鷲の翼。まったく同一の力だと、見て感じる。
「まさか、人間であるジュウオウイーグルに力を渡したジューマン……?」
「ハァアア―――ッ!」
鷲のジューマンが空を翔け、メーバに向けて突撃してくる。
その翼に打たれ、殴られ、吹き飛ばされるメーバたち。
瞬く間に残っていたメーバの全てが、アメーバになって崩れていった。
そうしてから着地して、翼を畳む鷲のジューマン。
立ち上がり、そんな彼を見つめて、大和は小さくよろめいた。
「あなたは、まさか……?」
「―――――」
ジュウオウイーグルと縁が深いジューマン。
つまり人間に鷲のジューマンパワーを渡したジューマン。
そうであると確信して、ナリアは小さく舌打ちした。
ジニス様に捧げるものがこんな不良品だなどと。
と、彼女はすぐさま手元の装置を操作した。
やることは、別のジューマンを捜索。
だが、周囲でそれなりの力を感知できる存在は多くない。
この鳥のジューマンと、更にジュウオウジャーの四人。
それ以外には、既にマントールに確保させた三人だけ。
ジュウオウジャーは障害物として残しておかなければいけない。
だとするならば、例え相手がゴミ同然だとしても―――
「……仕方ありません。私が直々に―――!」
ナリアが己の武装、ヌンチャクラッシャーに手をかける。
そうして戦闘に入ろうとした、直後。
『ナリア、そちらはもういいよ』
「ッ、ジニス様!」
所有していた捜索用の装置に、王からの連絡が入った。
すぐさま戦闘態勢を解除し、彼の言葉に耳を傾ける。
『マントールが運んだ連中で充分だ。それより、別の面白そうな素材を見つけてね。
君には是非、そちらをサジタリアークまで運んできてほしい』
「了解しました」
ジニスの声に即断するナリア。
彼女は他の全てを置いて、即座にその指示に従う意思を見せる。
それが何らかの企みである、というのは誰でもわかることで。
「―――ッ、逃がすか!」
「よろしいのですか、ジュウオウイーグル? そろそろ……」
ナリアを追撃しようとイーグライザーを構える。
が、彼女はそれに動じもしない。
そのまま丁度、皆がギフトと戦闘しているだろう場所を指差した。
―――その直後。
そこにいたのだろうギフトが、巨大化を開始した。
瞬く間に50メートル級にまで膨れ上がっていく機体。
「あれは……!」
「―――ジニス様からの贈り物が、本格的に動き出しますが」
眼下で皆がキューブアニマルを解放する。
そうでなければ、巨大化したギフトに街が焼き払われることになるだろう。
今までのサイズならばともかく、あのサイズではマシュでも防げない。
すぐにジュウオウキングを呼び出す必要がある。
その隙に、ナリアは撤退を開始していた。
彼女を覆うようにコインが積み重ねることで姿を隠す。
それを見送ることしかできず―――
そしてまた、赤い鷲のジューマンが飛翔を開始した。
「あっ、待って! その王者の資格は……!
くっ……! ―――キューブイーグル! キューブゴリラ!」
鳥男を追おうとして、しかし途中で思い直す。
この状況でそんなことをしている暇はない。
手元から二つのキューブアニマルを解き放つ。
直後にビルの屋上から飛び立ち、キューブイーグルの中へと飛び込む。
搭乗したキューブイーグルの中、大和は王者の資格を起動した。
『動物合体!』
〈3! 2! 1! ジュウオウキング!〉
〈4! 5! 6! ジュウオウワイルド!〉
ライオン、シャーク、イーグル。
三段重なり完成するのは、大剣を構えた王者の巨神。
ジュウオウキング。
エレファント、タイガー、ゴリラ。
その三体が積み上がり姿を現すのは、巨砲を携えた剛力の巨神。
ジュウオウワイルド。
二機の巨神が巨大化したギフトの前に立ちはだかり―――
彼らのすぐそばを、赤い鳥のジューマンが飛び去って行った。
『あん? おい、大和。今のは……』
『鳥のジューマン、って。まさか大和が子供の頃に会った!?』
『―――それよりも、早くあいつを! タスク、アム、援護を頼む!』
その話は後だ、として。大和はジュウオウキングの舵を取った。
操縦桿代わりのキューブを回転させ、突撃させる。
ジュウオウワイルドに搭乗したエレファントとタイガー。
彼らがその様子を訝しみながら、しかしギフトに対して攻撃を仕掛ける。
『―――分かった、行くぞアム!』
『オッケー!』
二人が揃って操縦桿の中のキューブの絵柄を揃える。
高まっていくエネルギーが集う先は、大砲・ワイルドキャノン。
その砲口をギフトへと向けるジュウオウワイルド。
『ワイルドキャノンビーム!!』
『キングソード! ジュウオウ斬り―――!!』
巨砲から放たれる光弾の嵐。
それが真っ先にギフトへと届き、そのボディに直撃すると爆炎を撒き散らす。
更に、そこへ続けて振り抜かれるは王者の剣。
火花を噴き出しながら振るわれる一刀が、確かにギフトへと届いた。
―――その上で。
ギフトは大した損傷もないまま爆炎を突き破り、動き出した。
アームを伸ばして剣を打ち払い、至近距離からジュウオウキングに砲撃。
巨神の体を吹き飛ばし、地面へと沈めた。
『うわぁああああ―――ッ!?』
『大和!? レオ!?』
『セラちゃん! ―――タスクくん、こっちにも!?』
砲撃を続けるジュウオウワイルド。
その直撃を受けながらも距離を詰め、その腕を殴り飛ばす。
叩き落とされたワイルドキャノンが地面に落ちて、衝撃で砂の柱を立てる。
そのままゴリラの腕をアームで挟み込み、拘束してくるギフト。
直後に胴体から展開されるのは、回転鋸とドリル。
耳鳴りするような異音を立てながら回る二つの凶器。
それがジュウオウワイルドの胴体へと連続で叩き付けられる。
滝のように火花を噴き出し、ジュウオウワイルドの巨体が揺れた。
『きゃあああ―――っ!?』
『タスク! アム! っ、くそ!』
何とかジュウオウキングを起き上がらせる大和。
彼はキューブを一つ取り出し、放り投げる。
キングの頭部から飛び出し、巨大化するキューブ。
それが即座にキリン形態へと変形した。
キューブキリンが更に形状を変え、大砲形態に。
ジュウオウキングはそれを右肩へと担ぎ、ギフトへと向けた。
『キリンバズーカ! ジュウオウファイア!!』
キリンの口、バズーカの砲口から奔る火炎弾の連続。
それは過たずギフトの頭部付近に着弾し、僅かだがその体を揺らした。
その隙を突いて、アームにクラッチされた腕を引き抜くジュウオウワイルド。
拘束から何とか脱したワイルドが、その勢いで脚を振り上げる。
キューブエレファントの脚部がギフトの腰を蹴り飛ばした。
二歩分だけ押し返されたその機体。が、すぐに体勢を立て直してしまう。
『くっ、やはり凄まじいパワーと装甲だ! 強引に押し切るのは無理だぞ!』
相手の大火力は絶対に撃たせてはいけない。
だが闇雲に動けば、こちらが負けることになるだけだ。
ギフトの動きを制限するためにも、慎重かつ休まず攻め続ける必要がある。
『でもこのままじゃ……!』
『おい、大和! お前なに焦って……!?』
だが、時間がないとばかりにイーグルがキューブを回す。
それと連動して、ジュウオウキングがキリンバズーカを発砲した。
直撃して、爆炎と爆風に巻かれるギフトのボディ。
炎と煙に包まれたギフト。
しかしその中でギフトが傷ついた、などという事は一切ない。
舞い上がったその黒煙の中で、膨大な光が溢れさせる。
それが大威力の砲撃の予兆である、ということに疑いはなく―――
『……ッ、しまった―――!』
『くっ……!』
その光の正面に、ジュウオウキングとワイルドが走り込む。
瞬間、解放されるギフトの主砲。
街の盾となった二機の巨神を、超熱量の光線が纏めて薙ぎ払う。
轟音とともに転倒し、地面に倒れ伏す二体。
倒れ込んだその二体を前にして、ギフトが再びエネルギーチャージを開始。
その全身の砲口に光を蓄え始める。
『―――おい大和! お前!』
『っ、レオ! そんな場合!?』
『こいつどうにかしなきゃ、勝てるもんも勝てねえだろ!?』
ジュウオウキングの中でレオが声を荒げ、セラが制する。
不用意な攻撃で自分たちから隙を晒し、逆にやられた。
そんな簡単にいく相手じゃない、と確認した直後の出来事だ。
その二人に挟まれながら、大和が操縦のためのキューブを拳で叩いた。
失態を犯したことは、自分がよく分かっている。
その原因も自分が一番よく分かっている。
吐き出せばいいのかもしれないけれど、それが出来なくて。
大和はマスクの下で強く歯を食い縛った。
その光景を外から見ていて、オルガマリーが頭を抱える。
そこに乗っていたフォウが飛び降り、自分の足で地面に立った。
小動物がどうするのだ、という表情で見上げてきている気がする。
こっちが訊きたい。
とにかくあの大戦力に対して、こちらから仕掛ける方法はない。
あの広範囲では、マシュが宝具を使ったところで当然ながらカバーしきれない。
ならば、どう――――
―――と。
その答えをオルガマリーが発見する前に、立香が飛び出していた。
マシュの手を引いて。
「藤丸、あんたまた、この……!」
何が嫌って、大体やりたいことが分かることだ。
あの二人は何時も揃って、やってみせたいことのために前に出る。
即座に通信機を起動してダ・ヴィンチちゃんへと通信を繋ぐ。
『はいはい、こちら大天空寺のダ・ヴィンチちゃん。
ピンチなのは百も承知で、どんな援護をご要望だい?』
「分かってんなら今よ! 飛ばしなさい!
一秒でも長く時間を稼ぐのよ!」
『了解了解、フレームとジェットエンジンから造って正解だったね。
まあこれなら、突っ込んで爆発するくらいはしてくれるでしょう!
私が天才じゃなかったら間に合わなかったね!』
どんな屋台にする気だったんだこいつ、と。
ロクでもないが分かり切っている件について、僅かに目を細める。
一秒でも、と言ったがガラクタをぶつけるだけじゃ一秒も稼げまい。
だったらどうする、と。
そう考えている彼女の背後で、今度はツクヨミが走り始めた。
「私も行ってきます!」
「ちょ……っ!」
そう言って彼女が目指すのは、ジュウオウワイルド。
もし何かをする気ならば―――と。彼女のやろうとしている事に納得する。
そして結局いつもこんなんか、と髪を掻き乱した。
疾走するマシュ。
立香に引っ張られていた彼女の方が今は走っている。
マスターである立香を抱えながら、仰向けに倒れたジュウオウキングへ。
まるで山のようなそのボディの上に、彼女たちは思い切り飛び乗った。
「マシュ、いける? 令呪のない私にどれだけ魔力が出せるか分からないけど……」
「―――やります、マスター!」
そう言って彼女は立香を手放して、盾を構えてギフトを見上げた。
ジュウオウワイルドのスピーカーから声が聞こえる。
『ちょっと、マシュちゃん!? いくら何でもあの大きさは無理だって!』
『危険だ! ジュウオウワイルドを今立たせる! 下がれ!』
その通りだ。
2メートル程度のサイズだった先程までとは違う。今のギフトは約50メートル。
当然その火力も攻撃範囲も、相応に跳ね上がっている。
だからこそ、きっとタスクが言うように彼らが止めようとした方が確実だ。
―――でもそれでは。
「いいえ、それでは勝てません。
この敵と戦い、倒して、この星に生きる命を守るためには……皆さんと一緒に戦うことが不可欠なのです! わたしが何としても守ります! 絶対に防ぎます!
皆さんが一緒に戦う準備が整うまで、何としてでもわたしが時間を稼ぎます! だから!」
マシュの背に立香が手を添える。
魔術への造詣が薄い彼女でも、カルデアの礼装にかかれば魔力を捻りだすくらい何とかなる。
魔力だけで足りないなら、生命力でも何でも燃やして。
立香は全力でマシュへと魔力を注ぎ込んでいく。
―――思い描くは白亜の城塞。
清廉なりし騎士王率いる、誇り高き騎士の円卓。
その城塞が守るのはキャメロットなれば。
今、この戦いにおいては―――
この星を滅ぼそうとする外敵から、キャメロットを守ることに他ならない。
最大限拡大して、守護の城塞を現出させるべく。
全てを懸けてその銘を呼ぶ。
「其は穢れ無き我らが故郷……! あらゆる瑕から我らを護る、無敗の城壁!!
聳え立て―――! “
―――白い壁がその場に立つ。
同時に、ギフト放つ破壊光線が視界を染めた。
壁に光線が激突し、そして―――
『受け止めた……!?』
ギフトの光線を、白亜の城塞が受け止める。
間違いなく拮抗させて、その攻撃を防いでみせていた。
唖然とし、ジュウオウワイルドの中で腰を上げるエレファント。
そんな彼の耳に別の人間の声が届く。
『ちょっと! モグラ貸して!』
『え、あ、ああ……?』
『ツクヨミちゃん、入ってきたの……!?』
ジュウオウワイルドに乗り込んできたツクヨミが、エレファントににじり寄る。
差し出される手と剣幕。
その勢いについ、タスクがキューブモグラを彼女に渡してしまう。
瞬間、取って返してジュウオウワイルドを飛び出していく彼女。
ツクヨミを少し呆けながら見送った彼ら。
その耳に、マシュの背に手を添えた立香の声が聞こえてくる。
「きっと、誰だって同じ……! いきなり戦わなきゃいけなくなって、すぐに全部上手く行くわけない。誰かと一緒に戦っても、力の合わせ方だって、きっとすぐには噛み合わない。皆バラバラで、絶対歩調なんて合わなくて、そのうち分解しちゃいそうだけど……皆と一緒に歩いてるって意識して歩き続けるだけでも、きっと少しずつ、近づいてる……! ―――
マシュの背に手を当て、彼女を後ろから押す立香。
削られていく魔力、体力。
落ちそうになる膝を必死に支え、彼女は叫ぶことで気合を振り絞って耐え抜く。
「私たちは信じる!
―――白亜の城塞が徐々に崩れ始める。
それでもまだギフトによる攻勢は収まらない。
力を入れ直し、マシュが盾を必死に掴む。
その光景を前に。
『う、ぁああああああ――――ッ!!』
イーグルが、その頭を思い切り目の前のキューブに叩き付けた。
シャークとライオンが驚愕してそんな彼を見る。
『お、おい大和……!?』
レオが声をかけようとすると同時、叩き付けた頭を上げる大和。
『皆ごめん! あの鳥男……あのジューマンは、人間の姿をしてたんだ!』
叩き付けた頭を上げると同時、彼はそうやって切り出した。
『人間の姿って……じゃあ!?』
ジュウオウジャーの皆が人間の姿を取っているように、ジューマンが人間の姿に変化するには王者の資格が必要となる。人間の姿のジューマンがいたということは、そいつが王者の資格を持っているということになる。
『多分、最後の王者の資格はあの人が持ってる。
……ごめん、言えなかった! むかし俺を救ってくれたあの人が、皆が帰るために必要な王者の資格を盗んだんだなんて、思いたくなかった。それを確かめたくて、早くあの人を追いかけて真実を知りたくて……俺、焦ってた!
もう大丈夫……なんて今更言っても、信じられないかもしれないけど……!』
大和が言葉を詰まらせて、しかし目の前のキューブを握り直す。
ゆっくりと、ジュウオウキングに力が戻っていく。
そうして、ジュウオウワイルドの中でアムもまたキューブを握った。
『じゃあ次、私。正直、どうせ見つからないだろうなぁ、なんて。
そんな諦めてる感じが多分あったと思うんだよね、王者の資格探し。だからどうせならこっちの世界で生きてく方法、見つけといた方がいいかなって実は思ってた』
『……僕は正直、ジューランドと関係ない眼魔とかいう、こっちの世界の問題にも首を突っ込むのは今でもどうかと思ってる。王者の資格はそんなことのための力じゃないだろう』
『私はまだ出来るならすぐに帰りたいと思ってる。デスガリアンとの戦いを放棄するわけじゃないけど、一回だけでもあっちに帰って、弟を安心させてあげたい』
タスクが、セラが。それぞれキューブを掴み直す。
ジュウオウキングの中で、大和とセラの視線がレオへと向かう。
それに気付いて、彼は驚いたように身を竦ませた。
『え、なんだ、俺か!? 俺、俺……えー……えぇ……!?』
しどろもどろになるレオ。
そうしている間にも、ロード・キャメロットはどんどん崩れていく。
最早残り数秒、という状況まで至り―――
彼方から、金属のフレームにエンジンだけ乗せた馬鹿みたいな乗り物が飛来する。
そんなものはギフトにとって何の脅威でもない。
認識しながらも、一切攻撃を向ける理由は存在しない。
故に一切反応を示さず―――
―――まあそうだろうさ、と。
それに無理矢理搭乗している万能の天才が小さく笑う。
「だって。万能の天才である私が、今から君にも有効なものを創るんだからね!」
高速で流れていく景色の中、右腕を突き出して万能籠手を展開する。
だからと言って痛打など期待しない。というか、質量の問題で限度がある。
やはり質量は常に正義。だけど、必要以上のダメージなんぞ要らない。
「ま、引き立て役に徹するとも―――!
ではご覧あれ、我が名である“
―――彼女の籠手から放たれる光弾。
それはその場で膨れ上がり、周囲を照らしていく。
何も壊さない。ただ、その威光で周囲の全てを晦ましていくだけ。
それを放つだけ放ったら、ダ・ヴィンチちゃんはギフトに掠めもせず離脱していく。
既に完璧な仕事を終えた、と認識しているから。
放たれたのは、ただの目晦まし。
されど、それはギフトのセンサーさえもほんの一時的に停止させた。
他の全員、その場にいる誰もが五感を失う。
視覚も、聴覚も、人間だろうがジューマンだろうが機械だろうが。
ただ数秒だけ感覚を曖昧にさせるだけの光。
ただそれだけ。それだけで、十分なのだ。
だって、
「いまよ! お願い!」
光が周囲に満ち、世界が塗り潰されたその瞬間。
他の誰にも届かない瞬間に、叫ぶツクヨミ。
地上にいる他の誰にも届かない。されど―――
そこでツクヨミが持ち出して、先んじて地面に潜ませていたキューブアニマルが動く。
紫色のキューブモグラが顔を出すのは、ギフトの足元。
各種センサーが一時停止しているギフトにそれを察知する術はない。
〈キューブモグラ!〉
唐突に崩落を始める足場。
キューブモグラが地下を大きく削り、そして今地表まで割られた。
ギフトの重量を支えられなくなった地面が、一気に陥没する。
がくん、と。
片足が地中に沈んだその勢いで、ギフトが思い切り仰向けに倒れ込む。
その衝撃で光線の照射が停止した。
同時に完全に崩落するロード・キャメロットの城壁。
立香とマシュが一気に倒れ、ジュウオウキングの上で転がった。
『うぅうう……おぁああああッ! うっし!
おい大和! 俺はなぁ! テレビとか、めっちゃ欲しい……! そんな感じ……!?』
『レオは何も考えてない、ってことね』
言い切って、キューブを握るレオ。
そんな彼に溜め息ひとつ。セラは肩を竦めて前を見た。
『そうだねぇ。でもなんか、皆の距離が一歩近づいた感?』
『あと共有しているのは僕たち全員、今まさに皆に迷惑をかけてる罪悪感だ』
『……うん。だからこそ―――掛けた迷惑と、懸けてもらった信頼の分』
全員がキューブを握り、そのまま回転させる。
同時に動き出すジュウオウキングとジュウオウワイルド。
ジュウオウキングはその手に立香とマシュを乗せ、ゆっくりと地面に下ろす。
即座に彼女たちを迎えに来たオルガマリーが、二人を連れて離れていく。
『俺たち全員で! あいつをぶっ倒すことで応える!!』
立ち上がった二体の巨神が身構える。
―――その瞬間、五人全員の王者の資格が光を放った。
『これ……初めてジュウオウキングが合体した時と同じ?』
イーグルが王者の資格を開き、その電話に似たキーを確認する。
そこでは、1から6までのキー全てが明滅していた。
何かが変わった。だから、その力がきっと解放された。
自然とそう思い至り、大和は全員に向けて叫んだ。
『―――皆で行くぞ!』
『おう!』
王者の資格に合体するキューブアニマルの番号を打ち込む。
1から6、全ての番号をだ。
『動物大合体!!』
〈イーグル! シャーク! ライオン! エレファント! タイガー! ゴリラ!〉
〈キリン! モグラ!〉
〈アーァアァアーッ!!〉
それに呼応するかのように、キューブキリンとキューブモグラもまた。
今この場に居合わせた全てのキューブアニマル。
その力が一つになる。
〈4! 3! 2! 5! 1! 6!〉
エレファント、ライオン、シャーク、タイガーの順で縦に積み上がる。
胸になるタイガーの右側にはゴリラ、左側にはイーグル。
積み上がったキューブの上から、ビッグキングソードが突き刺さる。
更にキューブゴリラが装備していたビッグワイルドキャノンが変形。
折りたたまれ、胸部の装甲へと変わったそれが、タイガーの上から装着。
それと同時に、イーグルとゴリラがそれぞれ両腕へと変形。
シャークが腰になり、ライオンとエレファントが中央で分割され両足に。
右足にはモグラ、左足にキリンが装着された。
―――頭部が展開する。
現れるのはジュウオウキングのマスク。
その上から、ワイルドキャノンが変形したオーバーマスクが合体。
合体シーケンスを完全に終えて、その機体に余すことなくパワーが行き渡る。
『――――完成! ワイルドジュウオウキング!!』
〈ワイルドジュウオウキング!!〉
新たに姿を現した巨神。立ち誇るその威容。
その目の前で、転倒していたギフトが立ち上がる。
同時に腰部パワーノズルの砲口が発光。
目前に現れた敵新戦力に対して、破壊兵器は即座に攻撃を行使した。
行使されるのは、街を焦土に変える破壊光線の照射。
それを前に。ワイルドジュウオウキングは歩みを開始した。
直撃する破壊光線。圧倒的熱量の雨。
―――それに一切怯まず、揺るがず、確かな足取りで、新たな王者は進み続ける。
『―――これなら行ける!!』
腕を振るい、光線を薙ぎ払う。
そのままの勢いでギフトへと叩き付けられる巨神の拳。
堅牢なギフトの装甲が軋み、悲鳴を上げる。
『皆それぞれ色々思うところがあって……私たちジューマンの中でも、それぞれが色々と別のことを考えてたりして。人間の大和くんなら、それは尚更で。
でもそういうのを今こうやって共有して、皆で揃って一歩前進?』
蹈鞴を踏むギフトの胴体に、巨神の脚が振り上げられた。
胸部から展開していたドリルと回転鋸が、微塵に砕けて弾け飛ぶ。
そのままメインカメラに叩き付ける、更なる拳撃。
『これだけやってまだ一歩じゃ、随分と先は長いな!』
ギフトが両腕を突き出して、そこから奔らせるのは雷撃の渦。
直撃を浴び、ワイルドジュウオウキングの全身がスパークした。
―――しかし。それを身動ぎ一つで吹き飛ばし、もう一度拳を振り上げる。
『私たち、いきなりこんなことになったんだもの! でも、きっともう大丈夫。私たちはもう、こうして私たちが生きる星を守るための……一つの群れなんだから!』
全力で振り抜かれる王者の拳。
それがギフトの顔面を粉砕しつつ、その巨体を大きく吹き飛ばした。
地面を滑っていく巨体はしかし、転倒だけは防いでみせる。
何とか姿勢を立て直し、同時に両腕、胴体、腰部。
全ての砲口に恐らく全てのエネルギーを集約させ始めた。
『んじゃあ―――俺たちが歩み寄った一歩がどんなもんか!
さっきまでいいようにやられちまったあいつで、存分に確かめてやる!』
五人の手が王者の資格を掴み、その面を揃えていく。
野性の本能を覚醒させ、ジューマンパワーを解放させる。
全てのキューブアニマルたちが秘めたる力を放出。
『―――デスガリアン!! この星を、俺たちを……舐めるなよ!!』
ギフトが全てのエネルギーを破壊のために解き放つ。
アブレーションレールガンから放たれる超熱線。
惑星を十個滅ぼしてきたという、絶滅の炎。
―――それに対し。
ジュウオウジャーが、王者の資格をキューブの中に嵌め込んだ。
ワイルドジュウオウキングが高めた全ての力が解放される。
『ジュウオウダイナミックストライク!!』
巨神の全身から放たれる、光の渦。
その中に、八体のキューブアニマルの姿が浮かぶ。
この一撃こそが、命あるものの雄叫び。
―――激突する二つの極光。
滅ぼすことを目的とした機械の放つ光と熱が、正面から食い破られる。
拮抗などなく、絶大なる一撃はギフトを瞬く間に消し飛ばした。
崩れ落ちていくギフトだったものの残骸。
そちらに背を向けて、ワイルドジュウオウキングが勝利を立ち誇る。
―――直後。
残骸が盛大に爆発を起こし、巨神の背後に炎の華を咲かせた。
『ふう……』
戦いが終わったことに、疲労感から肩を落とす。
『終わったか……終わったからには、やらなければならないことが山積みだ。
まずは大和が見たという、人間の姿になっていたジューマンの話だが……』
そんなことを言い出すエレファントの頭をタイガーがつつく。
何をする、と憮然とした様子で振り向く彼。
『そんなことより。先にもっとやらなきゃいけないこと、あるでしょ?』
『大和の焦りは、私たち皆の失敗。私たちの足並みが揃ってなかったのもそう。
だからまず、フォローしてくれた皆にお礼を言わなきゃね』
シャークも一緒になってのその言葉。
それに一理あると判断したのか、エレファントは黙って腕を組んだ。
同じくライオンもまた腕を組み、イーグルの方を見て笑った。
『おう。今度から気をつけろよ、大和!』
『レオも暴走しすぎ。もうちょっと何か態度あったでしょ』
言い合いを始めるセラとレオ。
それを呆れて見ているタスクとアム。
そんな彼らに挟まれながら、大和が小さく苦笑を漏らした。
『うん……皆、ごめん。それと、ありがとう』
「まさかギフトを倒しちまうとはなぁ!」
笑いながらテーブルを叩くアザルド。
愉快でたまらない、という彼の態度にその後ろでクバルが肩を竦める。
ギフトほどの戦力を打ち破るのは、流石にもはや脅威と呼ぶに値するというのに。
「ジニス様。ナリアたちを動かして、実験動物を探させていたようですが……
ギフトと引き換えにする価値があるものなど、あの星にあるのですか?」
「―――あんなもの幾らでも造れるからね。
私の研究心に比べれば、ギフトくらい幾らでも使い捨てるだけさ」
資源的にも、時間的にも、幾らでもとはいかないだろうに。
そんな事を想いながら、クバルはしかし彼に同意を示す。
どちらにせよ、ジニスがやると言ったならやる以外にないのがデスガリアンだ。
「私はこれから拾ってきた玩具で遊ばせてもらうつもりだ。
二人とも、面白くなりそうなゲームの準備が出来たら声をかけてくれるかな?」
「おうよ! 任せときな、オーナー!」
「勿論。今回のブラッドゲームに勝利するのは、我らチームクバルですので……」
拳を打ち合わせるアザルドと、一礼するクバル。
そこで玉座の間の扉が開き、ナリアが帰還してきた。
「ジニス様。仰せの通り、実験動物を回収してきましたが……」
「ご苦労様、ナリア。では、私はそちらに行こうかな。
私は私で遊びながら、次のゲームを楽しみにしているよ? ふふふ」
ジニスがその巨体を動かし、玉座から動き出す。
上半身は人型だが、下半身はそれこそ玉座と一体化して見える土台だ。
ゆっくりと動き出した彼、そして追従するナリアを見送る。
そうしてから、次のゲームの内容を考え始めるアザルド。
対して、ゲームとは別のことに思考を巡らせるクバル。
彼はモニターに映る地球の姿を見つめて、考え込むように顎に手を添えた。
早口ナリア。
巨大戦があると文字数が伸びる。
これってトリビアになりませんか?
次回アラン様回